(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115652
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】凝集剤添加量調整装置、および凝集剤添加量調整方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/30 20060101AFI20240820BHJP
G01N 15/04 20060101ALI20240820BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20240820BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20240820BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20240820BHJP
C02F 1/56 20230101ALI20240820BHJP
【FI】
B01D21/30 A
G01N15/04 B
B01D21/01 B
C02F1/00 D
C02F1/00 V
C02F1/52 B
C02F1/56 B
C02F1/56 Z
C02F1/52 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021394
(22)【出願日】2023-02-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】591039078
【氏名又は名称】富士エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168952
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】松井 和義
(72)【発明者】
【氏名】山崎 伸一
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA21
4D015BB12
4D015EA03
4D015EA32
(57)【要約】
【課題】濁水に添加する凝集剤の添加量を調整すること。
【解決手段】
凝集剤添加量調整装置100は、凝集剤添加後の濁水の一部を取り込む原水投入口102と、原水投入口102から取り込まれた濁水を測定するレーザセンサー108と、レーザセンサーによる測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行う制御部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集剤添加後の濁水の一部を取り込む原水投入口と、
前記原水投入口から取り込まれた濁水を測定するレーザセンサーと、
前記レーザセンサーによる測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行う制御部とを備えることを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の凝集剤添加量調整装置において、
前記制御部は、前記レーザセンサーの測定値とあらかじめ設定されている判定用の閾値とを比較して判定結果がOKであるかNGであるかを判定し、判定結果がNGの場合には濁水に添加する凝集剤の量を所定量増加するように制御し、判定結果がOKの場合には濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御することを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項3】
請求項2に記載の凝集剤添加量調整装置において、
前記制御部は、判定結果がNGが所定回数連続した場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量増加するように制御することを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項4】
請求項2に記載の凝集剤添加量調整装置において、
前記制御部は、判定結果がOKが所定回数連続した場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御することを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の凝集剤添加量調整装置において、
透明の部材で構成された透明測定部をさらに備え、
前記レーザセンサーは、前記透明測定部を通過する濁水を測定することを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の凝集剤添加量調整装置において、
前記レーザセンサーによる測定時間は、使用する排水処理機の凝集沈降速度に合わせてあらかじめ算出されることを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項7】
請求項6に記載の凝集剤添加量調整装置において、
前記制御部は、原水投入口自動弁を開いて前記原水投入口から濁水の一部を取り込むとともに排水口自動弁を閉じ、オーバーフロー水感知センサーによってオーバーフロー水が感知されたときに原水投入口自動弁を閉じ、前記測定時間が経過するまでレーザセンサーによる測定を行った測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行い、前記測定時間が経過すると前記排水口自動弁を開いて濁水を排水することを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項8】
請求項7に記載の凝集剤添加量調整装置において、
前記制御部は、前記排水口自動弁を開いた後、あらかじめ設定された待機時間が経過した後に次の測定を開始することを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項9】
凝集剤添加後の濁水の一部を取り込む原水投入口と、
前記原水投入口から取り込まれた濁水を測定するレーザセンサーと、
前記レーザセンサーによる測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行う制御部とを備えた凝集剤添加量調整装置で実行される凝集剤添加量調整方法であって、
前記制御部は、原水投入口自動弁を開いて前記原水投入口から濁水の一部を取り込むとともに排水口自動弁を閉じ、オーバーフロー水感知センサーによってオーバーフロー水が感知されたときに原水投入口自動弁を閉じ、あらかじめ設定された測定時間が経過するまでレーザセンサーによる測定を行った測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行い、前記測定時間が経過すると前記排水口自動弁を開いて濁水を排水することを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【請求項10】
請求項9に記載の凝集剤添加量調整方法において、
前記制御部は、前記レーザセンサーの測定値とあらかじめ設定されている判定用の閾値とを比較して判定結果がOKであるかNGであるかを判定し、判定結果がNGの場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量増加するように制御し、判定結果がOKの場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御することを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【請求項11】
請求項10に記載の凝集剤添加量調整方法において、
前記制御部は、判定結果がNGが所定回数連続した場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量増加するように制御することを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【請求項12】
請求項10に記載の凝集剤添加量調整方法において、
前記制御部は、判定結果がOKが所定回数連続した場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御することを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載の凝集剤添加量調整方法において、
前記レーザセンサーは、透明の部材で構成された透明測定部を通過する濁水を測定することを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【請求項14】
請求項9~12のいずれか一項に記載の凝集剤添加量調整方法において、
前記レーザセンサーによる測定時間は、使用する排水処理機の凝集沈降速度に合わせてあらかじめ算出されることを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【請求項15】
請求項9~12のいずれか一項に記載の凝集剤添加量調整方法において、
前記制御部は、前記排水口自動弁を開いた後、あらかじめ設定された待機時間が経過した後に次の測定を開始することを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集剤添加量調整装置、および凝集剤添加量調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次のような濁水処理システムが知られている。この濁水処理システムでは、処理水のpH値と濁度の情報を取得し、取得した情報に応じてpH値を制御するための薬剤及び濁度を制御するための薬剤の添加量を決定して、決定した添加量の薬剤を注入する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の濁水処理システムでは、照射部と受光部を備えた濁度計を用い、照射部から受光部に向けて光を照射し、受光部に受光された光量を計測することで水の濁度を測定していた。このように、水の濁度を測定するために槽内に濁度計を設置した場合、測定部は濁水に浸かっているため汚れてしまい計測精度が低下する可能性があった。また、これを避けるためには定期的に測定部を清掃する必要があり、メンテナンスのために手間がかかっていた。このため、このような問題を解決するための技術が求められているが、従来は、この問題を解決するための技術については何ら検討されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による凝集剤添加量調整装置は、凝集剤添加後の濁水の一部を取り込む原水投入口と、原水投入口から取り込まれた濁水を測定するレーザセンサーと、レーザセンサーによる測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行う制御部とを備えることを特徴とする。
本発明による凝集剤添加量調整方法は、凝集剤添加後の濁水の一部を取り込む原水投入口と、原水投入口から取り込まれた濁水を測定するレーザセンサーと、レーザセンサーによる測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行う制御部とを備えた凝集剤添加量調整装置で実行される凝集剤添加量調整方法であって、制御部は、原水投入口自動弁を開いて原水投入口から濁水の一部を取り込むとともに排水口自動弁を閉じ、オーバーフロー水感知センサーによってオーバーフロー水が感知されたときに原水投入口自動弁を閉じ、測定時間が経過するまでレーザセンサーによる測定を行い、レーザセンサーによる測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行い、測定時間が経過すると排水口自動弁を開いて濁水を排水することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、濁水の測定のために濁水に非接触で計測できるレーザセンサーを用いるようにしたので、従来の浸漬式の濁度計で問題となっていた測定部の汚れによる検出精度の低下やメンテナンスの煩雑さをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】凝集剤添加量調整装置を利用した濁水処理設備における濁水処理の流れを模式的に示した図である。
【
図2】凝集剤添加量調整装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【
図3】凝集剤添加量調整装置を用いた凝集剤添加量調整処理の流れを示すフロー図である。
【
図4】レーザセンサーの測定値(%)と浮遊物質量SS(mg/L)の相関を示すグラフの一例を示すである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態における凝集剤添加量調整装置は、工場や工事現場などで発生した濁水に凝集剤を添加して浮遊物質を沈殿させることにより濁水を処理する際に、凝集剤の添加量を自動的に調整するために用いられる。本実施の形態では、濁水は以下のように処理される。
【0009】
工場や工事現場などで発生した濁水は原水槽に集められる。あらかじめ求めておいた凝集剤添加量の初期設定値に基づいて、濁水に対して初期量の無機凝集剤を添加して撹拌する。なお、無機凝集剤の添加は公知の方法を用いて行われる。ここでは、例えば、原水槽付属の撹拌機にて添加してもよいし、原水ポンプを用いて反応槽に送る配管に注薬してラインミキサー(混合撹拌器付配管)にて添加してもよいし、原水ポンプを用いて反応槽に送り反応槽撹拌機にて添加してもよい。その後、あらかじめ求めておいた凝集剤添加量の初期設定値に基づいて、濁水に対して初期量の高分子凝集剤を添加する。高分子凝集剤は反応槽撹拌機にて添加すればよいが、無機凝集剤を反応槽で混ぜる場合は高分子用反応槽を設けて添加する。凝集剤を添加した後の濁水は沈降分離槽へ移されるとともに、凝集剤添加後の濁水の一部は本実施の形態における凝集剤添加量調整装置に取り込まれる。凝集剤添加量調整装置では、後述するように取り込んだ濁水をレーザセンサーで計測し、測定結果に基づいて凝集剤の添加量を調整する。なお、
図1は、本実施の形態における凝集剤添加量調整装置100を利用した濁水処理設備における濁水処理の流れを模式的に示した図である。
【0010】
図2は、本実施の形態における凝集剤添加量調整装置の一実施の形態の構成を示す図である。
図2に示すように、凝集剤添加量調整装置100は、原水投入口自動弁101と、原水投入口102と、オーバーフロー水感知センサー103と、オーバーフロー口104と、排水口自動弁105と、排水口106と、透明測定部107と、レーザセンサー108と、清掃用上部開口部109とで構成されている。
【0011】
図2に示す凝集剤添加量調整装置100では、原水投入口自動弁101が開かれると凝集剤添加後の濁水の一部を原水投入口102から凝集剤添加量調整装置100に取り込むことができる。このとき排水口自動弁105を閉じると取り込まれた濁水が凝集剤添加量調整装置100内に溜まり、排水口自動弁105を開くと取り込まれた濁水は排水口106から排水される。また、オーバーフローした濁水はオーバーフロー水感知センサー103で検知されるとともに、オーバーフロー口104から排水される。また、凝集剤添加量調整装置100の上部には、凝集剤添加量調整装置100の内部を清掃するための清掃用上部開口部109が設けられている。
【0012】
透明測定部107にはガラス管や塩ビ管などの透明の部材が用いられ、この透明測定部107に設けられたレーザセンサー108で内部の濁水を測定することができるようになっている。なお、レーザセンサー108としては、公知の透過型レーザ判別センサーが用いられる。これによって、レーザセンサー108は非接触で濁水の測定を行うことができるため、従来の浸漬式の濁度計で問題となっていた測定部の汚れによる検出精度の低下やメンテナンスの煩雑さをなくすことができる。さらに、従来の濁度計は測定範囲を逸脱した場合や、濁水が強酸、強アルカリ、高水温の場合には正確に測定ができなかったが、レーザセンサー108を用いることによって濁水に接触せずに測定ができるため、この問題も解消することができる。
【0013】
なお、本実施の形態における凝集剤添加量調整装置100は、不図示の制御部を備えており、該制御部が凝集剤添加量調整装置100の各部を制御して後述する処理を実行する。本実施の形態では、制御部はCPUが格納された制御盤として構成されており、該制御盤にて無機凝集剤注薬ポンプ、高分子凝集剤注薬ポンプ、装置付属の自動弁開閉、レーザセンサー、及びタイマーの制御と、レーザセンサーを用いた測定や凝集剤添加量の調整処理などが行われる。また、制御盤にはタッチパネルが付いており、操作者は画面をタッチすることによって各機器の手動自動制御の切り替えを行うことができる。また、タッチパネルには、運転状態表示、タイマー時間の設定、レーザセンサーの測定値及び測定結果などが表示される。
【0014】
凝集剤添加量調整装置100の使用に当たっては事前に準備が行われている。事前準備の内容は、次のようになる。凝集沈降試験を行い凝集剤添加量の初期設定値を求める。浮遊物質量SS(mg/L)とレーザセンサー測定値(%)の相関を把握する。注薬ポンプ出量とインバーター周波数及びパルス信号の相関を把握する。制御盤に濁水量、測定待機時間、測定時間、注薬停止値(レーザセンサー測定値)を入力する。
【0015】
また、測定時間は、レーザセンサー108を用いて測定を行う時間であり、あらかじめ以下のように算出されている。本実施の形態では、測定時間は、使用する排水処理機の凝集沈降速度に合わせた値が算出される。例えば、凝集沈降速度3m/時間で、凝集剤添加量調整装置100の高さが30cmであれば、30cm/300cm×60分=6分となる。本実施の形態では測定時間は秒単位で設定されるため、6分×60秒=360秒となり、装置には360secが入力される。なお、凝集剤添加量調整装置100の高さは、レーザセンサー108のレーザ部からオーバーフロー水感知センサー103の配管位置までの距離とする。なお、排水処理機は、濁水量や処理条件等から選定され、使用する排水処理機により凝集沈降速度は異なる。
【0016】
図3は、本実施の形態における凝集剤添加量調整装置100を用いた凝集剤添加量調整処理の流れを示すフロー図である。以下、
図3を用いて本実施の形態における凝集剤添加量調整装置100による処理について説明する。なお、凝集剤添加量調整装置100には「入」ボタンと「切」ボタンがあり、
図3に示す処理は操作者によって「入」ボタンがONされると開始される。また、
図3に示す処理は操作者によって「切」ボタンがONされると終了する。
【0017】
凝集剤添加量調整装置100では、ステップS10において、制御部は、凝集剤添加後の濁水の一部を取り込むために原水投入口自動弁101を開き、排水口自動弁105を閉じる。これにより、原水ポンプ稼働時のみ凝集剤添加後の濁水が原水投入口102から凝集剤添加量調整装置100に流入する。
【0018】
ステップS20では、制御部は、オーバーフロー水感知センサー103によってオーバーフロー水が感知されたか否かを判断する。ステップS20で肯定判断した場合は、ステップS30へ進む。なお、オーバーフローが発生した場合、オーバーフロー水はオーバーフロー口104から排水される。
【0019】
ステップS30では、制御部は、原水投入口自動弁101を閉じる。なお、制御部が原水投入口自動弁101を閉じるように制御してから実際に原水投入口自動弁101が閉じるまでの時間は待機時間となる。
【0020】
ステップS40では、制御部は、レーザセンサー108による測定を開始する。本実施の形態における凝集剤添加量調整装置100では、上述したようにガラス管や塩ビ管などの透明測定部107にレーザセンサー108が設けされており、透明測定部107を通過する濁水をレーザセンサー108で測定することができる。なお、レーザセンサー108の測定値は、レーザの照射量に対する受光量(%)であるため、濁水の濁りの度合いによって受光量(%)は変化する。このため、レーザセンサー108の測定値に基づいて濁水の凝集フロック沈降速度と凝集フロック沈降後の上澄み水の濁りの度合いを把握することができる。例えば、レーザセンサー108を用いると浮遊物質量SSが100以下の場合に測定が可能となる。
【0021】
ステップS50では、制御部は、レーザセンサー108による測定が終了したか否かを判断する。本実施の形態では、制御部は、レーザセンサー108による測定を開始してから、上述した事前準備で算出しておいた測定時間が経過した場合にレーザセンサー108による測定が終了すると判断する。ここでは、例えば、レーザセンサー108による測定を開始してから360秒経過したときに、レーザセンサー108による測定を終了するものとする。ステップS50で肯定判断した場合には、ステップS60へ進む。
【0022】
ステップS60では、制御部は、測定が終了した時点におけるレーザセンサー108による測定結果に基づいて、濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行う。本実施の形態では、レーザセンサー108の測定値(%)とあらかじめ設定されている判定用の閾値とを比較して、判定結果がOKであるかNGであるかを判定する。以下、判定用の閾値について説明する。
【0023】
本実施の形態では、レーザセンサー108の測定値、すなわちレーザの照射量に対する受光量(%)と浮遊物質量SS(mg/L)の関連があらかじめ求められている。
図4は、レーザセンサー108の測定値(%)と浮遊物質量SS(mg/L)の相関を示すグラフの一例を示すである。本実施の形態では、
図4に示すようなレーザセンサー108の測定値(%)と浮遊物質量SS(mg/L)の相関関係に基づいて、凝集剤の添加量を調整するための判定結果がOKであるかNGであるかを判定するための閾値(%)があらかじめ設定されている。例えば、一般的な放流基準となる浮遊物質量SSが25mg/Lと設定されている場合は、レーザセンサー108の測定値(%)と浮遊物質量SS(mg/L)の相関関係に基づいて、放流基準となるレーザセンサー108の測定値は46%と求められる。本実施の形態では、判定用の閾値として例えば46%が設定されており、制御部は、レーザセンサー108の測定値が46%より小さい場合には判定結果をNGと判定する。これによって浮遊物質量SSが25mg/Lより大きい場合はNGと判定される。また、制御部は、レーザセンサー108の測定値が46%以上の場合には判定結果をOKと判定するように閾値が設定される。これによって浮遊物質量SSが25mg/L以下の場合はOKと判定される。
【0024】
制御部は、判定結果がNGの場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量増加するように制御する。例えば、高分子凝集剤の濁水1L当たりの添加量を1mg増加させるように制御する。また、無機凝集剤の濁水1L当たりの添加量を10mg増加させるように制御する。一方、制御部は、判定結果がOKが3回連続した場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御する。例えば、高分子凝集剤の濁水1L当たりの添加量を1mg減少させるように制御する。また、無機凝集剤の濁水1L当たりの添加量を10mg減少させるように制御する。
【0025】
ステップS70では、制御部は、排水口自動弁105を開く。これにより、凝集剤添加量調整装置100に取り込まれた濁水は、排水口106から排水される。
【0026】
ステップS80では、制御部は、次の測定開始まで待機する。次の測定開始までの待機時間は事前に任意の秒数が設定されている。本実施の形態では、次測定開始待機時間として例えば15secが設定されており、制御部は、15秒間待機した後にステップS10からの処理を繰り返す。なお、上述したように、操作者によって「切」ボタンがONされると処理を終了する。
【0027】
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)凝集剤添加量調整装置100は、凝集剤添加後の濁水の一部を取り込む原水投入口102と、原水投入口102から取り込まれた濁水を測定するレーザセンサー108と、レーザセンサーによる測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行う制御部とを備えるようにした。これによって、レーザセンサー108は非接触で濁水の測定を行うことができるため、従来の浸漬式の濁度計で問題となっていた測定部の汚れによる検出精度の低下やメンテナンスの煩雑さをなくすことができる。さらに、従来の濁度計は測定範囲を逸脱した場合や、濁水が強酸、強アルカリ、高水温の場合には正確に測定ができなかったが、レーザセンサー108を用いることによって濁水に接触せずに測定ができるため、この問題も解消することができる。
【0028】
(2)制御部は、レーザセンサー108の測定値とあらかじめ設定されている判定用の閾値とを比較して判定結果がOKであるかNGであるかを判定し、判定結果がNGの場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量増加するように制御し、判定結果がOKが3回連続した場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御するようにした。これによって、レーザセンサー108の測定値に基づいて濁水の凝集フロック沈降速度と凝集フロック沈降後の上澄み水の濁りの度合いを把握することができるため、濁水の凝集フロック沈降速度と凝集フロック沈降後の上澄み水の濁りの度合いに応じて凝集剤の添加量を調整することができる。
【0029】
(3)凝集剤添加量調整装置100は、透明の部材で構成された透明測定部107をさらに備え、レーザセンサー108は、透明測定部107を通過する濁水を測定するようにした。これによって、レーザセンサー108を濁水に接触させることなく、透明測定部107を介して濁水のSS分沈降後の上澄み水を測定することができる。
【0030】
(4)レーザセンサー108による測定時間は、使用する排水処理機の凝集沈降速度に合わせてあらかじめ算出されるようにした。これによって、レーザセンサー108による測定精度を向上させることができる。
【0031】
(5)制御部は、原水投入口自動弁101を開いて原水投入口102から濁水の一部を取り込むとともに排水口自動弁105を閉じ、オーバーフロー水感知センサー103によってオーバーフロー水が感知されたときに原水投入口自動弁101を閉じ、測定時間が経過するまでレーザセンサー108による測定を行った測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行い、測定時間が経過すると排水口自動弁105を開いて濁水を排水するようにした。これによって、原水投入口102から濁水の一部を取り込んでレーザセンサー108による測定を行い、測定結果に基づいて凝集剤の添加量を調整することができる。
【0032】
(6)制御部は、排水口自動弁105を開いた後、あらかじめ設定された待機時間が経過した後に次の測定を開始するようにした。これによって、凝集剤添加量調整装置100から濁水が排水されるのを待ってから次の測定を開始することができる。
【0033】
(7)さらに、本実施の形態における凝集剤添加量調整装置100によれば、次のような効果も得ることができる。
(a)省力化
濁水非接触センサーの採用で、センサー測定部が汚れにくいため、清掃の手間と時間が減る。
凝集沈降試験(ジャーテストやシリンダーテスト)と同じ動作を自動で、連続的に行われる。
装置であるため、試験に掛かっていた手間と時間が省ける。
(b)安定した処理水質の確保
測定範囲に縛られる事がないため、範囲逸脱による処理水濁度の悪化がない。
凝集フロック沈降速度の測定をレーザセンサー108で行うので、個人の所見に左右されない正確な適正添加量調整が可能となり、より確実に濁水処理を行う事が出来る。
処理水SSの良否が、沈降分離槽手前で確認出来るため、凝集剤添加量調整装置のトラブルや濁水性状の大幅な変動による処理水の悪化を早期に発見可能となった。
【0034】
―変形例―
なお、上述した実施の形態の凝集剤添加量調整装置は、以下のように変形することもできる。
(1)上述した実施の形態では、制御部は、判定結果がOKが3回連続した場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御する例について説明した。しかしながら、濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御する条件は、判定結果がOKの状態が3回連続した場合には限定されない。例えば、判定結果がOKが1回の場合に濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御してもよいし、判定結果がOKの状態が3回以外の複数回連続したときに濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御してもよい。
【0035】
(2)上述した実施の形態では、制御部は、判定結果がNGの場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量増加するように制御する例について説明した。しかしながら、濁水に添加する凝集剤の量を所定量増加するように制御する条件は、判定結果がNGの状態が所定回数連続した場合とするようにしてもよい。例えば、判定結果がNGの状態が2回連続した場合に濁水に添加する凝集剤の量を所定量増加するように制御してもよい。
【0036】
なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における構成に何ら限定されない。また、上述の実施の形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
100 凝集剤添加量調整装置
101 原水投入口自動弁
102 原水投入口
103 オーバーフロー水感知センサー
104 オーバーフロー口
105 排水口自動弁
106 排水口
107 透明測定部
108 レーザセンサー
109 清掃用上部開口部
【手続補正書】
【提出日】2023-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集剤添加後の濁水の一部を取り込む原水投入口と、
前記原水投入口から取り込まれた濁水を測定するレーザセンサーと、
前記レーザセンサーによる測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行う制御部とを備え、
前記制御部は、原水投入口自動弁を開いて前記原水投入口から濁水の一部を取り込むとともに排水口自動弁を閉じ、オーバーフロー水感知センサーによってオーバーフロー水が感知されたときに原水投入口自動弁を閉じ、あらかじめ設定された測定時間が経過するまでレーザセンサーによる測定を行った測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行い、前記測定時間が経過すると前記排水口自動弁を開いて濁水を排水することを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の凝集剤添加量調整装置において、
前記制御部は、前記レーザセンサーの測定値とあらかじめ設定されている判定用の閾値とを比較して判定結果がOKであるかNGであるかを判定し、判定結果がNGの場合には濁水に添加する凝集剤の量を所定量増加するように制御し、判定結果がOKの場合には濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御することを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項3】
請求項2に記載の凝集剤添加量調整装置において、
前記制御部は、判定結果がNGが所定回数連続した場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量増加するように制御することを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項4】
請求項2に記載の凝集剤添加量調整装置において、
前記制御部は、判定結果がOKが所定回数連続した場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御することを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の凝集剤添加量調整装置において、
透明の部材で構成された透明測定部をさらに備え、
前記レーザセンサーは、前記透明測定部を通過する濁水を測定することを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の凝集剤添加量調整装置において、
前記レーザセンサーによる測定時間は、使用する排水処理機の凝集沈降速度に合わせてあらかじめ算出されることを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の凝集剤添加量調整装置において、
前記制御部は、前記排水口自動弁を開いた後、あらかじめ設定された待機時間が経過した後に次の測定を開始することを特徴とする凝集剤添加量調整装置。
【請求項8】
凝集剤添加後の濁水の一部を取り込む原水投入口と、
前記原水投入口から取り込まれた濁水を測定するレーザセンサーと、
前記レーザセンサーによる測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行う制御部とを備えた凝集剤添加量調整装置で実行される凝集剤添加量調整方法であって、
前記制御部は、原水投入口自動弁を開いて前記原水投入口から濁水の一部を取り込むとともに排水口自動弁を閉じ、オーバーフロー水感知センサーによってオーバーフロー水が感知されたときに原水投入口自動弁を閉じ、あらかじめ設定された測定時間が経過するまでレーザセンサーによる測定を行った測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行い、前記測定時間が経過すると前記排水口自動弁を開いて濁水を排水することを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【請求項9】
請求項8に記載の凝集剤添加量調整方法において、
前記制御部は、前記レーザセンサーの測定値とあらかじめ設定されている判定用の閾値とを比較して判定結果がOKであるかNGであるかを判定し、判定結果がNGの場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量増加するように制御し、判定結果がOKの場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御することを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【請求項10】
請求項9に記載の凝集剤添加量調整方法において、
前記制御部は、判定結果がNGが所定回数連続した場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量増加するように制御することを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【請求項11】
請求項9に記載の凝集剤添加量調整方法において、
前記制御部は、判定結果がOKが所定回数連続した場合には、濁水に添加する凝集剤の量を所定量減少するように制御することを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の凝集剤添加量調整方法において、
前記レーザセンサーは、透明の部材で構成された透明測定部を通過する濁水を測定することを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【請求項13】
請求項8~11のいずれか一項に記載の凝集剤添加量調整方法において、
前記レーザセンサーによる測定時間は、使用する排水処理機の凝集沈降速度に合わせてあらかじめ算出されることを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【請求項14】
請求項8~11のいずれか一項に記載の凝集剤添加量調整方法において、
前記制御部は、前記排水口自動弁を開いた後、あらかじめ設定された待機時間が経過した後に次の測定を開始することを特徴とする凝集剤添加量調整方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明による凝集剤添加量調整装置は、凝集剤添加後の濁水の一部を取り込む原水投入口と、原水投入口から取り込まれた濁水を測定するレーザセンサーと、レーザセンサーによる測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行う制御部とを備え、制御部は、原水投入口自動弁を開いて原水投入口から濁水の一部を取り込むとともに排水口自動弁を閉じ、オーバーフロー水感知センサーによってオーバーフロー水が感知されたときに原水投入口自動弁を閉じ、あらかじめ設定された測定時間が経過するまでレーザセンサーによる測定を行った測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行い、測定時間が経過すると排水口自動弁を開いて濁水を排水することを特徴とする。
本発明による凝集剤添加量調整方法は、凝集剤添加後の濁水の一部を取り込む原水投入口と、原水投入口から取り込まれた濁水を測定するレーザセンサーと、レーザセンサーによる測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行う制御部とを備えた凝集剤添加量調整装置で実行される凝集剤添加量調整方法であって、制御部は、原水投入口自動弁を開いて原水投入口から濁水の一部を取り込むとともに排水口自動弁を閉じ、オーバーフロー水感知センサーによってオーバーフロー水が感知されたときに原水投入口自動弁を閉じ、測定時間が経過するまでレーザセンサーによる測定を行い、レーザセンサーによる測定結果に基づいて濁水に投入する凝集剤の添加量を調整するための処理を行い、測定時間が経過すると排水口自動弁を開いて濁水を排水することを特徴とする。