(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011579
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】浮体構造物及び浮体構造物の建造方法
(51)【国際特許分類】
B63B 75/00 20200101AFI20240118BHJP
【FI】
B63B75/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113680
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】502116922
【氏名又は名称】ジャパンマリンユナイテッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】浅野 隆
(72)【発明者】
【氏名】奥井 啓悦
(72)【発明者】
【氏名】神田 幸雄
(57)【要約】
【課題】水上で容易に建造することができる、浮体構造物及び浮体構造物の建造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る浮体構造物1の建造方法は、ドック内で建造した第一分割体21及び第二分割体22をドック外に曳航する曳航工程と、第一分割体21を第二分割体22よりも深く沈める沈降工程と、第一分割体21と第二分割体22とを交差させる交差工程と、第一分割体21を浮上させて第一分割体21と第二分割体22とを組み合わせて一体化する一体化工程と、第一分割体21と第二分割体22とを結合する結合工程と、を含んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割体を水上で結合するように構成された浮体構造物であって、
前記複数の分割体は、互いに交差するように配置され上下方向に組み合わせて結合される継手部を有する、
ことを特徴とする浮体構造物。
【請求項2】
前記複数の分割体は、前記継手部が喫水面より上方に配置されるように構成されている、請求項1に記載の浮体構造物。
【請求項3】
前記複数の分割体は、両端部にコラムを有する第一ビームを備えた第一分割体と、両端部にコラムを有する第二ビームを備えた第二分割体と、を含み、前記継手部は、前記第一ビーム及び第二ビームの中心部に配置されるように構成されている、請求項1に記載の浮体構造物。
【請求項4】
前記複数の分割体は、両端部にコラムを有する第一ビームを備えた第一分割体と、片方の端部にコラムを有する第二ビームを備えた第二分割体と、コラムを有しない第三ビームを備えた第三分割体と、を含み、前記継手部は各コラムの底部に配置されている、請求項1に記載の浮体構造物。
【請求項5】
前記複数の分割体は、交差するように互いに組み合わされる複数のビームと、該複数のビームの交差部又は両端部に配置される複数のコラムと、により構成されている請求項1に記載の浮体構造物。
【請求項6】
複数の分割体を水上で結合する浮体構造物の建造方法であって、
第一の分割体を第二の分割体よりも深く沈める沈降工程と、
第一の分割体と第二の分割体とを交差させる交差工程と、
第一の分割体を浮上させて第一の分割体と第二の分割体とを組み合わせて一体化する一体化工程と、
第一の分割体と第二の分割体とを結合する結合工程と、
を含むことを特徴とする浮体構造物の建造方法。
【請求項7】
前記一体化工程は、第一の分割体を浮上させる又は第二の分割体を沈降させることにより交差部分に荷重を生じさせることを含む、請求項6に記載の浮体構造物の建造方法。
【請求項8】
前記沈降工程、前記交差工程、前記一体化工程及び前記結合工程を繰り返して前記浮体構造物を完成させる、請求項6に記載の浮体構造物の建造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体構造物及び浮体構造物の建造方法に関し、特に、水上で建造可能な浮体構造物及び浮体構造物の建造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電等に使用される浮体構造物は、一般に、造船用のドック内や岸壁ヤード等の地上で建造される。また、ドックよりも多少大きな浮体構造物に関しては、ドック内にバージを搬入し、そのバージ上で建造されることもある。近年、ドックやバージを用いた建造方法では建造が困難な大型の浮体構造物の建造が検討され始めている。
【0003】
例えば、特許文献1には、浮体構造物を複数のブロック体に分割し、各ブロック体をドック内で建造した後、各ブロック体を浮上させてドック外に移動させ、複数のブロック体を接合して浮体構造物を完成させる浮体構造物の建造方法であって、前記ブロック体のうち少なくとも一つのブロック体は、浮上時に一方向に傾斜又は傾倒する程度に重心がずれた偏心ブロック体であり、該偏心ブロック体の建造時に、偏心方向と反対側の側面部に荷重を付加する付加重量体を接続するとともに、前記偏心ブロック体の偏心方向と略垂直方向の両側面部に浮力体を接続し、前記偏心ブロック体の浮上時に生ずる傾斜又は傾倒を抑制するようにバランスを保持し、複数の前記ブロック体を接合して前記浮体構造物を完成させた後、前記偏心ブロック体から前記付加重量体及び前記浮力体を除去する、ことを特徴とする浮体構造物の建造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたように、浮体構造物を複数のブロック体に分割して建造した場合であっても、ブロック体を水平方向で結合しようとした場合には波浪の影響を受けやすく結合することが難しいという問題がある。また、浮体構造物の建造現場はドック外であり波風が強くなる傾向にある。
【0006】
また、地上で浮体構造物を建造する場合にも、浮体構造物の大型化により、広大な建造スペースの確保、陸地から水上への搬送設備の大型化等の問題を生じる。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、水上で容易に建造することができる、浮体構造物及び浮体構造物の建造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、複数の分割体を水上で結合するように構成された浮体構造物であって、前記複数の分割体は、互いに交差するように配置され上下方向に組み合わせて結合される継手部を有する、ことを特徴とする浮体構造物が提供される。
【0009】
前記複数の分割体は、前記継手部が喫水面より上方に配置されるように構成されていてもよい。
【0010】
前記複数の分割体は、両端部にコラムを有する第一ビームを備えた第一分割体と、両端部にコラムを有する第二ビームを備えた第二分割体と、を含み、前記継手部は、前記第一ビーム及び第二ビームの中心部に配置されるように構成されていてもよい。
【0011】
前記複数の分割体は、両端部にコラムを有する第一ビームを備えた第一分割体と、片方の端部にコラムを有する第二ビームを備えた第二分割体と、コラムを有しない第三ビームを備えた第三分割体と、を含み、前記継手部は各コラムの底部に配置されていてもよい。
【0012】
前記複数の分割体は、交差するように互いに組み合わされる複数のビームと、該複数のビームの交差部又は両端部に配置される複数のコラムと、により構成されていてもよい。
【0013】
また、本発明によれば、複数の分割体を水上で結合する浮体構造物の建造方法であって、第一の分割体を第二の分割体よりも深く沈める沈降工程と、第一の分割体と第二の分割体とを交差させる交差工程と、第二の分割体を浮上させて第一の分割体と第二の分割体とを組み合わせて一体化する一体化工程と、第一の分割体と第二の分割体とを結合する結合工程と、を含むことを特徴とする浮体構造物の建造方法が提供される。
【0014】
前記一体化工程は、第一の分割体を浮上させる又は第二の分割体を沈降させることにより交差部分に荷重を生じさせることを含んでいてもよい。
【0015】
前記建造方法は、前記沈降工程、前記交差工程、前記一体化工程及び前記結合工程を繰り返して前記浮体構造物を完成させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明に係る浮体構造物によれば、互いに交差するように配置され上下方向に組み合わせて結合される継手部を有する複数の分割体により構成したことにより、一つの分割体を沈降させて交差させて浮上させるだけで複数の分割体を一体化することができ、ドック外で容易に建造することができる。
【0017】
上述した本発明に係る浮体構造物の建造方法によれば、第一の分割体を沈降させて第二の分割体と交差させて浮上させるだけで第一の分割体及び第二の分割体を一体化することができ、ドック外で容易に建造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一実施形態に係る浮体構造物を示す平面図であり、(A)は第一分割体、(B)は第二分割体、(C)は完成体、を示している。
【
図2】第一実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す側面図であり、(A)は第一分割体の曳航工程、(B)は第二分割体の曳航工程、(C)は沈降工程、(D)は一体化工程、を示している。
【
図3】第二実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す側面図であり、(A)は第一分割体の曳航工程、(B)は第二分割体の曳航工程、(C)は沈降工程、(D)は一体化工程、を示している。
【
図4】第三実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す側面図であり、(A)は第一分割体の曳航工程、(B)は第二分割体の曳航工程、(C)は沈降工程、(D)は一体化工程、を示している。
【
図5】第四実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す側面図であり、(A)は第一分割体の曳航工程、(B)は第二分割体の曳航工程、(C)は沈降工程、(D)は一体化工程、を示している。
【
図6】第五実施形態に係る浮体構造物を示す説明図であり、(A)は第一分割体、(B)は第二分割体、(C)は第三分割体、を示している。
【
図7】第五実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す説明図であり、(A)は第二分割体の沈降工程、(B)は第三分割体の沈降工程、(C)は完成状態、を示している。
【
図8】第六実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す平面図であり、(A)は初期状態、(B)は中間状態、(C)は完成状態、を示している。
【
図9】第七実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す平面図であり、(A)は初期状態、(B)は中間状態、(C)は完成状態、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について
図1(A)~
図9(C)を用いて説明する。ここで、
図1は、第一実施形態に係る浮体構造物を示す平面図であり、(A)は第一分割体、(B)は第二分割体、(C)は完成体、を示している。
図2は、第一実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す側面図であり、(A)は第一分割体の曳航工程、(B)は第二分割体の曳航工程、(C)は沈降工程、(D)は一体化工程、を示している。
【0020】
本発明の第一実施形態に係る浮体構造物1は、
図1(A)~
図2(D)に示したように、ドック内又は地上で建造した複数の分割体をドック外の水上で結合するように構成された浮体構造物であって、複数の分割体(第一分割体21及び第二分割体22)は、互いに交差するように配置され上下方向に組み合わせて結合される継手部を有している。
【0021】
浮体構造物1は、風力発電装置等の上部構造物を設置する土台となる浮体構造物である。浮体構造物1は、例えば、
図1(A)及び
図1(B)に示した、第一分割体21及び第二分割体22により構成される。近年、浮体構造物1の大型化に伴い、浮体構造物1の全体をドック内で建造することが困難になっている。
【0022】
そこで、本実施形態では、第一分割体21及び第二分割体22をドック内で建造し、第一分割体21及び第二分割体22をドッグ外に曳航し、ドッグ外で第一分割体21及び第二分割体22を結合し、浮体構造物1をドッグ外で完成させるようにしている。なお、第一分割体21及び第二分割体22は岸壁ヤード等に地上で建造するようにしてもよい。
【0023】
第一分割体21は、両端部にコラム21a,21aを有する第一ビーム21bを備えている。コラム21aは、例えば、円柱形状の本体部と角柱形状の底部とにより構成された浮体であり、所定の浮力を有している。また、コラム21aは、内部に海水を注排水して浮力を調整するバラスト調整装置を備えていてもよい。なお、コラム21aは、図示した構成に限定されるものではない。
【0024】
第一ビーム21bは、例えば、一対のコラム21aを連結する梁状の部材であり、所定の浮力を有している。また、第一ビーム21bは、内部に海水を注排水して浮力を調整するバラスト調整装置を備えていてもよい。また、第一ビーム21bは、コラム21aの底部に接続してもよいし、本体部に接続してもよい。なお、第一ビーム21bは、図示した構成に限定されるものではない。
【0025】
第二分割体22は、両端部にコラム22a,22aを有する第二ビーム22bを備えている。コラム22aは、例えば、円柱形状の本体部と角柱形状の底部とにより構成された浮体であり、所定の浮力を有している。また、コラム22aは、内部に海水を注排水して浮力を調整するバラスト調整装置を備えていてもよい。なお、コラム22aは、図示した構成に限定されるものではない。
【0026】
第二ビーム22bは、例えば、一対のコラム22aを連結する梁状の部材であり、所定の浮力を有している。また、第二ビーム22bは、内部に海水を注排水して浮力を調整するバラスト調整装置を備えていてもよい。また、第二ビーム22bは、コラム22aの底部に接続してもよいし、本体部に接続してもよい。なお、第二ビーム22bは、図示した構成に限定されるものではない。
【0027】
第二ビーム22bの中心部には、高さ及び横幅が拡張された拡張部22cが形成されていてもよい。拡張部22cを形成することにより、結合部の強度を向上させることができる。拡張部22cは、
図2(D)に示したように、浮体構造物1を浮かせた状態で上面が喫水面より高い位置となるように構成されている。なお、拡張部22cの形状や大きさは図示した構成に限定されるものではなく、上部構造物の種類や大きさ等により異なる。例えば、拡張部22cは、多角形状や円形状であってもよいし、場合によっては省略することもできる。
【0028】
風力発電装置等の上部構造物(図示せず)は、例えば、拡張部22cの上部に設置される。上部構造物は、第一分割体21のコラム21a又は第二分割22aの上部に設置してもよい。また、上部構造物は、拡張部22c及びコラム21a,22aの両方に設置するようにしてもよい。
【0029】
拡張部22cの下面には、第一ビーム21bと係合可能な溝部22dが形成されている。溝部22dは、
図1(C)及び
図2(B)に示したように、第一ビーム21bと係合する継手部を構成している。
【0030】
本実施形態では、第二分割体22にのみ溝部22dを配置しているが、第一分割体21の第一ビーム21bに第二分割体22の溝部22dと係合可能な凹部又は溝部により構成された継手部を配置してもよい。また、第一ビーム21bの溝部22dと係合させる部分には、位置決めするための目印や凹凸を付してもよい。また、溝部22d及び第一ビーム21bの対峙する面に互いに嵌合する位置決め用の凹凸を形成してもよい。
【0031】
本実施形態に係る浮体構造物1の建造方法は、ドック内で建造した第一分割体21及び第二分割体22をドック外に曳航する曳航工程と、第一分割体21を第二分割体22よりも深く沈める沈降工程と、第一分割体21と第二分割体22とを交差させる交差工程と、第一分割体21を浮上させて第一分割体21と第二分割体22とを組み合わせて一体化する一体化工程と、第一分割体21と第二分割体22とを結合する結合工程と、を含んでいる。
【0032】
曳航工程は、例えば、
図2(A)に示したように、ドック内で建造した第一分割体21を所定の海上まで曳航する工程と、
図2(B)に示したように、ドック内で建造した第二分割体22を所定の海上まで曳航する工程と、を含む。なお、曳航時は、図示した姿勢のまま曳航させなくてもよい。また、図示した姿勢を維持するために別体のフロート等の補助浮体を利用してもよい。
【0033】
沈降工程は、例えば、
図2(C)に示したように、第一分割体21を第二分割体22と交差可能な水深まで沈める工程である。第一分割体21の沈降量は、交差時に第一分割体21と第二分割体22とが干渉しないように互いの姿勢を考慮して設定される。第一分割体21の沈降時には、第一分割体21に配置されたバラスト調整装置を利用してもよいし、フロート等の別体の浮力調整手段を利用してもよい。
【0034】
交差工程は、例えば、
図2(C)に示したように、第二分割体22を曳航して第一分割体21の上に配置する工程である。このとき、第二分割体22の溝部22dの下に第一ビーム21bが位置するように配置される。
【0035】
一体化工程は、例えば、
図2(D)に示したように、沈めた第一分割体21を浮上させて第二分割体22の溝部22dに第一ビーム21bを嵌合させる工程である。一体化工程は、下側の第一分割体21を浮上させる又は上側の第二分割体22を沈降させることにより交差部分(溝部22d)に荷重を生じさせるようにしてもよい。このように、継手部分に荷重を生じさせることにより、第一分割体21と第二分割体22の揺れを同期させることができる。
【0036】
結合工程は、
図2(D)に示したように、第一分割体21と第二分割体22とを一体化した状態で溶接等により結合する工程である。上述したように、一体化工程で交差部分に荷重を生じさせることにより、揺れを低減して締結作業を容易に行うことができる。
【0037】
本実施形態に係る浮体構造物1は、
図1(C)に示したように、十字形状を有している。すなわち、複数の分割体(第一分割体21及び第二分割体22)は、互いの中心部で結合されるように構成されている。また、継手部は第一ビーム21b及び第二ビーム22bの中心部に配置されるように構成されている。なお、図示しないが、浮体構造物1は、三体以上の分割体を互いの中心部で結合してビームを放射状に配置した構成であってもよい。
【0038】
上述した本実施形態に係る浮体構造物1の建造方法によれば、第一分割体21を沈降させて第二分割体22と交差させて浮上させるだけで第一分割体21及び第二分割体22を一体化することができ、ドック外で容易に建造することができる。
【0039】
ここで、
図3は、第二実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す側面図であり、(A)は第一分割体の曳航工程、(B)は第二分割体の曳航工程、(C)は沈降工程、(D)は一体化工程、を示している。
図3(A)~
図3(D)に示した実施形態は、第一分割体21と第二分割体22とをボルトで結合するようにしたものである。なお、
図3(D)では、説明の便宜上、第二分割体22については拡張部22cの断面図を図示してある。
【0040】
図3(A)に示したように、第一分割体21は、第一ビーム21bの表面にボルト締結部21cを配置したものである。ボルト締結部21cは、例えば、ボルト締結用のフランジ部を備えている。ボルト締結部21cは、浮体構造物1の継手部を構成する。
【0041】
図3(B)に示したように、第二分割体22は、溝部22dの表面にボルト締結部22eを配置したものである。ボルト締結部22eは、例えば、ボルト締結用のフランジ部を備えている。溝部22d及びボルト締結部22eは、浮体構造物1の継手部を構成する。
【0042】
第一分割体21及び第二分割体22は、
図3(C)に示した交差工程及び
図3(D)に示した一体化工程を経た後、結合工程においてボルト締結部21c,22eがボルトにより締結される。上述したように、一体化工程で交差部分に荷重を生じさせることにより、揺れを低減して締結作業を容易に行うことができる。
【0043】
ここで、
図4は、第三実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す側面図であり、(A)は第一分割体の曳航工程、(B)は第二分割体の曳航工程、(C)は沈降工程、(D)は一体化工程、を示している。
図4(A)~
図4(D)に示した浮体構造物1は、第一分割体21及び第二分割体22の継手部を喫水面より上方に配置したものである。
【0044】
図4(A)に示したように、第一分割体21は両端にコラム21a,21aを備え、コラム21aの上部に第一ビーム21bが配置されている。また、
図4(B)に示したように、第二分割体22は両端にコラム22a,22aを備え、コラム22aの上部に第二ビーム22bが配置されている。第二ビーム22bの中心部には溝部22dを備えた拡張部22cが配置されている。なお、第一ビーム21bとコラム22aとの間及び第二ビーム22bとコラム22aとの間に補強材となる斜材を配置してもよい。
【0045】
図4(C)に示したように、拡張部22cを水上に露出した状態で第二分割体22を沈降させ、第二分割体22の上に第一分割体21を移動させる。その後、
図4(D)に示したように、第二分割体22を浮上させて第一分割体21と第二分割体22を一体化させる。このとき、第一分割体21と第二分割体22の継手部(交差部分)が喫水面より上方に位置することから、溶接等の結合作業を容易に行うことができる。
【0046】
ここで、
図5は、第四実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す側面図であり、(A)は第一分割体の曳航工程、(B)は第二分割体の曳航工程、(C)は沈降工程、(D)は一体化工程、を示している。
図5(A)~
図5(D)に示した浮体構造物1は、第一分割体21及び第二分割体22のビーム構造を変更したものである。
【0047】
図5(A)に示したように、第一分割体21の第一ビーム21bは、上方に凸な山型形状を有している。なお、第二分割体22と結合される部分は平坦に形成されていてもよい。第一ビーム21bの両端部は、それぞれコラム21aの下部に接続される。また、第一ビーム21bの頂部とコラム21aの上部との間に補強材21dを配置してもよい。
【0048】
図5(B)に示したように、第二分割体22の第二ビーム22bは、上方に凸な山型形状を有している。第二ビーム22bの両端部は、それぞれコラム22aの下部に接続される。また、第二ビーム22bの頂部とコラム22aの上部との間に補強材22fを配置してもよい。
【0049】
次に、浮体構造物1が環状構造を有する場合について説明する。ここで、
図6は、第五実施形態に係る浮体構造物を示す説明図であり、(A)は第一分割体、(B)は第二分割体、(C)は第三分割体、を示している。
図7は、第五実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す説明図であり、(A)は第二分割体の沈降工程、(B)は第三分割体の沈降工程、(C)は完成状態、を示している。
【0050】
第五実施形態に係る浮体構造物1は、
図7(C)に示したように、三角形の環状構造を含み、
図6(A)~
図6(C)に示した三体の分割体(第一分割体31、第二分割体32及び第三分割体33)により構成されたものである。なお、
図6(A)~
図6(C)の各図において、上段は平面図、下段は側面図を示している。
【0051】
図6(A)に示したように、第一分割体31は、両端部にコラム31a,31aを有する第一ビーム31bを備えている。コラム31aは、例えば、円柱形状の本体部と角柱形状の底部とにより構成された浮体であり、所定の浮力を有している。また、コラム31aは、内部に海水を注排水して浮力を調整するバラスト調整装置を備えていてもよい。なお、コラム31aは、図示した構成に限定されるものではない。
【0052】
第一ビーム31bは、例えば、一対のコラム31aを連結する梁状の部材であり、所定の浮力を有している。第一ビーム31bは、コラム31aの反対側に配置された延長部31cを備えていてもよい。また、第一ビーム31bは、内部に海水を注排水して浮力を調整するバラスト調整装置を備えていてもよい。また、第一ビーム31bは、コラム31aの底部に接続してもよいし、本体部の下部に接続してもよい。なお、第一ビーム31bは、図示した構成に限定されるものではない。
【0053】
また、コラム31aの底部には、第二分割体32と係合可能な溝部31d及び第三分割体33と係合可能な溝部31eが形成されている。第一分割体31は建造時に最上部に配置される分割体であるため、継手部を構成する溝部31d,31eは下向きに開放された形状を有している。
【0054】
図6(B)に示したように、第二分割体32は、片方の端部にコラム32aを有する第二ビーム32bを備えている。コラム32aは、例えば、円柱形状の本体部と角柱形状の底部とにより構成された浮体であり、所定の浮力を有している。また、コラム32aは、内部に海水を注排水して浮力を調整するバラスト調整装置を備えていてもよい。なお、コラム32aは、図示した構成に限定されるものではない。
【0055】
第二ビーム32bは、例えば、コラム32aを支持する梁状の部材であり、所定の浮力を有している。第二ビーム32bは、コラム32aの反対側に配置された延長部32cを備えていてもよい。また、第二ビーム32bは、内部に海水を注排水して浮力を調整するバラスト調整装置を備えていてもよい。また、第二ビーム32bは、コラム32aの底部に接続してもよいし、本体部に接続してもよい。なお、第二ビーム32bは、図示した構成に限定されるものではない。
【0056】
また、第二ビーム32bのコラム32aと反対側の端部には、第一分割体31と係合可能な溝部32dが形成されている。また、コラム32aの底部には、第三分割体33と係合可能な溝部32eが形成されている。第二分割体32は建造時に中間部に配置される分割体であるため、第一分割体31との継手部を構成する溝部32dは上向きに開放された形状を有し、第三分割体33との継手部を構成する溝部32eは下向きに開放された形状を有している。
【0057】
図6(C)に示したように、第三分割体33は、コラムを有しない第三ビーム33aを備えている。第三ビーム33aは、例えば、第一分割体31及び第二分割体32に結合される梁状の部材であり、所定の浮力を有している。第三ビーム33aは、
図7(C)に示したように、結合時にコラム31a,32aの反対側まで延在する長さに設定される。また、第三ビーム33aは、内部に海水を注排水して浮力を調整するバラスト調整装置を備えていてもよい。
【0058】
また、第三ビーム33aの両端部には、第一分割体31と係合可能な溝部33b及び第二分割体32と係合可能な溝部33cが形成されている。第三分割体33は建造時に最下部に配置される分割体であるため、継手部を構成する溝部33b,33cは上向きに開放された形状を有している。
【0059】
第五実施形態に係る浮体構造物1の建造方法は、ドック内で建造した第一分割体31及び第二分割体32をドック外に曳航する曳航工程と、第二分割体32を第一分割体31よりも深く沈める沈降工程と、第一分割体31と第二分割体32とを交差させる交差工程と、第二分割体32を浮上させて第一分割体31と第二分割体32とを組み合わせて一体化する一体化工程と、第一分割体31と第二分割体32とを結合する結合工程と、を含んでいる。
【0060】
上述した、曳航工程、沈降工程、交差工程、一体化工程及び結合工程は、基本的に第一実施形態に係る浮体構造物1の建造方法と同じ内容であるため、ここでは詳細な説明を省略する。本実施形態では、第一分割体31と第二分割体32とを結合した中間体34に対して、第三分割体33を結合する必要がある。
【0061】
そこで、本実施形態に係る浮体構造物1の建造方法は、第三分割体33を中間体34よりも深く沈める沈降工程と、第三分割体33と中間体34とを交差させる交差工程と、第三分割体33を浮上させて中間体34と第三分割体33とを組み合わせて一体化する一体化工程と、第三分割体33と中間体34とを結合する結合工程と、を含んでいる。
【0062】
このように、浮体構造物1を三体以上の分割体により構成した場合には、沈降工程、交差工程、一体化工程及び結合工程を繰り返して浮体構造物1を完成させるようにしてもよい。
【0063】
第五実施形態に係る浮体構造物1では、浮体構造物1が三角形の環状構造を含んでいることから三体の分割体に分割しているが、かかる構成に限定されるものではない。多角形状の環状構造を含む浮体構造物1では、辺ごとに分割体を構成することができる。また、複数の分割体が三体以上の場合に、複数の分割体は、
図7(C)に示した第五実施形態の浮体構造物1と同様に、互いの両端部近傍で結合されるように構成される。
【0064】
また、第一分割体31及び第二分割体32を予めドック内で結合した中間体34を建造しておき、ドック外で中間体と第三分割体33とを結合するようにしてもよい。このように、環状構造を含む浮体構造物1では、I字形状又はV字形状に分割体を分割することができる。
【0065】
ここで、
図8は、第六実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す平面図であり、(A)は初期状態、(B)は中間状態、(C)は完成状態、を示している。第六実施形態に係る浮体構造物1の建造方法は、複数の分割体を複数のビーム及び複数のコラムに分割して建造したものである。
【0066】
本実施形態における複数の分割体は、交差するように互いに組み合わされる第一ビーム41~第三ビーム43と、第一ビーム41及び第二ビーム42の交差部に配置される第一コラム51と、第一ビーム41及び第三ビーム43の交差部に配置される第二コラム52と、第二ビーム42及び第三ビーム43の交差部に配置される第三コラム53と、により構成されている。
【0067】
第一ビーム41は、例えば、第二ビーム42及び第三ビーム43に結合される梁状の部材であり、所定の浮力を有している。また、第一ビーム41は、内部に海水を注排水して浮力を調整するバラスト調整装置を備えていてもよい。
【0068】
また、第一ビーム41の両端部には、第二ビーム42と係合可能な溝部41a及び第三ビーム43と係合可能な溝部41bが形成されている。第一ビーム41はビームの結合時に最上部に配置される分割体であるため、継手部を構成する溝部41a,41bは下向きに開放された形状を有している。
【0069】
第二ビーム42は、例えば、第一ビーム41及び第三ビーム43に結合される梁状の部材であり、所定の浮力を有している。また、第二ビーム42は、内部に海水を注排水して浮力を調整するバラスト調整装置を備えていてもよい。
【0070】
また、第二ビーム42の両端部には、第一ビーム41と係合可能な溝部42a及び第三ビーム43と係合可能な溝部42bが形成されている。第二ビーム42はビームの結合時に中間部に配置される分割体であるため、第一ビーム41との継手部を構成する溝部42aは上向きに開放された形状を有し、第三ビーム43との継手部を構成する溝部42bは下向きに開放された形状を有している。
【0071】
第三ビーム43は、例えば、第一ビーム41及び第二ビーム42に結合される梁状の部材であり、所定の浮力を有している。また、第三ビーム43は、内部に海水を注排水して浮力を調整するバラスト調整装置を備えていてもよい。
【0072】
また、第三ビーム43の両端部には、第一ビーム41と係合可能な溝部43a及び第二ビーム42と係合可能な溝部43bが形成されている。第三ビーム43はビームの結合時に最下部に配置される分割体であるため、継手部を構成する溝部43a,43bは上向きに開放された形状を有している。
【0073】
これらの第一ビーム41~第三ビーム43は、上述した沈降工程、交差工程、一体化工程及び結合工程を繰り返して、
図8(B)に示したように、三角形の環状構造を含む中間体44が建造される。
【0074】
第一コラム51~第三コラム53は、例えば、円柱形状の本体部と角柱形状の底部とにより構成された浮体であり、所定の浮力を有している。また、第一コラム51~第三コラム53は、内部に海水を注排水して浮力を調整するバラスト調整装置を備えていてもよい。なお、第一コラム51~第三コラム53は、図示した構成に限定されるものではない。
【0075】
また、図示しないが、第一コラム51~第三コラム53の底面には、中間体44の各交差部と係合可能なX字形状の凹部が形成されている。なお、第一コラム51~第三コラム53と中間体44との結合構造は、かかる構成に限定されるものではない。
【0076】
また、第一コラム51~第三コラム53と中間体44との結合は、中間体44を第一コラム51~第三コラム53よりも深く沈め、第一コラム51~第三コラム53と中間体44と交差させ、中間体44を浮上させることにより一体化して結合することができる。第一コラム51~第三コラム53は、同じ沈降工程~結合工程で中間体44に結合してもよいし、順番に一つずつ沈降工程~結合工程を繰り返して中間体44に結合してもよい。
【0077】
第六実施形態に係る浮体構造物1では、浮体構造物1が三角形の環状構造を含んでいることから三体の分割体に分割しているが、かかる構成に限定されるものではない。多角形状の環状構造を含む浮体構造物1では、辺ごとに分割体を構成することができる。
【0078】
ここで、
図9は、第七実施形態に係る浮体構造物の建造方法を示す平面図であり、(A)は初期状態、(B)は中間状態、(C)は完成状態、を示している。第七実施形態に係る浮体構造物1の建造方法は、十字形状の浮体構造物1を複数のビーム及び複数のコラムに分割して建造したものである。
【0079】
本実施形態における複数の分割体は、交差するように互いに組み合わされる第一ビーム41及び第二ビーム42と、第一ビーム41及び第二ビーム42の両端部に配置される第一コラム51と、第一ビーム41の両端部に配置される一対の第一コラム51と、第二ビーム42の両端部に配置される一対の第二コラム52と、により構成されている。
【0080】
第一ビーム41の中央部には、第二ビーム42と係合可能な溝部41aが形成されている。第一ビーム41はビームの結合時に下側に配置される分割体であるため、継手部を構成する溝部41aは上向きに開放された形状を有している。
【0081】
第二ビーム42の中央部には、第一ビーム41と係合可能な溝部42aが形成されている。第二ビーム42はビームの結合時に上側に配置される分割体であるため、継手部を構成する溝部42aは下向きに開放された形状を有している。
【0082】
第一ビーム41及び第二ビーム42は、上述した沈降工程、交差工程、一体化工程及び結合工程により、
図9(B)に示したように、十字形状の中間体44が建造される。
【0083】
また、図示しないが、第一コラム51及び第二コラム52の底面には、中間体44の両端部と係合可能な溝部が形成されている。なお、第一コラム51及び第二コラム52と中間体44との結合構造は、かかる構成に限定されるものではない。第一コラム51及び第二コラム52を中間体44に結合する際には、バランスを考慮して第一ビーム41及び第二ビーム42の各先端を余らせた状態で結合するようにしてもよい。
【0084】
上述した第六実施形態及び第七実施形態に係る浮体構造物1のように、複数のビームと複数のコラムとに分割することにより、種々の形態の浮体構造物1に対応することができ、ドック外で大型の浮体構造物1を建造することができる。
【0085】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
1 浮体構造物
21 第一分割体
21a コラム
21b 第一ビーム
21c ボルト締結部
21d 補強材
22 第二分割体
22a コラム
22b 第二ビーム
22c 拡張部
22d 溝部
22e ボルト締結部
22f 補強材
31 第一分割体
31a コラム
31b 第一ビーム
31c 延長部
31d,31e 溝部
32 第二分割体
32a コラム
32b 第二ビーム
32c 延長部
32d,32e 溝部
33 第三分割体
33a 第三ビーム
33b,33c 溝部
34 中間体
41 第一ビーム
41a,41b 溝部
42 第二ビーム
42a,42b 溝部
43 第三ビーム
43a,43b 溝部
44 中間体
51 第一コラム
52 第二コラム
53 第三コラム