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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115729
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】切削方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/00 20060101AFI20240820BHJP
   E01D 24/00 20060101ALI20240820BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
E21D11/00 Z
E01D24/00
B26F3/00 R
B26F3/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021541
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593184363
【氏名又は名称】コンクリートコーリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 岳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】大石 一明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 翔平
(72)【発明者】
【氏名】藤永 大樹
(72)【発明者】
【氏名】梶原 英男
【テーマコード(参考)】
2D059
2D155
3C060
【Fターム(参考)】
2D059GG41
2D155BB02
2D155LA16
3C060AA20
3C060CE07
3C060CE23
(57)【要約】
【課題】切削深さが一定でない場合でも実現可能な切削方法を提供する。
【解決手段】切削方法においては、被切削物の内部に位置し、前記被切削物の表面との距離が非一定の目標面と、ウォータージェット装置のノズルとの間の距離が一定になるように、前記ノズルの位置を設定し、前記ノズルから噴射される圧水によって、前記表面と前記目標面との間の部分を切削する。好ましくは、前記ウォータージェット装置は前記ノズルを移動させるためのレールを有し、前記レールと前記目標面との距離が一定になるように、前記レールを前記表面に設置する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切削物の内部に位置し、前記被切削物の表面との距離が非一定の目標面と、ウォータージェット装置のノズルとの間の距離が一定になるように、前記ノズルの位置を設定し、
前記ノズルから噴射される圧水によって、前記表面と前記目標面との間の部分を切削する
切削方法。
【請求項2】
前記ウォータージェット装置は前記ノズルを移動させるためのレールを有し、
前記レールと前記目標面との距離が一定になるように、前記レールを前記表面に設置する
請求項1に記載の切削方法。
【請求項3】
前記レールは、
前記ノズルを第一方向に移動させるための二つの第一レールと、
前記第一レールに対して相対移動可能であり、前記ノズルを前記第一方向に交差する第二方向に移動させるための二つの第二レールと
前記第一方向に沿って前記二つの第二レールの間に架設され、前記ノズルを移動可能に支持する支持レールと
を含み、
前記第一レール及び前記第二レールで囲まれた領域内における前記被切削物の切削が完了した後、一方の前記第二レールとの間に前記ノズルを挟むように、前記ノズルが他方の前記第二レールに向かって移動することを阻止する阻止部材を設け、
前記ノズルを前記他方の前記第二レールに向けて移動させるための動力を前記ノズルに供給する
請求項2に記載の切削方法。
【請求項4】
前記ノズルと前記他方の前記第二レールとが接近した場合に、前記ノズルへの動力の供給を停止する
請求項3に記載の切削方法。
【請求項5】
前記被切削物はトンネルであり、
前記表面は、曲面状をなす前記トンネルの内周面であり、
前記目標面は曲面状をなす
請求項1から4のいずれか一つに記載の切削方法。
【請求項6】
前記内周面と前記目標面との間の距離は前記トンネルの天頂に向かうに従って短くなる
請求項5に記載の切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、被切削物、例えばトンネルの内周面を切削する切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
噴射ノズルと、スペーサと、噴射ノズルを移動させる第1駆動部及び第2駆動部を支持する枠体と、枠体を支持する支持体と、支持体に対する枠体の取り付け角度を調整するための角度調整部とを備える高圧水噴射装置が提案されている。
【0003】
スペーサは、被処理面(被切削物の表面)に当接して表面と噴射ノズルとの間隔を一定に保持する。また角度調整部によって、枠体の傾斜角度を表面の傾斜角度に応じて調整することができる。高圧水噴射装置は、表面からの切削深さが一定になるように、被切削物を切削することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-176513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、工事計画によっては、求められる表面からの切削深さが一定でない場合がある。
【0006】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、切削深さが一定でない場合でも実現可能な切削方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る切削方法は、被切削物の内部に位置し、前記被切削物の表面との距離が非一定の目標面と、ウォータージェット装置のノズルとの間の距離が一定になるように、前記ノズルの位置を設定し、前記ノズルから噴射される圧水によって、前記表面と前記目標面との間の部分を切削する。
【0008】
本開示においては、表面と目標面との間の距離は一定でない。目標面との距離が一定になるように、ノズルの位置が設定され、表面と目標面との間の部分は切削される。
【0009】
本開示の一実施形態に係る切削方法は、前記ウォータージェット装置は前記ノズルを移動させるためのレールを有し、前記レールと前記目標面との距離が一定になるように、前記レールを前記表面に設置する。
【0010】
本開示においては、レールと目標面との距離が一定になるように、レールを表面に設置し、ノズルと目標面との距離を一定にする。
【0011】
本開示の一実施形態に係る切削方法は、前記レールは、前記ノズルを第一方向に移動させるための二つの第一レールと、前記第一レールに対して相対移動可能であり、前記ノズルを前記第一方向に交差する第二方向に移動させるための二つの第二レールと前記第一方向に沿って前記二つの第二レールの間に架設され、前記ノズルを移動可能に支持する支持レールとを含み、前記第一レール及び前記第二レールで囲まれた領域内における前記被切削物の切削が完了した後、一方の前記第二レールとの間に前記ノズルを挟むように、前記ノズルが他方の前記第二レールに向かって移動することを阻止する阻止部材を設け、前記ノズルを前記他方の前記第二レールに向けて移動させるための動力を前記ノズルに供給する。
【0012】
本開示においては、ノズルを他方の第二レールに向けて移動させるための動力をノズルに供給する。ノズルの移動は阻止部材によって妨げられる。そのため、支持レール及び第二レールは、ノズルに対して相対的に移動し、未切削の領域に向けて自動的に移動する。
【0013】
本開示の一実施形態に係る切削方法は、前記ノズルと前記他方の前記第二レールとが接近した場合に、前記ノズルへの動力の供給を停止する。
【0014】
ノズルと他方の第二レールとが接近した場合、ノズルへの動力の供給を停止し、支持レール及び第二レールを未切削の領域に配置する。
【0015】
本開示の一実施形態に係る切削方法は、前記被切削物はトンネルであり、前記表面は、曲面状をなす前記トンネルの内周面であり、前記目標面は曲面状をなす。
【0016】
本開示においては、ウォータージェット装置によって、トンネルの内周面と目標面との間の部分を切削する。
【0017】
本開示の一実施形態に係る切削方法は、前記内周面と前記目標面との間の距離は前記トンネルの天頂に向かうに従って短くなる。
【0018】
本開示においては、天頂に向かうに従って切削深さが短くなるので、切削量は減少し、切削に要する時間が短縮される。
【発明の効果】
【0019】
本開示の一実施形態に係る切削方法にあっては、表面と目標面との間の距離は一定でない。目標面との距離が一定になるように、ノズルの位置が設定され、表面と目標面との間の部分は切削される。即ち、切削深さが一定でない切削が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】切削を行う前のトンネルの略示断面図である。
図2】トンネル及びウォータージェット装置の略示断面図である。
図3】ウォータージェット装置の略示平面図である。
図4】固定具の略示平面図である。
図5図4のV-V線を切断線とした固定具の略示断面図である。
図6】第一レール、第二レール及び連結具の略示平面図である。
図7図6のVII-VII線を切断線とした第一レール、第二レール及び連結具の略示断面図である。
図8図6のVIII-VIII線を切断線とした第一レール、第二レール及び連結具の略示断面図である。
図9】二つの第二レール及び支持レールの移動工程を説明する略示説明平面図である。
図10】二つの第二レール及び支持レールの移動工程を説明する略示説明平面図である。
図11】二つの第二レール及び支持レールの移動工程を説明する略示説明平面図である。
図12】二つの第二レール及び支持レールの移動工程を説明する略示説明平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明を実施の形態に係る切削方法を示す図面に基づいて説明する。図1は、切削を行う前のトンネル1の略示断面図である。トンネル1は半円筒状をなし、トンネル1の内側に例えば車道が設けられる。トンネル1の内壁は車両からの排気ガスによって徐々に劣化するので、使用開始から所定期間経過した場合、曲面状をなすトンネル1の内周面2に半円筒状の補強部を新たに形成する。トンネル1の内周面2にそのまま補強部を形成した場合、車道幅が狭くなる。そのため、補強部を形成する前に内周面2を切削する。特に、車道幅に影響する内周面2の下部に対する切削は必要である。
【0022】
図1において、トンネル1の内部に位置する二点鎖線は切削の目標面3を示す。目標面3は曲面状をなす。図1において、破線は、トンネル1の内壁の下端部4を示す。トンネル1における内周面2と目標面3との間の部分(実線と二点鎖線との間の部分)は、衝突型のウォータージェット装置5によって、切削される。トンネル1の径方向における目標面3と内周面2との間の距離は切削深さとなる。図1に示すように、内周面2と目標面3との間の距離はトンネル1の天頂に向かうに従って短くなる。
【0023】
衝突型のウォータージェット装置5は複数のノズル18aから圧水を噴射し、トンネル1の径方向におけるノズル18aの噴射口から略一定距離離れた位置で衝突する。ノズル18aから略一定距離離れた位置は目標面3の位置である。即ち、内周面2と目標面3との間の距離はトンネル1の天頂に向かうに従って短くなるが、ノズル18aの噴射口と目標面3との間の距離は略一定である。
【0024】
複数のノズル18aから噴射される圧水が衝突する位置、即ち目標面3まで切削が行われ、衝突した位置よりも先では、衝突によって圧水の力が減衰され、切削が行われない。即ち、衝突型のウォータージェット装置5は切削深さの制御が可能である。前記下端部4は、作業者によって切削される。作業者は、例えば破砕機を使用して下端部4を切削する。トンネル1の径方向における下端部4の内側に、切削によって発生するガラを回収する回収ホッパ20が設けられる。なおウォータージェット装置によって前記下端部は切削されてもよい。また回収ホッパ20の位置は、ウォータージェット装置5の位置の変更に応じて適宜変更すればよい。例えば、ウォータージェット装置5がトンネル1の天頂側に移動した場合、回収ホッパ20も天頂側に移動する。
【0025】
図2は、トンネル1及びウォータージェット装置5の略示断面図、図3は、ウォータージェット装置5の略示平面図である。図2において、Aは切削されていない未切削範囲を示し、Bはウォータージェット装置5によって切削済みの切削済範囲を示す。未切削範囲Aに内周面2が位置し、切削済範囲Bに被切削面3aが位置する。被切削面3aは、ノズル18aによって切削された後に露出する面であり、目標面3に略一致する。図3は、図2の右下側に配置されたウォータージェット装置5をトンネル1の内側から視認した状態を示す。ウォータージェット装置5はトンネル1の内周面2に設置される。ウォータージェット装置5は、内周面2に設置される二本の第一レール6と、第一レール6に略直交する二本の第二レール8とを備える。二本の第一レール6はトンネル1の軸方向に略平行に延び、上下に適長離隔する。
【0026】
図4は、固定具7の略示平面図、図5は、図4のV-V線を切断線とした固定具7の略示断面図である。図4はトンネル1の内側から視認した状態を示す。図4において、保持クランパ7d及び第一レール6の記載を省略している。第一レール6は固定具7によってトンネル1に固定される。固定具7は、平面視四角形状をなす固定板7aを備える。固定板7aの四隅それぞれに、固定板7aの一辺に略平行な長孔7bが形成される。固定板7aの一面の中央部にシャフト7cが取り付けられている。シャフト7cは前記一面から略直角に突出する。シャフト7cの突出端部には第一レール6を保持する保持クランパ7dが設けられている。
【0027】
固定板7aの前記一辺が内周面2の周方向に沿って延びるように、固定板7aは内周面2又は被切削面3aに取り付けられる。長孔7bにアンカーボルト7eが挿入され、アンカーボルト7eによって固定板7aは内周面2又は被切削面3aに固定される。第一レール6は保持クランパ7dに保持される。
【0028】
異なる長さの複数のシャフト7cが予め用意されている。シャフト7cの突出端部と目標面3との間の距離が略一定になるように、異なる長さの複数のシャフト7cからいずれかの長さのシャフト7cが選択される。固定具7はトンネルの上下にそれぞれ取り付けられる。例えば、上下の固定具7はいずれも内周面2に取り付けられるか、下側の固定具7は被切削面3aに取り付けられ且つ上側の固定具7は内周面2に取り付けられか、又は上側の固定具7は被切削面3aに取り付けられ且つ下側の固定具7は内周面2に取り付けられる。
【0029】
前述したように、内周面2と目標面3との間の距離は、トンネル1の天頂に向かうに従って短くなる。そのため、上下の固定具7を内周面2に取り付ける場合、上側の固定具7のシャフト7cの長さは、下側の固定具7のシャフト7cの長さよりも長くなる。また、上下いずれか一方の固定具7が被切削面3aに取り付けられ且つ他方の固定具7が内周面2に取り付けられる場合においても、トンネル径方向における内周面2と被切削面3aとの位置の相違、及び、内周面2と目標面3との間の距離はトンネル1の天頂に向かうに従って短くなること等を考慮して、上下それぞれに配置されるシャフト7cの長さが調整される。このようにシャフト7cの長さを調整することによって、上側の保持具の保持クランパ7dに保持された第一レール6と目標面3(又は被切削面3a)との間の距離と、下側の保持具の保持クランパ7dに保持された第一レール6と目標面3(又は被切削面3a)との間の距離とは略同じになる。
【0030】
トンネル1の径方向において、第二レール8は第一レール6よりも内側に配置される。第一レール6及び第二レール8は、例えば単管によって構成される。二本の第二レール8は、内周面2の周方向に沿って延び、トンネル1の軸方向に適長離隔する。第二レール8は施工現場にて湾曲させることができる。トンネル1の周方向のいずれの位置においても、目標面3と第二レール8との間の距離が略一定になるように、第二レール8は湾曲される。
【0031】
図6は、第一レール6、第二レール8及び連結具10の略示平面図、図7は、図6のVII-VII線を切断線とした第一レール6、第二レール8及び連結具10の略示断面図、図8は、図6のVIII-VIII線を切断線とした第一レール6、第二レール8及び連結具10の略示断面図である。図6はトンネル1の内側から視認した状態を示す。
【0032】
第一レール6と第二レール8の端部との交差部分は連結具10によって連結される。連結具10は、第一レール6を保持する第一保持筒11と、第二レール8を保持する第二保持筒12とを備える。第一保持筒11及び第二保持筒12が直交するように、即ち十字を形成するように、第一保持筒11及び第二保持筒12それぞれの軸方向中央部が重ねられ、固定される。第一保持筒11及び第二保持筒12それぞれの軸方向中央部は、例えば溶接によって固定される。第一保持筒11及び第二保持筒12は、例えば角筒によって構成される。
【0033】
第一保持筒11の両端部それぞれに第一ナット部11aが設けられている。第一ナット部11aは、第一保持筒11の外周面から略直角に突出する。第一ナット部11aの内側空間と第一保持筒11の内側空間とは連なる。第二保持筒12の両端部それぞれに第二ナット部12aが設けられている。第二ナット部12aは、第二保持筒12の外周面から略直角に突出する。第二ナット部12aの内側空間と第二保持筒12の内側空間とは連なる。
【0034】
トンネル1の径方向において、第一保持筒11が第二保持筒12よりも内側に位置し、第一保持筒11がトンネル1の軸方向に延びるように、連結具10はトンネル1の内周面2に配置される。連結具10は、第一レール6と第二レール8の端部との四つの交差部分に配置される。第一レール6は第一保持筒11に挿入される。第一ナット部11aに第一固定ボルト11bが連結され、第一固定ボルト11bを第一レール6に押し付けることによって、第一レール6は第一保持筒11に固定される。
【0035】
第二レール8の端部は第二保持筒12に挿入される。第二ナット部12aに第二固定ボルト12bが連結され、第二固定ボルト12bを第二レール8に押し付けることによって、第二レール8の端部は第二保持筒12に固定される。
【0036】
図3に示すように、一方の第二レール8にチェーン9が取り付けられている。チェーン9は、トンネル1の径方向における第二レール8の内側に配置され、第二レール8の長手方向に延びる。二つの第二レール8の間に支持レール13が設けられている。支持レール13は支持部を構成する。支持レール13の一端部にレール駆動部14が設けられている。レール駆動部14はチェーン9に噛合するスプロケット(図示略)と、スプロケットを駆動する第一モータ14aとを備える。支持レール13の他端部にスライダ16が設けてある。スライダ16は、他方の第二レール8に摺動可能に連結する。なおスライダ16に代えて、他方の第二レール8にチェーンを設け、該チェーンに噛合するスプロケットを有する駆動部を設けてもよい。制御装置(図示略)によって、第一モータ14aが駆動され、支持レール13は第二レール8に沿って移動する。即ち、支持レール13はトンネル1の周方向に移動する。
【0037】
支持レール13にチェーン17が取り付けられている。チェーン17は、トンネル1の径方向における支持レール13の内側に配置され、支持レール13の長手方向に延びる。支持レール13にはノズル駆動部18が設けられている。ノズル駆動部18はチェーン17に噛合するスプロケット(図示略)と、スプロケットを駆動する第二モータ18bと、複数のノズル18aとを備える。制御装置によって、第二モータ18bが駆動され、ノズル駆動部18は支持レール13に沿って移動する。即ち、ノズル18aはトンネル1の軸方向に移動する。なおチェーン9、17及びスプロケットに代えて、他のリニア駆動機構、例えばボールねじ機構又はシリンダストローク機構等を使用してもよい。
【0038】
制御装置によってポンプ(図示略)が駆動され、ポンプからノズル18aに圧水が送られる。図2に示すように、制御装置は第二モータ18bを駆動させて、ノズル18aをトンネル1の軸方向に往復移動させて、トンネル1における内周面2と目標面3との間の部分を切削する。制御装置は第一モータ14aを駆動させて、支持レール13をトンネル1の天頂側に所定距離移動させる。制御装置は再度第二モータ18bを駆動させて、ノズル18aをトンネル1の軸方向に往復移動させて、トンネル1における内周面2と目標面3との間の部分を切削する。このように、制御装置は、ノズル18aをトンネル1の軸方向及び周方向に移動させて、図3に示す二つの第一レール6及び二つの第二レール8で囲まれた領域を切削する。前記領域は養生シート21によって覆われ、養生シート21内に溜まった水は排水ポンプ(図示略)によって排水口(図示略)に排出される。
【0039】
被切削面3aは切削済範囲Bに位置する。前述したように、保持クランパ7dに保持された第一レール6と目標面3との間の距離は略一定であり、目標面3と第二レール8との間の距離が略一定になるように、第二レール8は湾曲される。そのため、複数のノズル18aの噴射口と目標面3との間の距離が略一定になり、ウォータージェット装置5は内周面2と目標面3との間の部分のみを切削することができる。換言すれば、複数のノズル18aの噴射口と目標面3との間の距離が略一定になるように、シャフト7cの長さは調整され、第二レール8は湾曲される。
【0040】
二つの第一レール6及び二つの第二レール8で囲まれた領域の切削が完了した場合、作業者は二つの第二レール8及び支持レール13をトンネル1の軸方向に移動させる。図9図12は、二つの第二レール8及び支持レール13の移動工程を説明する略示説明平面図である。
【0041】
図9に示すように、二つの第一レール6及び二つの第二レール8で囲まれた領域F1の切削が完了した場合、作業者は養生シート21を取り外し、制御装置を操作し、第二モータ18bを駆動させて、ノズル駆動部18を未切削領域F2側の第二レール8まで移動させる。なお未切削領域F2は領域F1に隣接する。換言すれば、ノズル18aを一方の第二レール8まで移動させる。作業者は、一方の第二レール8との間にノズル駆動部18を挟むようにして、ノズル駆動部18と他方の第二レール8との間に、ノズル駆動部18が他方の第二レール8に向かって移動することを阻止する阻止部材23を設ける。阻止部材23は、例えば第二レール8に略平行なパイプである。阻止部材23の両端部が二つの第一レール6にそれぞれ固定される。阻止部材23は支持レール13に連結せず、阻止部材23と支持レール13との間には隙間が設けられている。阻止部材23はノズル駆動部18に近接するように設けられ、阻止部材23とノズル駆動部18との間の隙間はほとんどない。
【0042】
作業者は、第一固定ボルト11bを緩めるか又は第一保持筒11から取り外し、また、領域F1及び未切削領域F2の上側及び下側において、保持クランパ7dから第一レール6を取り外す。これにより、第二レール8は、領域F1及び未切削領域F2の上側及び下側において、保持クランパ7dに干渉することなく、第一レール6に沿って移動することができる。
【0043】
作業者は制御装置を操作し、ノズル駆動部18を他方の第二レール8に向けて移動させるために第二モータ18bを駆動させる。即ち、ノズル18aを他方の第二レール8に向けて移動させるための動力を第二モータ18bから供給させる。
【0044】
図10に示すように、ノズル駆動部18は他方の第二レール8に向けて移動しようとするが、阻止部材23によってノズル駆動部18は移動できない。そのため、白抜矢印にて示すように、支持レール13及び二つの第二レール8が未切削領域F2側に移動する。即ち、相対的にノズル駆動部18は他方の第二レール8に向けて移動する。
【0045】
図11に示すように、ノズル駆動部18と他方の第二レール8とが接近し、両者間の隙間がほとんどなくなった場合、制御装置は第二モータ18bを停止させる。このとき、未切削領域F2は二つの第二レール8の間に配置される。また領域F1の未切削領域F2に隣接する部分も、二つの第二レール8の間に配置される。
【0046】
図12の白抜矢印に示すように、作業者は回収ホッパ20を未切削領域F2の下側に移動させ、養生シート21で未切削領域F2を覆う。作業者は、阻止部材23を第一レール6から取り外し、第一固定ボルト11bを締めて第一レール6を第一保持筒11に固定し、領域F1及び未切削領域F2の上側及び下側において、保持クランパ7dに第一レール6を保持させる。その後、作業者は、ウォータージェット装置5を駆動させて、未切削領域F2を切削する。上述のように、領域F1の未切削領域F2に隣接する部分も、二つの第二レール8の間に配置されるので、未切削部分が残らないように、切削することができる。
【0047】
前述したように、前記下端部4は、例えば作業者が破砕機を使用して下端部4を切削する。このようにしてトンネル1の内周面2の切削が行われる。切削完了後、トンネル1の被切削面3a(目標面3)に補強部が新設される。例えば、コンクリートが新たに打たれる。
【0048】
実施の形態に係る切削方法にあっては、トンネル1の内周面2(表面)と目標面3との間の距離は一定でない。目標面3との距離が一定になるように、ノズル18aの位置が設定され、内周面2と目標面3との間の部分は切削される。即ち、切削深さが一定でない切削を実現することができる。
【0049】
また第一レール6と目標面3との距離、及び、第二レール8と目標面3との距離が一定になるように、第一レール6及び第二レール8を内周面2に設置し、ノズル18aと目標面3との距離を一定にして、所望の深さになるように切削深さを制御することができる。
【0050】
また二つの第一レール6及び二つの第二レール8で囲まれた領域F1の切削が完了した場合、ノズル18aを他方の第二レール8に向けて移動させるための動力が第二モータ18bから供給される。ノズル18aの移動は阻止部材23によって妨げられるので、二つの第二レール8と支持レール13とは、ノズル18aに対して相対的に移動し、他方の第二レール8はノズル18aに向かって移動する。第二レール8及び支持レール13は未切削領域F2に向けて自動的に移動するので、作業者が手動で第二レール8及び支持レール13を移動させる必要がなく、作業者の負担を軽減させることができる。
【0051】
またノズル18aと他方の第二レール8とが接近した場合、第二モータ18bは停止される。支持レール13及び第二レール8は未切削領域F2に配置される。即ち、作業者は第一レール6、第二レール8及び支持レール13を解体せずとも、未切削領域F2にウォータージェット装置5を配置することができる。
【0052】
またウォータージェット装置5によって、トンネル1の内周面2と目標面3との間の部分を切削し、作業者が直接破砕機を使用して切削する場合に比べて、少人数での切削を実現することができ、作業者負担の軽減を図ることができる。
【0053】
また天頂に向かうに従って切削深さが短くなるので、切削量は減少する。そのため、切削に要する時間を短縮することができる。
【0054】
トンネル1は被切削物の一例であり、ウォータージェット装置5による橋梁、工場又はビル等、他の被切削物の切削にも、上述の切削方法を適用することができる。
【0055】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 トンネル(被切削物)
2 内周面(表面)
3 目標面
5 ウォータージェット装置
6 第一レール
8 第二レール
10 連結具
13 支持レール
14 レール駆動部
18 ノズル駆動部
18a ノズル
18b 第二モータ
23 阻止部材
図1
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