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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115722
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】管理装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/32 20090101AFI20240820BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20240820BHJP
   H04W 88/04 20090101ALI20240820BHJP
   H04W 88/18 20090101ALI20240820BHJP
【FI】
H04W36/32
H04W16/26
H04W88/04
H04W88/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021521
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】長濱 智範
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE25
(57)【要約】
【課題】転送移動局と被転送移動局との少なくとも1つが移動する場合において、通信品質を維持するために転送移動局と被転送移動局の組合せを変更する技術を提供する。
【解決手段】導出部414は、被転送移動局の位置情報と第1転送移動局の位置情報とをもとに第1移動局間距離を導出し、被転送移動局の速度ベクトルと第1転送移動局の速度ベクトルとをもとに第1相対速度ベクトルを導出し、被転送移動局の位置情報と第2転送移動局の位置情報とをもとに第2移動局間距離を導出し、被転送移動局の速度ベクトルと第2転送移動局の速度ベクトルとをもとに第2相対速度ベクトルを導出する。決定部416は、第1移動局間距離、第1相対速度ベクトル、第2移動局間距離、第2相対速度ベクトルをもとに、基地局と被転送移動局との間の中継を、第1転送移動局で維持するか、第2転送移動局に切りかえるかを決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信可能な通信サービスエリアを形成する基地局と、前記通信サービスエリア外に位置する被転送移動局と、前記通信サービスエリア内に位置して、前記基地局と前記被転送移動局とを中継する第1転送移動局と、前記通信サービスエリア内に位置して、前記基地局と前記被転送移動局とを中継しない第2転送移動局とを備える通信システムを管理する管理装置であって、
前記被転送移動局の位置情報と速度ベクトル、前記第1転送移動局の位置情報と速度ベクトル、前記第2転送移動局の位置情報と速度ベクトルを取得する取得部と、
前記被転送移動局の位置情報と前記第1転送移動局の位置情報とをもとに第1移動局間距離を導出し、前記被転送移動局の速度ベクトルと前記第1転送移動局の速度ベクトルとをもとに第1相対速度ベクトルを導出し、前記被転送移動局の位置情報と前記第2転送移動局の位置情報とをもとに第2移動局間距離を導出し、前記被転送移動局の速度ベクトルと前記第2転送移動局の速度ベクトルとをもとに第2相対速度ベクトルを導出する導出部と、
前記導出部において導出した第1移動局間距離、第1相対速度ベクトル、第2移動局間距離、第2相対速度ベクトルをもとに、前記基地局と前記被転送移動局との間の中継を、前記第1転送移動局で維持するか、前記第2転送移動局に切りかえるかを決定する決定部と、
を備える管理装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記第1移動局間距離が第1しきい値よりも大きく、かつ第1相対速度ベクトルが前記第1移動局間距離を増加させる場合に、前記第2移動局間距離が第2しきい値以下であり、かつ第2相対速度ベクトルが前記第2移動局間距離を増加させないとき、前記基地局と前記被転送移動局との間の中継を前記第2転送移動局に切りかえることを決定する請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記第1移動局間距離が第1しきい値以下である場合、または第1相対速度ベクトルが前記第1移動局間距離を増加させない方向である場合に、前記第1転送移動局による前記基地局と前記被転送移動局との間の中継を維持することを決定する請求項1または2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記第1しきい値は前記第1転送移動局の送信出力に応じて決定され、
前記第2しきい値は前記第2転送移動局の送信出力に応じて決定される請求項2に記載の管理装置。
【請求項5】
前記第1しきい値は前記第1転送移動局の送信出力に応じて決定される請求項3に記載の管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理技術に関し、特に移動局を管理する管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局の通信可能エリア外に存在する移動局は当該基地局と通信できない。このような移動局と基地局との通信を可能にするために、通信可能エリア内に存在する別の移動局が、移動局と基地局との間の通信を中継する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-285936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動局が移動する場合、各移動局の配置に応じて、通信可能エリア内において中継を実行すべき移動局(以下、「転送移動局」という)と、通信可能エリア外において転送移動局に中継をしてもらう移動局(以下、「被転送移動局」という)との組合せは、通信品質(信号品質)を維持するために変えた方がよい場合がある。そのため、転送移動局と被転送移動局の少なくとも1つが移動する場合において、転送移動局と被転送移動局の組合せを変更する手段が求められる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、転送移動局と被転送移動局との少なくとも1つが移動する場合において、通信品質を維持するために転送移動局と被転送移動局の組合せを変更する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の管理装置は、通信可能な通信サービスエリアを形成する基地局と、通信サービスエリア外に位置する被転送移動局と、通信サービスエリア内に位置して、基地局と被転送移動局とを中継する第1転送移動局と、通信サービスエリア内に位置して、基地局と被転送移動局とを中継しない第2転送移動局とを備える通信システムを管理する管理装置であって、被転送移動局の位置情報と速度ベクトル、第1転送移動局の位置情報と速度ベクトル、第2転送移動局の位置情報と速度ベクトルを取得する取得部と、被転送移動局の位置情報と第1転送移動局の位置情報とをもとに第1移動局間距離を導出し、被転送移動局の速度ベクトルと第1転送移動局の速度ベクトルとをもとに第1相対速度ベクトルを導出し、被転送移動局の位置情報と第2転送移動局の位置情報とをもとに第2移動局間距離を導出し、被転送移動局の速度ベクトルと第2転送移動局の速度ベクトルとをもとに第2相対速度ベクトルを導出する導出部と、導出部において導出した第1移動局間距離、第1相対速度ベクトル、第2移動局間距離、第2相対速度ベクトルをもとに、基地局と被転送移動局との間の中継を、第1転送移動局で維持するか、第2転送移動局に切りかえるかを決定する決定部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、転送移動局と被転送移動局との少なくとも1つが移動する場合において、通信品質を維持するために転送移動局と被転送移動局の組合せを変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
図2図1の管理装置の構成を示す図である。
図3図2の管理装置による役割とグループの決定手順を示すフローチャートである。
図4図2の記憶部に記憶される状態テーブルのデータ構造を示す図である。
図5図2の記憶部に記憶される状態テーブルの別のデータ構造を示す図である。
図6図2の管理装置による役割の決定手順を示すフローチャートである。
図7図2の記憶部に記憶される状態テーブルのさらに別のデータ構造を示す図である。
図8図2の管理装置による転送割り当て手順を示すフローチャートである。
図9図2の管理装置による変化量計算手順を示すフローチャートである。
図10図2の記憶部に記憶される状態テーブルのさらに別のデータ構造を示す図である。
図11図2の管理装置によるタイムアウト手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施例を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本実施例は、基地局と移動局とを含む通信システムに関する。基地局は、一定範囲の通信サービスエリアを形成し、通信サービスエリア内の移動局と通信可能であり、通信サービスエリア外の移動局と通信不可能である。通信サービスエリア外に存在する移動局でも基地局と通信するために、本実施例にかかる通信システムでは、サービスエリア外の移動局(以下、「被転送移動局」という)と基地局との通信は、サービスエリア内の移動局(以下、「転送移動局」という)により中継される。
【0011】
転送移動局が車両に搭載され、被転送移動局がユーザに携帯されている場合、転送移動局と被転送移動局は移動可能であり、これらの位置関係は変動する。そのため、被転送移動局と基地局との通信を中継できる位置に転送移動局が存在していても、被転送移動局と転送移動局の少なくとも1つの移動により、被転送移動局と基地局との通信を中継できる位置に転送移動局が存在しなくなりえる。転送移動局と被転送移動局の少なくとも1つが移動する場合において、転送移動局と被転送移動局の組合せを適切に変更することが求められる。
【0012】
本実施例にかかる通信システムは、転送移動局と被転送移動局のそれぞれに対する位置と相対的な速度ベクトル(以下、「相対速度ベクトル」という)をもとに、転送移動局と被転送移動局の組合せを変更する。
【0013】
図1は、通信システム1000の構成を示す。通信システム1000は、基地局100、転送移動局200と総称される第1転送移動局200a、第2転送移動局200b、被転送移動局300と総称される第1被転送移動局300a、第2被転送移動局300b、第3被転送移動局300c、管理装置400を含む。通信システム1000に含まれる基地局100の数、転送移動局200の数、被転送移動局300の数は、「1」、「2」、「3」にそれぞれ限定されない。
【0014】
基地局100は、無線通信を実行可能な無線装置である。基地局100は、無線通信可能な通信サービスエリア110を形成し、通信サービスエリア110内に存在する移動局と通信する。転送移動局200は、通信サービスエリア110内に位置して、基地局100と通信可能な移動局である。また、転送移動局200は、例えば車両に搭載されて移動可能である。被転送移動局300は、通信サービスエリア110外に位置して、基地局100と通信不可能な移動局である。また、被転送移動局300は、例えばユーザに携帯されて移動可能である。
【0015】
このような状況において基地局100と被転送移動局300との通信を可能にするために、転送移動局200は、基地局100と被転送移動局300とを中継する。第1転送移動局200aが被転送移動局300と通信可能な範囲は第1転送可能範囲210aと示され、第2転送移動局200bが被転送移動局300と通信可能な範囲は第2転送可能範囲210bと示される。ここでは、第1転送可能範囲210a内に存在する第1被転送移動局300aと第2被転送移動局300bは第1転送移動局200aと通信可能であり、第2転送可能範囲210b内に存在する第3被転送移動局300cは第2転送移動局200bと通信可能である。
【0016】
第1転送移動局200aと第1被転送移動局300aと第2被転送移動局300bは1つのグループを形成し、第1転送移動局200aは、基地局100と第1被転送移動局300aとを中継するとともに、基地局100と第2被転送移動局300bとを中継する。また、第2転送移動局200bと第3被転送移動局300cは1つのグループを形成し、第2転送移動局200bは、基地局100と第3被転送移動局300cとを中継する。ここで、第2転送移動局200bと第1被転送移動局300aは同一グループでないので、第2転送移動局200bは、基地局100と第1被転送移動局300aとを中継しない。
【0017】
このような転送移動局200と被転送移動局300のグループは、基地局100に接続された管理装置400において生成される。管理装置400においてグループを生成するため、または管理装置400においてグループを変更するために、通信システム1000では次の処理が実行される。
【0018】
各転送移動局200と各被転送移動局300は、GNSS(Global Navigation Satellite System)による測位機能を備え、自らの位置を定期的に測位する。転送移動局200は、測位した位置情報を基地局100に定期的に送信し、被転送移動局300は、測位した位置情報を転送移動局200経由で基地局100に定期的に送信する。いずれのグループにも含まれていない被転送移動局300は、位置情報をブロードキャスト送信し、当該位置情報を受信した転送移動局200が当該位置情報を基地局100に送信する。
【0019】
管理装置400は、基地局100を介して、各転送移動局200の位置情報と、各被転送移動局300の位置情報を取得する。その結果、管理装置400または基地局100は、各転送移動局200と各被転送移動局300を認識する。管理装置400は、位置情報をもとに転送可能範囲210内に存在する移動局を転送移動局200と、中継を行わない移動局(以下、「通常移動局」という)に分類する。通常移動局は、基地局100と通信をするだけである。転送移動局200と通常移動局の分類は、例えば送信電力(空中線電力、または送信出力ともいう)、移動速度をもとになされる。
【0020】
管理装置400は、各転送移動局200の位置情報をもとに各転送移動局200の速度ベクトルと、各被転送移動局300の位置情報をもとに各被転送移動局300の速度ベクトルとを計算する。また、管理装置400は、転送移動局200と被転送移動局300との間の距離も計算する。管理装置400は、速度ベクトルと距離をもとに、転送移動局200と被転送移動局300が含まれるグループを生成する。このような処理により、転送移動局200と被転送移動局300の少なくとも1つが移動しても、グループが変更される。管理装置400は、グループの情報を各転送移動局200に送信する。
【0021】
以下では、第1転送移動局200aの識別子(UID)を「001」とし、第2転送移動局200bのUIDを「002」とし、第1被転送移動局300aのUIDを「101」とし、第2被転送移動局300bのUIDを「102」とし、第3被転送移動局300cのUIDを「103」とする。また、第1転送移動局200aの位置情報は(xm1,ym1)と示され、第2転送移動局200bの位置情報は(xm2,ym2)と示され、第1被転送移動局300aの位置情報は(xp1,yp1)と示される。
【0022】
図2は、管理装置400の構成を示す。管理装置400は、取得部410、記憶部412、導出部414、決定部416、指示部418を含む。以下では、図3から図11も使用しながら管理装置400の処理を説明する。
【0023】
図3は、管理装置400による役割とグループの決定手順を示すフローチャートである。管理装置400の取得部410は、各転送移動局200と各被転送移動局300に対する状態確認要求を基地局100に送信する(S10)。基地局100は状態確認要求を転送移動局200に送信し、転送移動局200は状態確認要求を被転送移動局300に送信する。状態確認要求を受信した転送移動局200は、転送移動局200の状態、例えば転送移動局200の位置情報、送信出力の情報が含まれた応答を基地局100に送信する。また、状態確認要求を受信した被転送移動局300は、被転送移動局300の状態の情報、例えば被転送移動局300の位置情報、送信出力の情報が含まれた応答を転送移動局200に送信する。転送移動局200は、被転送移動局300からの応答を基地局100に転送する。転送移動局200、被転送移動局300は、状態確認要求に関係なく位置情報を定期的に送信してもよい。
【0024】
取得部410は、転送移動局200または被転送移動局300からの応答を待つ(S12)。応答がなく(S14のN)、タイムアウトでなければ(S16のN)、取得部410は、引き続き応答を待つ(S18)。応答があれば(S14のY)、ステップ16、ステップ18はスキップされる。これより取得部410は、転送移動局200または被転送移動局300の状態の情報を取得する。その結果、取得部410は、転送移動局200または被転送移動局300の位置情報を取得する。取得部410は、取得した状態の情報を記憶部412に記憶する。
【0025】
図4は、記憶部412に記憶される状態テーブルのデータ構造を示す。「Unit ID」は、各転送移動局200または各被転送移動局300に対するUIDを示し、「Unit Position」は、各転送移動局200または各被転送移動局300の位置情報を示し、「Time」は、転送移動局200または被転送移動局300または管理装置400において位置情報を取得した時間を示す。このような状態テーブルは、時間t、t-1、t-2、・・・、t-n毎に生成される。
【0026】
図5は、記憶部412に記憶される状態テーブルの別のデータ構造を示す。「RF Range」は、送信出力を示す。「Large」が送信出力:大に相当し、「Mid」が送信出力:中に相当し、「Small」が送信出力:小に相当する。「Unit role」は移動局の役割を示す。「Forwarding」が転送移動局200に相当し、「Forwarded」が被転送移動局300に相当する。「Fowarding Group」が前述のグループを示し、「Neighbor group」が周辺のグループを示す。図3に戻る。決定部416は役割判定処理を実行する(S20)。役割判定処理を説明するために、図6図7も使用する。
【0027】
図6は、管理装置400による役割の決定手順を示すフローチャートである。決定部416は、記憶部412に記憶した状態テーブルを参照して、各転送移動局200または被転送移動局300の位置情報、送信出力を確認する(S50)。取得部410は、記憶部412に記憶した状態テーブルの位置情報をもとに、各転送移動局200または各被転送移動局300の速度ベクトルを計算する(S52)。例えば、第1転送移動局200aの時刻tの位置情報と時刻t-1の位置情報の差を、時刻tと時刻t-1との時間差で除算することによって、第1転送移動局200aの速度ベクトルが計算される。他の転送移動局200、被転送移動局300についても同様である。取得部410は、計算した速度ベクトルを記憶部412に記憶する。図7は、記憶部412に記憶される状態テーブルのさらに別のデータ構造を示す。UID毎に速度ベクトル(Velocity Vector)が記憶される。このような状態テーブルは、時間t、t-1、t-2、・・・、t-n毎に生成される。図6に戻る。
【0028】
決定部416は、通信サービスエリア110に含まれている位置情報の移動局のうち、送信出力が大であり(S54のY)、速度ベクトルの絶対値、つまり速度が一定値αよりも小さい(S56のY)移動局を転送役割、つまり転送移動局200に決定する(S58)。一方、決定部416は、通信サービスエリア110に含まれている位置情報の移動局のうち、送信出力が大でない(S54のN)移動局、または速度が一定値αよりも小さくない(S56のN)移動局を通常役割に決定する(S60)。
【0029】
図3に戻る。導出部414、決定部416は、転送割り当て処理を実行する(S22)。転送割り当て処理を説明するために、図8も使用する。図8は、管理装置400による転送割り当て手順を示すフローチャートである。取得部410は、記憶部412に記憶した状態テーブルの情報を更新する(S100)。決定部416は、転送移動局200へ被転送移動局300の再割り当てを実行する(S102)。導出部414は、変化量を計算する(104)。変化量の計算処理を説明するために、図9も使用する。
【0030】
図9は、管理装置400による変化量計算手順を示すフローチャートである。導出部414は、被転送移動局300の位置情報と転送移動局200の位置情報とをもとに移動局間距離Δdを計算する(S150)。例えば、導出部414は、第1被転送移動局300aの位置情報(xp1,yp1)と第1転送移動局200aの位置情報(xm1,ym1)とをもとに第1移動局間距離Δd(p1,m1)を導出する。
Δd(p1,m1)=(xm1,ym1)-(xp1,yp1)
また、導出部414は、第1被転送移動局300aの位置情報(xp1,yp1)と第2転送移動局200bの位置情報(xm2,ym2)とをもとに第2移動局間距離Δd(p1,m2)を導出する。
Δd(p1,m2)=(xm2,ym2)-(xp1,yp1)
【0031】
導出部414は、被転送移動局300の速度ベクトルと転送移動局200の速度ベクトルとをもとに相対速度ベクトルを計算する(S152)。例えば、導出部414は、第1被転送移動局300aの速度ベクトルVp1と第1転送移動局200aの速度ベクトルVm1とをもとに第1相対速度ベクトルΔv(p1,m1)を導出する。
Δv(p1,m1)=Vm1-Vp1
また、導出部414は、第1被転送移動局300aの速度ベクトルVp1と第2転送移動局200bの速度ベクトルVm2とをもとに第2相対速度ベクトルΔv(p1,m2)を導出する。
Δv(p1,m2)=Vm2-Vp1
【0032】
導出部414は、移動局間距離と相対速度ベクトルを記憶部412に記憶する。図10は、記憶部412に記憶される状態テーブルのさらに別のデータ構造を示す。図示のごとく、転送移動局200と被転送移動局300の様々な組合せに対する移動局間距離と相対速度ベクトルとが記憶される。
【0033】
決定部416は、同一グループ内の移動局間距離と相対速度ベクトルをもとに差分が大きいか否かを判定する(S154)。例えば、決定部416は、第1移動局間距離Δd(p1,m1)が第1しきい値よりも大きく、かつ第1相対速度ベクトルΔv(p1,m1)が第1移動局間距離を増加させる方向であるかを判定する。ここで、第1しきい値は第1転送移動局200aの送信電力に応じて決定される。例えば、第1転送移動局200aの送信電力が大きくなるほど、第1しきい値は大きくされる。このような条件を満たす場合(S154のY)、決定部416は、第2移動局間距離Δd(p1,m2)が第2しきい値以下であり、かつ第2相対速度ベクトルΔv(p1,m2)が第2移動局間距離Δd(p1,m2)を増加させない方向であれば、第2転送移動局200bによる基地局100と第1被転送移動局300aとの間の中継に切りかえることを決定する(S156)。ここで、第2しきい値は第2転送移動局200bの送信電力に応じて決定される。例えば、第2転送移動局200bの送信電力が大きくなるほど、第2しきい値は大きくされる。
【0034】
第2移動局間距離Δd(p1,m2)が第2しきい値より大きい場合、または第2相対速度ベクトルΔv(p1,m2)が第2移動局間距離Δd(p1,m2)を増加させる方向である場合、切替はなされない。このような処理では、被転送移動局300との距離が近い転送移動局200が選ばれる。また、被転送移動局300から離れていく速度が小さいΔvの転送移動局200が選ばれる。さらに、被転送移動局300へ近づくΔvの転送移動局200が選ばれる。
【0035】
一方、前述の条件を満たさない場合(S154のN)、例えば第1移動局間距離Δd(p1,m1)が第1しきい値以下である場合、または第1相対速度ベクトルΔv(p1,m1)が第1移動局間距離を増加させない方向である場合、決定部416は、第1転送移動局200aによる基地局100と第1被転送移動局300aとの間の中継を維持することを決定する(S158)。このように決定部416は、第1移動局間距離Δd(p1,m1)、第1相対速度ベクトルΔv(p1,m1)、第2移動局間距離Δd(p1,m2)、第2相対速度ベクトルΔv(p1,m2)をもとに、第1転送移動局200aによる基地局100と第1被転送移動局300aとの間の中継を維持するか、第2転送移動局200bによる基地局100と第1被転送移動局300aとの間の中継に切りかえるかを決定する。転送移動局200と被転送移動局300についての他の組合せについても同様の処理がなされる。図8に戻る。
【0036】
再割当が必要である場合(S106のY)、決定部416は、割り当て反映処理を実行する(S108)。割り当て反映処理では、例えば、第2転送移動局200bによる基地局100と第1被転送移動局300aとの間の中継に切りかえることを決定した場合、第1転送移動局200aのグループから第1被転送移動局300aを除外し、第2転送移動局200bのグループに第1被転送移動局300aを追加する処理を実行する。指示部418は、転送移動局200へ被転送移動局300の割り当てを通知する(S110)。例えば、指示部418は、第1転送移動局200aへ第1被転送移動局300aの除外を通知し、第2転送移動局200bへ第1被転送移動局300aの追加を通知する。このような通知は基地局100経由でなされる。
【0037】
転送役割への通知の際に、基地局100は、周辺のグループと重複しないように周波数セットを管理して、被転送移動局300とやり取りする最適な専用周波数を割り当てる情報を加えてもよい。また、周辺の移動局を通知する際に、基地局100は、新規に追加する被転送移動局300と、転送から除外する被転送移動局300の情報(次の転送移動局200情報:UID、転送用周波数情報など)を通知してもよい。一方、再割当が必要でない場合(S106のN)、ステップ108、ステップ110はスキップされる。決定部416は、決定した内容に応じて、記憶部412の状態テーブルを変更し(S112)、割り当てを完了する(S114)。図3に戻る。
【0038】
全移動局に対する処理が終わっていなければ(S24のN)、ステップ12に戻る。全移動局に対する処理が終われば(S24のY)、処理が終了される。一方、タイムアウトであれば(S16のY)、取得部410はタイムアウト処理を実行する(S26)。タイムアウト処理を説明するために、図11も使用する。図11は、管理装置400によるタイムアウト手順を示すフローチャートである。取得部410は、未着信(応答のない)の移動局を特定し(S200)、記憶部412に記憶された状態テーブルを変更する(S202)。具体的には、特定した移動局を被転送移動局300とする。状態テーブルの更新後、更新が終了される(S204)。
【0039】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0040】
本実施例によれば、第1移動局間距離、第1相対速度ベクトル、第2移動局間距離、第2相対速度ベクトルをもとに、現在の転送移動局200と被転送移動局300との組合せを維持するか、変更するかを決定するので、転送移動局200と被転送移動局300の少なくとも1つが移動する場合において、これらの組合せを変更できる。また、第1移動局間距離が第1しきい値よりも大きく、かつ第1相対速度ベクトルが第1移動局間距離を増加させる方向である場合に、第2移動局間距離が第2しきい値以下であり、かつ第2相対速度ベクトルが第2移動局間距離を増加させない方向であれば、組合せの変更を決定するので、中継の切替をスムーズに実行できる。また、第1移動局間距離が第1しきい値以下である場合、または第1相対速度ベクトルが第1移動局間距離を増加させない方向である場合に、組合せを維持するので、中継を維持できる。また、第1しきい値は第1転送移動局の送信電力に応じて決定されるので、第1しきい値を適切に設定できる。また、第2しきい値は第2転送移動局の送信電力に応じて決定されるので、第2しきい値を適切に設定できる。
【0041】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。実施例では、音声信号について説明したが、これに限定されずデータ信号などの情報信号であってもよい。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0042】
100 基地局、 200 転送移動局、 300 被転送移動局、 400 管理装置、 410 取得部、 412 記憶部、 414 導出部、 416 決定部、 418 指示部、 1000 通信システム。
図1
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図11