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  • 特開-工作機械およびその動作制限装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011576
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】工作機械およびその動作制限装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
G05B19/18 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113675
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 紘志
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269BB12
3C269MN07
3C269MN12
3C269MN19
3C269MN29
3C269PP02
3C269PP03
(57)【要約】
【課題】工作機械の移設が検知された際に、ユーザに工作機械を稼働する機会を与えるとともに、工作機械で大量の部品が加工されることを抑制できるようにする。
【解決手段】工作機械の動作制限装置30は、プロセッサを備える。プロセッサは、工作機械の移設が検知されて、工作機械を暫定的に稼働させるための所定動作を受け付けた後に、工作機械の加工部が稼働した量を、稼働済み量(パラメータ積算値)として取得する(S232)。プロセッサは、稼働済み量(パラメータ積算値)が予め定められた判定基準に達した際に(S224:Yes)、工作機械の加工部の動作を制限するために(S234)、稼働済み量(パラメータ積算値)が予め定められた判定基準に達したか否かを示す情報を、工作機械の数値制御装置に送信する(S220)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
工作機械の移設が検知されて、前記工作機械を暫定的に稼働させるための所定動作を受け付けた後に、前記工作機械の加工部が稼働した量を、稼働済み量として取得し、
前記稼働済み量が予め定められた判定基準に達した際に、前記工作機械の加工部の動作を制限するために、前記稼働済み量が予め定められた判定基準に達したか否かを示す情報を、前記工作機械の数値制御装置に送信する、
ことを特徴とする工作機械の動作制限装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械の動作制限装置において、
前記プロセッサは、
前記工作機械の移設が検知されて、前記工作機械を暫定的に稼働させるための所定動作を受け付けた後、前記工作機械の数値制御装置から予め定められたタイミングごとに、前記工作機械の加工部の稼働に基づくパラメータを取得し、
前記パラメータを積算することにより、パラメータ積算値として前記稼働済み量を取得する、
ことを特徴とする工作機械の動作制限装置。
【請求項3】
請求項2に記載の工作機械の動作制限装置において、
前記パラメータは、前記加工部の稼働により消費した電力量である、
ことを特徴とする工作機械の動作制限装置。
【請求項4】
請求項2に記載の工作機械の動作制限装置おいて、
前記パラメータは、前記加工部における軸方向への部材の移動量である、
ことを特徴とする工作機械の動作制限装置。
【請求項5】
請求項2に記載の工作機械の動作制限装置において、
前記パラメータは、前記加工部における主軸の回転数である、
ことを特徴とする工作機械の動作制限装置。
【請求項6】
工作機械の加工部を制御する数値制御装置と、
前記工作機械の移設を検知し、その移設を検知した場合に前記工作機械の動作を制限するための動作制限装置と、を備え、
前記数値制御装置は、
前記工作機械の移設が検知されて、前記数値制御装置に対して前記工作機械を暫定的に稼働させるための所定動作が行われた後、予め定められたタイミングごとに、前記工作機械の加工部の稼働に基づくパラメータを前記動作制限装置に送信し、
前記動作制限装置は、
前記パラメータを受信して、それを積算してパラメータ積算値を取得し、
前記パラメータ積算値が所定の判定基準を満たしたか否かを示す判定情報を、前記数値制御装置に送信し、
前記数値制御装置は、
前記判定情報を受信して、
前記パラメータ積算値が所定の判定基準を満たしている場合には、前記工作機械の加工部の動作を制限する、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項7】
請求項6に記載の工作機械において、
前記数値制御装置は、
前記工作機械の移設が検知されて、前記工作機械を暫定的に稼働させるための所定動作を受け付けた後、再び、前記工作機械の移設が検知された際に、
前記工作機械の加工部の動作を制限する、
ことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械が設置位置から移設されたことを検知した際に工作機械の動作を制限する機能を有する工作機械、および、その動作制限装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、特定の国等へ移設することが制限または禁止される場合がある。工作機械(以下、単に機械とも言う)の不正な移設に対する対抗手段として、機械の移設を検知する移設検知手段と、移設検知手段によって機械の移設が検知された場合、機械を再起動させる為の動作(以下、所定動作1と言う)が行われるまでは機械の動作を制限する動作制限手段と、を備えた工作機械の動作制限装置が知られている。特許文献1、2には、このような動作制限機能を有する工作機械の構成例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5101338号公報
【特許文献2】特許第5948154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移設検知手段の動作異常によって、機械の移設を誤判断(誤検知)する場合があり、その際は機械の再起動をメーカに要請する必要がある。よって、サービスマンを呼んで所定動作1が行われるまで機械を使用出来ず、ユーザに損失が発生する。例えば、サービスマンの派遣に時間を要する地域のユーザが所有する機械が停止した場合、機械を再起動する為により多くの時間を必要とし、ユーザの損失も大きくなる。
【0005】
特許文献2には、機械が停止した後、機械を暫定的に再起動させる為の所定動作(以下、所定動作2と言う)が行われた場合は、機械を制限時間付きで暫定的に再起動する事ができ、制限時間到達後は機械を再停止する技術が開示されている。しかし、機械再停止までに監視するのは時間である。よって、機械の稼働時間が十分に確保できない場合がある。また、機械の移設検知が正しかった(誤検知ではなかった)際に、制限時間内に普段の加工量とは大きく乖離した、過度に大量の部品(ワーク)を加工する事も可能であり、移設検知後の制限が不十分となる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、工作機械の移設が検知された際に、ユーザに工作機械を稼働する機会を与えるとともに、工作機械で大量の部品が加工されることを抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工作機械の動作制限装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、工作機械の移設が検知されて、前記工作機械を暫定的に稼働させるための所定動作を受け付けた後に、前記工作機械の加工部が稼働した量を、稼働済み量として取得し、前記稼働済み量が予め定められた判定基準に達した際に、前記工作機械の加工部の動作を制限するために、前記稼働済み量が予め定められた判定基準に達したか否かを示す情報を、前記工作機械の数値制御装置に送信する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る工作機械の動作制限装置において、前記プロセッサは、前記工作機械の移設が検知されて、前記工作機械を暫定的に稼働させるための所定動作を受け付けた後、前記工作機械の数値制御装置から予め定められたタイミングごとに、前記工作機械の加工部の稼働に基づくパラメータを取得し、前記パラメータを積算することにより、パラメータ積算値として前記稼働済み量を取得する、としてもよい。
【0009】
本発明に係る工作機械の動作制限装置において、前記パラメータは、前記加工部の稼働により消費した電力量である、としてもよい。
【0010】
本発明に係る工作機械の動作制限装置において、前記パラメータは、前記加工部における軸方向への部材の移動量である、としてもよい。
【0011】
本発明に係る工作機械の動作制限装置において、前記パラメータは、前記加工部における主軸の回転数である、としてもよい。
【0012】
本発明に係る工作機械は、工作機械の加工部を制御する数値制御装置と、前記工作機械の移設を検知し、その移設を検知した場合に前記工作機械の動作を制限するための動作制限装置と、を備え、前記数値制御装置は、前記工作機械の移設が検知されて、前記数値制御装置に対して前記工作機械を暫定的に稼働させるための所定動作が行われた後、予め定められたタイミングごとに、前記工作機械の加工部の稼働に基づくパラメータを前記動作制限装置に送信し、前記動作制限装置は、前記パラメータを受信して、それを積算してパラメータ積算値を取得し、前記パラメータ積算値が所定の判定基準を満たしたか否かを示す判定情報を、前記数値制御装置に送信し、前記数値制御装置は、前記判定情報を受信して、前記パラメータ積算値が所定の判定基準を満たしている場合には、前記工作機械の加工部の動作を制限する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る工作機械において、前記数値制御装置は、前記工作機械の移設が検知されて、前記工作機械を暫定的に稼働させるための所定動作を受け付けた後、再び、前記工作機械の移設が検知された際に、前記工作機械の加工部の動作を制限する、としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、工作機械の移設が検知された際に、ユーザに工作機械を稼働する機会を与えることができ、工作機械で大量の部品が加工されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態における工作機械の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態における通常モードの動作を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態における暫定モードの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<工作機械の構成>
図1は、本発明の実施形態における工作機械10の概略構成を示すブロック図である。工作機械10は、数値制御装置を備える工作機械(NC工作機械)である。工作機械10は、例えばNC旋盤、NCフライス盤、マシニングセンタ、複合加工機などであってよい。
【0018】
工作機械10は、機械本体部20と動作制限装置30を備える。機械本体部20は、数値制御装置21と、数値制御装置21によって制御される加工部22と、周辺機器と接続を行うためのI/F(インターフェース)部23を備える。数値制御装置21は、画面表示を行う表示部211と、オペレータからの入力を受け付ける入力部212と、CPU213と、RAM214と、ROM215を備える。CPU213は、ROM215に予め記憶されたプログラムを、RAM214をワークエリアとして使って実行することにより、各種制御を行う。CPU213は、プログラム、制御データ、入力部212から受け付けた指示等に基づいて加工部22を制御する。CPU213は、特定用途向け集積回路(ASIC)等のハードウェアを含んでもよく、単にプロセッサと言うことができる。
【0019】
表示部211は、ディスプレイである。入力部212は、例えばキーボード、マウス等である。なお、表示部211と入力部212は、一体となってタッチパネルとして構成されてもよい。加工部22は、例えば、ワーク又は工具を把持した状態で回転可能な主軸、工具等を移動させるための移動機構、各種機械、各種アクチュエータ等を備える。図1に示すように、機械本体部20における各部は、互いにデータをやり取り可能に電気的に接続されている。
【0020】
動作制限装置30は、機械本体部20と接続を行うためのI/F(インターフェース)部31と、マイクロコンピュータ32と、移設検知回路33と、不揮発性メモリ34を備える。マイクロコンピュータ32は、CPU321と、ROM322と、RAM323と、移設検知回路33から受信したデータから移設の有無を判断する移設判断部324と、パラメータ積算値341が判定基準342を満たしたか否かを監視する監視部325を備える。CPU321は、ROM322に予め記憶されたプログラムを、RAM323をワークエリアとして使って実行することにより、各種制御を行う。移設判断部324及び監視部325は、CPU321がプログラムを実行することにより実現されてもよい。CPU321は、特定用途向け集積回路(ASIC)等のハードウェアを含んでもよい。CPU321、移設判断部324、および監視部325は、プロセッサと定義される。
【0021】
移設検知回路33は、センサやGPS等を含み、それらによって工作機械の設置状況の変化を感知する部分である。移設検知回路33は、感知した設置状況の変化を移設判断部324へ送信する。移設検知回路33と移設判断部324は、移設検知手段として機能する。
【0022】
不揮発性メモリ34は、パラメータ積算値341(稼働済み量とも言う)と判定基準342を記憶する。パラメータ積算値341は、マイクロコンピュータ32が暫定モード(後述)中に機械本体部20から受信したパラメータを積算(合計)した値である。以下説明するように、パラメータ積算値341は、暫定モード中にマイクロコンピュータ32が機械本体部20からパラメータを受信するたびに更新される。判定基準342は、予め定められた判定用の数値(例えば閾値)である。動作制限装置30における各部は、互いにデータをやり取り可能に電気的に接続されている。
【0023】
図1に示すように、機械本体部20のI/F部23と、動作制限装置30のI/F部31は、通信可能に接続されている。以降説明する工作機械10の動作において、機械本体部20のI/F部23と、動作制限装置30のI/F部31との間でデータが送受信される。
【0024】
<動作>
次に、工作機械10の動作について説明する。図2は、工作機械10の通常モード時の動作を示すフローチャートである。図3は、工作機械10の暫定モード時の動作を示すフローチャートである。図2、3において、一点鎖線よりも左側の各ブロックは、機械本体部20の数値制御装置21により実行され、一点鎖線よりも右側の各ブロックは、動作制限装置30のマイクロコンピュータ32により実行される。
【0025】
<通常モード>
図2の通常モードについて説明する。図2において、破線よりも内側が、工作機械10の電源がオンにされている場合の処理を示し、通常モードにおいて工作機械10の電源がオフにされた場合には、図2のフローの先頭に戻ることになる。工作機械10の電源がオンとなった際、S100で、機械本体部20は、動作制限装置30に工作機械10の移設有無の判断を要求する。
【0026】
S102で、動作制限装置30は、上記要求を受け付けると、工作機械10の移設有無を判断する。具体的には、動作制限装置30の移設判断部324は、移設検知回路33から受信したデータに基づいて工作機械10の移設有無を判断する。なお、この際、移設判断部324は、移設検知回路33の動作異常によって工作機械10の移設を誤判断(誤検知)する可能性がある。そして、S104で、動作制限装置30は、移設有無の判断結果を機械本体部20に送信する。
【0027】
S106で、機械本体部20は、上記判断結果を受信する。そして、S108で、上記判断結果が「移設なし」であった場合は(S108:No)、機械本体部20は、工作機械10を引き続き通常モードで動作させる(S110)。一方、S108で、上記判断結果が「移設あり」であった場合は(S108:Yes)、機械本体部20は、加工部22の動作を停止し、オペレータに機械が停止した旨を表示部211で通知する(S112)。
【0028】
次に、S114で、機械本体部20は、オペレータから所定動作1(復帰動作とも言う)または所定動作2(暫定モード移行動作とも言う)が行われるのを待つ。ここで、所定動作1(復帰動作)は、例えば、オペレータが入力部212に予め定められたパスワードを入力する動作である。また、所定動作2(暫定モード移行動作)は、例えば、オペレータが入力部212により、表示部211に表示された「暫定モード移行」の選択ボタンを押下する動作である。
【0029】
S114で、所定動作1が行われた場合、機械本体部20は、加工部22の動作の停止を解除し、工作機械10を通常モードで再起動させる。これにより工作機械10は通常モードで稼働することになる(S110)。
【0030】
一方、S114で、所定動作2が行われた場合、機械本体部20は、動作制限装置30に暫定モードに突入する旨の通知を送信する(S116)。S118で、動作制限装置30は、上記通知を受信すると、パラメータの積算、監視を開始する。
【0031】
以下で説明するように、暫定モードにおいて、機械本体部20は、動作制限装置30に所定周期でパラメータを送信する。動作制限装置30は、機械本体部20からパラメータを受信して、それを積算していく。具体的には、マイクロコンピュータ32は、機械本体部20からパラメータを受信するたびに、不揮発性メモリ34に記憶されたパラメータ積算値341を更新する。マイクロコンピュータ32は、S116の通知(暫定モードに突入する通知)を受信した際には、不揮発性メモリ34にあるパラメータ積算値341を初期化する。
【0032】
ここで、パラメータは、工作機械10の稼働状態によって値が変化することを特徴とするパラメータであり、工作機械10の加工部22の稼働量(数値)である。なお、パラメータは、加工部22が稼働した時間ではない。パラメータは、加工部22が物理的又は電気的にどの程度動作したか、または、加工部22によりどの程度処理が行われたか(処理量)を示すものである。この実施形態では、パラメータは、1つのワークの加工を1サイクルの加工と定義した場合における加工数(サイクル数)とする。
【0033】
機械本体部20は、S116の通知を送信した後、加工部22の動作の停止を解除し、工作機械10を暫定モードで再起動させる(S120)。これにより工作機械10は暫定モードで稼働することになる。次に、機械本体部20は、図3のS226に進む。
【0034】
<暫定モード>
ここから図3の暫定モードについて説明する。図3において、破線よりも内側が、工作機械10の電源がオンにされている場合の処理を示し、暫定モードにおいて工作機械10の電源がオフにされた場合には、図3のフローの先頭に戻ることになる。上記したように、機械本体部20は、図2のS120から、図3のS226に進む。
【0035】
S226で、機械本体部20は加工部22を稼働させる。この際、機械本体部20は、所定周期(予め定められた時間間隔)で、加工部22の稼働量を示すパラメータを送信する(S228)。このパラメータは、前回パラメータを送信した(S228)後、加工部22を稼働させた量を示す。この実施形態では、このパラメータは、前回パラメータを送信した(S228)後、加工部22が加工したワークの数(サイクル数)である。なお、機械本体部20は、予め定められたタイミング(所定周期の他、例えば所定個のワークの加工が完了したタイミング等)ごとに、パラメータを送信してもよい。
【0036】
S230で、動作制限装置30は、パラメータを受信する。そして、S232で、動作制限装置30は、受信したパラメータを、不揮発性メモリ34にあるパラメータ積算値341に加算してパラメータ積算値341を更新する(S232)。なお、パラメータ積算値341(稼働済み量)は、暫定モード中、加工部22が物理的又は電気的にどの程度動作済みであるか、または、加工部22によりどの程度、部品が処理済みであるか(処理済み量)を示す。
【0037】
S214で、機械本体部20は、予め定められた時間間隔で、動作制限装置30に対して、パラメータ監視状況を送信するように要求する。そして、S216で、動作制限装置30は、その送信要求を受信して、パラメータ監視状況を更新する(S218)。パラメータ監視状況は、パラメータ積算値341が判定基準342(例えば閾値)に達したか否かを示す情報であり、例えば不揮発性メモリ34に記憶されて、S218のタイミングで更新される。具体的には、動作制限装置30の監視部325は、上記送信要求を受信した際に、パラメータ積算値341と判定基準342を用いて、パラメータ監視状況を更新する(S218)。そして、S220で、動作制限装置30は、機械本体部20(数値制御装置)にパラメータ監視状況を送信する。
【0038】
S222で、機械本体部20は、パラメータ監視状況を受信する。そして、S224で、パラメータ監視状況が「判定基準を満たしていない」(パラメータ積算値341が判定基準342に達していない)を示す場合には(S224:No)、機械本体部20は、加工部22の動作を引き続き許可する(S226)。
【0039】
一方、S224で、パラメータ監視状況が「判定基準を満たした」(パラメータ積算値341が判定基準342に達した)を示す場合には(S224:Yes)、機械本体部20は、加工部22の動作を停止する(S234)。S234で、機械本体部20は、オペレータに機械を停止した旨を表示部211で通知する。そして、S236で、機械本体部20は、オペレータから所定動作1(復帰動作)が行われるのを待つ。S236で、所定動作1が行われた場合には(S236:Yes)、機械本体部20は、加工部22の動作の停止を解除し、工作機械10を通常モードへ移行させる(S238)。そして、機械本体部20は、図2のS110に進む。これにより工作機械10は通常モードで稼働することになる(S110)。
【0040】
なお、暫定モード(図3)において、工作機械10の電源がオフにされた場合には、図3のフローの先頭に戻ることになる。この場合、工作機械10の電源がオンとなった際に、S200で、機械本体部20は、所定動作1を実施するかどうかの選択画面を表示部211に表示する。オペレータが入力部212を用いて所定動作1を実施する旨を選択した場合、機械本体部20は、工作機械10を所定動作1の受付状態とする(S202)。そして、S202で、オペレータにより所定動作1が実施された場合は(S202:Yes)、工作機械10を通常モードで再起動させる(S238)。これにより工作機械10は通常モードで稼働することになる(図2のS110)。
【0041】
一方、S200で、オペレータが入力部212を用いて所定動作1を実施しない旨を選択した場合には、S204~S210で、機械本体部20は、動作制限装置30から、工作機械10の移設有無の判断結果を取得する。なお、S204~S210の処理は、通常モード(図2)のS100~S106の処理と同様である。
【0042】
そして、S212で、上記判断結果が「移設なし」であった場合には(S212:No)、工作機械10を引き続き暫定モードで動作させる。上記したように、暫定モード中は、所定周期でパラメータ積算値341の更新と監視が行われ(S214~S232)、パラメータ積算値341が所定の判定基準342を満たした場合には(S224:Yes)、加工部22の動作が停止する(S234)。
【0043】
一方、S212で、判断結果が「移設あり」であった場合には(S212:Yes)、機械本体部20は、加工部22の動作を停止し、オペレータに機械を停止した旨を通知する(S234)。このように暫定モード中に移設を再度検知した場合には、加工部22を停止する。
【0044】
暫定モード中に機械動作が停止された場合には(S234)、所定動作2を行っても加工部22は動作しない。オペレータが所定動作1を行った場合は(S236:Yes)、機械本体部20は、工作機械10を通常モードで再起動させる(S238)。
【0045】
<まとめ>
以上、本発明の実施形態について説明したように、工作機械10は次のように動作する。移設検知手段(移設検知回路33および移設判断部324)が機械の移設を検知した際に、動作制限手段によって機械を停止させる。この時、所定動作1(復帰動作)が行われた場合は機械を再起動するが、所定動作2(暫定モード移行動作)が行われた場合は、機械使用量に制限の無い通常モードから、制限のある暫定モードへ移行し、機械を再起動する。暫定モード中は、機械の稼働状態によって値が変化する事を特徴とするパラメータを積算し、積算値が所定の判定基準を満たした場合、または暫定モード中に移設を再度検知した場合に機械を再停止する。機械が再停止した場合、所定動作1(復帰動作)を行うと機械は通常モードで再起動するが、所定動作2(暫定移行モード動作)を行っても機械は再起動しない。
【0046】
以上説明した実施形態によれば、機械の移設を誤判断(誤検知)した場合であっても、所定動作2(暫定モード移行動作)を行う事によって、機械が動作停止している時間を削減し、ユーザが加工業務を実施できない事による損失を抑えることができる。また、機械の稼働状態によって値が変化する事を特徴とするパラメータを監視に利用することで、暫定モード中に休日等の機械が稼働しない期間を挟んだ場合には機械再停止までの期間が長くなり、24時間連続で機械を稼働させる等、1日の機械稼働時間が長くなった場合には機械再停止までの期間が短くなる。これにより、再起動後に機械が使用できない事態と、再起動後に過度に大量の部品が加工される事態を防止することができる。
【0047】
<他の実施形態>
なお、以上説明した実施形態では、パラメータはサイクル数であった。しかし、パラメータは、加工部22の稼働量を表す様々な指標を採用することができる。例えば、パラメータは、加工部22の稼働により消費した電力量であってもよい。また、パラメータは、加工部22における軸方向への部材(ワーク、工具、またはそれらの両方)の移動量であってもよい。また、パラメータは、加工部22における主軸の回転数(回転済みの数)であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 工作機械、20 機械本体部、21 数値制御装置、211 表示部、212 入力部、213 CPU、214 RAM、215 ROM、22 加工部、23 I/F部、30 動作制限装置、31 I/F部、32 マイクロコンピュータ、321 CPU(プロセッサ)、322 ROM、323 RAM、324 移設判断部(プロセッサ)、325 監視部(プロセッサ)、33 移設検知回路、34 不揮発性メモリ、341 パラメータ積算値(稼働済み量)、342 判定基準。
図1
図2
図3