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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011571
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20240118BHJP
   D06P 5/13 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B41M5/00 100
D06P5/13 Z
B41M5/00 114
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113664
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】514015019
【氏名又は名称】エレファンテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162341
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬崎 幸典
(72)【発明者】
【氏名】杉本 雅明
(72)【発明者】
【氏名】松田 光夫
【テーマコード(参考)】
2H186
4H157
【Fターム(参考)】
2H186DA17
2H186FA07
2H186FA13
2H186FB56
4H157AA02
4H157CA06
4H157CC01
4H157CC03
4H157DA01
4H157EA11
4H157GA06
(57)【要約】
【課題】染色又は印刷された布帛に更に染色又は印刷する際の境目を目立たなくする。
【解決手段】染色又は印刷された布帛の一面の一部に抜染されて形成された第1画像のうちの画像境界に形成される画像の濃度を補正し、第1画像に重ね合わせて印刷される第2画像の画像情報を生成する生成工程と、第2画像の画像情報に基づいて、布昂の一面を印刷する印刷工程と、を含み、生成工程は、第2画像の画像情報を、第1画像の内側から外側に向かって濃度が徐々に低くなるグラデーション画像情報に補正し、補正されたグラデーション画像情報と、第1画像の画像情報とを合成することによって第2画像の画像情報を生成する画像形成方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色又は印刷された布帛の一面の一部に抜染されて形成された第1画像のうちの画像境界に形成される画像の濃度を補正し、前記第1画像に重ね合わせて印刷される第2画像の画像情報を生成する生成工程と、
前記第2画像の画像情報に基づいて、前記布昂の前記一面を印刷する印刷工程と、を含む、
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記生成工程は、前記第2画像の画像情報を、重ね合わせる前記第1画像の画像境界における重なり領域において前記第1画像の内側から外側に向かって濃度が徐々に低くなるグラデーション画像情報に補正し、補正された前記グラデーション画像情報と、前記第1画像の画像情報とを合成することによって前記第2画像の画像情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記グラデーション画像情報は、前記第2画像の全体に比べて、少なくとも、吐出するインクの量、印刷速度、印刷密度のいずれか一つを変更することにより、前記第2画像の全体に印刷される画像情報よりも濃度が低い画像情報を形成するように設定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記第2画像の画像情報は、少なくとも、蛍光増白剤を含む蛍光白色インクによるベース印刷を行うことを設定する印刷設定情報を含む、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記蛍光白色インクは消臭剤粒子を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記蛍光白色インクは撥水剤を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記蛍光白色インクは難燃剤粒子を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記第2画像の画像情報は、少なくとも、カラーインクによるグラフィック印刷を行うことを設定する印刷設定情報を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項9】
紫外線ランプを有し、前記第1画像の色を測色する測色工程を更に備え、
前記第2画像の画像情報は、前記測色工程で測色された色を目標の色として前記蛍光白色インクの吐出条件を設定する印刷設定情報を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記蛍光白色インクの吐出条件は、吐出する前記蛍光白色インクの量、印刷速度、印刷密度のいずれか一つを変更することにより、前記第2画像の白色度を前記第1画像の白色度に合わせるように設定される、
ことを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法に関し、詳しくは、抜染された布帛の一部を蛍光白色インクで印刷する画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
布帛を染料捺染剤で印捺する工程1と、工程1で印捺された一部を脱色する工程2と、顔料捺染剤で印捺する工程3とを有する捺染物の製造方法であって、顔料捺染剤としてジスアゾ系顔料を含む顔料捺染剤を使用する捺染物の製造方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
印刷装置と、制御装置であるホストPCとを備える印刷システムであって、印刷装置は、複数のインクジェットヘッド及び測色器を有し、ホストPCは、複数のインクジェットヘッドにより印刷される色を目標の色に合わせる色合わせ処理を実行可能であり、色合わせ処理において、測色器を用いて目標の色を取得する目標色取得処理と、色設定値の初期値を設定する初期値設定処理と、複数のパッチをインクジェットヘッドに印刷させて、複数のパッチの中から目標の色に近い色のパッチを選択する目標色対応値決定処理とを行う印刷システムも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-11464号公報
【特許文献2】特開2020-136820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、染色又は印刷された布帛に更に染色又は印刷する際の抜染された領域の黄ばみ及び境目を目立たなくする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の画像形成方法は、
染色又は印刷された布帛の一面の一部に抜染されて形成された第1画像のうちの画像境界に形成される画像の濃度を補正し、前記第1画像に重ね合わせて印刷される第2画像の画像情報を生成する生成工程と、
前記第2画像の画像情報に基づいて、前記布昂の前記一面を印刷する印刷工程と、を含む、
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成方法において、
前記生成工程は、前記第2画像の画像情報を、重ね合わせる前記第1画像の画像境界における重なり領域において前記第1画像の内側から外側に向かって濃度が徐々に低くなるグラデーション画像情報に補正し、補正された前記グラデーション画像情報と、前記第1画像の画像情報とを合成することによって前記第2画像の画像情報を生成する、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像形成方法において、
前記グラデーション画像情報は、前記第2画像の全体に比べて、少なくとも、吐出するインクの量、印刷速度、印刷密度のいずれか一つを変更することにより、前記第2画像の全体に印刷される画像情報よりも濃度が低い画像情報を形成するように設定される、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成方法において、
前記第2画像の画像情報は、少なくとも、蛍光増白剤を含む蛍光白色インクによるベース印刷を行うことを設定する印刷設定情報を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像形成方法において、
前記蛍光白色インクは消臭剤粒子を含む、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の画像形成方法において、
前記蛍光白色インクは撥水剤を含む、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の画像形成方法において、
前記蛍光白色インクは難燃剤粒子を含む、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成方法において、
前記第2画像の画像情報は、少なくとも、カラーインクによるグラフィック印刷を行うことを設定する印刷設定情報を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項4に記載の画像形成方法において、
紫外線ランプを有し、前記第1画像の色を測色する測色工程を更に備え、
前記第2画像の画像情報は、前記測色工程で測色された色を目標の色として前記蛍光白色インクの吐出条件を設定する印刷設定情報を含む、
ことを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の画像形成方法において、
前記蛍光白色インクの吐出条件は、吐出する前記蛍光白色インクの量、印刷速度、印刷密度のいずれか一つを変更することにより、前記第2画像の白色度を前記第1画像の白色度に合わせるように設定される、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、染色又は印刷された布帛に更に染色又は印刷する際の抜染された領域の黄ばみ及び境目を目立たなくすることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、第1画像と第2画像の重なり領域における境目を目立たなくすることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、第1画像と第2画像の重なり領域における境目を目立たなくすることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、抜染された領域の黄ばみを目立たなくすることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、再利用される布帛の臭いを抑制することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、再利用される布帛の黄ばみを少なくすることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、再利用される布帛に難燃性を付与することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、抜染された領域の黄ばみを目立たなくした上でグラフィック印刷を行うことができる。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、第1画像と追加された第2画像の境目の見た目の違いを少なくすることができる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、第1画像と追加された第2画像の白色度を合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る画像形成方法による画像形成の流れを示すフローチャート図である。
図2】布帛の一面への抜染処理を説明する図である。
図3】第2画像の形成を説明する図である。
図4】第2実施形態に係る画像形成方法による画像形成の流れを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に図面を参照しながら、本発明の実施形態の具体例を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
尚、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0028】
「第1実施形態」
(1)画像形成方法の全体工程
図1は第1実施形態に係る画像形成方法による画像形成の流れを示すフローチャート図、図2は布帛の一面への抜染処理を説明する図、図3は第2画像の形成を説明する図である。
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る画像形成方法について説明する。
【0029】
本実施形態に係る画像形成方法は、図1に示すように、染色又は印刷された布帛の一面の一部に抜染されて形成(S101)された第1画像のうちの画像境界に形成される画像の濃度を補正し、第1画像に重ね合わせて印刷される第2画像の画像情報を生成する生成工程(S102)と、第2画像の画像情報に基づいて、布昂の一面を印刷する印刷工程(S103)と、を含んでいる。
【0030】
(1.1)第1画像の形成
本実施形態においては、染色又は印刷された布帛の一面の一部を抜染剤を用いて抜染して形成された第1画像としての布帛の生地が露出した領域に、更に染色又は印刷して第2画像を重ね合わせて形成することで、いわゆる衣料品のアップサイクルが可能となる。
【0031】
(布帛)
本実施形態において使用できる布帛は、特に限定なく、公知の素材、例えば綿、絹、羊毛、麻、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン等の任意の天然・合成繊維からなる布帛を用いることができ、これらを組み合わせた複合素材を用いることもできる。
特に、ポリエステル繊維を含む布帛である場合に、本実施形態の画像形成方法による染色又は印刷された布帛に更に染色又は印刷する際の境目を目立たなくする効果が発揮されやすい。
【0032】
(抜染工程:S101)
本実施形態において使用される布帛(図2において符号Tで示す)は、染色又は印刷された布帛の一面の一部に抜染剤(図2において符号DCで示す)を印捺した後、熱処理を施して染料を抜染することにより染料が昇華転写されて元の布帛の生地が露出した第1画像(図2において符号100で示す)が形成されている。
布帛に抜染剤を印捺する方法は特に限定されるものではない。例えば、布帛を抜染剤に浸漬してもよいし、布帛に抜染剤を印刷、塗布又は噴霧してもよい。
具体的には、例えば、スクリーン印捺法、ローラ印捺法、ロータリースクリーン印捺法、転写印捺法、インクジェット法等を適宜選択することができ、刷毛塗りしてもよい。
布帛に対する抜染剤の付着量は特に限定されるものではなく、目的とする抜染の程度に応じて適宜調整される。
【0033】
抜染剤としては、抜染で通常使用される抜染剤であれば特に限定なく使用することができる。具体的には、染料を脱色又は抜染するような、還元剤が一般的に使用される。例えば塩化第一スズ、蓚酸第一スズ、酢酸第一スズ、フッ化第一スズ、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、ロンガリットに代表されるナトリウムスルホキシレート・ホルムアルデヒド複合物、デクロリンに代表されるホルムアルデヒドスルホキシリック亜鉛塩等が挙げられる。
また、染料の脱色を促進する目的でアルカリ剤を併用することもできる。例えば、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。
【0034】
尚、元の布帛に形成された模様等をより暈すために抜染剤として、二塩基酸モノエステル又はジエステルを使用してもよく、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等が挙げられる。
また、抜染剤として、例えば、エチレングリコールジアセテート、ジ又はトリエチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノアセテート、ジ又はトリエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジ又はトリプロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジ又はトリプロピレングリコールモノアセテート、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジ又はトリエチレングリコール、ジ又はトリプロピレングリコール等を使用することで、元の布帛に形成された模様等の一層高い暈しが可能となる。
【0035】
抜染は、図2(a)に示すように、抜染剤(図2において符号DCで示す)を特定部位、すなわち第1画像(図2(c)において符号100で示す)が形成される領域のみに塗布して、図2(b)に示すように、抜染剤を塗布した領域をカバーするように昇華転写用紙(図2(b)において符号Pで示す)をあてて、熱処理する。熱処理は公知の加熱手段により実施することができる。
【0036】
加熱手段としては、例えば、アイロン、ホットプレート、スチーミング、乾熱処理等が挙げられる。加熱温度は、抜染剤とともに分散染料の移動が生じる温度であればよく、例えば、120℃以上又は150℃以上であってもよく、220℃以下又は200℃以下であってもよい。加熱時間は、目的とする抜染の程度に応じて適宜決定され、例えば、30秒以上又は1分以上であってもよく、10分以下又は3分以下であってもよい。これにより、図2(c)に示すように、抜染剤が塗布された領域の染料が昇華転写用紙に移動して布帛の生地が露出した第1画像が形成される。
【0037】
(1.2)第2画像の形成
布帛の一面の一部に抜染されて形成された第1画像に重ね合わせて第2画像を印刷する。
本実施形態においては、第2画像の形成は、染色又は印刷された布帛の一面の一部に抜染されて形成された第1画像のうちの画像境界に形成される画像の濃度を補正し、第1画像に重ね合わせて印刷される第2画像の画像情報を生成する生成工程と、生成工程で生成された第2画像の画像情報に基づいて、布昂の一面を印刷する印刷工程と、を経て実施される。
【0038】
(生成工程:S102)
第2画像の画像情報を生成する生成工程においては、第2画像の画像情報を、重ね合わせる第1画像に位置合わせをして、第1画像との画像境界における重なり領域において第1画像の内側から外側に向かって濃度が徐々に低くなるグラデーション画像情報に補正し、補正されたグラデーション画像情報と、第1画像の画像情報とを合成することによって第2画像の画像情報を生成する。
ここで、第1画像の画像情報としては、抜染された領域の大きさ、形状等が挙げられ、第2画像の画像情報としては、画像の大きさを含む画像データ情報、印刷に供されるインク情報、第1画像の画像境界における重ね量等、が挙げられる。
【0039】
グラデーション画像情報は、第2画像の全体に比べて、少なくとも、吐出するインクの量、印刷速度、印刷密度のいずれか一つを変更することにより、第2画像の全体に印刷される画像情報よりも濃度が低い画像情報を形成するように設定される。
具体的には、図3に模式的に示すように、第1画像(図3において符号100で示す)の境界線BLを挟んだ一定の重なり幅(図3において符号Rで示す)において第1画像の内側から外側に向かって、第2画像(図3において符号200で示す)を形成するインクの吐出量を漸次少なくするように設定することで、第2画像の濃度を第2画像の全体よりも低くなるようにする。
また、インクの吐出量は一定のまま、重なり領域において第1画像の内側から外側に向かって、印刷速度を漸次高くして、あるいは印刷密度を漸次低くして、第2画像の濃度を第2画像の全体よりも低くなるようにしてもよい。
【0040】
(印刷工程:S103)
印刷工程においては、生成工程で生成された第2画像の画像情報に基づいて、蛍光増白剤を含む蛍光白色インクを用いて、抜染して形成された第1画像に重ね合わせて第2画像を形成する。印刷は、インクジェット方式で布帛に直接印刷してもよく、予め昇華転写用紙にインクジェット方式で蛍光増白剤を含む蛍光白色インクを印刷し、昇華転写してもよい。第1画像に位置合わせをして、第1画像との重なりを例えば、-1mm~1mmとして、グラデーションをかけるとの観点からは、インクジェット方式で布帛に直接印刷することが好ましい。
【0041】
蛍光増白剤は、一般に波長300~450nm程度の光を吸収し、かつ波長400~500nm程度の蛍光を発光する化合物であり、ベンゾオキサゾール系化合物や、クマリン系化合物、スチレンビフェニル系化合物、ピラゾロン系化合物、スチルベン系化合物、ベンゼンおよびビフェニルのスチリル誘導体、ビス(ベンザゾール-2-イル)誘導体、カルボスチリル、ナフタルイミド、ジベンゾチオフェン-5,5’-ジオキシドの誘導体、ピレン誘導体、ピリドトリアゾール等が含まれる。インクは、蛍光増白剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。また、これらの中でも、蛍光白色インクの着色を抑制するとの観点から、ベンゾオキサゾール系化合物が好ましい。
【0042】
蛍光白色インクに用いられる白色顔料は、インク組成物を白色にするものであればよく、通常、この分野に用いられる白色顔料を用いることが出来るが、このような白色顔料としては、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等の無機白色顔料を用いることが好ましい。本実施形態においては、特に、酸化チタンが隠蔽性および着色性、分散粒径の観点から好ましい。
【0043】
蛍光白色インクは、消臭剤粒子を含んでいてもよい。消臭剤粒子は臭気分子を化学的に吸着する金属イオンを含有するのが好ましく、一例としては、インク中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン等で置換してなる粒子を挙げることができる。
【0044】
蛍光白色インクは、撥水剤を含んでいてもよい。撥水剤としては、フッ素系樹脂を好ましく使用できる。フッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシポリマー(PFA)等が挙げられる。
【0045】
蛍光白色インクは、難燃剤粒子を含んでいてもよい。難燃剤粒子としては、ハロゲンを含有しない非ハロゲン系難燃剤であるリン系または無機系の難燃剤が好ましい。
リン系難燃剤としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム等のポリリン酸塩系難燃剤、リン酸グアニジン等の含窒素有機リン酸塩系難燃剤、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等の芳香族リン酸エステル系難燃剤が挙げられる、
また、無機系の難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、膨張性黒鉛、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、および赤リン等の難燃剤を用いることができるが、加工性と耐久性に優れたポリリン酸塩系の難燃剤を用いることが好ましい。
抜染剤により染料が抜染された布帛は、抜染処理によって含侵されていた難燃剤が離脱して難燃性が低下する虞があった。本実施形態においては、蛍光白色インクが難燃剤粒子を含むことで、抜染加工により低下した難燃性を補うことが可能となる。
【0046】
還元剤で抜染された領域は、抜染に伴って元の布帛に塗布処理されていた蛍光増白剤が剥がれ落ち、抜染処理を施していない領域との間で布帛の白度が異なる虞があった。特に、太陽光の下では、抜染された領域は、抜染処理を施していない領域に比べて、黄ばんで見えることがあった。
【0047】
本実施形態においては、印刷工程(S103)において、蛍光増白剤を含む蛍光白色インクを用いて抜染で形成された第1画像に重ね合わせて第2画像を形成する。これにより、抜染処理によって蛍光増白剤が剥がれ落ちた領域に蛍光増白剤が再度付着し、抜染処理を施していない領域との間で白度の差異が認められにくくなる。
特に、第2画像を第1画像に位置合わせして重ね合わせることで、第1画像としての布帛の生地の一部が境界部で露出することなく、黄ばんで見える部分が残りにくい。
また、第1画像との画像境界における重なり領域において第1画像の内側から外側に向かって濃度が徐々に低くなるようにグラデーションで印刷する(図3(b) 参照)ことで、第1画像と第2画像の重なり領域における境目を目立たなくすることが可能となる。
【0048】
印刷工程においては、蛍光増白剤を含む蛍光白色インクで下地としての第2画像を形成した後、又は蛍光白色インクで第2画像を形成するのと同時に、カラーインクで新たなグラフィック印刷を行っても良い。
【0049】
「第2実施形態」
図4は第2実施形態に係る画像形成方法による画像形成の流れを示すフローチャート図である。
第2実施形態における画像形成方法においては、測色工程(S202)において、布帛の一面を抜染して形成された第1画像である布帛の生地が露出した領域を測色計で測色し、第1画像に重ね合わせて形成する第2画像は、測色計で測色された色を目標の色として吐出する白色インクの量を調整して形成する。
【0050】
(測色工程:S202)
本実施形態において使用される布帛は、第1実施形態と同様に、染色又は印刷された布帛の一面の一部に抜染剤を印捺した後、熱処理を施して染料を抜染することにより染料が昇華転写されて元の布帛の生地が露出した第1画像が形成されている。
測色工程においては、紫外線ランプを搭載した測色計を用いて、第1画像の色を測色する。本実施形態においては第1画像の色として、一例として、X-Rite社製のeXactを用いて、CIE/L*a*b*表色系におけるL*値を測色する。L*値は大きい程、高い白色度を示す。
【0051】
(生成工程)
第2画像の画像情報を生成する生成工程においては、測色工程で測色された色を目標の色として吐出する蛍光白色インクの量を設定する。具体的には、第2画像を形成する蛍光白色インクの吐出量を目標のL*値になるように設定することで、第2画像の白色度を第1画像の白色度に合わせる。
また、蛍光白色インクの吐出量は一定のまま、目標のL*値になるように印刷速度を変更して、あるいは印刷密度を変更してもよい。
【0052】
(印刷工程)
印刷工程においては、生成工程で生成された第2画像の画像情報に基づいて、蛍光増白剤を含む蛍光白色インクを用いて、抜染して形成された第1画像の白色度に合わせるように重ね合わせて第2画像を形成する。印刷は、インクジェット方式で布帛に直接印刷してもよく、予め昇華転写用紙にインクジェット方式で蛍光増白剤を含む蛍光白色インクを第1画像の白色度に合わせて印刷し、昇華転写してもよい。
【0053】
本実施形態においては、測色工程(S202)において、測色計を用いて、第1画像の色を測色し、生成工程(S203)においては、測色工程で測色された色を目標の色として、第2画像を形成する蛍光白色インクの吐出量を目標のL*値になるように設定する。これにより、第2画像の白色度を第1画像の白色度に合わせ、第1画像と追加された第2画像の境目の見た目の違いを少なくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
100・・・第1画像
200・・・第2画像
T・・・布帛、DC・・・抜染剤
図1
図2
図3
図4