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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115637
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/08 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B61D17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021369
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】後藤 友伯
(57)【要約】
【課題】側構体からの内装パネルへの振動を抑えた構造の鉄道車両を提供すること。
【解決手段】台枠11、屋根構体12、妻構体および側構体13によって構成される車両構体5の内部に、床板15や天井16そして内装パネル17によって車内6の空間が形成されたものであって、内装パネル17を側構体13に取り付けるための支持構造8が、内装パネル17を紐状部材23によって吊り下げる支持手段81と、内装パネル17を車体幅方向に防振部材33を介して支持する位置決め手段82と、を有する鉄道車両1。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠、屋根構体、妻構体および側構体によって構成される車両構体の内部に、床板や天井そして内装パネルによって車内の空間が形成された鉄道車両において、
前記内装パネルを前記側構体に取り付けるための支持構造が、前記内装パネルを紐状部材によって吊り下げる支持手段と、前記内装パネルを車体幅方向に防振部材を介して支持する位置決め手段と、を有する鉄道車両。
【請求項2】
前記支持手段は、前記側構体の内側面と前記内装パネルの外側面とに支持用ブラケットが固定され、その支持用ブラケット同士が紐状部材によって連結されたものであり、前記位置決め手段は、前記側構体の内側面と前記内装パネルの外側面とに連結用ブラケットが固定され、その連結用ブラケット同士が前記防振部材によって上下方向に連結されたものである、請求項1に記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記防振部材がゴム材で形成されたものである請求項1または請求項2に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記紐状部材がワイヤである請求項1または請求項2に記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記支持構造は、前記位置決め手段が前記支持手段の上部位置と下部位置とに配置された請求項1または請求項2に記載の鉄道車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側構体からの内装パネルへの振動を抑えるように、その内装パネルを支持する支持構造を備えた鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両100は、図5に示すように、台枠111、屋根構体112および側構体113によって構成される車両構体110の内部に、床板121や天井122そして、側面の内装パネル123によって車内120の空間が構成されている。その床板121や天井122そして内装パネル123は、台枠111、屋根構体112あるいは側構体113との間に支持部材131,132などによって連結され、車両構体110内に支持されるようにして組付けられている。こうした支持構造には、例えば下記特許文献1に記載するような吊り下げ式のものが存在する。
【0003】
同文献の支持構造は、例えば図5において破線で示すように、連結部材151の上下端部が側構体113と床板パネル121にそれぞれ結合されている。これにより、床板パネル121が側構体113に吊りさげられるようにして支持される。連結部材151は、ワイヤのほかロッド状部材などからなるものであり、座席の横に位置する窓を車体前後方向に挟むようにして複数個所に取り付けられている。なお、この従来例は、床板121が図5に示した支持部材131を伝う振動を遮断するため、床板121が吊り下げられて台枠111に対して揺動可能な構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-064374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の鉄道車両において、床板121や天井122、内装パネル123が一体になって構成されている場合、すなわち、車両の内装部分を構成する内板が一体となって連結部材151によって側構体113に吊り下げ支持されている場合、車体長手方向に連続する複数の内板同士の位置合わせも困難になると考えられる。具体的には、連結部材151は揺動可能であることから、内装パネルも揺動してしまう。これに対し前記従来の鉄道車両においては規制部材にて揺動範囲を規制しても良いとしているが、揺動の抑制ではないことから、内板同士の位置合わせが厳しくなることは避けられない。また、揺動が抑制されないという事は振動が伝搬することでもあるから、走行によって生じる側構体113からの振動が内装パネル123にまで伝達して騒音となって乗り心地を悪くしてしまう。
【0006】
一方、前記従来の鉄道車両において、床板121や天井122、内装パネル123が一体になって構成されていない場合、車両の内装部分を構成する内板である、床板121の水平方向の揺動を抑えるための規制部材(支持部材131)が取り付けられることから、内装パネル123は、側構体113にねじ等で剛に固定される必要がある。そのため、床構体111から床板121への振動伝達を遮断しても、側構体113から内装パネル123へ振動が伝達して騒音が発生してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、側構体からの内装パネルへの振動を抑えた構造の鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る鉄道車両は、台枠、屋根構体、妻構体および側構体によって構成される車両構体の内部に、床板や天井そして内装パネルによって車内の空間が形成されたものであって、前記内装パネルを前記側構体に取り付けるための支持構造が、前記内装パネルを紐状部材によって吊り下げる支持手段と、前記内装パネルを車体幅方向に防振部材を介して支持する位置決め手段と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
前記構成によれば、支持構造8が構成され、支持手段が内装パネルを紐状部材によって吊り下げ支持することにより、位置決め手段は、内装パネルをその重量を負担することなく正しい姿勢で取り付けるものとなるため、紐状部材および防振部材を伝達する側構体から内装パネルへの振動を効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】鉄道車両の一実施形態について内装パネルの支持構造を簡易的に示した図である。
図2】内装パネルに関する支持構造の構成を簡易的に示した図である。
図3】支持構造を構成する位置決め手段を図2の上側(矢印A方向)から示した図である。
図4】車内側から内装パネルを示した図である。
図5】車両構体内部に車内空間が構成されている従来の鉄道車両を示した断面図である。
図6図2と対比させた構成の支持構造の参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る鉄道車両の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態の鉄道車両について内装パネルの支持構造を示した図であり、車体の幅方向断面が簡易的に示されている。本実施形態の鉄道車両1は、図5に示す従来の鉄道車両と同じく台枠11、屋根構体12および側構体13、並びに不図示の妻構体によって構成される車両構体5の内部に、床板15や天井16そして内装パネル17によって車内6の空間が形成されている。その床板15、天井16および内装パネル17が車両構体5に支えられているが、鉄道車両1では床板15、天井16および内装パネル17は別部材であり、特に本実施形態では内装パネル17の支持構造8について説明する。
【0012】
ここで図2は、内装パネル17に関する支持構造8の構成を簡易的に示した図であり、角度や寸法比などは実際とは異なる表現になっている。支持構造8は、前記従来例と同様に吊り下げ支持構造であり、側構体13の内側面と内装パネル17の外側面に支持用ブラケット21,22が固定され、その支持用ブラケット21,22が紐状の支持部材23によって連結されている。支持用ブラケット21,22は、短冊形状の金属板をL字に折り曲げたL型ブラケットであり、側構体13の内側面や内装パネル17の外側面に対して直交するように起立した部分(L字に折り曲げた一端側)には連結孔210,220が形成されている。本実施例では支持用ブラケット21を側構体13の内側面の高所に、支持用ブラケット22を内装パネル17の外側面の低所に設けているが、この支持用ブラケット21,22の間隔は適宜変更可能である。なお、各構造体の車両の幅方向中心側の面を内側面、車両の幅方向外側の面を外側面とする。
【0013】
支持部材23は、支持用ブラケット21の連結孔210にその一端が、支持用ブラケット22の連結孔220に他端が連結される。本実施形態では、支持部材23に金属のワイヤが使用され、図示するように一直線に張られた状態で連結される。支持部材23は、内装パネル17を支えるものであるため一定以上の質量(内装パネルの質量+内装パネルに取付けられた部材の質量+乗客の質量)および走行により生じる振動に耐え得ることが可能な強度と、ワイヤのように可撓性を有する紐状部材であることが必要である。特に、支持部材23に可撓性を必要とするのは、金属ロッドのような棒材では側構体13からの振動が伝わりやすくなってしまうからである。従って、支持部材23は、ワイヤ以外にも必要とする強度を有するものであれば、繊維ロープなどであってもよい。
【0014】
一方で、可撓性を有する支持部材23だけでは、側構体13から一定の距離を保った状態で内装パネル17を位置決め支持することができない。そこで、本実施形態の支持構造8は、支持部材23などによる支持手段81のほかに位置決め手段82を組み合わせた構成になっている。すなわち、支持手段81は、内装パネル17を支持部材23によって吊り下げるように側構体13に対して支持させることはできるが、支持手段81が支えるのは上下方向の力だけである。すなわち支持手段81だけでは内装パネル17が車体幅方向には安定しない(厳密には車体長さ方向においても内装パネル単体だと安定しないが、隣接する内装パネルにより位置決め可能になるため本実施例では省略する)。支持構造8を構成する位置決め手段82は、そうした内装パネル17を車体幅方向に支持するものである。
【0015】
ここで、図3は、支持構造8を構成する位置決め手段82を図2の上側(矢印A方向)から示した図である。位置決め手段82は、支持手段81を上下に挟むように、支持用ブラケット21の上部と支持用ブラケット22の下部との2箇所に設けられ、それぞれが同じ構造によって構成されている。具体的には、側構体13と内装パネル17とに連結用ブラケット31,32が固定され、その連結用ブラケット31,32が防振部材33によって横方向に連結されている。連結用ブラケット31,32ともに短冊形状の金属板をL字に折り曲げたL型ブラケットであり、側構体13の内側面や内装パネル17の外側面に対して、突き出した平面部が平行になるように固定されている。
【0016】
位置決め手段82は、その連結用ブラケット31,32に上下方向に連結されたゴム状弾性体によって構成されたものである。この防振部材33は、円柱形状のゴム状弾性体に2枚の板が接着され一体になり、その一端部からボルト35が突き出している。こうした防振部材33は、一方の板34が連結用ブラケット31にネジ止めされるとともに、ボルト35が連結用ブラケットを貫通し、ナット36に締められることによって固定されている。従って、側構体13と内装パネル17とは、上下の連結用ブラケット31,32を防振部材33でつなぐ位置決め手段82により、車体幅方向に位置決め可能に連結される。なお、防振部材33は、後述する図6の防振部材203と同じ構造のものであるが、より小型であってゴム状弾性体にはバネ定数が小さい柔らかなゴム材が使用されている点に違いがある。
【0017】
ここで、図4は、車内6側から内装パネル17を示した図である。本実施形態の鉄道車両1は、高速列車を編成するものであり、その内装パネル17は、シート51に対応した窓52の一つ分で構成されている。従って、鉄道車両1には長手方向に複数の内装パネル17が取り付けられている。そして、1枚の内装パネル17ごとに破線で示す支持構造8が窓52を挟んだ前後2箇所に設けられている。それぞれの支持構造8は、2つの位置決め手段82が支持手段81を挟むように上下一直線上に配置されている。
【0018】
そして特に、図4に示す左右の位置決め手段82は、組み付け状態が左右対称になるように構成されている。すなわち、図2および図3に示す支持構造8や位置決め手段82は、図4に示す右側に位置するものであって、防振部材33のボルト35が図4の右側(シート51の位置の反対側)に突き出すようにして配置されている。これにより、内装パネル17の端部側から工具を差し込んで位置決め手段82におけるナット36の締め付け作業が行えるからである。なお、図2および図3に示す位置決め手段82は、防振部材33の板34が側構体13に固定された連結用ブラケット31にネジ止めされ、ボルト35が内装パネル17に固定された連結用ブラケット32に締結されているが、側構体13と内装パネル17に対する連結用ブラケット31、32の固定位置が反対であってもよい。
【0019】
ところで、本実施形態の支持構造8は、内装パネル17を支持手段81によって吊り下げているため、内装パネル17を安定させる位置決め手段82が用いられている。しかし、内装パネルの支持構造としては、従来例や本実施形態のように、吊り下げによる支持構造を採用することなく、内装パネルを位置決めすることで同時に支持するようにした構成も考えられる。例えば本実施形態の位置決め手段82について強度を高めた支持構造であり、図6は、その支持構造を図2と対比するように示した参考図である。
【0020】
この支持構造200は、本実施形態の位置決め手段82と同じように構成された連結手段210からなる。連結手段210は、L型の連結用ブラケット201,202が、側構体13の内側面や内装パネル17の外側面に対して、突き出した平面部211,221が上下平行になるようして固定されている。そして、平面部211,221に挟み込まれるようにして防振部材203が上下方向に固定されている。防振部材203は、円柱形状のゴム状弾性体231に上板233と下板234とが接着され一体になり、その上板233からボルト235が突き出している。
【0021】
連結手段210の連結用ブラケット201,202および防振部材203は、内装パネル17を支持するため、その重量に耐え得るように本実施形態の位置決め手段82よりも大きく形成され、ゴム状弾性体231にはより硬い(バネ定数の高い)ゴム材が使用されている。そして、連結手段210は、下板234が連結用ブラケット202の平面部221にネジ止めされるとともに、ボルト235が連結用ブラケット201の平面部211を貫通し、ナット締めによって固定されている。支持構造200は、こうした連結手段210が図4に示す位置決め手段82と同じ4箇所の位置に設けられ、側構体13に対して内装パネル17を支持するようにしている。
【0022】
しかし、こうした支持構造200は、連結手段210が内装パネル17の重量を支えることが必要であるため、ゴム状弾性体231にはバネ定数が大きなゴム材を使用しなければならなくなる。ところが、そうした硬いゴム状弾性体231では防振効果が十分に得られない結果となってしまう。つまり、高速走行によって生じる側構体13の振動が、硬いゴム状弾性体231によって十分に減衰されることなく内装パネル17にまで伝達され、車内の静粛性を損なってしまう。本実施形態の鉄道車両1は、こうした点を考慮した支持構造8となっている。
【0023】
支持構造8が、内装パネル17を支持する支持手段81と、内装パネル17を正しい姿勢で取り付けるための位置決め手段82とに分けられることで、側構体13から内装パネル17への振動の伝達が効果的に抑制できるようになった。つまり、支持手段81が内装パネル17を支えることにより、その重量を位置決め手段82が負担しなくてよくなった。そのため、防振部材33は図6に示すゴム状弾性体に比べてバネ定数を1/6から1/7程度にまで下げた柔らかいゴム材にすることができ、振動の伝達を大幅に防止することができるようになった。加えて支持手段81でも、内装パネル17を支える支持部材23を可撓性のワイヤにしたことで、振動の伝達を効果的に抑えることができている。
【0024】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では防振部材としてゴム材を使用したものを例に挙げたが、そのほかにバネなどを使用するものであってもよい。
また、前記実施形態の支持構造8は、支持手段81を挟むようにして上下の2箇所に位置決め手段82を配置したが、本発明は特にこうした配置や数に限定されるものではなく、内装パネルの大きさや構造によって適宜変更可能である。
【0025】
例えば、前記実施形態では防振部材33をゴム状弾性体としているが、防振性能を備えているのであればゴム状弾性体以外の弾性体を防振部材としても良い。
また、前記実施形態では連結用ブラケット31,32をL字状としているが、T字状などであってもよい。
更に、前記支持構造8は、防振部材33が連結用ブラケット31,32によって横向きの連結配置になっているが、車両構造によっては縦向きの連結配置にしたり、傾いた状態での連結配置にしたものであってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…鉄道車両 5…車両構体 8…支持構造 11…台枠 12…屋根構体 13…側構体 15…床板 16…天井 17…内装パネル 21,22…支持用ブラケット 23…支持部材 31,32…連結用ブラケット 33…防振部材 81…支持手段 82…位置決め手段

図1
図2
図3
図4
図5
図6