(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011563
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】電池用導電部材とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/505 20210101AFI20240118BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20240118BHJP
H01M 50/528 20210101ALI20240118BHJP
H01M 50/526 20210101ALI20240118BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20240118BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20240118BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240118BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20240118BHJP
H01M 50/566 20210101ALI20240118BHJP
H01G 11/76 20130101ALI20240118BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240118BHJP
H01M 50/51 20210101ALN20240118BHJP
【FI】
H01M50/505
H01M50/503
H01M50/528
H01M50/526
H01M50/533
H01M50/534
H01M50/55 101
H01M50/557
H01M50/566
H01G11/76
H01G11/84
H01M50/51
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113655
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
【テーマコード(参考)】
5E078
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AB02
5E078BA18
5E078BA26
5E078BA27
5E078CA06
5E078CA14
5E078DA03
5E078DA06
5E078DA11
5E078FA02
5E078FA12
5E078FA13
5E078HA04
5E078HA05
5E078HA12
5E078JA02
5E078JA04
5E078JA07
5E078JA12
5E078LA08
5H043AA03
5H043AA13
5H043AA19
5H043BA16
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA12
5H043CA13
5H043DA01
5H043DA13
5H043DA14
5H043DA16
5H043DA20
5H043EA11
5H043EA15
5H043EA18
5H043EA19
5H043EA60
5H043FA04
5H043FA22
5H043FA26
5H043HA08F
5H043HA16F
5H043HA25F
5H043HA36F
5H043JA01F
5H043JA22F
5H043KA06D
5H043KA06E
5H043KA06F
5H043KA07D
5H043KA07E
5H043KA07F
5H043KA08E
5H043KA08F
5H043KA09D
5H043KA09F
(57)【要約】
【課題】導通信頼性に優れた電池用導電部材とその製造方法を提供する。
【解決手段】ここで開示される電池用導電部材の製造方法は、次の工程:(1)第2金属部材92Xにプロジェクション92pを形成するプロジェクション形成工程;(2)かしめ装置300のダイ310の凹部312の上に第1金属部材91Xを載置し、その上に第2金属部材92Xのプロジェクション92pを形成した部分を重ねた後、ダイ310の凹部312にポンチ320を圧入し、プロジェクション92pを第1金属部材91Xに押し付けながら電流供給部330でダイ310とポンチ320とに溶接電流を流すことにより抵抗溶接部を形成すると共に、第1金属部材91Xと第2金属部材92Xとを塑性変形させて上記抵抗溶接部の周囲にかしめ接合部を形成する接合工程;を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部分を有する第1金属部材と、板状部分を有する第2金属部材とを準備し、前記第2金属部材の前記板状部分にプロジェクションを形成するプロジェクション形成工程と、
凹部を有するダイと、前記凹部に圧入されるポンチと、前記ダイおよび前記ポンチに溶接電流を流す電流供給部とを備えるかしめ装置を準備し、前記ダイの前記凹部の上に前記第1金属部材の前記板状部分を載置し、その上に前記第2金属部材の前記プロジェクションを形成した部分を重ねた後、前記ダイの前記凹部に前記ポンチを圧入し、前記プロジェクションを前記第1金属部材に押し付けながら前記電流供給部で前記ダイと前記ポンチとに溶接電流を流すことにより抵抗溶接部を形成すると共に、前記第1金属部材と前記第2金属部材とを塑性変形させて前記抵抗溶接部の周囲にかしめ接合部を形成する接合工程と、を含む、
電池用導電部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1金属部材と前記第2金属部材とが異種金属から構成されている、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記電池用導電部材が、前記第1金属部材と前記第2金属部材との2部材で構成される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記接合工程において、複数の前記抵抗溶接部および複数の前記かしめ接合部を一度に形成する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記電池用導電部材がバスバーである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記電池用導電部材が電池の端子である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
板状部分を有する第1金属部材と、
板状部分を有する第2金属部材と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との接合部と、
を備え、
前記接合部は、
前記第1金属部材と前記第2金属部材とを抵抗溶接してなる抵抗溶接部と、
前記抵抗溶接部の周囲に設けられ、前記第1金属部材の前記板状部分と前記第2金属部材の前記板状部分とを塑性変形してなるかしめ接合部と、を有する、
電池用導電部材。
【請求項8】
前記第1金属部材と前記第2金属部材とが異種金属から構成されている、請求項7に記載の電池用導電部材。
【請求項9】
前記電池用導電部材が、前記第1金属部材と前記第2金属部材との2部材で構成されている、請求項7または8に記載の電池用導電部材。
【請求項10】
前記接合部が複数であり、複数の前記接合部が所定の方向に並んで設けられている、請求項7または8に記載の電池用導電部材。
【請求項11】
前記電池用導電部材がバスバーである、請求項7または8に記載の電池用導電部材。
【請求項12】
前記電池用導電部材が電池の端子である、請求項7または8に記載の電池用導電部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用導電部材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池用の導電部材として、複数の部材を接合してなる接合体が用いられている。これに関連する従来技術文献として、特許文献1,2が挙げられる。例えば特許文献1には、電極体の集電箔積層部と集電板とをかしめ加工した後、抵抗溶接することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-5456号公報
【特許文献2】特開平3-216282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1に倣って、かしめ加工の後に抵抗溶接を行う場合、集電箔積層部と集電板との接触面積が大きくなり、抵抗溶接の際に電流が発散してしまう。そのため、電流パスが複数個所に点在して、ナゲット(抵抗溶接部)の強度が弱くなってしまう。また、ナゲットの強度を高めようとして大電流を流すと、ナゲットの脆性が高くなってしまう。その結果、電池の使用時に外部から振動や衝撃等の外力が加わった際にナゲットが破壊されて、導通接続が不安定になったり接続不良となったりする虞がある。したがって、導通信頼性の高い電池用導電部材が求められている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、導通信頼性に優れた電池用導電部材とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、次の工程:板状部分を有する第1金属部材と、板状部分を有する第2金属部材とを準備し、上記第2金属部材の上記板状部分にプロジェクションを形成するプロジェクション形成工程;凹部を有するダイと、上記凹部に圧入されるポンチと、上記ダイおよび上記ポンチに溶接電流を流す電流供給部とを備えるかしめ装置を準備し、上記ダイの上記凹部の上に上記第1金属部材の上記板状部分を載置し、その上に上記第2金属部材の上記プロジェクションを形成した部分を重ねた後、上記ダイの上記凹部に上記ポンチを圧入し、上記プロジェクションを上記第1金属部材に押し付けながら上記電流供給部で上記ダイと上記ポンチとに溶接電流を流すことにより抵抗溶接部を形成すると共に、上記第1金属部材と上記第2金属部材とを塑性変形させて上記抵抗溶接部の周囲にかしめ接合部を形成する接合工程;を含む、電池用導電部材の製造方法が提供される。
【0007】
本発明では、一方の金属部材にプロジェクション(突起)を形成した後、2つの金属部材に対して溶接電流を流しながらかしめ加工を行う。このことにより、例えば特許文献1のようにかしめ加工の後に抵抗溶接を行う場合と比べて、プロジェクションに溶接電流を集中させることができ、相対的に大きなナゲットを形成できる。したがって、溶接電流が相対的に小さくて済み、機械的強度の高い良質な抵抗溶接部を形成できる。また、本発明では、抵抗溶接部の周囲に塑性変形部が形成されるため、外部から振動や衝撃等の応力が加わっても、抵抗溶接部に力が加わりにくくなる。そのため、第1金属部材と第2金属部材とが密接した状態を維持しやすくなる。以上のような効果で、第1金属部材と第2金属部材との導通接続を安定して保つことができ、導通信頼性を向上できる。
【0008】
本発明により、板状部分を有する第1金属部材と、板状部分を有する第2金属部材と、上記第1金属部材と上記第2金属部材との接合部と、を備える電池用導電部材が提供される。上記接合部は、上記第1金属部材と上記第2金属部材とを抵抗溶接してなる抵抗溶接部と、上記抵抗溶接部の周囲に設けられ、上記第1金属部材の上記板状部分と上記第2金属部材の上記板状部分とを塑性変形してなるかしめ接合部と、を有する。
【0009】
本発明に係る電池用導電部材は、接合方法の異なる2種類の接合部、すなわち、抵抗溶接部と、かしめ接合部と、を備えている。抵抗溶接部は、塑性変形部よりも相対的に剛性が低い接合部であり得る。このような抵抗溶接部を塑性変形部の内側に配することで、外部から振動や衝撃等の応力が加わっても、抵抗溶接部に力が加わりにくくなる。そのため、第1金属部材と第2金属部材とが密接した状態を維持しやすくなる。このような構成により、第1金属部材と第2金属部材との導通接続を安定して保つことができ、長期にわたって導通信頼性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る組電池を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6(1)、(2)は、
図1のバスバーの製造工程を説明する模式図である。
【
図7】
図7(1)は、接合部の断面SEM観察画像であり、
図7(2)は、(1)の要部を拡大した断面SEM観察画像である。
【
図8】
図8(1)、(2)は、変形例に係る製造工程を説明する
図6対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない組電池および電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0012】
<組電池100>
図1は、組電池100の斜視図である。組電池100は、複数の電池10と、複数の電池10を相互に電気的に接続する複数のバスバー90と、を備えている。バスバー90は、複数の電池10の端子間を接続する導電性の連結部材である。組電池100に用いられるバスバー90の個数は、典型的には(電池の個数-1)個である。バスバー90は、ここに開示される「電池用導電部材」の一例である。
【0013】
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、以下の図面において、符号U、D、F、Rr、L、Rは、それぞれ上、下、前、後、左、右を表し、符号Xは、電池10の長辺に沿う延伸方向、符号Yは、符号Xと直交する電池10の配列方向、符号Zは、電池10の高さ方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、組電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0014】
複数の電池10は、いずれも扁平な角型であり、ここでは同一形状である。複数の電池10は、一対の平坦な側面(幅広面)が相互に対向するように、配列方向Yに沿って一列に並んでいる。なお、複数の電池10は、拘束バンド等の拘束機構によって一体的に保持されていてもよい。複数の電池10は、バスバー90によってここでは直列に電気接続されている。ただし、組電池100を構成する電池10の形状やサイズ、個数、配置、接続方法等は特に限定されず、適宜変更することができる。また、複数の電池10の間には、例えば、電池10で発生する熱を効率よく放散させるための放熱部材や、長さ調整手段としてのスペーサ等が配置されていてもよい。
【0015】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して正極と負極の間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般をいう。電解質は、液状電解質(電解液)、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよい。二次電池は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する。
【0016】
図2は、電池10の縦断面図である。電池10は、電極体20と、電池ケース30と、正極端子40と、負極端子50と、を備えている。図示は省略するが、電池10は、ここではさらに電解質を備えている。電池10は、電池ケース30に電極体20と電解質とが収容されて構成されている。電池10は、典型的には二次電池であり、ここではリチウムイオン二次電池である。電池10の構成は従来と同様でよく、特に限定されない。
【0017】
電極体20は、ここでは帯状の正極21と帯状の負極22とが2枚の帯状のセパレータ23、24を介して積層され、長手方向に捲回されてなる捲回電極体である。ただし、電極体20は、方形状の正極と方形状の負極とが絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。
【0018】
正極21は、箔状の正極集電体21aと、正極集電体21a上に固着された正極合剤層21bと、を有する。正極集電体21aは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電体21aは、ここではアルミニウム製である。正極合剤層21bは、電荷担体を可逆的に吸蔵及び放出可能な正極活物質(例えば、リチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。また、延伸方向Xにおける電極体20の一方の側縁部(
図2の左側の側縁部)には、正極合剤層21bが形成されずに正極集電体21aが露出した正極タブ部21cが設けられている。
【0019】
負極22は、箔状の負極集電体22aと、負極集電体22a上に固着された負極合剤層22bと、を有する。負極集電体22aは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体22aは、正極集電体21aと異なる金属種からなっている。負極集電体22aは、ここでは銅製である。負極合剤層22bは、電荷担体を可逆的に吸蔵及び放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。また、延伸方向Xにおける電極体20の他方の側縁部(
図2の右側の側縁部)には、負極合剤層22bが形成されずに負極集電体22aが露出した負極タブ部22cが設けられている。
【0020】
セパレータ23、24は、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁性の樹脂シートである。電解質は、例えば、非水溶媒とリチウム塩等の支持塩とを含む非水電解液である。ただし、電解質は固体状(固体電解質)で、正極21および負極22と一体化されていてもよい。この場合、電極体20は、セパレータ23、24を有していなくてもよい。
【0021】
電池ケース30は、電極体20を収容する筐体である。電池ケース30は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)に形成されている。ただし、他の実施形態において、電池ケース30は、円柱等の任意の形状であってよい。電池ケース30は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の軽量で熱伝導性の良い金属材料で構成されている。電池ケース30は、上面に開口部を有する角型のケース本体32と、ケース本体32の開口部を塞ぐ板状の蓋体34と、を備えている。蓋体34には、正極端子40と負極端子50が付設されている。正極端子40と負極端子50は、延伸方向Xにおいて、電池10の左右の両端部にそれぞれ配置されている。電池10は、正極端子40と負極端子50を介して充放電される。
【0022】
正極端子40は、正極21と電気的に接続されている。正極端子40は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の金属製である。正極端子40は、正極集電体21aと同じ金属種からなっていてもよい。正極端子40は、ここではアルミニウム製である。正極端子40は、高さ方向Zに沿って延びる正極内部端子42と、蓋体34の上面に沿って延びる板状の正極外部端子44と、を有する。正極内部端子42は、蓋体34を貫通して電池ケース30の外部に露出した上端部42aと、電池ケース30の内部で正極21(具体的には、正極タブ部21c)に接続した下端部42bと、を有する。正極外部端子44は、電池ケース30の外部で正極内部端子42の上端部42aと接続されている。蓋体34と正極外部端子44との間には、絶縁部材46が配置され、蓋体34と正極外部端子44との直接接触が防止されている。
【0023】
負極端子50は、負極22と電気的に接続されている。負極端子50は、例えば、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の金属製である。負極端子50は、負極集電体22aと同じ金属種からなっていてもよい。負極端子50は、ここでは銅製である。負極端子50は、高さ方向Zに沿って延びる負極内部端子52と、蓋体34の上面に沿って延びる板状の負極外部端子54と、を有する。負極内部端子52は、蓋体34を貫通して電池ケース30の外部に露出した上端部52aと、電池ケース30の内部で負極22(具体的には、負極タブ部22c)に接続した下端部52bと、上端部52aと下端部52bとの間に設けられた屈曲部52cと、を有する。負極外部端子54は、電池ケース30の外部で負極内部端子52の上端部52aと接続されている。蓋体34と負極外部端子54との間には、絶縁部材56が配置され、蓋体34と負極外部端子54との直接接触が防止されている。
【0024】
本実施形態では、正極外部端子44および負極外部端子54の上端部が、それぞれ、矩形な平板形状に形成されている。正極外部端子44および負極外部端子54は、それぞれ、蓋体34の上面と平行な平坦面を有する。なお、本実施形態では、正極外部端子44および負極外部端子54は、それぞれ、延伸方向Xの幅が配列方向Yの幅よりも長い。ただし、正極端子40および負極端子50の形状やサイズ、配置等は特に限定されず、適宜変更することができる。
【0025】
バスバー90は、複数の電池10間を電気的に接続するために用いられる導電部材である。バスバー90は、ここでは、配列方向Yに隣り合う第1の電池10の正極端子40と、第2の電池10の負極端子50とを、電気的に接続している。バスバー90は、ここでは、正極端子40および負極端子50の上記平坦面を覆うように配置されている。バスバー90は、例えばレーザ溶接等の従来公知の接合方法によって、正極端子40および負極端子50の上記平坦面に接合されている。上記平坦面とバスバー90とが接続される部分には、図示しない接合部(典型的には溶接接合部)が形成されている。これにより、バスバー90は、正極端子40および負極端子50と一体化されている。
【0026】
図3は、バスバー90の斜視図であり、
図4は、バスバー90の平面図である。
図3、
図4に示すように、バスバー90は、ここでは、第1金属部材91と第2金属部材92との2部材で構成されている。第1金属部材91と第2金属部材92は、複数の(ここでは2つの)接合部95を介して一体化され、相互に電気的に接続されている。複数の接合部95は、それぞれ、かしめ接合部93と抵抗溶接部94とを有する。
【0027】
第1金属部材91は、電池10の正極端子40と導通接続される部材である。第1金属部材91は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。第1金属部材91は、正極端子40と同じ金属種、または同じ金属元素を第1成分(質量比で最も配合割合の高い成分。以下同じ。)とする合金であることが好ましい。第1金属部材91は、ここではアルミニウムを主体として構成されていることが好ましい。第1金属部材91は、ここではアルミニウム製である。第1金属部材91は、例えば一枚の金属板をプレス加工等で屈曲させることにより形成されている。
【0028】
第1金属部材91は、正極端子40と接続される第1接続部91aと、第2金属部材92と接続される第2接続部91bと、第1接続部91aおよび第2接続部91bを連結する連結部91cと、を有する。連結部91cは、配列方向Yに沿って延びている。連結部91cは、ここでは平板状である。ただし、他の実施形態において、連結部91cは、U字状等に屈曲した部分を有していてもよい。第1接続部91aおよび第2接続部91bは、連結部91cの配列方向Yの両端部からそれぞれ延伸方向Xに延びている。
図3に示すように、第1接続部91aおよび第2接続部91bは、外形が略L字状である。
【0029】
第1接続部91aは、正極端子40の上記平坦面に沿う板状部分91a1と、板状部分91a1から連結部91cに延びる延伸部91a2と、を有する。板状部分91a1は、正極端子40と当接する部分である。板状部分91a1の外形は、ここでは略矩形状である。平面視において、板状部分91a1の外形は、正極端子40の上記平坦面の外形と略同じであるか、それよりも小さいとよい。板状部分91a1は、概ね0.01~5mm、例えば0.1~1mm程度の厚みを有する。ただし、板状部分91a1の形状やサイズ、厚みは特に限定されず、適宜変更することができる。
【0030】
板状部分91a1は、高さ方向Zに貫通する貫通孔91hを有する。貫通孔91hは、板状部分91a1の中央部に設けられている。貫通孔91hは、ここでは平面視において略四角形状(例えば略矩形状)に形成されている。貫通孔91hは、正極端子40の上記平坦面に板状部分91a1を溶接接合する位置を示す目安となる。また、溶接接合の際に発生するガスや熱の逃げ道としても機能し得る。
【0031】
第2接続部91bは、平板状の第2金属部材92に沿う板状部分91b1と、板状部分91b1から連結部91cに延びる延伸部91b2と、を有する。板状部分91b1の外形は、ここでは略矩形状である。板状部分91b1の外形は、板状部分91a1と同様であってもよい。平面視において、板状部分91b1の外形は、第2金属部材92の外形と略同じであるか、それよりも小さいとよい。板状部分91b1は、概ね0.01~5mm、例えば0.1~1mm程度の厚みを有する。ただし、板状部分91b1の形状やサイズ、厚みは特に限定されず、適宜変更することができる。
【0032】
板状部分91b1は、高さ方向Zに貫通する窓部91wを有する。窓部91wは、板状部分91b1の中央部に設けられている。延伸方向Xにおいて、窓部91wは、複数のかしめ接合部93の間に位置している。窓部91wは、ここでは平面視において略四角形状(例えば略矩形状)に形成されている。平面視において、窓部91wからは、第2金属部材92が露出している。
【0033】
第2金属部材92は、電池10の負極端子50と導通接続される部材である。第2金属部材92は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。第2金属部材92は、例えば第1成分が、第1金属部材91と同じ金属種であってもよいし、異なる金属種であってもよい。第2金属部材92は、負極端子50と同じ金属種、または同じ金属元素を第1成分とする合金であることが好ましい。第2金属部材92は、ここでは第1金属部材91と異なる金属で構成されている。第2金属部材92は、ここでは銅を主体として構成されていることが好ましい。第2金属部材92は、ここでは銅製である。第2金属部材92は、表面にNi等の金属が被覆された金属被覆部を備えていてもよい。第2金属部材92は、表面にレーザ粗化が施されていてもよい。
【0034】
第2金属部材92は、ここでは平板状である。第2金属部材92は、ここでは板状部分からなっている。第2金属部材92は、一方の面(
図3の上面)が、第1金属部材91の第2接続部91bと当接し、反対の面(
図3の下面)が負極端子50と当接する。第2金属部材92の外形は、ここでは略矩形状である。平面視において、第2金属部材92の外形は、負極端子50の上記平坦面の外形と略同じであるか、それよりも小さいとよい。第2金属部材92は、概ね0.01~5mm、例えば0.1~1mm程度の厚みを有する。ただし、第2金属部材92の形状やサイズ、厚みは特に限定されず、適宜変更することができる。
【0035】
第2金属部材92は、高さ方向Zに貫通する貫通孔92hを有する。貫通孔92hは、第2金属部材92の中央部に設けられている。貫通孔92hは、ここでは平面視において略四角形状(例えば略矩形状)に形成されている。貫通孔92hは、第1金属部材91の貫通孔91hと略同じ大きさである。貫通孔92hは、負極端子50の上記平坦面に第2金属部材92を溶接接合する位置を示す目安となる。また、溶接接合の際に発生するガスや熱の逃げ道としても機能し得る。
【0036】
2つの接合部95は、配列方向Yと直交する延伸方向Xに並んで設けられている。具体的には、2つの接合部95は、延伸方向Xにおいて、第1金属部材91の板状部分91b1の両端部にそれぞれ設けられている。これにより、第1金属部材91と第2金属部材92との接合強度を高めて、導通信頼性を向上できる。2つの接合部95は、平面視において窓部91wの外側に設けられている。2つの接合部95は、延伸方向Xにおいて、窓部91wを挟み込むように設けられている。ただし、他の実施形態において、接合部95の数は、1つであってもよく、3つ以上(例えば4つ)であってもよい。接合部95は、例えば板状部分91b1の4隅に設けられていてもよい。
図5は、
図4のV-V線に沿う接合部95の縦断面図である。
【0037】
かしめ接合部93は、第1金属部材91の板状部分91b1と平板状の第2金属部材92とを塑性変形させることによってかしめ接合してなる接合部である。これにより、例えば第1金属部材91と第2金属部材92とが異種金属で構成されていても、ボルトやリベット等を使用することなく、第1金属部材91と第2金属部材92とを好適に接合できる。また、第3の部材(例えばボルトやリベット等)を使用する場合に比べて、相対的にバスバー90の抵抗を低減できる。
図5に示すように、かしめ接合部93は、抵抗溶接部94の周囲に設けられている。言い換えれば、かしめ接合部93は、抵抗溶接部94を囲むように設けられている。
【0038】
図3に示すように、かしめ接合部93は、第1金属部材91の板状部分91b1から上方に突出している。かしめ接合部93の外形は、ここでは略円柱状である。
図4に示すように、平面視において、かしめ接合部93は略円形状である。ただし、かしめ接合部93は、他の形状、例えば、略四角形状、楕円柱状、円や楕円が2つつながった瓢箪様形状等であってもよい。なお、本明細書において「略四角形状」とは、完全な四角形状(例えば矩形状や正方形状)に加えて、例えば、2辺を接続する角部がR状になっている形状や、角部に切り欠きを有する形状等をも包含する用語である。かしめ接合部93は、ここでは複数(具体的には2つ)である。
【0039】
図5に示すように、かしめ接合部93は、塑性変形部93aと、凸部93bと、ネック部93cと、を有する。塑性変形部93aは、第1金属部材91と第2金属部材92とからなっている。塑性変形部93aでは、第1金属部材91と第2金属部材92とが十分な線長で当接し、インターロックがかかっている。塑性変形部93aは、ネック部93cの外周縁に沿って設けられている。塑性変形部93aは、外形が略円筒状である。塑性変形部93aは、平面視で環状(ここでは略円環状)である。これにより、インターロックの強度を高められる。凸部93bは、第1金属部材91からなっている。凸部93bは、上方に突出している。凸部93bは、平面視で環状(ここでは略円環状)である。ネック部93cは、第2金属部材92からなっている。ネック部93cは、高さ方向Zに沿って延びている。ネック部93cは、外形が略円筒状である。ネック部93cは、かしめ接合部93の内周縁部を構成している。
【0040】
抵抗溶接部94は、第1金属部材91の板状部分91b1と平板状の第2金属部材92とを抵抗溶接してなる接合部である。抵抗溶接部94は、かしめ接合部93に比べて、相対的に剛性が低い(脆い)接合部であり得る。
図5に示すように、抵抗溶接部94は、かしめ接合部93の内側(詳しくは、円環状の塑性変形部93aの内側)に設けられている。具体的には、円環状の塑性変形部93aの中心部に設けられている。これにより、接合部95(特には抵抗溶接部94)を安定して維持し、長期にわたって導通信頼性を高めることができる。
【0041】
図4に示すように、抵抗溶接部94は、ここでは2つのかしめ接合部93の内側にそれぞれ設けられている。抵抗溶接部94は、かしめ接合部93と同数である。抵抗溶接部94は、複数(具体的には2つ)である。延伸方向Xにおいて、2つの抵抗溶接部94は、ここでは第1金属部材91の板状部分91b1の両端部に設けられている。これにより、抵抗溶接部94の形成時(抵抗溶接時)に発生し得るガスや熱を逃がしやすくなり、接合不良(例えば、溶接不良)の発生を抑制できる。
【0042】
<バスバー90の製造方法>
バスバー90は、例えば、(1)プロジェクション形成工程と、(2)接合工程とを、この順序で含む製造方法によって製造することができる。なお以下では、接合部95を形成する前の(接合工程の前の)第1金属部材91および第2金属部材92を、形成後のものと区別して、第1金属部材91Xおよび第2金属部材92Xという。また、ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。
図6は、バスバー90の製造方法を説明する模式図である。
【0043】
(1)プロジェクション形成工程は、板状部分を有する第1金属部材91Xおよび板状部分を有する第2金属部材92Xを準備し、第2金属部材92Xの板状部分にプロジェクション(突起)92pを形成する工程である。なお、本工程は必須ではなく、例えば第2金属部材92Xに初めからある突起を利用して次の工程、すなわち(2)接合工程を行う場合等には、本工程を省略することもできる。
【0044】
プロジェクション92pの形成方法は、従来と同様であってよく、特に限定されない。一例では、第1金属部材91の板状部分をプレス加工することで板状部分一部を隆起させ、所定の形状のプロジェクション92pを形成する。この場合、例えばまず、
図6(1)に示すようなプレス用の金型200を準備する。金型200は、緩やかかに湾曲した形状のプロジェクション92pを成形する、いわゆる張出し成形を行うためのものである。金型200は、凹部212を有するダイ210と、凹部212に圧入される凸部222を有するポンチ220と、を備えている。ポンチ220は、ダイ210に近づく方向とダイ210から遠ざかる方向と(
図6(1)の高さ方向Z)に移動可能に構成されている。凸部222の外形は、ここでは円形ドーム状である。
【0045】
図6(1)に示すように、本工程では、ダイ210とポンチ220との間に第2金属部材92Xの板状部分を載置し、矢印で示すプレス方向P(ここでは、鉛直下方)にポンチ220を移動させることで第2金属部材92Xをプレスする。これにより、第2金属部材92X一部が凸部222に押し付けられ、凹部212の内部に向かって隆起するように押し出される。これにより、第2金属部材92Xの板状部分が凸部222に倣う形状(ここでは円形ドーム状)に成形され、プロジェクション92pが形成される。なお、第2金属部材92Xは、典型的には板状部分の厚みが略一定のままで変形する。プロジェクション92pは、第2金属部材92Xが緩やかに湾曲した形状である。
【0046】
(2)接合工程は、第1金属部材91Xと第2金属部材92Xとを接合する工程である。より詳しくは、第1金属部材91Xと第2金属部材92Xとの間に、かしめ接合部93(詳しくは塑性変形部93a)と抵抗溶接部94とを略同時に形成する工程である。具体的には、まず、かしめ装置を準備する。かしめ装置は、従来公知のものを使用できる。一例では、
図6(2)に示すようなかしめ装置300を準備する。かしめ装置300は、凹部312を有するダイ310と、凹部312に圧入されるポンチ320と、ダイ310およびポンチ320に溶接電流を流す電流供給部330と、を備えている。
【0047】
ダイ310およびポンチ320は、ここでは金属製である。ダイ310およびポンチ320としては、従来公知のTOX(商標)かしめで使用されている市販のツールを使用可能である。ダイ310の凹部312の開口は、第2金属部材92Xのプロジェクション92pの外形よりも大きい。凹部312は、プロジェクション92pを収容可能に形成されている。凹部312の外形は、略円筒形状である。凹部312の直径は、プロジェクション92pの直径の概ね3倍以上、例えば3倍以上、4倍以上であるとよい。特に限定されるものではないが、凹部312の直径は、1.5~5.0mmであることが好ましい。凹部312の下面には、円環状の溝部312aが形成されている。
【0048】
ポンチ320は、ダイ310に近づく方向とダイ310から遠ざかる方向と(
図6(2)の高さ方向Z)に移動可能に構成されている。ポンチ320の外形は、ここでは円筒形状である。ポンチ320の直径は、ダイ310の凹部312よりも小さい。ポンチ320の直径は、ダイ310の凹部312よりも概ね0.5mm以上、例えば1mm以上小さいことが好ましい。特に限定されるものではないが、ポンチ320の直径は、1.0~4.0mmであることが好ましい。
【0049】
電流供給部330は、プロジェクション溶接(詳しくは、エンボスプロジェクション溶接)を行うための機構である。電流供給部330の構成は、従来と同様であってよい。電流供給部330は、コンデンサ式であってもよく、インバータ式であってもよい。電流供給部330は、ここでは、入力端子332と、1次巻線334aおよび2次巻線334bを有する溶接トランス334と、一対の電極チップ336と、第1回路337と、第2回路338と、を備えている。入力端子332は、直流電源または交流電源に接続され、溶接トランス334に電力を供給するように構成されている。溶接トランス334は、例えばインバータ回路の出力によって駆動され、一対の電極チップ336に溶接電流を出力するように構成されている。第1回路337は、溶接トランス334の2次巻線334bの一端とダイ310とを接続する回路である。第2回路338は、溶接トランス334の2次巻線334bの他端とポンチ320とを接続する回路である。
【0050】
図6(2)に示すように、本工程では、ダイ310とポンチ320との間に第1金属部材91Xと第2金属部材92Xとを載置して、矢印で示すプレス方向P(ここでは、鉛直下方)にポンチ320を移動させて、ダイ310の凹部312にポンチ320を圧入する。特に限定されるものではないが、圧入時の圧力は、500~2500Nとすることが好ましい。これにより、接合強度の高いかしめ接合部93を安定して形成できる。
【0051】
このとき、プロジェクション92pを第1金属部材91Xに押し付けながら電流供給部330でダイ310とポンチ320とに溶接電流を流すことにより、プロジェクション92pが溶融してナゲットNが形成される。ナゲットNは、ポンチ320を押し込んでいくにつれてプロジェクション92pの頂点を中心として、円環状に広がる。これにより、第1金属部材91Xとプロジェクション92pとの界面に抵抗溶接部94が形成される。そのため、抵抗溶接部94は、断面視において、中心部分の厚みが最も厚く、外縁に向かうにつれて漸次厚みが薄くなるように形成されうる。
【0052】
また、TOX(商標)かしめにより、第1金属部材91と第2金属部材92とがポンチ320で凹部312に押し込まれる。これにより、第1金属部材91Xが溝部312aに充填されて凸部93bが形成される。さらに加圧を続けると、第1金属部材91の内側で第2金属部材92が外側に向かって広がり、第1金属部材91Xおよび第2金属部材92Xが、凹部312とポンチ320とで形成される空間の形状に倣って塑性変形される。これにより、抵抗溶接部94の周囲に環状(ここでは円環状)のネック部93cおよび塑性変形部93aを有するかしめ接合部93が形成される。言い換えれば、抵抗溶接部94は、かしめ接合部93の円環状の塑性変形部93aの内側、好ましくは塑性変形部93aの中心部に形成される。
【0053】
図7(1)は、
図5の接合部95に対応する断面SEM観察画像である。
図7(2)は、(1)の要部、詳しくは、抵抗溶接部94を拡大した断面SEM観察画像である。
図7(2)に示すように、抵抗溶接部94は、第1金属部材91と第2金属部材92との界面に形成されている。抵抗溶接部94では、第1金属部材91の金属種と第2金属部材92の金属種とが混在している。なお、
図7(1)、(2)では、
図5と上下の向きが反転している。
【0054】
以上のように、本実施形態では、まず第2金属部材92Xにプロジェクション(突起)92pを形成し、次いで溶接電流を流しながらかしめ加工(ここでは、TOX(商標)かしめ)を行う。このことにより、プロジェクション92pに溶接電流を集中させることができ、プロジェクション92pを中心として大きなナゲットを形成できる。したがって、大電流を流す必要がなく、機械的強度の高い良質な抵抗溶接部94を形成できる。
【0055】
また、第1金属部材91Xと第2金属部材92Xとを挟み込んで圧縮することによって、環状の塑性変形部93aが形成される。このため、第1金属部材91Xと第2金属部材92Xとが異種金属で構成されていても好適に接合できる。また、TOX(商標)かしめによれば、第2金属部材92Xの表面に施されたニッケルメッキが剥がれにくく、組電池100の製造時に第2金属部材92を安定してバスバー90と溶接できる。
【0056】
さらに、抵抗溶接部94は、電気抵抗により発生した熱(ジュール熱)を利用した冶金的な接合部であるため、かしめ接合部93に比べて相対的に強度が低い(脆い)接合部でありうる。このような抵抗溶接部94をかしめ接合部93の内周側に配設することで、抵抗溶接部94を安定して維持できる。したがって、外部から振動や衝撃等の応力が加わっても、抵抗溶接部94に力が加わりにくくなり、長期にわたって第1金属部材91と第2金属部材92とが密接した状態を維持しやすくなる。その結果、導通信頼性を高めることができる。
【0057】
<組電池100の製造方法>
組電池100は、例えば、上記したような複数の電池10と、バスバー90と、を用意し、一方の電池10の正極端子40と、他方の電池10の負極端子50とを、バスバー90を介して電気的に接続することで作製できる。詳しくは、まず一方の電池10の正極端子40の平坦面の上に、バスバー90の板状部分91a1を載置し、貫通孔91hで位置合わせをしたら、バスバー90の板状部分91a1と正極端子40とをレーザ溶接する。同様に、他方の電池10の負極端子50の平坦面の上に、バスバー90の板状部分91b1および第2金属部材92を載置し、貫通孔92hで位置合わせをしたら、板状部分91b1に開けられた窓部91wから露出している第2金属部材92と負極端子50とをレーザ溶接する。第2金属部材92と負極端子50とをレーザ溶接する場合、レーザの波長は、540nm以下とするとよい。これにより、溶接性を向上できる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0059】
<変形例1>
例えば、上記した実施形態では、
図6(1)、(2)に示すように、(1)プロジェクション形成工程で、第2金属部材92Xの板状部分に1つのプロジェクション(突起)92pを形成した後、(2)接合工程で、第1金属部材91Xと第2金属部材92Xとを1箇所接合するものであった。しかし、これには限定されない。
図8(1)、(2)は、変形例に係る
図6(1)、(2)対応図である。本変形例では、複数個所(ここでは2個所)に略同時に接合部95を形成できる。本変形例は、例えば
図3のように、接合部95を複数備える電池用導電部材を製造する際に特に有効である。
【0060】
(1)プロジェクション形成工程では、
図8(1)に示すように、複数個(ここでは2個)の金型200を準備し、延伸方向Xに所定の間隔をあけて配置する。そして、第2金属部材92Xの板状部分を複数個所でプレスすることにより、略同時に複数個(ここでは2個)のプロジェクション92pを形成する。これにより、本工程に要する時間を短縮して、作業効率を高めることができる。また、複数のプロジェクション92pの間を所定の間隔に維持することができ、加工誤差を抑えられる。
【0061】
(2)接合工程では、
図8(2)に示すように、かしめ装置400を準備する。かしめ装置400は、複数(ここでは2つ)の凹部412、414を有する1つのダイ410と、複数の凹部412、414にそれぞれ圧入される複数のポンチ420a、420bと、ダイ410およびポンチ420a、420bに溶接電流を流す電流供給部430と、を備えている。なお、ここでは2つの凹部412、414が同形状、同サイズであるが、形状またはサイズが相互に異なっていてもよい。
【0062】
電流供給部430は、入力端子432と、1次巻線434aおよび2次巻線434bを有する溶接トランス434と、ポンチ420a、420bに取り付けられた一対の電極チップ436と、2次巻線434bの一端と第1のポンチ420aとを接続する第1回路437と、2次巻線434bの他端と第2のポンチ420bとを接続する第2回路438と、を備えている。本工程では、複数のポンチ420a、420bに電流供給部430で溶接電流を流すことにより、第2金属部材92Xと第1金属部材91Xとダイ410とを介して導通経路が形成され、複数のナゲットNを略同時に形成できる。これにより、本工程に要する時間を短縮して、作業効率や生産性を高めることができる。
【0063】
<変形例2>
例えば、上記した実施形態では、電池用導電部材がバスバー90であった。しかし、これには限定されない。電池用導電部材は、例えば
図2の電池10を構成する負極端子50や負極内部端子52であってもよい。具体的には、例えば、負極内部端子52と負極外部端子54とが異なる金属材料(異種金属材料)によって構成されている場合、負極内部端子52と負極外部端子54との接続部分に、ここに開示される接合部、すなわち、かしめ接合部および抵抗溶接部が形成されていてもよい。この場合、例えば、負極内部端子52が第2金属部材、負極外部端子54が第1金属部材として把握されうる。負極内部端子52は銅を主体とする金属材料によって構成され、負極外部端子54はアルミニウムを主体とする金属材料によって構成されていてもよい。
【0064】
また、例えば、負極内部端子52の上端部52aと下端部52bとが異なる金属材料(異種金属材料)によって構成されている場合、上端部52aと下端部52bとの接続部分、あるいは屈曲部52cの付近に、ここに開示される接合部、すなわち、かしめ接合部および抵抗溶接部が形成されていてもよい。この場合、例えば、上端部52aが第1金属部材、下端部52bが第2金属部材として把握されうる。上端部52aはアルミニウムを主体とする金属材料によって構成され、下端部52bは銅を主体とする金属材料によって構成されていてもよい。
【0065】
<組電池100の用途>
組電池100は各種用途に利用可能であるが、使用時に振動や衝撃等の外力が加わり得る用途、典型的には、各種の車両、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0066】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:板状部分を有する第1金属部材と、板状部分を有する第2金属部材とを準備し、上記第2金属部材の上記板状部分にプロジェクションを形成するプロジェクション形成工程と、凹部を有するダイと、上記凹部に圧入されるポンチと、上記ダイおよび上記ポンチに溶接電流を流す電流供給部とを備えるかしめ装置を準備し、上記ダイの上記凹部の上に上記第1金属部材の上記板状部分を載置し、その上に上記第2金属部材の上記プロジェクションを形成した部分を重ねた後、上記ダイの上記凹部に上記ポンチを圧入し、上記プロジェクションを上記第1金属部材に押し付けながら上記電流供給部で上記ダイと上記ポンチとに溶接電流を流すことにより抵抗溶接部を形成すると共に、上記第1金属部材と上記第2金属部材とを塑性変形させて上記抵抗溶接部の周囲にかしめ接合部を形成する接合工程と、を含む、電池用導電部材の製造方法。
項2:上記第1金属部材と上記第2金属部材とが異種金属から構成されている、項1に記載の製造方法。
項3:上記電池用導電部材が、上記第1金属部材と上記第2金属部材との2部材で構成される、項1または項2に記載の製造方法。
項4:上記接合工程において、複数の上記抵抗溶接部および複数の上記かしめ接合部を一度に形成する、項1~項3のいずれか一つに記載の製造方法。
項5:上記電池用導電部材がバスバーである、項1~項4のいずれか一つに記載の製造方法。
項6:上記電池用導電部材が電池の端子である、項1~項4のいずれか一つに記載の製造方法。
項7:板状部分を有する第1金属部材と、板状部分を有する第2金属部材と、上記第1金属部材と上記第2金属部材との接合部と、を備え、上記接合部は、上記第1金属部材と上記第2金属部材とを抵抗溶接してなる抵抗溶接部と、上記抵抗溶接部の周囲に設けられ、上記第1金属部材の上記板状部分と上記第2金属部材の上記板状部分とを塑性変形してなるかしめ接合部と、を有する、電池用導電部材。
項8:上記第1金属部材と上記第2金属部材とが異種金属から構成されている、項7に記載の電池用導電部材。
項9:上記電池用導電部材が、上記第1金属部材と上記第2金属部材との2部材で構成されている、項7または項8に記載の電池用導電部材。
項10:上記接合部が複数であり、複数の上記接合部が所定の方向に並んで設けられている、項7~項9のいずれか一つに記載の電池用導電部材。
項11:上記電池用導電部材がバスバーである、項7~項10のいずれか一つに記載の電池用導電部材。
項12:上記電池用導電部材が電池の端子である、項7~項10のいずれか一つに記載の電池用導電部材。
【符号の説明】
【0067】
10 電池
40 正極端子
50 負極端子
90 バスバー
91 第1金属部材
91a1 板状部分
91a2 延伸部
91b1 板状部分
91b2 延伸部
91h 貫通孔
91w 窓部
92 第2金属部材
92h 貫通孔
93 かしめ接合部
93a 塑性変形部
94 抵抗溶接部
100 組電池
200 プレス用の金型
300、400 かしめ装置
310、410 ダイ
320、420a、420b ポンチ
330、430 電流供給部