(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115739
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/56 20180101AFI20240820BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240820BHJP
【FI】
F24F11/56
F24F11/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021555
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弓子
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA01
3L260BA41
3L260BA64
3L260CA02
3L260EA07
3L260FA07
3L260FB12
3L260JA18
(57)【要約】
【課題】空気調和機の省エネ性を向上させつつ、設備の導入コスト及び維持コストを大幅に増加させない空気調和システムを提供する。
【解決手段】利用者10と出入り口21との間の距離Lが、第二の距離L2未満であると判定されたとき、室内機31は出入り口21の方向に向けて通常の送風運転よりも弱い風量で送風運転ンを行う。その後、利用者10と出入り繰り21との間の距離Lが第一の距離L1未満であると判定されたとき、室内機31は、出入り口21の方向に向けて最大の風量で送風運転を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機を制御する空気調和システムであって、
前記空気調和機の室内機が設置されている建物の出入り口から利用者までの距離を測定する測定部と、前記空気調和機の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記測定部が測定した前記出入り口から前記利用者までの距離が第一の距離未満になったとき、前記室内機に送風運転を行わせることを特徴とする空気調和システム。
【請求項2】
前記測定部は、前記利用者が携帯する端末から前記利用者の位置情報を取得する位置情報取得部を備えており、前記出入り口の位置情報及び前記位置情報取得部が取得した前記利用者の位置情報に基づいて前記利用者と前記出入り口との間の距離を演算することを特徴とする請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記測定部が測定した前記出入り口から前記利用者までの距離が、前記第一の距離よりも前記出入り口から遠くに設定されている第二の距離未満になったとき、前記送風運転とは異なった風量で送風運転を行わせるように制御することを特徴とする請求項2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記空気調和機の室内機は、吹き出し空気の方向を前記出入り口の方向に向けることができる風向設定部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の運転を制御する空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気調和機の運転が停止しており、日当たりの影響等によって室温が上昇した部屋に人が入ったときには、まず窓を開けて外気を取り込み、室温を外気温程度まで下げてから冷房運転を行うことで、空気調和機を運転する際の省エネ性を向上させることがある。
例えば、特許文献1には、空気調和機の利用者が、空気調和機に冷房運転を行わせるための操作を行ったとき、外気温が室温よりも低い場合には自動で窓を開ける空気調和機連動窓開閉装置が記載されている。また、特許文献1には、この空気調和機連動型窓開閉装置が窓を開け、室内機が開かれた窓の方向に送風運転を行うことで室内の空気と外気とを交換させる空気調和システムも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の空気調和システムでは、空気調和機の他に窓開閉手段を設置しなければならず、設備の導入コスト及び維持コストが増加するという問題があった。
本発明は、上記のような課題に注目したもので、空気調和機を運転する際の省エネ性を向上させつつ、設備の導入コスト及び維持コストを大幅に増加させない空気調和システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る空気調和システムの一態様は、室内機が設置されている建物の出入り口から利用者までの距離を測定し、利用者が建物の出入り口付近まで近づいたときに、空気調和機に送風運転を行わせるように制御する。利用者が出入り口のドアを開けたとき、室内の空気は室内機の送風運転によって出入り口から排出され、同時に室内に外気を取り込むことができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、空気調和機を運転する際の省エネ性を向上させつつ、設備の導入コスト及び維持コストを大幅に増加させない空気調和システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一態様に係る空気調和システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の一態様に係る空気調和システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一態様に係る空気調和システムが空気調和機を制御するときのフローチャートである。
【
図4】本発明の一態様に係る空気調和システムが空気調和機を制御するときのフローチャートである。
【
図5】(a)は、本発明の一態様に係る建物と利用者との位置関係を示し、(b)は室温の分布を示す図である。
【
図6】(a)は、本発明の一態様に係る建物と利用者との位置関係を示し、(b)は室温の分布を示す図である。
【
図7】(a)は、本発明の一態様に係る建物と利用者との位置関係を示し、(b)は室温の分布を示す図である。
【
図8】(a)は、本発明の一態様に係る建物と利用者との位置関係を示し、(b)は室温の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものではない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
<空気調和システムの構成>
図1及び
図2を用いて、空気調和システム1の構成について説明する。
本実施形態に係る空気調和システム1は、利用者10の自宅等の建物20に設置されている空気調和機30を制御するシステムであり、サーバー40を備えている。
空気調和機30は、通信ネットワーク2を介してサーバー40と通信することができる。また端末11も通信ネットワーク2を介してサーバー40と通信することができる。これにより、通信ネットワーク2を介して端末11と空気調和機30とは通信することができる。
【0010】
空気調和機30は、建物20の室内20aの上部に設置されている室内機31と、屋外に設置されている室外機32と、を備えており、図示を省略しているが室内機31と室外機32とは、冷媒配管などで接続されている。
室内機31は、空気調和機側制御部33、室温計測部34、風向設定部35及び送風部36を備えており、室外機32は外気温計測部37を備えている。なお、室内機31は、図示を省略しているが通信部を備えており、インターネットを含む通信ネットワーク2に接続することができる。
【0011】
空気調和機側制御部33は、遠隔操作機などから送信された信号に基づいて室内機31及び室外機32を動作させる。 風向設定部35は、例えば室内機31の空気吹き出し口に備えられている風向板であり、送風部36は、例えば室内機31に内蔵されている送風ファンである。
サーバー40は、測定部41、サーバー側制御部42、比較部43、及び記憶部44を備えている。
測定部41は、利用者10と出入り口21との間の距離Lを測定するために、位置情報取得部45及び演算部46を備えている。
サーバー側制御部42は、空気調和機側制御部33に、空気調和機30を動作させるための制御信号を送信する。
【0012】
本実施形態において位置情報取得部45は、通信ネットワーク2に接続された利用者10が携帯する端末11に備えられたGPSからの測位情報、すなわち利用者10の位置情報を取得する。記憶部44には測量やGPS機器の使用により測定された予め測定された出入り口21の位置情報が記憶されている。演算部46は、位置情報取得部45が取得した利用者10の位置情報及び記憶部44に記憶されている出入り口21の位置情報から、利用者10と出入り口21との間の距離Lを演算する。
比較部43は、室温計測部34で測定された室温T1と外気温計測部37で測定された外気温T2とを比較する機能を有する。
記憶部44は他に、室内20aの領域情報(面積を持つ領域を特定する位置情報)、室内機31から見た出入り口21の方向、後述する所定の温度TR、第一の距離L1及び第二の距離L2も記憶している。
【0013】
なお、本実施形態において、空気調和機30の動作を制御するための制御部として、空気調和機側制御部33及びサーバー側制御部42が備えられているが、制御部は、これらのうち一方のみが備えられていてもよい。即ち、空気調和機側制御部33が、比較部43、記憶部44、及び演算部46から直接情報を受信してもよく、また、サーバー側制御部42が、室内機31及び室外機32を動作させるための信号を空気調和機30に直接送信してもよい。
【0014】
<空気調和機の制御処理>
図1から
図4を用いて空気調和システム1が空気調和機30を運転させるときの制御処理について説明する。なお、以下の説明において利用者10は複数人いてもよく、その全員が端末11を携帯している。
図3に示すように、本実施形態に係る空気調和システム1は、最初に送風運転を行う必要があるか否かを判定する室内状態監視処理を行う。
室内状態監視処理では、室内20aが無人ではない場合(ステップS1:NO)、及び室内20aが無人であっても室温T1が外気温T2よりも所定の温度TR以上高くない場合(ステップS1:YES、ステップS2:NO)には送風運転を行わず、利用者10の操作を受け付ける通常の制御処理(ステップS3)を行う。
尚、TRは人が屋外から室内に入ったときに不快に感じる温度差から定められればよい(例えば10℃)。
室内20aが無人であり(ステップS1:YES)、且つ室温T1が外気温T2よりも所定の温度TR以上高い場合(ステップS2:YES)には、室内の空気を移動させるための送風運転処理を行う。
【0015】
室内20aが無人であるかについての判定は、サーバー側制御部42が行う。具体的には、サーバー側制御部42は、位置情報取得部45が取得した利用者10の位置情報が、記憶部44が記憶している室内20aの領域情報に含まれない場合に、室内20aは無人だと判定する。
室温T1が外気温T2より所定の温度TR高いかについての判定は、比較部43が、室温計測部34及び外気温計測部37から計測値を取得し、外気温T2に記憶部44が記憶している所定の温度TRを加えた数値と室温T1とを比較した結果に基づいてサーバー側制御部42が行う。
【0016】
図4に示すように、送風運転処理では、初めに、利用者10と出入り口21との間の距離Lが第二の距離L2未満であるか否かを判定する(ステップS4)。第二の距離L2は、建物20の出入り口21から所定の距離に設定されている。第二の距離L2が設定されている所定の距離とは、例えば、利用者10が出入り口21から道なりに歩いている間に、室内20aの高温の空気を屋外に排出するための準備動作が完了する時間(例えば3分程度)とすればよい。
【0017】
利用者10と出入り口21との間の距離Lが、第二の距離L2未満と判定された場合(ステップS4:YES)には、吹き出し空気が出入り口21側に向かうように設定し(ステップS5)、通常の送風運転よりも弱い風量で送風運転を行う(ステップS6)。送風部36をこのように動作させることで、室内20aの空気全体を撹拌させずに、室内20aの上部に滞留している高温の空気のみを出入り口21の方向へ移動させる。これは前述の室内20aの高温の空気を屋外に排出するための準備動作である。
【0018】
具体的には、サーバー側制御部42は、空気調和機30に、風向設定部35の向きを記憶部44が記憶している出入り口21の方向に空気が吹き出すように設定させる制御信号を送信する。この制御信号を受信した空気調和機側制御部33は、風向設定部35を動作させ、吹き出し空気の向きを設定する。その後、サーバー側制御部42は空気調和機30に、通常の送風運転よりも弱い風量で送風運転を行うように制御信号を送信する。この制御信号を受信した空気調和機側制御部33は、送風部36を通常の送風運転を行うときよりも低い速度で動作するように制御する。このように制御することで、吹き出し空気によって室内20aの空気全体が撹拌されることを抑止する。これにより高温の空気だけを出入り口21の方向に移動させることができる。
【0019】
また、このとき、送風部36を動作させる時間と、送風部36を停止させる時間とを交互に設定するように制御してもよい。このように制御することで、室内機31が吹き出す風量を少なくするための特別な構成を備えていない場合であっても、単位時間あたりに送風する風量を、連続的に送風運転を行う場合よりも少なくすることができる。
利用者10と出入り口21との間の距離Lが第二の距離L2以上と判定された場合(ステップS4:NO)については後述する。
【0020】
次に、利用者10と出入り口21との間の距離Lが、第一の距離L1未満であるか否かを判定する(ステップS7)。第一の距離L1は、建物20の外側且つ第二の距離L2よりも出入り口21に近い所定の距離に設定されている。第一の距離L1とは、例えば、利用者10が出入り口21に設けられている扉を、建物20の外側から開けることができる距離や、利用者10が数秒以内に扉を開けられると想定される距離とすればよい。
利用者10と出入り口21との間の距離Lが第一の距離L1未満と判定された場合には、最大の風量で送風運転を行う(ステップS8)。
【0021】
空気調和機30に、最大の風量で送風運転を行わせることによって、利用者10が扉を開けたときに、室内20aの上部に滞留している高温の空気の多くを室内20aから短時間で排出する。このとき、高温の空気は出入り口21の方向に移動させられているため、高温の空気を排出する速度を向上させることができる。
具体的には、演算部46の演算結果が、記憶部44が記憶している第一の距離L1未満になったとき、サーバー側制御部42は空気調和機30に、最大の風量で送風運転を行うように制御信号を送信する。この制御信号を受信した空気調和機側制御部33は、最大の風量で送風が行われるように送風部36を制御する。
【0022】
利用者10と出入り口21との間の距離Lが、最大の風量で送風運転を行い始める第一の距離L1以上であると判定された場合(ステップS7:NO)には、利用者10と出入り口21との間の距離Lが第二の距離L2未満であるかの判定(ステップS4)に戻り、高温の空気を出入り口21の方向に移動させる動作を継続する。
最大の風量で送風運転を開始した後、利用者10が室内20aに入ったか否かを判定する(ステップS9)。
【0023】
具体的には、サーバー側制御部42は、利用者10の位置が、記憶部44が記憶している室内20aの領域情報の範囲内であるとき、利用者10は室内20aに位置していると判定する。
なお、サーバー側制御部42は、利用者10の位置が室内20aの領域内になってから、数秒後に利用者10は室内20aに位置していると判定してもよい。このように時間的な遅れを設定することで、出入り口21の扉が例えば油圧式のドアクローザーにより自動で閉まるまでの間、室内空気を出入り口21から排出し続けることができる。
【0024】
利用者10が室内20aに入ったと判定された場合(ステップS9:YES)には、送風運転を停止し(ステップS10)、
図3に示す室内状態監視処理に復帰する。室内状態監視処理に復帰した後は、室内20aは無人ではないため(ステップS1:NO)、利用者10の操作を受け付ける通常の制御処理(ステップS3)を行う。
利用者10が室内20aに入っていないと判定された場合(ステップS9:NO)には、第一の距離L1未満であるかの判定(ステップS7)に戻る。
【0025】
利用者10と出入り口21との間の距離Lが、第二の距離L2以上と判定された場合(ステップS4:NO)には、送風運転を停止させ(ステップS11)、室内状態監視処理を行う。
具体的には、演算部46の演算結果が、記憶部44が記憶している第二の距離L2以上のとき、サーバー側制御部42は、送風運転を停止させるための制御信号を空気調和機30に送信する。なお、室内機31が送風運転を行っていない場合、この制御信号を受信したときには、室内機31は送風運転の停止を継続する。空気調和機30が送風運転を停止した後、再び利用者10と出入り口21との間の距離Lを演算する。
【0026】
利用者10と出入り口21との間の距離Lが第二の距離L2以上のとき、送風運転を停止させることによって、例えば、利用者10が第二の距離L2未満まで出入り口21に近づき、送風運転が開始された後に、何らかの理由で利用者10が第二の距離L2以上出入り口21から離れた場合には送風運転を停止する。
そのため、送風運転を開始した後に利用者10が出入り口21から離れたことを検知でき、利用者10が入室しなかった場合に無駄な動作となる送風運転をなくし、エネルギー消費を低減することができる。
【0027】
<空気調和システムの動作と室温T1の変化>
図5~
図8を用いて、本実施形態に係る空気調和機の動作による室内20aの空気の温度の変化について説明する。なお、以下の説明において
図5~
図8の(a)は室内20aの平面図であり、
図5~
図8の(b)は
図5~
図8の(a)におけるA-A線断面図に、単純化した空気の温度の分布を記載し、主な気流を矢印で示したものである。なお、
図5(b)~
図8(b)の説明において、室内20aにおける空気の温度差を高温、低温のように記載する。
【0028】
建物20は、
図1における出入り口21に玄関ドア21aを備えている。玄関ドア21aは玄関22に備えられており、また玄関22は居室23に繋がっている。居室23はガラス戸24を境としてバルコニー25に繋がっている。ガラス戸24が備えられている壁の上部には、室内機31が設置されており、バルコニー25には室外機32が設置されている。
室内20aに利用者10がいるとき、空気調和機30は、利用者10によって操作され冷房運転などを行う。
【0029】
図5は、本実施形態に係る空気調和システム1が動作するときの初期状態を示している。
図5(a)に示すように、初期状態において利用者10は外出しており、出入り口21から第二の距離L2よりも離れて位置している。また、利用者10が外出している間には空気調和機30は動作していない。
図5(b)に示す居室23の上部には、ガラス戸24から入射した日光によって暖められ上昇した高温の空気A1が滞留している。居室23の下部には、上部の空気A1よりも温度が低い中高温の空気A2が滞留している。玄関22は、居室23と比べて日光の照射を受けづらいため、居室23と比較して空気の温度が低くなる。そのため、玄関22の上部には中低温の空気A3が滞留しており、下部には低温の空気A4が滞留している。以上より、本実施形態において、室内20aのそれぞれの位置における空気の温度の関係は、A1>A2>A3>A4となっている。
なお、この空気の温度の関係は本実施例の場合であり、空気調和機30が設置される建物の広さや、日当たりの条件等によって、室内20aのそれぞれの位置における空気の温度の関係は、A1>A3>A2>A4となる場合もある。
【0030】
図6(a)は、利用者10が出入り口21から第二の距離L2の境界線を越えてL2以内まで近づいたときの空気調和機30の動作を示している。このとき、室内機31は出入り口21の方向に向けて通常の送風運転よりも送風部36を低い速度で動作するように制御する。すなわち弱い風量で送風運転を開始する。
このとき、
図5(b)で示した居室23の上部に滞留していた高温の空気A1は、
図6(b)に示すように、送風運転により室内機31から玄関22の上部に移動する。
【0031】
図7(a)は、利用者10が出入り口21から第一の距離L1未満まで近づき、玄関ドア21aを開けたときの空気調和機30の動作を示している。このとき、室内機31は出入り口21の方向に、最大の風量で送風が行われるように送風部36を制御する。すなわち最大の風量で送風運転を開始する。
このとき、
図7(b)に示すように、室内機31からの送風により、室内20aの空気A5よりも温度が高い玄関22の上部の空気A1が出入り口21から室外に排出される。室内20aの空気が排出されることで、同時に外気A6が取り込まれる(それぞれの位置における空気の温度の関係は、A1>A6となる)。
【0032】
図8(a)は、利用者10が室内20aに入ったときの空気調和機30の動作を示している。利用者10が室内20aに入り、玄関ドア21aと閉めたときに室内機31からの送風運転は停止する。
利用者10が室内20aに位置しているとき、
図8(b)に示すように、高温の空気A1は屋外に排出されている。
【0033】
<空気調和システムの効果>
本発明に係る空気調和システム1を用いることによって、空気調和機30に冷房運転を行わせる前に、送風運転によって室内20aから高温の空気A1を排出できるため、空気調和機30の省エネ性を向上させることができる。そして、本発明に係る空気調和システム1は、窓開閉手段等の装置を新たに設置および制御する必要がないためシステムの導入コスト及び維持コストを増加させることはない。
さらに、本発明に係る空気調和システム1は、利用者10自身が玄関ドア21aを開けることで空気を交換するため、自動で窓が開閉するような空気調和システムよりも、人が不在のときに誤って窓が開いてしまうようなセキュリティリスクを低く抑えやすくなる。
【0034】
<変形例>
上記実施形態では、利用者10と出入り口21との距離が第二の距離L2未満になったとき、空気調和機30に通常の送風運転よりも弱い風量で送風運転を行わせるよう制御していたが、この送風運転は必ずしも行わなくてもよい。そのため、第二の距離L2は、必ずしも設定及び記憶されていなくてもよい。
第二の距離L2を設定する制御を行わない場合であっても、室内機31が居室23上部に滞留している高温の空気A1を出入り口21の方向に吹き出すことができるため、室内20aの空気と外気A6とを交換することができ、室温T1を下げることができる。
【0035】
上記実施形態では、室内機31が通常の送風運転よりも弱い風量で送風運転を行うとき、風向設定部35が動作し、記憶部44が記憶している向きに空気の吹き出し方向を設定していたが、風向設定部35は必ずしも送風運転の前に動作しなくてもよい。また、空気の吹き出し方向は利用者10が手動で設定してもよい。
例えば、空気調和機30の運転を停止するときに、あらかじめ空気の吹き出し方向を出入り口21に向けるように風向設定部35を制御してもよく、利用者10が外出前に手動で風向設定部35を操作して吹き出し空気の方向を変更してもよい。
【0036】
端末11が位置情報取得部45に送信する位置情報は、必ずしもGPS等の測位情報でなくてもよい。他の位置情報としては、例えば端末11から近い位置にある2か所~3か所の公衆無線LANの情報等でもよく、その場合、演算部46は公衆無線LANのアクセスポイントの位置情報及び端末11が受信するアクセスポイントが発信するビーコン信号の電波強度に基づいて利用者10の位置情報を演算する。
【0037】
上記実施形態では、端末11及び空気調和機30が接続されている通信ネットワーク2には、サーバー40も接続されていたが、サーバー40は必ずしも接続されている必要はない。その場合、測定部41、比較部43、記憶部44は空気調和機30が備えていてもよい。
上記実施形態では、端末11の例としてスマートフォンを用いて説明したが、端末11は必ずしもスマートフォンでなくてもよく、例えば、通信ネットワーク2に接続された発信機などでもよい。
【0038】
本発明に係る空気調和システム1は、玄関22に居室23が一部屋だけ繋がっているような住宅以外の建築物にも適用できる。例えば玄関に廊下が繋がっており、この廊下に複数の居室が繋がっているような住宅等にも用いることができる。そのような建物の廊下には、窓が設けられていない場合が多いため、廊下の空気の温度は日光の照射を受ける居室の空気の温度よりも低くなる。そのため、室内機の送風運転によって居室と廊下との空気を交換することで、居室の空気の温度を下げることができる。また、送風運転によって廊下の空気を玄関から排出してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 空気調和システム
2 通信ネットワーク
10 利用者
11 端末
20 建物
20a 室内
21 出入り口
21a 玄関ドア
22 玄関
23 居室
24 ガラス戸
25 バルコニー
30 空気調和機
31 室内機
32 室外機
33 空気調和機側制御部
34 室温計測部
35 風向設定部
36 送風部
37 外気温計測部
40 サーバー
41 測定部
42 サーバー側制御部
43 比較部
44 記憶部
45 位置情報取得部
46 演算部
A1、 高温の空気
A2 中高温の空気
A3 中低温の空気
A4 低温の空気
A5 室内の空気
A6 外気
L 出入り口と利用者の間の距離
L1 第一の距離
L2 第二の距離
T1 室温
T2 外気温
TR 所定の温度