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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115751
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240820BHJP
   B60N 2/30 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021577
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松浦 一高
(72)【発明者】
【氏名】小林 慶則
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087CA12
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】 切替レバー等の切替スイッチからケーブルエンドが外れてしまうことを抑制可能な乗物用シートの一例を開示する。
【解決手段】 アウタケーシング21とケーブルエンド22Aとの間において、インナーケーブル22が貫通挿入された筒状の筒体30を備える。そして、当該筒体30の曲げ剛性がインナーケーブル22の曲げ剛性より大きい。これにより、乗物用シートでは、インナーケーブル22のうちアウタケーシング21とケーブルエンド22Aとの間の部分が、座屈するように大きく撓み変形してしまうことが抑制され得る。延いては、ケーブルエンド22Aが切替スイッチ13から外れてしまうことが抑制され得る。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に搭載される乗物用シートにおいて、
可動部の変位を禁止するロック状態と当該変位を可能とする非ロック状態とを切り替え可能なロック機構であって、当該切り換えを実行する切替スイッチを有するロック機構と、
前記切替スイッチに操作力を伝達する操作ケーブルであって、アウタケーシング及び当該アウタケーシング内で変位するインナーケーブルを少なくとも有する操作ケーブルとを備え、
前記インナーケーブルと前記切替スイッチとの連結箇所をケーブルエンドとしたとき、
前記アウタケーシングと前記ケーブルエンドとの間には、前記インナーケーブルが貫通挿入された筒状の筒体であって、当該インナーケーブルの曲げ剛性より大きな曲げ剛性を有する筒体が設けられている乗物用シート。
【請求項2】
前記筒体の長手方向寸法は、前記ケーブルエンドから前記アウタケーシングまで最小寸法以下である請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記筒体は、前記アウタケーシングに対して変位自在である請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明には、ケーブルエンドが操作部材から外れてしまうことを抑制可能な乗物用シートロック装置の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-6848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、特許文献1に記載の発明と異なる構成にて、切替レバー等の切替スイッチからケーブルエンドが外れてしまうことを抑制可能な乗物用シートの一例を開示する。
なお、切替スイッチは、ロック機構に設けられている。ロック機構は、可動部の変位を禁止する機構である。そして、切替スイッチは、変位を禁止するロック状態と当該変位を可能とする非ロック状態とを切り替えるための操作部材である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
乗物に搭載される乗物用シートは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、当該構成要件は、可動部(3)の変位を禁止するロック状態と当該変位を可能とする非ロック状態とを切り替え可能なロック機構(11)であって、当該切り換えを実行する切替スイッチ(13)を有するロック機構(11)と、切替スイッチ(13)に操作力を伝達する操作ケーブル(20)であって、アウタケーシング(21)及び当該アウタケーシング(21)内で変位するインナーケーブル(22)を少なくとも有する操作ケーブル(20)と、アウタケーシング(21)とケーブルエンド(22A)との間に設けられ、インナーケーブル(22)が貫通挿入された筒状の筒体(30)であって、当該インナーケーブル(22)の曲げ剛性より大きな曲げ剛性を有する筒体(30)とである。なお、ケーブルエンド(22A)とは、インナーケーブル(22)と切替スイッチ(13)との連結箇所をいう。
【0006】
これにより、乗物用シートでは、インナーケーブル(22)のうちアウタケーシング(21)とケーブルエンド(22A)との間の部分が、座屈するように大きく撓み変形してしまうことが抑制され得る。延いては、ケーブルエンド(22A)が切替スイッチ(13)から外れてしまうことが抑制され得る。
【0007】
なお、当該乗物用シートでは、以下の構成であってもよい。
すなわち、筒体(30)の長手方向寸法(L1)は、ケーブルエンド(22A)からアウタケーシング(21)まで最小寸法(Lo)以下であることが望ましい。さらに、筒体(30)は、アウタケーシング(21)に対して変位自在であることが望ましい。
【0008】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形形態に係る乗物用シートを示す図である。
図2図2A図2Cは、タンブル機能の説明図である。
図3】第1実施形形態に係るロック装置を示す図である。
図4】第1実施形形態に係るロック装置を示す図である。
図5】第1実施形形態に係るロック装置の効果説明図である。
図6】第1実施形形態に係るロック装置を示す図である。
図7】第1実施形形態に係るロック装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0011】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示が適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0012】
したがって、当該乗物用シートは、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0013】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された乗物用シートは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位のうち少なくとも1つを備える。
【0014】
(第1実施形態)
<1.乗物用シートの概要>
乗物用シート1は、図1に示されるように、シートクッション3、シートバック5及びロック装置10等を少なくとも備える。シートクッション3は着席者の臀部を支持する。シートバック5は着席者の背部を支持する。
【0015】
シートバック5は、シートクッション3の後端側に配置され、当該シートクッション3に対して回転可能に連結されている(図2A等~図2C参照)。なお、本実施形態に係る乗物用シート1は、所謂「タンブル機能付きの乗物用シート」である。
【0016】
すなわち、シートクッション3の前端側は、ヒンジブラケット4に回転可能に連結されている。ヒンジブラケット4は、車体に直接的又は間接的に連結されている。ロック装置10は、非タンブル時にシートクッション3の後端側を直接的又は間接的に車体に固定する。
【0017】
そして、タンブル機能が実行されると、図2A図2B図2Cの順に、シートクッション3の後端側がシート前方側上部に跳ね上がった状態となる。このとき、シートバック5は、シートクッション3に向かい合うように倒伏した状態となる(図2C等参照)。
【0018】
<2.ロック装置の詳細>
ロック装置10は、図3に示されるように、ロック機構11、操作ケーブル20及び筒体30等を少なくとも備えて構成されている。なお、本実施形態では、シートクッション3が可動部の一例である。
【0019】
ロック機構11は、シートクッション3の回転変位を禁止するロック状態と当該回転変位を可能とする非ロック状態とを切り替えるための機構である。具体的には、ロック機構11は、ラッチ12、切替レバー13及びバネ14等を少なくとも有する。
【0020】
ラッチ12は、ストライカー15(図1参照)と係合する係合位置(図3参照)と当該係合が解除された解除位置(図4参照)との間で変位する係合部材である。なお、ストライカー15は、車体に対して固定された被係合部材である。
【0021】
切替レバー13は、ラッチ12の係合状態の切り換えを実行する切替スイッチの一例である。当該切替レバー13は、軸13Aを中心に揺動することにより、ラッチ12の係合状態を切り換える。本実施形態に係る切替レバー13は、シート前後方向に揺動する。
【0022】
バネ14は、切替レバー13を予め決められた位置(以下、初期位置という。)に保持する弾性力を当該切替レバー13に作用させる。なお、切替レバー13が初期位置にある場合においては、ラッチ12は、ラッチ用バネ(図示せず。)の弾性力により係合位置に保持される。
【0023】
そして、切替レバー13が図4に示される位置に揺動変位すると、ラッチ12は、当該切替レバー13から操作力を受けて、ラッチ用バネを弾性変形させながら解除位置に変位する。このとき、ラッチ12は、保持カム(図示せず。)によって解除位置に保持される。
【0024】
保持カムにより解除位置に保持されたラッチ12は、切替レバー13が初期位置側に変位しても当該解除位置に保持される。つまり、保持カムにより解除位置に保持されたラッチ12は、後述するようにインナーケーブル22の変位に連動しない。
【0025】
なお、ラッチ12がストライカー15と係合すると、保持カムによる位置保持機能が解除される。このため、ラッチ12がストライカー15と係合すると、切替レバー13も初期位置に復帰する。
【0026】
操作ケーブル20は、切替レバー13に操作力を伝達するコントロールケーブルである。当該操作ケーブル20は、アウタケーシング21及びインナーケーブル22等を少なくとも有する。
【0027】
アウタケーシング21は、インナーケーブル22より大きな曲げ剛性を有する管である。インナーケーブル22は、操作力を受けてアウタケーシング21内で変位する可撓性を有する線状の部材である。
【0028】
本実施形態に係る操作ケーブル20は、インナーケーブル22を引っ張る張力を操作力として用いる「プル型の操作ケーブル」である。なお、アウタケーシング21も予め決められた曲率半径以上であれば、屈曲可能である。
【0029】
そして、アウタケーシング21の長手方向端部側は、不動な部位に固定されている。インナーケーブル22の長手方向端部は、切替レバー13に回転可能に連結されている。以下、インナーケーブル22と切替レバー13との連結箇所をケーブルエンド22Aという。
【0030】
なお、本実施形態では、インナーケーブル22のうちケーブルエンド22Aと反対側の端部は、操作レバー(図示せず。)に連結されている。操作レバーは、利用者により操作される操作部である。つまり、本実施形態に係る操作力は、利用者が操作レバーを操作することにより発生する。
【0031】
筒体30は、アウタケーシング21とケーブルエンド22Aとの間において、インナーケーブル22が貫通挿入された筒状の部材である。当該筒体30は、インナーケーブル22の曲げ剛性より大きな曲げ剛性を有する丸パイプ状の樹脂材である。
【0032】
そして、図4に示されるように、筒体30の長手方向寸法L1は、ケーブルエンド22Aからアウタケーシング21まで最小寸法Lo以下である。さらに、筒体30は、アウタケーシング21に対して変位自在である。つまり、筒体30は、アウタケーシング21とケーブルエンド22Aとの間において変位自在である。
【0033】
<3.本実施形態に係る乗物用シート(特に、ロック装置)の特徴>
初期位置にある切替レバー13に操作力、つまり操作レバーが操作されて張力が作用すると、切替レバー13は、初期位置(図3参照)から作動位置(図4参照)に変位する。これにより、ラッチ12が解除位置となるとともに、当該ラッチ12は、保持カム(図示せず。)によって解除位置に保持される。
【0034】
このとき、操作レバーが元の位置に戻されると、当該操作レバーが元の位置に戻る力、及びバネ14の弾性力がインナーケーブル22に作用する。このとき、「戻る力」は、インナーケーブル22を切替レバー13側に押す力として作用する。バネ14の弾性力は、切替レバー13を介してインナーケーブル22を引く力として作用する。
【0035】
しかし、ラッチ12は、保持カムによって解除位置に保持されるため、切替レバー13は初期位置まで戻らない。このため仮に、筒体30が設けられていない場合には、図5に示されるように、「戻る力」によってインナーケーブル22が座屈するように撓んでしまう。
【0036】
これに対して、本実施形態では、アウタケーシング21とケーブルエンド22Aとの間に筒体30が設けられているので、図6に示されるように、「戻る力」がインナーケーブル22に作用しても当該インナーケーブル22が撓んでしまうことが抑制される。
【0037】
ところで、図5に示されるように、インナーケーブル22が撓んでしまうと、ケーブルエンド22Aと切替レバー13との係止連結部22B(図7参照)が外れてしまうおそれがある。
【0038】
これに対して、本実施形態では、「戻る力」がインナーケーブル22に作用しても当該インナーケーブル22が撓んでしまうことが抑制されるので、ケーブルエンド22Aと切替レバー13との係止連結部22Bが外れてしまうことが抑制される。
【0039】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る筒体30は丸パイプ状の樹脂材であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、角パイプ状の樹脂又は丸パイプ状の金属材にて筒体30が構成されていてもよい。
【0040】
上述の実施形態では、利用者が操作レバーを操作することにより操作ケーブル20に操作力が発生する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、電動モータ等の電気式アクチュエータにより操作力が発生する構成であってもよい。
【0041】
上述の実施形態では、シートクッション3の回転変位を禁止又は可能とするロック機構11に本開示が適用された例であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、その他の部位の変位を禁止又は可能とするロック機構にも適用可能である。
【0042】
上述の実施形態に係る操作ケーブル20はプル式の操作ケーブルであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、プッシュ-プル式の操作ケーブルにも適用可能である。
【0043】
上述の実施形態に係る筒体30は変位自在であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、筒体30がアウタケーシング21又はケーブルエンド22Aに連結固定された構成であってもよい。
【0044】
上述の実施形態では、本開示に係る切替レバー13を切替スイッチとして説明した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、平行移動する切替部材を切替スイッチとした構成であってもよい。
【0045】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0046】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1… 乗物用シート 3…シートクッション 4… ヒンジブラケット
5… シートバック 10…ロック装置 11… ロック機構
12… ラッチ 13…切替レバー 14… バネ
15… ストライカー 20…操作ケーブル
21… アウタケーシング 22…インナーケーブル
22A… ケーブルエンド 30…筒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7