(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115615
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】はだ焼鋼の鍛造熱処理方法
(51)【国際特許分類】
C21D 8/00 20060101AFI20240820BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240820BHJP
C22C 38/14 20060101ALI20240820BHJP
C22C 38/28 20060101ALN20240820BHJP
C21D 9/32 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
C21D8/00 A
C22C38/00 301N
C22C38/14
C22C38/28
C21D9/32 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021332
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】391037799
【氏名又は名称】株式会社ゴーシュー
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】伊▲崎▼ 敬仁
【テーマコード(参考)】
4K032
4K042
【Fターム(参考)】
4K032AA01
4K032AA05
4K032AA11
4K032AA12
4K032AA16
4K032AA19
4K032AA21
4K032AA22
4K032AA27
4K032AA29
4K032AA31
4K032AA35
4K032BA02
4K032CA02
4K032CA03
4K032CC04
4K032CD02
4K032CD03
4K032CD06
4K032CF02
4K042AA18
4K042BA05
4K042BA10
4K042BA13
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA12
4K042DA01
4K042DA02
4K042DA06
4K042DC02
4K042DC03
4K042DC04
4K042DD02
4K042DE02
(57)【要約】
【課題】機械加工前の軟化が可能で、浸炭時のオーステナイト粒粗大化を抑制でき、併せて、浸炭焼入れ歪の軽減をインラインで実現できる、はだ焼鋼の鍛造熱処理方法を提供すること。
【解決手段】はだ焼鋼を素材として使用し、熱間鍛造後、以下の熱処理工程を行うこと。・鍛造後直ちに冷却設備で鍛造素材を1~30℃/sの冷却速度で1回以上冷却を行い、冷却と復熱を1回以上繰り返す工程。
・最終の復熱後の表面温度が600~750℃間の目標の冷却停止温度に制御し、引き続き保定炉に装入する工程。
・保定炉内で600~700℃の温度に15~60min.保定し、その後炉出しする工程。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はだ焼鋼を素材として使用し、下記(1)~(4)の工程で熱間鍛造及び熱処理を行うことを特徴とするはだ焼鋼の鍛造熱処理方法。
(1)素材を1100~1280℃で加熱し、950~1200℃の温度で鍛造する工程。
(2)鍛造後直ちに冷却設備で鍛造素材を1~30℃/sの冷却速度で1回以上冷却を行い、冷却と復熱を1回以上繰り返す工程。
(3)最終の復熱後の表面温度が600~750℃間の目標の冷却停止温度に制御し、引き続き保定炉に装入する工程。
(4)保定炉内で600~700℃の温度に15~60min.保定し、その後炉出しする工程。
【請求項2】
素材に、Al:0.010~0.060重量%、Nb:0.015~0.060重量%、N:0.010~0.025重量%及びTi:0.0015~0.050重量%を、1種あるいは2種以上含有したはだ焼鋼を使用することを特徴とする請求項1に記載のはだ焼鋼の鍛造熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はだ焼鋼を素材として使用し、熱間鍛造及び熱処理を行うようにしたはだ焼鋼の鍛造熱処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、連続可変トランスミッション(Continuously Variable Transmission。以下、「CVT」という。)、ミッションギア、デファレンシャルギア等の機械部品の製造においては、はだ焼鋼を用いて熱間鍛造を行った後、軟化するための熱処理を行ってから機械加工を施して最終部品の形状に加工した後、浸炭焼入れを実施し、さらに仕上げ加工をして最終部品を得るようにしていた。
【0003】
ところで、近年、地球環境問題の観点から、これらの部品に対する小型軽量化、それを実現するための部品形状の複雑化が進んでいる。また、CO2削減のための製造工程の最適化が望まれている。
すなわち、(1)これらの部品を小型化するためには、高強度化が必要であり、鍛造素材の硬さが高くなって機械加工時の工具寿命が短くなる、(2)複雑な形状の部品を浸炭焼入れするため、浸炭焼入れ歪も大きくなってきている。
この問題に対処するため、(1)鍛造後に焼準処理を行って鍛造部品を軟化させて工具寿命の改善を図る試みや、(2)浸炭焼入れ歪を低減するために、熱間鍛造後、焼準処理や焼準+焼戻処理が行われてきた(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、これらは、鍛造部品のコストやCO2の排出量を増加させたり、工程の煩雑化をもたらすだけでなく、場合によっては浸炭時のオーステナイト粒の粗大化による鍛造部品の機械的性質の低下を招いたりするため、これらの工程の適正化が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の鍛造部品の製造に関する問題点に鑑み、工程の簡略化を種々検討し、機械加工前の軟化が可能で、浸炭時のオーステナイト粒粗大化を抑制でき、併せて、浸炭焼入れ歪の軽減をインラインで実現できるはだ焼鋼の鍛造熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のはだ焼鋼の鍛造熱処理方法は、(1)熱間鍛造と熱処理を連続化し、(2)鍛造後の冷却速度を制御し、引き続き保定変態処理を実施すること、より具体的には、はだ焼鋼を素材として使用し、下記(1)~(4)の工程で熱間鍛造及び熱処理を行うことを特徴とする。
(1)素材を1100~1280℃で加熱し、950~1200℃の温度で鍛造する工程。
(2)鍛造後直ちに冷却設備で鍛造素材を1~30℃/sの冷却速度で1回以上冷却を行い、冷却と復熱を1回以上繰り返す工程。
(3)最終の復熱後の表面温度が600~750℃間の目標の冷却停止温度に制御し、引き続き保定炉に装入する工程。
(4)保定炉内で600~700℃の温度に15~60min.保定し、その後炉出しする工程。
【0007】
ここで、「はだ焼鋼」とは、JIS G 4052やJIS G 4053に規定される「はだ焼鋼」を意味する。
また、「冷却速度」とは、800~500℃間の平均冷却速度を指す。
また、最終冷却以降の鍛造部品の表面は内部の熱により復熱してくるが、その復熱後の最高表面温度を「冷却停止温度」と定義する。
【0008】
この場合において、素材に、Al:0.010~0.060重量%、Nb:0.015~0.060重量%、N:0.010~0.025重量%及びTi:0.0015~0.050重量%を、1種あるいは2種以上含有したはだ焼鋼を使用することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のはだ焼鋼の鍛造熱処理方法は、自動車や建産機の駆動系部品に使用される浸炭部品、中でも、CVT、ミッションギア、デファレンシャルギア等として使用される機械部品を、(1)環境配慮(省エネルギ、CO2削減)、(2)浸炭焼入れ歪の軽減、(3)浸炭時のオーステナイト粒の異常粒成長抑制、(4)工期短縮、コストダウンに寄与する製造方法として提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のはだ焼鋼の鍛造熱処理方法の工程を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のはだ焼鋼の鍛造熱処理方法の実施の形態を説明する。
【0012】
本発明のはだ焼鋼の鍛造熱処理方法は、熱間鍛造と熱処理を組み合わせて、機械加工前の軟化や浸炭時の粗粒化抑制、浸炭焼入れ歪の低減等を、インラインで実施可能な方法である。
【0013】
1.素材鋼
一般に自動車や建産機に用いられる浸炭部品は、JIS G 4052やJIS G 4053に規定されるはだ焼鋼を用い浸炭焼入れして製造される。
はだ焼鋼とは、具体的には、低炭素鋼及び低炭素合金鋼と規定されており、主として、浸炭焼入れによって表面硬化される鋼で、浸炭部品に使用される鋼の呼称として定義されている。
【0014】
ここで、素材として使用するはだ焼鋼には、Al:0.010~0.060重量%、Nb:0.015~0.060重量%、N:0.010~0.025重量%及びTi:0.0015~0.050重量%を、1種あるいは2種以上含有したはだ焼鋼を使用することができ、これにより、浸炭時のオーステナイト粒の粗大化を抑制することができるものとなる。
【0015】
上記Al、Nb、N及びTiの添加量を規定した理由を以下に示す。
[Al:0.010~0.060重量%]
Alは、鋼中のNと反応してAlNを形成し、浸炭時のオーステナイト粒の粗大化を防止する効果がある。0.010重量%未満では添加効果に乏しく、一方、Al含有率が0.060重量%を越えると、結晶粒粗大化防止効果が飽和してしまう。そこで、上記範囲に規定した。
[N:0.010~0.0250重量%]
Nは、鋼中のAlと反応してAlNを析出させるため必要な元素であり、靭性を向上させる効果を有する。0.010重量%未満では添加効果に乏しく、一方、N含有量が0.0250重量%を越えると、結晶粒粗大化防止効果が飽和してしまう。また、過剰のN添加はブローホール発生の原因となり、強度を低下させる。そこで、上記範囲に規定した。[Nb:0.015~0.060重量%]
Nbは、鋼中の炭素C及び窒素Nと結合して、Nb炭化物及びNb炭窒化物を生成するために必要とされる元素であり、浸炭時のオーステナイト粒の粗大化を防止する効果を有する。0.015重量%未満では結晶粒粗大化防止の効果が乏しい。Nbの添加量を増加するに伴い、結晶粒が粗大化し始める温度も高温になるが、0.060重量%を越えて添加してもその効果が飽和するとともに、析出硬化により硬さが増加し被削性を悪化させるため上限値を0.060重量%に規定した。
[Ti:0.0015~0.050重量%]
Tiは、Nbと同じく鋼中の炭素C及び窒素Nと結合して、Ti炭化物及びTi炭窒化物、あるいはNbTi炭化物及びNbTi炭窒化物を生成するために必要とされる元素であり、浸炭時のオーステナイト粒の粗大化を防止する効果を有する。0.015重量%未満では結晶粒粗大化防止の効果が乏しい。Tiの添加量を増加するに伴い、結晶粒が粗大化し始める温度も高温になるが、0.050重量%を越えて添加してもその効果が飽和するとともに、析出硬化により硬さが増加し被削性を悪化させるため上限値を0.050重量%に規定した。
【0016】
2.鍛造熱処理
図1に、本発明のはだ焼鋼の鍛造熱処理方法の工程を模式的に示す。
【0017】
2.1 本製造方法の構成
本発明は(1)熱間鍛造、(2)制御冷却、(3)保定炉装入、(4)保定処理の4つの工程で構成される。
以下に工程ごとに定める製造条件についてその制約内容を説明する。
【0018】
(1)熱間鍛造
(a)昇温時間
熱間鍛造する場合、例えば、高周波加熱で素材鋼を室温から所定の温度に加熱して鍛造するが、10~120秒の昇温時間で行うのが一般である。装置の能力及び素材の大きさにより変化するために、ここでは目安のみ記載する。
(b)加熱温度(1100~1280℃)
鍛造荷重を考慮すると、1100℃以上に加熱することが好ましいが、1280℃を超えて加熱してもその効果は飽和するばかりか脱炭やバーニングの可能性も排除できないので、1100~1280℃とした。
(c)鍛造温度(950~1200℃)
熱間鍛造は熱間で成形加工をすることと、組織の細粒化を目的に実施することが多い。鍛造組織の細粒化には、加工による再結晶を活用して行うが950℃以上で行うのが好ましい。また、950℃以下の温度で熱間鍛造を行う場合、添加元素によっては(i)未再結晶域加工となる場合があるので細粒化できない場合がある、また(ii)このような低温γ域での加工は AlN、Nb(CN)、NbTi(CN)等の析出物を比較的大きく加工誘起析出させてしまうので、Al、Nb、Ti等のマイクロアロイ元素を固溶状態で維持することができなくなり、浸炭時のピン止め効果のある微細な炭窒化物を保定処理時に析出させるために必要なこれら元素の固溶量を維持できなくなる。一方、1200℃を超えて鍛造すると、析出物の析出は伴わないが鍛造後の粒成長が著しく速く、冷却による粒成長抑制効果を発揮することができなくなり、せっかく熱間加工で再結晶させたとしても細粒化できない場合もあるので、鍛造温度は950℃~1200℃とした。
【0019】
(2)制御冷却
(d)冷却速度
鍛造後の組織を細粒化させるために加工による再結晶を活用するが、再結晶させてもその後の粒成長を抑制しないと細粒化できない。そのためには鍛造後極力早いタイミングで1℃/s以上の冷却速度で冷却して粒成長を抑制する必要がある。しかし、30℃/sを超えて冷却してもその効果は飽和するばかりでなく、冷却設備の設備費用が過大になるだけである。よって冷却速度は1~30℃/sの冷却速度とした。また、ピン止め効果により浸炭時のオーステナイト粒の粗粒化を抑制する効果のあるAlN、Nb(CN)、NbTi(CN)等の析出物は鍛造後のγ域で析出してしまうとその効果を失うことがあり、鍛造から極力早いタイミングで冷却してその析出を抑制する必要がある。冷却の回数は1回以上とした。これは冷却と復熱(冷却を中断させることで、鍛造部品の内部の熱により表面側の温度を上昇させること)を活用して厚み方向に形成される温度差を均一にすることを目的としている。このためには、冷却は複数回実施するのが好ましい。さらにいえば、2~3回の冷却が実用上最も好ましい。また、鍛造後の冷却は鍛造部品の温度ばらつきを小さくする効果を有し、鍛造後の冷却過程でのγ/α変態の部位による変態の遅れにより生じる歪を小さくすることができ、結果として浸炭焼入れ歪を小さくできる。
ここで、冷却は、水等の液体、そのミストや気体が用いられる。また、冷却に用いる冷媒には、用途に応じて、潤滑剤、防錆剤等を添加することもできる。
(e)冷却停止温度(600~750℃)
熱間鍛造後に1回以上、好ましくは、複数回の冷却で表面温度と中心温度の温度差を小さくすることにより、保定炉の中での変形を抑制する必要がある。その差が150℃以下であれば保定炉内での変形はないことが確認されている。一方、保定処理は浸炭処理時のオーステナイト粒の粒成長抑制効果のある微細な析出物を事前に析出させることにあり、600℃までの温度に冷却で急冷することがAlやNb、Tiの元素の固溶を維持させるに効果的で、後の保定処理時に微細析出を可能にする。ただし、750℃を超える冷却停止ではこれら元素の固溶は図れるものの、後の保定処理で浸炭処理時のオーステナイト粒の粒成長抑制効果を十分に発揮できる微細析出物の析出を図れない。一方、600℃を大きく下回る冷却停止温度まで冷却する場合は、保定処理温度まで昇温させるのにその分だけ昇温時間が必要となり連続化する意味合いが薄れてしまう。
【0020】
(3)保定炉装入
600~750℃の冷却停止温度に到達次第、保定炉内に鍛造部品を装入する。好ましくは、保定炉への装入温度(ほぼ冷却停止温度)は保定温度より低いことが好ましい。AlN、Nb(CN)、NbTi(CN)等を微細析出させるには、恒温処理よりも昇温後保定する方が微細析出には適している。装入温度は550~700℃の範囲で行うのが好ましい。
【0021】
(4)保定処理
600~700℃で15~60min.の保定処理を行うのは、この温度域では(i)鍛造部品に残る残留応力の開放効果があること、(ii)後の浸炭処理時のオーステナイト粒の粒成長抑制効果のある微細なAlN、Nb(CN)、NbTi(CN)等の析出物を微細析出させる効果があること、(iii)十分な軟化効果があること、により目標の冷却停止温度に到達次第保定炉に装入し、所定の温度と時間、保定処理を行うこととした。ただし、この場合、鍛造部品の炉出しは炉冷後実施してもよいし、空冷として所定の温度で所定時間の処理後そのまま炉出ししてもよい。
【実施例0022】
以下、より具体的な実施例を示しながら本発明の効果を説明する。
【0023】
表1に、実証試験に使用した素材鋼の化学成分を示す。
【0024】
【0025】
素材鋼は、真空溶解炉を用いて溶解し、鋳型に鋳込んだ後、型抜きして熱間鍛造により直径80mmの丸棒に加工した。その後、ピーリング加工により直径70mmの丸棒に皮剥きして、本発明の効果を実証するための試作に用いた。
【0026】
表2に、具体的な鍛造熱処理試作例を示す。
【0027】
【0028】
本発明は、(1)熱間鍛造、(2)制御冷却、(3)保定炉装入、(4)保定処理の4
つの工程で構成されるので、それぞれの項目に具体的な実施条件を記載した。
また、相対比較を可能とするために、本試作は直径70mm、長さ130mmの素材鋼を用い、表2に示す条件で直径52mmの丸鋼に鍛造熱処理した後、旋盤で直径50mm、長さ250mmの試験片に加工し、浸炭焼入れを実施し、消費エネルギ、浸炭歪、結晶粒粗大化、切削性を評価した。
ここで、浸炭焼入れは、Cp=1.1の雰囲気で950℃×6時間浸炭処理し、Cp=0.80の雰囲気で850℃×30min.拡散処理した後、140℃の油焼入れした後、180℃×3時間の焼き戻しの条件で実施した。
また、(i)消費エネルギの評価は熱間鍛造後焼準処理を実施して浸炭処理をする場合の生産トン当たりの消費エネルギを100%(浸炭処理の消費エネルギは除く。)とし、本試作で消費した当該消費エネルギを求めてパーセント表示した。(ii)浸炭ひずみの評価は、浸炭焼入れした試験片の両端をセンターリングした後、回転させながら長手方向の中央部の振れを測定し評価した。具体的にはN数20本で測定した振れの平均値(μm)+3σの値が、100μm以下を合格(○)とし、150μmを超える場合を不合格(×)とした。100~150μmは同等(-)とした。(iii)結晶粒粗大化の評価については、JIS G 0551鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法に規定される「混粒」を判断基準とし、粒度番号が3以上異なった結晶粒の面積率が20%以上となった場合に不合格(×)、これ以外を合格(○)とした。(iv)切削性の評価については、直径70mmの丸鋼を表2に示す条件で直径100mm×厚さ35mmのブランクを製造し、荒加工後、超硬ホブカッターで歯数52、ねじれ23°、歯幅35mmの歯車に加工し、その時の工具摩耗量を測定した。超硬ホブカッターでの加工条件は、速度200m/min.、送り2.4mm/rev.、ドライカット。切削性の評価は、鍛造後に焼準処理(920℃×70min.空冷)して同様の加工を行った場合に比較して摩耗量が小さいものを合格(○)、大きいものを不合格(×)、同等のものは(-)とした。評価結果を表2に記載する。
【0029】
表2について、以下説明をする。
表2(a)に本発明の実施例を、表2(b)に比較例を示す。表2(b)の比較例の試作番号1に示すのは、供試鋼4を用いて鍛造後焼準処理を実施して浸炭焼入れした例であり、従来から行われてきた製造方法である。これをベースに表2(a)の本発明の実施例を最初に説明する。本発明の実施例に用いているのは、浸炭時の粗粒化を配慮した成分系である供試鋼2、4、5、6である。ここで、供試鋼1は一般的な炭素鋼であり、供試鋼3はクロム鋼である。本発明の方法に従って製造すれば、表2(a)の実施例の評価結果に示すように消費エネルギを削減でき、浸炭歪、粗粒化抑制、切削性が改善されることが確認できる。
一方、本発明の方法では、このような効果があった鋼にもかかわらず、試作番号5、11、13、15にあるように、鍛造後冷却を実施しなかったり(5、11、15)、冷却停止温度が外れていたり(11、15)すると、浸炭歪が劣ったり(5、11)あるいは改善しなかったり(11、13)する。すなわち、これらの試作結果は、本発明の方法の有効性を示すものである。一方、浸炭時の粗粒化を配慮していない鋼(供試鋼1、3)で試作した場合(16、17)は、浸炭歪も粗粒化も目標を達成することができていない。従来より議論されているように、はだ焼鋼は基本的には浸炭時の粗粒化に配慮した成分系とする必要があり、成分系の配慮された鋼で本発明方法での製造が有効であることはいうまでもない。ここで、試作番号4は鍛造なしのため比較例に分類した。
【0030】
以上、本発明のはだ焼鋼の鍛造熱処理方法について、その実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。