(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011567
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】医療用カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
A61M25/00 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113659
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(71)【出願人】
【識別番号】599045903
【氏名又は名称】学校法人 久留米大学
(71)【出願人】
【識別番号】519285857
【氏名又は名称】MDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 晃平
(72)【発明者】
【氏名】藤村 大介
(72)【発明者】
【氏名】幸 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 仁人
(72)【発明者】
【氏名】木下 正啓
(72)【発明者】
【氏名】岩田 欧介
(72)【発明者】
【氏名】望月 学
(72)【発明者】
【氏名】今村 保夫
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB42
4C267BB63
4C267CC07
4C267HH22
(57)【要約】
【課題】本発明は吐出口の位置を正確に把握することが可能な医療用カテーテルを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の医療用カテーテルは、体内に挿入されるチューブと、前記チューブの先端部に配置されるオリーブと、前記オリーブに備えられる発光体と、前記チューブの基端部に接続されるコネクタと、を備える医療用カテーテルであって、前記オリーブには、薬液を吐出する開口部が形成されている医療用カテーテルである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入されるチューブと、
前記チューブの先端部に配置されるオリーブと、
前記オリーブに備えられる発光体と、
前記チューブの基端部に接続されるコネクタと、を備える医療用カテーテルであって、
前記オリーブには、薬液を吐出する開口部が形成された、医療用カテーテル。
【請求項2】
前記開口部は、前記チューブの先端部側の端面から、前記発光体の前記チューブ側の外縁までの間に配置されている、
請求項1に記載の医療用カテーテル。
【請求項3】
前記開口部の前記発光体側の外縁から、前記発光体の前記開口部側の外縁までの距離は、前記開口部の前記オリーブの長手方向における長さの3倍よりも短い、
請求項1又は2に記載の医療用カテーテル。
【請求項4】
前記発光体は、前記オリーブの内部において発光体保護部で覆われている、
請求項1又は2に記載の医療用カテーテル。
【請求項5】
前記オリーブは、丸管型の形状を有し、
前記開口部は、前記丸管型の形状の径方向において対向する位置に配置されている、
請求項1又は2に記載の医療用カテーテル。
【請求項6】
前記チューブは、丸管型の形状を有する管部を含み、
前記管部には、前記管部の長手方向に沿って、少なくとも2本の導線が埋設されている、
請求項1又は2に記載の医療用カテーテル。
【請求項7】
前記の少なくとも2本の導線は、
前記管部において、前記丸管型の形状の半径方向に直交する方向に並列して配置されている、
請求項6に記載の医療用カテーテル。
【請求項8】
前記の少なくとも2本の導線は、
前記管部において、対向する2つの部位に個別に、各々1つずつ配置されている、
請求項6に記載の医療用カテーテル。
【請求項9】
前記導線は、透明電極である、
請求項6に記載の医療用カテーテル。
【請求項10】
前記コネクタは、
前記チューブの前記基端部が接続されるチューブ接続ポートと、
前記チューブに薬液を供給する薬液供給装置が接続される薬液ポートと、
前記発光体に電力を供給する電力供給装置が接続される電源ポートと、を備え、
前記薬液ポートは、前記チューブ接続ポートに連通し、また前記チューブ接続ポートと同軸上に配置される、
請求項1又は2に記載の医療用カテーテル。
【請求項11】
前記発光体と前記電力供給装置とを接続する導線を更に備え、
前記電源ポートは、前記導線が挿通される導線挿通孔を備え、
前記導線挿通孔には、導線保護部が設けられている、
請求項10に記載の医療用カテーテル。
【請求項12】
前記発光体に電力を供給する電力供給装置であって、
前記電力供給装置が誘電コイルと、受電コイルと、を備える
請求項1又は2に記載の医療用カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用カテーテルであって、体内に挿入されるチューブと、チューブの先端側に設けられ、チューブの位置を確認するための光を放出する発光部と、が備えられた医療用カテーテルが知られている。
例えば、特許文献1には、チューブの先端からさらに延在する複数個の基板部分を備え、その基板部分に発光素子を備えるカテーテル装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開番号WO2018/221404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の医療用カテーテルは、薬剤の吐出口と発光部とが離れており、吐出口の位置を正確に把握することが困難であるとの問題を有する。
【0005】
本発明は、吐出口の位置を正確に把握することが可能な医療用カテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
医療用カテーテルは、
体内に挿入されるチューブと、
前記チューブの先端部に配置されるオリーブと、
前記オリーブに備えられる発光体と、
前記チューブの基端部に接続されるコネクタと、を備える医療用カテーテルであって、
前記オリーブには、薬液を吐出する開口部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吐出口の位置を正確に把握することが可能な医療用カテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の医療用カテーテルの斜視図である。
【
図2】
図1のA-A線断面を模擬的に示す図である。
【
図3】
図2のB-B線断面を模擬的に示す図である。
【
図4】実施例1の医療用カテーテルを示し、(a)は医療用カテーテルの側面図であり、(b)は(a)の断面を模擬的に示す図である。
【
図5】
図4(a)のC-C線断面を模擬的に示す図である。
【
図6】実施例1の変形例2を示し、(a)は
図4(b)の枠囲みAに対応する部分を示す図であり、(b)は
図4(a)のC-C線断面を模擬的に示す図である。
【
図7】実施例2の医療用カテーテルを示し、(a)は医療用カテーテルの側面図であり、(b)は
図1のA-A線に対応する方向での(a)の断面を模擬的に示す図である。
【
図8】
図7(a)のD-D線断面を模擬的に示す図である。
【
図9】(a)は医療用カテーテルの側面図であり、(b)は
図1のA-A線に対応する方向での(a)の断面を模擬的に示す図であり、(c)は(a)のE-E線断面を模擬的に示す図である。
【
図10】実施例3の医療用カテーテルのオリーブの近傍部分を示し、(a)は
図2のA-A線断面を模擬的に示す図であり、(b)は
図2のB-B線断面を模擬的に示す図である。
【
図11】実施例4の医療用カテーテルの側面図である。
【
図12】オリーブの近傍部分を示し、(a)は
図2のA-A線断面を模擬的に示す図であり、(b)は
図2のB-B線断面を模擬的に示す図である。
【
図13】第2の実施形態のコネクタの断面を模擬的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について
図1から
図12に基づいて説明する。
<医療用カテーテルの全体構成>
図1に基づいて医療用カテーテル1の全体構成について説明する。
図1は、第1の実施形態の医療用カテーテル1の斜視図である。
医療用カテーテル1は、薬剤を患者の体外から体内に供給するための装置である。薬剤は、例えば栄養剤や白湯、治療薬などを含む。例えば、医療用カテーテル1は患者の体内に消化管を介して栄養剤等を供給するのに好適に使用される。他にも膀胱や肝臓、脳等の患者患部へ治療薬を送達するのに用いることができる。
医療用カテーテル1は、医療従事者などが患者などの体内に挿入することで使用される。以下、医療用カテーテル1を使用する医療従事者などを使用者ということがある。また、医療用カテーテル1を挿入される患者などを被使用者ということがある。
図1に示すように、医療用カテーテル1は、チューブ10、コネクタ50、オリーブ20及び電力供給装置(図示せず)を備える。また、以下の説明において、
図1に示す両矢印方向を、チューブ10やオリーブ20における長手方向とする。
【0010】
チューブ10は、丸管型の形状を有する管である。薬液は、チューブ10を介して体外から体内に供給される。
【0011】
コネクタ50は、チューブ10と、電力供給装置及び薬液供給装置(いずれも図示せず)などとを接続するための部材である。コネクタ50は、チューブ10の一方の端部である基端部14に接続されている。
【0012】
チューブ10の先端が体内の臓器などに直接に接すると、臓器などが傷つく場合がある。オリーブ20は、体内が傷つくことを抑制するために、チューブ10に取り付けられる部材である。
オリーブ20は、チューブ10の他方の端部である先端部12に接続されている。
オリーブ20には、薬液吐出口22が形成されている。薬液吐出口22は、薬液を体内に吐出するための貫通孔である。薬液吐出口22は、開口部の一実施形態である。
オリーブ20の内部には、発光体(図示せず)が備えられている。発光体については後に説明する。
【0013】
電力供給装置は、発光体に電力を供給するための装置である。電力供給装置には種々の構成が考えられる。電力供給装置については後に説明する。
【0014】
<医療用カテーテルの断面構造>
図2に基づいて、医療用カテーテル1の構成についてより詳しく説明する。
図2は、
図1のA-A線断面を模擬的に示す図である。
【0015】
<チューブ>
図2に示すように、チューブ10は、長手方向D1に延在する管部18を備える。管部18は、例えば可撓性を有する樹脂やゴムなどで形成されている。また、チューブ10は、管部18に囲まれた部分である流路16を備える。
管部18の内部には、電力供給装置82とLED30とを接続する導線60が埋設されている。
【0016】
<オリーブ>
チューブ10の先端部12には、オリーブ20が備えられている。
オリーブ20は、その一端が閉塞された丸管型の形状を有している。また、オリーブ20は、チューブ10の一端に対するキャップになるような形状を有している。
オリーブ20は、チューブ10の管部18に嵌め込まれることで、チューブ10の先端部12に固定されている。オリーブ20は、樹脂などで形成することができる。
【0017】
<薬液吐出口>
オリーブ20の側面25には、薬液吐出口22が形成されている。薬液吐出口22は、前述のようにオリーブ20の管部28に形成された丸型の形状を有する貫通孔である。薬液吐出口22は、オリーブ20の側面25の対向する位置に1つずつ、合計2つ形成されている。
図3は、医療用カテーテル1のオリーブ20の近傍部分を示す図であり、
図2のB-B線断面を模擬的に示している。
図3に示すように、1つの薬液吐出口22と対向する位置に、もう1つの薬液吐出口22が形成されている。また、2つの薬液吐出口22は、同じ形状を有している。
【0018】
薬液吐出口22からは、薬液が体内に吐出される。薬液の流れは次のとおりである。薬液は、コネクタ50に備えられた薬液ポート52から、コネクタ50内に注入される。注入された薬液は、コネクタ50内の流路54を介して、チューブ10の流路16に流入する。流入した薬液は、流路16をオリーブ20まで進み、オリーブ20の薬液吐出口22から吐出される。
【0019】
<発光体>
オリーブ20の先端部26におけるオリーブ20の内部にはLED30が備えられている。LED30は、発光体の一実施形態である。
LED30には電力供給装置82から電力が供給される。LED30は、この電力で発光する。LED30が発光することで、医療用カテーテル1の使用者は、被使用者の体内における薬液吐出口22の位置を被使用者の体外から把握することができる。
【0020】
<発光体保護部>
LED30は、オリーブ20の内部においてLED保護部24に覆われている。LED保護部24は、発光体保護部の一実施形態である。
LED30の表面及びLED30と導線60の接続部は、LED保護部24に覆われることで、オリーブ20の内部において露出されていない。LED30と導線60の接続部が少なくともLED保護部24に覆われていれば、LED30の表面は必ずしも覆われている必要はない。LED保護部24により、医療用カテーテル1の電気的な接続部が被使用者の体液(特に胃液や腸液)やチューブ10を介して被使用者の体内に流れ込んだ薬液に触れることがない。
LED保護部24は、例えば耐水性を有する樹脂で形成することができる。これにより、LED30を薬液から保護することができる。
また、LED保護部24を形成する材料を接着剤とすることが好ましい。これにより、LED30を保護することに加えて、LED30をオリーブ20の内部に固定することができる。更には、接着剤は複雑なLED30と導線60との接続部の隙間にいき渡り、所望のLED保護部を形成することができるので、より容易にLED保護部を製造することができる。
【0021】
<薬液吐出口とLEDとの位置関係>
LED30と薬液吐出口22とは近接した位置に配置されている。これにより、薬液吐出口22の体内における位置を正確に把握することができる。
【0022】
医療用カテーテル1の使用者は、医療用カテーテル1を被使用者の体内に挿入したのち、LED30を発光させる。LED30が発光した光は、臓器や皮膚などを透過して体外に出射される。この体外に出射された光により、使用者は被使用者の体内におけるLED30の位置を把握することができる。
使用者が薬液吐出口22の位置を正確に把握するためには、LED30と薬液吐出口22とが近い位置に配置されている必要がある。
【0023】
本実施形態の医療用カテーテル1では、LED30と薬液吐出口22とが近接した位置に配置されている。そのため、医療用カテーテル1の使用者は、LED30から出射される光に基づいて、薬液吐出口22の位置を正確に把握することができる。
【0024】
薬液吐出口22の位置を正確に把握することで、体内の誤った位置に薬液を吐出させることを抑制することができる。
特に医療用カテーテル1の被使用者が新生児などの体が大きくない者である場合などには、薬液吐出口22の位置を正確に把握することが重要になる。被使用者が新生児である場合、薬液吐出口22の体内での位置が予定位置から数cmずれることで、薬液が誤った臓器に吐出されることがあるためである。
【0025】
薬液吐出口22とLED30との位置関係について具体的に説明する。
図2に、チューブ10の先端部12側の端面の位置を線L1で示す。また、LED30のチューブ10側の外縁の位置を線L2で示す。
薬液吐出口22は、線L1と線L2との間に配置されている。これにより、薬液吐出口22をLED30に近接した位置に配置することができる。
【0026】
薬液吐出口22の上述の配置以外の配置としては、例えば、オリーブ20に覆われていない位置のチューブ10の管部18に貫通孔を形成し、その貫通孔から薬剤を吐出させることが考えられる。
また、薬液吐出口22の他の配置として、オリーブ20がチューブ10の管部18を覆う位置において、チューブ10の管部18及びオリーブ20の管部28を貫通する貫通孔を形成し、その貫通孔から薬剤を吐出させることが考えられる。
薬液吐出口22を上述のように配置した場合、薬液吐出口22とLED30との間の距離が長くなる。
これに対して、本実施形態では、薬液吐出口22は、チューブ10とLED30との間、正確には、線L1と線L2との間に配置されている。これにより、薬液吐出口22とLED30との間の距離を短くすることができる。その結果、医療用カテーテル1の使用者は、薬液吐出口22の位置を正確に把握することができる。
【0027】
図2に、長手方向D1における、薬液吐出口22のコネクタ50側の外縁の位置を線L3で示す。また、長手方向D1における、薬液吐出口22のLED30側の外縁の位置を線L4で示す。線L3と線L4との距離をd2とする。この距離d2は、薬液吐出口22の長手方向D1における長さである。
また、長手方向D1における、薬液吐出口22のLED30側の外縁の位置を示す線L4と、LED30の薬液吐出口22側の外縁の位置を示す線L2との距離をd1とする。この距離d1は、薬液吐出口22とLED30との距離である。
本実施形態の薬液吐出口22では、距離d1は、距離d2の3倍よりも小さい。このように、薬液吐出口22をLED30に近接した位置に配置することで、薬液吐出口22の位置を正確に把握することができる。
なお、距離d1は、薬液吐出口22の位置を正確に把握するとの観点のみからは、短い方が好ましい。ただし、距離d1が短くなると、例えば薬液吐出口22とLED保護部24が重なるなどの不具合が生じる場合がある。そこで、距離d1を短くしすぎず、距離d2の3倍よりも小さい値とすることで、不具合を回避しながらも、薬液吐出口22の位置を正確に把握することが可能になる。
【0028】
<コネクタ>
つぎにコネクタ50について説明する。
図2に示すように、コネクタ50は、チューブ接続ポート51、薬液ポート52及び電源ポート53を備えている。
チューブ接続ポート51にはチューブ10の基端部14が挿入されている。
【0029】
薬液ポート52には薬液供給装置(図示せず)が接続される。薬液供給装置は、コネクタ50の内部の流路54に薬液を注入するための装置である。ここで、薬液ポート52は、チューブ接続ポート51に連通している。また、薬液ポート52は、前記チューブ接続ポートと同軸上に配置されている。これにより、コネクタ50の流路54は、薬液ポート52からチューブ接続ポート51まで、直線状に延在する。薬液の注入については後に説明する。
【0030】
<電力供給装置>
電源ポート53には電力供給装置82が接続されている。電源ポート53は、チューブ接続ポート51と薬液ポート52とを結ぶ軸とは異なる方向に向けて形成されている。そのため、電力供給装置82は、流路54に対して側方からコネクタ50に接続されている。
電力供給装置82は、LED30に電力を供給するための装置である。電力供給装置82には、電池84が備えられている。また、電力供給装置82には、電池84を交換などする際に着脱可能な蓋86が設けられている。
電力供給装置82からは、導線60が引き出されている。導線60は、LED30に接続されている。これにより、電力供給装置82からLED30に電力が供給されている。
【0031】
<導線挿通孔>
図2に示す電力供給装置82は、コネクタ50に、電源ポート53を介してコネクタ50と一体として備えられている。
コネクタ50の電源ポート53には、導線挿通孔55が備えられている。導線挿通孔55には、電力供給装置82から引き出された導線60が配置されている。
導線60は、導線挿通孔55から引き出された後、流路54を介して、チューブ10の基端部14側の端部まで引き回されている。そして、導線60は、チューブ10の基端部14側の端部からチューブ10の管部18の内部に引き込まれている。
【0032】
<封止材>
導線挿通孔55には封止材56が備えられている。封止材56は、導線保護部の一実施形態である。
封止材56は、導線挿通孔55をふさぐように導線挿通孔55の内部に配置されている。これにより、電力供給装置82に薬剤が至ることを抑制することができる。また、導線挿通孔55内の導線60が、薬剤に触れることを抑制することができる。
封止材56は、LED保護部24と同様の材料で形成することができる。これにより、封止材56にも耐水性が付与される。
【0033】
封止材56は、さらに、流路54の導線60を覆うように配置されている。具体的には、導線挿通孔55の流路54側の一端から、チューブ10の基端部14の端面まで、導線60を覆うように封止材56が配置されている。これにより、流路54の中の導線60が、薬剤に触れることを抑制することができる。
【0034】
<導線>
導線60の種類は特には限定されないが、例えば、TPU銅線を用いることができる。TPU銅線とは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーによって銅線が被覆された導線60を意味する。導線60にTPU銅線を使用することで、導線に薬剤が直接触れることを抑制することができる。銅線を被覆する部材は熱可塑性ポリウレタンエラストマーでなくてもよく、柔軟性のある熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、テフロン(登録商標)等の材質であってもよい。
導線60は必ずしも熱可塑性ポリウレタンエラストマー等の樹脂によって銅線が被覆されている必要はなく、むき出しの銅線自体がチューブ10の中に配置されていてもよい。導線60がむき出しの銅線であれば、予め銅線を樹脂によって覆う必要が無く、製造コストを抑えることができる。また、銅線は他の電気を通す材質なら何でもよい。
【0035】
コネクタ50の内部でチューブ10の管部18に引き込まれた導線60は、先端部12まで管部18の中を延在する。導線60は、2本が近傍に並列する形態で、管部18の中に配置されている。導線60の配置については後に説明する。
【0036】
導体60は、管部18の先端部12における端部からオリーブ20の内部に引き出される。引き出された導体60は、LED保護部24を通過してLED30に接続される。
オリーブ20の内部に引き出された導体60は、必ずしも封止材などで覆われていなくてもよい。導体60がTPU銅線などの耐水性樹脂で被覆された導線である場合には、その耐水性樹脂によって薬剤から保護されるからである。
【0037】
<導線の配置:実施例1>
電力供給装置82からLED30までの導線60の配置には、種々の態様が考えられる。以下、導線60の配置の例を、実施例1から実施例4に分けて説明する。
図4(a)及び
図4(b)は、いずれも実施例1のチューブ10の内部における導線60の配置を説明するための図である。
図4(a)は医療用カテーテル1の側面を示し、
図4(b)は
図1のA-A線に対応する方向での
図4(a)の断面を模擬的に示す。
【0038】
図2及び
図3に示したように、2本の導線60が電力供給装置82からLED30まで延在し、電力供給装置82とLED30とを接続している。LED30に電力を供給するためである。
図4(a)及び
図4(b)に示す構成では、導線60が1本の線で描かれている。これは、2本の導線60が、管部18の内部において、近接しかつ並列して配置されているためである。
2本の導線60を近接して配置する場合、2本の導線60をそのまま束ねて管部18に挿入することで、導線60をチューブ10に配置することができる。そのため、医療用カテーテル1の製造が容易になる。
【0039】
図5は、
図4(a)のC-C線断面を模擬的に示す図である。
図5に示すように、2本の導線60は、管部18の半径方向と直交する方向に並列して2本配置されている。すなわち、導線60は、管部18の周に対する接線の方向に並んで、また互いに近接して配置されている。
導線60をこのように配置することで、医療用カテーテル1を歩留まり良く、また製造コストを抑制しながら作成することが容易になる。
【0040】
<実施例1の変形例1>
図5に示す導線60の配置には、その変形例も考えられる。
図5に示す配置では、2本の導線60は、管部18の半径方向と直交する方向に並列して配置されていた。2本の導線60は、管部18の半径方向に並列して2本並べることも可能である。
2本の導線60を管部18の半径方向に並列させる場合は、2本の導線60を管部18の半径方向と直交する方向に並列させる場合と比べて、管部18の周方向において、導線60が占める範囲を少なくすることができる。そのため、薬液吐出口22を配置する場合に、その位置についての自由度を増すことができる。
【0041】
<実施例1の変形例2>
図6に基づいて、導線60の配置の他の態様について説明する。
図6(a)は、実施例1の変形例2について、
図4(b)の枠囲みAに対応する部分を示す図である。
図6(b)は、実施例1の変形例2について、
図4(a)のC-C線断面を模擬的に示す図である。
図5に示した導線60の配置では、2本の導線60は、そのまま束ねて管部18に挿入されていた。2本の導線60は、それらをより合わせた後に管部18に挿入することもできる。
導線60をより合わせた後に管部18に挿入する場合には、導線60をそのまま束ねて管部18に挿入する場合よりも、容易にまた正確に導線60を管部18に挿入することができる。
【0042】
2本の導線60をより合わせた後に管部18に挿入する場合の導線60の配置として、
図6に示す配置がある。
この配置では、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、導線60は、管部18の内部にらせん状に配置されている。そして、導線60は、コネクタ50からオリーブ20まで、周回を重ねながら徐々に進行する。
この点が、管部18の内部を直線状にコネクタ50からオリーブ20まで延在する
図4に示した導線60の配置との相違点である。
導線60を
図6に示すように配置するためには、まず2本の導線60を束ねてより合わせる。そして、より合わせた導線60をループ状に加工し、チューブ10に埋設する。
導線60をこのように配置することで、チューブ10をその長手方向D1と交わる方向に曲がりやすくすることができる。言い換えると、チューブ10を、医療用カテーテル1の被使用者の体内において、体内の態様に応じて曲がりやすくすることができる。
これにより、使用者は、医療用カテーテル1を被使用者の体内の適切な位置に配置しやすくなる。また、医療用カテーテル1が体内に配置される際の、被使用者の身体的な負担を軽減することができる。
【0043】
<実施例1の変形例3>
図6に示した導線60の配置には、その変形例も考えられる。
図6に示す配置では、2本の導線60を束ねてより合わせた後、導線60を管部18の内部にループ状に配置していた。
束ねてより合わされた導線60は、管部18の内部に直線状に配置することもできる。これにより、束ねてより合わされた導線60を、より容易に管部18の内部に配置することができる。
2本の導線60は必ずしも近接して設けられている必要はなく、次に説明するように、2本の導線60が、個別に隔てられて管部18に配置されていてもよい。より詳細には、
図8に示すように、2本の導線60は、管部18の対向する位置に、1本ずつ配置されていてもよい。この態様であれば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー等の樹脂によって銅線が被覆されていない、むき出しの銅線自体がチューブ10の中に配置されている場合、銅線同士が接触するリスクを低減することができる。
【0044】
<導線の配置:実施例2>
電力供給装置82からLED30までの導線60の配置について、実施例2の態様を説明する。
図7(a)及び
図7(b)は、いずれも実施例2のチューブ10の内部での導線60の配置を説明するための図である。
図7(a)は医療用カテーテル1の側面を示し、
図7(b)は
図1のA-A線に対応する方向での
図7(a)の断面を模擬的に示す。
【0045】
図7に示す医療用カテーテル1は、
図4に示した医療用カテーテルと、導線60の配置及びLED30の個数が異なっている。
まず、導線60の配置について、
図4に示す医療用カテーテル1では、2本の導線60は束ねて配置されていた。これに対して
図7に示す医療用カテーテル1では、2本の導線60は、個別に隔てられて管部18に配置されている。具体的には、
図4(b)に示すように、断面において、管部18の対向する2つの部位に、各々1つずつ導線60が配置されている。
【0046】
図8は、
図7(a)のD-D線断面を模擬的に示す図である。
図8に示すように、2本の導線60は、管部18の対向する位置に、1本ずつ配置されている。
【0047】
つぎに、LED30の個数について説明する。
実施例2の医療用カテーテル1では、LED30は、オリーブ20に2つ配置されている。これにより、LED30からの光をより広範囲に放射することができる。
特にLED30が面発光する場合、オリーブ20に備えられるLED30が1つであると、オリーブ20の体内での向きによっては、医療用カテーテル1の使用者がLED30からの光を認識しにくくなる場合がある。
これに対し、LED30をオリーブ20に2つ配置する場合には、面発光する2つのLED30を、その非発光面が向かい合うように配置することで、LED30からの光の放射範囲を広げることができる。
これにより、オリーブ20の体内での向きによらず、医療用カテーテル1の使用者がLED30からの光を認識しやすくなる。
【0048】
また、2つのLED30はオリーブ20の内部で電気的に接続されている。
図7(a)及び
図7(b)に、2つのLED30の接続点を点Pで示す。
2つのLED30が電気的に接続されていることで、電力供給装置82及び2つのLED30を直列に接続することができる。
そのため、実施例2の構成では、2つのLED30にそれぞれ1本ずつ導線60が接続されている。そして、電力供給装置82及び2つのLED30で直列回路が形成されている。これにより、簡易な構成で2つのLED30に電力を供給することができる。
また、実施例2の導線60の配置では、2本の導線60は、個別に隔てられて管部18に配置されている。そのため、各導線60をそれぞれのLED30に接続しやすくなっている。
【0049】
<実施例2の変形例1>
図7に示す導線60の配置には、その変形例も考えられる。
図7に示す配置では、2つのLED30同士がオリーブ20の内部で電気的に接続されることで、電力供給装置82及び2つのLED30が直列回路を形成していた。
図7に示すLED30の配置において、2つのLED30同士を電気的に接続しないようにすることもできる。
この場合には、2つのLED30には、それぞれ、電力供給装置82から2本の導線60が接続される。これにより、電力供給装置82及び1つのLED30で直列回路を形成する。そして、電力供給装置82及び2つのLED30の全体では、並列回路が形成される。
【0050】
<ITO>
上述の実施例1及び実施例2では、電力供給装置82とLED30とは導線60によって接続されていた。そして、導線60の具体例としてTPU銅線を用いることが可能であることを説明した。
電力供給装置82とLED30との接続は、他の形態の導体を用いて行うこともできる。
他の形態の導体としては、例えば透明導電膜がある。具体的には、ITO(Indium Tin Oxide、酸化インジウムスズ)などの透明電極材料で、導体を構成することができる。
【0051】
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)は、いずれもチューブ10及びオリーブ20における導線60の配置を説明するための図である。
図9(a)は医療用カテーテル1の側面を示し、
図9(b)は
図1のA-A線に対応する方向での
図9(a)の断面を模擬的に示し、
図9(c)は
図9(a)のE-E線断面を模擬的に示す。
図9(a)及び
図9(b)に示すように、チューブ10及びオリーブ20における導線60は、TPU銅線ではなくITO膜62で構成されている。すなわち、1本のTPU銅線が、帯状の1つ(1本)のITO膜62で置き換えられて、管部18、28に埋設されている。以下、具体的に説明する。
【0052】
図9(c)に示すように、チューブ10の管部18には、2つの独立したITO膜62が配置されている。各ITO膜62は、管部18の周方向への湾曲に沿って湾曲して、管部18の内部に配置されている。また、管部18の内部において、ITO膜62とITO膜62との間には、それぞれ絶縁層64が配置されている。この絶縁層64により、2つのITO膜62の間の電気的な絶縁が確保されている。
絶縁層64の材料は特には限定されないが、例えば、酸化膜等とすることができる。
【0053】
2つの独立したITO膜62は、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、チューブ10の管部18の内部において、長手方向D1に延在している。そして、チューブ10がオリーブ20と重なる部分において、ITO膜62は、管部18の内部から管部18の外表面、すなわちチューブ10の外表面に引き出されている。
【0054】
一方、オリーブ20においても、2つの独立したITO膜62は、オリーブ20の管部28の内部において、長手方向にD1に延在している。管部28の内部のITO膜62は、オリーブ20の先端部26において管部28から引き出され、2つの独立したITO膜62のそれぞれがLED30と接続されている。
なお、ITO膜62とLED30とが接続する部分は、LED保護部24によって覆われている。
また、オリーブ20がチューブ10と重なる部分において、ITO膜62は、管部28の内部から管部28の内表面、すなわちオリーブ20の内表面に引き出されている。
【0055】
チューブ10に備えられたITO膜62と、オリーブ20に備えられたITO膜62との接続は、チューブ10とオリーブ20とが重なる部分において、互いのITO膜62が重なって接触することで行われる。
具体的には、チューブ10の外表面に引き出されたITO膜62と、オリーブ20の内表面に引き出されたITO膜62とが接触することで、チューブ10に備えられたITO膜62と、オリーブ20に備えられたITO膜62との接続が行われる。
【0056】
チューブ10に備えられたITO膜62と、電力供給装置82との電気的な接続は、チューブ10の基端部14(
図9に図示せず。
図2に図示。)における管部18の端面において、チューブ10に備えられたITO膜62と、電力供給装置82に接続された導線60とを電気的に接続することで行われる。
【0057】
導体60をITO膜62とすることで、管部18の厚さを薄くすることができる。これにより、流路16の径を小さくすることなく、チューブ10の径を小さくすることができる。
また、管部18の厚さを薄くすることができ、またITO膜62は厚さが薄いため、チューブ10を曲がりやすくすることができる。これにより、医療用カテーテル1を被使用者の体内に挿入する際などの、被使用者の身体的な負担を軽減することができる。
【0058】
<実施例3:非接触給電1>
上述した実施例1及び実施例2の各医療用カテーテル1では、LED30への電力の供給は、導線60を介して行われていた。いわゆる、導線60を介しての接触給電が行われていた。
LED30への電力の供給はそのような方法には限定されない。例えば、非接触給電とすることもできる。実施例3及び実施例4の各医療用カテーテル1では、LED30への電力の供給は、非接触給電で行われる。
図10(a)及び
図10(b)は、いずれも実施例3の医療用カテーテル1のオリーブ20の近傍部分を示す図であり、
図10(a)は
図2のA-A線断面を模擬的に示し、
図10(b)は
図2のB-B線断面を模擬的に示す。
【0059】
図10(a)及び
図10(b)に示す医療用カテーテル1には、電力供給装置82として誘電コイル87及び受電コイル88が備えられている。
図10(a)に示すように、受電コイル88は、LED30を取り囲むように、オリーブ20の内部に配置されている。また、受電コイル88は、LED30とともにLED保護部24によって覆われている。
【0060】
一方、誘電コイル87は、
図10(b)に示すように、コネクタ50やオリーブ20などとは別体として医療用カテーテル1に備えられている。
すなわち、実施例3の医療用カテーテル1では、
図2に示した医療用カテーテル1とは異なり、コネクタ50に電源ポート53は形成されていない、また、電源ポート53と一体として形成されていた電力供給装置82も、コネクタ50には備えられていない。
本態様によれば、コネクタ50付近に設けられていた電源ポート53や電力供給装置82を省略することができる。そのため、コネクタ50の洗浄が容易にできるようになる。また、コネクタ50を軽量化することができ、医療用カテーテル1が被使用者に留置される際にコネクタ50や電源ポート53、電力供給装置82が被使用者に接触して与える不快感を軽減することができる。
【0061】
実施例3の医療用カテーテル1では、誘電コイル87と受電コイル88との間に生じる電磁誘導により生じる電力でLED30が発光する。
具体的には、
図10(b)に示すように、誘電コイル87を、オリーブ20の中に備えられている受電コイル88に近づける。それにより、
図10(b)の波線Eに示すように、誘電コイル87と受電コイル88との間に電磁誘導が生じ、LED30が発光する。
【0062】
なお、受電コイル88は、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、オリーブ20の中に設けても良いし、又は、オリーブ20の管部28の中に埋め込んでもよい。
受電コイル88をオリーブ20の中に設ける場合、その製造が容易になる。
一方、受電コイル88をオリーブ20の管部28の中に埋め込む場合、小さな受電コイル88で大きな電力を生じさせることが容易になる。誘電コイル87と受電コイル88とをより近づけることができるためである。
【0063】
受電コイル88の向きについて説明する。受電コイル88は、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、オリーブ20の長手方向D1と平行な方向を軸として、その軸の周りにコイルが形成されていてもよい。
又は、受電コイル88は、オリーブ20の長手方向D1と垂直な方向を軸として、その軸の周りにコイルが形成されていてもよい。
LED30の軸はコイル自身の軸と概略一致することが好ましい。LED30の軸がコイル自身の軸と概略一致する場合、受電コイル88とLED30を接続するのが容易になり、その製造効率が上がる。
更に、LED30の軸とコイル自身の軸とが概略一致し、LED30の周りにコイルが形成されていてもよい。その場合、受電コイル88とLED30全体を小型化することができる。これは小さなオリーブ20の中に受電コイル88とLED30を設けるのが容易になる。
【0064】
なお、実施例3の医療用カテーテル1では、オリーブ20の先端部26に受電コイル88が配置されている。この受電コイル88がX線を遮るため、実施例3の医療用カテーテル1には、造影ラインは不要となる。
【0065】
また、誘電コイル87及び受電コイル88に代えて、高周波発生装置及びそれに対する専用ダイオードを配置することもできる。この場合は、高周波によって専用ダイオードを発光させることができる。
【0066】
<実施例4:非接触給電2>
図10に示した実施例3の非接触給電による医療用カテーテル1には、種々の変更を施すことが可能である。
図11に基づいて、実施例3の医療用カテーテル1の変形例を、実施例4として説明する。
図11は、実施例4の電力供給装置82を説明するための、医療用カテーテル1の側面図である。
【0067】
実施例3の医療用カテーテル1では、受電コイル88は、オリーブ20に設けられていた。受電コイル88を設ける位置はオリーブ20には限定されない。
図11に示す実施例4のように、受電コイル88をコネクタ50に設けることもできる。
受電コイル88をコネクタ50に設けた場合、受電コイル88とLED30とを導線60で接続する。これにより、誘電コイル87と受電コイル88との間の電磁誘導により生じた電力をLED30に供給することができる。
【0068】
また、実施例3の医療用カテーテル1では、受電コイル88がオリーブ20に設けられていた。そのため、電磁誘導を生じさせる場合には、
図10(b)に示したように、誘電コイル87を体内に配置されているオリーブ20に近づける必要があった。
これに対して、実施例4の医療用カテーテル1では、受電コイル88がコネクタ50に設けられている。そのため、電磁誘導によりLED30を発光させるためには、
図11に示すように誘電コイル87を被使用者の体外に配置されているコネクタ50に近づける。
そのため、オリーブ20が医療用カテーテル1の被使用者の体内にある場合であっても、電磁誘導によりLED30に電力を供給することが容易になる。
【0069】
<光反射体>
光反射体について、
図12に基づいて説明する。
図12(a)及び
図12(b)は、いずれも医療用カテーテル1のオリーブ20の近傍部分を示す図である。
図12(a)は
図2のA-A線断面を模擬的に示し、
図12(b)は
図2のB-B線断面を模擬的に示す。
図12(a)及び
図12(b)に示す医療用カテーテル1では、オリーブ20の内部に、LED30に加えて光反射体40が配置されている。
【0070】
光反射体40は、光反射体40に入射する光を、光反射体40の内面又は表面で反射又は屈折させる部材である。光反射体40に入射する光は、その少なくとも一部が、光の進行方向を変化させられて、光反射体40から放射される。
【0071】
図12(a)及び
図12(b)に示すオリーブ20では、LED30は、LED30の発光面32がオリーブ20の先端部26を向くように配置されている。
そして、オリーブ20には、LED30と、オリーブ20の先端部26との間に、光反射体40が配置されている。
【0072】
光反射体40が配置されていない場合、LED30から発光された光は主にオリーブ20の先端部26の方向に進行する。
これに対して
図12(a)及び
図12(b)に示すオリーブ20には光反射体40が配置されている。そのため、LED30から発光された光は光反射体40に入射し、光反射体40から出射する際、オリーブ20の全周方向に向けて放射される。LED30から発光された光が、光反射体40によってオリーブ20の全周方向に散乱されたためである。
【0073】
光反射体40には、入射する光の進行方向を広角に広げる構造を有する部材、例えば、光の進行方向に対して斜めの面を有する部材が用いられる。
そのような部材の具体例としては、特殊円錐台がある。
光反射体40として特殊円錐台を用いる場合、特殊円錐台は、特殊円錐台の頂点44がLED30の発光面32に向くように配置される。これにより、オリーブ20の先端部26に向いていたLED30からの光が、全方位に広角に散乱される。その結果、LED30からの光が、オリーブ20の先端部26への方向に加えて、側面25の方向にも進行するようになる。
【0074】
特殊円錐台の形状には種々の変形例が考えられる。
図12(a)及び
図12(b)に示す特殊円錐台では、その斜面42は平面である。この斜面42は、平面であることに限定されず、例えば、凸面や凹面とすることができる。
また、特殊円錐台の頂点44は必ずしも必要ではなく、光反射体40のLED30に対向する面が全体的に凸面や凹面からなる曲面でもよい。
また、特殊円錐台の頂点44の広がり角度Rも、例えば60°など、種々の値に設定することができる。
斜面42の形状や、頂点44の広がり角度Rを適宜設定することで、LED30からの光の進行方向を、適切な角度に広げることができる。
【0075】
特殊円錐台などの光反射体40は、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:Polymethyl methacrylate)などの透明な樹脂などで形成することができる。
また、光反射体40の斜面42などの表面には、反射材が塗布されていてもよい。また、光反射体40は、多面体で、その面のうち少なくとも一組が平行ではない構造、すなわち、プリズム構造を有していることが好ましい。
また、光反射体40は、LED30と共にLED保護部24で覆うこともできる。
【0076】
図2に基づいて、コネクタ50における薬液を流れについて説明する。
コネクタ50は、先に説明したように、チューブ接続ポート51、薬液ポート52及び
電源ポート53を備える。
そして、コネクタ50の内部には、薬液ポート52から薬液が注入され、電源ポート53からは導線60が引き出される。薬液及び導線60は、いずれもチューブ接続ポート51から、チューブ10に導入される。詳細に説明すると、薬液はチューブ接続ポート51の流路54を介して、導線60はチューブ接続ポート51に接続されたチューブ基端部14の周縁端、又はチューブ基端部14の内周面、あるいは外周面を介して、チューブ10に導入される。
第1の実施形態の医療用カテーテルでは、
図2に示すように、薬液ポート52はチューブ接続ポート51と同軸上に配置されている。
【0077】
これにより、コネクタ50の内部に薬液が滞留することを抑制することができる。その結果、コネクタ50の内部に滞留した薬液に菌が繁殖することを抑制することができる。よって、不衛生な薬剤が被使用者に投与されることが抑制される。また、コネクタ50の内部が不衛生になることを抑制することができる。
【0078】
また、コネクタ50の内部で薬液が逆流することを抑制することができる。これにより、薬剤を医療用カテーテル1の被使用者の体内に円滑に投与することができる。
【0079】
また、医療用カテーテル1における薬液の進行方向、特にはコネクタ50の内部における薬液の進行方向と、医療用カテーテル1の使用者がコネクタ50の内部に薬液を注入する際の注入方向とが一致しやすくなる。そのため、チューブ接続ポート51の軸の方向とは異なる方向からコネクタ50の内部に薬液を注入する場合と比べて、使用者の技術的な負担や心理的な負担を低減することができる。コネクタ50の内部における薬液の進行方向とは異なる方向から薬液をコネクタ50の内部に注入すること、すなわち、薬液の進行方向に対する側方から薬液を注入することは直感的ではなく、使用者が慣れにくいためである。
【0080】
また、第1の実施形態の医療用カテーテル1では、電源ポート53の導線挿通孔55に封止材56が設けられている。
そのため、薬剤が導線挿通孔55に滞留することが抑制される。そのため、不衛生な薬剤が被使用者に投与されることが抑制される。また、コネクタ50の内部が不衛生になることを抑制することができる。
【0081】
<第2の実施形態>
図13に基づいて、第2の実施形態について説明する。
図13は、第2の実施形態のコネクタ50の断面を模擬的に示す図である。
第2の実施形態の説明においては、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
第2の実施形態と第1の実施形態とでは、コネクタ50への電力供給装置82の接続の仕方が相違する。
【0082】
第1の実施形態では、
図2に示したように、電力供給装置82は、電源ポート53を介して、コネクタ50に、コネクタ50と一体として備えられていた。
これに対して、第2の実施形態では、電力供給装置82は、
図13に示すように、コネクタ50とは別体として構成されている。そして、電力供給装置82は、コネクタ50の電源ポート53を介して、コネクタ50に着脱可能に取り付けられている。
【0083】
第2の実施形態の電力供給装置82は、電池ハウジング90として構成されている。電池ハウジング90は、その内部に接続端子92を備える。また、電池ハウジング90には、電池84が備えられる。接続端子92は、後に説明するように、電池ハウジング90に備えられた電池84の一端を電源ポート53の導線60に接続する。
【0084】
コネクタ50の電源ポート53には、チューブ10から導線60が引き出されている。
電力供給装置82が電源ポート53に取り付けられると、電池ハウジング90に備えられた電池84、及び、電池ハウジング90の接続端子92は、電源ポート53において導線60に接続される。これにより、LED30に電力が供給される。
【0085】
第2の実施形態の医療用カテーテル1では、コネクタ50の構造を簡素にすることができる。具体的には、第2の実施形態の医療用カテーテル1では、コネクタ50に導線挿通孔55を形成する必要がない。また、導線挿通孔55の内部に封止材56を充填する必要がない。さらに、流路54に露出した導線60を封止材56で覆う必要がない。
【0086】
また、第2の実施形態の医療用カテーテル1では、コネクタ50を洗浄する際などに、電力供給装置82をコネクタ50から取り外すことができる。そのため、コネクタ50の洗浄を容易にすることができる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0088】
例えば、薬液吐出口22は、丸型であることには限定されない。例えば、楕円型、長丸型、角丸四角型などとすることもできる。
また、LED30の個数は、1つ又は2つに限定されるものではない。
また、発光体としてLED以外を用いることもできる。例えば、光照射、電子線照射、音響エネルギーによる励起での発光手段を用いることができる。
また、薬液吐出口22は、オリーブ20の一方の側にそれぞれ1つずつ形成されることに限定されない。薬液吐出口22は、オリーブ20の一方の側に複数個形成されることも可能である。
図4(a)は、2つの長方形の孔が薬液吐出口22として長手方向D1に沿って並べて配置されている構成を例示している。
また、複数個の薬液吐出口22が形成された場合、薬液吐出口22のコネクタ50側の外縁の位置と、薬液吐出口22のLED30側の外縁の位置との距離d2は、
図4(a)に示すように、複数個の薬液吐出口22において、最もコネクタ50側の外縁の位置と、最もLED30側の外縁の位置との距離とする。
【0089】
<1>
体内に挿入されるチューブと、
前記チューブの先端部に配置されるオリーブと、
前記オリーブに備えられる発光体と、
前記チューブの基端部に接続されるコネクタと、を備える医療用カテーテルであって、
前記オリーブには、薬液を吐出する開口部が形成された、医療用カテーテル。
【0090】
<2>
前記開口部は、前記チューブの先端部側の端面から、前記発光体の前記チューブ側の外縁までの間に配置されている、
<1>に記載の医療用カテーテル。
【0091】
<3>
前記開口部の前記発光体側の外縁から、前記発光体の前記開口部側の外縁までの距離は、前記開口部の前記オリーブの長手方向における長さの3倍よりも短い、
<1>は<2>に記載の医療用カテーテル。
【0092】
<4>
前記発光体は、前記オリーブの内部において発光体保護部で覆われている、
<1>から<3>の何れか1つに記載の医療用カテーテル。
【0093】
<5>
前記オリーブは、丸管型の形状を有し、
前記開口部は、前記丸管型の形状の径方向において対向する位置に配置されている、
<1>から<4>の何れか1つに記載の医療用カテーテル。
【0094】
<6>
前記チューブは、丸管型の形状を有する管部を含み、
前記管部には、前記管部の長手方向に沿って、少なくとも2本の導線が埋設されている、
<1>から<5>の何れか1つに記載の医療用カテーテル。
【0095】
<7>
前記の少なくとも2本の導線は、
前記管部において、前記丸管型の形状の半径方向に直交する方向に並列して配置されている、
<6>に記載の医療用カテーテル。
【0096】
<8>
前記の少なくとも2本の導線は、
前記管部において、対向する2つの部位に個別に、各々1つずつ配置されている、
<6>に記載の医療用カテーテル。
【0097】
<9>
前記導線は、透明電極である、
<6>から<8>の何れか1つに記載の医療用カテーテル。
【0098】
<10>
前記コネクタは、
前記チューブの前記基端部が接続されるチューブ接続ポートと、
前記チューブに薬液を供給する薬液供給装置が接続される薬液ポートと、
前記発光体に電力を供給する電力供給装置が接続される電源ポートと、を備え、
前記薬液ポートは、前記チューブ接続ポートに連通し、また前記チューブ接続ポートと同軸上に配置される、
<1>から<9>の何れか1つに記載の医療用カテーテル。
【0099】
<11>
前記発光体と前記電力供給装置とを接続する導線を更に備え、
前記電源ポートは、前記導線が挿通される導線挿通孔を備え、
前記導線挿通孔には、導線保護部が設けられている、
<10>に記載の医療用カテーテル。
【0100】
<12>
前記発光体に電力を供給する電力供給装置であって、
前記電力供給装置が誘電コイルと、受電コイルと、を備える
<1>から<11>の何れか1つに記載の医療用カテーテル。
【符号の説明】
【0101】
1 医療用カテーテル
10 チューブ
12 先端部
14 基端部
16 流路
18 管部
20 オリーブ
22 薬液吐出口(開口部)
24 LED保護部(発光体保護部)
25 側面
26 先端部
28 管部
30 LED(発光体)
32 発光面
40 光反射体
50 コネクタ
51 チューブ接続ポート
52 薬液ポート
53 電源ポート
54 流路
55 導線挿通孔
56 封止材(導線保護部)
60 導線
62 ITO膜
64 絶縁層
82 電力供給装置
84 電池
86 蓋
87 誘電コイル
88 受電コイル
90 電池ハウジング
92 接続端子