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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115636
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】火災報知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G08B17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021366
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 悠平
(72)【発明者】
【氏名】山納 正人
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA06
5G405AB01
5G405AC02
5G405AC06
5G405CA03
5G405CA08
5G405CA34
(57)【要約】
【課題】誤報および失報を防ぎつつ火災判定を行うことができる火災報知システムを提供する。
【解決手段】受信機と監視エリアに設置された複数個の差動式熱感知器とを備えた火災報知システムにおいて、受信機に、火災発報閾値を記憶する記憶手段と火災発報閾値を調整する感度調整手段と火災判定手段とを設け、感度調整手段は、複数個の差動式熱感知器の中に、各感知器の検出温度と前記監視エリアにおける周囲温度との差が調整開始閾値を超えた1の差動式熱感知器が存在する場合に、当該1の差動式熱感知器については周囲温度が高いほど、また周囲感知器のそれぞれについては当該1の差動式熱感知器との設置距離が大きいほどかつ周囲感知器それぞれの周囲温度が高いほど火災発報閾値を感度を高める方向に調整し、火災判定手段は注目感知器および周囲感知器の検出温度の時間変化率が火災発報閾値をそれぞれ超えている場合に火災発生と判定するようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機と、当該受信機から引き出された信号線に接続され監視エリアに設置された複数個の差動式熱感知器と、を備えた火災報知システムであって、
前記受信機は、
前記複数個の差動式熱感知器の検出温度を、前記信号線を介して受信する信号受信手段と、
前記複数個の差動式熱感知器の前記監視エリアにおける設置位置情報および当該差動式熱感知器のそれぞれに対応した火災発報閾値を記憶する記憶手段と、
前記火災発報閾値を調整する感度調整手段と、
前記差動式熱感知器の検出温度の時間変化率が前記火災発報閾値を超えると前記監視エリアにおいて火災が発生したと判定する火災判定手段と、
を備え、
前記感度調整手段は、前記複数個の差動式熱感知器の中に、各感知器の検出温度と前記監視エリアにおける周囲温度との差が調整開始閾値を超えた1の差動式熱感知器が存在する場合に、当該1の差動式熱感知器については当該1の差動式熱感知器の周囲温度が高いほど、また当該1の差動式熱感知器の周囲に設置された他の差動式熱感知器のそれぞれについては当該1の差動式熱感知器との設置距離が大きいほどかつ当該他の差動式熱感知器それぞれの周囲温度が高いほど、前記火災発報閾値を、感度を高める方向に調整し、
前記火災判定手段は、前記1の差動式熱感知器の検出温度の時間変化率および前記他の差動式熱感知器の検出温度の時間変化率が対応する前記火災発報閾値をそれぞれ超えている場合に火災発生と判定する
ことを特徴とした火災報知システム。
【請求項2】
前記感度調整手段は、前記複数個の差動式熱感知器の検出温度の平均値を求め、当該平均値の移動平均を前記周囲温度とすることを特徴とした請求項1に記載の火災報知システム。
【請求項3】
前記感度調整手段は、前記周囲温度が高いほど、当該周囲温度に対する前記火災発報閾値の変化量が大きくなるように調整することを特徴とした請求項1または2に記載の火災報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱感知器を備えた火災報知システムに関し、特に熱の広がり方を考慮して火災発生判定の高精度化を可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
火災報知システムにおいては、防災管理センター等に設置された火災受信機から引き出された信号線が建物の各フロアに延設され複数の感知器が接続されている。また、感知器はフロアのレイアウトに応じて部屋ごとに1つまたは複数個設置される。
火災報知システムを構成する火災感知器には、熱を検出するタイプや煙を検知するタイプ、赤外線(炎)を検出するタイプなど幾つか種類がある。そのうち熱感知器には、定温検知式の他、検出した温度情報を火災受信機へ送信し温度上昇を参照して検知するタイプもある。そのような熱感知器は差動式熱感知器と呼ばれ、火災受信機はそのような熱感知器からの温度情報に基づいて、基準となる温度からの上昇温度、または単位時間あたりに上昇した温度が予め設定された温度(閾値)を超えると、当該感知器が設置されているエリアで火災が発生したと判定する。
【0003】
ところが、上記火災発生の判定に際しては、実際には火災が発生していないにも関わらず発生していると判定して通報する非火災報(誤報)、あるいは実際には火災が発生しているにもかかわらず発生してないと判定して通報しない失報が発生することがある。例えば、差動式熱感知器の場合、直下に暖房装置があると容易に誤報となってしまう。
具体的には、冬季、北側に面している部屋など常態で温度が低い部屋では、暖房の投入や陽当たりなどがあると温度が上昇し易い。そのため、わずかな温度上昇を検知して火災発報するのは、誤報を招くので望ましくない。従って、そのような状況下では、比較的大きな温度上昇があったことを火災発報の条件にするのが望ましい。
【0004】
逆に、夏季、南側に面している部屋など常態で温度が高い部屋では、火災以外の要因で短時間に温度が急上昇することは考えにくいので、失報を防ぐために発報条件となる温度上昇の閾値を小さく設定するのが望ましい。
この点、特許文献1には、温度変化で火災の判定を行う差動式の火災警報装置において、周囲の温度について時間移動平均を求めて、その温度変化で火災判定を行うが、火災判定のための設定値を周囲温度によって異ならせるようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01-237797号公報
【特許文献2】特開平09-288779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の火災警報装置においても、上記のような感知器の直下に暖房器具がある場合など、周囲の条件によっては誤報が発生するのを避けられないという課題がある。
そこで、1つの部屋に複数の感知器が設置されている場合、それぞれの反応(測定結果)を併せて判定することが考えられる。例えば、暖房器具がある場合、器具直上の感知器(以下「注目感知器」)は周囲温度が比較的速く上昇するが、その他の感知器(以下「周囲感知器」)については、温度上昇は鈍いことに着目して、周囲感知器の温度上昇も加味して発報判定するようにする。
【0007】
この点、特許文献2には、感知器の種類を限定せずに、注目した感知器の周囲にある感知器の方の感度を高くしつつ、注目感知器と周囲感知器の双方の検出値が閾値を越えたことを条件に火災判定を行うようにした火災警報システムが開示されている。
しかし、特許文献2の火災警報システムにあっては、注目感知器と周囲感知器の両方の検出値を火災判定に活用するにしても、注目感知器に近い周囲感知器と遠い周囲感知器とでは熱の伝わり方には当然違いがあるため、距離にかかわらず検出温度を同等に扱い同じ重み付けをして判定するのは不適切である。一方で、注目感知器から遠い周囲感知器に大きな温度上昇の条件を課し過ぎると失報の可能性が高くなるという課題がある。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、複数の差動式熱感知器からの検出温度を併用することで、非火災報(誤報)および失報を防ぎつつ、火災判定を行うことができる火災報知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は、
受信機と、当該受信機から引き出された信号線に接続され監視エリアに設置された複数個の差動式熱感知器と、を備えた火災報知システムにおいて、
前記受信機は、
前記複数個の差動式熱感知器の検出温度を、前記信号線を介して受信する信号受信手段と、
前記複数個の差動式熱感知器の前記監視エリアにおける設置位置情報および当該差動式熱感知器のそれぞれに対応した火災発報閾値を記憶する記憶手段と、
前記火災発報閾値を調整する感度調整手段と、
前記差動式熱感知器の検出温度の時間変化率が前記火災発報閾値を超えると前記監視エリアにおいて火災が発生したと判定する火災判定手段と、
を備え、
前記感度調整手段は、前記複数個の差動式熱感知器の中に、各感知器の検出温度と前記監視エリアにおける周囲温度との差が調整開始閾値を超えた1の差動式熱感知器が存在する場合に、当該1の差動式熱感知器については当該1の差動式熱感知器の周囲温度が高いほど、また当該1の差動式熱感知器の周囲に設置された他の差動式熱感知器のそれぞれについては当該1の差動式熱感知器との設置距離が大きいほどかつ当該他の差動式熱感知器それぞれの周囲温度が高いほど、前記火災発報閾値を、感度を高める方向に調整し、
前記火災判定手段は、前記1の差動式熱感知器の検出温度の時間変化率および前記他の差動式熱感知器の検出温度の時間変化率が対応する前記火災発報閾値をそれぞれ超えている場合に火災発生と判定するように構成したものである。
【0010】
上記のような構成を有する火災報知システムによれば、火災受信機が複数の差動式熱感知器の検出温度を併用することで火災発生の判定を行うので、1つの差動式熱感知器の検出温度に基づいて火災発生の判定を行う場合に比べて、非火災報(誤報)および失報を防ぎつつ、高精度の火災判定を行うことができる。また、1の差動式熱感知器(注目感知器)の周囲に設置された他の差動式熱感知器(周囲感知器)のそれぞれについては注目感知器との設置距離が大きいほどかつ周囲感知器それぞれの周囲温度が高いほど、火災発報閾値を、感度を高める方向に調整するので、火災判定の精度を高めることができる。
【0011】
ここで、望ましくは、
前記感度調整手段は、前記複数個の差動式熱感知器の検出温度の平均値を求め、当該平均値の移動平均を前記周囲温度とするように構成する。
かかる構成によれば、一時的な室内温度の変化によって誤って火災発生と判定するのを防止することができる。
【0012】
また、望ましくは、
前記感度調整手段は、前記周囲温度が高いほど、当該周囲温度に対する前記火災発報閾値の変化量が大きくなるように調整するように構成する。
火元に近い位置に設置されている感知器の周囲温度の方が、火元から遠い位置に設置されている感知器の周囲温度よりも速い速度で温度が上昇するため、温度上昇に着目して火災判定を行う複数の感知器の感度が同一であると、火元から遠い位置に設置されている感知器は火災発生の判定が比較的遅くなってしまうおそれがあるが、上記のような構成によれば、火災発生後速やかに火災発生の判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る火災報知システムによれば、複数の差動式熱感知器からの検出温度を併用することで、非火災報(誤報)および失報を防ぎつつ、火災判定を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の火災報知システムの一例を示すシステム構成図である。
図2】(A)は実施形態の火災報知システムが適用される比較的広い空間を有する監視エリアにおける熱感知器のレイアウトの一例を示すフロア図、(B)はそれぞれの感知器の火災判定閾値の特性を示す閾値特性図である。
図3】実施形態の火災報知システムを構成する火災受信機の演算処理装置における火災判定処理手順の(前半)を示すフローチャートである。
図4】実施形態の火災報知システムを構成する火災受信機の演算処理装置における火災判定処理手順(後半)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明を適用した火災報知システムの実施形態について説明する。図1は、本実施形態の火災報知システムの概略構成を示すシステム構成図である。
本実施形態の火災報知システムは、図1に示すように、防災管理センター等に設置された火災受信機(以下、受信機と記す)11と、差動式熱感知器(以下、単に熱感知器あるいは感知器と記す)12とから構成され、受信機11から引き出された信号線13が建物の各フロアに延設されそれぞれに複数の熱感知器12が接続されている。
【0016】
ここで、熱感知器12は、検出した温度情報を受信機11へ送信する機能を有しており、監視エリアであるフロアのレイアウトに応じて適切な位置に設置される。よって、比較的広い空間を有する部屋においては、1つの部屋に複数の感知器が設置されることとなる。本実施形態は、複数の感知器が設置される比較的大きな空間を有する部屋に適用されることを想定している。なお、信号線13には中継器等が接続されることもある。
受信機11は、信号線13を介して熱感知器12より送られている温度情報の信号を受信する信号受信部21と、演算処理装置22、記憶装置23を備えており、記憶装置23には、監視エリアにおける熱感知器12の設置位置情報、検出温度に対応した火災判定閾値、火災判定閾値を変更調整する際に使用する計算式や係数、固定値等を記述したテーブルデータが記憶されている。
【0017】
演算処理装置22は、複数の感知器の検出温度の移動平均を算出する移動平均算出手段22A、注目する感知器の火災判定閾値を設定する第1火災判定閾値設定手段22B、注目感知器の周囲にある感知器(以下、周囲感知器)の火災判定閾値を設定する第2火災判定閾値設定手段22C、注目感知器と周囲感知器の検出温度の時間変化率を算出する温度変化率算出手段22D、注目感知器と周囲感知器の各温度変化率と上記火災判定閾値設定手段22B及び22Cにより設定された各閾値とを比較して火災発生を判定する火災判定手段22E等を備えており、これらの手段は演算処理装置22を構成するCPU(マイクロプロセッサ)とCPUが実行するプログラムとによって実現される。
【0018】
次に、図2を用いて、本実施形態の火災報知システムにおける感知器が設置されている部屋環境(感知器の検出温度情報)に応じた火災発生の火災判定閾値の設定方法の基本的な考え方について説明する。
図2(A)は、複数の感知器が設置されている比較的大きな空間を有する部屋において、火災が発生した状況の一例を示している。具体的には、3個の熱感知器12A,12B,12Cが設置されている監視エリアにおいて、熱感知器12Aの下方で炎Fが発生した状況を示している。図2(A)のような状況の場合、炎Fが発する熱は熱感知器12Aへ最も多く伝わり、熱感知器12B,12Cの順に少なくなる。
【0019】
一般に、熱の伝導速度は温度差が大きいほど大きくなる。そのため、図2(A)に示す監視エリアの場合、火災発生前の室内の温度が低い状況では、炎Fが発生すると比較的速い速度で温度が上昇する一方、室内の温度が高い状況では、炎Fが発生しても比較的ゆっくりとした速度で温度が上昇する。従って、温度上昇幅に着目して温度差が閾値以上になった場合に火災発生と判定するようにすると、室温が低い状況の方が、室温が高い状況よりも、感知器の見かけ上の感度が高くなってしまう。
【0020】
また、火元に近い位置に設置されている感知器12Aの周囲温度の方が、火元から遠い位置に設置されている感知器12B,12Cの周囲温度よりも速い速度で温度が上昇する。そのため、図2(A)に示す状況の場合、温度上昇に着目して火災判定を行う複数の感知器の感度が同一であると、火元から遠い位置に設置されている感知器12B,12Cに関しては、火災発生の判定が比較的遅くなってしまうおそれが高い。
そこで、本発明においては、感知器の検出温度の時間変化率に着目し、算出した時間変化率が所定の閾値を超えた場合に火災発生と判定することを基本としつつ、火災発生と判定するための閾値を、感知器の環境(火災発生前の周囲温度および設置位置)に応じて調整するようにした。
【0021】
具体的には、周囲温度が低いほど閾値を大きくし周囲温度が高くなるに従って閾値を小さくするとともに、周囲温度が高いほど少しの温度上昇で火災判定するように閾値を小さくするように調整する。
さらに、火元から遠くの位置にある感知器の火災判定閾値を小さくするとともに、周囲温度に応じて閾値を下げるにしても、閾値をゼロに近づけるとわずかでも温度上昇があると火災判定をすることになるので、ある温度Td以上では閾値を一定にすることとした。閾値が一定になる点(不連続点)の周囲温度Tdは各感知器で同一でも良いし、感知器の相対的な位置(距離)によって異なっていても良い。
【0022】
図2(B)に、上記のような考え方に従って調整する場合における閾値の変化特性を示す。図2(B)において、最も左側にあるグラフは火災元に最も近い位置にある感知器の閾値特性、中央にあるグラフは火災元から少し離れた位置にある感知器の閾値特性、最も右側にあるグラフは火災元に最も遠い位置にある感知器の閾値特性をそれぞれ示したものである。図2(B)に示されているように、閾値の変化特性線は、上に凸の2次曲線となる。このような曲線を与える関数は、例えば次式
y=b√{-(x-a)/a} 0≦x≦a,a>0,b>0
で表わされる。ここで、係数bは、注目感知器から近い(距離が小さい)ほど大きな値とし、遠いほど小さな値とする。
【0023】
次に、本実施形態の火災報知システムを構成する受信機11の演算処理装置22による火災判定処理の手順の一例を、図3および図4に示すフローチャートを用いて説明する。
受信機11の電源が投入されると、演算処理装置22は、先ず初期化処理を行いその処理の中ですべての感知器の発報フラグをオフにした後(ステップS1)、監視エリア内のすべての感知器から検出温度の情報を所定時間にわたって取得する(ステップS2)。そして、計算の際に使用するバッファメモリからすべての感知器について最古の温度情報を削除して最新の温度情報を追加し、全感知器の温度の平均値を算出して周囲温度を更新する(ステップS3)。
【0024】
次に、ステップS1で取得した感知器の検出温度の中にステップS3で算出した周囲温度を超えているものがあるか否か判定する(ステップS4)。そして、検出温度の中にステップS3で算出した周囲温度を超えている感知器がない(No)と判定すると、ステップS2へ戻る。一方、ステップS4で周囲温度を超えている感知器がある(Yes)と判定した場合には、ステップS5へ進み、周囲温度を超えている感知器を注目感知器として、該注目感知器の検出温度に基づいて記憶装置23内からその温度に対応した火災判定閾値を読み出して当該感知器の火災判定閾値に設定する。
【0025】
続いて、記憶装置23から注目感知器の過去の検出温度を読み出して移動平均を算出しさらにその時間変化率を算出する(ステップS6)。その後、算出された温度の時間変化率が、ステップS5で設定した火災判定閾値を超えているか否か判定する(ステップS7)。そして、火災判定閾値を超えていない(No)と判定すると、ステップS13へ移行する。なお、上記ステップS6において算出する移動平均は、例えば30分~1時間程度の時間における移動平均とする。
【0026】
一方、ステップS7で時間変化率が火災判定閾値を超えている(Yes)と判定した場合には、ステップS8へ進み、記憶装置23内から感知器の設置位置情報を読出して、注目感知器の周囲にある感知器を周囲感知器として特定する。そして、該周囲感知器ごとに、注目感知器からの距離および当該周囲感知器の検出温度に応じて火災判定閾値を設定する。具体的には、注目感知器からの距離に基づいて、図2(B)のグラフ(式もしくはテーブルデータ)を読み出し、このグラフを用いて周囲温度に対応した火災判定閾値を決定し設定する(ステップS9)。
【0027】
続いて、記憶装置23から上記周囲感知器の過去の検出温度を読み出して移動平均を算出しさらにその時間変化率を算出する(ステップS10)。その後、算出された温度の時間変化率が、ステップS8で設定した火災判定閾値を超えているか否か判定する(ステップS11)。周囲感知器が複数ある場合には、周囲感知器ごとに上記ステップS9~S11を実行する。そして、すべての周囲感知器について、検出温度の時間変化率が火災判定閾値を超えていない(No)と判定すると、ステップS13へ移行する。
一方、ステップS11ですべての周囲感知器について、時間変化率が火災判定閾値を超えている(Yes)と判定した場合には、ステップS12へ進み、当該注目感知器に関する発報フラグをオンにする。ここで、注目感知器が複数ある場合には、注目感知器ごとに上記ステップS5~S12を実行する。
【0028】
その後、ステップS13へ進み、発報フラグがオンになっている感知器があるか否か判定し、発報フラグがオンの注目感知器がない(No)と判定すると、前記ステップS3へ戻って上記処理を繰り返す。
一方、ステップS13で発報フラグがオンの注目感知器がある(Yes)と判定すると、ステップS14へ進み、発報フラグがオンになっている感知器の近傍で火災が発生していると判定して火災発報し、一連の処理を終了する。
上記のような手順で処理を実行にすることにより、非火災報(誤報)および失報を防ぎつつ、火災判定を行うことができる。
【0029】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、火災判定の条件として、熱感知器の検出温度の時間変化率が閾値以上となった場合に火災発生と判定としているが、熱感知器の検出温度と周囲温度との差あるいは感知器の検出温度の移動平均と周囲温度との差が所定の閾値を超えた場合に火災発生と判定するようにしても良い。
また、上記実施形態では、複数個の熱感知器の検出温度の平均値を求め、当該平均値の移動平均を周囲温度としているが、単に複数個の差動式熱感知器の検出温度の平均値を周囲温度とし、周囲温度と検出温度との差が所定の閾値を超えたか否かで火災発生を判定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0030】
11 火災受信機(受信機)
12 差動式熱感知器
13 信号線
21 信号受信部
22 演算処理装置
23 記憶装置
22A 移動平均算出手段
22B 第1火災判定閾値設定手段
22C 第2火災判定閾値設定手段
22D 温度変化率算出手段
22E 火災判定手段
図1
図2
図3
図4