(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011580
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】塔状構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04H 12/00 20060101AFI20240118BHJP
E04B 1/35 20060101ALI20240118BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
E04H12/00 Z
E04B1/35 G
E04G21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113683
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 久之
(72)【発明者】
【氏名】塚田 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】濱本 順也
(72)【発明者】
【氏名】久田 英貴
(72)【発明者】
【氏名】森田 一義
(72)【発明者】
【氏名】福田 智之
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA05
2E174CA03
2E174CA14
2E174DA02
2E174DA24
(57)【要約】
【課題】小さな作業ヤードで塔状構造物を構築することができる塔状構造物の構築方法を提供する。
【解決手段】塔状構造物の一例である風力発電機10を構築する際に、移動式クレーン20を用いて風力発電機10の下側部分を構築する工程と、移動式クレーン20をせり上げ装置30でせり上げる工程と、せり上げられた移動式クレーン20を用いて風力発電機10の上側部分を構築する工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式クレーンを用いた塔状構造物の構築方法であって、
せり上げ装置で前記移動式クレーンをせり上げる工程と、
前記せり上げられた移動式クレーンで揚重作業を行う工程と、を備える
塔状構造物の構築方法。
【請求項2】
前記せり上げ装置は、前記移動式クレーンを支持する支持脚を有するとともに前記支持脚の下に新たな脚材を挿入することで前記支持脚を伸張可能に構成されている
請求項1に記載の塔状構造物の構築方法。
【請求項3】
前記せり上げ装置は、前記支持脚を複数有し、
前記支持脚は、前記移動式クレーンのアウトリガーの各々に対応するように設けられている
請求項2に記載の塔状構造物の構築方法。
【請求項4】
前記せり上げ装置は、前記支持脚を複数有し、
前記複数の支持脚を互いに連結する工程をさらに備える
請求項2または3に記載の塔状構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電機などの塔状構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電量の向上および安定化を図るべく風力発電機の大型化が進んでいる。こうした大型の風力発電機を構築する際には、より高い位置まで部材を揚重する必要があるため、大型の移動式クレーンが用いられることが好ましい。しかしながら、道路条件によっては、構築現場まで大型の移動式クレーンが自走できるとも限らない。これに関連して、特許文献1には、比較的小型の移動式クレーンを用いて大型の風量発電機を構築する方法として、風力発電機の基礎の周囲に設置した3以上のガイドタワーを利用した方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、風力発電機の周囲にガイドタワーを設置しなければならないため、大きな作業ヤードが必要とされる。なお、こうした問題は、風力発電機に限らず、例えば煙突などの塔状構造物を構築する場合に共通する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する塔状構造物の構築方法は、移動式クレーンを用いた塔状構造物の構築方法であって、せり上げ装置で前記移動式クレーンをせり上げる工程と、前記せり上げられた移動式クレーンで揚重作業を行う工程と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、小さな作業ヤードで塔状構造物を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】塔状構造物の構築方法の一実施形態を移動式クレーンの側面方向から見たときの概略構成を示す図である。
【
図2】塔状構造物の構築方法の一実施形態を移動式クレーンの正面方向から見たときの概略構成を示す図である。
【
図4】(a)新設の脚材が設置台に配置された状態を示す図であり、(b)支持脚を構成する脚材が持ち上げられた状態を示す図であり、(c)脚材設置スペースに新設の脚材が配置された状態を示す図であり、(d)新設の脚材が支持脚に組み込まれた状態を示す図である。
【
図5】支持脚が連結部材で連結された状態を移動式クレーンの側面方向から見たときの図である。
【
図6】移動式クレーンにカウンターウエイト装置が設けられた状態を移動式クレーンの側面方向から見たときの図である。
【
図7】移動式クレーンが架台を介して支持された状態を移動式クレーンの側面方向から見たときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1~
図7を参照して、塔状構造物の構築方法の一実施形態について説明する。
図1および
図2に示すように、塔状構造物の一例である風力発電機10は、移動式クレーン20を用いて構築される。移動式クレーン20は、例えば、トラックシャーシ21にクレーン装置22を搭載したトラッククレーンである。移動式クレーン20は、自走可能であればよく、クローラクレーンであってもよいし、ホイールクレーンであってもよい。移動式クレーン20は、風力発電機10の構築現場まで自走してきたのち、部材の揚重といった各種作業を行う。
【0009】
構築現場に到着した移動式クレーン20は、せり上げ装置30によってせり上げ可能となる位置に停車する。具体的には、移動式クレーン20は、各アウトリガー23がせり上げ装置30によって支持可能な位置に停車する。なお、構築現場には、各アウトリガー23がせり上げ装置30によって支持可能となるように、スロープ付きに停車台などが設けられていてもよい。
【0010】
せり上げ装置30は、移動式クレーン20を支持する支持脚31を形成する。支持脚31は、移動式クレーン20のアウトリガー23の各々に対応するように設けられている。せり上げ装置30は、風力発電機10の進行状況に応じて支持脚31を伸張させることにより移動式クレーン20をせり上げる。
【0011】
風力発電機10の構築方法は、移動式クレーン20を用いて風力発電機10の下側部分が構築する工程と、移動式クレーン20をせり上げ装置30でせり上げる工程と、せり上げ装置30によってせり上げられた移動式クレーン20を用いて風力発電機10の上側部分を構築する工程と、を備える。また、風力発電機10の構築方法は、風力発電機10の大きさによって上述した工程が繰り返される。
【0012】
せり上げ装置30は、各支持脚31を支持するジャッキ機構32を有する。各支持脚31は、複数の脚材33で構成されている。
ジャッキ機構32は、少なくとも各アウトリガー23に下方に位置するように設置される。ジャッキ機構32の駆動方式は、例えば油圧式である。ジャッキ機構32は、アンカーボルトなどで地盤に固定されることが好ましい。
【0013】
ジャッキ機構32は、可動枠部35とジャッキ部36とを有する。可動枠部35は、上面視において四角枠状の形状を有する。可動枠部35には、内外方向に進退移動可能に構成されて脚材33と係合可能な係合爪(図示せず)が設けられている。ジャッキ部36は、上面視において可動枠部35の各隅部に対応するように設けられている。ジャッキ部36は、伸張することにより可動枠部35を上方へ移動させ、収縮することにより可動枠部35を下方へ移動させる。
【0014】
図3に示すように、脚材33は、鋼材やコンクリートブロックなどによって外形が略直方体形状に形成されている。また、脚材33は、上下に位置する脚材33と互いに嵌合可能な形状に形成されている。
【0015】
脚材33は、差込孔40を有する。差込孔40は、脚材33を移動させるときに利用される孔であり、例えばフォークリフトのフォークが差し込まれる孔である。脚材33は、係合孔41を有する。係合孔41は、ジャッキ機構32の可動枠部35に設けられた係合爪が係合可能な孔である。脚材33は、他の部材との連結に利用される連結部として、上面連結部42、および、側面連結部43を有する。
【0016】
図4を参照して、せり上げ装置30の動作について説明する。
図4(a)に示すように、せり上げ装置30は、支持脚31の最下位置にある脚材33とジャッキ機構32の可動枠部35とが係合状態にあるときにジャッキ部36を伸張させることで支持脚31を持ち上げる。これにより、
図4(b)に示すように、支持脚31の直下に新設の脚材33aが配置可能な脚材設置スペースが形成される。また、フォークリフトなどを用いて新設の脚材33aを設置台45に配置する。設置台45は、新設の脚材33aが設置される台座である。設置台45は、可動枠部35の側方まで延びており、端部に配置された脚材33を脚材設置スペースまでスライド移動可能に構成されている。
【0017】
次に、
図4(c)に示すように、新設の脚材33aを脚材設置スペースまでスライド移動させたのち、ジャッキ部36を収縮させる。これにより、
図4(d)に示すように、新設の脚材33aに支持脚31が載せられた状態となる。そして、ジャッキ機構32の係合爪を新設の脚材33aの係合孔41に係合させることにより、新設の脚材33aが支持脚31を構成する脚材として追加される。
【0018】
せり上げ装置30は、こうしたジャッキ機構32の伸張、新設の脚材33aの配置、ジャッキ機構32の収縮、ジャッキ機構32の係合対象の変更を繰り返し、支持脚31の下端部に脚材33を継ぎ足していくことにより移動式クレーン20をせり上げる。
【0019】
図5に示すように、せり上げ装置30は、梁50や筋交い51など、側面連結部43などを利用して支持脚31を互いに連結する連結部材が設置される構成であってもよい。連結部材は、移動式クレーン20によって揚重されたのち、各支持脚31に連結されることが好ましい。
【0020】
また、
図6に示すように、移動式クレーン20には、着脱可能なカウンターウエイト装置55が設けられてもよい。カウンターウエイト装置55は、移動式クレーン20のトラックシャーシ21に連結・支持されるとともに移動式クレーン20のクレーン装置22によってウエイト56が揚重されることが好ましい。カウンターウエイト装置55は、移動式クレーン20に対する風力発電機10の反対側に設けられることで、風力発電機10の構成部材を揚重する際に重量バランスをとる。
【0021】
なお、クレーン装置22の操縦は、せり上げられた移動式クレーン20の操縦席で行われてもよいし、リモートコントローラーを用いて地上で行われてもよい。操縦席で操縦が行われる場合、その操縦席に操縦者がアクセス可能となるように、例えば、支持脚31と同様の手法により形成される柱材に梯子などの移動手段を連結したものが構築される。
【0022】
また、
図7に示すように、せり上げ装置30は、支持脚31に支持される架台60を介して移動式クレーン20を支持してもよい。こうした構成によれば、アウトリガー23に対応する支持脚31以外の支持脚31aも設置することができる。また、せり上げ装置30が架台60を有し、クレーン装置22の操縦が操縦席で行われる場合においては、支持脚31に梯子などのアクセス手段を連結することが可能である。
【0023】
本実施形態の作用および効果について説明する。
(1)せり上げ装置30によって移動式クレーン20がせり上げられることで、大きな作業ヤードを設けなくとも小型の移動式クレーン20で大型の風力発電機10を構築することができる。
【0024】
(2)せり上げ装置30においては、移動式クレーン20のアウトリガー23の各々に対応するように支持脚31が設けられている。これにより、せり上げ装置30による移動式クレーン20の支持を安定させることができる。
【0025】
(3)支持脚31が梁50や筋交い51などの連結部材によって互いに連結されることにより、せり上げ装置30による移動式クレーン20の支持を安定させることができる。
(4)移動式クレーン20にカウンターウエイト装置55が設けられることにより、各種部材の揚重時における移動式クレーン20の姿勢を安定させることができる。
【0026】
(5)架台60を介して移動式クレーン20が支持されることにより、アウトリガー23に対応する支持脚31以外の支持脚を設置することができる。これにより、各支持脚に作用する力を分散させることができる。また、移動式クレーン20の操縦席へのアクセス手段を支持脚31に設けることができる。
【0027】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・せり上げ装置30は、複数の支持脚31を互いに連結する連結部材を有していなくともよい。これにより、工期の短縮を図ることができる。
【0028】
・せり上げ装置30は、架台60を有する場合、上面視におけるアウトリガー23の内側や外側に支持脚31を有していてもよい。
・せり上げ装置30は、移動式クレーン20をせり上げるものであればよい。そのため、せり上げ装置30は、可動枠部35とジャッキ部36とで構成されたジャッキ機構32を有するものに限られない。例えば、せり上げ装置30は、伸縮可能な油圧ジャッキと油圧ジャッキに支持される支持脚31とで構成されてもよいし、PC鋼線やロッドなどを用いて移動式クレーン20をせり上げる構成であってもよい。
【0029】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(付記1)
移動式クレーンにカウンターウエイト装置が設けられている。これにより、各種部材の揚重時における移動式クレーンの姿勢を安定させることができる。
【0030】
(付記2)
せり上げ装置は、支持脚に支持される架台を介して移動式クレーンを支持する。これにより、アウトリガーに対応する支持脚以外の支持脚を設置することができるため、各支持脚に作用する力を分散させることができる。また、移動式クレーンの操縦席へのアクセス手段を支持脚に設けることができる。
【符号の説明】
【0031】
10…風力発電機、20…移動式クレーン、21…トラックシャーシ、22…クレーン装置、23…アウトリガー、30…せり上げ装置、31,31a…支持脚、32…ジャッキ機構、33,33a…脚材、35…可動枠部、36…ジャッキ部、40…差込孔、41…係合孔、42…上面連結部、43…側面連結部、45…設置台、50…梁、51…筋交い、55…カウンターウエイト装置、56…ウエイト、60…架台。