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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115779
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ゲル組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/00 20060101AFI20240820BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20240820BHJP
   C08G 65/332 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C08L71/00 Z
C08L91/06
C08G65/332
A61K8/02
A61K8/92
A61K8/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021610
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】福守 知穂
(72)【発明者】
【氏名】豊島 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】村島 健司
【テーマコード(参考)】
4C083
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC421
4C083AC422
4C083BB13
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD22
4C083DD30
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE07
4J002AE03X
4J002AE053
4J002CH00W
4J002CH05W
4J002FD023
4J002GB00
4J002HA00
4J005AA21
4J005BD02
(57)【要約】
【課題】ゲル強度、高温安定性、表面平滑性、光沢性に優れたゲル組成物を提供する。
【解決手段】ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及び植物性ワックス(B)を含有する油性ゲル組成物であって、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)は、ポリグリセリンと構成脂肪酸がモノカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上、並びに、ポリカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上のエステルであり、前記ポリグリセリンに対する全構成脂肪酸のエステル化率が30~70%であり、前記ポリグリセリンに対するポリカルボン酸及びその誘導体のエステル化率が2~8%であることを特徴とするポリグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする油性ゲル組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及び
植物性ワックス(B)
を含有する油性ゲル組成物であって、
ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)は、
ポリグリセリンと
構成脂肪酸がモノカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上、並びに、ポリカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上のエステルであり、
前記ポリグリセリンに対する全構成脂肪酸のエステル化率が30~70%であり、
前記ポリグリセリンに対するポリカルボン酸及びその誘導体のエステル化率が2~8%であることを特徴とするポリグリセリン脂肪酸エステル
であることを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項2】
さらに液状油(C)を含有することを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の油性ゲル組成物を含有する油性固形化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、固形剤型の化粧料には、製剤を固化するためにワックスが配合される。近年、サステナブル志向の高まりから、これまで汎用されてきた石油・合成系のワックスの使用を避ける傾向にあり、代替として天然由来のワックスの需要が高まっている。天然由来のワックスは、汎用の石油・合成系のワックスとは異なり、比較的硬度が低く、融点も低いため、製剤の安定性に課題がある。また、これらを改善するためにワックスの配合を多くすると、ワックスの結晶が粗大となり、艶の低下や感触の悪化を招く。
【0003】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、界面活性剤、油ゲル化剤等として公知の成分であり、食品分野や化粧料分野において広く使用されている。特許文献1~4においては、このような油ゲル組成物の性能を向上させるために、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構造についての検討を行っている。そして、化粧料に使用した場合の感触が優れたゲルを得ることについての検討が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2700377号
【特許文献2】特許第3535197号
【特許文献3】特開2008-239550号公報
【特許文献4】特許第6977190号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、植物由来のワックスを配合しているにもかかわらず、充分な硬度を得ることができ、更に、艶や感触という点でも優れた性質を有するゲル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及び
植物性ワックス(B)
を含有する油性ゲル組成物であって、
ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)は、
ポリグリセリンと
構成脂肪酸がモノカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上、並びに、ポリカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上のエステルであり、
前記ポリグリセリンに対する全構成脂肪酸のエステル化率が30~70%であり、
前記ポリグリセリンに対するポリカルボン酸及びその誘導体のエステル化率が2~8%であることを特徴とするポリグリセリン脂肪酸エステル
であることを特徴とする油性ゲル組成物である。
【0007】
上記油性ゲル組成物は、さらに液状油(C)を含有することが好ましい。
本発明は、上述した油性ゲル組成物を含有する油性固形化粧料でもある。
【発明の効果】
【0008】
本発明のゲル組成物は、ゲル強度、高温安定性、表面平滑性、光沢性において優れた性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
(ポリグリセリン脂肪酸エステルの化学構造について)
そのようななかで、本発明の目的に好適に使用することができるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと構成脂肪酸がモノカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上、並びに、ポリカルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上のエステルである。
【0011】
上記モノカルボン酸は、特に限定されず、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リシノール酸、パルミトオレイン酸、イソオクチル酸(2-エチルヘキサン酸など)、イソノナン酸(3,5,5-トリメチルヘキサン酸など)、イソパルミチン酸、イソステアリン酸(2-ヘプチルウンデカン酸、エメリー社製の多メチル分枝タイプなど)、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等のモノカルボン酸等を挙げることができる。これらの2種以上を組み合わせたものであってもよい。
上記ポリカルボン酸は、コハク酸、クエン酸、アジピン酸、セバシン酸、エイコサン二酸、ドデカン二酸、1、10-デカメチレン二酸、1、12-ドデカメチレン二酸、1、15-ペンタデカメチレン二酸、1、28-オクタコサメチレン二酸、1、7-エチルオクタデカン二酸等のポリカルボン酸等を挙げることができる。これらの2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0012】
上記モノカルボン酸やポリカルボン酸は、誘導体であってもよい。誘導体としては、これらの酸無水物や酸ハロゲン化物等を挙げることができる。
【0013】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する全構成脂肪酸中のエステル化率が30~70%であることが好ましく、40~60%であることがより好ましい。全構成脂肪酸中のエステル化率が30~70%であれば、ゲル組成物に配合した際により優れた使用感を提供できる。エステル化率は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、ポリグリセリンに付加している脂肪酸のモル数(M)としたとき、
エステル化率(%)=(M/(n+2))×100
で算出される値である。ここで、平均重合度(n)は、末端基分析法による水酸基価から以下の式にて算出される。
分子量=74n+18
水酸基価=56110(n+2)/分子量
エステル化率が低すぎると、油性基剤との相溶性を失い、析出するという問題を生じるおそれがある。エステル化率が高すぎるものは、エステル化反応が進行しにくくなり、当該ポリグリセリン脂肪酸エステルを得ることが困難となる。
【0014】
ポリグリセリンの水酸基価は、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法、2013年度版」に準じて算出される。
なお、上記ポリグリセリンの水酸基価は、原料のポリグリセリンから算出しても良いし、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルをけん化分解して得られたポリグリセリンから算出しても良い。
【0015】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリカルボン酸として、エイコサン二酸等のジカルボン酸を使用する場合のジカルボン酸のエステル化率は、特に限定されるものではないが、エステル化率は2~8%であることが好ましく、3~7%であることがより好ましい。ジカルボン酸のエステル化率が2~8%の範囲であれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルの架橋反応が適切に制御でき、目的のポリグリセリン脂肪酸エステルを得ることができる。また、油剤に添加した際の分散性も良好となる。
【0016】
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステル(A)のポリグリセリンは特に限定されないが、その水酸基価は、820~970であることが好ましい。水酸基価が970以下の場合、ゲル強度、高温安定性、表面状態において特に良好な性能を示す。より優れた性能を提供できる点から、950であることが好ましく、870であることが最も好ましい。また、ポリグリセリンの製造方法としてグリセリンの脱水縮合反応での製造が好ましく、その製造方法の場合水酸基価が820以上となるため本発明におけるポリグリセリンの水酸基価の下限値は820であることが好ましい。
【0017】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルは、その製造方法を限定されるものではなく、公知の一般的な製造方法によって得ることができる。
【0018】
ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)は、ゲル組成物に対し、1~30質量%配合されることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましい。
【0019】
(植物性ワックス(B))
本発明に係る植物性ワックス(B)としては、特に限定はされないが、カルナウバロウ(融点:80~86℃ )、キャンデリラロウ(融点:68~72℃)、コメヌカロウ(融点70~83℃) 、ホホバロウ(融点:55℃)。そのほかに、水添ホホバ油(融点:68℃)、硬化ヒマシ油(融点:84℃)、水添パーム油(融点:65℃) 、硬化ヤシ油(融点:70℃)、トリステアリン、トリベヘニン、シア脂(融点:36~45℃)、マカデミアナッツ油ポリグリセリル-6エステルズベヘネート、(イソステアリン酸/ベヘン酸)(グリセリル/ポリグリセリル-6)エステルズ(融点:28~40℃)などが挙げられる。これらは、いずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。保形性及び保存安定性の観点から、成分(B)全体の融点が40~110℃であることが好ましく、60~110℃であることがより好ましい。
【0020】
植物性のワックスは、汎用の石油・合成系のワックスとは異なり、比較的硬度が低く、融点も低いため、製剤の安定性に課題があるとされてきた。また、これらを改善するためにワックスの配合を多くすると、ワックスの結晶が粗大となり、艶の低下や感触の悪化を招く。本発明においては、特定の構造を有するポリグリセリン脂肪酸エステルを併用することでこのような問題を改善するものである。
【0021】
本発明のゲル組成物は、上述したような植物性ワックス(B)を、ゲル組成物に対して、1~30質量%の割合で含有するものであることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましい。
【0022】
(その他の油性成分)
本発明のゲル組成物は、その他の油性成分を含有するものとすることができる。
具体的なものを以下に詳述する。
【0023】
例えば高級アルコール類としてセタノール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ホホバアルコール、キミルアルコール、バチルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ダイマージオール等が挙げられる。また、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、オリーブ油、ヒマシ油、アボカド油、ゴマ油、茶油、月見草油、小麦胚芽油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ククイナッツ油、ローズヒップ油、メドウフォーム油、パーシック油、ティートリー油、ハッカ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、アマニ油、綿実油、大豆油、落花生油、コメヌカ油、カカオ脂、シア脂、水素添加ヤシ油、水素添加ヒマシ油、ホホバ油、水素添加ホホバ油等の植物油脂類;牛脂、乳脂、馬脂、卵黄油、ミンク油、タートル油等の動物性油脂類;ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、リゾレシチン等のリン脂質類;水素添加大豆リン脂質、水素添加卵黄リン脂質等のリン脂質誘導体類;コレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、フィトステロール等のステロール類;酢酸コレステリル、ノナン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、硬質ラノリン脂肪酸コレステリル、長鎖分岐脂肪酸コレステリル、長鎖α-ヒドロキシ脂肪酸コレステリル等のステロールエステル類;オレイン酸エチル、アボカド油脂肪酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、セバチン酸ジエチル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジオクチル等の低級アルコール脂肪酸エステル類;ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、オクタン酸ヘキシルデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸オクチル、イソノナン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオデカン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、リシノレイン酸オクチルドデシル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、エルカ酸オクチルドデシル、イソステアリン酸硬化ヒマシ油等の高級アルコール脂肪酸エステル類;乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、モノイソステアリン酸水添ヒマシ油等のオキシ酸エステル類;トリオクタン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、水素添加ロジングリセリル(水素添加エステルガム)、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ジオレイン酸プロピレングリコール、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、水素添加ロジンペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、等の多価アルコール脂肪酸エステル類;ダイマージリノール酸ジイソプロピル、ダイマージリノール酸ジイソステアリル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノレイル水添ロジン縮合物、ダイマージリノール酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテル等のダイマー酸若しくはダイマージオールの誘導体;ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミド、パルミチン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド類等;低粘度ジメチルポリシロキサン、高粘度ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルシロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アミノプロピルジメチコン及びアモジメチコン等のアミノ変性ポリシロキサン、カチオン変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリグリセリン変性ポリシロキサン、糖変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類;パーフルオデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類等が挙げられる。
上記油性成分は、炭化水素油及びエステル油からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。
【0024】
(液状油(C))
上記その他の油性成分は、液状油であることが好ましい。使用される液状油としては常温で液状の油脂であれば特に限定されるものではなく、上述した「その他の油性成分」として記載したもののうち、常温(25℃)で液状のものを移用することができる。上記液状油(C)は、ゲル組成物中、40~98質量%の割合で含まれることが好ましく、60~96質量%であることがより好ましい。
【0025】
(ゲル組成物の用途)
本発明のゲル組成物はその用途を特に限定されるものではないが、化粧料において特に好適に使用することができる。化粧料としては特に限定されず、口紅、リップグロス、リップクリーム、ハンドクリーム、美容クリーム、ヘアークリーム等のクリーム、美容液、乳液、ローション、ファンデーション、コントロール、サンスクリーン(日焼け止め化粧料)、頬紅、下地化粧料、アイシャドウ、アイブロウ、マスカラ、シャンプー、リンス、コンディショナー、クレンジング、整髪料、美爪料、オイルバームなどを挙げることができる。特に、口紅、リップグロス等の口唇用化粧料やオイルバームなどの油性固形化粧料に好適に使用することができる。
【0026】
(その他の成分)
本発明のゲル組成物を化粧料として使用する場合、更に、化粧品分野において使用される一般的な原料を併用することもできる。
【0027】
本発明の化粧料には必要に応じて水及び通常配合される添加成分、例えば、アルコール類、保湿剤、高分子・増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤、キレート剤、pH調整剤・酸・アルカリ、紫外線吸収剤、美白剤、溶剤、角質剥離・溶解剤、鎮痒剤、消炎剤、制汗剤、清涼剤、還元剤・酸化剤、ビタミン類及びその誘導体類、糖類及びその誘導体類、有機酸類、香料等を配合することができる。本発明の化粧料は、上記油性成分を必須成分とする油性化粧料として特に好適に使用することができる。
【0028】
保湿剤としては、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、DPG、1,2-アルカンジオール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール等の多価アルコール類、ヒアルロン酸ナトリウム、クエン酸塩、尿素、乳酸菌培養液、酵母抽出液、卵殻膜タンパク、牛顎下腺ムチン、ヒポタウリン、ゴマリグナン配糖体、ベタイン、コンドロイチン硫酸、グルタチオン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、カルビトール、乳酸ナトリウム、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム、アルブミン、トリメチルグリシン;コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、コラーゲン分解ペプチド、エラスチン分解ペプチド、ケラチン分解ペプチド、コンキオリン分解ペプチド、シルク蛋白分解ペプチド、大豆蛋白分解ペプチド、小麦蛋白分解ペプチド、カゼイン分解ペプチド、アシル化ペプチド等の蛋白ペプチド類及びその誘導体;アルギニン、セリン、グリシン、スレオニン、グルタミン酸、システイン、メチオニン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸類;胎盤抽出液、エアラスチン、コラーゲン、アロエ抽出物、ハマメリス水、ヘチマ水、カモミラエキス、カンゾウエキス、コンフリーエキス等の動物・植物抽出成分、天然型セラミド(タイプ1、2、3、4、5、6)、ヒドロキシセラミド、疑似セラミド、スフィンゴ糖脂質等のセラミド類を例示することができる。
【0029】
高分子・増粘剤・ゲル化剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、クィーンスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、タラガム、タマリンド、ファーセレラン、カラヤガム、トロロアオイ、キャラガム、トラガントガム、ペクチン、アルギン酸及びその塩、マンナン、デンプン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸及びその塩、ザンサンガム、プルラン、ジェランガム、キチン、キトサン、寒天、コンドロイチン硫酸塩、カゼイン、ゼラチン、アルブミン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキメチルセルロース及びその塩、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化セルロース、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、ポリ酢酸ビニル部分けん化物、マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸エステル共重合体、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸及びその塩、アクリル酸・メタアクリル酸エステル共重合体、両性メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体、アクリル酸・ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体、アクリル酸・カチオン化メタアクリル酸エステル共重合体、アクリル酸・カチオン化メタアクリル酸アミド共重合体、塩化メタクリル酸コリンエステル重合体、カチオン化グアーガム、ニトロセルロース;12-ヒドロキシステアリン酸及びその塩、デキストリン脂肪酸エステル、無水ケイ酸、金属石鹸、有機変性粘土鉱物、ショ糖脂肪酸エステル、フラクトオリゴ糖脂肪酸エステル等を例示することができる。
【0030】
酸化防止剤としては、BHT、BHA、没食子酸プロピル、ビタミンE(トコフェロール)および/またはその誘導体、ビタミンC(アスコルビン酸)および/またはその誘導体、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等を例示することができる。防腐剤としては、フェノール類、フェノキシエタノール、ヒドロキシ安息香酸及びその塩類、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ハロゲン化ビスフェノール類、酸アミド類、四級アンモニウム塩類等を例示することができる。殺菌剤としては、トリクロロカルバニド、ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ハロカルバン、ヒノキチオール、フェノール、イソプロピルフェノール、感光素類等を例示することができる。キレート剤としては、エデト酸塩、フィチン酸、ホスホン酸類、シュウ酸ナトリウム、ポリアミノ酸類等を例示することができる。pH調整剤・酸・アルカリとしては、クエン酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、酢酸、塩酸、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アルギニン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、炭酸グアニジン等を例示することができる。
【0031】
溶剤類としては、エタノール、2-プロパノール等の低級アルコール類;アセトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテル、トルエン等を例示することができる。
【0032】
角質剥離・溶解剤としては、サリチル酸、イオウ、レゾルシン、硫化セレン、ピリドキシン等を例示することができる。鎮痒剤としては、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、カンファー等を例示することができる。消炎剤としては、グリチルリチン酸及びその誘導体、グアイアズレン、酢酸ヒドロコーチゾン、プレドニゾン等を例示することができる。制汗剤としては、クロルヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、酸化亜鉛、パラフェノールスルホン酸亜鉛等を例示することができる。清涼剤としては、メントール、サリチル酸メチル等を例示することができる。抗ヒスタミン剤としては、塩酸ジフェドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、グリチルレチン酸誘導体等を例示することができる。収れん剤としては、クエン酸、酒石酸、乳酸、硫酸アルミニウム・カリウム、タンニン酸等を例示することができる。刺激剤としては、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ、ニコチン酸ベンジル等を例示することができる。育毛用薬剤・血行促進剤としては、センブリエキス、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、カンタリスチンキ等の植物エキス・チンキ類;セファランチン、ビタミンE及びその誘導体、γ-オリザノール、ニコチン酸及びニコチン酸ベンジルエステル等の誘導体、アラントイン、感光素301、感光素401、ペンタデカン酸モノグリセリド、フラバノノール誘導体、ミノキシジル等を例示することができる。
【0033】
還元剤としては、チオグリコール酸、システイン、システアミン等を例示することができる。酸化剤としては、過酸化水素水、過硫酸アンモニウム、臭素酸ナトリウム等を例示することができる。
【0034】
α-ヒドロキシ酸類及びその誘導体類としては、乳酸、グリコール酸、フルーツ酸、ヒドロキシカプリン酸、長鎖α-ヒドロキシ脂肪酸、長鎖α-ヒドロキシ脂肪酸コレステリル等を例示することができる。
【0035】
ビタミン類及びその誘導体類としては、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンE、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類;ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム、ニコチン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、リノール酸トコフェロール、フェルラ酸トコフェロール等のビタミン誘導体類を例示することができる。
【0036】
糖類及びその誘導体類としては、シクロデキストリン、β-グルカン、キチン、キトサン、グルコース、トレハロース、ペクチン、アラビノガラクタン、デキストリン、デキストラン、メタクリル酸グルコシルエチル重合物若しくは共重合物等を例示することができる。有機酸類としては、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、アビエチン酸、酒石酸等を例示することができる。
【0037】
酵素類としては、塩化リゾチーム、パパイン、パンクレアチン、プロテアーゼ等を例示することができる。核酸類としては、アデノシン三リン酸二ナトリウム等を例示することができる。ホルモン類としては、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン等を例示することができる。
【実施例0038】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何らの限定を受けるものではない。
【0039】
[合成]
<ポリグリセリン脂肪酸エステルの合成例1>
水酸基価が840のポリグリセリン157.6g(0.140モル)とベヘン酸323.1g(0.950モル)とエイコサン二酸40.63g(0.119モル)を反応容器に入れ、0.25gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において250℃、3時間反応を行い、エステル化率が55%のポリグリセリン脂肪酸エステル500gを得た。
【0040】
<ポリグリセリン脂肪酸エステルの合成例2>
水酸基価が1830のグリセリン74.1g(0.805モル)とベヘン酸410.7g(1.208モル)とエイコサン二酸41.3g(0.121モル)を反応容器に入れ、0.25gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において250℃、3時間反応を行い、エステル化率が55%のポリグリセリン脂肪酸エステル500gを得た。
【0041】
<実施例1~4、比較例1~5>
表1に示す組成の油性ゲル組成物を以下の製造方法で調製した。
【0042】
合成例1~2のポリグリセリン脂肪酸エステルと植物性ワックスを油剤に対して総量として10%となるように添加し、全成分を均一溶解することで油性ゲル組成物を調製した。
【0043】
<油性ゲル組成物の評価>
得られた油性ゲル組成物について、その物性と表面状態を「ゲル強度」、「高温安定性」、「平滑性」、「光沢性」の4点で評価した。項目ごとに評価を行い、最終的にいずれの項目においても良好と判断されたものを優れた油性ゲル組成物と判断した。
【0044】
[ゲル強度]
得られた油性ゲル組成物について、レオメーター(RHEOTECH製)を用いて治具(φ10)で押し込んだ際の荷重[gf]を測定し、以下の基準により評価した。
(基準)
〇:150gf以上
×:150gf未満
【0045】
[高温安定性]
得られた油性ゲル組成物について、動的粘弾性装置(TA Instruments製)を用いて20℃から70℃まで昇温した際の貯蔵弾性率G‘を測定した。貯蔵弾性率のベースラインにおける接線と融解挙動を示す貯蔵弾性率が低下する範囲における接線の交点を融点とし、以下の基準により評価した。
(基準)
〇:融点が55℃以上
×:融点が55℃未満
【0046】
[平滑性]
得られた油性ゲル組成物について、超深度形状測定顕微鏡(KEYENCE製)を用いて油性ゲル組成物の表面の任意の範囲における凹凸の高さを測定し、以下の基準により評価した。
(基準)
〇:25μm未満
△:25μm以上100μm未満
×:100μm以上
【0047】
[光沢性]
得られた油性ゲル組成物について、光沢度計(日本電色工業製)で入射角60°における光沢度を測定し、以下の基準により評価した。
(基準)
〇:光沢度が50以上
△:光沢度が40以上50未満
×:光沢度が40未満
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1~4に示すように、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを配合した油性ゲル組成物は、ゲル強度、高温安定性、表面平滑性、光沢性がいずれも優れるものであった。一方で、比較例1~4に示すように、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを配合しない油性ゲル組成物は、良好な物性を示さなかった。また、比較例5に示すように、水酸基価の範囲を満たさない合成例2のエステルでは、良好な物性を示す油性ゲル組成物を得ることができなかった。
【0050】
以上の結果より、本発明のゲル組成物は、ゲル強度、高温安定性、表面平滑性、光沢性という性質において顕著に優れた効果を有するものであることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のゲル組成物は、化粧料分野等において好適に使用することができる。特に、油性化粧料において好適に使用することができる。