(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115767
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】セメント混和剤用組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20240820BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C04B24/26 F
C04B24/26 B
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021596
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(71)【出願人】
【識別番号】518208716
【氏名又は名称】ポゾリス ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大澤 雅美
(72)【発明者】
【氏名】作榮 二郎
(72)【発明者】
【氏名】亀島 健太
(72)【発明者】
【氏名】小泉 信一
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB29
4G112PB31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】セメント分散性と粘性の低減とを両立することができるセメント混和剤用組成物を提供する。
【解決手段】ポリカルボン酸系共重合体(A)と、ポリカルボン酸系共重合体(B)とを含み、前記ポリカルボン酸系共重合体(A)は、特定の式で表される単量体(I)、単量体(II)、および単量体(III)を1~76:1~76:23~28の質量比で含む組成物の重合物であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が13~18であり、前記ポリカルボン酸系共重合体(B)は、前記単量体(I)、前記単量体(II)及び前記単量体(III)を1~84:1~84:15~21の質量比で含む組成物の重合物であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が7~12である、セメント混和剤用組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸系共重合体(A)と、ポリカルボン酸系共重合体(B)とを含み、
該ポリカルボン酸系共重合体(A)は、下記式(1);
【化1】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~10の整数である。)で表される単量体(I)、下記式(2);
【化2】
(式中、R
2は、水素原子又はメチル基を表す。BOは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、BOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、11~30の整数である。)で表される単量体(II)及び下記式(3);
【化3】
(式中、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される単量体(III)を1~76:1~76:23~28の質量比で含む組成物の重合物であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が13~18であり、
該ポリカルボン酸系共重合体(B)は、該単量体(I)、該単量体(II)及び単量体(III)を1~84:1~84:15~21の質量比で含む組成物の重合物であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が7~12である、セメント混和剤用組成物。
【請求項2】
前記式(1)及び(2)におけるm及びnは、n-mが8~25の範囲となる整数である、請求項1に記載のセメント混和剤用組成物。
【請求項3】
下記式(4);
【化4】
(式中、R
3及びR
4は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。R
6は、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。R
5Oは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。pは、R
5Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~500の整数である。xは、0~2の整数である。)で表される単量体(IV)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを1~93:7~99の質量比で含む組成物の重合物である共重合体(C)を更に含む、請求項1に記載のセメント混和剤用組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のセメント混和剤用組成物を含む、セメント混和剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のセメント混和剤用組成物を含む、セメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント混和剤用組成物に関する。より詳しくは、セメント組成物等に好適に用いることができるセメント混和剤用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(メタ)アクリル酸等のポリカルボン酸の側鎖にポリアルキレングリコールを有するポリカルボン酸系共重合体は、その優れたセメント分散性能により、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物から土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。
このような共重合体を含むセメント混和剤は、減水剤等として用いられ、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を有することになる。減水剤としては、従来、ナフタレン系等の減水剤が使用されていたが、これに比べてポリカルボン酸系共重合体等の共重合体を主成分とするセメント添加剤は高い減水性能を発揮できるため、高性能AE減水剤として多くの使用実績を有するに至っている。
【0003】
このような共重合体を含むセメント添加剤として特許文献1には、所定の式で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構造単位(I)とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b)由来の構造単位(II)を有する共重合体を含む、セメント分散性向上助剤が開示されている。
【0004】
特許文献2には、所定の構造の構造単位を所定の割合で有する第1~第3の3種類の異なるポリカルボン酸系共重合体を含むセメント混和剤用共重合体組成物であって、該組成物は、第1~第3のポリカルボン酸系共重合体をこれらの合計100質量%に対して、第1のポリカルボン酸系共重合体/第2のポリカルボン酸系共重合体/第3のポリカルボン酸系共重合体=15~70/5~60/15~60の質量比で含有することを特徴とするセメント混和剤用共重合体組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-122010号公報
【特許文献2】特開2011-256064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、セメント組成物において分散性、減水性を高める技術が種々開発されているが、作業性の観点から粘性を低減することも求められている。従来のセメント混和剤用組成物には、セメント分散性と粘性の低減との両立の点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、セメント分散性と粘性の低減とを両立することができるセメント混和剤用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、セメント混和剤用組成物について種々検討したところ、所定の構造の単量体成分の重合物であって、オキシアルキレン基の平均付加モル数が所定の範囲である2種類のポリカルボン酸系共重合体を組み合わせることにより、セメント分散性と粘性の低減とを両立することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0009】
本発明は、以下のセメント混和剤用組成物等を包含する。
〔1〕ポリカルボン酸系共重合体(A)と、ポリカルボン酸系共重合体(B)とを含み、
該ポリカルボン酸系共重合体(A)は、下記式(1);
【化1】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~10の整数である。)で表される単量体(I)、下記式(2);
【化2】
(式中、R
2は、水素原子又はメチル基を表す。BOは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、BOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、11~30の整数である。)で表される単量体(II)及び下記式(3);
【化3】
(式中、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される単量体(III)を1~76:1~76:23~28の質量比で含む組成物の重合物であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が13~18であり、
該ポリカルボン酸系共重合体(B)は、該単量体(I)、該単量体(II)及び単量体(III)を1~84:1~84:15~21の質量比で含む組成物の重合物であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が7~12である、セメント混和剤用組成物。
〔2〕上記式(1)及び(2)におけるm及びnは、n-mが8~25の範囲となる整数である、上記〔1〕に記載のセメント混和剤用組成物。
〔3〕下記式(4);
【化4】
(式中、R
3及びR
4は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。R
6は、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。R
5Oは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。pは、R
5Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~500の整数である。xは、0~2の整数である。)で表される単量体(IV)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを1~93:7~99の質量比で含む組成物の重合物である共重合体(C)を更に含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載のセメント混和剤用組成物。
〔4〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のセメント混和剤用組成物を含む、セメント混和剤。
〔5〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のセメント混和剤用組成物を含む、セメント組成物。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセメント混和剤用組成物は、上述の構成よりなり、セメント分散性と粘性の低減とを両立することができるため、セメント組成物等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.セメント混和剤用組成物
本発明のセメント混和剤用組成物は、上記ポリカルボン酸系共重合体(A)と、上記ポリカルボン酸系共重合体(B)とを含むものである。このような特定の2種類のポリカルボン酸系共重合体を併用することにより、セメント組成物において優れた分散性及び分散保持性を発揮し、かつ、粘性を低減することができる。また特許文献2の発明では、第1~第3の3種類の異なるポリカルボン酸系共重合体を組み合わせて用いられているが、本発明では、2種類のポリカルボン酸系共重合体を用いることにより上記効果を発揮できるため、使用する重合体の数を低減することができる。
【0012】
上記セメント混和剤用組成物は、上記ポリカルボン酸系共重合体(A)と、上記ポリカルボン酸系共重合体(B)とを含むものであれば、これらの含有割合は特に制限されないが、上記ポリカルボン酸系共重合体(A)の含有割合は、ポリカルボン酸系共重合体(A)とポリカルボン酸系共重合体(B)との合計100質量%に対して、10~90質量%であることが好ましい。より好ましくは15~85質量%であり、更に好ましくは20~80質量%である。
【0013】
上記セメント混和剤用組成物は、上記ポリカルボン酸系共重合体(A)と、上記ポリカルボン酸系共重合体(B)とを含むものであればよいが、更に上記共重合体(C)を含むものであることが好ましい。これにより、セメント分散性をより向上させ、セメント組成物の粘性をより低減することができる。
上記セメント混和剤用組成物における上記共重合体(C)の含有割合は特に制限されないが、上記ポリカルボン酸系共重合体(A)と上記ポリカルボン酸系共重合体(B)との合計100質量%に対して、0~90質量%であることが好ましい。より好ましくは0~70質量%であり、更に好ましくは0~50質量%である。
【0014】
上記セメント混和剤用組成物における上記ポリカルボン酸系共重合体(A)と、上記ポリカルボン酸系共重合体(B)との合計の割合は、該組成物100質量%に対して、30~100質量%であることが好ましく、50~100質量%であることがより好ましく、60~100質量%であることが更に好ましい。
【0015】
以下では、本発明のセメント混和剤用組成物に含まれる必須成分及び任意成分について更に説明する。
<ポリカルボン酸系共重合体(A)及び(B)>
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)は、上記式(1)で表される単量体(I)、上記式(2)で表される単量体(II)及び上記式(3)で表される単量体(III)を1~76:1~76:23~28の質量比で含む組成物の重合物であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が13~18である。
上記ポリカルボン酸系共重合体(B)は、上記式(1)で表される単量体(I)、上記式(2)で表される単量体(II)及び上記式(3)で表される単量体(III)を1~84:1~84:15~21の質量比で含む組成物の重合物であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が7~12である。
上記単量体(III)の割合及びオキシアルキレン基の平均付加モル数が大きいポリカルボン酸系共重合体(A)と、単量体(III)の割合及びオキシアルキレン基の平均付加モル数が小さいポリカルボン酸系共重合体(B)とを組み合わせることにより、セメント分散性と粘性の低減とを両立することができる。
【0016】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数として好ましくは14~17であり、より好ましくは15~16である。
上記ポリカルボン酸系共重合体(B)におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数として好ましくは8~11であり、より好ましくは9~10である。
【0017】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)及び(B)は、上記単量体(I)、(II)及び(III)を含む組成物の重合物であり、単量体(I)由来の構造単位(i)、単量体(II)由来の構造単位(ii)及び単量体(III)由来の構造単位(iii)を有するものである。
上記構造単位(i)は、単量体(I)が有する重合性二重結合(炭素炭素二重結合)が単結合となった構造を意味する。上記構造単位(ii)、(iii)も同様である。
【0018】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)は、上記単量体(I)、(II)及び(III)を含む組成物の重合物であるが、これらの単量体の比率として好ましくは単量体(I)/単量体(II)/単量体(III)=5~71/5~71/24~27であり、より好ましくは9~66/9~66/25~26である。
なお、本発明において、上記単量体(III)の質量比(質量%)を計算する場合は、対応するナトリウム塩換算で計算するものとする。例えば、メタクリル酸に由来する構造単位の質量割合は、対応するナトリウム塩であるメタクリル酸ナトリウムの質量割合(質量%)として計算する。
【0019】
上記ポリカルボン酸系共重合体(B)は、上記単量体(I)、(II)及び(III)を含む組成物の重合物であるが、これらの単量体の比率として好ましくは単量体(I)/単量体(II)/単量体(III)=5~79/5~79/16~20であり、より好ましくは9~74/9~74/17~19である。
【0020】
上記単量体(I)は、上記式(1)において、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数mが1~10であって、側鎖の短い単量体である。上記単量体(II)は、上記式(2)において、BOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数nが11~30であって、側鎖の長い単量体である。
なお、平均付加モル数とは、単量体1モル中において付加している当該オキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。
【0021】
上記mとして好ましくは2~10であり、より好ましくは4~10である。
上記nとして好ましくは15~28であり、より好ましくは18~26である。
また、n-mは、8~25であることが好ましい。これにより、本発明のセメント混和剤用組成物は、低空気連行性により優れることとなる。n-mとしてより好ましくは10~23であり、更に好ましくは12~20であり、特に好ましくは15~20である。
【0022】
上記式(1)におけるAO及び上記式(2)におけるBOは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2~8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは、炭素数2~4のオキシアルキレン基である。
これらのオキシアルキレン基は、アルキレンオキシド付加物であり、このようなアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
また、上記オキシアルキレン基が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物である場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、ポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン基として、オキシエチレン基を必須成分として有することが好ましく、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、80モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましい。
【0023】
上記式(1)におけるR1、上記式(2)におけるR2は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基である。上記単量体(I)及び(II)は、側鎖のポリエチレングリコールに疎水性を有することが好ましく、上記R1、R2はメチル基であることが好ましい。
【0024】
上記式(1)及び(2)で表される単量体(I)、(II)として具体的には、ポリアルキレングリコールメタクリレート及びメトキシポリアルキレングリコールメタクリレートが挙げられる。単量体(I)、(II)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0025】
上記式(3)における一価金属原子、二価金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の一価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の二価の金属原子;アルミニウムが好適である。また、有機アミン基としては、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基が好適である。
【0026】
上記単量体(III)として具体的にはメタクリル酸又はその塩であり、好ましくはメタクリル酸又はメタクリル酸ナトリウムであり、より好ましくはメタクリル酸ナトリウムを含むものである。
【0027】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)及び(B)は、上記単量体(I)、(II)及び(III)を含む組成物の重合物であればよいが、該組成物はその他の単量体(d1)を含むものであってもよい。すなわち、上記ポリカルボン酸系共重合体(A)及び(B)が、その他の単量体(d1)由来の構造単位を有していてもよい。その他の単量体(d1)としては、以下のものが好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
スチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、メチルスチレン等のスチレン類;1,3-ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;ヘキセン、ヘプテン、デセン等のα-オレフィン類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類。
【0029】
不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22個のアルコールとのジエステル、不飽和ジカルボン酸類と炭素数1~22のアミンとのジアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2~4のグリコールとのジエステル。
【0030】
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2-(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4-(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2-メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩。
【0031】
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;アリルアルコール等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテル又はアリルエーテル類。
【0032】
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物類。
【0033】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)及び(B)の重合における原料組成物が、その他の単量体(d1)を含む場合、その含有量は、全単量体100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましい。その他の単量体の含有量が30質量%以下であれば、本発明のセメント混和剤用組成物が、上述したセメント混和剤としての各種特性をより充分に発揮することができる。その他の単量体の含有量としてより好ましくは0~20質量%であり、更に好ましくは0~10質量%である。
【0034】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)及び(B)は、重量平均分子量が5,000~100,000であることが好ましい。これにより、セメント組成物の粘性をより好適な範囲とすることができる。重量平均分子量としてより好ましくは、7,500~50,000であり、更に好ましくは10,000~30,000である。
上記重量平均分子量は、下記GPC測定条件により測定することができる。
装置:Alliance(e2695)(Waters社製)
解析ソフト:Empower2プロフェッショナル+GPCオプション(Waters社製)
使用カラム:TSKguardcolumnsSWXL(内径:6.0mm×40mm)+TSKgel G4000SWXL(内径:7.8mm×300mm)+G3000SWXL(内径:7.8mm×300mm)+G2000SWXL(内径:7.8mm×300mm)(いずれも東ソー社製)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters社製、Waters2414)
溶離液:イオン交換水10999gとアセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整した溶液。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
GPC標準サンプル:東ソー(株)製のポリエチレングリコール、Mp=255000、200000、107000、72750、44900、31400、21300、11840、6450、4020、1470
検量線:上記ポリエチレングリコールのMp値を用いて3次式で作成した。
【0035】
<共重合体(C)>
上記共重合体(C)は、上記式(4)で表される単量体(IV)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを1~93:7~99の質量比で含む組成物の重合物である。
上記単量体の比率として好ましくは単量体(IV)/ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート=30~85/15~70であり、より好ましくは40~75/25~60である。
【0036】
上記式(4)において、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基であり、好ましくはR3が水素原子、R4がメチル基である。
【0037】
上記式(4)において、R6は、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基である。
好ましくは炭素数1~20の炭化水素基又は水素原子であり、より好ましくは、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基、更に好ましくは、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基、特に好ましくは、水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基、最も好ましくは、水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基である。
【0038】
炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、3-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソオクチル基、2,3,5-トリメチルヘキシル基、4-エチル-5-メチルオクチル基及び2-エチルヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o-,m-若しくはp-トリル基、2,3-若しくは2,4-キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。これらの中でも、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が好ましい。
【0039】
上記式(4)において、R5Oは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基であり、オキシアルキレン基の具体例及び好ましい例は、上記AO及びBOと同様である。
【0040】
上記式(4)において、pは、R5Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~500の整数である。好ましくは2~500であり、より好ましくは5~400であり、さらに好ましくは10~300であり、特に好ましくは15~200
であり、最も好ましくは20~100である。
【0041】
上記式(4)において、xは、0~2の整数である。好ましくはxは、2である。
【0042】
上記式(4)で表される単量体(IV)としては、例えば、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール(イソプレノール)、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-1-オールのいずれかにアルキレンオキシドを1~500モル付加した化合物であり、より好ましくは、ビニルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール(イソプレノール)にアルキレンオキシドを1~500モル付加した化合物である。なお、上記例示中の「アルキレンオキシド」は、好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドであり、より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドであり、さらに好ましくは、エチレンオキシドである。
【0043】
上記単量体(IV)として具体的には、ビニルオキシブチルポリエチレングリコール(4-ヒドロキシブチル-1-モノビニルエーテルにエチレンオキシドを付加した化合物)、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテル、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテル等が挙げられる。
単量体(IV)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0044】
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素数2~5のヒドロキシアルキルエステルであり、具体的には、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートが挙げられ、好ましくは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートであり、より好ましくは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくは、ヒドロキシエチルアクリレートである。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0045】
上記共重合体(C)は、単量体(IV)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む組成物の重合物であるが、これら以外のその他の単量体(d2)を含んでいてもよい。
その他の単量体(d2)としては、特に制限されないが、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの塩等の不飽和モノカルボン酸系単量体;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸またはこれらの塩若しくはこれらの無水物等の不飽和ジカルボン酸系単量体;メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸系単量体と炭素数1~30のアルコールとのエステル類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の各種(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~30のアルコールとのハーフエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~30のアルコールとのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~30のアミンとのハーフアミド類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~30のアミンとのジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素数2~18のアルキレンオキシドを1~500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸系単量体とのハーフエステル類;上記アルコールやアミンに炭素数2~18のアルキレンオキシドを1~500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸系単量体とのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2~18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2~18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのジエステル類;マレアミド酸と炭素数2~18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸(塩)類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有単量体にアンモニア、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モノエタノールモノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどを付加した化合物(例えば、メタクリル酸グリシジルにジイソプロパノールアミンを付加した化合物);などが挙げられる。なお、上記例示中の「アルキレンオキシド」は、好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドであり、より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドであり、さらに好ましくは、エチレンオキシドである。
【0046】
上記その他の単量体(d2)として好ましくは不飽和モノカルボン酸系単量体及び不飽和ジカルボン酸系単量体であり、より好ましくは不飽和モノカルボン酸系単量体である。
【0047】
上記共重合体(C)の重合における原料組成物が、その他の単量体(d2)を含む場合、その含有量は、全単量体100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましい。その他の単量体の含有量としてより好ましくは0~20質量%であり、更に好ましくは0~10質量%であり、特に好ましくは0~5質量%である。
一態様において、不飽和モノカルボン酸系単量体及び不飽和ジカルボン酸系単量体の合計の含有量は、全単量体100質量%に対して0~30質量%であることが好ましい。
【0048】
上記共重合体(C)は、重量平均分子量が2,000~50,000であることが好ましい。より好ましくは、3,000~30,000であり、更に好ましくは4,000~20,000である。
上記重量平均分子量は、上記GPC測定条件により測定することができる。
【0049】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)、(B)及び共重合体(C)の製造方法は特に制限されないが、例えば、単量体成分と重合開始剤とを用いて、溶液重合や塊状重合等の公知の重合方法により行うことができる。単量体成分の具体例及び好ましい例並びに各単量体の割合は、上述のとおりである。
上記式(1)で表される単量体(I)、上記式(2)で表される単量体(II)及び上記式(3)で表される単量体(III)を1~76:1~76:23~28の質量比で含む組成物を重合する工程(a)と、上記式(1)で表される単量体(I)、上記式(2)で表される単量体(II)及び上記式(3)で表される単量体(III)を1~84:1~84:15~21の質量比で含む組成物を重合する工程(b)と、該工程(a)及び(b)で得られた重合物を混合する工程(c)とを含む、セメント混和剤用組成物の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0050】
上記重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;アゾビス-2メチルプロピオンアミジン塩酸塩、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のパーオキシドが好適である。また、促進剤として、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、モール塩、ピロ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、アスコルビン酸等の還元剤;エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、グリシン等のアミン化合物を併用することもできる。これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記共重合方法においては、連鎖移動剤も必要に応じて使用することができる。このような連鎖移動剤としては、1種又は2種以上使用でき、疎水性連鎖移動剤を用いることもできる。
疎水性連鎖移動剤とは、炭素数3以上の炭化水素基をもつチオール化合物又は25℃の水に対する溶解度が10%以下の化合物が好適であり、上述した連鎖移動剤や、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2-メルカプトプロピオン酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルエステル、オクタン酸2-メルカプトエチルエステル、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;α-メチルスチレンダイマー、α-テルピネン、γ-テルピネン、ジペンテン、ターピノーレン等の不飽和炭化水素化合物が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭素数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤を含むことが好ましい。
【0052】
上記疎水性連鎖移動剤は、必要に応じて親水性連鎖移動剤1種又は2種と併用してもよい。このような親水性連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;2-アミノプロパン-1-オール等の1級アルコール;イソプロパノール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物及びその塩が好適である。
【0053】
上記連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することができる。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入してもよく、単量体成分、溶媒等とあらかじめ混合しておいてもよい。
【0054】
上記共重合方法は、回分式でも連続式でも行うことができる。また、共重合の際、必要に応じて使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等の芳香族又は脂肪族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が好適である。これらの中でも、単量体成分及び得られる共重合体の溶解性の点から、水及び炭素数1~4の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることが好ましい。
【0055】
上記共重合方法において、単量体成分や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法、反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体と重合開始剤の全量を添加する方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる共重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、セメント組成物等の流動性を高める作用であるセメント分散性を向上することができることから、重合開始剤と単量体を反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行うことが好ましい。また、単量体成分の共重合性が向上して得られる共重合体の保存安定性がより向上することから、共重合中の反応容器内の水の濃度を50%以下に維持して共重合反応を行うことが好ましい。より好ましくは、40%以下であり、更に好ましくは、30%以下である。
【0056】
上記共重合方法において、共重合温度等の共重合条件としては、用いられる共重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められるが、共重合温度としては、通常0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、50℃以上であり、特に好ましくは、60℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、100℃以下であり、特に好ましくは、85℃以下である。
上記共重合方法により得られる重合体は、そのままでもセメント混和剤の成分として用いられるが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和して用いてもよい。アルカリ性物質としては、一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミンを用いることが好ましい。
【0057】
本発明の好ましい重合方法としては、重合開始剤として過硫酸塩、連鎖移動剤としてチオール系連鎖移動剤を用い、反応温度60℃~85℃で、単量体と重合開始剤と連鎖移動剤とを反応容器に逐次滴下する方法である。
【0058】
上記共重合方法では、上記単量体(III)の中和率を0~60mol%として単量体成分の共重合を行うことが好ましい。単量体(III)の中和率は、不飽和カルボン酸系単量体(III)の全モル数を100mol%としたときに、塩を形成している単量体(III)のmol%で表されることになる。単量体(III)の中和率が60mol%を超えると、共重合工程における重合率が上がらず、得られる重合体の分子量が低下したり、製造効率が低下したりするおそれがある。より好ましくは、50mol%以下であり、更に好ましくは、40mol%以下、更に好ましくは、30mol%以下であり、特に好ましくは、20mol%以下であり、最も好ましくは、10mol%以下である。
【0059】
上記単量体(III)の中和率を0~60mol%として共重合を行う方法としては、全て酸型である単量体(III)、すなわち全ての単量体(III)において上記式(3)におけるMが水素原子であるものを中和せずに共重合に付することにより行う方法や、単量体(III)をアルカリ性物質を用いてナトリウム塩やアンモニウム塩等の塩の形態に中和するときに中和率を0~60mol%としたものを共重合に付することにより行う方法が好適である。
【0060】
なお、本明細書中、「セメント混和剤」とは、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物へ添加される混和剤のことをいい、上記ポリカルボン酸系共重合体(A)及び(B)のみからなる剤であってもよいし、また、必要に応じて更に他の成分や添加剤等を含む剤であってもよい。
本発明のセメント混和剤用組成物を含むセメント混和剤もまた、本発明の1つである。
【0061】
上記セメント混和剤用組成物はまた、通常使用される他のセメント分散剤を更に含有していてもよく、複数の併用も可能である。他のセメント分散剤としては特に限定されないが、例えば、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系化合物(S)、本発明のセメント混和剤用組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)及び(B)以外の各種ポリカルボン酸系共重合体(D)、分子中にリン酸基を有する各種リン酸系化合物(P)などが挙げられる。
【0062】
上記スルホン酸系化合物(S)としては、分子中にスルホン酸基又はスルホン酸の塩の基を有する化合物を含むものであればよい。スルホン酸基又はスルホン酸の塩の基を有する化合物としては、分子中に芳香環を有するものであることが好ましい。
上記スルホン酸系化合物(S)としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸塩系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸塩系化合物;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系化合物;ポリスチレンスルホン酸塩系化合物等が挙げられる。
上記スルホン酸系化合物(S)としては、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系化合物及びリグニンスルホン酸塩系化合物が好ましく、より好ましくは、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物である。
【0063】
上記ポリカルボン酸系共重合体(D)としては、不飽和カルボン酸系単量体と(ポリ)アルキレングリコール系単量体とを含む単量体成分を共重合して得られる重合体が好ましい。
不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの塩等の不飽和モノカルボン酸系単量体;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸またはこれらの塩若しくはこれらの無水物等の不飽和ジカルボン酸系単量体が挙げられる。
(ポリ)アルキレングリコール系単量体としては、具体的には例えば、炭素数2~8の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1~500モル付加させた化合物及びこれらの末端疎水変性物や、不飽和カルボン酸系単量体と平均付加モル数1~500の(ポリ)アルキレングリコールとのエステル化物及びこれらの末端疎水変性物等が挙げられ、上記式(4)で表される単量体(IV)または下記式(5)で表される単量体(V)が好ましい。
【0064】
【0065】
(式中、R7は水素原子又はメチル基を表す。R9は、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。R8Oは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。qは、R8Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~500の整数である。)
上記式(5)において、R9の具体例及び好ましい例は、上記式(4)におけるR6と同様である。
上記式(5)において、R8Oは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基であり、オキシアルキレン基の具体例及び好ましい例は、上記AO及びBOと同様である。
【0066】
上記式(5)で表される単量体(V)として具体的には、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記ポリカルボン酸系共重合体(D)として具体的には、ビニルオキシブチルポリエチレングリコールとアクリル酸との共重合体、ポリエチレングリコールモノアリルエーテルとアクリル酸との共重合体、ポリエチレングリコールモノメタリルエーテルとアクリル酸との共重合体、ポリエチレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテルとアクリル酸との共重合体、ビニルオキシブチルポリエチレングリコールとマレイン酸との共重合体、ポリエチレングリコールモノアリルエーテルとマレイン酸との共重合体、ポリエチレングリコールモノメタリルエーテルとマレイン酸との共重合体、ポリエチレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテルとマレイン酸との共重合体、メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、メトキシポリエチレングリコールモノメタリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、メトキシポリエチレングリコールモノ(3-メチル-3-ブテニル)エーテルと無水マレイン酸との共重合体、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体などが挙げられる。
【0067】
上記ポリカルボン酸系共重合体(D)は、不飽和カルボン酸系単量体の割合が、全単量体100質量%に対して、5~45質量%であることが好ましい。より好ましくは10~30質量%である。
上記ポリカルボン酸系共重合体(D)は、(ポリ)アルキレングリコール系単量体の割合が、全単量体100質量%に対して、55~95質量%であることが好ましい。より好ましくは70~90質量%である。
【0068】
上記ポリカルボン酸系共重合体(D)は、重量平均分子量が、5000~500000であることが好ましい。より好ましくは7000~200000であり、更に好ましくは8000~100000である。上記重量平均分子量は、上記GPC測定条件により測定することができる。
【0069】
上記リン酸系化合物(P)としては、例えば、ポリアルキレングリコールを含むリン酸系重合体、リン酸系重縮合物が挙げられる。
リン酸系重合体としては、上記(ポリ)アルキレングリコール系単量体とリン酸系単量体とを含む単量体成分を共重合して得られる重合体が好ましい。
上記リン酸系単量体としては、例えば、リン酸モノ(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリル酸エステル、リン酸ジ-{(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリル酸}エステル、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートアシッドリン酸エステル等が挙げられる。
【0070】
リン酸系重縮合物としては、例えば、リン酸エステルとアルデヒド化合物との重縮合物が好適である。リン酸エステルとしては、リン酸類(塩であってもよい)と、水酸基含有化合物とのエステル化物であれば特に限定されず、1種又は2種以上を使用することができる。なお、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルのいずれであってもよい。
【0071】
リン酸系重縮合物として具体的には、特表2017-502140号公報に記載の如く以下の(I)~(III):
(I)少なくとも1個の構造単位、この構造単位は、アルキレングリコール単位、好ましくはC2~C5アルキレングリコール単位、より好ましくはC2~C3アルキレングリコール単位を有するポリエーテル側鎖を有する芳香族部分であり、ただし、前記側鎖におけるエチレングリコール単位の数は、9~41であり、かつエチレングリコール単位の含分は、前記ポリエーテル側鎖中の全てのアルキレングリコール単位に対して80mol%超、好ましくは85mol%超、より好ましくは90mol%超、最も好ましくは95mol%超であり、
(II)少なくとも1個の構造単位、この構造単位は、少なくとも1個のリン酸エステル基及び/又はその塩、好ましくは少なくとも1個のリン酸モノエステル及び/又はその塩を有する芳香族部分であり、ただし、(I)対(II)のモル比の値は、0.3~4であり、
(III)少なくとも1個のメチレン単位(-CH2-)、このメチレン単位は、2個の芳香族構造単位Yに結合しており、
ここで、この芳香族構造単位Yは、相互に独立して、同一であるか又は異なり、構造単位(I)、構造単位(II)、又は任意で、(IV)前記構造単位(I)及び前記構造単位(II)とは異なる、前記重縮合物の芳香族構造単位によって表される、
を含有する、重縮合物が好ましく、前記単位(I)、(II)、(III)、及び任意で(IV)を含有する重縮合物の重縮合度は、10~75の範囲、好ましくは20~70の範囲、より好ましくは30~65の範囲にあり、リン酸エステル基は好ましくは、リン酸と、芳香族部分を有するアルコールとのエステルである。
【0072】
前記構造単位(I)としてはポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテルが好ましく、前記構造単位(II)としてはフェノキシエタノールホスフェートが好ましく、前記構造単位(III)は、重縮合の間に水を形成しながら、ホルムアルデヒドの反応によって導入される。これらセメント分散剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
上記の他のセメント分散剤を併用する場合には、使用するセメント分散剤の種類、配合及び試験条件等の違いにより一義的に決められないが、上記の他の分散剤と上記ポリカルボン酸系共重合体(A)、(B)及び共重合体(C)の合計との配合質量の割合は、5~95:5~95であることが好ましい。より好ましくは、10~90:10~90であり、更に好ましくは10~70:30~90であり、一層好ましくは10~50:50~90であり、特に10~30:70~90である。
【0074】
また、本発明のセメント混和剤用組成物は、必要に応じて、他の添加剤等とともに併用してもよい。他の添加剤等としては、水溶性高分子物質、高分子エマルション、遅延剤、早強剤・促進剤、消泡剤、AE剤、その他界面活性剤、防水剤、防錆剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤等を挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0075】
上記セメント混和剤用組成物は、各種水硬性材料、すなわちセメントや石膏等のセメント組成物やそれ以外の水硬性材料に用いることができる。このような水硬性材料と水と上記セメント混和剤用組成物とを含有し、更に必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。これらの水硬性組成物の中でも、水硬性材料としてセメントを.使用するセメント組成物が最も好ましく、上記セメント混和剤用組成物と、セメントとを含むセメント組成物もまた、本発明の1つである。
【0076】
2.セメント組成物
本発明のセメント組成物において、セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。本発明のセメント組成物に含まれるセメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0077】
上記セメント組成物においては、その1m3あたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比は特に限定されず、例えば、単位水量100~185kg/m3、使用セメント量250~800kg/m3、水/セメント比(重量比)=0.12~0.74であることが好ましい。より好ましくは、単位水量120~175kg/m3、使用セメント量270~800kg/m3、水/セメント比(重量比)=0.15~0.65である。このように本発明のセメント組成物は、貧配合~富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。また、本発明のセメント組成物は、比較的高減水率の領域、すなわち、水/セメント比(重量比)=0.15~0.5(好ましくは0.15~0.4)といった水/セメント比の低い領域においても、良好に使用することができる。
【0078】
また本発明のセメント混和剤用組成物を使用することにより、得られるセメント組成物は幅広い配合において長時間の優れた作業性を有することから、特にレディーミクストコンクリート、吹付けコンクリート等に有効に適用できる。その一方で、コンクリート2次製品用のコンクリート(プレキャストコンクリート)、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート等にも適用可能である。また、中流動コンクリート(スランプ値が22~25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が500~700mmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも本発明のセメント混和剤用組成物は有効である。
【0079】
上記セメント組成物において、本発明のセメント混和剤用組成物の配合割合としては、例えば、上記ポリカルボン酸系共重合体(A)、(B)及び共重合体(C)の合計量が、固形分換算で、セメント質量の全量100質量%に対して、0.01~10質量%となるように設定することが好ましい。0.01質量%以上とすることで性能的により充分となる。また、配合割合が多すぎてもその効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがあるが、10質量%以下とすることにより経済性の観点から効率的に本発明の効果を発揮させることができる。より好ましくは0.05~5質量%であり、更に好ましくは0.1~3質量%である。
【実施例0080】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0081】
共重合体の製造
表1に示す組成の単量体成分、重合開始剤として過硫酸塩、連鎖移動剤としてチオール系連鎖移動剤を原料として用い、反応温度60℃~85℃で、単量体と重合開始剤と連鎖移動剤とを反応容器に逐次滴下する方法により、共重合体(1)~(8)を製造した。これらが本発明のポリカルボン酸系共重合体(A)、(B)、共重合体(C)又はその他の共重合体(D1)、(D2)のいずれに該当するかを表1に示した。各共重合体の平均鎖長、単量体(I)のオキシアルキレン基の平均付加モル数と単量体(II)のオキシアルキレン基の平均付加モル数との差n-m、重量平均分子量を表1に示す。重量平均分子量は、上述した方法により測定した。
【0082】
【0083】
表1における略称はそれぞれ以下のものを表す。
M6E:メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数6モル)モノメタクリレート
M10E:メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数10モル)モノメタクリレート
M25E:メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数25モル)モノメタクリレート
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
SMAA:メタクリル酸ナトリウム*
*一部にメタクリル酸を含むが、表1中ではメタクリル酸ナトリウムからなるものとして記載する。
IPN50:3-メチル-3-ブテン-1-オールのエチレンオキシド付加体(平均付加モル数50モル)
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
【0084】
コンクリート組成物の調製
コンクリートの配合を表2に示す。使用した材料及び配合1、2の混練方法は以下の通りである。
【0085】
【0086】
[使用材料]
セメント(C):太平洋セメント社製普通ポルトランドセメント(密度:3.16g/cm3)
細骨材(S):大井川水系陸砂(表乾密度:2.60g/cm3、粗粒率:2.69、吸水率:1.83%)
粗骨材(G):青梅産硬質砂岩砕石(表乾密度:2.66g/cm3、最大寸法:20mm)
水(W):上水道水
空気量調整剤:マスターエア404(ポゾリス ソリューションズ社製)
[混練方法]
配合1:公称容量55リットルの水平二軸形強制練りミキサに粗骨材、細骨材、セメントを投入し、10秒間練り混ぜ、水、混和剤及び空気量調整剤を投入し、90秒間練り混ぜた。なお、空気量調整剤は、コンクリートの空気量をJIS A 1128に準じて測定し、練り混ぜ直後の空気量が2.0±1.5%になるように適宜調整し使用した。
配合2:公称容量55リットルの水平二軸形強制練りミキサに粗骨材、細骨材、セメントを投入し、10秒間練り混ぜ、水、混和剤及び空気量調整剤を投入し、90秒間練り混ぜた。なお、空気量調整剤は、コンクリートの空気量をJIS A 1128に準じて測定し、練り混ぜ直後の空気量が2.0±1.5%になるように適宜調整し使用した。
【0087】
共重合体配合物(混和剤)の調製
上記共重合体(1)~(8)を用いて、下記表3に示す共重合体配合物(1)~(10)を調製した。なお、表3中、配合物(7)~(10)の共重合体配合比の欄では、本発明の共重合体(A)類似の構造を有する共重合体(4)、本発明の共重合体(B)類似の構造を有する共重合体(5)、(8)をそれぞれ共重合体(A)、(B)とみなして配合比を記載した。
【0088】
表3に示す共重合体配合物を其々、同表に示す添加量(セメント(C)に対する質量%)使用して、表2の配合に従いコンクリート組成物を調製し、スランプフロー及びV漏斗流下時間の測定を行った。
試験方法、及び、評価方法は以下のとおりである。
【0089】
(スランプフローの測定)
スランプフロー:JIS A 1150に準じ測定した。なお、スランプフローは、練り混ぜ直後、練り板上に静置した30分後、60分後及び90分後に測定した。結果を表3に示す。
【0090】
(V漏斗流下時間の測定)
V漏斗流下時間:JSCE-F 512-2007に準じて測定した。
【0091】
【0092】
表3から分かる通り、本発明は、比較例と比較して、オキシアルキレン基の平均付加モル数が所定の範囲である2種類のポリカルボン酸系共重合体を組み合わせることにより、セメント分散性と粘性の低減とを両立することができることを見いだしたものである。