(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115742
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】端部固定部材およびこれを備えた管路の内張り構造
(51)【国際特許分類】
F16L 55/164 20060101AFI20240820BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20240820BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20240820BHJP
E03F 7/00 20060101ALI20240820BHJP
B29C 63/26 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
F16L55/164
F16L1/00 P
E03F3/04 Z
E03F7/00
B29C63/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021558
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】井上 貢佑
(72)【発明者】
【氏名】山田 大賀
【テーマコード(参考)】
2D063
3H025
4F211
【Fターム(参考)】
2D063BA01
2D063BA19
2D063BA37
2D063EA06
3H025EA01
3H025EB13
3H025EC11
3H025ED02
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA06
4F211SC03
4F211SD04
4F211SJ21
(57)【要約】
【課題】裏込め充填空間に自硬化性充填材が充填される前段階においても内面部材が剥がれるのを抑制することが可能な端部固定部材およびこれを備えた管路の内張り構造を提供する。
【解決手段】内面部材2は、既設管路の周方向に隣り合うように複数設けられている。嵌合部材4には、既設管路の周方向に隣り合う内面部材2の、既設管路の周方向に隣り合う2つの取付部21が、既設管路の内面側に向かって一体的に嵌合されている。内面部材2の長手方向端部に配置された囲繞部90を有する。囲繞部90は、既設管路の長手方向から見て、嵌合部材4の長手方向端部およびこの長手方向端部に嵌合する2つの取付部21の周りを取り囲んでいる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の内面に沿って配設される管路補強材の内周側に取り付けられた嵌合部材に嵌合される内面部材と、前記管路の前記内面との間の裏込め充填空間に配置される端部固定部材において、
前記内面部材は、
前記管路の長手方向に沿って前記管路の前記内面を被覆する側壁部と、
前記管路の周方向における前記側壁部の両端部にそれぞれ設けられて、前記管路の前記内面側にそれぞれ突出し、前記長手方向に沿って連続して形成された取付部と、
を有し、
前記内面部材は、前記周方向に隣り合うように複数設けられ、
前記嵌合部材には、前記周方向に隣り合う前記内面部材の前記周方向に隣り合う2つの前記取付部が、前記管路の前記内面側に向かって一体的に嵌合されており、
前記内面部材の長手方向端部に配置された囲繞部を有し、
前記囲繞部は、前記長手方向から見て、前記嵌合部材の長手方向端部およびこの長手方向端部に嵌合する2つの前記取付部の周りを取り囲んでいることを特徴とする端部固定部材。
【請求項2】
前記囲繞部は、
前記嵌合部材の長手方向端部に嵌合する2つの前記取付部の各々に設けられ、前記管路の径方向の中心側における前記嵌合部材の端部に、前記径方向の前記側壁部側から当接する内面部と、
前記周方向における前記嵌合部材の中央部に、前記径方向の前記内面側から当接する外面部と、
2つの前記内面部の各々に設けられ、前記径方向に延びて、前記内面部と前記外面部とを接続する側面部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の端部固定部材。
【請求項3】
前記側面部は、前記周方向に前記嵌合部材に当接していることを特徴とする請求項2に記載の端部固定部材。
【請求項4】
第1部材と、
第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材とを連結する連結部材と、
を有し、
前記第1部材と前記第2部材とで前記囲繞部が形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の端部固定部材。
【請求項5】
前記囲繞部から前記管路の前記内面側に突出するアンカー部を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の端部固定部材。
【請求項6】
前記アンカー部は、
前記囲繞部から前記管路の前記内面側に突出する本体部と、
前記本体部における前記管路の前記内面側の端部から前記周方向に沿って延在する延在部と、
を有することを特徴とする請求項5に記載の端部固定部材。
【請求項7】
管路の内面に沿って配設される管路補強材と、
前記管路補強材の内周側に取り付けられた嵌合部材と、
前記嵌合部材に嵌合される内面部材と、
前記管路の前記内面と前記内面部材との間の裏込め充填空間に配置される端部固定部材と、
を有し、
前記内面部材は、
前記管路の長手方向に沿って前記管路の前記内面を被覆する側壁部と、
前記管路の周方向における前記側壁部の両端部にそれぞれ設けられて、前記管路の前記内面側にそれぞれ突出し、前記長手方向に沿って連続して形成された取付部と、
を有し、
前記内面部材は、前記周方向に隣り合うように複数設けられ、
前記嵌合部材には、前記周方向に隣り合う前記内面部材の前記周方向に隣り合う2つの前記取付部が、前記管路の前記内面側に向かって一体的に嵌合されており、
前記端部固定部材は、前記内面部材の長手方向端部に配置された囲繞部を有し、
前記囲繞部は、前記長手方向から見て、前記嵌合部材の長手方向端部およびこの長手方向端部に嵌合する2つの前記取付部の周りを取り囲んでいることを特徴とする管路の内張り構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管路を補強するための管路の内張り構造に採用される端部固定部材およびこれを備えた管路の内張り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した水道管、下水道管、或いは農業用水管などの既設管路を補強する技術として、管路の内面を補強材で全面的に覆う技術が各種提案されている。例えば、管路内に人が入って作業可能な大口径の管路の内面を被覆するのに適した管路の内張り構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の管路の内張り構造は、既設管路の内面に沿って配置された中空骨組み状の補強材の内周側に、長手方向に延在する複数の内面部材を周方向に並べて取り付けることで構成される。各内面部材は、周方向の両端部に設けられた取付部としての嵌合用凸部が、嵌合部材を介して補強材に取り付けられる。
【0003】
この管路の内張り構造では、内面部材の長手方向端部、すなわち、管口は、通常、耐酸モルタルなどで管口処理が行われる。しかしながら、想定外の急激な増水による鉄砲水や本来流下されるべきではない大きな固体などが耐酸モルタルまたは内面部材の長手方向端部に衝突し、内面部材を剥がす方向の大きな力が内面部材に加えられることがある。各内面部材は嵌合部材を介して補強材に取り付けられているが、この内面部材を剥がす方向の大きな力によって、内面部材が剥がれるという問題が生じるおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献2では、既設管路と内面部材との間の裏込め充填空間に端部固定部材を配置している。裏込め充填空間に充填された自硬化性充填材(モルタルなどのセメント系材料など)中に端部固定部材の全体を埋めた状態で自硬化性充填材が硬化するので、硬化した自硬化性充填材と一体化した端部固定部材によって、内面部材が剥がれるのが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-310378号公報
【特許文献2】特開2022-83254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、裏込め充填空間に自硬化性充填材が充填される前の、組み立て段階などにおいても、突発的な集中豪雨や水位上昇によって内面部材が剥がれるのを抑制できることが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、裏込め充填空間に自硬化性充填材が充填される前段階においても内面部材が剥がれるのを抑制することが可能な端部固定部材およびこれを備えた管路の内張り構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の端部固定部材は、管路の内面に沿って配設される管路補強材の内周側に取り付けられた嵌合部材に嵌合される内面部材と、前記管路の前記内面との間の裏込め充填空間に配置される端部固定部材において、前記内面部材は、前記管路の長手方向に沿って前記管路の前記内面を被覆する側壁部と、前記管路の周方向における前記側壁部の両端部にそれぞれ設けられて、前記管路の前記内面側にそれぞれ突出し、前記長手方向に沿って連続して形成された取付部と、を有し、前記内面部材は、前記周方向に隣り合うように複数設けられ、前記嵌合部材には、前記周方向に隣り合う前記内面部材の前記周方向に隣り合う2つの前記取付部が、前記管路の前記内面側に向かって一体的に嵌合されており、前記内面部材の長手方向端部に配置された囲繞部を有し、前記囲繞部は、前記長手方向から見て、前記嵌合部材の長手方向端部およびこの長手方向端部に嵌合する2つの前記取付部の周りを取り囲んでいることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の管路の内張り構造は、管路の内面に沿って配設される管路補強材と、前記管路補強材の内周側に取り付けられた嵌合部材と、前記嵌合部材に嵌合される内面部材と、前記管路の前記内面と前記内面部材との間の裏込め充填空間に配置される端部固定部材と、を有し、前記内面部材は、前記管路の長手方向に沿って前記管路の前記内面を被覆する側壁部と、前記管路の周方向における前記側壁部の両端部にそれぞれ設けられて、前記管路の前記内面側にそれぞれ突出し、前記長手方向に沿って連続して形成された取付部と、を有し、前記内面部材は、前記周方向に隣り合うように複数設けられ、前記嵌合部材には、前記周方向に隣り合う前記内面部材の前記周方向に隣り合う2つの前記取付部が、前記管路の前記内面側に向かって一体的に嵌合されており、前記端部固定部材は、前記内面部材の長手方向端部に配置された囲繞部を有し、前記囲繞部は、前記長手方向から見て、前記嵌合部材の長手方向端部およびこの長手方向端部に嵌合する2つの前記取付部の周りを取り囲んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、内面部材の長手方向端部に配置された囲繞部によって、管路の長手方向から見て、嵌合部材の長手方向端部およびこの長手方向端部に嵌合する2つの取付部の周りが取り囲まれている。裏込め充填空間に自硬化性充填材が充填される前段階において、突発的な集中豪雨や水位上昇が生じると、内面部材の長手方向端部に、管路の径方向の中心側に向かって力が作用する。すると、内面部材の長手方向端部と嵌合部材の長手方向端部とは、管路の径方向の中心側に向かって撓るが、嵌合部材は管路補強材に取り付けられているので、嵌合部材の長手方向端部よりも、内面部材の長手方向端部の方が撓りが大きくなる結果、嵌合部材の長手方向端部から取付部が外れることがある。そこで、内面部材の長手方向端部に配置された囲繞部で、嵌合部材の長手方向端部およびこの長手方向端部に嵌合する2つの取付部の周りを取り囲む。これにより、内面部材の長手方向端部に上記の力が作用した際に、嵌合部材の長手方向端部が囲繞部によって管路の径方向の中心側に押されるので、嵌合部材の長手方向端部を、内面部材の長手方向端部と同様に、管路の径方向の中心側に向かって撓らせることができる。その結果、内面部材の長手方向端部と嵌合部材の長手方向端部とを一体的に動かすことができる。これにより、嵌合部材の長手方向端部から取付部が外れるのを抑制することができる。よって、裏込め充填空間に自硬化性充填材が充填される前段階においても、内面部材が剥がれるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】内張り構造の構造説明図であり、既設管路及び内張り構造についてはその長手方向に沿った鉛直断面で切断して示す図である。
【
図4】管路補強材のみを既設管路の内面に沿って配設した状態を示す、既設管路の長手方向に沿った断面図である。
【
図6】
図3に示す端部固定部材の(a)正面図、および、(b)側面図である。
【
図10】既設管路の内面に沿って内面部材が配設される前の状態を示す既設管路の断面図である。
【
図11】既設管路の内張りが完了した状態を示す既設管路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る端部固定部材が採用された管路の内張り構造について、図面を参照しつつ以下に説明する。なお、本発明に係る管路の内張り構造(内張り構造)は、老朽化した水道管、下水道管、或いは農業用水管などの既設管路の内面を被覆して補強するのに適した内張り構造であるが、新設のこれら管路の内面被覆(二次覆工)をする際にも適用できる技術である。
【0013】
(内張り構造の構成)
図1は、本発明に係る内張り構造100の構造説明図であり、既設管路P及び内張り構造100についてはその長手方向に沿った鉛直断面で切断して示す図である。また、
図2には
図1のA-A断面図を、
図3には
図2のB部拡大図をそれぞれ示す。さらに、
図4は、管路補強材1を説明するための、管路補強材1のみを既設管路Pの内面に沿って配設した状態を示す、既設管路Pの長手方向に沿った断面図である。なお、後述するように、既設管路P内に内張り構造100が構築された後に、裏込め充填空間Sに自硬化性充填材99が充填されるのであるが(
図11参照)、
図1~
図3においては自硬化性充填材99が充填される前の状態を示している。
【0014】
図1~
図3に示すように、内張り構造100は、管路補強材1と、嵌合部材4と、内面部材2と、端部固定部材6と、を有し、既設管路Pの内面に沿った筒状に構成されている。管路補強材1は、中空骨組み状であって、既設管路Pの内面に沿って配設される。嵌合部材4は、管路補強材1の内周側に複数配置される。内面部材2は、複数の嵌合部材4を介して管路補強材1に取り付けられる。なお、
図2では、端部固定部材6の図示を省略している。
【0015】
(管路補強材)
図2及び
図4に示すように、管路補強材1は、リング状補強部材11と、連結部材12と、を有している。リング状補強部材11は、リング状であって、既設管路Pの長手方向に沿って所定間隔をおいて複数配置される。
図3に示すように、リング状補強部材11の内周側には、嵌合部材4を嵌め込むための複数の嵌合部11aが既設管路Pの周方向に等間隔に形成されている。
【0016】
リング状補強部材11の材質は、コスト面と強度面とから鉄鋼とすることが好ましいが、特に限定するものではなく、炭素鋼、ステンレス鋼、合成樹脂等とすることも可能である。また、リング状補強部材11は、例えば、その周方向に複数分割された円弧状の部材が相互に連結されることで形成されてもよい。
【0017】
図4に示すように、複数の連結部材12は、リング状補強部材11を互いに連結する。複数の連結部材12でリング状補強部材11を互いに連結することで、管路補強材1は中空円筒状に構成される。
【0018】
図4に示すように、連結部材12は、パイプ材12cと、連結用ボルト12aと、ナット12bと、を有している。パイプ材12cは、既設管路Pの長手方向において、隣接する2つのリング状補強部材11の間に配置されて、スペーサの役割を担う。連結用ボルト12aの両端には、雄ねじが形成されている。ナット12bは、連結用ボルト12aの各雄ねじにねじ込まれる。
【0019】
隣接する2つのリング状補強部材11の間に介在するパイプ材12cの内部に連結用ボルト12aを挿入し、その両端の雄ねじ部分にナット12bをねじ込むことによって、連結部材12は、隣接する2つのリング状補強部材11を相互に連結・一体化している。ここで、既設管路Pに曲りや段差があっても、パイプ材12c及び連結用ボルト12aの長さを周方向に適宜変更することにより、それらに対処することが可能である。また、パイプ材12cに代えて、両端の少し中よりまでナット12bを予めねじ込んだ連結用ボルト12aをスペーサとして使用し、別のナット12bとでリング状補強部材11を挟みこむことで連結・一体化してもよい。なお、リング状補強部材11と既設管路Pとの隙間(裏込め充填空間S)には、後述するように施工最終段階において、未硬化状態の自硬化性充填材99が注入される。
【0020】
(嵌合部材)
図2及び
図3に示すように、管路補強材1の内周側には、複数の嵌合部材4が既設管路Pの長手方向に沿って互いに平行に取り付けられている。
図3に示すように、嵌合部材4は、その断面形状が上述のリング状補強部材11の嵌合部11aとほぼ同一の角張ったC字形をした一様断面の成形体である。また、嵌合部材4の長手方向の長さは、例えば、5m程度の一定の長さを有する。
【0021】
管路補強材1に対する嵌合部材4の取り付けは、嵌合部材4の開口部分が既設管路Pの中心側(すなわち既設管路Pの径方向の内側)を向くように、既設管路Pの長手方向に複数設けられているリング状補強部材11の各嵌合部11a内に嵌合部材4を嵌め込むことによって行われる。また、一定の長さを有する嵌合部材4は、既設管路Pの長手方向に複数本が連結されることによって、補修長をカバーしている。すなわち、複数の嵌合部材4が、長手方向に隣接する端面同士を互いに当接させた状態で、連結部材(不図示)によって連結されることにより、全体として既設管路Pの補修長に対応する長さとされ、その全体が管路補強材1に対して取り付けられている。
【0022】
図3に示すように、嵌合部材4には、既設管路Pの周方向に隣り合う内面部材2の既設管路Pの周方向に隣り合う2つの取付部21が、既設管路Pの内面側(既設管路Pの径方向の外側)(図中上側)に向かって一体的に嵌合されている。取付部21については後述する。
【0023】
嵌合部材4の材質は、耐腐食性に優れ、軽量で施工性にも優れ、かつコストも安価なポリエチレン樹脂をはじめとするオレフィン系等の熱可塑性樹脂が好ましいが、不飽和ポリエステル樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂や、より強度の高い繊維強化プラスチック、難燃性を有する熱可塑性樹脂、ステンレスをはじめとする金属とすることもできる。
【0024】
(内面部材)
図2及び
図3に示すように、内面部材2は、管路補強材1の内周側において、既設管路Pの長手方向及び周方向に装着された複数の嵌合部材4を介して、管路補強材1に取り付けられている。内面部材2は、既設管路Pの周方向に隣り合うように複数設けられている。
【0025】
内面部材2は、既設管路Pの長手方向に沿って一定の長さ、例えば5m程度の長さを有する。また、一定の長さを有する内面部材2は、既設管路Pの長手方向に複数本が連結されることによって、補修長をカバーしている。すなわち、複数の内面部材2が、長手方向に隣接する端面同士を互いに当接させた状態で、内面部材連結材(不図示)によって連結されることにより、全体として既設管路Pの補修長に対応する長さとされ、その全体が嵌合部材4を介して管路補強材1に対して取り付けられている。
【0026】
図5は、
図1に示す内面部材2の正面図である。
図3及び
図5に示すように、内面部材2は、左右対称の一様断面の形態を有している。
図5に示すように、内面部材2は、側壁部22と、取付部21と、を有している。側壁部22は、既設管路Pの長手方向に沿って既設管路Pの内面を被覆する。
【0027】
取付部21は、既設管路Pの周方向における側壁部22の両端部にそれぞれ設けられている。2つの取付部21は、既設管路Pの内面側(既設管路Pの径方向の外側)(図中上側)にそれぞれ突出している。取付部21は、内面部材2の長手方向に沿って連続して形成されている。
【0028】
図5に示すように、取付部21は、突出部21aと、傾斜部21bと、を有している。突出部21aは、側壁部22の周方向の端部から側壁部22の厚み方向(既設管路Pの径方向)の一方側(既設管路Pの内面側)に突出している。傾斜部21bは、突出部21aの先端から側壁部22に近づくように傾斜して延在している。突出部21aと傾斜部21bと側壁部22とで囲まれた部分が、凹部23を構成している。
【0029】
図3に示すように、2つの内面部材2の取付部21同士(内面部材2の長手方向に沿う縁部同士であって一の内面部材2の既設管路Pの周方向の一端部と当該一の内面部材2に隣接する他の内面部材2の既設管路Pの周方向の他端部)が対の状態で、内面部材2が嵌合部材4の開口部分に挿入されることにより、取付部21の傾斜部21bの先端が嵌合部材4の開口部分に係止される。こうして、内面部材2が嵌合部材4を介して管路補強材1に確実に保持された状態となる。
【0030】
この内面部材2の材質は、上述の嵌合部材4と同様、耐腐食性に優れ、軽量で施工性にも優れ、かつコストも安価なポリエチレン樹脂をはじめとするオレフィン系等の熱可塑性樹脂とすることが好ましいが、不飽和ポリエステル樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂や、より強度の高い繊維強化プラスチック、難燃性を有する熱可塑性樹脂、ステンレスをはじめとする金属とすることもできる。なお、内面部材2の材質は、嵌合部材4の材質と同一であることが望ましい。
【0031】
(シール材)
図3に示すように、各嵌合部材4と、各嵌合部材4に取り付けられた2つの内面部材2の相互に当接した取付部21との間には、例えば熱可塑性エラストマーや合成ゴム、水膨張性ゴム等からなるシール材5が配置されている。これにより、既設管路Pの周方向に隣接する内面部材2間の水密性を得ることができる。
【0032】
(端部固定部材)
図3に示すように、端部固定部材6は、内面部材2と既設管路Pの内面との間の裏込め充填空間Sに配置される。端部固定部材6は、内張り構造100の管口近傍部分、すなわち、内面部材2の長手方向端部に配置される。端部固定部材6は、既設管路Pの長手方向において、内面部材2の端面と、その奥に配置されている管路補強材1のリング状補強部材11との間に配置される。端部固定部材6は、既設管路Pの周方向に沿って複数設けられている。
【0033】
図6は、
図3に示す端部固定部材6の(a)正面図、および、(b)側面図である。
図7は、
図3のC部拡大図である。
図6および
図7に示すように、端部固定部材6は、第1部材60と、第2部材70と、連結部材80と、を有している。連結部材80は、例えばクリップであり、第1部材60と第2部材70とを連結している。
【0034】
第1部材60および第2部材70の各々は、一枚の帯状の板部材が折り曲げられて形成されている。第1部材60と第2部材70とは、左右対称の形状をしている。第1部材60は、第1内面部61と、第1外面部62と、第1側面部63と、第1突出部64と、第1アンカー部65と、を有している。
【0035】
図7に示すように、第1内面部61は、既設管路Pの径方向の中心側における嵌合部材4の端部に、既設管路Pの径方向の側壁部22側から当接している。第1外面部62は、既設管路Pの周方向における嵌合部材4の中央部に、既設管路Pの径方向の内面側(図中上側)から当接している。第1側面部63は、既設管路Pの径方向に延びて、第1内面部61と第1外面部62とを接続している。
【0036】
図7に示すように、第1突出部64は、凹部23の内側において、第1内面部61における第2部材70側の端から既設管路Pの内面側(図中上側)に突出している。第1アンカー部65は、第1本体部65aと、第1延在部65bと、を有している。第1本体部65aは、第1外面部62における第2部材70側の端から既設管路Pの内面側(図中上側)に突出している。第1延在部65bは、第1本体部65aにおける既設管路Pの内面側の端部から既設管路Pの周方向に沿って、第2部材70から離れる方向に延在している。
【0037】
第2部材70は、第2内面部71と、第2外面部72と、第2側面部73と、第2突出部74と、第2アンカー部75と、を有している。第1部材60と第2部材70とは、左右対称の形状をしているので、これらの詳細は省略する。
【0038】
連結部材80は、第1部材60の第1アンカー部65の第1本体部65aと、第2部材70の第2アンカー部75の第2本体部75aと、を挟持している。
図8は、連結部材80の斜視図である。
図8に示すように、連結部材80は、一枚の帯状の板部材が折り曲げられて構成されている。連結部材80は、一対の挟持部81と、繋ぎ部82と、を有する。繋ぎ部82は、一対の挟持部81を繋いでいる。
【0039】
一対の挟持部81は、挟持部81の延在方向において、繋ぎ部82から離れるに連れて互いに近づくようにして、繋ぎ部82に対して折り曲げられている。また、一対の挟持部81のそれぞれの先端部には、その延在方向に直交する方向に拡大され、且つ先端が互いに離れるようにやや拡がった拡大部81aが形成されている。
図7に示すように、既設管路Pの周方向における繋ぎ部82の幅は、第1アンカー部65の第1本体部65a、第2アンカー部75の第2本体部75a、および、一対の挟持部81の厚みの合計よりもやや大きくなっている。
【0040】
図8に示すように、一対の挟持部81の各々の先端部は、連結部材80が第1本体部65aと第2本体部75aとを挟持するように取り付けられていない状態において、互いに当接している。これにより、
図7に示すように、連結部材80を、第1本体部65aと第2本体部75aとを挟持するように取り付けることで、第1部材60と第2部材70とを強固に連結することが可能となる。
【0041】
図7に示すように、第1部材60と第2部材70とは、連結部材80で連結された状態で、内面部材2の長手方向端部に配置される。つまり、第1部材60と第2部材70とは、連結部材80で連結された状態で、既設管路Pの長手方向に沿って図示の位置に挿入される。
【0042】
端部固定部材6は、囲繞部90を有している。囲繞部90は、内面部材2の長手方向端部に配置される。囲繞部90は、既設管路Pの長手方向から見て、嵌合部材4の長手方向端部およびこの長手方向端部に嵌合する2つの取付部21の周りを取り囲んでいる。
【0043】
囲繞部90は、第1部材60と第2部材70とで形成されている。具体的には、囲繞部90は、第1部材60の第1内面部61、第1外面部62、第1側面部63、および、第1突出部64と、第2部材70の第2内面部71、第2外面部72、第2側面部73、および、第2突出部74とで形成されている。
【0044】
囲繞部90は、内面部91と、外面部92と、側面部93と、を有している。内面部91は、嵌合部材4の長手方向端部に嵌合する2つの取付部21の各々に設けられ、既設管路Pの径方向の中心側における嵌合部材4の端部に、既設管路Pの径方向の側壁部22側から当接している。内面部91は、第1部材60の第1内面部61と、第2部材70の第2内面部71とで構成される。
【0045】
外面部92は、既設管路Pの周方向における嵌合部材4の中央部に、既設管路Pの径方向の内面側(図中上側)から当接している。外面部92は、第1部材60の第1外面部62と、第2部材70の第2外面部72とで構成される。側面部93は、2つの内面部91の各々に設けられ、既設管路Pの径方向に延びて、内面部91と外面部92とを接続している。側面部93は、第1部材60の第1側面部63と、第2部材70の第2側面部73とで構成される。
【0046】
裏込め充填空間Sに自硬化性充填材99が充填される前段階において、突発的な集中豪雨や水位上昇が生じると、内面部材2の長手方向端部に、既設管路Pの径方向の中心側(例えば
図3中下側、
図7中下側)に向かって力が作用する。すると、内面部材2の長手方向端部と嵌合部材4の長手方向端部とは、既設管路Pの径方向の中心側に向かって撓るが、嵌合部材4は管路補強材1(リング状補強部材11)に取り付けられているので、嵌合部材4の長手方向端部よりも、内面部材2の長手方向端部の方が撓りが大きくなる結果、嵌合部材4の長手方向端部から取付部21が外れることがある。そこで、内面部材2の長手方向端部に配置された囲繞部90で、嵌合部材4の長手方向端部およびこの長手方向端部に嵌合する2つの取付部21の周りを取り囲む。これにより、内面部材2の長手方向端部に上記の力が作用した際に、嵌合部材4の長手方向端部が囲繞部90によって既設管路Pの径方向の中心側に押されるので、嵌合部材4の長手方向端部を、内面部材2の長手方向端部と同様に、既設管路Pの径方向の中心側に向かって撓らせることができる。その結果、内面部材2の長手方向端部と嵌合部材4の長手方向端部とを一体的に動かすことができる。これにより、嵌合部材4の長手方向端部から取付部21が外れるのを抑制することができる。よって、裏込め充填空間Sに自硬化性充填材が充填される前段階においても、内面部材2が剥がれるのを抑制することができる。
【0047】
また、裏込め充填空間Sに自硬化性充填材99が充填される前段階において、内面部材2の長手方向端部に、既設管路Pの径方向の中心側に向かって力が作用すると、既設管路Pの周方向における嵌合部材4の端部によって内面部91が力の作用方向に押される。このとき、側面部93を介して内面部91に接続する外面部92が、既設管路Pの周方向における嵌合部材の中央部を同じ方向に押す。これにより、嵌合部材4の長手方向端部を、内面部材2の長手方向端部と同様に、既設管路Pの径方向の中心側に向かって好適に撓らせることができる。
【0048】
図7に示すように、囲繞部90の側面部93は、既設管路Pの周方向に嵌合部材4に当接している。つまり、第1部材60の第1側面部63、および、第2部材70の第2側面部73は、それぞれ、既設管路Pの周方向に嵌合部材4に当接している。これにより、内面部材2の長手方向端部に、既設管路Pの径方向の中心側に向かって力が作用した際に、嵌合部材4の長手方向端部が、既設管路Pの周方向に開拡する方向に変形するのを抑制することができる。よって、嵌合部材4の長手方向端部から取付部21が外れるのをより抑制することができる。
【0049】
また、
図7に示すように、第1部材60と第2部材70とで囲繞部90が形成されている。第1部材60と第2部材70とは連結部材80で連結されている。1つの部材で囲繞部90を形成するよりも、2つの部材で囲繞部90を形成する方が、部材の曲げ加工がしやすいので、コストを抑えることができる。
【0050】
図7に示すように、端部固定部材6は、アンカー部95を有している。アンカー部95は、本体部95aと、延在部95bと、を有している。本体部95aは、囲繞部90から既設管路Pの内面側(図中上側)に突出している。延在部95bは、本体部95aにおける既設管路Pの内面側の端部から、既設管路Pの周方向に沿って延在している。アンカー部95は、第1部材60と第2部材70とで形成されている。具体的には、アンカー部95は、第1部材60の第1アンカー部65と、第2部材70の第2アンカー部75とで形成されている。本体部95aは、第1部材60の第1本体部65aと、第2部材70の第2本体部75aとで構成されている。延在部95bは、第1部材60の第1延在部65bと、第2部材70の第2延在部75bとで構成されている。
【0051】
裏込め充填空間Sに自硬化性充填材99が充填されると、アンカー部95が自硬化性充填材99に埋まる。これにより、硬化した自硬化性充填材99とアンカー部95とが一体化する。よって、内面部材2の長手方向端部に、既設管路Pの径方向の中心側に向かって力が作用しても、既設管路Pの径方向における囲繞部90の位置は強固に維持される。よって、既設管路Pの径方向における内面部材2の長手方向端部の位置、および、既設管路Pの径方向における嵌合部材4の長手方向端部の位置は、強固に維持される。その結果、嵌合部材4の長手方向端部と取付部21との嵌合が強固に維持される。よって、嵌合部材4の長手方向端部から取付部21が外れるのを、より強固に抑制することができる。
【0052】
また、アンカー部95の本体部95aにおける既設管路Pの内面側の端部から既設管路Pの周方向に沿って延在部95bが延在している。裏込め充填空間Sに自硬化性充填材99が充填されると、延在部95bが自硬化性充填材99に埋まる。これにより、硬化した自硬化性充填材99と延在部95bとが一体化する。よって、内面部材2の長手方向端部に、既設管路Pの径方向の中心側に向かって力が作用しても、既設管路Pの径方向における囲繞部90の位置はより強固に維持される。よって、既設管路Pの径方向における内面部材2の長手方向端部の位置、および、既設管路Pの径方向における嵌合部材4の長手方向端部の位置は、より強固に維持される。その結果、嵌合部材4の長手方向端部と取付部21との嵌合をより強固に維持することができる。また、硬化した自硬化性充填材99と一体化した延在部95bによって、端部固定部材6が自硬化性充填材99から脱落するのを効果的に防ぐことができる。
【0053】
ここで、引き抜き試験の試験結果を
図9に示す。この試験は、内面部材2の長手方向端部を、既設管路Pの径方向の中心側に向かって引っ張ることで行った。端部固定部材6を設けた場合と、端部固定部材6を設けない場合とで、引き抜き試験をそれぞれ行い、引き抜き強度をそれぞれ評価した。
図9に示すように、端部固定部材6を設けた場合の引き抜き強度は、端部固定部材6を設けない場合の引き抜き強度の2倍以上であった。
【0054】
(内張り構造の敷設方法)
次に、内張り構造100を既設管路P内に敷設する方法について説明する。
図10は、既設管路Pの内面に沿って内面部材2が配設される前の状態を示す既設管路Pの断面図である。また、
図11は、既設管路Pの内張りが完了した状態を示す既設管路Pの断面図である。
【0055】
まず、施工に際して、既設管路Pの上流側に例えば堰(不図示)を設置する。又は、バイパスを配置して水替えを行うなどの手法により、既設管路Pで人が作業できる環境を作る。そして、管路補強材1を既設管路Pの内面に沿って配設する。管路補強材1を構成するリング状補強部材11は、通常、複数に分割された弧状部材を既設管路P内で組み立てることで形成される。そして、一部又は全ての部材が組み立てられたリング状補強部材11を、連結部材12により既設管路Pの長手方向に複数個結合して筒状の管路補強材1を得る。
【0056】
管路補強材1の組立が完了した後、管路補強材1を構成するリング状補強部材11の各嵌合部11aに嵌合部材4をそれぞれ嵌め込む。嵌合部材4をリング状補強部材11に嵌め込んだ状態を
図10に断面図で示す。次いで、その嵌合部材4に対して内面部材2を対にして嵌合させる。内面部材2を嵌合部材4に対して嵌合させた状態を
図1及び
図2に断面図で示している。なお、本実施形態においては、必ずしも嵌合部材4を用いる必要はなく、管路補強材1を構成するリング状補強部材11に対して内面部材2を直接、嵌合により取り付けてもよい。
【0057】
次に、複数の端部固定部材6を裏込め充填空間Sに配置する。端部固定部材6は、第1部材60と第2部材70とが連結部材80で連結された状態で、既設管路Pの長手方向に挿入されることで、内面部材2の長手方向端部に配置される。端部固定部材6は、既設管路Pの周方向全周にわたって複数配置される。
【0058】
次に、既設管路Pの長手方向における嵌合部材4の端部および内面部材2の端部を切りそろえる。この後、管口近傍に異物がないかを確認し、清掃する。そして、耐酸モルタルを使用して管口近傍を間詰めする。このとき、耐酸モルタルに代えて妻型枠を用いてもよい。
【0059】
その後、
図1及び
図2に示すように、複数の端部固定部材6を裏込め充填空間Sに配置した状態で、内面部材2と既設管路Pとの間に自硬化性充填材99を注入してこれらの間で硬化させる。自硬化性充填材99を注入した最終的な構造を、
図11に断面図で示す。自硬化性充填材99としては、例えばセメントミルク、モルタル、コンクリート等のセメント系材料、あるいは不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などを用いることができ、要求性能やコストによって適宜に選択される。自硬化性充填材99の注入に際しては、既設管路Pの端部に妻型枠などを設置して注入してもよいし、内面部材2に注入口を設けて注入してもよい。
【0060】
そして、
図1に示すように、耐酸モルタルを用いて管口の仕上げ、管口処理を行う。こうして、既設管路P内に内張り構造100の構築が完了する。
【0061】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る端部固定部材6および内張り構造100によれば、
図7に示すように、内面部材2の長手方向端部に配置された囲繞部90によって、既設管路Pの長手方向から見て、嵌合部材4の長手方向端部およびこの長手方向端部に嵌合する2つの取付部21の周りが取り囲まれている。裏込め充填空間Sに自硬化性充填材99が充填される前段階において、突発的な集中豪雨や水位上昇が生じると、内面部材2の長手方向端部に、既設管路Pの径方向の中心側に向かって力が作用する。すると、内面部材2の長手方向端部と嵌合部材4の長手方向端部とは、既設管路Pの径方向の中心側に向かって撓るが、嵌合部材4は管路補強材1(リング状補強部材11)に取り付けられているので、嵌合部材4の長手方向端部よりも、内面部材2の長手方向端部の方が撓りが大きくなる結果、嵌合部材4の長手方向端部から取付部21が外れることがある。そこで、内面部材2の長手方向端部に配置された囲繞部90で、嵌合部材4の長手方向端部およびこの長手方向端部に嵌合する2つの取付部21の周りを取り囲む。これにより、内面部材2の長手方向端部に上記の力が作用した際に、嵌合部材4の長手方向端部が囲繞部90によって既設管路Pの径方向の中心側に押されるので、嵌合部材4の長手方向端部を、内面部材2の長手方向端部と同様に、既設管路Pの径方向の中心側に向かって撓らせることができる。その結果、内面部材2の長手方向端部と嵌合部材4の長手方向端部とを一体的に動かすことができる。これにより、嵌合部材4の長手方向端部から取付部21が外れるのを抑制することができる。よって、裏込め充填空間Sに自硬化性充填材99が充填される前段階においても、内面部材2が剥がれるのを抑制することができる。
【0062】
また、
図7に示すように、既設管路Pの周方向における嵌合部材4の端部に当接する内面部91と、既設管路Pの周方向における嵌合部材4の中央部に当接する外面部92とが、側面部93で接続されている。裏込め充填空間Sに自硬化性充填材99が充填される前段階において、内面部材2の長手方向端部に、既設管路Pの径方向の中心側に向かって力が作用すると、既設管路Pの周方向における嵌合部材4の端部によって内面部91が既設管路Pの径方向の中心側に押される。このとき、側面部93を介して内面部91に接続する外面部92が、既設管路Pの周方向における嵌合部材4の中央部を同じ方向に押す。これにより、嵌合部材4の長手方向端部を、内面部材2の長手方向端部と同様に、既設管路Pの径方向の中心側に向かって好適に撓らせることができる。
【0063】
また、
図7に示すように、側面部93は、既設管路Pの周方向に嵌合部材4に当接している。これにより、内面部材2の長手方向端部に、既設管路Pの径方向の中心側に向かって力が作用した際に、嵌合部材4の長手方向端部が、既設管路Pの周方向に開拡する方向に変形するのを抑制することができる。よって、嵌合部材4の長手方向端部から取付部21が外れるのをより抑制することができる。
【0064】
また、
図7に示すように、第1部材60と第2部材70とで囲繞部90が形成されている。第1部材60と第2部材70とは連結部材80で連結されている。1つの部材で囲繞部90を形成するよりも、2つの部材で囲繞部90を形成する方が、部材の曲げ加工がしやすいので、コストを抑えることができる。
【0065】
また、
図7に示すように、囲繞部90から既設管路Pの内面側にアンカー部95が突出している。裏込め充填空間Sに自硬化性充填材99が充填されると、アンカー部95が自硬化性充填材99に埋まる。これにより、硬化した自硬化性充填材99とアンカー部95とが一体化する。よって、内面部材2の長手方向端部に、既設管路Pの径方向の中心側に向かって力が作用しても、既設管路Pの径方向における囲繞部90の位置は強固に維持される。よって、既設管路Pの径方向における内面部材2の長手方向端部の位置、および、既設管路Pの径方向における嵌合部材4の長手方向端部の位置は、強固に維持される。その結果、嵌合部材4の長手方向端部と取付部21との嵌合が強固に維持される。よって、嵌合部材4の長手方向端部から取付部21が外れるのを、より強固に抑制することができる。
【0066】
また、
図7に示すように、アンカー部95の本体部95aにおける既設管路Pの内面側の端部から既設管路Pの周方向に沿って延在部95bが延在している。裏込め充填空間Sに自硬化性充填材99が充填されると、延在部95bが自硬化性充填材99に埋まる。これにより、硬化した自硬化性充填材99と延在部95bとが一体化する。よって、内面部材2の長手方向端部に、既設管路Pの径方向の中心側に向かって力が作用しても、既設管路Pの径方向における囲繞部90の位置はより強固に維持される。よって、既設管路Pの径方向における内面部材2の長手方向端部の位置、および、既設管路Pの径方向における嵌合部材4の長手方向端部の位置は、より強固に維持される。その結果、嵌合部材4の長手方向端部と取付部21との嵌合をより強固に維持することができる。また、硬化した自硬化性充填材99と一体化した延在部95bによって、端部固定部材6が自硬化性充填材99から脱落するのを効果的に防ぐことができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
1 管路補強材
2 内面部材
4 嵌合部材
5 シール材
6 端部固定部材
11 リング状補強部材
11a 嵌合部
12 連結部材
21 取付部
22 側壁部
23 凹部
60 第1部材
61 第1内面部
62 第1外面部
63 第1側面部
64 第1突出部
65 第1アンカー部
65a 第1本体部
65b 第1延在部
70 第2部材
71 第2内面部
72 第2外面部
73 第2側面部
74 第2突出部
75 第2アンカー部
75a 第2本体部
75b 第2延在部
80 連結部材
90 囲繞部
91 内面部
92 外面部
93 側面部
95 アンカー部
95a 本体部
95b 延在部
99 自硬化性充填材
100 内張り構造