(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115718
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】脳波測定用電極、脳波測定装置および脳波測定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/263 20210101AFI20240820BHJP
A61B 5/268 20210101ALI20240820BHJP
A61B 5/256 20210101ALI20240820BHJP
A61B 5/291 20210101ALI20240820BHJP
【FI】
A61B5/263
A61B5/268
A61B5/256 110
A61B5/291
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021512
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 隆
(72)【発明者】
【氏名】北添 雄眞
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127LL08
4C127LL13
4C127LL22
(57)【要約】
【課題】脳波測定安定性に優れた脳波測定用電極を提供する。
【解決手段】本発明の脳波測定用電極は、被験者の皮膚に接触させて脳波を測定する脳波測定用電極であって、絶縁性ゴムで構成される基部と、基部から突出しており、絶縁性ゴムで構成される突出部と、突出部の少なくとも先端部分を被覆し、かつ、基部の少なくとも一部を露出する、導電性ゴムで構成された電極部と、を備え、所定の測定手順により求められる帯電量が±0.80kV以内となるものである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の皮膚に接触させて脳波を測定する脳波測定用電極であって、
絶縁性ゴムで構成される基部と、
前記基部から突出しており、絶縁性ゴムで構成される突出部と、
前記突出部の少なくとも先端部分を被覆し、かつ、前記基部の少なくとも一部を露出する、導電性ゴムで構成された電極部と、を備え
下記の手順に従って測定される帯電量が±0.80kV以内である、脳波測定用電極。
(手順)
(1)当該脳波測定用電極の表面を、エチルアルコールに浸漬した不織布ワイパーを用いて拭き取り、乾燥させる。
(2)アース線を取り付けた金属板上に、当該脳波測定用電極を設置する。
(3)当該脳波測定用電極の表面を除電ブラシで撫でた後、静電気測定器を用いて50mm離したところから、当該脳波測定用電極における静電気量を測定し、その静電気量が±0.05kVであることを確認する。
(4)(1)~(3)の除電処理の後、前記基部を静電気防止手袋で保持した状態で、前記電極部により少なくとも一部が被覆された前記突出部の表面を、人毛ウィッグに沿って50mmを5回擦る。
(5)(4)の帯電処理の後、アース線を取り付けた金属板上に当該脳波測定用電極を設置し、静電気測定器を用いて50mm離したところから、当該脳波測定用電極における静電気量(kV)を測定する。
ただし、上記(1)~(5)の操作は、温度20℃、湿度20%RHの環境条件下にて5回行い、5回の測定値の平均値を上記帯電量とする。
【請求項2】
請求項1に記載の脳波測定用電極であって、
前記基部の突出部形成面および前記突出部の表面積をS(cm2)とし、前記電極部の被覆面積をC(cm2)としたとき、C/S×100で算出される前記電極部の被覆率が、30%以上である、脳波測定用電極。
【請求項3】
請求項1に記載の脳波測定用電極であって、
JIS K 6253(1997)に準拠して測定される、25℃における、前記突出部のタイプAデュロメータ硬さが、15以上75以下である、脳波測定用電極。
【請求項4】
請求項1に記載の脳波測定用電極であって、
前記電極部の厚みが、5μm以上200μm以下である、脳波測定用電極。
【請求項5】
請求項1に記載の脳波測定用電極であって、
前記導電性ゴムが、導電性フィラーおよびシリコーンゴムを含む、脳波測定用電極。
【請求項6】
請求項5に記載の脳波測定用電極であって、
前記電極部中の前記導電性フィラーの含有量が、前記シリコーンゴム100Vol%に対して、10Vol%以上80Vol%以下である、脳波測定用電極。
【請求項7】
請求項5に記載の脳波測定用電極であって、
前記導電性フィラーが、金属粒子、銀・塩化銀粒子、金属繊維、金属被覆繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、導電性ポリマー被覆繊維および金属ナノワイヤーからなる群から選択される一種以上を含む、脳波測定用電極。
【請求項8】
請求項1に記載の脳波測定用電極であって、
前記絶縁性ゴムが、シリコーンゴムを含む、脳波測定用電極。
【請求項9】
請求項1に記載の脳波測定用電極であって、
前記導電性ゴムおよび/または前記絶縁性ゴムが、非導電性フィラーを含む、脳波測定用電極。
【請求項10】
請求項1に記載の脳波測定用電極であって、
前記電極部に電気的に接続しており、導電繊維で構成される信号線を備える、脳波測定用電極。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の脳波測定用電極を備える脳波測定装置。
【請求項12】
請求項11に記載の脳波測定装置を被験者に装着して脳波を測定する脳波測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波測定用電極、脳波測定装置および脳波測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで脳波測定用電極に関して様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1の技術が知られている。
特許文献1には、熱可塑性エラストマーの弾性体からなる母材と、前記母材に形成された構造体とを備え、前記構造体は、複数のナノ炭素材料を含み、前記複数のナノ炭素材料が、互いに接続されたネットワーク構造を形成しているとともに前記母材に固定されていることを特徴とする脳波測定用電極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の脳波測定用電極において、脳波測定安定性の点で改善の余地があることが判明した。
【0005】
本発明者はさらに検討したところ、絶縁性ゴムで構成される突出部と、突出部の少なくとも先端部分を被覆する導電性ゴムで構成された電極部とを備える脳波測定用電極において、突出部を人毛と接触させたときの帯電量が所定値以下となる構成を備えることにより、脳波測定安定性が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれは、以下の脳波測定用電極、脳波測定装置および脳波測定方法が提供される。
1. 被験者の皮膚に接触させて脳波を測定する脳波測定用電極であって、
絶縁性ゴムで構成される基部と、
前記基部から突出しており、絶縁性ゴムで構成される突出部と、
前記突出部の少なくとも先端部分を被覆し、かつ、前記基部の少なくとも一部を露出する、導電性ゴムで構成された電極部と、を備え
下記の手順に従って測定される帯電量が±0.80kV以内である、脳波測定用電極。
(手順)
(1)当該脳波測定用電極の表面を、エチルアルコールに浸漬した不織布ワイパーを用いて拭き取り、乾燥させる。
(2)アース線を取り付けた金属板上に、当該脳波測定用電極を設置する。
(3)当該脳波測定用電極の表面を除電ブラシで撫でた後、静電気測定器を用いて50mm離したところから、当該脳波測定用電極における静電気量を測定し、その静電気量が±0.05kVであることを確認する。
(4)(1)~(3)の除電処理の後、前記基部を静電気防止手袋で保持した状態で、前記電極部により少なくとも一部が被覆された前記突出部の表面を、人毛ウィッグに沿って50mmを5回擦る。
(5)(4)の帯電処理の後、アース線を取り付けた金属板上に当該脳波測定用電極を設置し、静電気測定器を用いて50mm離したところから、当該脳波測定用電極における静電気量(kV)を測定する。
ただし、上記(1)~(5)の操作は、温度20℃、湿度20%RHの環境条件下にて5回行い、5回の測定値の平均値を上記帯電量とする。
2. 1.に記載の脳波測定用電極であって、
前記基部の突出部形成面および前記突出部の表面積をS(cm2)とし、前記電極部の被覆面積をC(cm2)としたとき、C/S×100で算出される前記電極部の被覆率が、30%以上である、脳波測定用電極。
3. 1.または2.に記載の脳波測定用電極であって、
JIS K 6253(1997)に準拠して測定される、25℃における、前記突出部のタイプAデュロメータ硬さが、15以上75以下である、脳波測定用電極。
4. 1.~3.のいずれか一つに記載の脳波測定用電極であって、
前記電極部の厚みが、5μm以上200μm以下である、脳波測定用電極。
5. 1.~4.のいずれか一つに記載の脳波測定用電極であって、
前記導電性ゴムが、導電性フィラーおよびシリコーンゴムを含む、脳波測定用電極。
6. 5.に記載の脳波測定用電極であって、
前記電極部中の前記導電性フィラーの含有量が、前記シリコーンゴム100Vol%に対して、10Vol%以上80Vol%以下である、脳波測定用電極。
7. 5.または6.に記載の脳波測定用電極であって、
前記導電性フィラーが、金属粒子、銀・塩化銀粒子、金属繊維、金属被覆繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、導電性ポリマー被覆繊維および金属ナノワイヤーからなる群から選択される一種以上を含む、脳波測定用電極。
8. 1.~7.のいずれか一つに記載の脳波測定用電極であって、
前記絶縁性ゴムが、シリコーンゴムを含む、脳波測定用電極。
9. 1.~8.のいずれか一つに記載の脳波測定用電極であって、
前記導電性ゴムおよび/または前記絶縁性ゴムが、非導電性フィラーを含む、脳波測定用電極。
10. 1.~9.のいずれか一つに記載の脳波測定用電極であって、
前記電極部に電気的に接続しており、導電繊維で構成される信号線を備える、脳波測定用電極。
11. 1.から10までのいずれか1つに記載の脳波測定用電極を備える脳波測定装置。
12. 11.に記載の脳波測定装置を被験者に装着して脳波を測定する脳波測定方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、脳波測定安定性に優れた脳波測定用電極、これを用いる脳波測定装置および脳波測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る、人の頭部に装着した状態の脳波測定装置を模式的に示す図である。
【
図2】本実施形態に係る、フレームの斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る、脳波電極ユニットの正面図である。
【
図4】本実施形態に係る、脳波測定用電極の斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る、脳波測定用電極の平面図である。
【
図6】本実施形態に係る、脳波測定用電極の断面図であり、特に
図5のX1-X1断面図を示す。
【
図7】変形例に係る、脳波測定用電極の断面図である。
【
図8】変形例に係る、脳波測定用電極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
本実施の形態では図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
本明細書中、「略」という用語は、特に明示的な説明の無い限りは、製造上の公差やばらつき等を考慮した範囲を含むことを表す。
【0010】
本実施形態の脳波測定用電極の概要を説明する。
【0011】
本実施形態の脳波測定用電極は、被験者の皮膚に接触させて脳波を測定する生体電極であって、絶縁性ゴムで構成される基部と、基部から突出しており、絶縁性ゴムで構成される突出部と、突出部の少なくとも先端部分を被覆し、かつ、基部の少なくとも一部を露出する、導電性ゴムで構成された電極部と、を備え、下記の手順に従って測定される帯電量が±0.80kV以内となるように構成される。
(手順)
(1)当該脳波測定用電極の表面を、エチルアルコールに浸漬した不織布ワイパーを用いて拭き取り、乾燥させる。
(2)アース線を取り付けた金属板上に、当該脳波測定用電極を設置する。
(3)当該脳波測定用電極の表面を除電ブラシで撫でた後、静電気測定器を用いて50mm離したところから、当該脳波測定用電極における静電気量を測定し、その静電気量が±0.05kVであることを確認する。
(4)(1)~(3)の除電処理の後、前記基部を静電気防止手袋で保持した状態で、前記電極部により少なくとも一部が被覆された前記突出部の表面を、人毛ウィッグに沿って50mmを5回擦る。
(5)(4)の帯電処理の後、アース線を取り付けた金属板上に当該脳波測定用電極を設置し、静電気測定器を用いて50mm離したところから、当該脳波測定用電極における静電気量(kV)を測定する。
ただし、上記(1)~(5)の操作は、温度20℃、湿度20%RHの環境条件下にて5回行い、5回の測定値の平均値を上記帯電量とする。
【0012】
本願発明者らの検討によれば、脳波測定時に脳波測定用電極を頭皮に設置する際、電極と頭髪との摩擦により静電気が発生し、この静電気が脳波測定時にノイズの原因になることがあった。電極のゴムはマイナスに帯電しやすい材料であり、一方の髪の毛はプラスに帯電しやすい材料であるから、帯電列の距離が長いため、これら摩擦により静電気が発生しやすいという事情もあることから、本願発明者らは、この静電気に着眼して検討を進めた。
【0013】
本願発明者らの検討の結果、脳波測定用電極における静電気量を測定する適切な方法を確立でき、そして、その方法により測定される帯電量を所定値以下とすることにより、脳波測定時に発生するノイズを抑制できることが見出された。
【0014】
本実施形態の脳波測定用電極において、上記の帯電量は、例えば、±0.80kV、好ましくは±0.75kV、より好ましくは±0.45kV、より一層好ましくは±0.25kV以下である。これにより、脳波測定時に電極と髪の毛の摩擦による静電気由来のノイズ発生を抑制でき、脳波測定安定性を向上できる。
【0015】
本実施形態では、たとえば電極部の構成材料・構造や突出部の構成材料や構造などを適切に選択することにより、上記の帯電量を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、電極部の中の導電性フィラーの含有量・ゴム材料や突出部のゴム材料を適切に選択すること、電極部の被覆率・厚みや電極部の下地部材(突出部)の硬度などを適切に調整すること等が、上記の帯電量を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0016】
以下、本実施形態の脳波測定用電極やそれを用いた脳波測定装置の詳細に説明する。
【0017】
図1は人(被験者)の頭部99に装着した状態の脳波測定装置1を模式的に示す図である。脳波測定用電極50を備える脳波測定装置1を被験者の頭部99に装着して脳波測定を行う脳波測定方法が実行される。脳波測定装置1は、頭部99に装着され、脳波を生体からの電位変動として検出し、検出した脳波を脳波表示装置(図示せず)に出力する。脳波表示装置は、脳波測定装置1が検出した脳波を取得して、モニタ表示したり、データ保存したり、周知の脳波解析処理を行う。
【0018】
<脳波測定装置1の構造>
脳波測定装置1は、複数の脳波電極ユニット10と、フレーム20と、を有する。本実施形態では、脳波電極ユニット10は、5ch分(5個)設けられている。
【0019】
<フレーム20の構造>
図2にフレーム20の斜視図を示す。フレーム20は、例えばポリアミド樹脂のような硬質部材で帯状に、かつ人間の頭部99の形状に沿うように湾曲して形成されている。
【0020】
フレーム20には、脳波電極ユニット10を取り付けるための開孔として電極ユニット取付部21が5カ所設けられている。電極ユニット取付部21の位置(すなわち脳波電極ユニット10の取付位置)は、国際10-20電極配置法におけるT3、C3、Cz、C4、T4の位置に対応する。
【0021】
電極ユニット取付部21の内周面は螺刻されており、脳波電極ユニット10がその胴部11の螺刻部13(
図3参照)により螺着する。脳波電極ユニット10をネジ込む量を調整することで、頭部99側への突き出し量を調整し、頭部99(頭皮)との接触量・接触圧をコントロールする。また、脳波電極ユニット10をネジ込む動作により、毛髪を掻き分ける。
【0022】
<脳波電極ユニット10の構造>
図3に脳波電極ユニット10の正面図を示す。脳波電極ユニット10は、略円柱状の胴部11と、その一端側(図中下側)に設けられた脳波測定用電極50とを有する。
【0023】
胴部11は、信号取出部12と、螺刻部13と、電極固定部14とを一体に有する。
螺刻部13は、円柱形状の側面に螺刻した形状である。螺刻部13の一端(図中上側)に信号取出部12が設けられている。信号取出部12には信号出力端子が設けられるとともに、脳波電極ユニット10をフレーム20に螺着する際に作業者によって必要に応じて所定の治具を用いて操作される。螺刻部13の他端(図中下側)には、円柱状の電極固定部14が設けられている。電極固定部14に脳波測定用電極50が取り付けられる。
【0024】
<脳波測定用電極50の構造>
図4は脳波測定用電極50の斜視図である。
図5は脳波測定用電極50の平面図である。
図6は脳波測定用電極50の断面図であり、特に
図5のX1-X1断面図を示す。
【0025】
脳波測定用電極50は、基部51と、突出部60と、電極部80とを有する。基部51と突出部60は、ゴム状の弾性体(弾性部材ともいう)によって一体に設けられている。弾性体の具体的な材料については後述する。なお、基部51と突出部60とは一体に設けられる構成に限らず、別体に設けたものを接着剤や嵌合構造により組み付けた構成でもよい。
【0026】
基部51は、略円柱形状であって、一端が円形状の突出部形成面52、他端が円形状の取付面53となっている。取付面53が、胴部11の電極固定部14に接着剤等により取り付けられる。なお、取付面53と電極固定部14の固定構造として特に制限は無く、例えば凹凸形状による嵌合構造が用いられてもよい。
【0027】
<突出部60の形状>
突出部形成面52には、複数の突出部60が整列配置されて設けられている。ここでは、15個の正四角錐の突出部60が格子状に配置されている。より具体的には、斜方格子状に設けられている。
【0028】
突出部60には、頂点61から所定高さの範囲に電極部80が設けられ、頭部99(頭皮)と接触する。
【0029】
突出部60の形状として正四角錐の他に三角錐や六角錐等の多角錐、円錐等各種の錐体の形状を採用することができる。錐体として、先端部分を取り除いた切頭錐体(円錐台や角錐台)であってもよい。また、格子状配置として各種配置を採用できる。
【0030】
突出部60の高さH0は、0.5mm以上20mm以下とすることができる。高さH0の下限は、好ましくは1.0mm以上であり、より好ましくは2.0mm以上である。高さH0の上限は、好ましくは15mm以下であり、より好ましくは10mm以下である。
【0031】
突出部60の底面の幅は2mm以上5mm以下とすることができる。底面の幅の下限は、好ましくは2.5mm以上であり、より好ましくは3.0mm以上である。底面の幅の上限は、好ましくは4.5mm以下であり、より好ましくは4.0mm以下である。
【0032】
突出部60の一つ当たりの体積は0.3mm3以上131mm3以下である。
体積の下限は、好ましくは1.0mm3以上であり、より好ましくは2.0mm3以上である。体積の上限は、好ましくは100mm3以下であり、より好ましくは75mm3以下である。
【0033】
突出部60の形状を上記形状や大きさとすることで、突出部60が頭部99に適切に接触し、被験者に痛み等を与えない柔軟性を実現しつつ、突出部60が屈曲してしまわない十分な強度を確保できる。
【0034】
<信号線69の構造>
突出部60の内部には、電極部80に電気的に接続する導電性の信号線69(
図6において破線で示す)が設けられている。信号線69は、突出部60の内部を導通する態様であれば各種の配置構造を採用し得る。例えば、信号線69の先端は、突出部60の電極形成面(すなわち電極部80が設けられる領域)に対して突出した構造、略同一面上となる構造、埋没した構造のいずれでもよい。電極部80との接続安定性の観点から、突出した構造を用いてもよい。信号線69の先端の突出部分は、一部または全体が電極部80で覆われている。
【0035】
信号線69の先端の突出構造は、折り返し無し、折り返し有り、突出部60の先端部の表面に巻き付ける構造が採用し得る。また、信号線69の延在方向は特に限定せず、突出部形成面52から延びる垂線と一致せず、垂線に対して傾斜してもよい。
【0036】
<基部51、突出部60の材料・特性>
基部51および突出部60の材料・特性について説明する。
【0037】
基部51および突出部60は、導電性を有しないゴム状の弾性体、すなわち、絶縁性ゴムで構成される。
【0038】
ゴム状の弾性体として、具体的には熱硬化性エラストマーや熱可塑性エラストマー(単に「エラストマー(TPE)」ともいう)がある。熱硬化性エラストマーとしては、例えばシリコーンゴム(シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物)がある。熱可塑性エラストマーとして、例えば、スチレン系TPE(TPS)、オレフィン系TPE(TPO)、塩化ビニル系TPE(TPVC)、ウレタン系TPE(TPU)、エステル系TPE(TPEE)、アミド系TPE(TPAE)などがある。
【0039】
ここで、上記シリコーンゴムついて説明する。
上記シリコーンゴムは、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成することができる。シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化工程は、例えば、100~250℃で1~30分間加熱(1次硬化)した後、100~200℃で1~4時間ポストベーク(2次硬化)することによって行われる。
シリコーンゴムとは、通常、絶縁性シリコーンゴムを指す。絶縁性シリコーンゴムは、導電性フィラーを含まないシリコーンゴムである。一方、導電性シリコーンゴムとは、導電性フィラーを含むシリコーンゴムである。
【0040】
上記ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、直鎖構造を有するビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を含むことができる。
【0041】
上記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、直鎖構造を有し、かつ、ビニル基を含有しており、かかるビニル基が硬化時の架橋点となる。
【0042】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ15モル%以下であるのが好ましく、0.01~12モル%であるのがより好ましい。これにより、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中におけるビニル基の量が最適化され、後述する各成分とのネットワークの形成を確実に行うことができる。本実施形態において、「~」は、その両端の数値を含むことを意味する。
【0043】
なお、本明細書中において、ビニル基含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。ただし、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基1つであると考える。
【0044】
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の重合度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1000~10000程度、より好ましくは2000~5000程度の範囲内である。なお、重合度は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
【0045】
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の比重は、特に限定されないが、0.9~1.1程度の範囲であるのが好ましい。
【0046】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、上記のような範囲内の重合度および比重を有するものを用いることにより、得られるシリコーンゴムの耐熱性、難燃性、化学的安定性等の向上を図ることができる。
【0047】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、特に、下記式(1)で表される構造を有するものであるが好ましい。
【0048】
【0049】
式(1)中、R1は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
【0050】
また、R2は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0051】
また、R3は炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0052】
さらに、式(1)中のR1およびR2の置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、R3の置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
【0053】
なお、式(1)中、複数のR1は互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。さらに、R2、およびR3についても同様である。
【0054】
さらに、m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは0~2000の整数、nは1000~10000の整数である。mは、好ましくは0~1000であり、nは、好ましくは2000~5000である。
【0055】
また、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の具体的構造としては、例えば下記式(1-1)で表されるものが挙げられる。
【0056】
【0057】
式(1-1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基であり、少なくとも一方がビニル基である。
【0058】
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、ビニル基含有量が分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ0.4モル%以下である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、ビニル基含有量が0.5~15モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを含有するものであるのが好ましい。シリコーンゴムの原料である生ゴムとして、一般的なビニル基含有量を有する第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、ビニル基含有量が高い第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができる。その結果、より効果的にシリコーンゴムの引裂強度を高めることができる。
【0059】
具体的には、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、例えば、上記式(1-1)において、R1がビニル基である単位および/またはR2がビニル基である単位を、分子内に2個以上有し、かつ0.4モル%以下を含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、R1がビニル基である単位および/またはR2がビニル基である単位を、0.5~15モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを用いるのが好ましい。
【0060】
また、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)は、ビニル基含有量が0.01~0.2モル%であるのが好ましい。また、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)は、ビニル基含有量が、0.8~12モル%であるのが好ましい。
【0061】
さらに、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせて配合する場合、(A1-1)と(A1-2)の比率は特に限定されないが、例えば、重量比で(A1-1):(A1-2)が50:50~95:5であるのが好ましく、80:20~90:10であるのがより好ましい。
【0062】
なお、第1および第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)および(A1-2)は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、分岐構造を有するビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(A2)を含んでもよい。
【0064】
<<オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、架橋剤を含んでもよい。架橋剤は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を含むことができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、直鎖構造を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐構造を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)とに分類され、これらのうちのいずれか一方または双方を含むことができる。
【0065】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖構造を有し、かつ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分が有するビニル基とヒドロシリル化反応し、これらの成分を架橋する重合体である。
【0066】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が20000以下であるのが好ましく、1000以上、10000以下であることがより好ましい。
【0067】
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の重量平均分子量は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算により測定することができる。
【0068】
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
【0069】
以上のような直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)としては、例えば、下記式(2)で表される構造を有するものが好ましく用いられる。
【0070】
【0071】
式(2)中、R4は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0072】
また、R5は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0073】
なお、式(2)中、複数のR4は互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。R5についても同様である。ただし、複数のR4およびR5のうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
【0074】
また、R6は炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のR6は互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0075】
なお、式(2)中のR4,R5,R6の置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
【0076】
さらに、m、nは、式(2)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは2~150整数、nは2~150の整数である。好ましくは、mは2~100の整数、nは2~100の整数である。
【0077】
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。また、上記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)同様、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋する重合体である。
【0079】
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の比重は、0.9~0.95の範囲である。
【0080】
さらに、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
【0081】
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)としては、下記平均組成式(c)で示されるものが好ましい。
【0082】
平均組成式(c)
(Ha(R7)3-aSiO1/2)m(SiO4/2)n
(式(c)において、R7は一価の有機基、aは1~3の範囲の整数、mはHa(R7)3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
【0083】
式(c)において、R7は一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0084】
式(c)において、aは、ヒドリド基(Siに直接結合する水素原子)の数であり、1~3の範囲の整数、好ましくは1である。
【0085】
また、式(c)において、mはHa(R7)3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。
【0086】
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は分岐状構造を有する。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、その構造が直鎖状か分岐状かという点で異なり、Siの数を1とした時のSiに結合するアルキル基Rの数(R/Si)が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)では1.8~2.1、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)では0.8~1.7の範囲となる。
【0087】
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有しているため、例えば、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上となる。これに対して、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖状であるため、上記条件で加熱した後の残渣量はほぼゼロとなる。
【0088】
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の具体例としては、下記式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。
【0089】
【0090】
式(3)中、R7は炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基、もしくは水素原子である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。R7の置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
【0091】
なお、式(3)中、複数のR7は互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0092】
また、式(3)中、「-O-Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
【0093】
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は、それぞれ、特に限定されない。ただし、シリコーンゴム系硬化性組成物において、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中のビニル基1モルに対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の合計のヒドリド基量が、0.5~5モルとなる量が好ましく、1~3.5モルとなる量がより好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)および分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)と、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)との間で、架橋ネットワークを確実に形成させることができる。
【0095】
<<シリカ粒子(C)>>
本実施形態に係るシリコーンゴム系硬化性組成物は、非導電性フィラーを含む。非導電性フィラーは、必要に応じ、シリカ粒子(C)を含んでもよい。これにより、エラストマーの硬さや機械的強度の向上を図ることができる。
【0096】
シリカ粒子(C)としては、特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ等が用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
シリカ粒子(C)は、例えば、BET法による比表面積が例えば50~400m2/gであるのが好ましく、100~400m2/gであるのがより好ましい。また、シリカ粒子(C)の平均一次粒径は、例えば1~100nmであるのが好ましく、5~20nm程度であるのがより好ましい。
【0098】
シリカ粒子(C)として、かかる比表面積および平均粒径の範囲内であるものを用いることにより、形成されるシリコーンゴムの硬さや機械的強度の向上、特に引張強度の向上をさせることができる。
【0099】
<<シランカップリング剤(D)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、シランカップリング剤(D)を含むことができる。
シランカップリング剤(D)は、加水分解性基を有することができる。加水分解基が水により加水分解されて水酸基になり、この水酸基がシリカ粒子(C)表面の水酸基と脱水縮合反応することで、シリカ粒子(C)の表面改質を行うことができる。
【0100】
また、このシランカップリング剤(D)は、疎水性基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にこの疎水性基が付与されるため、シリコーンゴム系硬化性組成物中ひいてはシリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)の凝集力が低下(シラノール基による水素結合による凝集が少なくなる)し、その結果、シリコーンゴム系硬化性組成物中のシリカ粒子(C)の分散性が向上すると推測される。これにより、シリカ粒子(C)とゴムマトリックスとの界面が増加し、シリカ粒子(C)の補強効果が増大する。さらに、ゴムのマトリックス変形の際、マトリックス内でのシリカ粒子(C)の滑り性が向上すると推測される。そして、シリカ粒子(C)の分散性の向上及び滑り性の向上によって、シリカ粒子(C)によるシリコーンゴムの機械的強度(例えば、引張強度や引裂強度など)が向上する。
【0101】
さらに、シランカップリング剤(D)は、ビニル基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にビニル基が導入される。そのため、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化の際、すなわち、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)が有するビニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とがヒドロシリル化反応して、これらによるネットワーク(架橋構造)が形成される際に、シリカ粒子(C)が有するビニル基も、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とのヒドロシリル化反応に関与するため、ネットワーク中にシリカ粒子(C)も取り込まれるようになる。これにより、形成されるシリコーンゴムの低硬度化および高モジュラス化を図ることができる。
【0102】
シランカップリング剤(D)としては、疎水性基を有するシランカップリング剤およびビニル基を有するシランカップリング剤を併用することができる。
【0103】
シランカップリング剤(D)としては、例えば、下記式(4)で表わされるものが挙げられる。
【0104】
Yn-Si-(X)4-n・・・(4)
上記式(4)中、nは1~3の整数を表わす。Yは、疎水性基、親水性基またはビニル基を有するもののうちのいずれかの官能基を表わし、nが1の時は疎水性基であり、nが2または3の時はその少なくとも1つが疎水性基である。Xは、加水分解性基を表わす。
【0105】
疎水性基は、炭素数1~6のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられ、中でも、特に、メチル基が好ましい。
【0106】
また、親水性基は、例えば、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基またはカルボニル基等が挙げられ、中でも、特に、水酸基が好ましい。なお、親水性基は、官能基として含まれていてもよいが、シランカップリング剤(D)に疎水性を付与するという観点からは含まれていないのが好ましい。
【0107】
さらに、加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、クロロ基またはシラザン基等が挙げられ、中でも、シリカ粒子(C)との反応性が高いことから、シラザン基が好ましい。なお、加水分解性基としてシラザン基を有するものは、その構造上の特性から、上記式(4)中の(Yn-Si-)の構造を2つ有するものとなる。
【0108】
上記式(4)で表されるシランカップリング剤(D)の具体例は、次の通りである。
上記官能基として疎水性基を有するものとして、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランのようなアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシランのようなクロロシラン;ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。この中でも、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、及びトリメチルエトキシシランからなる群から選択される一種以上を含むトリメチルシリル基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0109】
上記官能基としてビニル基を有するものとして、例えば、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランのようなアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシランのようなクロロシラン;ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられる。この中でも、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びビニルメチルジメトキシシランからなる群から選択される一種以上を含むビニル基含有オルガノシリル基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0110】
またシランカップリング剤(D)がトリメチルシリル基を有するシランカップリング剤およびビニル基含有オルガノシリル基を有するシランカップリング剤の2種を含む場合、疎水性基を有するものとしてはヘキサメチルジシラザン、ビニル基を有するものとしてはジビニルテトラメチルジシラザンを含むことが好ましい。
【0111】
トリメチルシリル基を有するシランカップリング剤(D1)およびビニル基含有オルガノシリル基を有するシランカップリング剤(D2)を併用する場合、(D1)と(D2)の比率は、特に限定されないが、例えば、重量比で(D1):(D2)が、1:0.001~1:0.35、好ましくは1:0.01~1:0.20、より好ましくは1:0.03~1:0.15である。このような数値範囲とすることにより、所望のシリコーンゴムの物性を得ることができる。具体的には、ゴム中におけるシリカの分散性およびゴムの架橋性のバランスを図ることができる。
【0112】
本実施形態において、シランカップリング剤(D)の含有量の下限は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、シランカップリング剤(D)の含有量上限は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対して、100質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤(D)の含有量を上記下限以上とすることにより、エラストマーを含む柱状部と導電性樹脂層との密着性を高めることができる。また、シリコーンゴムの機械的強度の向上に資することができる。また、シランカップリング剤(D)の含有量を上記上限以下とすることにより、シリコーンゴムが適度な機械特性を持つことができる。
【0113】
<<白金または白金化合物(E)>
本実施形態に係るシリコーンゴム系硬化性組成物は、触媒を含んでもよい。触媒は、白金または白金化合物(E)を含むことができる。白金または白金化合物(E)は、硬化の際の触媒として作用する触媒成分である。白金または白金化合物(E)の添加量は触媒量である。
【0114】
白金または白金化合物(E)としては、公知のものを使用することができ、例えば、白金黒、白金をシリカやカーボンブラック等に担持させたもの、塩化白金酸または塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯塩等が挙げられる。
【0115】
なお、白金または白金化合物(E)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性組成物中における白金または白金化合物(E)の含有量は、触媒量を意味し、適宜設定することができるが、具体的にはビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シリカ粒子(C)、シランカップリング剤(D)の合計量100重量部に対して、白金族金属が重量単位で0.01~1000ppmとなる量であり、好ましくは、0.1~500ppmとなる量である。
白金または白金化合物(E)の含有量を上記下限以上とすることにより、シリコーンゴム系硬化性組成物が適切な速度で硬化することが可能となる。また、白金または白金化合物(E)の含有量を上記上限以下とすることにより、製造コストの削減に資することができる。
【0117】
<<水(F)>>
また、本実施形態に係るシリコーンゴム系硬化性組成物には、上記成分(A)~(E)以外に、水(F)が含まれていてもよい。
【0118】
水(F)は、シリコーンゴム系硬化性組成物に含まれる各成分を分散させる分散媒として機能するとともに、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)との反応に寄与する成分である。そのため、シリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)とを、より確実に互いに連結したものとすることができ、全体として均一な特性を発揮することができる。
【0119】
(その他の成分)
さらに、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)~(F)成分以外に、他の成分をさらに含むことができる。この他の成分としては、例えば、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等のシリカ粒子(C)以外の無機充填材、反応阻害剤、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等の添加剤が挙げられる。
【0120】
基部51および突出部60のタイプAデュロメータ硬さを、25℃で、JIS K 6253(1997)に準拠し、硬度計を用いて測定したものを硬度Aとする。
基部51および/または突出部60の硬度Aの下限は、例えば、15以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上である。これにより、突起部60の過度な変形を抑制できるため、過度な変形に起因した測定電位のバラツキが小さくなり、測定安定性を高められる。
一方、基部51および/または突出部60の硬度Aの上限は、例えば、75以下、好ましくは70以下、より好ましくは65以下である。これにより、頭皮や身体などの測定対象への追従性が良好となり、装着安定性が向上する。
【0121】
ゴム硬度Aの測定は、基部51および突出部60を測定対象としてもよいが(この一部を切除して測定対象となる試験片を準備してもよい)、基部51および突出部60を構成するシリコーンゴムなどのゴム材料から成形した試験片を用いて測定してもよい。なお、表面に形成された電極部80が薄層のため硬度Aに与える影響が少ない場合には、上記の試験片の測定表面に電極部80または電極部80を構成する導電性シリコーンゴムが形成されていてもよい。なお、複数の試験片を重ねたものを測定対象としてもよい。押針から試験片端までの距離が12mm未満でも、ある程度距離があれば許容できる。
【0122】
<信号線69の材料>
信号線69は、公知のものを使用することができるが、例えば、導電繊維で構成され得る。導電繊維としては、金属繊維、金属被覆繊維、炭素繊維、導電性ポリマー繊維、導電性ポリマー被覆繊維、および導電ペースト被覆繊維からなる群から選択される一種以上を用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
上記金属繊維、金属被覆繊維、の金属材料は、導電性を有するものであれば限定されないが、銅、銀、金、ニッケル、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン、ステンレス、アルミニウム、銀/塩化銀およびこれらの合金等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、導通性の観点から、銀を用いることができる。また、金属材料は、クロム等の環境に負荷を与える金属を含まないことが好ましい。
【0124】
上記金属被覆繊維、導電性ポリマー被覆繊維、導電ペースト被覆繊維の繊維材料は、特に限定されないが、合成繊維、半合成繊維、天然繊維のいずれでもよい。これらの中でも、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、絹および綿等を用いることが好ましい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
上記炭素繊維は、例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。
【0126】
上記導電性ポリマー繊維および導電性ポリマー被覆繊維の導電性ポリマー材料は、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、及びこれらの誘導体等の導電性高分子およびバインダ樹脂の混合物、あるいは、PEDOT-PSS((3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸))等の導電性高分子の水溶液が用いられる。
【0127】
上記導電ペースト被覆繊維の導電ペーストに含まれる樹脂材料は特に限定されないが伸縮性を有することが好ましく、例えばシリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、およびエチレンプロピレンゴムからなる群から選択される一種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
上記導電ペースト被覆繊維の導電ペーストに含まれる導電性フィラーは特に限定されないが、公知の導電材料を用いてもよいが、金属粒子、金属繊維、金属被覆繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、導電性ポリマー被覆繊維および金属ナノワイヤーからなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0129】
上記導電性フィラーを構成する金属は、特に限定はされないが、例えば、銅、銀、金、ニッケル、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン、銀/塩化銀、或いはこれらの合金のうち少なくとも一種類、あるいは、これらのうちの二種以上を含むことができる。この中でも、導電性の高さや入手容易性の高さから、銀または銅が好ましい。
【0130】
上記信号線69が、線状の導電繊維を複数本撚り合わせた撚糸で構成されてもよい。これにより、変形時における信号線69の断線を抑制できる。
【0131】
本実施形態において、導電繊維における被覆とは、単に繊維材料の外表面を覆うことのみならず、単繊維を撚り合わせた撚糸などの場合は、その撚糸の中の繊維間隙に金属、導電性ポリマー、または導電ペーストが含浸し、撚糸を構成する単繊維を1本毎に被覆するものを含む。
【0132】
信号線69の引張破断伸度は、例えば、1%以上~50%以下、好ましくは1.5%以上~45%である。このような数値範囲内とすることで、変形時の破断を抑制しつつも、突出部60の過度な変形を抑制できる。
【0133】
<電極部80(導電部)>
電極部80は、少なくとも突出部60の先端部分を被覆する。これにより、脳波取得性が安定する。
その上、電極部80は、基部51の少なくとも一部を露出する。また、基部51の側面の一部または全面を電極部80が被覆しない構成により、電極固定部14への取付時に作業者の手が基部51の側面を保持したときでも、表面に形成された導電性ゴムが剥離したり、かかる剥離によるクラックが進行することを抑制できる。また、電極部80による被覆による変形抑制が低減されるため、突出部60の柔軟性が向上し、頭部に装着した際の痛みが低減できる。
【0134】
図6の脳波測定用電極50の一例では、電極部80は、突出部60の頂点61および側面(電極形成面)の一部を被覆するが、基部51の突出部形成面52を被覆しない。
図7の脳波測定用電極50の変形例では、突出部60の頂点61および側面の全面および基部51の突出部形成面52の全面を被覆する。すなわち、電極部80は、突出部60全体を覆う第1の電極部81と突出部形成面52を覆う第2の電極部82とを有する。第1の電極部81と第2の電極部82は、電気的に接続されている。なお、第1の電極部81と第2の電極部82は同一の導電部材により一体に設けられてもよいし、異なる導電部材により設けられてもよい。
【0135】
図7中、信号線69は、基部51において、取付面53と突出部形成面52との間に導電繊維を通糸することで形成される。突出部形成面52では、突出部60が設けられておらず平面となっている領域に、信号線69の端部が露出して配置される。
信号線69の露出している部分は、第2の電極部82に覆われている。突出部60の先端部分を覆う第1の電極部81は第2の電極部82と電気的に接続されているため、頭部99(頭皮)と接触する第1の電極部81により検出された生体信号(すなわち脳波)は、第2の電極部82を介して信号線69によって外部に取り出すことができる。
【0136】
基部51の突出部形成面52および突出部60の表面積をS(cm2)とし、電極部80の被覆面積をC(cm2)としたとき、電極部80の被覆率を、式C/S×100で算出する。ここでいう比表面積Sには、基部51の側面および取付面53は含まないと定義する。
上記の電極部80の被覆率の下限は、例えば、30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上である。これにより、上記の帯電量を低減できる。
一方、上記の電極部80の被覆率の上限は、特に限定されないが、100%以下としてもよい。
なお、電極部80の被覆率が100%のとき、電極部80は、基部51の側面に形成されないことが好ましいが、製造方法の操作に起因して電極部80が基部51の側面に僅かに形成されることは許容される。
【0137】
脳波測定用電極50の断面を示す
図6中、突出部60の高さH0、突出部60の頂点61からの高さH1とする。電極部80におけるH1/H0は、上記の被覆率に応じて決定できるが、例えば、0.5以上1.0以下としてもよい。
なお、各電極部80におけるH1/H0は、同一でも異なっていてもよいが、脳波測定能のバラツキを抑制する観点から、同一であることが好ましい。
【0138】
電極部80の厚みは、例えば、5μm以上200μm以下である。電極部80の厚みとは、突出部60の表面に対して法線方向の厚みを意味する。厚みの下限は、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは15μm以上である。厚みの上限は、好ましくは175μm以下であり、より好ましくは150μm以下である。
【0139】
電極部80は、導電性ゴムで構成される。電極部80の導電性ゴムは、上述のゴム状の弾性体が導電性を有するものであればとくに限定されないが、導電性フィラーおよびシリコーンゴムを含む導電性シリコーンゴムが好ましい。
【0140】
電極部80中の導電性フィラーの含有量の下限は、前記シリコーンゴム100Vol%に対して、例えば、10Vol%以上、好ましくは15Vol%以上、より好ましくは20Vol%以上である。これにより、薄膜の場合でも、生体電気信号の伝送性を高めることができる。
一方、電極部80中の導電性フィラーの上限は、シリコーンゴム100Vol%に対して、例えば、80Vol%以下、好ましくは70Vol%以下、より好ましくは60Vol%以下である。これにより、突出部60の変形時における電極部80の耐久性を高めることができる。
【0141】
導電性フィラーが、金属粒子、銀・塩化銀粒子、金属繊維、金属被覆繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、導電性ポリマー被覆繊維および金属ナノワイヤーからなる群から選択される一種以上を含む
この中でも、導電性フィラーは、良導性金属を用いるのが好ましい。良導性金属は、銅、銀、金、ニッケル、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン、或いはこれらの合金からなる群から選択される一種以上を含む。特に、入手性や導電性の観点から、銀や塩化銀、銅が好適である。
【0142】
電極部80を形成する方法の一例は、絶縁性ゴムで形成された突出部60の頂部および電極形成面を、導電性フィラーを含むペースト状の導電性溶液にディップ(浸漬塗布)する。これにより、突出部60の頂部および電極形成面に電極部80が形成される。
また、上記導電性溶液を、基部51の突出部形成面52に塗布することにより、導電性樹脂層としての電極部80を形成してもよい。
なお、導電性溶液を必要に応じて加熱乾燥することで、導電性シリコーンゴムが得られる。
【0143】
本実施形態に係る導電性溶液は、導電性フィラーを含まない上記シリコーンゴム系硬化性組成物に加えて、上記導電性フィラーおよび溶剤を含むものである。
【0144】
上記溶剤としては、公知の各種溶剤を用いることができるが、例えば、高沸点溶剤を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0145】
上記溶剤の一例としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、トリフルオロメチルベンゼン、ベンゾトリフルオリドなどの芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンなどのハロアルカン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類などを例示することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0146】
上記導電性溶液は、溶液中の固形分量などを調整することで、スプレー塗布やディップ塗布等の各種の塗布方法に適切な粘度を備えることができる。
【0147】
絶縁性ゴムおよび導電性ゴムが同じシリコーンゴムを含む場合、突出部60および基部51を構成する絶縁性シリコーンゴムと、電極部80を構成する導電性シリコーンゴムとに、同種のシリコーンゴムを用いることが好ましい。これにより、突出部60および/または基部51と電極部80との密着性を向上できる。
【0148】
ここで、同種のシリコーンゴムとは、シリコーンゴム系硬化性組成物が、同種のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン、同種の架橋剤、同種のシランカップリング剤、同種の触媒、および同種の非導電性フィラーの少なくとも一つ以上を含む。
【0149】
ただし、同種のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとは、少なくとも官能基が同じビニル基を含み、直鎖状を有していればよく、分子中のビニル基量や分子量分布、あるいはその添加量が異なっていてもよい。
同種の架橋剤とは、少なくとも直鎖構造や分岐構造などの共通の構造を有していればよく、分子中の分子量分布や異なる官能基が含まれていてもよく、その添加量が異なっていてもよい。
同種のシランカップリング剤とは、少なくとも共通の官能基を有していればよく、分子中の他の官能基や添加量が異なっていてもよい。
同種の触媒とは、少なくとも共通の構成材料を有していればよく、触媒中に異なる組成が含まれていてもよく、その添加量が異なっていてもよい。
同種の非導電性フィラーとは、少なくとも共通の構成材料を有していればよく、粒子径、比表面積、表面処理剤、又はその添加量が異なっていてもよい。
【0150】
突出部60、基部51および電極部80の一例として、導電性ゴムおよび/または絶縁性ゴムが、非導電性フィラーを含んでもよい。非導電性フィラーとしては、上述のシリカ粒子(C)が好ましい。
【0151】
また、上記導電性溶液が上記導電性フィラーおよび非導電性フィラーを含む場合、電極部80が含む非導電性フィラーの含有量の下限は、非導電性フィラーおよび導電性フィラーの合計量100質量%に対して、例えば、1質量%以上であり、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上とすることができる。これにより、電極部80の機械的強度を向上させることができる。一方で、電極部80が含む非導電性フィラーの含有量の上限は、非導電性フィラーおよび導電性フィラーの合計量100質量%に対して、例えば、20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。これにより、電極部80における導電性と機械的強度や柔軟性とのバランスを図ることができる。
【0152】
また、導電性シリコーンゴムは、シリコーンオイルを含まない構成であってもよい。電極部80の表面にシリコーンオイルがブリードアウトすることで導通性が低下することを抑制できる。
これにより、脳波測定装置1を頭部99へ装着する際の毛髪の掻き分け性能を向上させることができる。また、脳波測定装置1を装着した際の電極部80の接触面積の十分な確保が可能となる。
【0153】
<脳波測定用電極50の製造方法>
本実施形態の脳波測定用電極50の製造方法の一例は次の工程を含むことができる。
まず、金型を用いて、上記シリコーンゴム系硬化性組成物を加熱加圧成形し、基部51および突出部60からなる成形体を得る。
続いて、得られた成形体の各突出部60の内部に、縫い針を用いて、信号線69を通す。その後得られた成形体の突出部60の電極形成面(すなわち電極部80が設けられる領域)に、ペースト状の導電性溶液をディップ塗布し、加熱乾燥後、ポストキュアを行う。これにより、突出部60の電極形成面に電極部80を形成できる。
以上により、脳波測定用電極50を製造することができる。
なお、上記成形工程時において、信号線69を配置した成形空間内に、上記シリコーンゴム系硬化性組成物を導入し、加圧加熱成形するインサート成形を用いてもよい。
【0154】
図8を参照して、本実施形態の脳波測定用電極50の変形例を説明する。
図8は本実施形態の脳波測定用電極50の断面図である。本実施形態の脳波測定用電極50は、
図7の脳波測定用電極50の変形例であり、異なる部分について説明する。
【0155】
脳波測定用電極50において、第1の電極部81は、突出部60の先端において、基部51と突出部60とに共通に設けられた導電材料の上に更に導電材料を設けることで形成されている。より具体的には、電極部80は、突出部60全体を覆う第1の電極部81と突出部形成面52を覆う第2の電極部82とを有する。第1の電極部81は、突出部60の表面全体に第2の電極部82と一体に設けられた下層電極部81aと、突出部60の頂点61(先端部分)から基部51に向けて所定高さまでの領域において下層電極部81aを覆って設けられた上層電極部81bとを有する。下層電極部81aの上に上層電極部81bを設けることで、電極部80の先端部部(頂点61の近傍領域)を補強することができる。
【0156】
第1の電極部81と第2の電極部82の導電材料は、第1の実施形態で説明した材料を用いることができる。第1の電極部81と第2の電極部82の導電材料は同じであってもよいし、異なってもよい。また、第1の電極部81の下層電極部81aと上層電極部81bの導電材料は、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0157】
第2の電極部82と第1の下層電極部81aの厚みは、第1の実施形態と同様に、5μm以上200μm以下とすることができる。厚みの下限は、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは15μm以上である。厚みの上限は、好ましくは175μm以下であり、より好ましくは150μm以下である。
上層電極部81bの厚みは、例えば、5μm以上200μm以下とすることができる。厚みの下限は、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは15μm以上である。厚みの上限は、好ましくは175μm以下であり、より好ましくは150μm以下である。
【0158】
電極部80を設ける方法について説明する。
突起部60の表面全体と基部51の少なくとも突出部形成面52を覆うように、良導性金属を含むペースト状の第1の導電性溶液にディップ(浸漬塗布)して引き上げ乾燥させる。これにより、突起部60の表面全体と突出部形成面52に所定厚みの導電性部材(すなわち第2の電極部82と下層電極部81a)が形成される。つづいて、突起部60の頂点61およびその近傍に、下層電極部81aを覆うようにして新たな導電性部材を形成する。より具体的には、下層電極部81aが形成された突起部60の頂点61を下向きとして、予め設定された長さだけ、良導性金属を含むペースト状の第2の導電性溶液にディップ(浸漬塗布)し、頂点61を下側に向けた状態で、引き上げ乾燥させる。これにより、第2の導電性溶液が重力により頂点61に集まるように膨張形状(すなわち長球)が形成される。
【0159】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成(変形例)を採用することもできる。
【実施例0160】
以下、本実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0161】
<サンプル>
<実施例1~6、比較例1,2のサンプル>
実施例1~6、比較例1,2で用いたシリコーンゴムの原料成分を以下に示す。
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A))
・低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1):合成スキーム1により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1-1)で表わされる構造でR1(末端)のみがビニル基である構造)
・高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2):合成スキーム2により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1-1)で表わされる構造でR1およびR2がビニル基である構造)
・低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-3):合成スキーム3により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1-1)で表わされる構造でR1およびR2がビニル基である構造)
【0162】
(オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B))
・モメンティブ社製:「TC-25D」
【0163】
(シリカ粒子(C))
・シリカ粒子(C-1):シリカ微粒子(粒径7nm、比表面積300m2/g)、日本アエロジル社製、「AEROSIL300」
(銀粉)
・銀粉:(メジアン径d50:8.0μm、アスペクト比16.4、平均長径4.6μm)、徳力本店社製、「TC-101」、
【0164】
(シランカップリング剤(D))
・シランカップリング剤(D-1):ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、Gelest社製、「HEXAMETHYLDISILAZANE(SIH6110.1)」
・シランカップリング剤(D-2):ジビニルテトラメチルジシラザン、Gelest社製、「1,3-DIVINYLTETRAMETHYLDISILAZANE(SID4612.0)」
【0165】
(白金または白金化合物(E))
・モメンティブ社製:「TC-25A」
【0166】
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合成)
[合成スキーム1:低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)の合成]
下記式(5)にしたがって、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を合成した。
すなわち、Arガス置換した、冷却管および攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)、カリウムシリコネート0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。なお、この際、粘度の上昇が確認できた。
その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。そして、3時間後、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
さらに、4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を得た(Mn=2.2×105、Mw=4.8×105)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.04モル%であった。
【0167】
【0168】
[合成スキーム2:高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)の合成]
上記(A1-1)の合成工程において、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)に加えて2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.86g(2.5mmol)を用いたこと以外は、(A1-1)の合成工程と同様にすることで、下記式(6)のように、高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)を合成した。(Mn=2.3×10
5、Mw=5.0×10
5)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.93モル%であった。
【化6】
【0169】
[合成スキーム3:低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-3)の合成]
上記(A1-2)の合成工程において、オクタメチルシクロテトラシロキサン75.3g(254mmol)、2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.12g(0.35mmol)を用い、155℃まで昇温した後の撹拌時間を3時間にしたこと以外は、(A1-2)の合成工程と同様にすることで、上記式(6)のように、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-3)を合成した。(Mn=2.5×105、Mw=5.0×105)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.13モル%であった。
【0170】
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
次のようにしてシリコーンゴム系硬化性組成物A~Dを調整した。
まず、下記の表1に示す割合で、90%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シランカップリング剤(D)および水(F)の混合物を予め混練し、その後、混合物にシリカ粒子(C)を加えてさらに混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
ここで、シリカ粒子(C)添加後の混練は、カップリング反応のために窒素雰囲気下、60~90℃の条件下で1時間混練する第1ステップと、副生成物(アンモニア)の除去のために減圧雰囲気下、160~180℃の条件下で2時間混練する第2ステップとを経ることで行い、その後、冷却し、残り10%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を2回に分けて添加し、20分間混練した。
続いて、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)100重量部に、下記の表1に示す割合で、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)(TC-25D)および白金または白金化合物(E)(TC-25A)を加えて、ロールで混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物A~Dを得た。
【0171】
<ディップコート用の導電性溶液の調製>
得られた13.7重量部のシリコーンゴム系硬化性組成物B、31.8重量部のデカン(溶剤)に浸漬し、続いて自転・公転ミキサーで撹拌し、54.5重量部の金属粉(G1)を加えた後に三本ロールで混練することで、導電性ペースト(ディップコート用の導電性溶液)を得た。
【0172】
(評価用シリコーンゴムの作製)
表2に示すシリコーンゴム系硬化性組成物を、基部および複数の略三角錐形状突出部に対応する成形空間(凹部)を有する金型を用いて、180℃、10MPaで10分間加熱して、硬化させ、それぞれの凹部内に、基部と複数の突出部とが一体化した成形体を得た。
続いて、成形体の突出部における先端部分から基部にかけての所定の領域を、上記の<ディップコート用の導電性溶液>にディップし、120℃、30分間で加熱乾燥した。その後、140℃、2時間のポストキュアを行った。
以上により、基部51、突出部60、および電極部80を備える、
図4に示す脳波測定用電極50を得た。
このとき、電極部80の被覆率を、上記(評価用シリコーンゴムの作製)における<ディップコート用の導電性溶液>にディップする領域を調整することに変更した。
実施例1~6および比較例1の被覆率は表2に示す通りとした。なお、比較例2では、上記の<ディップコート用の導電性溶液>にディップする工程を実施せずに、被覆率を0%とした。
電極部80の被覆率(%)については、基部51の突出部形成面52の表面積および突出部60の表面積の合計をS(cm
2)とし、電極部80の被覆面積をC(cm
2)としたとき、C/S×100により算出した。
【0173】
(評価)
下記の手順に従って測定される脳波測定用電極の帯電量を測定した。
(手順)
(1)脳波測定用電極の表面を、エチルアルコール(関東化学製 99.5%)に浸漬した不織布ワイパー(日本製紙クレシア製 クレシアテクノワイプRN100-M)を用いて拭き取り、乾燥させた。
(2)アース線を取り付けた金属板(SUS304板 ミスミ製 1.0mm厚))上に、脳波測定用電極を設置した。
(3)脳波測定用電極の表面を除電ブラシ(スタック・アンド・オプティーク製 グランドコード付)で撫でた後、静電気測定器(春日電機製 デジタル静電電位測定装置 Model KSD-1000)を用いて50mm離したところから、脳波測定用電極における静電気量を測定し、その静電気量が±0.05kVであることを確認した。
(4)(1)~(3)の除電処理の後、基部を静電気防止手袋(ミスミ製JDG-TN:ポリエステルフィラメント糸及び導電糸)で保持した状態で、電極部により被覆された突出部の表面を、人毛ウィッグ(ヘアダイレクト・ジャパン製 レミーヘア)に沿って50mmを5回擦った。
(5)(4)の帯電処理の後、アース線を取り付けた金属板上に脳波測定用電極を設置し、静電気測定器を用いて50mm離したところから、脳波測定用電極における静電気量(kV)を測定した。
ただし、上記(1)~(5)の操作は、温度20℃、湿度20%RHの環境条件下にて5回行い、5回の測定値の平均値を帯電量とした。結果を表2に示す。
【0174】
【0175】
【0176】
実施例1~6の脳波測定用電極は、比較例1と比べて、長時間に亘って脳波電極の測定に使用したとき、測定ノイズが低減されており、実用上の使用に耐えうる結果が示された。このような各実施例の脳波測定用電極は、脳波電極測定安定性に優れることが判明した。
また、実施例1~4および実施例6は、実施例5と比較して、頭部に装着した際の痛みが低減するため、装着性に優れる結果を示した。