(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115632
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/288 20060101AFI20240820BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01L21/288
H01L21/88 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021360
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】514318448
【氏名又は名称】岩津 春生
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】岩津 春生
【テーマコード(参考)】
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104BB04
4M104DD51
4M104HH14
4M104HH16
5F033HH11
5F033PP26
5F033XX03
5F033XX08
(57)【要約】
【課題】半導体デバイスの製造に際して、基板処理を適切に行う。
【解決手段】基板処理方法であって、基板上に供給された処理液に負静電界を形成し、前記処理液中の酸化イオンを前記基板の表面に移動させて所定の処理位置に配置させた後、前記負静電界の形成を停止し、前記酸化イオンを酸化して、前記基板を酸化する酸化工程と、前記処理液に正静電界を形成し、前記処理液中の還元イオンを前記基板の表面に移動させて前記処理位置に配置させた後、前記正静電界の形成を停止し、前記還元イオンを還元する還元工程と、を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理方法であって、
基板上に供給された処理液に負静電界を形成し、前記処理液中の酸化イオンを前記基板の表面に移動させて所定の処理位置に配置させた後、前記負静電界の形成を停止し、前記酸化イオンを酸化して、前記基板を酸化する酸化工程と、
前記処理液に正静電界を形成し、前記処理液中の還元イオンを前記基板の表面に移動させて前記処理位置に配置させた後、前記正静電界の形成を停止し、前記還元イオンを還元する還元工程と、を有することを特徴とする、基板処理方法。
【請求項2】
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、
第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置に結晶核を形成し、
前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置の結晶核に連結して、前記第2の処理位置に結晶核を形成することを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、前記結晶核を所定の粒径に成長させ、
その後、前記還元工程を繰り返し行い、前記結晶核を成長させて配線結晶膜を形成することを特徴とする、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、
第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置にマスクを形成し、
前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に鉛直方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置のマスクに連結して、前記第2の処理位置にマスクを形成し、
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行った後、前記マスクを除去することを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1の酸化工程は複数回行われ、平面視において複数の前記第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第2の酸化工程は複数回行われ、平面視において複数の前記第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングすることを特徴とする、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、
第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置に結晶核を形成し、
前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングするとともに、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第3の処理位置の前記基板を酸化してエッチングして当該第3の処理位置にホールを形成し、
前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置の結晶核に連結して、前記第2の処理位置に結晶核を形成し、
前記第2の酸化工程後の第3の酸化工程において、前記第3の処理位置に水平方向に隣接する第4の処理位置の前記基板を酸化してエッチングして当該第4の処理位置にホールを形成し、
前記第1の処理位置及び前記第2の処理位置の前記結晶核を成長させて配線結晶膜を形成し、
前記第3の処理位置及び前記第4の処理位置の前記ホールを連結して、前記配線結晶膜が形成されていない領域にエアギャップを形成することを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記処理液中に直接電極、露出電極、間接電極及び対向電極を配置する配置工程を有し、
前記直接電極は絶縁膜で覆われ、
前記露出電極は前記直接電極の表面に設けられ、前記処理液に露出し、
前記間接電極は絶縁膜で覆われ、
前記対向電極は絶縁膜で覆われていることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記酸化工程は、
前記間接電極に負極性のパルス電圧を印加して前記処理液に負静電界を形成する充電工程と、
前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記負静電界の形成を停止する放電工程と、を有し、
前記還元工程は、
前記間接電極に正極性のパルス電圧を印加して前記処理液に正静電界を形成する充電工程と、
前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記正静電界の形成を停止する放電工程と、を有することを特徴とする、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記基板にはシード膜が形成されていないことを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項10】
基板処理装置であって、
基板上に供給された処理液に正静電界又は負静電界を形成する静電界形成部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記処理液に負静電界を形成し、前記処理液中の酸化イオンを前記基板の表面に移動させて所定の処理位置に配置させた後、前記負静電界の形成を停止し、前記酸化イオンを酸化して、前記基板を酸化する酸化工程と、
前記処理液に正静電界を形成し、前記処理液中の還元イオンを前記基板の表面に移動させて前記処理位置に配置させた後、前記正静電界の形成を停止し、前記還元イオンを還元する還元工程と、を実行するように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、基板処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、
第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置に結晶核を形成し、
前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置の結晶核に連結して、前記第2の処理位置に結晶核を形成するように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、前記結晶核を所定の粒径に成長させ、
その後、前記還元工程を繰り返し行い、前記結晶核を成長させて配線結晶膜を形成するように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、
第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置にマスクを形成し、
前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に鉛直方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置のマスクに連結して、前記第2の処理位置にマスクを形成するように、前記静電界形成部を制御し、
前記基板処理装置は、前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行った後、前記マスクを除去するマスク除去部を有することを特徴とする、請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記第1の酸化工程を複数回行い、平面視において複数の前記第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第2の酸化工程を複数回行い、平面視において複数の前記第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングするように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記制御部は、
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、
第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置に結晶核を形成し、
前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングするとともに、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第3の処理位置の前記基板を酸化してエッチングして当該第3の処理位置にホールを形成し、
前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置の結晶核に連結して、前記第2の処理位置に結晶核を形成し、
前記第2の酸化工程後の第3の酸化工程において、前記第3の処理位置に水平方向に隣接する第4の処理位置の前記基板を酸化してエッチングして当該第4の処理位置にホールを形成し、
前記第1の処理位置及び前記第2の処理位置の前記結晶核を成長させて配線結晶膜を形成し、
前記第3の処理位置及び前記第4の処理位置の前記ホールを連結して、前記配線結晶膜が形成されていない領域にエアギャップを形成するように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記処理液中に配置された、直接電極、露出電極、対向電極及び間接電極を有し、
前記直接電極は絶縁膜で覆われ、
前記露出電極は前記直接電極の表面に設けられ、前記処理液に露出し、
前記間接電極は絶縁膜で覆われ、
前記対向電極は絶縁膜で覆われていることを特徴とする、請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記制御部は、
前記酸化工程において、
前記間接電極に負極性のパルス電圧を印加して前記処理液に負静電界を形成する充電工程と、
前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記負静電界の形成を停止する放電工程と、を実行し、
前記還元工程において、
前記間接電極に正極性のパルス電圧を印加して前記処理液に正静電界を形成する充電工程と、
前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記正静電界の形成を停止する放電工程と、を実行するように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、請求項16に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記基板にはシード膜が形成されていないことを特徴とする、請求項10に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造においては、半導体基板(以下、「基板」という)に成膜処理やエッチング処理等の各種処理を繰り返し行って所望のデバイスを製造する。
【0003】
半導体デバイスには、近年の高集積化及び高微細化に伴い、配線の微細化が求められている。配線を形成する方法として、例えば銅(Cu)を用いたダマシンプロセスが用いられる。ダマシンプロセスでは、配線溝にバリア膜とシード膜を成膜した後、シードを給電部として電解めっきを行い、配線溝に銅を埋め込む。
【0004】
また、高集積化及び高微細化された半導体デバイスを水平面内に複数配置し、これら半導体デバイスを配線で接続して半導体装置を製造する場合、配線長が増大し、それにより配線の抵抗が大きくなること、また配線遅延が大きくなることが懸念される。そこで、半導体デバイスを3次元に積層する3次元集積技術が提案されている。この3次元集積技術においては、裏面を研磨することで薄化され、表面に複数の電子回路が形成された基板を貫通するように、微細な径を有する電極、いわゆる貫通電極(TSV:Through Silicon Via)が複数形成される。そして、この貫通電極を介して、上下に積層された基板が電気的に接続される。
【0005】
貫通電極のような高アスペクト比を要する微細構造のホールを形成する方法として、例えばRIE(Reactive Ion Etching)等のドライエッチングや、非特許文献1に記載されたMacエッチングが用いられる。Macエッチングは、ウェットプロセスのみで行う、溶液中での化学反応によるエッチングである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】丹羽良輔ら著 「貴金属触媒を用いた湿式Si-TSVエッチングにおける添加剤の効果」 MES2018(第28回マイクロエレクトロニクスシンポジウム)2018年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、配線形成に際して、上述したようにダマシンプロセスを用いた場合、銅配線を形成する際には、バリア膜とシード膜(通電膜、導電性膜)が必要になる。これらバリア膜とシード膜は配線抵抗が高いため、できるだけ薄膜化するのが好ましい。しかしながら、特に近年の配線の微細化に伴い、配線におけるバリア膜とシード膜の容積の割合が大きくなるため、これらバリア膜とシード膜の配線抵抗の影響は無視できない。
【0008】
また、近年、バリア膜とシード膜を無くすため、配線材料にコバルト(Co)やルテニウム(Ru)を用いることが検討されている。しかしながら、これらコバルトやルテニウム自体の配線抵抗が高く、やはり配線抵抗を十分に低減するには至らない。しかも、コバルトやルテニウムは高価であり、安価な銅を用いることが所望されている。
【0009】
また、銅配線を形成するためには、適切な粒径の結晶核が必要となる。そこで、バリア膜やシード膜のような導電性膜無しに、銅配線を形成するための結晶核を形成することが所望されている。
【0010】
一方、高アスペクトのホール形成に際して、上述したようにドライエッチングを用いた場合、レジストマスクのエッジ部がプラズマに曝されることでダメージを受けて、エッジ荒れが生じる。このエッジ荒れがホールに転写されてストリエーションが発生する。また、上述したようにMacエッチングを行った場合、所望の位置にホールを形成するためのマスクが必要となる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、半導体デバイスの製造に際して、基板処理を適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明は、基板処理方法であって、基板上に供給された処理液に負静電界を形成し、前記処理液中の酸化イオンを前記基板の表面に移動させて所定の処理位置に配置させた後、前記負静電界の形成を停止し、前記酸化イオンを酸化して、前記基板を酸化する酸化工程と、前記処理液に正静電界を形成し、前記処理液中の還元イオンを前記基板の表面に移動させて前記処理位置に配置させた後、前記正静電界の形成を停止し、前記還元イオンを還元する還元工程と、を有することを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、表面にバリア膜やシード膜のような導電性膜が無い基板においても非接触で酸化工程と還元工程を行うことができる。かかる場合、酸化工程と還元工程を繰り返すことで所定の粒径の結晶核を形成することができる。また、酸化工程と還元工程を繰り返すことで基板のエッチングを適切に行うことができ、その結果、基板に高アスペクト比のホールを形成することができる。
【0014】
前記基板処理方法において、前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置に結晶核を形成し、前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置の結晶核に連結して、前記第2の処理位置に結晶核を形成してもよい。
【0015】
前記基板処理方法において、前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、前記結晶核を所定の粒径に成長させ、その後、前記還元工程を繰り返し行い、前記結晶核を成長させて配線結晶膜を形成してもよい。
【0016】
前記基板処理方法において、前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置にマスクを形成し、前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に鉛直方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置のマスクに連結して、前記第2の処理位置にマスクを形成し、前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行った後、前記マスクを除去してもよい。
【0017】
前記基板処理方法において、前記第1の酸化工程は複数回行われ、平面視において複数の前記第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、前記第2の酸化工程は複数回行われ、平面視において複数の前記第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングしてもよい。
【0018】
前記基板処理方法において、前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置に結晶核を形成し、前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングするとともに、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第3の処理位置の前記基板を酸化してエッチングして当該第3の処理位置にホールを形成し、前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置の結晶核に連結して、前記第2の処理位置に結晶核を形成し、前記第2の酸化工程後の第3の酸化工程において、前記第3の処理位置に水平方向に隣接する第4の処理位置の前記基板を酸化してエッチングして当該第4の処理位置にホールを形成し、前記第1の処理位置及び前記第2の処理位置の前記結晶核を成長させて配線結晶膜を形成し、前記第3の処理位置及び前記第4の処理位置の前記ホールを連結して、前記配線結晶膜が形成されていない領域にエアギャップを形成してもよい。
【0019】
前記基板処理方法は、前記処理液中に直接電極、露出電極、間接電極及び対向電極を配置する配置工程を有し、前記直接電極は絶縁膜で覆われ、前記露出電極は前記直接電極の表面に設けられ、前記処理液に露出し、前記間接電極は絶縁膜で覆われ、前記対向電極は絶縁膜で覆われていてもよい。
【0020】
前記基板処理方法において、前記酸化工程は、前記間接電極に負極性のパルス電圧を印加して前記処理液に負静電界を形成する充電工程と、前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記負静電界の形成を停止する放電工程と、を有し、前記還元工程は、前記間接電極に正極性のパルス電圧を印加して前記処理液に正静電界を形成する充電工程と、前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記正静電界の形成を停止する放電工程と、を有していてもよい。
【0021】
前記基板処理方法において、前記基板にはシード膜が形成されていなくてもよい。
【0022】
別な観点による本発明は、基板処理装置であって、基板上に供給された処理液に正静電界又は負静電界を形成する静電界形成部と、制御部と、を有し、前記制御部は、前記処理液に負静電界を形成し、前記処理液中の酸化イオンを前記基板の表面に移動させて所定の処理位置に配置させた後、前記負静電界の形成を停止し、前記酸化イオンを酸化して、前記基板を酸化する酸化工程と、前記処理液に正静電界を形成し、前記処理液中の還元イオンを前記基板の表面に移動させて前記処理位置に配置させた後、前記正静電界の形成を停止し、前記還元イオンを還元する還元工程と、を実行するように、前記静電界形成部を制御することを特徴としている。
【0023】
前記基板処理装置において、前記制御部は、前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置に結晶核を形成し、前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置の結晶核に連結して、前記第2の処理位置に結晶核を形成するように、前記静電界形成部を制御してもよい。
【0024】
前記基板処理装置において、前記制御部は、前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、前記結晶核を所定の粒径に成長させ、その後、前記還元工程を繰り返し行い、前記結晶核を成長させて配線結晶膜を形成するように、前記静電界形成部を制御してもよい。
【0025】
前記基板処理装置において、前記制御部は、前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置にマスクを形成し、前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に鉛直方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置のマスクに連結して、前記第2の処理位置にマスクを形成するように、前記静電界形成部を制御し、前記基板処理装置は、前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行った後、前記マスクを除去するマスク除去部を有していてもよい。
【0026】
前記基板処理装置において、前記制御部は、前記第1の酸化工程を複数回行い、平面視において複数の前記第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、前記第2の酸化工程を複数回行い、平面視において複数の前記第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングするように、前記静電界形成部を制御してもよい。
【0027】
前記基板処理装置において、前記制御部は、前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置に結晶核を形成し、前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングするとともに、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第3の処理位置の前記基板を酸化してエッチングして当該第3の処理位置にホールを形成し、前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置の結晶核に連結して、前記第2の処理位置に結晶核を形成し、前記第2の酸化工程後の第3の酸化工程において、前記第3の処理位置に水平方向に隣接する第4の処理位置の前記基板を酸化してエッチングして当該第4の処理位置にホールを形成し、前記第1の処理位置及び前記第2の処理位置の前記結晶核を成長させて配線結晶膜を形成し、前記第3の処理位置及び前記第4の処理位置の前記ホールを連結して、前記配線結晶膜が形成されていない領域にエアギャップを形成するように、前記静電界形成部を制御してもよい。
【0028】
前記基板処理装置は、前記処理液中に配置された、直接電極、露出電極、対向電極及び間接電極を有し、前記直接電極は絶縁膜で覆われ、前記露出電極は前記直接電極の表面に設けられ、前記処理液に露出し、前記間接電極は絶縁膜で覆われ、前記対向電極は絶縁膜で覆われていてもよい。
【0029】
前記基板処理装置において、前記制御部は、前記酸化工程において、前記間接電極に負極性のパルス電圧を印加して前記処理液に負静電界を形成する充電工程と、前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記負静電界の形成を停止する放電工程と、を実行し、前記還元工程において、前記間接電極に正極性のパルス電圧を印加して前記処理液に正静電界を形成する充電工程と、前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記正静電界の形成を停止する放電工程と、を実行するように、前記静電界形成部を制御してもよい。
【0030】
前記基板処理装置において、前記基板にはシード膜が形成されていなくてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、半導体デバイスの製造に際して、基板処理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】基板処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【
図2】基板処理装置の構成の概略を示す平面図である。
【
図3】給排液機構の構成の概略を示す平面図である。
【
図4】酸化工程の充電時において、電源によって負パルス電圧を印加すると共に、直接電極と間接電極の接続を切断した様子を示す説明図である。
【
図5】酸化工程の放電時において、電源による負パルス電圧の印加を停止し、直接電極と間接電極を接続した様子を示す説明図である。
【
図6】還元工程の充電時において、電源によって正パルス電圧を印加すると共に、直接電極と間接電極の接続を切断した様子を示す説明図である。
【
図7】還元工程の放電時において、電源による正パルス電圧の印加を停止し、直接電極と間接電極を接続した様子を示す説明図である。
【
図8】下地膜に結晶核を形成する方法を示す説明図である。
【
図9】配線溝の下地膜に配線結晶膜を形成する方法を示す説明図である。
【
図10】第1の実施形態において基板にホールを形成する方法を示す説明図である。
【
図11】第2の実施形態において基板にホールを形成する方法を示す説明図である。
【
図12】基板に配線結晶膜とエアギャップを形成する方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、以下の説明で用いる図面において、各構成要素の寸法は、技術の理解の容易さを優先させるため、必ずしも実際の寸法に対応していない。
【0034】
<基板処理装置の構成>
先ず、本実施形態にかかる基板処理装置の構成について説明する。
図1は、基板処理装置1の概略を示す縦断面図である。
図2は、基板処理装置1の概略を示す平面図である。
【0035】
基板処理装置1は、基板Wを保持する基板ステージ10を有している。基板Wは例えば半導体ウェハであり、シリコンから形成される。基板ステージ10と基板Wは容量結合している。基板ステージ10は絶縁膜11に覆われ、後述する処理液Lに露出していない。なお、絶縁膜11は基板Wに設けられていてもよい。基板ステージ10は、電源40に接続されている。基板ステージ10は、本発明における対向電極として機能する。
【0036】
基板ステージ10に保持された基板W上には、処理液Lが供給され、当該処理液Lの液パドルが形成される。本実施形態の基板処理装置1では、後述するように酸化工程と還元工程が行われ、処理液Lには、酸化イオンと還元イオンを含む溶液が用いられる。例えば処理液Lには、アルカリ系の溶液が用いられる。酸化イオンは、例えば基板Wを酸化してエッチングするための陰イオンである。還元イオンは、例えば基板W上に銅配線の結晶核又は銅マスクを形成するための銅イオンである。
【0037】
基板ステージ10(基板W)の上方には、当該基板Wに対向して直接電極20と間接電極30が設けられている。直接電極20と間接電極30はそれぞれ、少なくとも一部が処理液Lに浸漬している。本実施形態において、直接電極20は平面視において環状形状を有し、側面視において一対の直接電極20、20は隣接して配置されている。また、間接電極30は平面視において環状形状を有し、側面視において一対の間接電極30、30は、一対の直接電極20、20を挟むように、当該一対の直接電極20、20の外側に配置されている。なお、
図1及び
図2においては、一対の直接電極20、20と一対の間接電極30、30を図示しているが、実際には、複数対の直接電極20、20と複数対の間接電極30、30が基板Wに対向して配置されている。
【0038】
直接電極20は絶縁膜21に覆われ、処理液Lに露出していない。直接電極20の表面には、処理液Lに露出する露出電極22が設けられている。露出電極22は、後述するスイッチ50を介して間接電極30と接続可能に構成されている。直接電極20と露出電極22は一体に構成され、絶縁膜容量と電気二重層容量の直列接続を構成している。また、露出電極22は平面視において環状形状を有し、直接電極20の内側に配置されている。すなわち側面視において、一対の直接電極20、20の内側で、一対の露出電極22、22は対向して配置されている。
【0039】
直接電極20は、後述する電源40に接続されている。すなわち、露出電極22は、コンデンサを介して電源40に接続された状態である。
【0040】
間接電極30は、絶縁膜31で覆われている。
【0041】
直接電極20及び露出電極22と間接電極30は、昇降機構(図示せず)によって、処理液Lの液パドルが壊れない範囲で昇降自在に構成されている。また、直接電極20及び露出電極22と間接電極30は、水平移動機構(図示せず)によって、処理液Lの液パドルが壊れない範囲で水平方向に移動自在に構成されている。これにより、直接電極20及び露出電極22と間接電極30を、基板Wに対して任意の位置に配置することができる。
【0042】
間接電極30と基板ステージ10には、電源40が接続されている。電源40は、正極性のパルス電圧(以下、「正パルス電圧」という。)と負極性のパルス電圧(以下、「負パルス電圧」という。)を、間接電極30と基板ステージ10に印加可能なパルス電源である。すなわち、正パルス電圧を印加する場合は、間接電極30を陽極とし、基板ステージ10を陰極としてパルス電圧を印加する場合である。そして、正パルス電圧を印加すると、処理液Lに正静電界が形成される。負パルス電圧を印加する場合は、間接電極30を陰極とし、基板ステージ10を陽極としてパルス電圧を印加する場合である。そして、負パルス電圧を印加すると、処理液Lに負静電界が形成される。
【0043】
直接電極20の露出電極22と間接電極30との間には、スイッチ50が設けられている。スイッチ50は、露出電極22と間接電極30の接続と切断を切り替える。スイッチ50の切り替えは、後述する制御部70によって制御される。
【0044】
なお、本実施形態では、基板ステージ10(対向電極)、直接電極20及び間接電極30、電源40及びスイッチ50が、本発明における静電界形成部を構成する。
【0045】
図3に示すように直接電極20、露出電極22及び間接電極30の上方には、処理液Lを供給し、且つ処理液Lを排出する給排液機構60が設けられている。給排液機構60は、処理液Lを供給する給液孔61と、処理液Lを排出する排液孔62とを有している。給液孔61は、間接電極30の外側において、複数箇所、例えば4箇所に形成されている。なお、給液孔61は、間接電極30を貫通するように形成されていてもよい。給液孔61は、処理液Lを貯留して供給する洗浄液供給源(図示せず)に連通している。排液孔62は、例えば露出電極22の内側領域に対応して形成され、当該露出電極22の内側領域から処理液Lを排出する。排液孔62は、処理液Lを吸引して排出するポンプ(図示せず)に連通している。なお、
図1では、図面が煩雑になるのを避けるため、給排液機構60の図示を省略している。
【0046】
かかる場合、給排液機構60を用いて処理液Lの供給と排出を共に行うことができるので、給排液を効率よく行うことができる。また、処理液Lを基板W上から排出する際、電極(直接電極20、露出電極22及び間接電極30)と基板W間において、気液界面の衝撃が無く、処理液Lは水平に移動する。このため、例えば基板W上にパターンが形成されている場合、当該パターンに作用する処理液Lの表面張力が小さくなり、その結果、パターン倒れを抑制することができる。
【0047】
なお、処理液Lを供給及び排出する手段は給排液機構60に限定されるものではなく、例えばノズル(図示せず)を用いてもよい。かかる場合、基板ステージ10で基板Wを保持した後、直接電極20(及び露出電極22)と間接電極30を配設し、さらに給排液機構60の給液孔61から処理液Lを供給してもよい。或いは、基板ステージ10で基板Wを保持した後、給排液機構60の給液孔61から基板W上に処理液Lを供給し、さらに直接電極20と間接電極30を配設してもよい。
【0048】
図1に示すように基板処理装置1は制御部70を有している。制御部70は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、基板処理装置1における基板Wの処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部70にインストールされたものであってもよい。また、上記記憶媒体は、一時的なものであっても非一時的なものであってもよい。
【0049】
<酸化工程>
以上のように構成された基板処理装置1では、酸化工程と還元工程が行われる。このうち先ず、基板処理装置1を用いた酸化工程について説明する。
【0050】
酸化工程では、先ず、
図4に示すようにスイッチ50によって露出電極22と間接電極30の接続を切断する。また、電源40によって、間接電極30を陰極とし、基板ステージ10を陽極として、間接電極30に負パルス電圧V
Nを印加して、処理液Lに負静電界を形成する。そうすると、間接電極30に負の電荷が蓄積され、基板ステージ10に正の電荷が蓄積される。そして、基板Wの表面に負の荷電粒子である陰イオンAが移動する。なお、以下の説明において、このように電極に電荷が蓄積される状態を「充電」という場合がある。
【0051】
この充電時では(後述する放電時以外では)、直接電極20と基板ステージ10が接続されているので、直接電極20と基板ステージ10は等電位となる。このため、露出電極22と基板ステージ10における基板Wはほぼ等電位の陽極同士となり、また間接電極30は陰極のため、電荷交換(酸化還元反応)を抑制することができる。
【0052】
このように電解反応を抑制することで、例えば基板W上に金属配線が形成されている場合、当該金属配線の腐食を抑制することができる。或いは、例えば基板W上に金属配線を形成する場合、当該基板Wの表面には例えばコバルトめっきからなるバリア膜(下地膜)が形成されている場合があるが、この下地膜の金属のイオン化傾向が、金属配線のイオン化傾向より小さい場合、無電解の置換めっきが行われ、当該下地膜が剥がれる場合がある。この点、上述したように電解反応を抑制することで、無電界時の置換めっきを抑制することができる。
【0053】
そして、負パルス電圧VNの印加と、スイッチ50による露出電極22と間接電極30の切断は、間接電極30と基板ステージ10に十分な電荷が蓄積されるまで、すなわち満充電されるまで行われる。上述したように充電時には、露出電極22と基板Wにおける電荷交換が抑制される。また、間接電極30と基板ステージ10との間に負パルス電圧VNを印可する際の負静電界を高くすると水の電気分解が進行することが懸念されるが、本実施形態では水の電気分解も抑制されるので、上記負静電界を高くすることができる。
【0054】
その後、
図5に示すようにスイッチ50によって露出電極22と間接電極30を接続する。また、電源40による負パルス電圧V
Nの印加を停止して、負静電界の形成を停止する。そうすると、間接電極30に蓄積された負の電荷が露出電極22に移動し、露出電極22側で還元反応が起きる。これに伴い、正の電荷が基板ステージ10に移動し、基板ステージ10側の基板Wの表面では酸化反応が起きる。そして、基板Wの表面が酸化されてエッチングされる。なお、以下の説明において、以上の反応を「放電」という場合がある。
【0055】
本実施形態では、直接電極20が絶縁膜21で覆われ、間接電極30が絶縁膜31で覆われ、基板ステージ10が絶縁膜11で覆われており、これら直接電極20と間接電極30は処理液Lに接触しておらず、基板ステージ10は基板Wの表面に接触していない。酸化工程では、このように表面にバリア膜やシード膜のような導電性膜が無い基板Wにおいても非接触で電解処理が行われる。
【0056】
なお、本実施形態の酸化工程は、基板Wの表面にバリア膜が形成されている場合にも適用できる。
【0057】
<還元工程>
次に、基板処理装置1を用いた還元工程について説明する。
【0058】
還元工程では、先ず充電時において、
図6に示すようにスイッチ50によって露出電極22と間接電極30の接続を切断する。また、電源40によって、間接電極30を陽極とし、基板ステージ10を陰極として、間接電極30に正パルス電圧V
Pを印加して、処理液Lに正静電界を形成する。そうすると、間接電極30に正の電荷が蓄積され、基板ステージ10に負の電荷が蓄積される。そして、基板Wの表面に正の荷電粒子である銅イオンCが移動する。
【0059】
この充電時では(後述する放電時以外では)、上述した酸化工程の充電時と同様に、電荷交換(酸化還元反応)を抑制することができる。また、このように電解反応を抑制することで、例えば基板W上の金属配線の腐食を抑制することができ、或いは、無電界時の置換めっきを抑制することができる。
【0060】
そして、正パルス電圧VPの印加と、スイッチ50による露出電極22と間接電極30の切断は、間接電極30と基板ステージ10に十分な電荷が蓄積されるまで、すなわち満充電されるまで行われる。上述したように充電時には、露出電極22と基板Wにおける電荷交換が抑制される。また、間接電極30と基板ステージ10との間に正パルス電圧VPを印可する際の正静電界を高くすると水の電気分解が進行することが懸念されるが、本実施形態では水の電気分解も抑制されるので、上記正静電界を高くすることができる。
【0061】
その後、放電時において、
図7に示すようにスイッチ50によって露出電極22と間接電極30を接続する。また、電源40による正パルス電圧V
Pの印加を停止して、正静電界の形成を停止する。そうすると、間接電極30に蓄積された正の電荷が露出電極22に移動し、露出電極22側で酸化反応が起きる。これに伴い、負の電荷が基板ステージ10に移動し、基板ステージ10側の基板Wの表面では還元反応が起きる。そして、基板Wの表面の銅イオンCが還元される。
【0062】
本実施形態の還元工程でも、上述した酸化工程と同様に、表面にバリア膜やシード膜のような導電性膜が無い基板Wにおいても非接触で電解処理が行われる。
【0063】
なお、本実施形態の還元工程は、基板Wの表面にバリア膜が形成されている場合にも適用できる。
【0064】
<結晶核の形成>
次に、
図8を用いて、酸化工程と還元工程を繰り返し行い、基板Wの表面に形成された下地膜Fに銅配線(平面膜配線)の結晶核を形成する方法について説明する。下地膜Fは、例えばバリア膜や絶縁膜等である。
図8の各図は、下地膜Fの一部を示す平面図である。なお、本実施形態における酸化工程と還元工程はそれぞれ、上述した方法で行われる。
【0065】
図8(a)は、結晶核を形成する下地膜Fを示す。図中のP11~P16は下地膜Fにおける処理位置を示し、処理位置P11~P16は原子1個単位である。本実施形態では、X軸方向に並べて配置される処理位置P11~P13に結晶核を形成する。
【0066】
先ず、
図8(b)に示すように、処理位置P11に対して酸化工程を行う。処理位置P11に陰イオンAを移動させて配置し、さらに下地膜Fを酸化してエッチングする。そして、処理位置P11に孔100を形成する。続いて、
図8(c)に示すように、同じ処理位置P11に対して還元工程を行う。処理位置P11の孔100に銅イオンCを移動させて配置し、さらに銅イオンCを還元する。そして、処理位置P11に成膜原子である単結晶の結晶核110を形成する。
【0067】
次に、
図8(d)に示すように、処理位置P12に対して酸化工程を行い、処理位置P12に孔101を形成する。この際、下地膜Fと、結晶核110である銅とのイオン化傾向の違いにより、結晶核110ではなく、下地膜Fが酸化される。続いて、
図8(e)に示すように、同じ処理位置P12に対して還元工程を行い、処理位置P12に結晶核111を形成する。処理位置P12の結晶核111は、処理位置P11の結晶核110と連結する。
【0068】
次に、
図8(f)に示すように、処理位置P13に対して酸化工程を行い、処理位置P13に孔102を形成する。続いて、
図8(g)に示すように、同じ処理位置P13に対して還元工程を行い、処理位置P13に結晶核112を形成する。処理位置P13の結晶核112は、処理位置P11、P12の結晶核110、111と連結し、所定の粒径の結晶核120に成長して形成される。
【0069】
なお、本実施形態において、例えば処理位置P11が第1の処理位置であり、処理位置P11における酸化工程及び還元工程が第1の酸化工程及び第1の還元工程とすると、処理位置P12が第2の処理位置であり、処理位置P12における酸化工程及び還元工程が第2の酸化工程及び第2の還元工程となる。
【0070】
ここで、従来、下地膜に結晶核を形成する際には、マスクを用いた無電解めっき、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)などが用いられる。しかしながら、これらの方法は配線めっきの前に別工程で行う必要があり非効率であり、また結晶核の結晶性が劣る。
【0071】
この点、本実施形態によれば、表面にバリア膜やシード膜のような導電性膜が無い基板Wにおいても非接触で酸化工程と還元工程を繰り返し行うことにより、処理位置P11~P13のそれぞれに等間隔に孔100~102を形成し、等間隔に結晶核110~112を形成することができる。その結果、下地膜Fに所定の粒径の結晶核120を効率よく形成することができる。また従来、バリア膜上にマスク無しで全面シード膜を形成するのが一般的であったが、本実施形態では、マスク(配線)域に等間隔に結晶核120を形成することができる。
【0072】
また、酸化工程と還元工程の繰り返し回数を調整することで、結晶核120の粒径を制御することができる。この点例えば、処理位置P14~P16に酸化工程と還元工程を行い、結晶核120を形成してもよい。
【0073】
また、単原子から順次成長させて所定の粒径の結晶核120を形成するので、当該結晶核120は結晶性に優れる。
【0074】
また、酸化工程と還元工程を繰り返し行うことで、処理液Lには負静電界と正静電界が繰り返し形成される。この際、負静電界により、結晶核120において銅原子の電子は下地膜Fに分極移動する。そうすると、下地膜Fに銅原子を密着させることができ、下地膜Fに対する結晶核120の密着性を向上させることができる。
【0075】
また、酸化工程と還元工程において処理液Lに負静電界と正静電界を形成することで、結晶核120の形成レートを向上させて、生産性を向上させることができる。ここで、レートは、反応させるエネルギーと反応させるイオンの密度に依存する。この点、負静電界と正静電界を用いることで反応エネルギーをあげることができ、さらに反応イオンの密度も上げることができる。
【0076】
<配線結晶膜の形成>
次に、
図9を用いて、基板Wの表面に形成された配線溝130の下地膜Fに配線結晶膜を形成する方法について説明する。配線結晶膜は、平面膜であって、配線溝130に埋め込まれる配線である。
図9の各図は、基板Wの配線溝130を示す平面図である。なお、本実施形態における酸化工程と還元工程はそれぞれ、上述した方法で行われる。
【0077】
図9(a)に示すように、配線溝130は微細溝である。配線溝130の内側には、下地膜Fが形成されている。
【0078】
先ず、
図9(b)に示すように、配線溝130の下地膜Fに複数の結晶核120を等間隔に並べて形成する。各結晶核120は、上述の
図8を用いて説明したように、酸化工程と還元工程を繰り返し行うことで、所定の粒径に形成する。
【0079】
この際、還元工程の充電時において、下地膜F側に移動する銅イオンCの電荷量Qは、間接電極30の静電容量Cと、間接電極30と基板ステージ10の間の電圧Vとの積となる(Q=CV)。そして、間接電極30と基板ステージ10の間の電圧V、及び/又は、間接電極30の静電容量Cを制御することで、配線溝130の底面に均一な間隔で銅イオンCを配置することができる。そうすると、下地膜Fに所定の粒径の結晶核120を等間隔に並べて形成することができる。
【0080】
次に、
図9(c)に示すように、結晶核120を成長させて結晶粒140を形成する。各結晶粒140は、上述した還元工程を繰り返し行うことで、大粒径に形成する。この結晶粒140の粒径は、間接電極30と基板ステージ10の間の電圧V、及び/又は、間接電極30の静電容量Cに加えて、還元工程における充電と放電の繰り返し回数で制御することができる。
【0081】
そして、
図9(d)に示すように、成長した結晶粒140が連結して、配線溝130に配線結晶膜150が形成される。
【0082】
本実施形態によれば、結晶粒140を大粒径化でき、すなわち配線結晶膜150の結晶を大粒径化できるので、配線結晶膜150の高速化及び低抵抗化を実現することができる。
【0083】
なお、以上の実施形態では、配線溝130の下地膜Fに配線結晶膜150を形成したが、成膜対象は任意である。例えば、平坦膜である下地膜Fにラインアンドスペースのパターンからなる配線結晶膜150を形成してもよいし、微細孔の下地膜Fに配線結晶膜150を形成してもよい。
【0084】
また、以上の実施形態では、下地膜Fに結晶核120を形成し配線結晶膜150を形成したが、基板Wの表面に結晶核120と配線結晶膜150を形成してもよい。かかる場合、酸化工程では、基板Wであるシリコンを酸化してエッチングする。また、還元工程における配線材料は銅に限らず、電解成膜が可能な材料であればよく、例えばコバルト(Co)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、炭素(C)などであってもよい。
【0085】
<ホールの形成>
次に、
図10及び
図11を用いて、酸化工程と還元工程を繰り返し行い、基板Wに貫通電極を形成するための高アスペクト比のホールを形成する方法について説明する。
図10及び
図11の各図は、基板Wの一部を示す断面図である。
図10は第1の実施形態のホール形成方法を示し、
図11は第2の実施形態のホール形成方法を示している。なお、本第1及び第2の実施形態における酸化工程と還元工程はそれぞれ、上述した方法で行われる。
【0086】
[第1の実施形態]
第1の実施形態にかかるホール形成方法について説明する。
図10(a)は、ホールを形成する基板Wを示す。図中のP21~P26は基板Wにおける処理位置を示し、処理位置P21~P26は原子1個単位である。本実施形態では、処理位置P21~P26及び処理位置P21~P26の下方にホールを形成する。
【0087】
先ず、
図10(b)に示すように、処理位置P21に対して酸化工程を行う。処理位置P21に陰イオンAを移動させて配置し、さらに基板Wを酸化してエッチングする。そして、処理位置P21に孔200を形成する。その後、
図10(c)に示すように、処理位置P22に対して酸化工程を行い、処理位置P22に孔201を形成する。その後、
図10(d)に示すように、処理位置P21に対して還元工程を行う。処理位置P21の200に銅イオンCを移動させて配置し、さらに銅イオンCを還元する。そして、処理位置P21に単結晶のマスク210を形成する。
【0088】
次に、
図10(e)に示すように、処理位置P24に対して酸化工程を行い、処理位置P24に孔202を形成する。その後、
図10(f)に示すように、処理位置P23に対して酸化工程を行い、処理位置P23に孔203を形成する。その後、
図10(g)に示すように、処理位置P23に対して還元工程を行い、処理位置P23に単結晶のマスク211を形成する。この際、既存のマスク210が形成された処理位置P21には、処理位置P22の孔201と処理位置P23の孔203が隣接するが、基板ステージ10との容量結合により下方から正静電界がかかるため、処理位置P22の電界より、当該処理位置P22の下方の処理位置P23の電界が強くなる。このため、処理位置P23に還元工程が行われ、マスク211が形成される。そして、処理位置P23のマスク211は、処理位置P21のマスク210と連結し、一定面積(原子2個分)のマスク210、211が形成される。
【0089】
次に、
図10(h)に示すように、処理位置P26に対して酸化工程を行い、処理位置P26に孔204を形成する。その後、
図10(i)に示すように、処理位置P25に対して酸化工程を行い、処理位置P25に孔205を形成する。その後、
図10(j)に示すように、処理位置P25に対して還元工程を行い、処理位置P25に単結晶のマスク212を形成する。そして、処理位置P25のマスク212は、処理位置P21、P23のマスク210、211と連結し、貫通電極用のエッチングマスクとして必要な径と厚み有するエッチングマスク220を形成する。
【0090】
次に、エッチングマスク220を触媒マスクとして酸化エッチングを行い、処理位置P21~P26の下方を所定の深さまでエッチングする。その後、
図10(k)に示すように、例えばマスク除去部(図示せず)によりエッチングを行ってエッチングマスク220を除去する。そして、処理位置P21~P26及び処理位置P21~P26の下方にホール230を形成する。
【0091】
なお、本第1の実施形態において、例えば処理位置P21が第1の処理位置であり、処理位置P21における酸化工程及び還元工程が第1の酸化工程及び第1の還元工程とすると、処理位置P23が第2の処理位置であり、処理位置P23における酸化工程及び還元工程が第2の酸化工程及び第2の還元工程となる。
【0092】
[第2の実施形態]
第2の実施形態にかかるホール形成方法について説明する。
図11(a)は、ホールを形成する基板Wを示す。図中のP31~P39は基板Wにおける処理位置を示し、処理位置P31~P39は原子1個単位である。本実施形態では、処理位置P31~P39及び処理位置P31~P39の下方にホールを形成する。
【0093】
先ず、
図11(b)に示すように、処理位置P32に対して酸化工程を行う。処理位置P32に陰イオンAを移動させて配置し、さらに基板Wを酸化してエッチングする。そして、処理位置P32に孔300を形成する。その後、
図11(c)に示すように、処理位置P33に対して酸化工程を行い、処理位置P33に孔301を形成する。その後、
図11(d)に示すように、処理位置P31に対して酸化工程を行い、処理位置P31に孔302を形成する。その後、
図11(e)に示すように、処理位置P32に対して還元工程を行う。処理位置P32の300に銅イオンCを移動させて配置し、さらに銅イオンCを還元する。そして、処理位置P32に単結晶のマスク310を形成する。
【0094】
次に、
図11(f)に示すように、処理位置P34に対して酸化工程を行い、処理位置P34に孔303を形成する。その後、
図11(g)に示すように、処理位置P36に対して酸化工程を行い、処理位置P36に孔304を形成する。その後、
図11(h)に示すように、処理位置P35に対して酸化工程を行い、処理位置P35に孔305を形成する。その後、
図11(i)に示すように、処理位置P35に対して還元工程を行い、処理位置P35に単結晶のマスク311を形成する。そして、処理位置P35のマスク311は、処理位置P32のマスク310と連結し、一定面積(原子2個分)のマスク310、311が形成される。
【0095】
次に、
図11(j)に示すように、処理位置P37に対して酸化工程を行い、処理位置P37に孔306を形成する。その後、
図11(k)に示すように、処理位置P39に対して酸化工程を行い、処理位置P39に孔307を形成する。その後、
図11(l)に示すように、処理位置P38に対して酸化工程を行い、処理位置P38に孔308を形成する。その後、
図11(m)に示すように、処理位置P38に対して還元工程を行い、処理位置P38に単結晶のマスク312を形成する。そして、処理位置P38のマスク312は、処理位置P32、P35のマスク310、311と連結し、貫通電極用のエッチングマスクとして必要な径と厚み有するエッチングマスク320を形成する。
【0096】
次に、エッチングマスク320を触媒マスクとして酸化エッチングを行い、処理位置P31~P39の下方を所定の深さまでエッチングする。その後、
図11(n)に示すように、例えばマスク除去部(図示せず)によりエッチングを行ってエッチングマスク320を除去する。そして、処理位置P31~P39及び処理位置P31~P39の下方にホール330を形成する。
【0097】
なお、本第2の実施形態において、例えば処理位置P32が第1の処理位置であり、処理位置P32における酸化工程及び還元工程が第1の酸化工程及び第1の還元工程とすると、処理位置P35が第2の処理位置であり、処理位置P35における酸化工程及び還元工程が第2の酸化工程及び第2の還元工程となる。
【0098】
本第1及び第2の実施形態によれば、表面にバリア膜やシード膜のような導電性膜が無い基板Wにおいても非接触で酸化工程と還元工程を繰り返し行うことにより、所定の径と厚みを有するエッチングマスク220、320を形成することができる。その結果、基板Wにホール230、330を適切かつ効率よく形成することができる。すなわち、原子寸法精度の微細なホール230、330を形成することができる。
【0099】
また、酸化工程と還元工程の繰り返し回数を調整することで、エッチングマスク220、320の径と厚みを、貫通電極用のエッチングマスクとして必要な径と厚みに調整することができる。
【0100】
なお、以上の実施形態では、基板Wにエッチングマスク220、320を形成しホール230、330を形成したが、下地膜Fにエッチングマスク220、320を形成しホール230、330を形成してもよい。
【0101】
また、本実施形態のホール形成技術は、量子ドットの加工への応用が期待できる。量子コンピュータには、量子を格納するドットの形成が重要である。この量子ドットは結晶であり、原子レベルの小さいドットを形成する必要がある。そこで、本実施形態の酸化工程と還元工程を繰り返し行うことで、量子ドットを形成することが可能になる。
【0102】
<配線結晶膜とエアギャップの形成>
次に、
図12を用いて、酸化工程と還元工程を繰り返し行い、基板Wに配線結晶膜(金属配線)とエアギャップを形成する方法について説明する。
図12の各図は、基板Wの一部における第1の領域R1と第2の領域R2を示す平面図である。なお、本実施形態における酸化工程と還元工程はそれぞれ、上述した方法で行われる。
【0103】
図12(a)は、配線結晶膜とエアギャップを形成する、基板Wにおける第1の領域R1と第2の領域R2を示す。図中のP41~P49は第1の領域R1における処理位置を示し、処理位置P41~P49は原子1個単位である。図中のP51~P59は第2の領域R2における処理位置を示し、処理位置P51~P59も原子1個単位である。本実施形態では、X軸方向に並べて配置される処理位置P41~P43及びP51~P53にエアギャップを形成し、処理位置P44~P46及びP54~P56に配線結晶膜を形成し、処理位置P47~P49及びP57~P59にエアギャップを形成する。
【0104】
先ず、
図12(b)に示すように、処理位置P45、P55に対して酸化工程を行う。処理位置P45、P55に陰イオンAを移動させて配置し、さらに基板Wを酸化してエッチングする。そして、処理位置P45、P55のそれぞれに孔400、500を形成する。続いて、
図12(c)に示すように、同じ処理位置P45、P55に対して還元工程を行う。処理位置P45、P55の孔400、500に銅イオンCを移動させて配置し、さらに銅イオンCを還元する。そして、処理位置P45、P55のそれぞれに成膜原子である単結晶の結晶核410、510を形成する。
【0105】
次に、
図12(d)に示すように、処理位置P44、P46、P54、P56に対して酸化工程を行い、処理位置P44、P46、P54、P56のそれぞれに孔401、402、501、502を形成するとともに、処理位置P42、P48、P52、P58に対して酸化工程を行い、処理位置P42、P48、P52、P58のそれぞれにホール403、404、503、504を形成する。
【0106】
次に、
図12(e)に示すように、処理位置P44、P46、P54、P56に対して還元工程を行い、処理位置P44、P46、P54、P56のそれぞれに結晶核411、412、511、512を形成する。処理位置P44、P46、P54、P56の結晶核411、412、511、512は処理位置P45、P55の結晶核410、510と連結し、処理位置P44~P46、P54~P56に配線結晶膜600を形成する。
【0107】
次に、
図12(f)に示すように、処理位置P41、P43、P47、P49、P51、P53、P57、P59に対して酸化工程を行い、処理位置P41、P43、P47、P49、P51、P53、P57、P59のそれぞれにホール405、406、407、408、505、506、507、508を形成する。処理位置P41、P43、P51、P53のホール405、406、505、506は処理位置P42、P52のホール403、503と連結し、処理位置P41~P43、P51~P53にエアギャップ610を形成する。処理位置P47、P49、P57、P59のホール407、408、507、508は処理位置P48、P58のホール404、504と連結し、処理位置P47~P49、P57~P59にエアギャップ611を形成する。
【0108】
なお、本実施形態において、例えば処理位置P45が第1の処理位置であり、処理位置P45における酸化工程及び還元工程が第1の酸化工程及び第1の還元工程とすると、処理位置P44が第2の処理位置であり、処理位置P44における酸化工程及び還元工程が第2の酸化工程及び第2の還元工程となり、処理位置P42が第3の処理位置であり、処理位置P42における酸化工程が第2の酸化工程となり、処理位置P41が第4の処理位置であり、処理位置P41における酸化工程が第3の酸化工程となる。
【0109】
本実施形態によれば、表面にバリア膜やシード膜のような導電性膜が無い基板Wにおいても非接触で酸化工程と還元工程を繰り返し行うことにより、配線結晶膜600と高アスペクト比のエアギャップ610、611を並行して形成することができる。
【0110】
また、酸化工程と還元工程の繰り返し回数を調整することで、配線結晶膜600とエアギャップ610、611の幅と深さを調整することができる。
【0111】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0112】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0113】
なお、以下のような構成例も本開示の技術的範囲に属する。
(1)基板処理方法であって、
基板上に供給された処理液に負静電界を形成し、前記処理液中の酸化イオンを前記基板の表面に移動させて所定の処理位置に配置させた後、前記負静電界の形成を停止し、前記酸化イオンを酸化して、前記基板を酸化する酸化工程と、
前記処理液に正静電界を形成し、前記処理液中の還元イオンを前記基板の表面に移動させて前記処理位置に配置させた後、前記正静電界の形成を停止し、前記還元イオンを還元する還元工程と、を有することを特徴とする、基板処理方法。
(2)前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、
第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置に結晶核を形成し、
前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置の結晶核に連結して、前記第2の処理位置に結晶核を形成することを特徴とする、前記(1)に記載の基板処理方法。
(3)前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、前記結晶核を所定の粒径に成長させ、
その後、前記還元工程を繰り返し行い、前記結晶核を成長させて配線結晶膜を形成することを特徴とする、前記(2)に記載の基板処理方法。
(4)前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、
第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置にマスクを形成し、
前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に鉛直方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置のマスクに連結して、前記第2の処理位置にマスクを形成し、
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行った後、前記マスクを除去することを特徴とする、前記(1)に記載の基板処理方法。
(5)前記第1の酸化工程は複数回行われ、平面視において複数の前記第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第2の酸化工程は複数回行われ、平面視において複数の前記第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングすることを特徴とする、前記(4)に記載の基板処理方法。
(6)前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、
第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置に結晶核を形成し、
前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングするとともに、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第3の処理位置の前記基板を酸化してエッチングして当該第3の処理位置にホールを形成し、
前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置の結晶核に連結して、前記第2の処理位置に結晶核を形成し、
前記第2の酸化工程後の第3の酸化工程において、前記第3の処理位置に水平方向に隣接する第4の処理位置の前記基板を酸化してエッチングして当該第4の処理位置にホールを形成し、
前記第1の処理位置及び前記第2の処理位置の前記結晶核を成長させて配線結晶膜を形成し、
前記第3の処理位置及び前記第4の処理位置の前記ホールを連結して、前記配線結晶膜が形成されていない領域にエアギャップを形成することを特徴とする、前記(1)に記載の基板処理方法。
(7)前記処理液中に直接電極、露出電極、間接電極及び対向電極を配置する配置工程を有し、
前記直接電極は絶縁膜で覆われ、
前記露出電極は前記直接電極の表面に設けられ、前記処理液に露出し、
前記間接電極は絶縁膜で覆われ、
前記対向電極は絶縁膜で覆われていることを特徴とする、前記(1)~(6)のいずれかに記載の基板処理方法。
(8)前記酸化工程は、
前記間接電極に負極性のパルス電圧を印加して前記処理液に負静電界を形成する充電工程と、
前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記負静電界の形成を停止する放電工程と、を有し、
前記還元工程は、
前記間接電極に正極性のパルス電圧を印加して前記処理液に正静電界を形成する充電工程と、
前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記正静電界の形成を停止する放電工程と、を有することを特徴とする、前記(7)に記載の基板処理方法。
(9)前記基板にはシード膜が形成されていないことを特徴とする、前記(1)~(8)のいずれかに記載の基板処理方法。
(10)基板処理装置であって、
基板上に供給された処理液に正静電界又は負静電界を形成する静電界形成部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記処理液に負静電界を形成し、前記処理液中の酸化イオンを前記基板の表面に移動させて所定の処理位置に配置させた後、前記負静電界の形成を停止し、前記酸化イオンを酸化して、前記基板を酸化する酸化工程と、
前記処理液に正静電界を形成し、前記処理液中の還元イオンを前記基板の表面に移動させて前記処理位置に配置させた後、前記正静電界の形成を停止し、前記還元イオンを還元する還元工程と、を実行するように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、基板処理装置。
(11)前記制御部は、
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、
第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置に結晶核を形成し、
前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置の結晶核に連結して、前記第2の処理位置に結晶核を形成するように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、前記(10)に記載の基板処理装置。
(12)前記制御部は、
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、前記結晶核を所定の粒径に成長させ、
その後、前記還元工程を繰り返し行い、前記結晶核を成長させて配線結晶膜を形成するように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、前記(11)に記載の基板処理装置。
(13)前記制御部は、
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、
第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置にマスクを形成し、
前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に鉛直方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置のマスクに連結して、前記第2の処理位置にマスクを形成するように、前記静電界形成部を制御し、
前記基板処理装置は、前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行った後、前記マスクを除去するマスク除去部を有することを特徴とする、前記(10)に記載の基板処理装置。
(14)前記制御部は、
前記第1の酸化工程を複数回行い、平面視において複数の前記第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第2の酸化工程を複数回行い、平面視において複数の前記第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングするように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、前記(13)に記載の基板処理装置。
(15)前記制御部は、
前記酸化工程と前記還元工程を繰り返し行い、
第1の酸化工程において、第1の処理位置の前記基板を酸化してエッチングし、
前記第1の酸化工程後の第1の還元工程において、前記第1の処理位置に結晶核を形成し、
前記第1の還元工程後の第2の酸化工程において、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第2の処理位置の前記基板を酸化してエッチングするとともに、前記第1の処理位置に水平方向に隣接する第3の処理位置の前記基板を酸化してエッチングして当該第3の処理位置にホールを形成し、
前記第2の酸化工程後の第2の還元工程において、前記第1の処理位置の結晶核に連結して、前記第2の処理位置に結晶核を形成し、
前記第2の酸化工程後の第3の酸化工程において、前記第3の処理位置に水平方向に隣接する第4の処理位置の前記基板を酸化してエッチングして当該第4の処理位置にホールを形成し、
前記第1の処理位置及び前記第2の処理位置の前記結晶核を成長させて配線結晶膜を形成し、
前記第3の処理位置及び前記第4の処理位置の前記ホールを連結して、前記配線結晶膜が形成されていない領域にエアギャップを形成するように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、前記(10)に記載の基板処理装置。
(16)前記処理液中に配置された、直接電極、露出電極、対向電極及び間接電極を有し、
前記直接電極は絶縁膜で覆われ、
前記露出電極は前記直接電極の表面に設けられ、前記処理液に露出し、
前記間接電極は絶縁膜で覆われ、
前記対向電極は絶縁膜で覆われていることを特徴とする、前記(10)~(15)のいずれかに記載の基板処理装置。
(17)前記制御部は、
前記酸化工程において、
前記間接電極に負極性のパルス電圧を印加して前記処理液に負静電界を形成する充電工程と、
前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記負静電界の形成を停止する放電工程と、を実行し、
前記還元工程において、
前記間接電極に正極性のパルス電圧を印加して前記処理液に正静電界を形成する充電工程と、
前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記正静電界の形成を停止する放電工程と、を実行するように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、前記(16)に記載の基板処理装置。
(18)前記基板にはシード膜が形成されていないことを特徴とする、前記(10)~(17)のいずれかに記載の基板処理装置。
【符号の説明】
【0114】
1 基板処理装置
10 基板ステージ
11 絶縁膜
20 直接電極
21 絶縁膜
22 露出電極
30 間接電極
31 絶縁膜
40 電源
50 スイッチ
60 給排液機構
61 給液孔
62 排液孔
70 制御部
100~102 孔
110~112 結晶核
120 結晶核
130 配線溝
140 結晶粒
150 配線結晶膜
200~205 孔
210~212 マスク
220 エッチングマスク
230 ホール
300~308 孔
310~312 マスク
320 エッチングマスク
330 ホール
400~402 孔
403~408 ホール
410~412 結晶核
500~502 孔
503~508 ホール
510~512 結晶核
600 配線結晶膜
610、611 エアギャップ
F 下地膜
L 処理液
P11~P16、P21~P26、P31~P39、P41~P49、P51~P59 処理位置
R1 第1の領域
R2 第2の領域
VP 正パルス電圧
VN 負パルス電圧
W 基板