(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115792
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置
(51)【国際特許分類】
B21C 49/00 20060101AFI20240820BHJP
G01C 9/06 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B21C49/00 B
G01C9/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021633
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】田内 秀昌
【テーマコード(参考)】
4E026
【Fターム(参考)】
4E026HA03
(57)【要約】
【課題】画像を利用してキャリッジの水平姿勢制御を的確に行うことが可能な縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置を提供する。
【解決手段】ボトムフレーム3に配列される第1ロール4とチェーン7で昇降移動されるキャリッジ5に配列される第2ロール6とに交互に、帯状材2を掛け回すようにした縦型ルーパ1であって、チェーンによるキャリッジの吊り姿勢の調整が可能な電動ウインチ13と、キャリッジ上に載せられ、水Wが溜められた透明な水容器17と、キャリッジ上に設けられ、少なくとも水容器を含む画像を撮影する撮影装置18と、撮影装置で撮影された画像から、少なくとも水面を識別する画像処理部19と、画像処理部で識別された水面に基づいて、キャリッジが水平姿勢となるように、電動ウインチを動作させるコントローラとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトムフレームに配列される第1ロールと吊り材で昇降移動されるキャリッジに配列される第2ロールとに交互に、帯状材を掛け回すようにした縦型ルーパであって、
上記吊り材による上記キャリッジの吊り姿勢の調整が可能な調整装置と、
上記キャリッジ上に載せられ、液体が溜められた透明な液体容器と、
上記キャリッジ上に設けられ、少なくとも上記液体容器を含む画像を撮影する撮影装置と、
該撮影装置で撮影された上記画像から、少なくとも上記液体の液面を識別する画像処理部と、
該画像処理部で識別された上記液面に基づいて、上記キャリッジが水平姿勢となるように、上記調整装置を動作させるコントローラとを備えることを特徴とする縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置。
【請求項2】
前記液体容器の容器壁部は、前記キャリッジに対して垂直であり、
前記画像処理部は、前記撮影装置で撮影された前記画像から上記容器壁部を識別し、
前記コントローラは、上記画像処理部で識別された前記液面と上記容器壁部とが直角になるように、前記調整装置を動作させることを特徴とする請求項1に記載の縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置。
【請求項3】
前記撮影装置で撮影される前記液体容器の前記画像には、当該液体容器が載っている前記キャリッジが含まれ、
前記画像処理部は、上記撮影装置で撮影された上記画像から上記液体容器と上記キャリッジとの境界を識別し、
前記コントローラは、上記画像処理部で識別された前記液面と上記境界とが平行になるように、前記調整装置を動作させることを特徴とする請求項1に記載の縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置。
【請求項4】
前記撮影装置で撮影される前記液体容器の前記画像には、当該液体容器が載っている前記キャリッジが含まれ、
上記液体容器の容器壁部のうち、互いに間隔を隔てて相対向する一対の当該容器壁部が上記キャリッジに対して垂直であり、
前記画像処理部は、上記撮影装置で撮影された上記画像から、上記各容器壁部での上記キャリッジ上における前記液面の高さの違いを識別し、
前記コントローラは、上記画像処理部で識別された上記各容器壁部での上記液面の高さが等しくなるように、前記調整装置を動作させることを特徴とする請求項1に記載の縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置。
【請求項5】
前記液体容器は、互いに間隔を隔てる2つの液柱管部と、これら液柱管部を連通する通液部とから構成され、
前記撮影装置は、上記各液柱管部それぞれの画像を撮影するために2台設けられ、
上記画像には、上記液体容器が載っている前記キャリッジが含まれ、
前記画像処理部は、2台の上記撮影装置で撮影された上記画像から、上記キャリッジ上におけるこれら液柱管部の前記各液面の高さを識別し、
前記コントローラは、上記画像処理部で識別された上記各液柱管部の上記液面の高さが等しくなるように、前記調整装置を動作させることを特徴とする請求項1に記載の縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置。
【請求項6】
前記液体容器は、互いに間隔を隔てる2つの液柱管部と、これら液柱管部を連通する通液部とから構成され、
前記撮影装置は、2つの上記液柱管部の単一の画像を撮影し、
前記画像処理部は、上記撮影装置で撮影された上記画像から、前記キャリッジ上におけるこれら液柱管部の前記各液面の高さを識別し、
前記コントローラは、上記画像認識部で識別された上記各液柱管部の上記液面の高さが等しくなるように、前記調整装置を動作させることを特徴とする請求項1に記載の縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置。
【請求項7】
前記撮影装置は、水平状態の前記キャリッジ上の前記液体容器の画像を撮影し、
前記画像処理部は、上記撮影装置で撮影された水平状態での液面を識別し、記憶液面として記憶部に記憶し、
前記コントローラは、上記撮影装置で撮影され上記画像処理部で識別された前記液面が上記記憶液面に一致するように、前記調整装置を動作させることを特徴とする請求項1に記載の縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置。
【請求項8】
前記撮影装置は、水平状態の前記キャリッジ上の前記液体容器の画像を撮影し、
前記画像処理部は、上記キャリッジが水平状態のときに上記撮影装置で撮影された上記画像から、水平時液面を識別し、該キャリッジが非水平状態のときに該撮影装置で撮影された該画像から、非水平時液面を識別し、
前記コントローラは、上記非水平時液面が上記水平時液面になるように、前記調整装置を動作させることを特徴とする請求項1に記載の縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を利用してキャリッジの水平姿勢制御を的確に行うことが可能な縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属帯などの帯状材料を連続的に処理する装置において、加工ラインを停止させないための縦型ルーパの姿勢制御技術として特許文献1が知られている。特許文献1の「縦型ルーパー設備におけるキャリッジ水平度測定方法および鋼帯の蛇行修正方法」は、鋼帯連続焼鈍ライン等の鋼帯連続処理ラインに設置されている縦型ルーパー設備において、ルーパーキャリッジの水平度を精度良く測定することができるキャリッジ水平度測定方法およびそれを用いた鋼帯の蛇行修正方法を提供することを課題とし、ルーパーキャリッジの水平度(水平度異常量)を光学式距離計を用いて測定するとともに、鋼帯の寄り量(蛇行量)を測定し、その蛇行量が許容範囲を超えている場合には、ルーパーキャリッジの水平度を許容範囲内で変更して、鋼帯の蛇行量が許容範囲内に収まるようにしている。
【0003】
他方、距離計に代え得る手段として、画像を利用する技術として、特許文献2及び3が知られている。
【0004】
特許文献2の「水準器の感度測定方法およびその測定装置」は、所要の気泡を残し液体が封入されて成る気泡管を備えた水準器を装着する傾斜台と、前記傾斜台に装着された水準器が備えた気泡管目盛線および気泡の位置を読取り画像処理する機構と、前記水準器を装着する傾斜台を傾斜駆動する傾斜駆動機構と、前記気泡管の所定の目盛線に気泡の位置を一致させる制御機構と、前記傾斜台の傾斜角度を変えて装着されている気泡管の他の目盛線まで気泡が移動する時間を測定して傾斜角度の最適制御を行う制御・演算装置とを具備し、さらに、前記測定される水準器の雰囲気温度を任意に調節可能な温度調節機構を具備している。
【0005】
特許文献3の「非接触型電子水準器」は、光源、水平気泡管、感光部材及び画像処理ユニットを具え、水平気泡管の内部に気泡を有し、光源からの光線照射を受けることができる位置に配置し、感光部材は水平気泡管の中の気泡に対応して位置し、且つ水平気泡管とは一固定距離に位置し、光源に照射されたときの水平気泡管の気泡画像をキャプチャできるようにし、画像処理ユニットは感光部材と電気的に接続し、気泡画像の質量の中心と基準点とを比較することによって、気泡画像を電子水平信号に転換するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-223771号公報
【特許文献2】特開平5-264275号公報
【特許文献3】特開2005-233952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の光学式距離計は、キャリッジの昇降方向にレーザー光を照射し、昇降するキャリッジの四隅における反射光を受光することにより、キャリッジの傾きを検出するようにしている。
【0008】
特許文献1では、測定距離が長いため、調整が煩雑であると共に、吊り下げられて移動するキャリッジの位置を正確に測定することは難しかった。
【0009】
また、キャリッジの水平度を直接的に測定していないため、キャリッジの傾きを検出することが難しかった。
【0010】
このため、キャリッジの傾きを修正して水平状態を維持することが難しいという課題があった。
【0011】
特許文献2及び3の気泡の画像を用いる技術では、縦型ルーパーに適用した場合、操業中に、水準器の気泡が揺れ動き、姿勢制御に必要な気泡の位置の画像を精度良く取得することが難しいという課題があった。
【0012】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、画像を利用してキャリッジの水平姿勢制御を的確に行うことが可能な縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置は、ボトムフレームに配列される第1ロールと吊り材で昇降移動されるキャリッジに配列される第2ロールとに交互に、帯状材を掛け回すようにした縦型ルーパであって、上記吊り材による上記キャリッジの吊り姿勢の調整が可能な調整装置と、上記キャリッジ上に載せられ、液体が溜められた透明な液体容器と、上記キャリッジ上に設けられ、少なくとも上記液体容器を含む画像を撮影する撮影装置と、該撮影装置で撮影された上記画像から、少なくとも上記液体の液面を識別する画像処理部と、該画像処理部で識別された上記液面に基づいて、上記キャリッジが水平姿勢となるように、上記調整装置を動作させるコントローラとを備えることを特徴とする。
【0014】
前記液体容器の容器壁部は、前記キャリッジに対して垂直であり、前記画像処理部は、前記撮影装置で撮影された前記画像から上記容器壁部を識別し、前記コントローラは、上記画像処理部で識別された前記液面と上記容器壁部とが直角になるように、前記調整装置を動作させることを特徴とする。
【0015】
前記撮影装置で撮影される前記液体容器の前記画像には、当該液体容器が載っている前記キャリッジが含まれ、前記画像処理部は、上記撮影装置で撮影された上記画像から上記液体容器と上記キャリッジとの境界を識別し、前記コントローラは、上記画像処理部で識別された前記液面と上記境界とが平行になるように、前記調整装置を動作させることを特徴とする。
【0016】
前記撮影装置で撮影される前記液体容器の前記画像には、当該液体容器が載っている前記キャリッジが含まれ、上記液体容器の容器壁部のうち、互いに間隔を隔てて相対向する一対の当該容器壁部が上記キャリッジに対して垂直であり、前記画像処理部は、上記撮影装置で撮影された上記画像から、上記各容器壁部での上記キャリッジ上における前記液面の高さの違いを識別し、前記コントローラは、上記画像処理部で識別された上記各容器壁部での上記液面の高さが等しくなるように、前記調整装置を動作させることを特徴とする。
【0017】
前記液体容器は、互いに間隔を隔てる2つの液柱管部と、これら液柱管部を連通する通液部とから構成され、前記撮影装置は、上記各液柱管部それぞれの画像を撮影するために2台設けられ、上記画像には、上記液体容器が載っている前記キャリッジが含まれ、前記画像処理部は、2台の上記撮影装置で撮影された上記画像から、上記キャリッジ上におけるこれら液柱管部の前記各液面の高さを識別し、前記コントローラは、上記画像処理部で識別された上記各液柱管部の上記液面の高さが等しくなるように、前記調整装置を動作させることを特徴とする。
【0018】
前記液体容器は、互いに間隔を隔てる2つの液柱管部と、これら液柱管部を連通する通液部とから構成され、前記撮影装置は、2つの上記液柱管部の単一の画像を撮影し、前記画像処理部は、上記撮影装置で撮影された上記画像から、前記キャリッジ上におけるこれら液柱管部の前記各液面の高さを識別し、前記コントローラは、上記画像認識部で識別された上記各液柱管部の上記液面の高さが等しくなるように、前記調整装置を動作させることを特徴とする。
【0019】
前記撮影装置は、水平状態の前記キャリッジ上の前記液体容器の画像を撮影し、前記画像処理部は、上記撮影装置で撮影された水平状態での液面を識別し、記憶液面として記憶部に記憶し、前記コントローラは、上記撮影装置で撮影され上記画像処理部で識別された前記液面が上記記憶液面に一致するように、前記調整装置を動作させることを特徴とする。
【0020】
前記液体容器は、互いに間隔を隔てる2つの液柱管部と、これら液柱管部を連通する通液部とから構成され、前記撮影装置は、2つの上記液柱管部の単一の画像を撮影し、前記画像処理部は、前記キャリッジが水平状態のときに上記撮影装置で撮影された上記画像から、水平時液面を識別し、該キャリッジが非水平状態のときに該撮影装置で撮影された該画像から、非水平時液面を識別し、前記コントローラは、上記非水平時液面が上記水平時液面になるように、前記調整装置を動作させることを特徴とする。
【0021】
前記撮影装置は、水平状態の前記キャリッジ上の前記液体容器の画像を撮影し、前記画像処理部は、上記キャリッジが水平状態のときに上記撮影装置で撮影された上記画像から、水平時液面を識別し、該キャリッジが非水平状態のときに該撮影装置で撮影された該画像から、非水平時液面を識別し、前記コントローラは、上記非水平時液面が上記水平時液面になるように、前記調整装置を動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置にあっては、画像を利用してキャリッジの水平姿勢制御を的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置を備える縦型ルーパの一例を示す正面図である。
【
図2】
図1に示した縦型ルーパの天井部を示す平面図である。
【
図3】第1実施形態にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置を説明する説明図である。
【
図4】
図3に示した第1実施形態にかかる縦型ルーパの水平維持装置の作用を説明する説明図である。
【
図5】第1実施形態にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置の変形例の作用を説明する説明図である。
【
図6】第2実施形態にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置を説明する説明図である。
【
図7】
図6に示した第2実施形態にかかる縦型ルーパの水平維持装置の作用を説明する説明図である。
【
図8】第3実施形態にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置を説明する説明図である。
【
図9】
図8に示した第3実施形態にかかる縦型ルーパの水平維持装置の作用を説明する説明図である。
【
図10】第3実施形態にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置の変形例を説明する説明図である。
【
図11】第4実施形態にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置を説明する説明図である。
【
図12】第5実施形態にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置を説明する説明図である。
【
図13】
図12に示した第5実施形態にかかる縦型ルーパの水平維持装置のキャリッジ水平時の作用を説明する説明図である。
【
図14】
図13に示した第5実施形態にかかる縦型ルーパの水平維持装置のキャリッジ非水平時の作用を説明する説明図である。
【
図15】第5実施形態にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置の変形例であって、キャリッジ水平時の作用を説明する説明図である。
【
図16】
図15に示した変形例における、キャリッジ非水平時の作用を説明する説明図である。
【
図17】本発明にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置をキャリッジの長手方向傾き制御に用いる場合を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明にかかる縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
まず、本発明に係る縦型ルーパのキャリッジ水平維持装置が適用される縦型ルーパ1について、
図1及び
図2を用いて概説する。
【0026】
縦型ルーパ1は、金属ストリップなどの帯状材2の加工ラインの入側及び出側にそれぞれ設置される。
【0027】
縦型ルーパ1は従来周知のように、ボトムフレーム3上に回転自在に軸支されて、当該ボトムフレーム3に並べて配列される複数の下ロール4と、ボトムフレーム3上方のキャリッジ5下に回転自在に軸支されて、当該キャリッジ5に並べて配列される複数の上ロール6とを備える。
【0028】
帯状材2を下ロール4と上ロール6とに交互に、これらロール4,6の配列方向に向かって順次掛け回し、ボトムフレーム3に対しキャリッジ5を昇降移動させることで、上ロール6と下ロール4との間隔を調整して、これにより、帯状材2を蓄積しながら、加工ラインを停止させることなく、入側及び出側での帯状材2の送り速度の加減速や停止を可能にしており、キャリッジ5が水平に保たれることにより、帯状材2が蛇行したり、ロール4,6から脱落するという大きなトラブルを防いでいる。
【0029】
キャリッジ5及びボトムフレーム3はともに、平面視が細長な長方形状に形成される。キャリッジ5は、上面5aが平坦面で形成され、その四隅が吊り材である4本のチェーン7によって、4点で吊り下げられる。
【0030】
チェーン7は、縦型ルーパ1を構成する立体フレーム9の天井部10から降ろされる。立体フレーム9は、キャリッジ5及びボトムフレーム3を取り囲むようにして、天井部10の四隅近傍を、4本の支柱11で支えることで構成され、ボトムフレーム3が設置される機台12上に組み立てて設けられる。
【0031】
複数の上ロール6及び下ロール4は、キャリッジ5及びボトムフレーム3の長手方向に配列される。
【0032】
各上ロール6及び各下ロール4は、これらを軸支する軸がキャリッジ5及びボトムフレーム3の幅方向に沿って配置される。
【0033】
キャリッジ5を昇降移動させる昇降機構は、天井部10の中央側に設けられ、キャリッジ5を吊り下げるチェーン7を繰り出し巻き取りする4台の電動ウインチ13と、天井部10に設けられ、各チェーン7の繰り出し巻き取りを案内するガイドスプロケット14と、各電動ウインチ13を動作させる駆動制御を行うコントローラ15とから構成される。
【0034】
電動ウインチ13は、複数のチェーン7の繰り出し巻き取りの量を調整して、これによってチェーン7によるキャリッジ5の吊り姿勢の制御が可能な調整装置として機能する。コントローラ15の設置場所は、キャリッジ5上に限られることはない。
【0035】
吊り材は、ワイヤロープなどであってもよい。吊り材がワイヤロープの場合には、ガイドスプロケット14に代えて、プーリが用いられる。
【0036】
縦型ルーパ1では、上ロール6がキャリッジ5の長手方向に複数配列され、上ロール6を軸支する軸がキャリッジ5の幅方向に向けられている。従って、キャリッジ5が幅方向に傾くと、帯状材2の蛇行が発生する。
【0037】
キャリッジ5がその幅方向に傾かないように、当該キャリッジ5の水平姿勢を維持することが重要である。
【0038】
このため、キャリッジ5を水平姿勢に維持する構成として、コントローラ15に対し、キャリッジ5の傾きの検出結果を送出する傾き検出装置16が備えられる。
【0039】
昇降機構は、例えば、コントローラ15に制御されて各電動ウインチ13が各々正転することによりチェーン7が繰り出されてキャリッジ5が降下し、各電動ウインチ13が各々逆転することによりチェーン7が巻き取られてキャリッジ5が上昇する。
【0040】
傾き検出装置16は、上ロール6の軸が沿わされているキャリッジ5の幅方向の傾きを検出するように構成される。
【0041】
傾き検出装置16は、キャリッジ5の上に搭載され、液体が溜められた透明な液体容器17と、キャリッジ5の上に搭載され、少なくとも液体容器17を含む画像を撮影するための撮影装置18と、撮影装置18により撮影された画像から、少なくとも液体の液面を識別するための画像処理部19とを含む。なお、撮影装置18と画像処理部19とは、一体に構成されていても良い。
【0042】
そして、コントローラ15は、画像処理部19で識別された液面に基づいて、キャリッジ5が水平姿勢となるように、各電動ウインチ13を動作させる。
【0043】
以下の説明では、液体として水Wを、液体容器として水容器17を用い、液面が水面Sである場合について説明する。
【0044】
水Wは、取り扱いに便利で、水容器17のメンテナンス性に優れる。しかしながら、液体としては、水Wに限らず、油など、その他のどのような液体であってもよい。
【0045】
<第1実施形態>
第1実施形態の傾き検出装置16の水容器17と撮影装置18が、
図3に示されている。
図3(a)は、キャリッジ5を上から見た平面図、
図3(b)は、キャリッジ5を幅方向から見た側面図である。
【0046】
水容器17は、底部17eが閉塞され、四方の側面が透明なガラスやプラスチックなどの容器壁部17a~17dで囲われた直方体状に形成される。水容器17の上部は水が蒸発しないように、閉塞可能であることが好ましいが、開放されていてもよい。
【0047】
また、図示しないけれども、水面の高さを一定に保つように、水位をセンサで計測するようにしたり、水容器17に水補充用の配管を接続するようにしてもよい。
【0048】
容器壁部17a~17dは、キャリッジ5の上面5aに対し、垂直をなすように配置される。水容器17は、キャリッジ5のほぼ中央に設けられる。
【0049】
なお、「垂直」とは、厳密に90°でなくても、上述したように、帯状材2の蛇行やロール4,6からの脱落を防ぐことができる程度の誤差は許容される。
【0050】
水容器17は、キャリッジ5の長手方向に互いに対向する一対の容器壁部17a,17bが、キャリッジ5の幅方向に沿って平行に設けられる。
【0051】
撮影装置18は、水容器17に対して、キャリッジ5の長手方向一方の側から当該水容器17に向けられて設けられる。
【0052】
撮影装置18は、水容器17の全体及び水容器17内に溜められた水Wの水面Sの画像を撮影する。
【0053】
撮影された画像は、所定の周期で逐次画像処理部19(
図1及び
図2参照)に転送される。
【0054】
画像処理部19は、撮影装置18から転送された画像から、撮影装置18側の水容器17の容器壁部17aの位置における水面S、すなわち
図4に示すように、水Wとその上の空間との境界を示す線(船舶でいう喫水線:以下同じ)L1と、キャリッジ5の幅方向に向かい合う水容器17の容器壁部17c,17dとを画像処理により識別する。
【0055】
画像処理部19はさらに、水面Sを示す線L1と容器壁部17c,17dとがなす角度αを演算処理する。
【0056】
図4(a)に示すように、常に水平に保たれる水面S(線L1)と、キャリッジ5の上面5aに対し垂直である容器壁部17c,17dとがなす角度αが直角であれば、キャリッジ5は水平な状態にあることが検出される。
【0057】
図4(b)に示すように、当該角度αが直角でない場合には、キャリッジ5が水平な状態にないことが検出される。
【0058】
なお、「直角」とは、厳密に90°でなくても、上述したように、帯状材2の蛇行やロール4,6からの脱落を防ぐことができる程度の誤差は許容される。
【0059】
すなわち、画像処理部19は、撮影装置18で撮影された画像から、水面S及び容器壁部17c,17dを識別し、そして、コントローラ15は、画像処理部19で識別された水面Sと容器壁部17c,17dとが直角になるように、電動ウインチ13を動作させる。
【0060】
詳細には、検出結果は、コントローラ15に転送され、コントローラ15は、転送された検出結果に基づいて、4つの電動ウインチ13によるチェーン7の繰り出し量、または巻き取り量を、キャリッジ5の上昇中及び下降中に調整する。
【0061】
この際、キャリッジ5の長手方向に並ぶ2つの電動ウインチ13は、同期して作動される。
【0062】
撮影装置18から画像処理部19へ逐次画像が転送され、画像処理部19によりキャリッジ5の傾きが逐次検出され、コントローラ15が、検出された結果に基づいて逐次、各電動ウインチ13によるチェーン7の繰り出し量または巻き取り量を調整する。
【0063】
コントローラ15は、キャリッジ5の姿勢に対するフィードバック制御を実行する。もちろん、フィードフォーワード制御を実行するようにしてもよい。
【0064】
第1実施形態に係る傾き検出装置16を用いた縦型ルーパ1のキャリッジ水平維持装置によれば、キャリッジ5に搭載された水容器17内に溜められた水Wの水面Sを示す線L1は、常に水平であるため、撮影装置18で撮影された画像において当該水面S及び容器壁部17c,17dを識別することにより、水平に対するキャリッジ5の傾きを検出することができる。
【0065】
撮影装置18で撮影された画像において、キャリッジ5の上面5aに対し垂直な容器壁部17c,17dは、キャリッジ5が水平であれば、水面Sと直角となる。
【0066】
傾き検出装置16は、容器壁部17c,17dと水面Sとがなす角度αに基づいて、キャリッジ5の傾きを正確に検出することができる。
【0067】
コントローラ15は、正確に検出されたキャリッジ5の傾きに基づいて、キャリッジ5の姿勢が水平になるように4つの電動ウインチ13の作動を調整するので、確実にキャリッジ5を水平な状態に維持することができる。
【0068】
例えば、撮影装置18側から見て左側が低くなるようにキャリッジ5が傾いている場合、コントローラ15は、キャリッジ5の上昇時であれば、左側の電動ウインチ13の巻き取り速度を右側の電動ウインチ13の巻き取り速度より大きくするなどする。
【0069】
他方、キャリッジ5の下降時であれば、左側の電動ウインチ13の繰り出し速度を右側の電動ウインチ13の繰り出し速度より小さくするなどする。
【0070】
これらの電動ウインチ13に対する制御が、コントローラ15によって実行される。
【0071】
図5には、第1実施形態の変形例が示されている。第1実施形態では、水容器17の容器壁部17aにおける水面S(水Wと上方の空間との境界を示す線L1)と、キャリッジ5の幅方向に向かい合う水容器17の容器壁部17c,17dとを画像処理によって識別し、角度αを演算処理する場合について説明した。
【0072】
この変形例では、容器壁部17c,17dに代えて、水容器17と当該水容器17が載せられているキャリッジ5との境界を利用するようにしたものである。
【0073】
このため、この変形例では、撮影装置18で撮影される水容器17の画像には、当該水容器17が載っているキャリッジ5の上面5aが含まれる。
【0074】
画像処理部19は、撮影装置18で撮影された画像から、水面S(線L1)及び水容器17とキャリッジ5の上面5aとの境界となる線B1を画像処理により識別する。
【0075】
画像処理部19はさらに、水面Sを示す線L1と境界を示す線B1との平行度を演算処理する。
【0076】
コントローラ15は、画像処理部19で識別された線L1(水面S)と線B1(水容器17とキャリッジ5の上面5aとの境界)とが平行になるように、電動ウインチ13を動作させる。
【0077】
この変形例に係る傾き検出装置16を用いた縦型ルーパ1のキャリッジ水平維持装置によれば、キャリッジ5に搭載された水容器17内に溜められた水Wの水面Sを示す線L1は、常に水平であるため、撮影装置18で撮影された画像において当該水面S(L1)及び上記境界(B1)を識別することにより、水平に対するキャリッジ5の傾きを検出することができる。
【0078】
撮影装置18で撮影された画像において、キャリッジ5の上面5aと水容器17との境界(B1)は、キャリッジ5が水平であれば、
図5(a)に示したように、常に水平面をなす水面Sと平行になる。キャリッジ5が水平でない場合には、
図5(b)に示したように、水面Sに対して、境界(B1)は傾くことになる。
【0079】
傾き検出装置16は、境界(B1)と水面S(L1)との平行度に基づいて、キャリッジ5の傾きを正確に検出することができる。
【0080】
コントローラ15は、正確に検出されたキャリッジ5の傾きに基づいて、キャリッジ5の姿勢が水平になるように4つの電動ウインチ13の作動を調整するので、確実にキャリッジ5を水平な状態に維持することができる。
【0081】
このようにして第1実施形態では、画像を利用してキャリッジ5の水平姿勢制御を的確に行うことができる。
【0082】
<第2実施形態>
第2実施形態の傾き検出装置16は
図6に示すように、水容器17がキャリッジ5の上に設けられ、2台の撮影装置18が、キャリッジ5の幅方向両側から水容器17に向けて設けられる。
【0083】
図6(a)は、キャリッジ5を上から見た平面図、
図6(b)は、キャリッジ5を長手方向から見た側面図である。
【0084】
これら撮影装置18はそれぞれ、水容器17を含む画像を撮影する。撮影装置18で撮影される水容器17の画像には、当該水容器17が載っているキャリッジ5の上面5aが含まれる。
【0085】
水容器17は、容器壁部17a~17dのうち、少なくとも互いに間隔を隔てて相対向する一対の容器壁部、具体的にはキャリッジ5の幅方向で向かい合う、すなわち撮影装置18で撮影される一対の容器壁部17c,17dがキャリッジ5の上面5aと垂直をなすように配置される。
【0086】
各撮影装置18は、キャリッジ5の幅方向両側から、キャリッジ5の上面5aを含むように水容器17を撮影した画像を所定の周期で逐次画像処理部19に転送する。
【0087】
画像処理部19は、転送された画像から、各容器壁部17c,17dでのキャリッジ5上における水面Sの高さH1,H2の違いを識別する。
【0088】
具体的には、水容器17の容器壁部17c,17dにおける水面Sを示す線L1と、水容器17とキャリッジ5の上面5aとの境界となる線B1とから、容器壁部17c,17dそれぞれにおけるキャリッジ5上における水面Sの高さの違いH1,H2、詳細にはどちらの高さH1,H2が高く、どちらの高さH1,H2が低いかを識別する。
【0089】
図7(a)に示すように、キャリッジ5が水平な状態にある場合には、キャリッジ5の上面5aから、容器壁部17c,17dにおける水面Sを示す線L1までの高さH1,H2が等しくなる。
【0090】
他方、キャリッジ5が水平な状態にない場合には、
図7(b)に示すように、キャリッジ5の上面5aから、容器壁部17c,17dにおける水面Sを示す線L1までの高さH1,H2に差が生じるので、これにより、撮影した画像からキャリッジ5の傾きが検出される。
【0091】
コントローラ15は、画像処理部19で識別された各容器壁部17c,17dでの水面Sの高さが等しくなるように、電動ウインチ13を動作させる。
【0092】
具体的には、コントローラ15は、検出したキャリッジ5の傾きに基づいて逐次、キャリッジ5の姿勢が水平になるように、図示例によれば、水面Sの高さが高い方の容器壁部17c側を上昇し、水面Sの高さが低い方の容器壁部17d側を下降するように、4つの電動ウインチ13の作動を調整するので、確実にキャリッジ5を水平な状態に維持することができる。
【0093】
第2実施形態であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0094】
<第3実施形態>
第3実施形態の傾き検出装置16は、
図8に示されている。
図8(a)は、キャリッジ5を上から見た平面図、
図8(b)は、キャリッジ5を長手方向から見た側面図である。
【0095】
第3実施形態では、水容器17は、キャリッジ5の幅方向に互いに間隔を隔てて配置された2本の液柱管部20a(以下、水柱管部という)と、これら2本の水柱管部20aの下端部同士を接続して設けられ、水柱管部20a同士を連通する通液部20b(以下、通水部という)とから構成される。
【0096】
水柱管部20aは、第1及び第2実施形態の水容器17と同様に、四方の側面が透明なガラスやプラスチックなどの容器壁部で囲われて角筒状に形成される。
【0097】
水柱管部20aは、キャリッジ5の上面5aに対し、垂直をなすように配置される。水容器17は、通水部20bがキャリッジ5の幅方向と平行をなすようにする。
【0098】
撮影装置18は、各水柱管部20aそれぞれを、水容器17が載っているキャリッジ5の上面5aを含めて撮影するために、各水柱管部20aに向けて2台設置されている。各水柱管部20aの高さを認識できれば、撮影装置18の配置は制限されない。
【0099】
各撮影装置18は、キャリッジ5の上面5aを含むようにして各水柱管部20aを撮影した画像を、所定の周期で逐次画像処理部19に転送する。
【0100】
画像処理部19は、2台の撮影装置18で撮影された各画像から、キャリッジ5上におけるこれら2本の水柱管部20aそれぞれの水面Sの高さH3,H4をそれぞれ識別する。
【0101】
すなわち、画像処理部19は、第2実施形態と同様に、転送された画像から、各水柱管部20aにおいて水面Sを示す線L1と、水容器17とキャリッジ5の上面5aとの境界となる線B1を識別する。
【0102】
キャリッジ5が水平な状態である場合には、各水柱管部20aで、キャリッジ5の上面5aから水面Sを示す線L1までの高さH3,H4が等しい。
【0103】
他方、キャリッジ5が水平な状態でない場合には、
図9に示すように、各水柱管部20aで、キャリッジ5の上面5aから水面Sを示す線L1までの高さH3,H4に差が生じるため、キャリッジ5の傾きが検出される。
【0104】
コントローラ15は、画像処理部19で識別された各水柱管部20aの水面Sの高さH3,H4が等しくなるように、電動ウインチ13を動作させる。
【0105】
具体的には、コントローラ15は、検出したキャリッジ5の傾きに基づいて逐次、キャリッジ5の姿勢が水平になるように、第2実施形態の場合と同様に、4つの電動ウインチ13の作動を調整するので、確実にキャリッジ5を水平な状態に維持することができる。
【0106】
第3実施形態であっても、第1及び第2実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0107】
図10には、第3実施形態の変形例が示されている。第3実施形態では、水容器17の2本の水柱管部20aを、2台の撮影装置18でそれぞれ撮影する場合について説明した。
【0108】
この変形例では、2本の水柱管部20aを単一の画像に撮影する広角撮影用の撮影装置18が用いられる。
【0109】
撮影装置18は、水容器17に対して、キャリッジ5の幅方向ほぼ中央であって、かつキャリッジ5の長手方向一方の側から当該水容器17に向けて設けられる。
【0110】
撮影装置18は、キャリッジ5の上面5aを含めて、2本の水柱管部20a両方を撮影した単一の画像を所定の周期で逐次画像処理部19に転送する。
【0111】
画像処理部19は、転送された画像から、各水柱管部20aにおける水面Sを示す線L1と、水容器17とキャリッジ5の上面5aとの境界となる線B1を識別し、キャリッジ5の傾きを検出する。
【0112】
コントローラ15は、画像処理部19で検出されたキャリッジ5の傾きに基づいて逐次、キャリッジ5の姿勢が水平になるように4つの電動ウインチ13の作動を調整するので、確実にキャリッジ5を水平な状態に維持することができる。
【0113】
このような変形例であっても、第3実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0114】
<第4実施形態>
第4実施形態の傾き検出装置16は、
図11に示されていて、第3実施形態と同じ水容器17が、同じ配置で設けられる。
【0115】
図11(a)は、キャリッジ5を長手方向から見た側面図、
図11(b)は、キャリッジ5を上から見た平面図である。
【0116】
撮影装置18は、キャリッジ5の幅方向両側から各水柱管部20aに向けて2台設けられる。
【0117】
各撮影装置18は、各水柱管部20aを撮影した画像を所定の周期で逐次画像処理部19に転送する。第4実施形態では、水容器17の画像には、キャリッジ5は含まれない。
【0118】
画像処理部19は、転送された画像から、各水柱管部20aにおける水面Sを示す線L1を識別する。
【0119】
特に、第4実施形態では、キャリッジ5を、予め水準器などを用いて水平な静止状態にした後で、撮影装置18は、キャリッジ5の上面5a上の水容器17のみの画像を撮影し、画像処理部19は、撮影装置18で撮影された水平状態での水面S(L1)を識別し、画像に現れている水面Sの上下方向の位置(キャリッジ5の上面5aからの高さではない)を記憶水面として記憶部19a(
図2参照)に記憶する。
【0120】
コントローラ15は、撮影装置18で撮影され画像処理部19で識別される水面Sが記憶水面に一致するように、電動ウインチ13を動作させる。
【0121】
すなわち、画像処理部19には記憶部19aが備えられ、記憶部19aには、キャリッジ5が水平な状態において、各撮影装置18で撮影された各水柱管部20aの画像から識別された水面Sの上下方向の位置情報が予め記憶されている。
【0122】
画像処理部19は、縦型ルーパ1の稼働中、撮影装置18から所定の周期で逐次転送された画像から、各水柱管部20aの水面Sを示す線L1を識別し、記憶部19aに記憶されている記憶水面の位置情報と照合して、これにより、キャリッジ5の傾きを検出する。
【0123】
コントローラ15は、画像処理部19で検出されたキャリッジ5の傾きに基づいて逐次、キャリッジ5の姿勢が水平になるように4つの電動ウインチ13の作動を調整するので、確実にキャリッジ5を水平な状態に維持することができる。
【0124】
第1実施形態から第3実施形態は、水容器17のキャリッジ上面5aへの取付精度・設置精度が傾きの検出精度に影響を及ぼすが、第4実施形態では、キャリッジ5を、予め水準器などを用いて水平な静止状態にした後で、キャリッジ5に載っている水容器17を撮影装置18で撮影した画像から、画像処理部19によって識別された記憶水面を記憶部19aに記憶するようにしている。
【0125】
このため、第4実施形態では、水容器17のキャリッジ上面5aへの取付精度・設置精度が傾きの検出精度に影響することがなく、精度良く傾きを検出することができる。
【0126】
第4実施形態であっても、第1~第3実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0127】
<第5実施形態>
第5実施形態の傾き検出装置16は、
図12に示されていて、第4実施形態と同じ水容器17が、同じ配置で設けられる。
【0128】
図13及び
図14に示すように、撮影装置18は、2本の水柱管部20aの単一の画像を撮影するために、これら2本の水柱管部20aの配列方向の一方に位置させて設けられる。
【0129】
図13は、キャリッジ5が水平であるときを示す図であって、
図13(a)は、キャリッジ5を長手方向から見た側面図、
図13(b)は、水容器17を、キャリッジ5の幅方向から見た側面図である。
【0130】
図14は、キャリッジ5が水平ではないときを示す図であって、
図14(a)は、キャリッジ5を長手方向から見た側面図、
図14(b)は、水容器17を、キャリッジ5の幅方向から見た側面図である。
【0131】
図示例では、撮影装置18は、キャリッジ5の幅方向で、水容器17の一方側に配置され、2本の水柱管部20aが重なって見えるように配置される。
【0132】
キャリッジ5が水平な状態では、
図13に示すように、2本の水柱管部20aの水面S1,S2を示す線L1,L2が重なって1本の線となる画像が撮影装置18によって撮影される。
【0133】
他方、キャリッジ5が水平な状態にない場合には、
図14に示すように、各水柱管部20aの水面S1,S2を示す線L1,L2が2本となる画像が撮影装置18によって撮影される。
【0134】
これらの画像が画像処理部19で識別されることによって、キャリッジ5の傾きが検出される。
【0135】
具体的には、画像処理部19は、キャリッジ5が水平状態のときに撮影装置18で撮影された画像から、水面S1,S2が重なっている水平時水面を識別し、キャリッジ5が非水平状態のときには、撮影装置18で撮影された画像から、2本の水面S1,S2が現れる非水平時水面を識別する。
【0136】
コントローラ15は、水面S1,S2の位置がずれている非水平時水面が、水面S1,S2の位置が一致する水平時水面になるように、すなわちキャリッジ5の姿勢が水平になるように逐次、4つの電動ウインチ13の作動を調整するので、確実にキャリッジ5を水平な状態に維持することができる。
【0137】
第5実施形態では、静止している水平状態のキャリッジ5で水柱管部20aの水面S1,S2が一致する画像が得られるように傾き検出装置16をセッティングしておくことで、第4実施形態と同様に、水容器17のキャリッジ上面5aへの取付精度・設置精度が傾きの検出精度に影響することがなく、精度良く傾きを検出することができる。
【0138】
第5実施形態であっても、第1~第4実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0139】
図15及び
図16には、第5実施形態の変形例が示されている。第5実施形態では、2本の水柱管部20aをキャリッジ5の幅方向に配置した水容器17を撮影装置18で撮影する場合について説明した。この変形例は、上記第1実施形態で説明した直方体状の水容器17を撮影装置18で撮影する場合である。
【0140】
図15は、キャリッジ5が水平であるときを示す図であって、
図15(a)は、キャリッジ5を長手方向から見た側面図、
図15(b)は、水容器17を、キャリッジ5の幅方向から見た側面図である。
【0141】
図16は、キャリッジ5が水平ではないときを示す図であって、
図16(a)は、キャリッジ5を長手方向から見た側面図、
図16(b)は、水容器17を、キャリッジ5の幅方向から見た側面図である。
【0142】
撮影装置18は、キャリッジ5の幅方向から水容器17を撮影するように配置される。
【0143】
キャリッジ5が水平な状態では、
図15に示すように、水容器17内の水Wの水面Sを示す線(喫水線)L1,L2は、重なって1本の線となる画像が撮影装置18によって撮影される。
【0144】
他方、キャリッジ5が水平な状態にない場合には、
図16に示すように、撮影装置18に近い側の容器壁部17aと、遠方の容器壁部17bとに、水面Sを示す線L1,L2が2本となる画像が撮影装置18によって撮影される。
【0145】
これらの画像が画像処理部19で識別されることによって、上記第5実施形態と同様に、キャリッジ5の傾きを検出し、そして、コントローラ15が、キャリッジ5の姿勢が水平になるように(水面を示す線L1,L2が重なるように)逐次、4つの電動ウインチ13の作動を調整することによって、確実にキャリッジ5を水平な状態に維持することができる。
【0146】
このような変形例であっても、第5実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0147】
上記実施形態においては、いずれも帯状材2の蛇行に影響しやすいキャリッジ5の幅方向の傾きを検出する例について説明したが、例えば、
図17に示すように、第1実施形態の水容器17及び撮影装置18の配置を、キャリッジ5上において90度回転させることで、キャリッジ5の長手方向の傾きを検出することができる。
【0148】
キャリッジ5の長手方向の傾きを制御する場合には、キャリッジ5の幅方向に並んでいる2つの電動ウインチ13を同期して作動させる。
【0149】
キャリッジ5の幅方向の傾きと長手方向の傾きの両方を同時に制御することもできる。この場合、4つの電動ウインチ13は個別に作動制御すればよい。
【0150】
上記実施形態で説明した傾き検出装置に用いる撮影装置18及び画像処理部19、並びに電動ウインチ13を制御するコントローラ15は、撮影装置18で帯状材2のエッジを撮影し、画像処理部19に当該エッジを識別させることで、帯状材2の位置を監視することができ、ずれが生じたらコントローラ15で電動ウインチ13を動作させてキャリッジ5の姿勢を自動調整することができて、帯状材2の蛇行修正にも用いることができる。
【0151】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0152】
1 縦型ルーパ
2 帯状材
3 ボトムフレーム
4 下ロール
5 キャリッジ
5a キャリッジの上面
6 上ロール
7 チェーン
9 立体フレーム
10 天井部
11 支柱
12 機台
13 電動ウインチ
14 ガイドスプロケット
15 コントローラ
16 傾き検出装置
17 水容器
17a~17d 容器壁部
17e 底部
18 撮影装置
19 画像処理部
19a 記憶部
20a 水柱管部
20b 通水部
B1 水容器とキャリッジの上面との境界となる線
H1~H4 水面の高さ
L1,L2 水面を示す線
α 角度
S 水面
W 水