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特開2024-115770冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115770
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
F25B1/00 371J
F25B1/00 396B
F25B1/00 383
F25B1/00 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021599
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】廣崎 佑
(57)【要約】
【課題】温度勾配の大きな非共沸混合冷媒を用いた場合であっても、要求能力に合った運転を行うことでユーザに対する快適性を確保するとともに、省エネ性能の向上を図る。
【解決手段】室内熱交換器2、或いは、室外熱交換器4を流れる非共沸混合冷媒の温度である冷媒温度を検出する冷媒温度センサMと、室内熱交換器2の出口側の冷媒流路、或いは、室外熱交換器4の出口側の冷媒流路を通過する空気の温度である空気温度を検出する空気温度センサAと、冷凍サイクル装置Sを制御する制御装置6と、を備え、制御装置6は、冷媒温度センサから取得した冷媒温度と空気温度センサから取得した空気温度との温度差を第1の温度差として算出する温度差算出部63と、温度差算出部63において算出された第1の温度差が予め定められている第1の閾値よりも大きな値となるように少なくとも圧縮機の回転数を制御する温度差制御部65と、を備えている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、室内熱交換器と、減圧機構と、室外熱交換器が冷媒配管で順次接続され、非共沸混合冷媒が循環する冷媒回路を備える冷凍サイクル装置であって、
前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器を流れる前記非共沸混合冷媒の温度である冷媒温度を検出する冷媒温度センサと、
前記室内熱交換器の出口側の冷媒流路、或いは、前記室外熱交換器の出口側の冷媒流路を通過する空気の温度である空気温度を検出する空気温度センサと、
前記冷凍サイクル装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記冷媒温度センサから取得した冷媒温度と前記空気温度センサから取得した空気温度との温度差を第1の温度差として算出する温度差算出部と、
前記温度差算出部において算出された前記第1の温度差が予め定められている第1の閾値を下回る場合、前記第1の温度差が前記第1の閾値よりも大きな値となるように少なくとも前記圧縮機の回転数を制御する温度差制御部と、
を備えていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記非共沸混合冷媒が前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器から流出する際の出口温度を検出する冷媒出口温度センサを備え、
前記温度差算出部は、前記冷媒の温度の代わりに、前記冷媒出口温度を用いて前記空気温度との温度差を第2の温度差として算出し、前記第2の温度差が予め定めた第2の閾値を下回り、かつ、前記第1の温度差が予め定められている第1の閾値を下回る場合、前記温度差制御部は、前記第1の温度差が前記第1の閾値よりも大きな値となるように前記圧縮機の回転数の制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記冷媒と熱交換させる室内の空気を、前記室内熱交換器に送る室内ファンと、
前記冷媒と熱交換させる室外の空気を、前記室外熱交換器に送る室外ファンと、を備え、
前記温度差制御部は、前記第1の温度差が前記第1の閾値を下回る場合には、前記圧縮機の回転数の制御とともに、前記室内ファン、或いは、前記室外ファンの回転数を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記空気温度センサは、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器に設けられ、
前記室内熱交換器において、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れと同じ向きに流れる場合には、前記室内熱交換器を通過した後の空気温度を、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れに対向する向きに流れる場合には、前記室内熱交換器を通過する前の空気温度を、それぞれ前記空気温度として検出し、
前記室外熱交換器において、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れと同じ向きに流れる場合には、前記室外熱交換器を通過した後の空気温度を、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れに対向する向きに流れる場合には、前記室外熱交換器を通過する前の空気温度を、それぞれ前記空気温度として検出することを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記冷媒温度センサは、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器に設けられ、
前記室内熱交換器が蒸発器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室内熱交換器に流入する入口温度を前記冷媒温度として検出し、
前記室外熱交換器が蒸発器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室外熱交換器に流入する入口温度を前記冷媒温度として検出することを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記冷媒温度センサは、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器に設けられ、
前記室内熱交換器が凝縮器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室内熱交換器の中間部を流れる際の中間温度を前記冷媒温度として検出し、
前記室外熱交換器が凝縮器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室外熱交換器の中間部を流れる際の中間温度を前記冷媒温度として検出することを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記第1の温度差と前記第1の閾値とを比較し前記第1の温度差が前記第1の閾値よりも大きな値であるか否かを判定する判定部を備え、
前記判定部は、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器が蒸発器として機能する場合であって、前記圧縮機の回転数が閾値以上である場合には、前記第1の閾値の値として予め定められている値よりも小さな値を用いて判定することを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
圧縮機と、室内熱交換器と、減圧機構と、室外熱交換器が冷媒配管で順次接続され、非共沸混合冷媒が循環する冷媒回路を備える冷凍サイクル装置において、
冷媒温度センサを用いて前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器を流れる前記非共沸混合冷媒の温度である冷媒温度を検出するステップと、
空気温度センサを用いて前記室内熱交換器の出口側の冷媒流路、或いは、前記室外熱交換器の出口側の冷媒流路を通過する空気の温度である空気温度を検出するステップと、
温度差算出部が前記冷媒温度と前記空気温度との温度差を第1の温度差として算出するステップと、
温度差制御部が前記温度差算出部において算出された前記第1の温度差が予め定められている第1の閾値を下回る場合、前記第1の温度差を前記第1の閾値よりも大きな値となるように少なくとも前記圧縮機の回転数を制御するステップと、
を備えていることを特徴とする冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項9】
前記非共沸混合冷媒が前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器から流出する際の出口温度を検出する冷媒出口温度センサを備え、
前記温度差算出部による前記温度差を算出するステップでは、前記冷媒の温度の代わりに、前記冷媒出口温度を用いて前記空気温度との温度差を第2の温度差として算出し、前記第2の温度差が予め定めた第2の閾値を下回る場合、前記温度差制御部は、前記第1の温度差が前記第1の閾値よりも大きな値となるように前記圧縮機の回転数の制御を実行するステップを備えていることを特徴とする請求項8に記載の冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項10】
前記冷凍サイクル装置は、前記冷媒と熱交換させる室内の空気を、前記室内熱交換器に送る室内ファンと、
前記冷媒と熱交換させる室外の空気を、前記室外熱交換器に送る室外ファンと、を備え、
前記温度差制御部が前記圧縮機の回転数を制御するステップにおいて、前記第1の温度差が前記第1の閾値を下回る場合には、前記圧縮機の回転数の制御とともに、併せて前記室内ファン、或いは、前記室外ファンの回転数を制御することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項11】
前記空気温度センサは、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器に設けられ、
前記室内熱交換器において、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れと同じ向きに流れる場合には、前記室内熱交換器を通過した後の空気温度を、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れに対向する向きに流れる場合には、前記室内熱交換器を通過する前の空気温度を、それぞれ前記空気温度として検出し、
前記室外熱交換器において、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れと同じ向きに流れる場合には、前記室外熱交換器を通過した後の空気温度を、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れに対向する向きに流れる場合には、前記室外熱交換器を通過する前の空気温度を、それぞれ前記空気温度として検出することを特徴とする請求項8に記載の冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項12】
前記冷媒温度センサは、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器に設けられ、
前記室内熱交換器が蒸発器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室内熱交換器に流入する入口温度を前記冷媒温度として検出し、
前記室外熱交換器が蒸発器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室外熱交換器に流入する入口温度を前記冷媒温度として検出することを特徴とする請求項8に記載の冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項13】
前記冷媒温度センサは、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器に設けられ、
前記室内熱交換器が凝縮器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室内熱交換器の中間部を流れる際の中間温度を前記冷媒温度として検出し、
前記室外熱交換器が凝縮器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室外熱交換器の中間部を流れる際の中間温度を前記冷媒温度として検出することを特徴とする請求項8に記載の冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項14】
温度差算出部が前記冷媒温度と前記空気温度との温度差を算出するステップの後に、判定部が前記第1の温度差と前記第1の閾値とを比較し前記第1の温度差が前記第1の閾値よりも大きな値であるか否かを判定するステップを備え、
前記判定部は、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器が蒸発器として機能する場合であって、前記圧縮機の回転数が閾値以上である場合には、前記第1の閾値の値として予め定められている値よりも小さな値を用いて判定することを特徴とする請求項8に記載の冷凍サイクル装置の制御方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、冷凍サイクル装置において単一冷媒が使用される場合、冷媒が二相状態であってかつ圧力が一定であれば、凝縮器や蒸発器において冷媒の温度は一定である。これに対して、例えば冷媒として非共沸混合冷媒を使用する場合、単一の冷媒とは異なり、等圧力の蒸発/凝縮過程において二相領域でも冷媒の蒸発温度が変化し、いわゆる温度勾配(飽和液の温度と飽和蒸気の温度との差)が生じる。そのため、例えば凝縮器の下流側の冷媒の温度が上流側より低くなることがある。
【0003】
非共沸混合冷媒の温度勾配が大きいと、凝縮器又は蒸発器の出口側の冷媒流路において熱交換を行う空気と冷媒との温度差が単一冷媒を使用した場合と比較して小さくなる。その結果、空気調和機における熱交換量が減ることになるので、凝縮過程においては過冷却度、蒸発過程の場合は吸入過熱度が小さくなり、過冷却度や吸入過熱度を確保しにくくなる。このことは空気調和機における運転効率の低下を招くことになりかねない。
【0004】
そのため、以下の特許文献1に開示されている発明では、過冷却度が小さい場合に、過冷却度を予め設定された目的値に到達させるべく、圧縮機の回転数が高くなるように制御を行う。このような制御を行うのは、圧縮機の回転数を高めることで凝縮圧力と蒸発圧力との差を大きくし、凝縮温度を上げ、且つ、蒸発温度を下げることによって、熱交換を行う冷媒と空気との温度差を確保するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2019/207618号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に示されているように、確かに凝縮温度を上げることで冷媒と空気との温度差を確保することができるが、このような運転制御が適切ではない場合が考えられる。例えば、そもそも空気調和機が低負荷運転の状態にある場合、冷媒の温度と空気との温度差が小さく、過冷却度を確保することが難しい。
【0007】
また、過冷却度を確保するために無理矢理圧縮機の回転数を高める運転を行うと、凝縮温度を上げることになる。これは、例えば、低負荷時の暖房運転の場合は暖め過ぎになってしまい、室内機から要求される空調能力(要求能力)に対して能力が過剰ないわゆる能力過多な状態を招く。そしてこのような状態は、空気調和機のユーザにとって快適な状況とは言いがたい。さらに、圧縮機の回転数を高める運転を行うと、圧縮機の消費電力が増加するため、能力過多な状態では省エネ性能も悪化してしまう。
【0008】
本発明は、温度勾配の大きな非共沸混合冷媒を用いた場合であっても、要求能力に合った運転を行うことでユーザに対する快適性を確保するとともに、省エネ性能の向上を図ることができる冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機と、室内熱交換器と、減圧機構と、室外熱交換器が冷媒配管で順次接続され、非共沸混合冷媒が循環する冷媒回路を備える冷凍サイクル装置であって、室内熱交換器、或いは、室外熱交換器を流れる非共沸混合冷媒の温度である冷媒温度を検出する冷媒温度センサと、室内熱交換器の出口側の冷媒流路、或いは、室外熱交換器の出口側の冷媒流路を通過する空気の温度である空気温度を検出する空気温度センサと、冷凍サイクル装置を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、冷媒温度センサから取得した冷媒温度と空気温度センサから取得した空気温度との温度差を第1の温度差として算出する温度差算出部と、温度差算出部において算出された第1の温度差が予め定められている第1の閾値よりも大きな値となるように少なくとも圧縮機の回転数を制御する温度差制御部と、を備えている。
【0010】
また、本発明の一態様に係る冷凍サイクル装置の制御方法は、圧縮機と、室内熱交換器と、減圧機構と、室外熱交換器が冷媒配管で順次接続され、非共沸混合冷媒が循環する冷媒回路を備える冷凍サイクル装置において、冷媒温度センサを用いて室内熱交換器、或いは、室外熱交換器を流れる非共沸混合冷媒の温度である冷媒温度を検出するステップと、空気温度センサを用いて室内熱交換器の出口側、或いは、室外熱交換器の出口側の冷媒流路を通過する空気の温度である空気温度を検出するステップと、温度差算出部が冷媒の温度と空気の温度との温度差を第1の温度差として算出するステップと、温度差制御部が温度差算出部において算出された第1の温度差が予め定められている第1の閾値よりも大きな値となるように少なくとも圧縮機の回転数を制御するステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、温度勾配の大きな非共沸混合冷媒を用いた場合であっても、要求能力に合った運転を行うことでユーザに対する快適性を確保するとともに、省エネ性能の向上を図ることができる冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置の冷媒回路図である。
図2】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置における制御装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置の蒸発器として機能する熱交換器(室内熱交換器、室外熱交換器)における、いわゆる対向流である場合の内容を示す概念図である。
図4】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置の蒸発器として機能する熱交換器(室内熱交換器、室外熱交換器)における、いわゆる並行流である場合の内容を示す概念図である。
図5】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置における制御の方法について、蒸発器として機能する熱交換器(室内熱交換器、室外熱交換器)が並行流である場合を例に挙げて説明する概念図である。
図6】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置における別の制御の方法について、蒸発器として機能する熱交換器(室内熱交換器、室外熱交換器)が並行流である場合を例に挙げて説明する概念図である。
図7】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置における圧縮機、室内ファン、室外ファンの制御のパターンを示す説明図である。
図8】本発明の他の実施の形態に係る冷凍サイクル装置における第1の閾値と圧縮機の回転数との関係を示す説明図である。
図9】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置の制御の流れを示すフローチャートである。
図10】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置の別の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sの構造を、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sの冷媒回路図である。冷凍サイクル装置Sは、後述する室内熱交換器2を蒸発器として利用し、室外熱交換器4を凝縮器として利用する場合には冷房運転に用いられる。一方、室内熱交換器2を凝縮器として利用し、室外熱交換器4を蒸発器として利用する場合には、暖房運転に用いられる。
【0014】
図1に示されている本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sは、圧縮機1と、室内熱交換器2と、減圧機構3と、室外熱交換器4とが冷媒配管で順次接続され、冷媒が循環する冷媒回路Cを有する。
【0015】
また、圧縮機1と室内熱交換器2、或いは、圧縮機1と室外熱交換器4との間には、四方弁5が設けられている。四方弁5は、圧縮機から吐出された冷媒を室内熱交換器2側に流すか、室外熱交換器4側に流すかを切り替える。
【0016】
圧縮機1は、冷媒回路Cを循環した冷媒を吸入し、圧縮して冷媒回路Cへと吐出する。室内熱交換器2は、室内空間に設置される室内機の内部に配置される。室内熱交換器2は、例えば暖房運転の場合には、冷媒と室内機に流入する空気との間で熱交換を行い室内空間に冷媒から吸熱して暖められた空気を供給する。
【0017】
さらに室内機には、室内熱交換器2に流入、或いは、室内熱交換器2から流出する冷媒の温度を検出する冷媒温度センサが設けられている。ここでは圧縮機1と室内熱交換器2との間に設けられる冷媒温度センサを第1の室内冷媒温度センサ21と表す。また、室内熱交換器2と減圧機構3との間に設けられる冷媒温度センサを第2の室内冷媒温度センサ22と表す。
【0018】
また、室内熱交換器2の中間部を流れる二相状態の冷媒(以下、このような冷媒を適宜「二相冷媒」と表す)の温度(以下、このような冷媒を適宜「二相冷媒温度」と表す)を検出する冷媒温度センサも設けられている。当該冷媒温度センサのことを、以下、室内冷媒中間温度センサ23と表す。
【0019】
また、室内機の内部には、室内ファン24が設けられている。室内ファン24は、室内機の内部に空気を取り込むとともに、冷媒との間で熱交換が行われた空気を室内に供給する。さらに室内に供給される空気の温度、すなわち、室内熱交換器2の出口側の冷媒流路を通過する空気の温度(以下、このような温度を適宜「空気温度」と表す)を検出する室内空気温度センサ25が設けられている。
【0020】
上述したように、室内機に吸入された空気は、室内熱交換器2で冷媒との間で熱交換を行い、室内ファン24を介して室内に供給されるが、図1においては、この空気の流れを室内熱交換器2に向けて描画される矢印で示している。室内空気温度センサ25は、室内熱交換器2の出口側の冷媒流路を通過する空気温度を検出することから、例えば、冷媒の流れが、空気の流れと互いに同じ向きに並行に流れる場合には、室内熱交換器2の出口側の冷媒流路を通過する位置である、室内に供給される空気の流れの下流側に配置される。またこの場合、室内熱交換器2は、室内ファン24の送風方向(図1の矢印参照)と直交する方向に沿って配置されている。
【0021】
冷媒回路Cにおいて、室内熱交換器2と室外熱交換器4との間には、減圧機構3が設けられている。減圧機構3は、例えば、膨張弁であり、室内熱交換器2、或いは、室外熱交換器4を通過した高圧の冷媒を減圧する。
【0022】
室外熱交換器4は、室外に設置される室外機の内部に配置される。例えば暖房運転の場合には、室外熱交換器4では、冷媒と室外機に流入する空気(外気)との間で熱交換が行われて外気の熱が冷媒に吸熱される。
【0023】
さらに室外機には、室外熱交換器4に流入、或いは、室外熱交換器4から流出する冷媒の温度を検出する冷媒温度センサが設けられている。ここでは減圧機構3と室外熱交換器4との間に設けられる冷媒温度センサを第1の室外冷媒温度センサ41と表す。また、室外熱交換器4と圧縮機1との間に設けられる冷媒温度センサを第2の室外冷媒温度センサ42と表す。
【0024】
また、室外熱交換器4の中間部を流れる二相冷媒温度を検出する冷媒温度センサも設けられている。当該冷媒温度センサのことを、以下、室外冷媒中間温度センサ43と表す。
【0025】
室外機の内部には、室外ファン44が設けられている。室外ファン44は、室外機の内部に空気を取り込むとともに、冷媒との間で熱交換が行われた空気を外部に排出する。そして外部に排出される空気温度、すなわち、室外熱交換器4の出口側の冷媒流路を通過する空気温度を検出する室外空気温度センサ45が設けられている。
【0026】
上述したように、室外機に吸入された空気は、室外熱交換器4で冷媒との間で熱交換を行うが、図1においては、この空気の流れを室外熱交換器4に向けて描画される矢印で示している。室外空気温度センサ45は、室外熱交換器4の出口側の冷媒流路を通過する空気温度を検出することから、例えば、冷媒の流れが、空気の流れと互いに同じ向きに並行に流れる場合には、室外熱交換器4の出口側の冷媒流路を通過する位置である、室外に排気される空気の流れの下流側に配置される。またこの場合、室外熱交換器4は、室外ファン44の送風方向(図1の矢印参照)と直交する方向に沿って配置されている。
【0027】
なお、冷媒回路Cを循環する冷媒温度については、上述したように、第1の室内冷媒温度センサ21、第2の室内冷媒温度センサ22、或いは、室内冷媒中間温度センサ23、または、第1の室外冷媒温度センサ41、第2の室外冷媒温度センサ42、或いは、室外冷媒中間温度センサ43において検出される。そこで、これら各センサについてまとめて示す場合には、以下、適宜「冷媒温度センサM」と表す。
【0028】
また同様に、室内空気温度センサ25によって、室内熱交換器2の出口側の冷媒流路を通過する空気温度が検出される。また、室外空気温度センサ45によって、室外熱交換器4の出口側の冷媒流路を通過する空気温度が検出される。そこで、これら空気温度を検出するセンサについてまとめて示す場合には、以下、適宜「空気温度センサA」と表す。
【0029】
冷凍サイクル装置Sが暖房運転を行う際の冷媒回路Cにおける冷媒の流れは以下の通りである。暖房運転が行われる際には、圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒は、四方弁5を介して室内熱交換器2に流入する。室内熱交換器2では、室内の空気を吸入して冷媒との熱交換を行うことで、暖められた空気を室内に供給する。高温高圧のガス冷媒は、室内熱交換器2を通過する際の熱交換により放熱して高圧の液冷媒となる。
【0030】
室内熱交換器2から流出した高圧の液冷媒は、減圧機構3に流入する。高圧の液冷媒は減圧機構3を通過する際に減圧され低圧の二相冷媒となる。そして減圧機構3から流出した低圧の二相冷媒は、室外熱交換器4に流入する。室外熱交換器4では外気との間で熱交換が行われることで低圧の二相冷媒が吸熱して低圧のガス冷媒となり、四方弁5を介して圧縮機1へ吸入される。
【0031】
一方、冷凍サイクル装置Sが冷房運転を行う際の冷媒回路Cにおける冷媒の流れは以下の通りである。冷房運転が行われる際には、圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒は、四方弁5を介して室外熱交換器4に流入する。室外熱交換器4に流入した冷媒は外気との間で熱交換を行い、放熱して高圧の液冷媒となる。
【0032】
室外熱交換器4から流出した高圧の液冷媒は、減圧機構3に流入し、減圧されて低圧の二相冷媒となる。そして室内熱交換器2に流入し、室内熱交換器2を通過する際に室内空気との間で熱交換を行い、低圧の二相冷媒が吸熱してガス冷媒となる。そして冷やされた空気が室内に供給される。室内熱交換器2を流出したガス冷媒は、四方弁5を介して圧縮機1へ吸入される。
【0033】
なおここで、本発明の実施の形態における冷凍サイクル装置Sの冷媒回路Cを循環する冷媒は、非共沸混合冷媒である。非共沸混合冷媒は凝縮過程や蒸発過程において二相状態であっても温度が変化する性質(温度勾配)を備えている。当該非共沸混合冷媒としては、例えば、R454C(R32冷媒とR1234yf冷媒との混合冷媒)を挙げることができる。
【0034】
制御装置6は、圧縮機1、室内ファン24、室外ファン44の回転数を制御する。このように制御装置6が圧縮機1等の回転数を、後述する制御内容に基づいて制御することによって、温度勾配の大きな非共沸混合冷媒を用いた場合であっても要求能力に合った運転を行うことでユーザに対する快適性を確保するとともに、省エネ性能の向上を図ることができる。
【0035】
また、例えば、制御装置6は、減圧機構3の開度を制御することで、冷媒回路Cを流れる冷媒の流量を調整することができる。但し、以下、本発明の実施の形態においては、非共沸混合冷媒を用いた冷凍サイクル装置Sの運転制御に必要な機能のみを説明する。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sにおける制御装置6の内部構成を示すブロック図である。制御装置6は、温度検出部61と、記憶部62と、温度差算出部63と、判定部64と、温度差制御部65と、を備えている。
【0037】
なお、制御装置6は、図2においては図示されていない、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)及び入出力インターフェイスがバスを介して接続される構成を備えていても良い。また、当該入出力インターフェイスには、上述した各部が接続されているとともに、例えば、表示部や通信制御部、或いは、入力部といった各部が接続されていても良い。
【0038】
温度検出部61は、上述した、例えば、第1の室内冷媒温度センサ21、第2の室内冷媒温度センサ22、室内冷媒中間温度センサ23、或いは、第1の室外冷媒温度センサ41、第2の室外冷媒温度センサ42、室外冷媒中間温度センサ43において検出された冷媒温度の情報を取得する。また温度検出部61は、室内空気温度センサ25や室外空気温度センサ45において検出された空気温度の情報を取得する。
【0039】
記憶部62には、例えば、温度検出部61において取得された冷媒温度や空気温度に関する情報や、予め定められている冷媒温度と空気温度との温度差と比較するための閾値に関する情報が格納されている。また、後述する判定部64が判定を行う際に用いる判定プログラム等も格納されている。
【0040】
温度差算出部63は、冷媒温度センサM及び空気温度センサAにおいて検出された温度を基に、冷媒温度と空気温度との温度差を算出する。但し、冷媒温度センサMとしては、例えば室内機には第1の室内冷媒温度センサ21、第2の室内冷媒温度センサ22、室内冷媒中間温度センサ23というように複数のセンサが備えられており、いずれのセンサが検出した冷媒温度を用いるかについては、次のように考えることができる。
【0041】
すなわち、本発明の実施の形態における冷凍サイクル装置Sでは、上述したように非共沸混合冷媒が使用される。非共沸混合冷媒ではない単一冷媒の場合、凝縮過程や蒸発過程において二相状態にあるとき、圧力が一定であれば温度は一定である。一方、非共沸混合冷媒の場合、冷媒が二相状態にあるときに冷媒温度が変化するため、例えば、凝縮器の下流側の冷媒の温度が上流側より低くなる。従って、凝縮器の出口側の冷媒流路において熱交換を行う空気との温度差が単一冷媒を使用した場合と比較して小さくなる。
【0042】
そのため、非共沸混合冷媒を使用する場合は熱交換量が減るので、凝縮過程においては過冷却度が、蒸発過程の場合は吸入過熱度が小さくなり、過冷却度や吸入過熱度が取りにくくなる。
【0043】
そこで、冷媒温度と空気温度との差を確保することで熱交換器における熱交換量を増加させ、冷凍サイクル装置Sを利用するユーザの快適性を損なわずに過冷却度や吸入過熱度を確保する必要がある。そこで、本発明の実施の形態における冷凍サイクル装置Sにおいては、主に吸入過熱度を確保するために冷媒温度と空気温度との差が予め定められている閾値を下回ることのないように制御する。
【0044】
そこで上述したような制御を行うに当たって、冷媒温度として、室内熱交換器2や室外熱交換器4の中間部を流れる際の温度(二相冷媒温度)を用いる。すなわち、室内冷媒中間温度センサ23、或いは、室外冷媒中間温度センサ43において検出された二相冷媒温度を空気温度との比較に用いる。
【0045】
すなわち、冷凍サイクル装置Sの運転状態によっては、冷媒の過冷却度が確保されている場合、或いは、冷媒の吸入過熱度が確保されている場合がある。このような場合には、例えば、蒸発器において、冷媒の温度が顕熱変化により上昇するため、蒸発器を流れる冷媒の温度が急激に上昇する場合がある。
【0046】
このように冷媒温度が急激に上昇してしまった場合に、冷媒温度として、室内熱交換器2、或いは、室外熱交換器4を通過する冷媒の出口における温度(以下、適宜「冷媒出口温度」と表す)を用いると、冷媒温度と空気温度との温度差が縮まった、と判定される可能性がある。
【0047】
そしてこの判定に基づき後述するような圧縮機1や室内ファン24、室外ファン44の回転数が制御されると、冷媒の過冷却度、或いは、吸入過熱度が確保されている状態で過剰に制御を行うことになり、空調能力が過大になる可能性がある。そしてこのような制御は、ユーザの快適性や冷凍サイクル装置Sにおける省エネ性能の観点からは妥当な制御とは言えない。
【0048】
そこで冷媒温度としては、基本的に上述したような冷媒温度の顕熱変化が生じにくい室内冷媒中間温度センサ23、或いは、室外冷媒中間温度センサ43において検出される二相冷媒温度を利用し、当該二相冷媒温度と空気温度との差(以下、このような温度差を「第1の温度差」と表す)を用いる。
【0049】
このように基本的には二相冷媒温度が用いられるが、第1の室内冷媒温度センサ21、第2の室内冷媒温度センサ22、或いは、第1の室外冷媒温度センサ41、第2の室外冷媒温度センサ42において検出される冷媒温度(冷媒出口温度)を用いることができない、ということではない。すなわち、冷媒温度として冷媒出口温度を用い、当該冷媒出口温度と空気温度との温度差(以下、このような温度差を「第2の温度差」と表す)を用いることも可能である。
【0050】
但し、上述したように非共沸混合冷媒の温度勾配による顕熱変化に起因する冷媒出口温度の急激な上昇という現象が生じる可能性は残されていることから、このような現象の発生が疑われる場合には、上述した二相冷媒温度と空気温度との第1の温度差がどのような状態にあるかを確認し、最終的に第1の温度差が後述する第1の閾値以上の値となるように圧縮機1等の制御を行うことで、冷媒出口温度を用いた場合であっても冷凍サイクル装置Sを適切に制御することができる。
【0051】
なお、上述した冷媒出口温度を用いた場合の制御において、第1の温度差を見るための二相冷媒温度については、これまで室内冷媒中間温度センサ23、或いは、室外冷媒中間温度センサ43において検出していた。但し、二相冷媒温度の測定については、これら室内冷媒中間温度センサ23、或いは、室外冷媒中間温度センサ43以外の冷媒温度センサMを用いることもできる。
【0052】
すなわち、室内熱交換器2が蒸発器として機能する場合には、減圧装置3から流出した低圧の二相冷媒が室内熱交換器2に流入するため、第2の室内冷媒温度センサ22で測定される、非共沸混合冷媒が室内熱交換器2に流入する入口温度を二相冷媒温度として利用することができる。一方、室外熱交換器4が蒸発器として機能する場合には、減圧装置3から流出した低圧の二相冷媒が室外熱交換器4に流入するため、第1の室外冷媒温度センサ41で測定される、非共沸混合冷媒が室外熱交換器4に流入する入口温度を二相冷媒温度として利用することができる。
【0053】
次に冷媒温度との間で温度差を算出する際に用いられる空気温度について、図面を用いて説明する。空気温度は、室内熱交換器2の出口側の冷媒流路、或いは、室外熱交換器4の出口側の冷媒流路を通過する空気の温度である。但し、冷媒流路を流れる非共沸混合冷媒に対する向きによって、空気温度として把握される温度が異なる。
【0054】
すなわち、冷媒が空気の流れに対向する向きに流れる場合(以下便宜上「対向流」と表す。)、室内空気温度センサ25が検出する空気温度は、室内熱交換器2を通過する前の空気温度である。同様に、室外空気温度センサ45が検出する空気温度は、室外熱交換器4を通過する前の空気温度である。
【0055】
一方、冷媒の流れと空気の流れとが互いに同じ向きに流れる場合(以下便宜上「並行流」と表す。)、室内空気温度センサ25が検出する空気温度は、室内熱交換器2を通過した後の空気温度である。同様に、室外空気温度センサ45が検出する空気温度は、室外熱交換器4を通過した後の空気温度である。
【0056】
なお、上述した「対向流」、或いは、「並行流」という用語は、一般的に積層型マイクロチャンネル熱交換器等の水-冷媒熱交換器において水と冷媒が流れる方向に対して用いられる用語である。本発明の実施の形態における室内熱交換器2、及び、室外熱交換器4はいずれも冷媒-空気熱交換器であるが、冷媒と空気が流れる方向に対して便宜上「対向流」、或いは、「並行流」という用語を用いて説明している。
【0057】
図3は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sの蒸発器として機能する熱交換器(室内熱交換器2、室外熱交換器4)が対向流である場合を示す概念図である。図3に示す概念図において、縦軸は空気温度、或いは、冷媒温度を示している。一方、横軸は比エンタルピーを示している。また、比エンタルピーの変化に対する空気の温度の変化を破線の矢印で、冷媒の温度の変化を実線の矢印でそれぞれ示す。
【0058】
また、このように空気温度の変化や冷媒温度の変化は矢印で示している。図3に示す概念図では、空気温度を示す破線の矢印と冷媒温度を示す実線の矢印は逆向きに示されている。これは上述したように、図3では冷媒が空気の流れに対向する向きに流れる対向流の場合を示しているからである。
【0059】
なお、冷媒温度と空気温度との温度差を基に圧縮機等の制御を行う場合、室内熱交換器2における冷媒温度と空気温度との温度差を測定しても、或いは、室外熱交換器4における冷媒温度と空気温度との温度差を測定しても良い。以下の説明においては、室内熱交換器2を例に挙げて説明する。
【0060】
但し、過冷却度よりも主に吸入過熱度を確保したいという観点からすれば、室内熱交換器2、或いは、室外熱交換器4のいずれの冷媒温度と空気温度との差を用いるかについては、蒸発器の役割を果たす熱交換器の温度を利用することが好ましい。
【0061】
上述したように、室内熱交換器2において空気温度を検出するのは、室内空気温度センサ25である。一方、冷媒温度は、室内熱交換器2の中間部を流れる際の温度(二相冷媒温度)を用いることから、室内冷媒中間温度センサ23によって検出される。
【0062】
図3において破線の矢印で示されている空気温度を見てみると、室内熱交換器2の入口における温度、すなわち、室内熱交換器2を通過する前の空気温度(以下、適宜「空気吸込温度」と表す)は27℃である。この空気温度が室内熱交換器2を通過するうちに、24℃まで低下する。そしてこの24℃が室内熱交換器2を通過した後の空気温度(以下、適宜「空気吹出温度」と表す)に該当する。
【0063】
一方、冷媒温度については、室内熱交換器2の入口における温度が14℃であり、中間温度である二相冷媒温度は18℃である。そして、出口における温度が22℃である。つまり、室内熱交換器2を空気、或いは、冷媒が通過することによって、空気と冷媒との間で熱交換が行われ、空気温度は室内熱交換器2を通過することによって低下し、一方、冷媒温度は室内熱交換器2を通過することで上昇する。
【0064】
そして冷媒の流れと空気の流れとが対向流の状態にある場合には、空気温度として空気吸込温度が用いられる。従って、図3に即して言えば、温度差算出部63では、空気温度としては空気吸込温度である27℃と冷媒温度である二相冷媒温度の18℃との温度差を上述した第1の温度差として算出する。なお図3においては、当該第1の温度差を符号R1で示している。
【0065】
一方、図4は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sの蒸発器として機能する熱交換器(室内熱交換器2、室外熱交換器4)が並行流である場合を示す概念図である。概念図における縦軸、横軸の表示は図3と同じである。但し、冷媒の流れと空気の流れとがいずれも同じ向きに流れる並行流の場合である。そのため、空気温度を示す破線の矢印と冷媒温度を示す実線の矢印とは同じ向きに示されている。
【0066】
非共沸混合冷媒が空気の流れと同じ向きに流れる並行流の場合は、空気温度としては室内熱交換器2を通過した後の空気温度(空気吹出温度)が用いられる。図4に示す概念図では、当該空気吹出温度は24℃と示されていることから、温度差算出部63では、当該温度と二相冷媒温度を示す18℃との間の温度差を第1の温度差として算出する。従って、並行流における第1の温度差R1は、図4に示す通りである。
【0067】
判定部64は、温度差算出部63によって算出された冷媒温度と空気温度との温度差を基に、その温度差が適切な範囲に収まっているか否かを判定する。すなわち、上述したように、冷媒温度として二相冷媒温度が用いられる場合には、当該二相冷媒温度と空気温度との第1の温度差が閾値(以下、当該閾値を適宜「第1の閾値」と表す)以上の値であるか否か、判定部64が判定する。なお、図4では当該第1の閾値を太い矢印で第1の閾値t1として示している。
【0068】
一方、冷媒温度として冷媒出口温度が用いられる場合には、冷媒出口温度と空気温度との第2の温度差R2が閾値(以下、当該閾値を適宜「第2の閾値」と表す)より大きな値を示すか否か、判定部64が判定する。
【0069】
なお、第1の閾値と第2の閾値との大小関係については、第2の閾値は第1の閾値よりも小さな値に設定される。そして、これら第1の閾値、第2の閾値は、いずれも記憶部62に格納されている。
【0070】
これら、第1の閾値、及び、第2の閾値については、それぞれの値をどのようにするかについては任意に設定することができ、事前に記憶部62に記憶されている。また、後述するように、第1の閾値、または、第2の閾値を可変の値として取り扱い、第1の温度差、或いは、第2の温度差との比較を行ってもよい。
【0071】
なお具体的には、第1の閾値については、例えば、過冷却度、或いは、吸入過熱度を確保することができる温度差である。一方、第2の閾値は、冷媒出口温度を用いた第2の温度差との比較に用いられることから、例えば、過冷却度、或いは、吸入過熱度を確保することができる最低限の温度差である。
【0072】
温度差制御部65は、例えば、判定部64における判定結果に基づいて、圧縮機1の回転数を制御する。または、場合によって室内ファン24、或いは、室外ファン44の回転数も併せて制御する。
【0073】
具体的には、判定部64は、第1の温度差と第1の閾値とを比較して第1の温度差が第1の閾値以上の値であるか否かを判定し、第1の温度差が第1の閾値を下回ると判定すると、当該判定結果を温度差制御部65へ送る。
【0074】
そして温度差制御部65では、判定部64から受けた判定結果に基づいて、もし第1の温度差が第1の閾値を下回る場合には、当該第1の温度差が第1の閾値以上の値となるように圧縮機1等を制御する。
【0075】
温度差制御部65による圧縮機1等の制御について、図5図6を用いてさらに詳しく説明する。図5は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sにおける制御の方法について、蒸発器として機能する熱交換器(室内熱交換器2または室外熱交換器4)が並行流である場合を例に挙げて説明する概念図である。また図6は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sにおける別の制御の方法について、蒸発器として機能する熱交換器(室内熱交換器2または室外熱交換器4)が並行流である場合を例に挙げて説明する概念図である。
【0076】
ここで並行流について説明する際に用いた図4は、あくまでも第1の温度差R1が第1の閾値t1以上の値を有している、吸入過熱度が確保されている場合における冷媒温度及び空気温度の温度変化の一例を示したものである。これに対して、図5に示される概念図を見ると、空気温度と非共沸混合冷媒との温度差R11は、上述した第1の温度差R1よりも小さな値となっている。
【0077】
なお、図5において空気温度を示す矢印として2本の矢印が示されている。このうち破線の矢印は図4で示したように、冷媒温度との間で第1の温度差R1が第1の閾値t1以上の値を確保することができる状態を示す矢印である。
【0078】
一方、当該破線の矢印の下に示されている点線の矢印は、第1の温度差R1の場合よりも冷媒温度(二相冷媒温度)と空気温度(空気吹出温度)との第1の温度差R11が小さい値となり、第1の閾値t1を下回る状態、すなわち、吸入過熱度を確保することができていない状態を示している。
【0079】
第1の閾値の値については、上述したように過冷却度、或いは、吸入過熱度を確保することができる温度差としつつ、任意に設定することが可能である。但し、空気温度と冷媒温度との温度差が当該第1の閾値以上となるような温度差を有していないと、本発明の実施の形態における非共沸混合冷媒を用いる冷凍サイクル装置Sを搭載する空気調和機において、ユーザが望む運転能力を確保することが困難となる。そこで、このような場合には、上述したように、温度差制御部65が第1の温度差R1が第1の閾値以上の値となるように冷凍サイクル装置Sを制御する。
【0080】
図5の概念図は、空気温度の空気吹出温度を上昇させることで冷媒温度と空気温度との第1の温度差R1を確保しようとする制御を示している。すなわち、点線の矢印で示す22℃の空気温度(空気吹出温度)が破線の矢印で示す24℃の空気温度(空気吹出温度)となるように冷凍サイクル装置Sを制御する。この場合、温度差制御部65は、例えば、室内熱交換器2の室内ファン24の回転数を増加させる制御を行うことで空気吹出温度を上昇させる。
【0081】
その結果、図5における上向きの矢印に示すように、空気吹出温度を22℃から24℃へと上昇させることができ、第1の温度差R1を第1の閾値t1以上の値とすることができる。
【0082】
一方、図6に示す概念図では、図5の場合とは異なり、空気温度を上昇させることで冷媒温度との温度差を確保するのではなく、冷媒温度を下げることによって空気温度との温度差を確保する方法を説明している。
【0083】
すなわちこの場合、温度差制御部65は、圧縮機1を制御して圧縮機1の回転数を増加させる。このような制御を行うことによって、凝縮温度が上がり、蒸発温度が下がるため蒸発器において冷媒の温度を下げることができる。
【0084】
図6においては、細い実線で示す冷媒温度の場合、その第1の温度差R1は、図5でも示したように第1の温度差R11であり、第1の閾値t1を下回る値を示す。このような状態にある冷媒温度を、図6に示す下向きの矢印で示すような太い実線の位置まで冷媒温度を下げることによって、二相冷媒温度と空気温度との第1の温度差R1を確保する。
【0085】
なお、このように第1の温度差を確保する制御方法としては、上述した方法が挙げられるが、温度差制御部65は、圧縮機1と室内ファン24、或いは、室外ファン44の両者を制御する方法も考えることができる。図7は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sにおける圧縮機1、室内ファン24、室外ファン44の制御のパターンを示す説明図である。
【0086】
図7に示す説明図の列方向最左欄には、温度差制御部65によって制御の対象となる熱交換器の種類が示されており、上段に室内熱交換器2が、下段に室外熱交換器4が示されている。一方、行方向には「風量設定」が示されている。当該「風量設定」は、室内機において、ユーザが風量を設定しているか否かを示す項目である。
【0087】
すなわち「自動運転」とは、室内機においてユーザが風量に関しては空気調和機に任せて自動で運転制御するように設定していることを示している。一方、ユーザが「強」や「弱」といった、風量に関して何らかの設定を行っている場合を「ユーザ指定の風量」と表している。
【0088】
ここで室外熱交換器4においては、ユーザによる風量の設定による運転制御がされることはないので、温度差制御部65が室外熱交換器4に対して制御を行う際には、いずれも圧縮機1だけではなく、併せて室外ファン44の回転数を制御する方法も採用することができる。
【0089】
一方、上述したように室内機の場合、ユーザが風量を設定している場合があることから、ユーザが風量を指定している場合には、温度差制御部65は圧縮機1の回転数のみを制御し、室内ファン24の回転数の制御は行わない。これはユーザによって設定される風量の指示を優先させるためである。一方、室内機が風量について自動運転の状態にある場合には、温度差制御部65は、必要に応じて圧縮機1の回転数と室内ファン24の回転数の両者を制御する。
【0090】
図8は、本発明の他の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sにおける第1の閾値と圧縮機1の回転数との関係を示す説明図である。図8において、縦軸は第1の閾値を示し、横軸は圧縮機1の回転数を示している。
【0091】
これまで第1の温度差と比較の対象としてきた第1の閾値については、予め1つの値が設定されて記憶部62に格納されていることを前提に説明してきた。但し、この第1の閾値については、1つだけ設定されているのではなく、圧縮機1の回転数に応じて複数設定されていても良い。
【0092】
すなわち、判定部64は冷媒温度と空気温度との温度差である第1の温度差が第1の閾値以上の値であるか否かを判定するに当たって、圧縮機1の回転数が別途定められている閾値以上の回転数で運転されている場合には、第1の閾値の値として予め定められている値よりも小さな値を用いて判定する。
【0093】
圧縮機1の回転数が高い場合は、冷媒回路Cを循環する冷媒の循環量は多く流速も早い。そのため冷媒回路C内を循環する冷媒の圧力損失(圧損)も大きくなる。特に、冷媒がガス状態にある場合に圧損は大きくなる。圧損が大きな場合、圧損が小さい場合に比べて圧力が下がるため、例えば、蒸発器において、蒸発器入口における冷媒温度と蒸発器出口における冷媒温度との温度変化が小さくなる。
【0094】
従ってこのような場合は、冷媒温度と空気温度との温度差が確保しやすくなるとともに、非共沸混合冷媒による温度勾配による影響も小さくなる。そのため、冷媒温度と空気温度との第1の温度差と比較する第1の閾値を引き下げて、第1の閾値の値として予め定められている値よりも小さな値を用いてることとして、判定部64が第1の温度差との比較を行っても良いものと考えられる。
【0095】
図8では、3つの第1の閾値が設定されており、圧縮機1の回転数が大きくなるほど第1の閾値は低くなるように示されている。換言すれば、圧縮機1の回転数が高い場合には、より低い値で設定されている第1の閾値を用いて第1の温度差との比較を行うことができる、ということである。
【0096】
従ってこの場合は、判定部64では温度差算出部63において算出された第1の温度差に関する情報を取得するとともに、判定時における圧縮機1の回転数に関する情報も取得する。そして取得した圧縮機1の回転数を基に、記憶部62にアクセスして当該圧縮機1の回転数に対応して設定されている第1の閾値に関する情報を取得し、取得された当該第1の閾値をもって第1の温度差との比較、判定処理を実行する。
【0097】
これまで説明したように、第1の温度差を取得するために空気温度と比較される対象は、室内熱交換器2、或いは、室外熱交換器4の中間部における冷媒温度、すなわち、二相冷媒温度である。但し、当該二相冷媒温度ではなく、第1の室内冷媒温度センサ21や第2の室内冷媒温度センサ22、或いは、第1の室外冷媒温度センサ41や第2の室外冷媒温度センサ42によって測定される冷媒出口温度を用いて圧縮機1の制御を行うことも可能であることは上述した通りである。
【0098】
この場合には、第1の室内冷媒温度センサ21や第2の室内冷媒温度センサ22、或いは、第1の室外冷媒温度センサ41や第2の室外冷媒温度センサ42によって検出される冷媒出口温度と空気温度との温度差(第2の温度差)が第2の閾値以上の値を確保できるかを確認し、もし第2の温度差が第2の閾値を下回るような場合には、さらに第1の温度差と第1の閾値との関係によって温度差制御部65が圧縮機1等の回転数を制御する。
【0099】
すなわち上述したように、非共沸混合冷媒の温度勾配により顕熱変化が生ずると、非共沸混合冷媒の温度が急激に上昇する場合があり、この場合には、冷媒出口温度と空気温度との第2の温度差と第2の閾値との関係のみをもって圧縮機1等の制御を行うことは妥当ではない。
【0100】
そこで、第2の温度差が第2の閾値を下回る値であった場合には、判定部64は、改めて二相冷媒温度と空気温度との第1の温度差を確認し、当該第1の温度差が第1の閾値以上の値が確保されているか否かの判定を行う。
【0101】
もし第1の温度差が第1の閾値以上の値であると判定部64が判定した場合には、冷媒の過冷却度が確保されている、或いは、冷媒の吸入過熱度が適切な状態にある場合に該当すると考えられる。
【0102】
従ってこの場合には、圧縮機1等の回転数を上げるような制御を行う必要はないことから、温度差制御部65は、例えば、圧縮機1の回転数を上げるような指示は出さず、現状の運転制御を継続する。
【0103】
一方、判定部64によって第1の温度差が第1の閾値を下回ると判定された場合には、温度差制御部65は、第1の温度差が第1の閾値以上の値を確保することができるように圧縮機1等の回転数を上げる制御を行う。
【0104】
[動作]
次に、上述した冷媒温度及び空気温度を用いた圧縮機1等の制御の流れについて、まず図9を用いて二相冷媒温度を冷媒温度として用いる場合を説明する。図9は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sの制御の流れを示すフローチャートである。
【0105】
まず、室内熱交換器2、或いは、室外熱交換器4における二相冷媒温度、及び、空気温度の情報を取得する(ST1)。すなわち、制御装置6の温度検出部61は、室内冷媒中間温度センサ23、或いは、室外冷媒中間温度センサ43において検出された二相冷媒温度の情報を取得する。また、温度検出部61は、室内空気温度センサ25、或いは、室外空気温度センサ45から空気温度の情報を取得する。
【0106】
温度検出部61によって取得された二相冷媒温度の情報、及び、空気温度の情報は、温度差算出部63に送信され、両者が比較されて温度差(第1の温度差)が算出される(ST2)。算出された第1の温度差に関する情報は、判定部64へと送信される。
【0107】
判定部64では、温度差算出部63から送信された第1の温度差に関する情報を取得するとともに、記憶部62にアクセスして記憶部62から第1の閾値の情報を取得する。なお、この際、判定時における圧縮機1の回転数に関する情報を取得して、得られた圧縮機1の回転数に対応した第1の閾値を取得することとしても良い。
【0108】
判定部64によって、第1の温度差が第1の閾値以上の値であると判定された場合には(ST3のYES)、この状態は、要求能力に合った運転が行われており、ユーザに対する快適性も確保されていることから、引き続きこの状態での空気調和機の運転制御が行われる。
【0109】
一方、判定部64が第1の温度差が第1の閾値を下回ると判定した場合には(ST3のNO)、判定部64は当該判定結果を温度差制御部65に送信する。温度差制御部65では、判定部64からの判定結果を受けて、制御対象とする熱交換器の種類を把握する(ST4)。
【0110】
すなわち、温度差制御部65が第1の温度差が第1の閾値よりも大きな値を確保することができるように制御を行う対象を選択する(ST5)。もし制御の対象が室内熱交換器2である場合には(ST5のYES)、室内機に対して自動運転での制御が実行されているか否かを確認する(ST6)。
【0111】
室内機において自動運転がなされている場合には(ST6のYES)、温度差制御部65は、圧縮機1と室内ファン24の回転数を制御する(ST7)。一方、ユーザが風量を設定した状態で室内機が運転制御されている場合には(ST6のNO)、温度差制御部65は、圧縮機1の回転数を制御する(ST8)。
【0112】
制御対象が室外熱交換器4の場合には(ST5のNO)、ユーザが室内機の風量の設定を行っているか否かに拘わらず、温度差制御部65は、圧縮機1と室外ファン44の回転数を制御する(ST7)。以上が冷媒温度として二相冷媒温度を用いた場合の制御の流れである。
【0113】
次に、冷媒温度として冷媒出口温度を用いる場合の制御の流れについて図10を用いて説明する。図10は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sの別の制御の流れを示すフローチャートである。
【0114】
この場合、温度検出部61は、第1の室内冷媒温度センサ21、第2の室内冷媒温度センサ22、或いは、第1の室外冷媒温度センサ41、第2の室外冷媒温度センサ42において検出された冷媒出口温度に関する情報を取得する(ST21)。
【0115】
一方、空気温度については、室内空気温度センサ25から室内熱交換器2の出口側の冷媒流路を通過する温度であることは、これまで通りである。またこの際、温度検出部61では、室内冷媒中間温度センサ23から二相冷媒温度に関する情報も併せて取得し、記憶部62に格納しておく。
【0116】
温度差算出部63は、温度検出部61において取得された冷媒出口温度と空気温度とを用いて温度差(第2の温度差)を算出する(ST22)。算出された第2の温度差に関する情報は、判定部64へと送信される。
【0117】
判定部64では、温度差算出部63から送信された第2の温度差に関する情報を取得するとともに、記憶部62にアクセスして記憶部62から第2の閾値の情報を取得する。その上で、第2の温度差が第2の閾値以上の値を確保しているか否か判定する(ST23)。
【0118】
第2の温度差が第2の閾値以上の値を確保していると判定部64において判定された場合には(ST23のYES)、この状態は、要求能力に合った運転が行われており、ユーザに対する快適性も確保されていることから、引き続きこの状態での空気調和機の運転制御が行われる。
【0119】
一方、判定部64が第2の温度差が第2の閾値を下回ると判定した場合には(ST23のNO)、判定部64はさらに、二相冷媒温度に関する情報を記憶部62にアクセスして取得する(ST24)。そして判定部64は、取得した二相冷媒温度と空気温度との第1の温度差を算出する(ST25)。
【0120】
その上で判定部64は、第1の温度差が第1の閾値以上の値を確保しているか否かの判定を行う(ST26)。その結果、第1の温度差が第1の閾値以上の値である場合には(ST26のYES)、これまでの空気調和機の運転制御が継続される。
【0121】
一方、判定部64が第1の温度差が第1の閾値を下回ると判定した場合には(ST26のNO)、上述したステップST4ないしステップST8までの処理の流れが実行され、適宜圧縮機1と室内ファン24、或いは、室外ファン44の回転数の制御が実行される。
【0122】
以上説明したように、室内熱交換器、或いは、室外熱交換器における冷媒温度(二相冷媒温度)及び空気温度を基に圧縮機や室内ファン、室外ファンの回転数を制御することで冷媒温度と空気温度との温度差を適切に確保することによって、温度勾配の大きな非共沸混合冷媒を用いた場合であっても、要求能力に合った運転を行うことでユーザに対する快適性を確保するとともに、省エネ性能の向上を図ることができる冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法を提供することができる。
【0123】
また、冷媒温度として二相冷媒温度の他冷媒出口温度を用いることもできる。そして、冷媒出口温度を用いた第2の温度差が適切ではないと判定された場合であっても併せて二相冷媒温度を用いた第1の温度差を参照することによって、圧縮機等の回転数を適切に制御することができ、省エネ性能の向上を図ることができる。
【0124】
すなわち、適切な過冷却度や吸入過熱度が確保できない場合であっても、冷媒温度と空気温度との温度差が十分に確保されていれば、熱交換器の入口から出口までの全ての区間において冷媒と空気との間の熱交換が適切に行われているものと考えられる。そのため、過冷却度や吸入過熱度が確保するためにむりやり圧縮機の回転数を上げるような制御を行わずに済むことから、能力過多の状態を作出することを回避することができる。従って、要求能力に合った運転を行うことでユーザに対する快適性を確保するとともに、省エネ性能の向上を図ることができる。
【0125】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、本発明の一例を示したものである。実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化でき、また、上記実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
【0126】
例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよく、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0127】
なお、判定部64は、第1の温度差が第1の閾値以下である判定結果である場合に限って温度差制御部65に対して判定結果を送信しても良い。或いは、判定部64は判定結果が得られた場合には、全ての判定結果について温度差制御部65に送信し、温度差制御部65において判定結果が第1の温度差が第1の閾値以下である場合に、上述した制御を行うようにしても良い。
【0128】
なお、本発明の実施の形態において説明した技術については、以下のような構成を採用することもできる。
(1)圧縮機と、室内熱交換器と、減圧機構と、室外熱交換器が冷媒配管で順次接続され、非共沸混合冷媒が循環する冷媒回路を備える冷凍サイクル装置であって、
前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器を流れる前記非共沸混合冷媒の温度である冷媒温度を検出する冷媒温度センサと、
前記室内熱交換器の出口側の冷媒流路、或いは、前記室外熱交換器の出口側の冷媒流路を通過する空気の温度である空気温度を検出する空気温度センサと、
前記冷凍サイクル装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記冷媒温度センサから取得した冷媒温度と前記空気温度センサから取得した空気温度との温度差を第1の温度差として算出する温度差算出部と、
前記温度差算出部において算出された前記第1の温度差が予め定められている第1の閾値を下回る場合、前記第1の温度差が前記第1の閾値よりも大きな値となるように少なくとも前記圧縮機の回転数を制御する温度差制御部と、を備えていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
(2)前記非共沸混合冷媒が前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器から流出する際の出口温度を検出する冷媒出口温度センサを備え、
前記温度差算出部は、前記冷媒の温度の代わりに、前記冷媒出口温度を用いて前記空気温度との温度差を第2の温度差として算出し、前記第2の温度差が予め定めた第2の閾値を下回る場合、前記温度差制御部は、前記第1の温度差が前記第1の閾値よりも大きな値となるように前記圧縮機の回転数の制御を実行することを特徴とする上記(1)に記載の冷凍サイクル装置。
(3)前記冷媒と熱交換させる室内の空気を、前記室内熱交換器に送る室内ファンと、
前記冷媒と熱交換させる室外の空気を、前記室外熱交換器に送る室外ファンと、を備え、
前記温度差制御部は、前記第1の温度差が前記第1の閾値を下回る場合には、前記圧縮機の回転数の制御とともに、前記室内ファン、或いは、前記室外ファンの回転数を制御することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の冷凍サイクル装置。
(4)前記空気温度センサは、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器に設けられ、
前記室内熱交換器において、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れと同じ向きに流れる場合には、前記室内熱交換器を通過した後の空気温度を、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れに対向する向きに流れる場合には、前記室内熱交換器を通過する前の空気温度を、それぞれ前記空気温度として検出し、
前記室外熱交換器において、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れと同じ向きに流れる場合には、前記室外熱交換器を通過した後の空気温度を、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れに対向する向きに流れる場合には、前記室外熱交換器を通過する前の空気温度を、それぞれ前記空気温度として検出することを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の冷凍サイクル装置。
(5)前記冷媒温度センサは、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器に設けられ、
前記室内熱交換器が蒸発器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室内熱交換器に流入する入口温度を前記冷媒温度として検出し、
前記室外熱交換器が蒸発器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室外熱交換器に流入する入口温度を前記冷媒温度として検出することを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の冷凍サイクル装置。
(6)前記冷媒温度センサは、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器に設けられ、
前記室内熱交換器が凝縮器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室内熱交換器の中間部を流れる際の中間温度を前記冷媒温度として検出し、
前記室外熱交換器が凝縮器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室外熱交換器の中間部を流れる際の中間温度を前記冷媒温度として検出することを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の冷凍サイクル装置。
(7)前記第1の温度差と前記第1の閾値とを比較し前記第1の温度差が前記第1の閾値よりも大きな値であるか否かを判定する判定部を備え、
前記判定部は、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器が蒸発器として機能する場合であって、前記圧縮機の回転数が閾値以上である場合には、前記第1の閾値の値として予め定められている値よりも小さな値を用いて判定することを特徴とする上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の冷凍サイクル装置。
(8)圧縮機と、室内熱交換器と、減圧機構と、室外熱交換器が冷媒配管で順次接続され、非共沸混合冷媒が循環する冷媒回路を備える冷凍サイクル装置において、
冷媒温度センサを用いて前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器を流れる前記非共沸混合冷媒の温度である冷媒温度を検出するステップと、
空気温度センサを用いて前記室内熱交換器の出口側の冷媒流路、或いは、前記室外熱交換器の出口側の冷媒流路を通過する空気の温度である空気温度を検出するステップと、
温度差算出部が前記冷媒温度と前記空気温度との温度差を第1の温度差として算出するステップと、
温度差制御部が前記温度差算出部において算出された前記第1の温度差が予め定められている第1の閾値を下回る場合、前記第1の温度差を前記第1の閾値よりも大きな値となるように少なくとも前記圧縮機の回転数を制御するステップと、
を備えていることを特徴とする冷凍サイクル装置の制御方法。
(9)前記非共沸混合冷媒が前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器から流出する際の出口温度を検出する冷媒出口温度センサを備え、
前記温度差算出部による前記温度差を算出するステップでは、前記冷媒の温度の代わりに、前記冷媒出口温度を用いて前記空気温度との温度差を第2の温度差として算出し、前記第2の温度差が予め定めた第2の閾値を下回る場合、前記温度差制御部は、前記第1の温度差が前記第1の閾値よりも大きな値となるように前記圧縮機の回転数の制御を実行するステップを備えていることを特徴とする上記(8)に記載の冷凍サイクル装置の制御方法。
(10)前記冷凍サイクル装置は、前記冷媒と熱交換させる室内の空気を、前記室内熱交換器に送る室内ファンと、
前記冷媒と熱交換させる室外の空気を、前記室外熱交換器に送る室外ファンと、を備え、
前記温度差制御部が前記圧縮機の回転数を制御するステップにおいて、前記第1の温度差が前記第1の閾値を下回る場合には、前記圧縮機の回転数の制御とともに、併せて前記室内ファン、或いは、前記室外ファンの回転数を制御することを特徴とする上記(8)または(9)に記載の冷凍サイクル装置の制御方法。
(11)前記空気温度センサは、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器に設けられ、
前記室内熱交換器において、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れと同じ向きに流れる場合には、前記室内熱交換器を通過した後の空気温度を、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れに対向する向きに流れる場合には、前記室内熱交換器を通過する前の空気温度を、それぞれ前記空気温度として検出し、
前記室外熱交換器において、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れと同じ向きに流れる場合には、前記室外熱交換器を通過した後の空気温度を、前記非共沸混合冷媒が前記空気の流れに対向する向きに流れる場合には、前記室外熱交換器を通過する前の空気温度を、それぞれ前記空気温度として検出することを特徴とする上記(8)ないし(10)のいずれかに記載の冷凍サイクル装置の制御方法。
(12)前記冷媒温度センサは、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器に設けられ、
前記室内熱交換器が蒸発器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室内熱交換器に流入する入口温度を前記冷媒温度として検出し、
前記室外熱交換器が蒸発器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室外熱交換器に流入する入口温度を前記冷媒温度として検出することを特徴とする上記(8)ないし(11)のいずれかに記載の冷凍サイクル装置の制御方法。
(13)前記冷媒温度センサは、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器に設けられ、
前記室内熱交換器が凝縮器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室内熱交換器の中間部を流れる際の中間温度を前記冷媒温度として検出し、
前記室外熱交換器が凝縮器として機能する場合には、前記非共沸混合冷媒が前記室外熱交換器の中間部を流れる際の中間温度を前記冷媒温度として検出することを特徴とする上記(8)ないし(11)のいずれかに記載の冷凍サイクル装置の制御方法。
(14)温度差算出部が前記冷媒温度と前記空気温度との温度差を算出するステップの後に、判定部が前記第1の温度差と前記第1の閾値とを比較し前記第1の温度差が前記第1の閾値よりも大きな値であるか否かを判定するステップを備え、
前記判定部は、前記室内熱交換器、或いは、前記室外熱交換器が蒸発器として機能する場合であって、前記圧縮機の回転数が閾値以上である場合には、前記第1の閾値の値として予め定められている値よりも小さな値を用いて判定することを特徴とする上記(8)ないし(13)のいずれかに記載の冷凍サイクル装置の制御方法。
【符号の説明】
【0129】
1・・・圧縮機、2・・・室内熱交換器、21・・・第1の室内冷媒温度センサ、22・・・第2の室内冷媒温度センサ、23・・・室内冷媒中間温度センサ、24・・・室内ファン、25・・・室内空気温度センサ、3・・・減圧機構、4・・・室外熱交換器、41・・・第1の室外冷媒温度センサ、42・・・第2の室外冷媒温度センサ、43・・・室外冷媒中間温度センサ、44・・・室外ファン、45・・・室外空気温度センサ、5・・・四方弁、A・・・空気温度センサ、C・・・冷媒回路、M・・・冷媒温度センサ、S・・・冷凍サイクル装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10