(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115671
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】介護用入浴装置、介護用入浴装置の使用方法、及び介護用入浴装置の収納方法
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20240820BHJP
A61G 1/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61H33/00 310L
A61H33/00 310E
A61G1/02 708
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021433
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】521513834
【氏名又は名称】有限会社キュープラ
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(72)【発明者】
【氏名】新原 敏朗
【テーマコード(参考)】
4C094
【Fターム(参考)】
4C094AA01
4C094BB09
4C094BB12
4C094CC03
4C094CC08
(57)【要約】
【課題】被介護者が横たわった姿勢で容易に入浴することができるとともに、不使用時にはコンパクトな状態にして収納することができる介護用入浴装置、介護用入浴装置の使用方法、及び介護用入浴装置の収納方法を提供することを目的とする。
【解決手段】介護用入浴装置1は、ベース部10から立設して昇降機構を有する支柱部20と、長手方向に沿って被介護者Mが横たわる寝床部30と、寝床部30の鉛直方向下方に位置する浴槽部40とから構成されている。被介護者Mが入浴する際には、支柱部20の昇降機構を操作して寝床部30を下方に下げることで、寝床部30に横たわった状態のままの被介護者Mを浴槽部40に入浴させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設置されるベース部と、
該ベース部から鉛直上方に向けて立設し、昇降機構を有する支柱部と、
長手方向に沿って被介護者が横たわり可能であり、長手方向に傾動可能に前記支柱部に連結された寝床部と、
該寝床部の鉛直方向下方に位置し、前記昇降機構により前記寝床部が降下したときに前記寝床部が収容される浴槽部と、を備える
介護用入浴装置。
【請求項2】
前記寝床部は一対の長辺、及び一対の短辺からなる方形状の寝床面を有し、床面に対して前記寝床面が水平状態の使用位置、及び床面に対して前記寝床面が垂直状態の収納位置との間で回動可能である
請求項1に記載の介護用入浴装置。
【請求項3】
前記寝床部の収納位置は、前記長辺が床面に対して水平状態の第1の収納位置、及び前記長辺が床面に対して垂直状態の第2の収納位置にそれぞれ変形可能である
請求項2に記載の介護用入浴装置。
【請求項4】
前記寝床部は、前記支柱部に対して着脱自在である
請求項1または請求項2に記載の介護用入浴装置。
【請求項5】
前記ベース部には床面上を走行移動可能なキャスター部を有する
請求項1または請求項2に記載の介護用入浴装置。
【請求項6】
前記浴槽部は、使用時における展開状態と不使用時における折り畳み状態とに変形自在である
請求項1または請求項2に記載の介護用入浴装置。
【請求項7】
床面に設置されるベース部と、該ベース部から鉛直上方に向けて立設し昇降機構を有する支柱部と、長手方向に沿って被介護者が横たわり可能であり長手方向に傾動可能に前記支柱部に連結された寝床部と、該寝床部の鉛直方向下方に位置し前記昇降機構により前記寝床部が降下したときに前記寝床部が収容される浴槽部と、を備える介護用入浴装置の使用方法において、
前記昇降機構を昇降させて、床面に対して水平状態の前記寝床部の高さ位置を被介護者が横たわるベッドの高さと略同じ高さに調整する工程と、
被介護者を前記ベッドから前記寝床部に移乗する工程と、
前記寝床部の長手方向に横たわる被介護者の頭部が脚部よりも上方に位置するように、前記寝床部を水平位置から所定の角度だけ長手方向に傾動する工程と、
前記昇降機構により前記寝床部を下降させて、該寝床部を浴槽部に収容して被介護者を入浴させる工程と、を備える
介護用入浴装置の使用方法。
【請求項8】
被介護者を前記ベッドから前記寝床部に移乗する工程の後に、前記寝床部の鉛直方向下方に湯水が供給された前記浴槽部を設置する工程を有する
請求項7に記載の介護用入浴装置の使用方法。
【請求項9】
床面に設置されるベース部と、該ベース部から鉛直上方に向けて立設し昇降機構を有する支柱部と、長手方向に沿って被介護者が横たわり可能な水平状態から所定角度だけ回転可能なように前記支柱部に連結された寝床部と、該寝床部の鉛直方向下方に位置し前記昇降機構により前記寝床部が降下したときに前記寝床部が収容可能である展開状態と折り畳み状態とに変形可能な浴槽部と、を備える介護用入浴装置の収納方法において、
前記寝床部の長手方向が水平方向を指向する状態から鉛直方向を指向する状態まで前記寝床部を回転させる工程と、
前記浴槽部を展開状態から折り畳み状態に変形して、前記寝床部の近傍に設置する工程と、を備える
介護用入浴装置の収納方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護用入浴装置、介護用入浴装置の使用方法、及び介護用入浴装置の収納方法に関する。詳しくは、被介護者が横たわった姿勢で容易に入浴することができるとともに、不使用時にはコンパクトな状態にして収納することができる介護用入浴装置、介護用入浴装置の使用方法、及び介護用入浴装置の収納方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、入浴は、身体を清潔に保つとともに種々の感染症予防にもなり、また体内の血行改善や床ずれの防止、疲労回復といった種々のメリットがあることから、人間の日常生活において不可欠なものと言える。
【0003】
そして、高齢化が進む日本においては、被介護者の入浴をいかに安全かつ効率的に行うかということが重要な課題となっている。核家族化した現代の日本においては、通常、被介護者の介護を行なう配偶者などの介護者も高齢者であり、また被介護者の入浴には多大な労力とリスクを伴うため、近年では老人保健施設やデイサービス等を利用して被介護者の入浴介護サービスが実施されている。また最近では、訪問入浴介護サービスを行なう事業者も増加している。
【0004】
一般に、被介護者の入浴は、合計3名の介護者で行うのが適切とされており、また前記した訪問入浴介護サービスを行なう事業者の場合、該事業者が被介護者の自宅を訪問して、持参した浴槽および給排水器具を設置して被介護者の入浴を実施している。一方、このような人員と体制での入浴介護サービスを日常、頻繁に行うことは事業者の規模や被介護者の経済上の面から困難であり、また年々増加する介護保険給付金の抑制の面からも限界がある。そのため、要介護者の入浴を機械装置により簡易に行うことが提案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
特許文献1は仰向け状態の被介護者を簡単に入浴させることができる介護用簡易風呂を提供するものである。具体的には、仰向け状態で被介護者を入浴させることができ、洗髪も可能な介護用簡易風呂であって、可撓性と防水性とを有するシート材から構成された湯を貯留可能な浴槽と、仰向け状態の被介護者の背部より高い位置で頭部を支持する入浴用枕とを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示の介護用簡易風呂であっても、寝たきり状態の被介護者を入浴させるためには、被介護者を浴槽まで運ぶために複数の介護者を必要とし、やはり介護者にとって多大な労力を要するばかりか、要介護者の身体にも無理が生じる場合がある。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、被介護者が横たわった姿勢で容易に入浴することができるとともに、不使用時にはコンパクトな状態にして収納することができる介護用入浴装置、介護用入浴装置の使用方法、及び介護用入浴装置の収納方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の介護用入浴装置は、床面に設置されるベース部と、該ベース部から鉛直上方に向けて立設し、昇降機構を有する支柱部と、長手方向に沿って被介護者が横たわり可能であり、長手方向に傾動可能に前記支柱部に連結された寝床部と、該寝床部の鉛直方向下方に位置し、前記昇降機構により前記寝床部が降下したときに前記寝床部が収容される浴槽部とを備える。
【0010】
ここで、介護用入浴装置が床面に設置されるベース部を備えることにより、ベース部に後記する支柱部を立設することで、支柱部に連結する寝床部が常に安定した状態が維持される。従って、寝床部に横たわる被介護者を安全に入浴させることができる。
【0011】
また、ベース部から鉛直上方に向けて立設し、昇降機構を有する支柱部を備えることにより、支柱部は昇降機構により鉛直方向に上下動することができる。そのため、被介護者をベッドから寝床部に移乗させる場合や、寝床部に移乗させた被介護者の浴槽部への入浴を効率的に行うことができる。
【0012】
また、長手方向に沿って被介護者が横たわり可能であり、長手方向に傾動可能に支柱部に連結された寝床部を備えることにより、寝床部に仰向け状態に横たわる被介護者の頭部が脚部よりも上方に位置するように寝床部を傾動することで、被介護者をより安全に浴槽部内で入浴させることができる。
【0013】
また、寝床部の鉛直方向下方に位置し、昇降機構により寝床部が降下したときに寝床部が収容される浴槽部を備えることにより、寝床部に横たわる被介護者を昇降機構の操作のみで浴槽部に入浴させることができる。従って、入浴に際しての最小人数の介護者で被介護者を効率的に入浴させることができる。
【0014】
また、寝床部は一対の長辺、及び一対の短辺からなる方形状の寝床面を有し、床面に対して寝床面が水平状態の使用位置、及び床面に対して寝床面が垂直状態の収納位置との間で回動可能である場合には、不使用時には寝床部を収納位置に収納することで装置全体がコンパクトになるため、装置を隙間空間に収納することができる。また、寝床部を水平状態から垂直状態にすることで寝床部の裏面の清掃が容易に行うことができるため衛生的である。
【0015】
また、寝床部の収納位置は、長辺が床面に対して水平状態の第1の収納位置、及び長辺が床面に対して垂直状態の第2の収納位置にそれぞれ変形可能である場合には、収納スペースに応じて、収納位置を可変とすることができる。例えば鉛直方向の収納スペースに制限がある場合には第1の収納位置にして収納することができ、水平方向の収納スペースに制限がある場合には第2の収納位置にして収納することができる。
【0016】
また、寝床部は、支柱部に対して着脱自在である場合には、寝床部が破損した場合の補用品への取り換え可能であるとともに、寝床部の清掃が容易であるため衛生状態を保つことができる。
【0017】
また、ベース部には床面上を走行移動可能なキャスター部を有する場合には、装置を設置する施設内での移動が容易となり介護者による装置の設置負担を軽減することができる。
【0018】
また、浴槽部は、使用時における展開状態と不使用時における折り畳み状態とに変形自在である場合には、浴槽部の不使用時にはコンパクトな折り畳み状態とすることで限られた収納スペース内にも容易に収納することができる。
【0019】
前記の目的を達成するために、本発明の介護用入浴装置の使用方法は、床面に設置されるベース部と、該ベース部から鉛直上方に向けて立設し昇降機構を有する支柱部と、長手方向に沿って被介護者が横たわり可能であり長手方向に傾動可能に前記支柱部に連結された寝床部と、該寝床部の鉛直方向下方に位置し前記昇降機構により前記寝床部が降下したときに前記寝床部が収容される浴槽部と、を備える介護用入浴装置の使用方法において、前記昇降機構を昇降させて、床面に対して水平状態の前記寝床部の高さ位置を被介護者が横たわるベッドの高さと略同じ高さに調整する工程と、被介護者を前記ベッドから前記寝床部に移乗する工程と、前記寝床部の長手方向に横たわる被介護者の頭部が脚部よりも上方に位置するように、前記寝床部を水平位置から所定の角度だけ長手方向に傾動する工程と、前記昇降機構により前記寝床部を下降させて、該寝床部を浴槽部に収容して被介護者を入浴させる工程とを備える。
【0020】
ここで、介護用入浴装置を使用する際には、まず昇降機構を昇降させて、床面に対して水平状態の寝床部の高さ位置を被介護者が横たわるベッドの高さと略同じ高さに調整する工程を備えることにより、ベッドの高さと寝床部の高さとが略同じになるため、被介護者をベッドから寝床部に横移動させるだけ容易に移乗することができる。そのため、移乗に際しては、通常3名の介護者を必要とされていたが、1名、または多くても2名の介護者による移乗が可能となる。
【0021】
また、被介護者をベッドから寝床部に移乗する工程を備えることにより、前記した通り、最小人数の介護者により被介護者を寝床部に移乗することができる。
【0022】
また、寝床部の長手方向に横たわる被介護者の頭部が脚部よりも上方に位置するように、寝床部を水平位置から所定の角度だけ長手方向に傾動する工程を備えることにより、被介護者を浴槽部内に入浴させた場合に、頭部が脚部よりも上方に位置するため、安全に入浴させることができる。
【0023】
また、昇降機構により寝床部を下降させて、寝床部を浴槽部に収容して被介護者を入浴させる工程を備えることにより、昇降機構の操作により寝床部に横たわる被介護者を浴槽部に入浴させることができる。従って、入浴に際しての最小人数の介護者で被介護者を効率的に入浴させることができる。
【0024】
また、被介護者をベッドから寝床部に移乗する工程の後に、寝床部の鉛直方向下方に湯水が供給された浴槽部を設置する工程を有する場合には、被介護者を入浴させるための事前準備が整い、昇降機構の操作により効率的に入浴させることができる。
【0025】
前記の目的を達成するために、本発明の実施形態に係る介護用入浴装置の収納方法は、床面に設置されるベース部と、該ベース部から鉛直上方に向けて立設し昇降機構を有する支柱部と、長手方向に沿って被介護者が横たわり可能な水平状態から所定角度だけ回転可能なように前記支柱部に連結された寝床部と、該寝床部の鉛直方向下方に位置し前記昇降機構により前記寝床部が降下したときに前記寝床部が収容可能である展開状態と折り畳み状態とに変形可能な浴槽部と、を備える介護用入浴装置の収納方法において、前記寝床部の長手方向が水平方向を指向する状態から鉛直方向を指向する状態まで前記寝床部を回転させる工程と、前記浴槽部を展開状態から折り畳み状態に変形して、前記寝床部の近傍に設置する工程とを備える。
【0026】
ここで、介護用入浴装置を収納する際には、寝床部の長手方向が水平方向を指向する状態から鉛直方向を指向する状態まで寝床部を回転させる工程を備えることにより、寝床部を、寝床部の長手方向が鉛直方向を指向するように設置することで幅方向のスペースを確保することができる。
【0027】
また、浴槽部を展開状態から折り畳み状態に変形して、寝床部の近傍に設置する工程を備えることにより、浴槽部を折り畳むことで浴槽部の全体をコンパクトな状態することができるとともに、回転させることで幅方向のスペースが確保された寝床部の近傍に設置することで、装置全体としてコンパクトに収納することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る介護用入浴装置、介護用入浴装置の使用方法、及び介護用入浴装置の収納方法は、被介護者が横たわった姿勢で容易に入浴することができるとともに、不使用時にはコンパクトな状態にして収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る介護用入浴装置の外観図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る介護用入浴装置の寝床部の平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る介護用入浴装置の軸受板を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る介護用入浴装置において、(a)は第1の収納状態、(b)は第2の収納状態を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る介護用入浴装置において、(a)は浴槽部の展開状態から折り畳んだ状態に変化する様子を示す図、(b)は浴槽部を折り畳んだ状態を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る介護用入浴装置の収納時の状態を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る介護用入浴装置において、被介護者をベッドから寝床部に移乗する状態を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る介護用入浴装置を使用して被介護者を入浴させる状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態に係る介護用入浴装置、介護入浴装置の使用方法、及び介護用入浴装置の収納方法について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、各図においては、説明の便宜上、介護用入浴装置1を設置面に設置した状態において、介護用入浴装置1から上方に向かう方向を上方向、上方向の反対方向を下方向、上方向、及び下方向により表される軸方向を鉛直軸、鉛直軸と垂直な軸方向を水平軸とそれぞれ定義する。
【0031】
図1に示すように、介護用入浴装置1は、主にベース部10、支柱部20、寝床部30、及び浴槽部40から構成され、寝床部30は連結機構50を介して支柱部20に連結されている。
【0032】
[ベース部]
ベース部10は平面視略コの字状であって、均等な位置に4個のキャスター11が取り付けられており、床面Fを滑走可能に構成されている。なお、ベース部10の形状やキャスター11の数は適宜変更することができるものとし、また、キャスター11は必ずしも取り付けられている必要はない。但し、キャスター11が取り付けられていることにより、介護用入浴装置1を容易に移動させることが可能となる。
【0033】
[支柱部]
ベース部10には上方に向け支柱部20が立設されている。支柱部20は水平方向に一対が並設され、それぞれの支柱部20の上端には、後記する寝床部30を連結するためのアーム部23が接続されている。
【0034】
支柱部20は、基端がベース部10から立設する第1パイプ21と、第1パイプ21に挿通する第2パイプ22から構成される。第2パイプ22が第1パイプ21に対して上下動することで、アーム部23の全体の高さ位置を自在に変更することが可能となっている。
【0035】
一対の支柱部20の間にはアクチュエータとして機能するシリンダ24が設置されており、このシリンダ24と支柱部20の第2パイプ22とは横架材25により接続されている。そして図示しない液圧発生装置からの液圧(例えば油圧)によってシリンダ24が駆動されると、横架材25とともに第2パイプ22が上下方向に移動することで任意の高さ位置で固定することができる。
【0036】
ここで、必ずしも、支柱部20は一対から構成されている必要はなく、1本の支柱部、或いは3本以上から構成されていてもよい。
【0037】
また、必ずしも、支柱部20はシリンダ24により上下動させる必要はなく、例えばネジ式のストッパを支柱部20に設置し、第2パイプ22の高さ位置を手動で調整した後に、ストッパにより第2パイプ22を第1パイプ21に対して固定するようにしてもよい。
【0038】
また、必ずしも、支柱部20の伸縮動作は液圧により駆動される必要はない。例えば、空気圧シリンダ、或いは電動シリンダにより構成されていてもよい。
【0039】
[寝床部]
図2に示すように、寝床部30は被介護者Mが仰向け、又は俯せ状態に寝ることができる平面視略矩形状の平板からなる寝床面31を有している。寝床部30には、被介護者Mを寝かせた状態のまま後記する湯水が供給された浴槽部40に浸漬させるため、寝床面31に湯水が溜まることによる腐食やカビの原因とならないように、例えば所定の間隔で貫通孔を形成するようにしてもよい。また、寝床面31をシリコン、或いはフッ素などにより撥水加工して撥水性能を高めるようにしてもよい。
【0040】
[連結機構]
寝床部30は、長辺部の一側が連結機構50を介してアーム部23と連結されている。連結機構50は、寝床部30側に取り付けられた係合部51とアーム部23の一端に取り付けられた被係合部52とから構成されている。
【0041】
被係合部52は板状の3枚の軸受板53(53a、53b、53c)から構成される。
図3は各軸受板53a、53b、53cの拡大図を示す図である。
図3に示すように、各軸受板53a、53b、53cには、連結ボルト55が挿通可能な連結孔530a、530b、530cが形成され、各軸受板53a、53b、53cを重ねた状態で連結ボルト55を挿通してナットで締め付けることにより強固に一体化される。
【0042】
また、軸受板53aと軸受板53bには、軸受板53aと軸受板53bとを互いに重ねた状態で重なり合う位置に鉛直方向に形成された長孔531a、531b、及び円弧状に形成された円弧状孔532a、532bが形成され、軸受板53cには、長孔531b、及び円弧状孔532bの位置に対応して環状の位置決め孔533c、534cが形成されている。
【0043】
そして、連結孔530a、530b、長孔531a、531b、及び円弧状孔532a、532bとが互いに合わさるように軸受板53aと軸受板53bとを重ね合わせた状態とする。その後、連結孔530a、530bと連結孔530c、長孔531a、531bと位置決め孔533c、円弧状孔532a、532bと位置決め孔534cのそれぞれが重なるように軸受板53cを重ね合わせた状態で連結孔530a、530b、530cに連結ボルト55を貫通させて締め付ける。
【0044】
また、同じく長孔531a、531bと位置決め孔533c、円弧状孔532a、532bと位置決め孔534cにも連結ボルト(図示しない)を貫通させて締め付けることで、3枚の軸受板53a、53b、53cが一体化される。このとき軸受板53cの位置決め孔533cと軸受板53a、53bの長孔531a、531bの固定位置を上下動させることにより、被係合部52に係合された寝床部30を所定の角度だけ長手方向に傾動させることができる(
図8参照)。
【0045】
ここで、必ずしも、連結機構50を構成する被係合部52の軸受板53は3枚を重ねて一体化されている必要はなく、例えば厚みのある2枚の軸受板から構成されていてもよい。なお軸受板53の厚みは、連結する寝床部30の重みに耐え得る程度に適宜に変更することができるものとする。
【0046】
また、必ずしも、軸受板53は寝床部30を傾動可能なように支持できる構成である必要はない。但し、軸受板53が寝床部30を一方向に傾動可能なように支持可能な構成とすることで、寝床部30に横たわっている状態の被介護者を浴槽部40に入浴させる際に、被介護者Mの頭部側を脚部側に対して所定に高い位置となるように寝床部30を傾動させることで、被介護者Mが入浴の際に頭部が湯水に浸かることを防止して安全かつ効率的に入浴させることができる。
【0047】
軸受板53cには、寝床部30に取り付けられた係合部51の突起部511が挿入可能な係合孔521が形成された被係合部52を有している。係合部51の突起部511は略円柱状であり、突起部511の側面には略90°の間隔でピン孔(符号を付さない)が形成されている。そして、寝床部30の使用時には、寝床部30を水平状態に保った状態で係合部51の突起部511を被係合部52の係合孔521に挿通し、さらにピン54を軸受板53cから突起部511に形成されたピン孔に貫通させることで寝床部30のアーム部23に対する固定が完了する。
【0048】
一方、寝床部30の不使用時には、係合部51と被係合部52の係合を解除したうえで、
図4(a)に示すように、寝床面31を床面Fに対して水平状態から垂直状態にして係合部51の突起部511を被係合部52の係合孔521に挿通し、さらにピン54を軸受板53からピン孔に貫通させることで寝床部30のアーム部23に対する固定が完了する(第1の収納状態)。
【0049】
以上のように、係合部51の突起部511の側面に水平状態を維持するためのピン孔を略90°の間隔で複数形成することで、寝床面31を垂直状態にすることができるため、例えば寝床部30の不使用時には介護用入浴装置1をコンパクトな状態にして収納することができる。
【0050】
さらに、寝床部30の不使用時として、長孔531a、531bと位置決め孔533cとを貫通する連結ボルトを取り外したうえで、
図4(b)に示すように、軸受板53cを軸受板53a、及び軸受板53bの円弧状孔532a、532bに沿って回転させることで、寝床部30の長手方向が鉛直方向を指向するように設置状態を変更することができる(第2の収納状態)。このように、寝床部30の長手方向が鉛直方向を指向するように設置することで、横幅に制限のあるスペース内にも介護用入浴装置1を収納可能となる。
【0051】
ここで、必ずしも、係合部51と被係合部52との係合は前記した構造のものに限定されるものではなく、周知の取付構造を適宜採用することができる。例えば、蝶番を介して寝床部30をアーム部23に取り付け、寝床部30の水平状態と垂直状態が自在に切り換え可能に構成してもよい。
【0052】
また、必ずしも、寝床部30は水平状態と垂直状態とに回動可能なように連結機構50を介してアーム部23に取り付けられている必要はない。例えば、寝床部30の不使用時には、寝床部30を連結機構50から取り外して、壁などに立てかけて収納するようにしてもよい。
【0053】
[浴槽部]
浴槽部40は寝床部30の下方に設置され、支柱部20の伸縮動作により下方に移動した寝床部30をそのまま収容できる程度の大きさの浴槽空間が形成された浴槽41と、浴槽41内に貯留された湯水を外部に向けて排水するための排水管42を有している。
【0054】
浴槽41は、
図5に示すように、架台43に設置された防水布から構成されている。より具体的には、浴槽41は回動自在な一対の支持板45により支持され、一方の支持板45と他方の支持板45とは伸縮可能な支持紐46が接続されている。そして、使用時には支持板46を展開することで浴槽41が広がり浴槽空間が形成される。このとき、支持紐45が伸張した状態となって、浴槽41の上端の周囲を支持するため浴槽41の撓みを防止することができる。
【0055】
一方、不使用時には支持板46を折り畳んで
図5(b)の状態とする。さらに
図6に示すように、回転させた状態の寝床部30とともにコンパクトな状態にして収納することができる。架台43の下部にはキャスター44が取り付けられているため、浴槽部40はそれ自体が単独で移動可能となる。
【0056】
なお、キャスター44は必ずしも取り付けられている必要はないが、キャスター44が取り付けられていることで、浴槽部40を容易に移動させることが可能となる。
【0057】
また、必ずしも、浴槽41は防水布を素材として折り畳み自在なものである必要はなく、樹脂や人工大理石、木材などの材質から構成されていてもよい。その場合には架台43は不要であり、浴槽41の下部にキャスター44を直接取り付けることで移動が容易なものとなる。
【0058】
次に、介護用入浴装置1の使用方法について説明する。
【0059】
介護用入浴装置1を用いて被介護者Mを入浴させる場合には、ベッド60に横たわっている被介護者Mを寝床部30に移乗させる必要がある。移乗の前準備として、支柱部20の高さ位置を調整して、水平状態となっている寝床部30の高さ位置と被介護者Mが横たわっているベッド60の高さ位置を略同じ高さに調整する(
図7参照)。
【0060】
寝床部30の高さを調整したら、次に被介護者Mをベッドから寝床部30に移乗させる。このとき、2名の介護者がそれぞれ被介護者Mの頭部と脚部を把持して水平状態を保ったままベッド60から寝床部30に横移動させる。
【0061】
このように、ベッド60と寝床部30の高さ位置が略同じ高さ位置となることで、被介護者Mを横移動させることで容易に寝床部30に移乗させることができる。従って移乗の際に被介護者Mを持ち上げたり、抱きかかえる必要がないため介護者の負担を軽減することができるとともに、少なくとも1人の介護者により移乗させることも可能となる。
【0062】
寝床部30に被介護者Mを移乗させたら、必要に応じて支柱部20の高さを調整して、寝床部30の直下に浴槽部40を設置する。浴槽部40の浴槽41内には適温の湯水を所定の水深となるまで貯留する。
【0063】
入浴できる準備が整ったら、
図8に示すように、寝床部30を被介護者Mの頭部が脚部よりも上方に位置するように寝床部30を傾動させる。そして、その状態で支柱部20を操作して寝床部30を下方に移動させ、被介護者Mの胴体部の全体が湯水内に浸漬する。このとき、頭部は湯水から出ている状態のため、頭部の洗髪をすることも可能である。
【0064】
入浴が完了したら、排水管42から湯水を排水するとともに支柱部20を操作して寝床部30を上方に移動させる。寝床部30を水平状態にした後に被介護者Mを拭き上げる。その後、被介護者Mを寝床部30からベッド60に移乗させて入浴が完了する。
【0065】
入浴の完了後、寝床部30の長手方向が鉛直軸を指向するように回転させるとともに浴槽部40を折り畳んで装置全体をコンパクトな状態にして、空きスペースに収納することができる。
【0066】
以上、本発明に係る介護用入浴装置、介護用入浴装置の使用方法、及び介護用入浴装置の収納方法は、被介護者が横たわった姿勢で容易に入浴することができるとともに、介護者の介護負担を軽減することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 介護用入浴装置
10 ベース部
11 キャスター
20 支柱部
21 第1パイプ
22 第2パイプ
23 アーム部
24 シリンダ
25 横架材
30 寝床部
31 寝床面
40 浴槽部
41 浴槽
42 排水管
43 架台
44 キャスター
45 支持板
46 支持紐
50 連結機構
51 係合部
511 突起部
52 被係合部
521 係合孔
53、53a、53b、53c 軸受板
530a、530b、530c 連結孔
531a、531b 長孔
532a、532b 円弧状孔
533c、534c 位置決め孔
54 ピン
55 連結ボルト
60 ベッド