(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115813
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】液晶滴下工法用液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セル
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20240820BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C09K3/10 B
C09K3/10 E
C09K3/10 L
C09K3/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021662
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植原 理子
(72)【発明者】
【氏名】内藤 正弘
(72)【発明者】
【氏名】木田 昌博
(72)【発明者】
【氏名】安達 拓哉
【テーマコード(参考)】
2H189
4H017
【Fターム(参考)】
2H189EA03Y
2H189EA04Y
2H189EA05Y
2H189EA11Y
2H189FA23
2H189FA46
2H189FA47
2H189GA49
2H189GA52
4H017AA04
4H017AB01
4H017AB03
4H017AB08
4H017AC17
4H017AD02
4H017AE05
(57)【要約】
【課題】
本発明は特定構造を有するチオール化合物を用いることで、保存安定性、高接着性、低液晶汚染性に優れる液晶滴下工法用液晶シール剤を提供する。
【解決手段】
硬化性化合物とイソシアヌル構造を持つ1級チオール化合物を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性化合物とイソシアヌル構造を持つ1級チオール化合物を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項2】
硬化性化合物とイソシアヌル構造を持つ3官能1級チオール化合物とを含有する液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項3】
前記チオール化合物のチオール当量が160~180g/molである、請求項1に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項4】
さらに、熱硬化剤及び/又は熱ラジカル重合開始剤を含有する請求項1に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項5】
前記熱ラジカル重合開始剤が分子内に酸素-酸素結合(-O-O-)及び窒素-窒素結合(-N=N-)を含まない熱ラジカル重合開始剤である請求項4に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤によって封止された液晶表示セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光及び/又は熱によって硬化する液晶シール剤であって、液晶滴下工法に使用される液晶シール剤、及びそれを用いた液晶表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶表示セルの大型化に伴い、液晶表示セルの製造法として、より量産性の高い、いわゆる液晶滴下工法が提案されていた(特許文献1、特許文献2参照)。具体的には、一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせることにより液晶が封止される液晶表示セルの製造方法である。
【0003】
しかし、液晶滴下工法は、未硬化の状態の液晶シール剤が液晶に接触するため、その際に液晶シール剤の成分が液晶に溶解(溶出)して液晶の抵抗値を低下させ、シール近傍の表示不良を発生させるという問題点がある。
【0004】
この課題を解決する為、現在は液晶滴下工法用の液晶シール剤として光熱併用型のものが用いられ、実用化されている(特許文献3、4)。この液晶シール剤を使用した液晶滴下工法では、基板に挟まれた液晶シール剤に光を照射して一次硬化させた後、加熱して二次硬化させることを特徴とする。この方法によれば、未硬化の液晶シール剤を光によって速やかに硬化でき、液晶シール剤成分の液晶への溶解(溶出)を抑えることが可能である。さらに、光硬化のみでは光硬化時の硬化収縮等による接着強度不足という問題も発生するが、光熱併用型であれば加熱による二次硬化によって応力緩和効果が得られ、そういった問題も解消できるという利点を有する。
この光熱硬化型の液晶滴下工法用液晶シール剤が実用化されたことによって、液晶滴下工法は、一般的に用いられる工法となった。
【0005】
しかし最近では、液晶ディスプレイの更なる高精細化、高輝度化、狭額縁化等を目的として、様々な改良がなされており、これに伴う液晶滴下工法用液晶シール剤への要求特性も変化してきている。
その一つが、配向膜への接着強度向上である。これは液晶滴下工法用液晶シール剤が配向膜部分に配置されること、及びその線幅(液晶シール剤の幅)も細くなり、被着面積が小さくなっていることによる。接着性の改善は、重要な課題となりつつあり、十分に満足のいく液晶滴下工法用液晶シール剤が提案されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63-179323号公報
【特許文献2】特開平10-239694号公報
【特許文献3】特許第3583326号公報
【特許文献4】特開2004-61925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は特定構造を有するチオール化合物を用いることで、保存安定性、高接着性、低液晶汚染性に優れる液晶滴下工法用液晶シール剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は以下の[1]~[6]に関する。なお、本願において「(数値1)~(数値2)」は上下限値を含むことを示す。また、本明細書中、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を意味する。
[1]
硬化性化合物とイソシアヌル構造を持つ1級チオール化合物とを含有する液晶滴下工法用液晶シール剤。
[2]
硬化性化合物とイソシアヌル構造を持つ3官能1級チオール化合物を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤。
[3]
前記チオール化合物のチオール当量が160~180g/molである、前項[1]又は[2]に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[4]
さらに、熱硬化剤及び/又は熱ラジカル重合開始剤を含有する前項[1]から[3]のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[5]
前記熱ラジカル重合開始剤が分子内に酸素-酸素結合(-O-O-)及び窒素-窒素結合(-N=N-)を含まない熱ラジカル重合開始剤である前項[4]に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[6]
前項[1]から[5]のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤によって封止された液晶表示セル。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液晶滴下工法用液晶シール剤は、保存安定性、高接着性、低液晶汚染性に優れるに優れるため、液晶表示素子用液晶シール剤として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本願実施例にて用いる接着試験用基板である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液晶滴下工法用液晶シール剤(以下、単に「液晶シール剤」ともいう。)は、硬化性化合物とイソシアヌル構造を持つ1級チオール化合物とを含有する。
【0012】
[硬化性化合物]
本発明の液晶シール剤は、硬化性化合物を含有する。
硬化性化合物としては、光や熱等によって硬化する化合物であれば特に限定されないが、(メタ)アクリル基またはエポキシ基を有する化合物である場合が好ましく、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂、ポリブタジエン化合物である場合が特に好ましい。
【0013】
[(メタ)アクリレート]
(メタ)アクリレートの具体例としては、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸のエステルジアクリレートやネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸のエステルのε-カプロラクトン付加物のジアクリレート等のモノマー類を挙げることができる。好ましくは、o-フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、を挙げることができる。
【0014】
[エポキシ(メタ)アクリレート]
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応により公知の方法で得られる。原料となるエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えば、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やレゾルシンジグリシジルエーテルが好ましい。また、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比率は限定されるものではなく、工程適合性の観点から適切に選択される。
なお、エポキシ基の一部をアクリルエステル化する部分エポキシ(メタ)アクリレートが好適に使用される。この場合のアクリル化の割合は、30~70%程度が好ましい。
【0015】
[ウレタン(メタ)アクリレート]
ウレタン(メタ)アクリレートはウレタン構造特有の柔軟な骨格を有していることにより、硬化物が柔軟かつ低透湿性の特性を有し、フレキシブルディスプレイにおける折り曲げにも追従することができるため、硬化性化合物として使用することが好ましく、ポリエステル構造を有するものを使用することがさらに好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートは、(a)ポリオールと(b)有機ポリイソシアネートと(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応して、常法で合成することにより得ることができ、必要に応じて錫化合物等の触媒を使用する。
ウレタン(メタ)アクリレートの合成においては、前記成分(a)の水酸基1当量に対して、成分(b)のイソシアネート基1.1~2.0当量を反応させることが好ましく、1.3~2.0当量を反応させることが特に好ましい。反応温度は、室温(25℃)~100℃が好ましい。
成分(a)と成分(b)との反応物中のイソシアネート基1当量あたり、成分(c)中の水酸基0.95~1.1当量を反応させることが好ましい。反応温度は、室温(25℃)~100℃が好ましい。
【0016】
(a)ポリオールの具体例としては、トリシクロデカンジメタノール、水素化ポリブタジエンポリオール、ダイマージオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-イコサンジオール、1-メチル-1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAポリ(n≒2~20)エトキシジオール、ビスフェノールAポリ(n≒2~20)プロポキシジオール等のジオール(a-1)、これらジオール(a-1)と二塩基酸又はその無水物(例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸あるいは、これらの無水物)との反応物であるポリエステルポリオール(a-2)等を挙げることができる。好ましくは、ポリエステルポリオール、および芳香環を有するポリオールであり、特に好ましくは芳香環を有するポリエステルポリオールである。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環などの芳香族炭化水素環;フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環などの芳香族複素環;が挙げられ、好ましくはベンゼン環またはナフタレン環である。
成分(a)は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。
【0017】
(b)有機ポリイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4、4’-シクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジメリルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3、3’-ジメチル-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。好ましくは、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを挙げることができる。
【0018】
(c)水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン付加物、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0019】
ウレタン(メタ)アクリレートのGPCにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量の下限値が1000以上であることが好ましく、更に好ましくは2000以上、特に好ましくは3000以上、最も好ましくは4000以上である。また、上限値は10000以下であることが好ましく、更に好ましくは8000以下、特に好ましくは7000以下、最も好ましくは6000以下である。上記範囲にあることにより、柔軟性、透湿性を良好に保ちつつ、液晶シール剤の粘度が適切な範囲となる。
【0020】
[エポキシ樹脂]
本発明の態様として、硬化性化合物として、エポキシ樹脂が含有される場合も好ましい。
エポキシ樹脂としては特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えば、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やレゾルシンジグリシジルエーテルが好ましい。
【0021】
[ポリブタジエン化合物]
また、硬化性化合物として、エポキシ基または(メタ)アクリル基を有するポリブタジエン化合物を用いることも本発明の好ましい態様である。エポキシ基を有するポリブタジエン化合物としては、例えば、日本曹達株式会社製JP-100、JP-200として市場から入手することができる。(メタ)アクリル基を有するポリブタジエン化合物としては、例えば、日本曹達株式会社製TEAI-1000、TE-2000として市場から入手することができる。
これらポリブタジエン化合物の数平均分子量は、液晶汚染性低減の観点から、成分下限は500が好ましく、更に好ましくは750、特に好ましくは1000である。また、ハンドリング性の観点から、数平均分子量の上限は10000が好ましく、更に好ましくは8000、特に好ましくは6000である。
【0022】
硬化性化合物は上記の材料を単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。硬化性化合物は、液晶シール剤総量中5~95質量%であることが好ましく、さらに好ましくは10~90質量%である。
【0023】
[イソシアヌル構造を持つ1級チオール化合物]
本発明の液晶シール剤は、イソシアヌル構造を持つ1級チオール化合物を含有する。一般に1級チオールは反応性が良好である反面、保存安定性に課題を有することが多い。しかしながら、イソシアヌル構造を持つ1級チオール化合物は反応性が良好でありつつ、保存安定性にも優れる。さらに接着性も良好である。
本発明で用いるイソシアヌル構造を持つ1級チオール化合物は、イソシアヌル構造を有し、1級チオール化合物であれば特に限定されないが、多官能であることが好ましく、3官能であることが特に好ましい。例えば、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(TEMPIC SC有機化学社製)、1,3,5-トリス[3-(2メルカプトエチルスルファニル)プロピル]イソシアヌート(アクトキュアSS32 川口化学社製)などが挙げられる。チオール当量は160~180g/molであることが好ましく、170~180g/molであることが特に好ましい。
【0024】
イソシアヌル構造を持つ1級チオール化合物は上記の材料を単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。イソシアヌル構造を持つ1級チオール化合物は、液晶シール剤総量中0.1~25質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1~15質量%であり、特に好ましくは5~10質量%である。
【0025】
[光ラジカル重合開始剤]
本発明の液晶シール剤は、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、紫外線や可視光の照射によって、ラジカルや酸を発生し、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2-エチルアンスラキノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9-フルオレノン、ジフェニルジスルヒド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURERTM651、184、2959、127、907、369、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、OXE03、OXE04、DAROCURERTM1173、LUCIRINRTMTPO(いずれもBASF社製)、セイクオールRTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(いずれも精工化学株式会社製)、カヤキュアーDETX-S(日本化薬株式会社製)等を挙げることができる。これらの中で、好ましくは、オキシムエステル系開始剤であるIRGACURERTMOXE01、OXE02、OXE03、OXE04、およびチオキサントン系開始剤であるカヤキュアーDETX-Sである。
さらに、オキシムエステル系開始剤とチオキサントン系開始剤を併用することにより即硬化性と遮光部硬化性を両立でき、可視光でも硬化できることから好ましい。
本発明の液晶シール剤において、光ラジカル重合開始剤を使用する場合には、液晶シール剤総量中、通常0.001~3質量%、好ましくは0.005~2質量%である。
【0026】
[フィラー]
本発明の液晶シール剤はフィラーを含有することが好ましい。フィラーとしては、有機フィラー、無機フィラーのいずれも用いることができる。フィラーの添加量は硬化性化合物100重量部に対して50~90重量部であることが好ましく、無機フィラーの添加量が硬化性化合物100重量部に対して50~90重量部であることがさらに好ましい。
【0027】
[有機フィラー]
有機フィラーとしては、例えばウレタン系重合体微粒子、アクリル系重合体微粒子、スチレン系重合体微粒子、スチレン-オレフィン共重合体微粒子、及びシリコーン微粒子が挙げられる。なおシリコーン微粒子としてはKMP-594、KMP-597、KMP-598(信越化学工業製)、トレフィルRTME-5500、9701、EP-2001(東レダウコーニング社製)が好ましく、ウレタン系重合体微粒子としてはJB-800T、HB-800BK(根上工業株式会社)、スチレン系重合体微粒子としてはラバロンRTMT320C、T331C、SJ4400、SJ5400、SJ6400、SJ4300C、SJ5300C、SJ6300C(三菱化学製)が好ましく、スチレン-オレフィン共重合体微粒子としてはセプトンRTMSEPS2004、SEPS2063が好ましい。
これら有機フィラーは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また2種以上を用いてコアシェル構造としても良い。これらのうち、好ましくは、アクリル系重合体微粒子、シリコーン微粒子である。
上記アクリル系重合体微粒子を使用する場合、2種類のアクリルゴムからなるコアシェル構造のアクリルゴムである場合が好ましく、特に好ましくはコア層がn-ブチルアクリレートであり、シェル層がメチルメタクリレートであるものが好ましい。これはゼフィアックRTMF-351としてアイカ工業株式会社から販売されている。
また、上記シリコーン微粒子としては、オルガノポリシロキサン架橋物粉体、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋物粉体等があげられる。また、複合シリコーンゴムとしては、上記シリコーンゴムの表面にシリコーン樹脂(例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン樹脂)を被覆したものがあげられる。これらの微粒子のうち、特に好ましいのは、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋物粉末のシリコーンゴム又はシリコーン樹脂被覆直鎖ジメチルポリシロキサン架橋物粉末の複合シリコーンゴム微粒子である。これらのものは、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、好ましくは、ゴム粉末の形状は、添加後の粘度の増粘が少ない球状が良い。
【0028】
[無機フィラー]
無機フィラーとしては、シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムが挙げられるが、好ましくはシリカ、アルミナ、タルクである。これら無機フィラーは2種以上を混合して用いても良い。
【0029】
[熱硬化剤]
本発明の液晶シール剤は、熱硬化剤を添加して、反応性の向上を図ることができる。
熱硬化剤としては、例えば、分子内に芳香環に結合したカルボキシ基を有する化合物、多価アミン類、多価フェノール類、有機酸ヒドラジド等を挙げることができる。ただしこれらに限定されるものではない。例えば、芳香族ヒドラジドであるテレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6-ピリジンジヒドラジド、1,2,4-ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8-ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等をあげることが出来る。また、脂肪族ヒドラジドであれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4-シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’-ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド、トリス(1-ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(1-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3-ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等をあげることができる。硬化反応性と潜在性のバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(1-ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(1-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3-ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはトリス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレートである。
熱硬化剤は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。本発明の液晶シール剤において、熱硬化剤を使用する場合には、液晶シール剤総量中0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがさらに好ましい。
【0030】
[熱ラジカル重合開始剤]
本発明の液晶シール剤は、熱ラジカル重合開始剤を含有して、硬化速度、硬化性を向上することができる。
熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメックRTMA、M、R、L、LH、SP-30C、パーカドックスCH-50L、BC-FF、カドックスB-40ES、パーカドックス14、トリゴノックスRTM22-70E、23-C70、121、121-50E、121-LS50E、21-LS50E、42、42LS、カヤエステルRTMP-70、TMPO-70、CND-C70、OO-50E、AN、カヤブチルRTMB、パーカドックス16、カヤカルボンRTMBIC-75、AIC-75(化薬アクゾ株式会社製)、パーメックRTMN、H、S、F、D、G、パーヘキサRTMH、HC、TMH、C、V、22、MC、パーキュアーRTMAH、AL、HB、パーブチルRTMH、C、ND、L、パークミルRTMH、D、パーロイルRTMIB、IPP、パーオクタRTMND(日油株式会社製)などが市販品として入手可能である。
【0031】
また、アゾ化合物としては、VA-044、086、V-070、VPE-0201、VSP-1001(富士フイルム和光純薬株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0032】
熱ラジカル重合開始剤として好ましいものは、分子内に酸素-酸素結合(-O-O-)及び窒素-窒素結合(-N=N-)を有さない熱ラジカル重合開始剤である。分子内に酸素-酸素結合(-O-O-)や窒素-窒素結合(-N=N-)を有する熱ラジカル重合開始剤は、ラジカル発生時に多量の酸素や窒素を発するため、液晶シール剤中に気泡を残した状態で硬化し、接着強度の低下、透湿度の低下、湿熱環境下での特性を低下等が起こる虞がある。ベンゾピナコール系の熱ラジカル重合開始剤(ベンゾピナコールを化学的に修飾したものを含む)が特に好適である。具体的には、ベンゾピナコール、1,2-ジメトキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ジエトキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ジフェノキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ジメトキシ-1,1,2,2-テトラ(4-メチルフェニル)エタン、1,2-ジフェノキシ-1,1,2,2-テトラ(4-メトキシフェニル)エタン、1,2-ビス(トリメチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ビス(トリエチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ビス(t-ブチルジメチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1-ヒドロキシ-2-トリメチルシロキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1-ヒドロキシ-2-トリエチルシロキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1-ヒドロキシ-2-t-ブチルジメチルシロキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン等、が挙げられ、好ましくは1-ヒドロキシ-2-トリメチルシロキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1-ヒドロキシ-2-トリエチルシロキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1-ヒドロキシ-2-t-ブチルジメチルシロキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ビス(トリメチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタンであり、さらに好ましくは1-ヒドロキシ-2-トリメチルシロキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ビス(トリメチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタンであり、特に好ましくは1,2-ビス(トリメチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタンである。
上記ベンゾピナコールは東京化成工業株式会社、富士フイルム和光純薬株式会社等から市販されている。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をエーテル化することは、周知の方法によって容易に合成可能である。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をシリルエーテル化することは、対応するベンゾピナコールと各種シリル化剤をピリジン等の塩基性触媒下で加熱させる方法により合成して得ることができる。シリル化剤としては、一般に知られているトリメチルシリル化剤であるトリメチルクロロシラン(TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)やトリエチルシリル化剤としてトリエチルクロロシラン(TECS)、t-ブチルジメチルシリル化剤としてt-ブチルメチルシラン(TBMS)等が挙げられる。これらの試薬はシリコン誘導体メーカー等の市場から容易に入手することが出来る。シリル化剤の反応量としては対象化合物のヒドロキシ基1モルに対して1.0~5.0倍モルが好ましい。さらに好ましくは1.5~3.0倍モルである。1.0倍モルより少ないと反応効率が悪く、反応時間が長くなるため熱分解を促進してしまう。5.0倍モルより多いと回収の際に分離が悪くなったり、精製が困難になったりしてしまう。
【0033】
熱ラジカル重合開始剤の含有量としては、本発明の液晶シール剤総量中、0.0001~5質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.0005~3質量%であり、0.001~1質量%が特に好ましい。
【0034】
本発明の液晶シール剤には、さらに必要に応じて、硬化促進剤、シランカップリング剤、ラジカル重合防止剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、溶剤などの添加剤を配合することができる。
【0035】
[硬化促進剤]
本発明の液晶シール剤は、硬化促進剤を添加して、さらに反応性の向上を図ることができる。硬化促進剤としては、有機酸やイミダゾール等を挙げることができる。
有機酸としては、有機カルボン酸や有機リン酸等が挙げられるが、有機カルボン酸である場合が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
また、イミダゾール化合物としては、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-ウンデシルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-エチル-4-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-3,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-3,5-ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
本発明の液晶シール剤において、硬化促進剤を使用する場合には、液晶シール剤の総量中、0.1~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがさらに好ましい。
【0036】
[シランカップリング剤]
上記シランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤はKBMシリーズ、KBEシリーズ等として信越化学工業株式会社等によって販売されている為、市場から容易に入手可能である。本発明の液晶シール剤において、シランカップリング剤を使用する場合には、液晶シール剤総量中、0.05~3質量%が好適である。
【0037】
[ラジカル重合防止剤]
上記ラジカル重合防止剤としては、光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤等から発生するラジカルと反応して重合を防止する化合物であれば特に限定されるものではなく、キノン系、ピペリジン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソ系等を用いることができる。具体的には、ナフトキノン、2-ヒドロキシナフトキノン、2-メチルナフトキノン、2-メトキシナフトキノン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチル-4-メトキシピペリジン-1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチル-4-フェノキシピペリジン-1-オキシル、ハイドロキノン、2-メチルハイドロキノン、2-メトキシハイドロキノン、パラベンゾキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルクレゾール、ステアリルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β―(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン]、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-sec-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、パラメトキシフェノール、4-メトキシ-1-ナフトール、チオジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアルミニウム塩、商品名アデカスタブLA-81、商品名アデカスタブLA-82(株式会社アデカ製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちナフトキノン系、ハイドロキノン系、ニトロソ系、ピペラジン系のラジカル重合防止剤が好ましく、ナフトキノン、2-ヒドロキシナフトキノン、ハイドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-P-クレゾール、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が更に好ましく、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が最も好ましい。
ラジカル重合防止剤の含有量としては本発明の液晶シール剤総量中、0.0001~1質量%が好ましく、0.001~0.5質量%が更に好ましく、0.005~0.2質量%が特に好ましい。
【0038】
[光塩基発生剤]
本発明の液晶シール剤は、光塩基発生剤を含有して、塩基増殖剤の分解を促進させ熱硬化性を向上させることができる。光塩基発生剤として、例えば、α-アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、アシルオキシイミノ基,N-ホルミル化芳香族アミノ基、N-アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメート基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。なかでも、オキシムエステル化合物、α-アミノアセトフェノン化合物が好ましい。α-アミノアセトフェノン化合物としては、特に、2つ以上の窒素原子を有するものが好ましい。その他の光塩基発生剤として、WPBG-018(商品名:9-anthrylmethyl N,N’-diethylcarbamate、富士フイルム和光純薬株式会社製)、WPBG-027(商品名:(E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine)、WPBG-082(商品名:guanidinium 2-(3-benzoylphenyl)propionate)、WPBG-140(商品名:1-(anthraquinon-2-yl)ethylimidazolecarboxylate)等を使用することもできる。α-アミノアセトフェノン化合物は、分子中にベンゾインエーテル結合を有し、光照射を受けると分子内で開裂が起こり、硬化触媒作用を奏する塩基性物質(アミン)が生成する。α - アミノアセトフェノン化合物の具体例としては、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン(イルガキュア369、商品名、BASFジャパン社製)や4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン(イルガキュア907、商品名、BASFジャパン社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(イルガキュア379 、商品名、BASFジャパン社製)などの市販の化合物またはその溶液を用いることができる。併用し得るオキシムエステル化合物としては、光照射により塩基性物質を生成する化合物であればいずれをも使用することができる。かかるオキシムエステル化合物としては、市販品として、BASFジャパン社製のCGI-325、イルガキュアーOXE01、OXE02、OXE04、アデカ社製N-1919、NCI-831などが挙げられる。また、特許第4344400号公報に記載された、分子内に2個のオキシムエステル基を有する化合物も好適に用いることができる。
光塩基発生剤は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。本発明の液晶シール剤において光塩基発生剤を使用する場合には、本発明の液晶シール剤の総量中、通常0.01~5質量%、好ましくは0.1~2質量%である。
【0039】
本発明の液晶シール剤を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず、硬化性化合物、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、ラジカル重合防止剤、光塩基発生剤を90℃で加熱溶解させた後、室温まで冷却し、シランカップリング剤、有機フィラー、無機フィラー、有機酸、消泡剤、及びレベリング剤、溶剤等を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合し、金属メッシュにて濾過することにより本発明の液晶シール剤を製造することができる。
【0040】
本発明の液晶シール剤を用いて製造される液晶表示セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサ(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー、またはスクリーン印刷装置等を用いて該液晶シール剤を塗布した後、必要に応じて、80~120℃で仮硬化を行う。その後、該液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、90~130℃で30分~2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。また光熱併用型として使用する場合は、紫外線照射機により液晶シール剤に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、好ましくは500~6000mJ/cm2、より好ましくは1000~4000mJ/cm2(測定波長:365nm)の照射量が好ましい。その後必要に応じて、90~130℃で30分~2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。このようにして得られた本発明の液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。スペーサとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2~8μm、好ましくは4~7μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100質量部に対し通常0.1~4質量部、好ましくは0.5~2質量部、更に、好ましくは0.9~1.5質量部程度である。
【0041】
本発明の液晶シール剤は、フレキシブルディスプレイや湾曲形状のディスプレイにも適用できる高柔軟性を有するものであることが好ましい。柔軟性は、後述の実施例に記載の方法で弾性率を測定することで評価することができる。好ましい弾性率としては室温(25℃)において500MPa以上2000MPa以下であることが好ましく、800MPa以上1600MPa以下であることが更に好ましい。上記範囲の液晶シール剤は、ディスプレイに掛かる応力に追従することができることから好ましいと言える。
【実施例0042】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
【0043】
[合成例1]
温度計、冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、メチルペンタンジオールとアジピン酸、イソフタル酸とのポリエステルポリオール(株式会社クラレ製P-2012、水酸基価54.6mgKOH/g)776.99gと、トルエンジイソシアネート(東ソー株式会社製コロネートT-100、分子量174.2)131.68gを仕込み、80℃で反応させた。このときのイソシアネート含有量は、過剰のアミンを添加し塩酸にて逆滴定することで求め、その値が計算値から求められるイソシアネートの残留量のプラスマイナス2%の範囲であることを確認した。次いで、メトキノン(重合禁止剤)0.6g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(分子量116.1)90.43g、ジブチル錫ジラウレート(触媒)0.3gを添加し、80℃にて撹拌し、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失するまで反応を行い、重量平均分子量6300のウレタンアクリレートオリゴマーを得た。
【0044】
[合成例2]
市販ベンゾピナコール(東京化成製)100部(0.28モル)をジメチルホルムアミド350部に溶解させた。これに塩基性触媒としてピリジン32部(0.4モル)、シリル化剤としてBSTFA(信越化学工業製)150部(0.58モル)を加え70℃まで昇温し、2時間攪拌した。得られた反応液を冷却し、攪拌しながら、水200部を入れ、生成物を沈殿させると共に未反応シリル化剤を失活させた。沈殿した生成物をろ別分離した後十分に水洗した。次いで得られた生成物をアセトンに溶解し、水を加えて再結晶させ、精製した。目的の1,2-ビス(トリメチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタンを105.6部(収率88.3%)得た。
【0045】
[実施例1~5、比較例1~3]
下記表1、2に示す割合で硬化性化合物、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、ラジカル重合防止剤、光塩基発生剤を90℃で加熱溶解させた後、室温まで冷却し、シランカップリング剤、有機フィラー、無機フィラー、有機酸を添加し、攪拌した後、3本ロールミルにて分散させ、金属メッシュ(635メッシュ)で濾過し、液晶シール剤を調製した。
【0046】
[評価]
[48時間後増粘率]
実施例及び比較例で製造された液晶シール剤の初期、および25℃48時間保管後の液晶シール剤を、R型粘度計(R115U型粘度計:東機産業株式会社製)、測定コーン3°×R7.7、回転数5rpm、25℃雰囲気下にて粘度を測定した。経時変化は(48時間後の粘度-初期の粘度)/初期の粘度の計算式で計算した。結果を表1に示す。
[弾性率]
実施例及び比較例で製造された液晶シール剤をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み、厚み100μmの薄膜としたものにUV照射機により3000mJ/cm
2(測定波長:365nm)の紫外線を照射後、オーブンに投入して120℃70分熱硬化させ、硬化後PETフィルムを剥がしてサンプルとした。サンプルをテンシロン万能試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、RTG-1210)を用いて、室温(25℃)下、試験速度5mm/分で引張試験を行い測定した。結果を表1に示す。
[接着強度]
ガラス基板に光配向膜液(日産化学株式会社製:NRB-U438L)をスピンコートし、80℃ホットプレートで2分仮焼きを行い230℃オーブンで30分焼成した。そして偏光フィルタを備えたUV照射機にて250mJ/cm
2(測定波長:254nm)の紫外線を照射することにより配向処理を行い、さらに230℃オーブンで30分焼成することで光配向膜基板を得た。
実施例及び比較例で液晶シール剤はスペーサとして4μmのグラスファイバーを1重量%添加し、遊星攪拌装置(EME社製:VMX-360)にて混合撹拌を行った。作製した光配向膜基板上に、調製した液晶シール剤をR=0.5mm且つ長さ1cm×1cmのコーナー部分を再現する形でシール幅0.6mmとなるように塗布し、1~10Paの真空中にて対向の光配向膜基板とを貼り合わせ、大気解放後、UV照射機により3000mJ/cm
2(測定波長:365nm)の紫外線を照射後、120℃の送風オーブンにて70分間加熱硬化することで接着させた。得られた貼り合わせ基板を
図1のようなディスプレイの端子部を想定した下基板のみがはみ出した形状に切断し、3mmφのニードル型端子を備えた万能試験機(島津製作所製:オートグラフAG-Xplus500N)にて塗布したディスプレイ用封止剤のコーナーの対角線上4mm離れた地点の下基板を押し、貼り合わせ基板が剥がれた際の最大荷重を測定することで接着強度を求めた。結果を表1に示す。
[電圧保持率(VHR)の測定]
幅10mm、長さ20mmのITO透明電極を2mm間隔で配した厚さ0.5mmのガラス基板に光配向膜液(日産化学株式会社製:NRB-U438L)をスピンコートし、80℃ホットプレートで2分仮焼きを行い230℃オーブンで30分焼成した。そして偏光フィルタを備えたUV照射機にて250mJ/cm
2(測定波長:254nm)の紫外線を照射することにより配向処理を行い、さらに230℃オーブンで30分焼成することでITO電極パターン付きの光配向膜基板を得た。実施例及び比較例で作製した液晶シール剤はスペーサとして4μmのグラスファイバーを1重量%添加し、遊星攪拌装置(EME社製:VMX-360)にて混合撹拌を行った。作製したITO電極パターン付き光配向膜基板上のITO部の端1cm各を囲う形で調整した液晶シール剤をR=0.5mm且つ10mm角のセル状にシール幅0.6mmとなるように塗布し、貼り合わせた後の空隙を体積100%充填できる量の液晶(JNC株式会社製:JC-7025xx)をセル中心に滴下したのち、もう一枚のITO電極パターン付き光配向膜基板をITOが液晶に接し且つ電極の長さ方向に1mmずらす形で1~10Paの真空中にて貼り合わせ、大気解放後、UV照射機により3000mJ/cm
2(測定波長:365nm)の紫外線を照射後、120℃の送風オーブンにて70分間加熱硬化することで液晶シール剤を硬化したのち、電極部が剥き出しになるようにガラス基板を切断する事でVHR測定用セルを作製した。作成したVHR測定用セルをVHR測定装置(東陽テクニカ製:6254C)を用いて、60℃、5V6Hzの条件においてVHRの測定を行った。評価結果を表1に示す。
【0047】
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表1、2の結果より、本発明の液晶シール剤は、保存安定性、低液晶汚染性、高接着性が良好であった。一方、比較例1は保存安定性、比較例2、3は接着性に課題を有することが確認された。
本発明の液晶シール剤は、液晶ディスプレイ用の液晶シール剤として有用である。特に、低周波駆動による省電力モードに対応する液晶ディスプレイや意匠性の高い狭額縁な液晶ディスプレイ用の液晶シール剤として有用である。