(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011568
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/92 20060101AFI20240118BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240118BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20240118BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20240118BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B01D53/92 215
B01D53/92 224
B01D53/92 270
B01D53/92 331
B01D53/78 ZAB
B01D53/68 120
B01D53/50 230
B01D53/50 240
B01D53/50 260
B01D53/50 270
B01D53/56 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113660
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 匡
(72)【発明者】
【氏名】當山 広幸
【テーマコード(参考)】
4D002
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA12
4D002AA19
4D002BA02
4D002BA16
4D002CA01
4D002DA01
4D002DA04
4D002DA31
4D002DA36
4D002GA03
4D002GB20
(57)【要約】
【課題】処理性能を向上させる。
【解決手段】排ガス処理装置100は、導入された排ガスAが旋回しながら進行する筒状の反応筒21と、反応筒21の内部において排ガスAを処理する液体を噴射する噴射部30と、を具備する。噴射部30は、反応筒21の中心軸C上に延び液体が供給される幹管31と、幹管31から反応筒21の径方向に延びる複数の枝管32と、複数の枝管32のそれぞれに設けられ、排ガスAの旋回の方向に向けて液体を噴霧する噴霧部33とを備える。噴霧部33の径方向における液体の噴霧量分布のピークQsの位置は、排ガスAの径方向における流速分布のピークVsの位置に対応する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入された排ガスが旋回しながら進行する筒状の反応筒と、
前記反応筒の内部において前記排ガスを処理する液体を噴射する噴射部と、
を具備し、
前記噴射部は、
前記反応筒の中心軸上に延び、前記液体が供給される幹管と、
前記幹管から前記反応筒の径方向に延びる複数の枝管と、
前記複数の枝管のそれぞれに設けられ、前記排ガスの旋回の方向に向けて前記液体を噴霧する噴霧部と、
を備え、
前記噴霧部の前記径方向における前記液体の噴霧量分布のピークの位置は、前記排ガスの前記径方向における流速分布のピークの位置に対応する、
排ガス処理装置。
【請求項2】
前記噴霧部の前記径方向における前記噴霧量分布のピークは、
前記幹管と前記反応筒の内壁面との間の中間部に位置する
請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記噴霧量分布において、
前記幹管の近傍及び前記反応筒の内壁面の近傍のそれぞれの噴霧量は、
前記幹管と前記反応筒の内壁面との間を流れる前記排ガスの処理に要する前記液体の総量を前記幹管から前記反応筒の内壁面までの長さで平均した量よりも少ない
請求項2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記噴霧部は、
前記液体を噴霧する複数のノズルを備え、
前記複数のノズルのうち、主に前記噴霧量分布のピークの位置に向けて前記液体を噴霧するノズルの噴霧量が、主に前記噴霧量分布のピーク以外の位置に向けて前記液体を噴霧する他のノズルの噴霧量よりも多い
請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記噴霧部は、
前記液体を噴霧する複数のノズルを備え、
前記複数の枝管のそれぞれの長手方向において、前記噴霧量分布のピークの位置に対応する箇所に他の箇所よりも前記ノズルが密に配置されている
請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記液体には、海水、アミン溶液、アルカリ系水溶液又は酸性水溶液のいずれかが前記排ガスに含まれる処理対象に応じて用いられる
請求項1に記載の排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硫黄酸化物等の有害物質を含む排ガスに吸収液を気液接触させ、吸収液に有害物質を吸収させることで排ガスから有害物質を除去する排ガス処理装置が知られている。また、この種の排ガス処理装置において、サイクロン式の装置が知られている。サイクロン式の排ガス処理装置は、排ガスの導入部及び排出部を有する反応塔を備え、排ガスが反応塔の内部を導入部から排出部に向かって旋回しながら螺旋状に進む装置である(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5999226号公報
【特許文献2】特許第6747552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サイクロン式の排ガス処理装置において、反応塔の内部を螺旋状に進む排ガスに吸収液を噴霧することで、排ガス中の有害物質が吸収液の液滴に吸収される。しかしながら、従来のサイクロン式の排ガス処理装置は、排ガスの流速分布に対し吸収液の噴霧量に不足が生じ、排ガスの処理性能の点において改善の余地がある。
以上の事情を考慮して、本開示は、処理性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上課題を解決するために、本開示の1つの態様に係る排ガス処理装置は、導入された排ガスが旋回しながら進行する筒状の反応筒と、前記反応筒の内部において前記排ガスを処理する液体を噴射する噴射部と、を具備し、前記噴射部は、前記反応筒の中心軸上に延び、前記液体が供給される幹管と、前記幹管から前記反応筒の径方向に延びる複数の枝管と、前記複数の枝管のそれぞれに設けられ、前記排ガスの旋回の方向に向けて前記液体を噴霧する噴霧部と、を備え、前記噴霧部の前記径方向における前記液体の噴霧量分布のピークの位置は、前記排ガスの前記径方向における流速分布のピークの位置に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の排ガス処理装置を適用した船舶の構成図である。
【
図2】排ガス処理装置の内部の構成を模式的に示す図である。
【
図3】
図2のIII-III線における矢視図である。
【
図4】反応筒の中を流れる排ガスの流速分布の説明図である。
【
図5】径方向における排ガスの流速分布、吸収液の噴霧量分布、及び、有害物質の残濃度分布の関係を示す図である。
【
図6】第2実施形態の噴霧部の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、各図面においては、各要素の寸法及び縮尺が実際の製品とは相違する場合がある。また、以下に説明する形態は、本開示を実施する場合に想定される例示的な一形態である。したがって、本開示の範囲は、以下に例示する形態に限定されない。
【0008】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態の排ガス処理装置100を適用した船舶200の構成図である。
図1に示される通り、船舶200は、動力装置11と給液ポンプ13と排ガス処理装置100とを具備する。なお、以下の説明において、「上方」は鉛直方向の上方を意味し、「下方」は鉛直方向の下方を意味する。
【0009】
動力装置11は、例えばガソリンエンジン及びディーゼルエンジン等の内燃機関又はボイラとタービンとを含む外燃機関である。動力装置11は、例えば重油又は石炭等の化石燃料を燃焼させることで船舶200の推進力を発生する。動力装置11は、窒素酸化物又は硫黄酸化物等の有害物質を含む排ガスAを排出する。有害物質は粉塵を含んでもよい。
排ガス処理装置100は、動力装置11から排気管12を介して供給される排ガス中の有害物質を低減するスクラバである。排ガス処理装置100による処理後の排ガスAは、外部空間(例えば大気中)に放出される。船舶200において、動力装置11と排ガス処理装置100とが、動力装置11の排ガスAを浄化処理する排ガス処理システムを構成している。
【0010】
給液ポンプ13は、排ガスAに含まれる有害物質を吸収する液体(以下「吸収液」という)を排ガス処理装置100に供給する。具体的には、給液ポンプ13は、船舶200の周囲の海水を吸収液として排ガス処理装置100に供給する。例えば海水中のアルカリ成分(HCO3
-)により排ガスAに含まれる有害物質が吸収される。給液ポンプ13から送出された吸収液が給液管14を介して排ガス処理装置100に供給される。
【0011】
図2は、排ガス処理装置100の内部の構成を模式的に示す図である。なお、
図2において、後述する噴霧部33及びノズル34の図示が省略されている。
排ガス処理装置100は、
図2に示される通り、吸収塔20と、噴射部30と、捕集部40と、廃液貯留部50とを具備する。
吸収塔20は筒状の構造体であり、中心軸Cを鉛直方向に向けて設置される。吸収塔20は、下方に設けられた反応筒21と、反応筒21の上端21Aに繋がる連結部22と、連結部22の上端22Aに繋がる排気筒23とを具備する。反応筒21、連結部22及び排気筒23は、吸収塔20の中心軸Cに同軸に設けられる。なお、以下の説明において、中心軸Cを中心とした任意の直径の仮想円における円周の方向を「周方向」と表記し、仮想円における半径の方向を「径方向」と表記する。
【0012】
反応筒21は円筒状の部分であり、排気管12が接続される排ガス導入部210を具備する。排ガス導入部210は反応筒21の下端21Bに近い位置に設けられる。連結部22は円錐台状の部分である。連結部22の上端22Aの内径は下端22Bの内径を下回る。排気筒23は反応筒21よりも小径の円筒状の部分である。排気筒23の上端23Aに排ガスAを排出する排出口230が開口する。なお、反応筒21と連結部22と排気筒23とは、相互に一体的に構成されてもよいし、相互に別体で構成されて連結されてもよい。
【0013】
図3は、
図2のIII-III線における矢視図である。なお、
図3は模式図であり、各要素の寸法及び縮尺が実際の製品と相違する場合がある。
排ガス導入部210は、
図3に示される通り、反応筒21の周面に形成された貫通孔212と、貫通孔212から外部に延びる導入管216と、を含み、この導入管216に上記排気管12が連結される。導入管216は、長手方向Eaが中心軸Cから外れるように(すなわち、交差しないように)、反応筒21に接合されている。したがって、導入管216から反応筒21に流入する排ガスAは、反応筒21の内壁面21Sに沿って当該反応筒21の周方向に進行し、中心軸Cの周りを旋回する旋回流となる。この結果、
図2に示される通り、排ガスAは、反応筒21の下方の排ガス導入部210から中心軸Cの周りを旋回しながら上方の排出口230に向かって螺旋状に進行する。排ガスAが反応筒21の内部を旋回しながら螺旋状に進むスクラバは、一般に、サイクロン式のスクラバとも称される。
【0014】
噴射部30は反応筒21の内部において吸収液を噴射する。具体的には、噴射部30は、
図2に示される通り、幹管31と、複数の枝管32と、それぞれの枝管32に設けられた噴霧部33(
図3)とを具備する。
幹管31は、吸収塔20の中心軸Cに同軸に設置された円管状の構造体であり、反応筒21の一端である下端21Bから他端である上端21Aに向かって延びている。また、複数の枝管32は、幹管31よりも小径の管状部材であり、
図3に示される通り、幹管31の周面から当該周面に対して垂直に径方向に延在する。本実施形態において、それぞれの枝管32の先端32Aは、反応筒21の内壁面21Sに溶接などの手法によって接合される。なお、枝管32の先端32Aは内壁面21Sに接合されずに、当該内壁面21Sとの間に隙間を形成する自由端であってもよい。
噴霧部33は、
図3に示される通り、複数の枝管32のそれぞれに設けられ、吸収液を霧状に噴射(すなわち、噴霧)する。噴霧部33は、吸収液を噴霧する複数のノズル34を備える。
【0015】
排ガス処理装置100において、給液ポンプ13(
図1)から送出された吸収液は、給液管14(
図1)を介して幹管31に供給され、当該幹管31から複数の枝管32のそれぞれに供給され、噴霧部33の各ノズル34から噴霧される。吸収液の噴霧によって排ガスAと吸収液とが気液接触し、排ガスAに含まれる有害物質が吸収液の液滴に吸収される。また、各枝管32において噴霧部33は排ガスAの旋回流の流れの方向に向けて吸収液を噴霧する。この結果、吸収液の噴霧が排ガスAの旋回流を阻害することが防止される。
【0016】
噴霧部33から噴霧された吸収液の大半は、排ガスAが螺旋状に反応筒21を進行するに伴い、反応筒21の内壁面21Sに付着して液膜を形成することで回収される。一方、一部の吸収液は排ガスAとともに排気筒23に到達する。捕集部40は、
図2に示される通り、この排気筒23の中に配置され、当該排気筒23に到達した吸収液を捕集する捕集装置を備える。捕集装置には、例えばデミスタ又はスワラなどが用いられる。捕集部40が吸収液を捕集するため、排出口230から吸収液が外部に放出されることが防止される。また、外部に放出された吸収液が地上(本説明では船舶200の甲板)に降り注ぐといった事態を防止できる。
【0017】
廃液貯留部50は反応筒21の内壁面21S及び捕集部40によって回収された吸収液を貯留する。具体的には、廃液貯留部50は、
図2に示される通り、回収後の吸収液を貯留する貯留タンク500を備える。貯留タンク500は鉛直方向において反応筒21よりも低い位置に配置され、反応筒21の底部から延びるドレインパイプ502が接続されている。反応筒21及び捕集部40によって回収された吸収液は、ドレインパイプ502を通じて貯留タンク500に導かれ、当該貯留タンク500に貯留される。貯留タンク500は例えばガスシールチャンバである。貯留タンク500には排水管503が接続されており、貯留タンク500に貯留した吸収液が排水管503を通じて外部(例えば航海中の海)に排水される。
【0018】
噴射部30の構成について更に詳述する。
以下では、
図2に示される通り、反応筒21の下端21Bから上端21Aまでの鉛直方向の長さを高さHと定義する。また、本実施形態の反応筒21の中心軸は吸収塔20の中心軸Cと一致しており、反応筒21の中心軸にも吸収塔20の中心軸Cと同一の符号を付す。本実施形態の反応筒21において、高さHの方向と中心軸Cとは平行である。
【0019】
反応筒21の高さHの方向において、幹管31には、所定の間隔αごとに複数本の枝管32が設けられている。同じ高さHに設けられた複数の枝管32は、
図3に示される通り、反応筒21の中心軸Cの周りに等間隔(等角度)に設けられる。以下、同じ高さHに設けられている複数の枝管32を纏めて「枝管群32U」(
図2)と称する。枝管群32Uのそれぞれは、
図2に示される通り、反応筒21の高さHの方向の下方から上方にかけて、反応筒21の中心軸Cを中心に所定角度(ただし、0度<所定角度<360度)ずつ周方向に回転させた状態で設けられている。すなわち、高さHの方向から視た平面視において、枝管群32Uはいずれも、上下に隣接する他の枝管群32Uとの間で、枝管32同士が重ならないように配されている。この枝管群32Uの配置により、反応筒21の内部における排ガスAの螺旋状の流れが噴射部30の各枝管32によって不均一に乱されることが抑えられる。なお、枝管群32Uが含む枝管32の数は一本でもよい。また、高さHの方向において、所定の間隔αは一定でもよく、異なってもよい。例えば、上端21Aに近い箇所に比べ、排ガス導入部210の近い箇所における所定の間隔αが小さくなることで、排ガス導入部210の近い箇所において枝管32が密に配置されてもよい。
【0020】
図4は、反応筒21の中を流れる排ガスAの流速分布の説明図である。
以下、反応筒21の所定の高さ位置において、中心軸Cに垂直な面を観察平面Pと定義する。本実施形態では、高さHの方向は鉛直方向に平行であるため、観察平面Pは鉛直方向に直交する水平面となる。また、反応筒21の径方向において、中心軸Cに位置する幹管31の周面とその近傍を第1端部Ra、反応筒21の内壁面21Sとその近傍を第2端部Rb、第1端部Ra及び第2端部Rbの間を中間部Rcと定義する。
【0021】
反応筒21の径方向における排ガスAの旋回流の流速分布を観察すると、
図4に示される通り、観察平面Pにおいて流速分布は一様(すなわち流速Vが一定)になっていない。具体的には、流速分布は、上記中間部Rcに最大のピークVsが位置する曲線形状を成している。すなわち、排気ガスの流速Vは、第1端部Ra及び第2端部Rbよりも中間部Rcにおいて大きくなっている。この排ガスAの流速分布の傾向は、反応筒21の任意の高さHのいずれの観察平面Pにおいても同様である。
【0022】
したがって、噴霧部33が、仮に、径方向において一定の噴霧量で吸収液を噴霧した場合、有害物質の吸収に必要な吸収液の量に過不足が生じる。詳細には、反応筒21の第1端部Ra及び第2端部Rbにおいて吸収液が過剰となり中間部Rcにおいて吸収液が不足する。そこで、径方向における吸収液の過不足を抑えるために、それぞれの枝管32の噴霧部33において、径方向における吸収液の噴霧量分布が、当該径方向における排ガスAの流速分布に対応した分布となっている。具体的には、径方向における噴霧量分布のピークQs(
図5)の位置が、排ガスAの径方向における流速分布のピークVsの位置に対応している。
【0023】
図5は、径方向における排ガスAの流速分布、噴霧量分布、及び、有害物質の残濃度分布の関係を示す図である。
図5において、態様U1は噴霧量分布が排ガスAの流速分布に対応している場合を示す。具体的には、態様U1の噴霧量分布において、噴霧量のピークQsは、排ガスAの流速分布のピークVsの位置に対応して径方向の中間部Rcに位置している。態様U2は、態様U1に対する比較例であり、噴霧量分布が径方向の第1端部Ra、第2端部Rb及び中間部Rcの全てにおいて一定ある場合を示している。
態様U1と態様U2との有害物質の残濃度の分布を比較すると、径方向の中間部Rcにおいて、態様U2の残濃度に対し態様U1が低下している。すなわち、態様U1のように、径方向における噴霧量分布のピークQsの位置は、排ガスAの流速分布のピークVsに対応した位置(すなわち、中間部Rc)に配置される。この配置により、流速分布のピークVsにおける有害物質の吸収量が増大し、流速分布のピークVsの位置において吸収液の不足が抑えられる。
【0024】
また、態様U2における第1噴霧量Q1は、第1端部Raから第2端部Rbまでの範囲を流れる排ガスAの総流量に基づいて設定される。具体的には、排ガスAの総流量に含まれる有害物質の総含有量に対し所定の処理能力(本実施形態では浄化能力)を得るために必要な吸収液の総量を、第1端部Raから第2端部Rbまでの長さで平均した値に相当する噴霧量、又は当該値に応じた噴霧量が第1噴霧量Q1に設定される。
一方、態様U1において、第1端部Raにおける第2噴霧量Q2、及び、第2端部Rbにおける第3噴霧量Q3はいずれも、態様U2の第1噴霧量Q1よりも少なく設定されている。この設定により、第1端部Ra、及び、第2端部Rbにおいて、吸収液の過剰な噴霧が抑えられる。
【0025】
また、態様U1において、第1端部Raにおける吸収液の削減量、及び、第2端部Rbにおける吸収液の削減量の合計値を上限に、態様U1の第4噴霧量Q4は態様U2の第1噴霧量Q1よりも多く設定されている。なお、第1端部Raにおける吸収液の削減量は「第1噴霧量Q1-第2噴霧量Q2」に相当し、第2端部Rbにおける吸収液の削減量は「第1噴霧量Q1-第3噴霧量Q3」に相当する。この設定により、第1端部Raから第2端部Rbまでの範囲に亘る態様U1の総噴霧量は、少なくとも態様U2の総噴霧量と同等、又は、それ以下に抑えられる。したがって、態様U1の吸収液の利用効率は態様U2よりも高められる。
【0026】
次いで、
図5の態様U1に示した噴霧量分布を得るための具体的な構成について説明する。
噴射部30は、上記の通り、幹管31から径方向に延びる複数の枝管32を有し、枝管32のそれぞれには噴霧部33が設けられており、噴霧部33は排ガスAの旋回流の流れの方向に吸収液を噴霧する複数のノズル34を備える。
図3に示される通り、各枝管32において、ノズル34は、第1端部Raと、第2端部Rbと、中間部Rcのそれぞれに1つずつ設けられている。そして、各ノズル34の吸収液の噴霧量のバランスによって、排ガスAの流速分布に対応した噴霧量分布が実現されている。具体的には、噴霧部33において、各ノズル34のうちの中間部Rcのノズル34が主に噴霧量分布のピークQsの位置に向けて吸収液を噴霧し、第1端部Ra及び第2端部Rbのノズル34は主にピークQsの位置以外に向けて吸収液を噴霧する。そして、この中間部Rcのノズル34の噴霧量が第1端部Ra及び第2端部Rbのそれぞれの噴霧量よりも多くなっている。また、第1端部Ra、第2端部Rb及び中間部Rcのそれぞれの噴霧量は、上記態様U1において説明した第2噴霧量Q2、第3噴霧量Q3及び第4噴霧量Q4と等しくなっている。したがって、それぞれの枝管32において、
図5の態様U1に示される通り、排ガスAの流速分布のピークVsに対応して径方向の中間部Rcに噴霧量のピークQsを有した噴霧量分布が得られる。
【0027】
なお、第1端部Ra、第2端部Rb及び中間部Rcのそれぞれの噴霧量が第2噴霧量Q2、第3噴霧量Q3及び第4噴霧量Q4に維持される限りにおいて、第1端部Ra、第2端部Rb及び中間部Rcのそれぞれのノズル34の個数は1つに限らず2つ以上でもよい。また、第1端部Ra、第2端部Rb及び中間部Rcのそれぞれの間でノズル34の個数は異なってもよい。また、第1端部Ra、第2端部Rb及び中間部Rcのそれぞれにおいて、異なる噴霧量のノズル34が組み合わされてもよい。
【0028】
以上説明した通り、排ガス処理装置100は、導入された排ガスAが旋回しながら進行する筒状の反応筒21と、反応筒21の内部において排ガスAを処理する吸収液を噴射する噴射部30と、を具備する。噴射部30は、反応筒21の中心軸C上に延び、吸収液が供給される幹管31と、幹管31から前記反応筒の径方向に延びる複数の枝管32と、複数の枝管32のそれぞれに設けられ、排ガスAの旋回の方向に向けて吸収液を噴霧する噴霧部33と、を備える。噴霧部33の径方向における吸収液の噴霧量分布のピークQsの位置は、排ガスAの径方向における流速分布のピークVsの位置に対応する。吸収液の噴霧量分布のピークQsの位置が排ガスAの径方向における流速分布のピークVsの位置に対応することで、流速分布のピークVsにおける有害物質の吸収量が増大し、排ガスAの流速分布のピークVsの位置において吸収液の不足が抑えられる。この結果、排ガスAの処理性能を向上させることができる。
【0029】
また、噴霧部33の径方向における吸収液の噴霧量分布のピークQsは、幹管31の近傍である第1端部Ra及び反応筒21の内壁面21Sの近傍である第2端部Rbの間の中間部Rcに位置する。排ガスAの流速分布のピークVsが中間部Rcに位置する場合に、当該中間部Rcにおける吸収液の不足が適切に抑えられる。
【0030】
また、噴霧部33の径方向における吸収液の噴霧量分布において、第1端部Raにおける第2噴霧量Q2及び第2端部Rbにおける第3噴霧量Q3は、幹管31と反応筒21の内壁面21Sとの間を流れる排ガスAの処理に要する吸収液の総量を幹管31から反応筒21の内壁面21Sまでの長さで平均した量よりも少ない。この結果、第1端部Ra及び第2端部Rbにおいて吸収液の過剰な噴霧が抑えられ、吸収液の利用効率が高められる。
【0031】
また、噴霧部33は、吸収液を噴霧する複数のノズル34を備える。複数のノズル34のうち、主に吸収液の噴霧量分布のピークQsの位置に向けて吸収液を噴霧するノズル34の噴霧量は、主に吸収液の噴霧量分布のピークQs以外の位置に向けて吸収液を噴霧する他のノズル34の噴霧量よりも多い。複数のノズル34の噴霧量のバランスによって、排ガスAの流速分布に対応した噴霧量分布を容易に実現できる。
【0032】
2.第2実施形態
図6は、第2実施形態の噴霧部33の構成を模式的に示す図である。
第1実施形態では、
図5の態様U1に示した吸収液の噴霧量分布を得るために、噴霧部33は、第1端部Ra、中間部Rc及び第2端部Rbのそれぞれにノズル34を備え、中間部Rcのノズル34の噴霧量が第1端部Ra及び第2端部Rbのそれぞれの噴霧量よりも多くなっている構成を説明した。
本実施形態の噴霧部33は、
図6に示される通り、複数のノズル34を備える点において第1実施形態の噴霧部33と共通するものの、枝管32の長手方向において第1端部Ra及び第2端部Rbよりも中間部Rcにノズル34が密に配置されている点で相違する。具体的には、
図7に示される通り、第1端部Raに位置するノズル34が距離βだけ中間部Rcに寄せて配置されることで、中間部Rcにノズル34が密に配置されている。この配置により、中間部Rcにおける噴霧量が増大し、中間部Rcに噴霧量のピークQsを有した噴霧量分布が得られる。
【0033】
本実施形態の噴霧部33によれば、枝管32の長手方向におけるノズル34の配置の調整により、排ガスAの流速分布に対応した噴霧量分布を容易に実現できる。
なお、第2実施形態の噴霧部33において、各ノズル34の噴射量は同じでもよく、異なっていてもよい。各ノズル34の噴射量が異なる場合、排ガスAの流速分布に対応した噴霧量分布となるように、各ノズル34の配置が調整される。
【0034】
3.変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0035】
(1)第1実施形態及び第2実施形態において、排ガスAの径方向における流速分布のピークVsが中間部Rcに位置する場合を説明した。しかしながら、噴射部30の構造や反応筒21の設置姿勢といった何らかの要因によって、ピークVsが第1端部Ra又は第2端部Rbに位置する場合、噴霧部33の径方向における吸収液の噴霧量分布のピークQsの位置も第1端部Ra又は第2端部Rbに位置することになる。また、反応筒21の高さHの方向において、流速分布のピークVsの位置が高さHによって異なる場合には、噴霧量分布のピークQsの位置も高さHによって異なる。また、排ガスAの径方向における流速分布が複数のピークVsを有する場合には、噴霧量分布も、複数のピークVsのそれぞれの位置に対応した位置にピークQsを有することとなる。
【0036】
(2)第1実施形態及び第2実施形態において、海水が吸収液に用いられる排ガス処理装置100を例示した。しかしながら、排ガス処理装置100が排ガスAの処理に用いる液体は海水に限定されない。具体的には、当該液体には、海水、アミン溶液、アルカリ系水溶液又は酸性水溶液のいずれかが、排ガスAに含まれる処理対象に応じて用いられてもよい。例えば、処理対象が二酸化炭素である場合、アミン溶液が液体に用いられてもよい。また例えば、処理対象が塩化水素である場合、アルカリ系水溶液又は酸性水溶液が液体に用いられてもよい。
【0037】
(3)第1実施形態及び第2実施形態において、排ガス処理装置100が船舶200に設置される場合を例示した。しかしながら、設置場所は船舶200に限定されない。設置場所は例えば工場などでもよい。
【符号の説明】
【0038】
21…反応筒、21S…内壁面、30…噴射部、31…幹管、32…枝管、33…噴霧部、34…ノズル、100…排ガス処理装置、A…排ガス、C…中心軸、Qs…噴霧量分布のピーク、Rc…中間部、Vs…流速分布のピーク。