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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115825
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ワーク供給装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/08 20060101AFI20240820BHJP
   B23K 11/00 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
B23Q7/08 B
B23Q7/08 C
B23K11/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021683
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512035918
【氏名又は名称】青山 省司
(71)【出願人】
【識別番号】521158082
【氏名又は名称】有限会社はせ川工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 克浩
(72)【発明者】
【氏名】青山 省司
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 政己
【テーマコード(参考)】
3C033
【Fターム(参考)】
3C033CC01
3C033LL02
(57)【要約】
【課題】 磁性を持つワークの供給不良を抑制できる小型のワーク供給装置を提供する。
【解決手段】ワーク供給装置101は、磁性を持つワークWを筒軸方向Zにガイド可能なガイド空間11と径方向Yの側方に設けられた入口開口部12と筒軸方向Zの一端側に設けられた出口開口部13とを有する筒状のホルダ10と、ホルダ10の入口開口部12に接続されたワーク供給管21を有しワークWをワーク供給管21から入口開口部12を通じてガイド空間11に送り込むワークフィーダー20と、ホルダ10の周方向Zにガイド空間11を取り囲むように設けられておりワークWを磁力によってガイド空間11で浮かせて保持する複数のマグネット31と、ホルダ10のガイド空間11で保持されたワークWを筒軸方向Xのスライド動作によってホルダ10の出口開口部13から押し出すロッド部材15と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性を持つワークを供給するワーク供給装置であって、
上記ワークを筒軸方向にガイド可能なガイド空間と、径方向の側方に上記ガイド空間に連通するように設けられた入口開口部と、上記筒軸方向の一端側に上記ガイド空間に連通するように設けられた出口開口部と、を有する筒状のホルダと、
上記ホルダの上記入口開口部に接続されたワーク供給管を有し、上記ワークを上記ワーク供給管から上記入口開口部を通じて上記ガイド空間に送り込むワークフィーダーと、
上記ホルダの周方向に上記ガイド空間を取り囲むように設けられており、上記ワークを磁力によって上記ガイド空間で浮かせて保持する複数のマグネットと、
上記ホルダの上記ガイド空間で保持された上記ワークを上記筒軸方向のスライド動作によって上記ホルダの上記出口開口部から押し出すロッド部材と、
を備える、ワーク供給装置。
【請求項2】
上記複数のマグネットは、N極とS極のそれぞれの対が上記ホルダの径方向に対向し、且つ、上記周方向に隣り合う2つの極が互いに異なるように配置されている、請求項1に記載のワーク供給装置。
【請求項3】
上記ワークフィーダーは、上記ワーク供給管の管内に上記ホルダの上記入口開口部に向けてガスを噴射可能なガス噴射機構を有し、上記ガス噴射機構が上記ワーク供給管の管内にガスを噴射することによって上記ガイド空間に上記ワークを送り込むように構成されている、請求項1または2に記載のワーク供給装置。
【請求項4】
上記ワークフィーダーは、押し込みロッドを退避位置と上記ワーク供給管の管内の押し込み位置との間で駆動するロッド駆動機構を有し、上記ロッド駆動機構が上記押し込みロッドを上記退避位置から上記押し込み位置まで駆動することで上記ガイド空間に上記ワークを送り込むように構成されている、請求項1または2に記載のワーク供給装置。
【請求項5】
上記複数のマグネットを第1マグネットとしたとき、上記押し込みロッドの先端部には第2マグネットが設けられており、上記押し込みロッドが上記押し込み位置にあるとき、上記第1マグネットと上記第2マグネットとの協働で上記ワークを上記ガイド空間で保持するように構成されている、請求項4に記載のワーク供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、磁性を持つ雄側ホックをフロアパネルに溶着するのに用いる溶接電極が開示されている。この溶接電極の先端部に組付けられた保持筒には、雄側ホックの環状部分を嵌め込んで磁力で保持するめの保持孔が設けられている。溶接電極の保持筒に設けられた保持孔に雄側ホックを供給するのに、保持筒に対する可動体である供給ロッドが使用される。供給ロッドの先端部には、雄側ホックを載置する支持体が取付けられている。
【0003】
雄側ホックを保持孔に供給するとき、先ず、支持体に載置された雄側ホックが保持筒の保持孔の直下に配置されるように供給ロッドを水平方向にスライドさせる。その後、雄側ホックの環状部分が保持孔に嵌め込まれるように供給ロッドを保持筒に向けて垂直方向に上昇させる。これにより、雄側ホックは、保持筒の保持孔に環状部分が嵌め込まれた状態で磁力により保持される。そして、供給ロッドを保持筒から離れるように水平方向にスライドさせたのち、可動電極によって雄側ホックをフロアパネルに押し付けるように供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-103636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1の溶接電極のように、雄側ホックを供給ロッドから空間を隔てて保持筒に一旦受け渡した後に、さらに保持筒からフロアパネルに供給する構造を採用すると、供給ロッドと保持筒との間の位置ズレなどの要因によって、保持筒への雄側ホックの供給不良が生じる。そして、雄側ホックの供給不良が生じると、作業が一旦中断されることになり、雄側ホックの供給不良を解消するための工数が必要になる。また、保持筒への雄側ホックの受け渡しに可動体である供給ロッドを使用すると、保持筒に対して供給ロッドを動かすスペースが必要となり、装置が大型化するという問題が生じ得る。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、磁性を持つワークの供給不良を抑制できる小型のワーク供給装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
磁性を持つワークを供給するワーク供給装置であって、
上記ワークを筒軸方向にガイド可能なガイド空間と、径方向の側方に上記ガイド空間に連通するように設けられた入口開口部と、上記筒軸方向の一端側に上記ガイド空間に連通するように設けられた出口開口部と、を有する筒状のホルダと、
上記ホルダの上記入口開口部に接続されたワーク供給管を有し、上記ワークを上記ワーク供給管から上記入口開口部を通じて上記ガイド空間に送り込むワークフィーダーと、
上記ホルダの周方向に上記ガイド空間を取り囲むように設けられており、上記ワークを磁力によって上記ガイド空間で浮かせて保持する複数のマグネットと、
上記ホルダの上記ガイド空間で保持された上記ワークを上記筒軸方向のスライド動作によって上記ホルダの上記出口開口部から押し出すロッド部材と、
を備える、ワーク供給装置、
にある。
【発明の効果】
【0008】
上述の態様のワーク供給装置は、筒状のホルダの入口開口部にワークフィーダーのワーク供給管が接続されるように構成されている。このワーク供給装置において、ワークフィーダーによってワーク供給管からホルダの入口開口部を通じてガイド空間に送り込まれたワークは、複数のマグネットの磁力によってガイド空間で浮いた状態で保持される。そして、ホルダのガイド空間で保持されたワークは、ロッド部材の筒軸方向のスライド動作によってホルダの一端側の出口開口部から押し出される。
【0009】
上記構成のワーク供給装置によれば、ワークフィーダーのワーク供給管がホルダと一体化されており、ワーク供給管からホルダの出口開口部まで、ワークのための供給経路が途中で分断されることなく連続して形成される。このような供給経路を用いることによって、ワークをワーク供給管からホルダまでダイレクトで動かすことができ、ホルダへのワークの供給不良が発生するのを抑制できる。これに対して、ホルダと別部材との間で、空間を隔ててワークを受け渡すような構造を採用すると、そもそもホルダ側の供給経路と別部材側の供給経路が分断されることになり、ホルダと別部材との間の位置ズレなどの要因によってホルダへのワークの供給不良が生じるため不利である。
【0010】
また、上記構成のワーク供給装置によれば、ホルダにワークを受け渡す別部材として可動体を使用しないため、ホルダに対して可動体を動かすスペースが不要である。これにより、ワーク供給装置が大型化するのを防ぐことができる。
【0011】
したがって、上述の態様によれば、磁性を持つワークの供給不良を抑制できる小型のワーク供給装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1のワーク供給装置の部分断面図。
図2図1のII-II線矢視断面図。
図3】実施形態1のワーク供給装置のワーク保持動作時の様子を示す部分断面図。
図4】実施形態1のワーク供給装置のワーク供給動作時の様子を示す部分断面図。
図5】実施形態2のワーク供給装置の部分断面図。
図6】実施形態2のワーク供給装置のワーク保持動作時の様子を示す部分断面図。
図7図6のVII-VII線矢視断面図。
図8】実施形態3のワーク供給装置の部分断面図。
図9】実施形態3のワーク供給装置のワーク保持動作時の様子を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0014】
上述の態様のワーク供給装置において、上記複数のマグネットは、N極とS極のそれぞれの対が上記ホルダの径方向に対向し、且つ、上記周方向に隣り合う2つの極が互いに異なるように配置されているのが好ましい。
【0015】
このワーク供給装置によれば、複数のマグネットの配置を工夫することによって、ワークに磁力を均等に付与することができ、ワークの外周面とホルダの内周面との間の微小隙間が周方向に概ね一定となるように、ワークを保持できる。これにより、ワークとホルダの内周面との間に生じる接触抵抗を抑制することができる。
【0016】
上述の態様のワーク供給装置において、上記ワークフィーダーは、上記ワーク供給管の管内に上記ホルダの上記入口開口部に向けてガスを噴射可能なガス噴射機構を有し、上記ガス噴射機構が上記ワーク供給管の管内にガスを噴射することによって上記ガイド空間に上記ワークを送り込むように構成されているのが好ましい。
【0017】
このワーク供給装置によれば、ガス噴射機構によるガス噴射力を利用してホルダの入口開口部を通じてガイド空間にワークを送り込むことができる。
【0018】
上述の態様のワーク供給装置において、上記ワークフィーダーは、押し込みロッドを退避位置と上記ワーク供給管の管内の押し込み位置との間で駆動するロッド駆動機構を有し、上記ロッド駆動機構が上記押し込みロッドを上記退避位置から上記押し込み位置まで駆動することで上記ガイド空間に上記ワークを送り込むように構成されているのが好ましい。
【0019】
このワーク供給装置によれば、ロッド駆動機構の押し込みロッドによる押圧力を利用してホルダの入口開口部を通じてガイド空間にワークを物理的に送り込むことができる。これにより、ワークの供給不良を抑制する効果を高めることができる。
【0020】
上述の態様のワーク供給装置において、上記複数のマグネットを第1マグネットとしたとき、上記押し込みロッドの先端部には第2マグネットが設けられており、上記押し込みロッドが上記押し込み位置にあるとき、上記第1マグネットと上記第2マグネットとの協働で上記ワークを上記ガイド空間で保持するように構成されているのが好ましい。
【0021】
このワーク供給装置によれば、押し込みロッドの先端部に第2マグネットを設けることによって、ワークを押し込むときに、押し込みロッドに対するワークの位置ズレを防ぐことができる。また、第1マグネットと第2マグネットとの協働でワークを保持するようにすれば、ホルダの入口開口部からガイド空間へのワークの受け渡し動作の円滑化を図ることができる。
【0022】
以下、上述の態様の一実施形態であるピッキング装置の具体的な構造について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
なお、本明細書では、特に断わらない限り、ワーク供給装置を構成する筒状のホルダの筒軸方向を矢印Xで示し、そのホルダの径方向を矢印Yで示し、そのホルダの周方向を矢印Zで示すものとする。
【0024】
(実施形態1)
1.ワーク供給装置101の全体構造
図1に示されるように、実施形態1のワーク供給装置101は、磁性を持つワークWを供給するためのものである。このワーク供給装置101は、電気抵抗溶接装置の一部を構成している。なお、電気抵抗溶接装置は既知のものであり、その詳細な説明は省略する。本形態において、ワークWは、後述の金属積層体40(図4を参照)を電気抵抗溶接するのに用いる「リベット」と称される部材である。このワークWは、平面視の形状が円形である。このときの電気抵抗溶接技術は、一般的に、「RPW(レジスタンス・ピアス・ウエルディング)」と称される。
【0025】
ワーク供給装置101は、主要な構成要素として、ホルダ10と、ロッド部材15と、ワークフィーダー20と、複数のマグネット31と、を備えている。
【0026】
2.ホルダ10の構造
ホルダ10は、筒軸方向Xに延びる筒状のものである。このホルダ10は、ガイド空間11と、入口開口部12と、出口開口部13と、を有する。ガイド空間11は、ワークWを筒軸方向Xにガイド可能な、ホルダ10の筒内空間である。このガイド空間11は、径方向Yの寸法がワークWの外径を若干上回り、ワークWとの間に微小隙間d(図2を参照)を形成するように寸法設定されている。入口開口部12は、ホルダ10の径方向Yの側方にガイド空間11に連通するように設けられている。この入口開口部12は、ホルダ10の側壁部を貫通している。出口開口部13は、ホルダ10の筒軸方向Xの一端側にガイド空間11に連通するように設けられている。
【0027】
ホルダ10には、ブラケットを介して昇降シリンダ14が連結されている。このため、ホルダ10は、筒軸方向Xを上下方向としたとき、昇降シリンダ14によって下降方向X1及び上昇方向X2に駆動できるように構成されている。昇降シリンダ14は、溶接処理時に金属積層体40に対してホルダ10を近づけたり引き離したりするのに使用される。
【0028】
ホルダ10の外部には、周方向Zに複数のガス噴射機構16が設けられている。ガス噴射機構16は、ホルダ10のガイド空間11にガスを噴射可能な機能を有する。このガス噴射機構16は、ガス供給源(図示省略)に接続された噴射管16aを有し、この噴射管16aがガイド空間11に連通している。このガス噴射機構16は、ワークWのガイド動作を邪魔するような異物がホルダ10の内面に付着するのを防ぐ機能や、溶接処理時に金属積層体40の溶融によって飛散するスパッタを吹き飛ばす機能を果たす。
【0029】
3.ロッド部材15の構造
ロッド部材15は、ホルダ10のガイド空間11を初期位置P1(図1中の実線位置を参照)から押し出し位置P2(図1中の二点鎖線で示す位置を参照)までの間で筒軸方向Xにスライドできるように設けられている。このロッド部材15は、ホルダ10のガイド空間11で保持されたワークWを筒軸方向Xのスライド動作によってホルダ10の出口開口部13から押し出す機能を有する。このロッド部材15の先端面(図1中の下端面)は、ワークWのための押圧面15aとなる。一方で、本形態において、このロッド部材15は、電気抵抗溶接装置の電極としての機能を果たすものであり、溶接処理時にワークWを金属積層体40に押し付けるのにも使用される。
【0030】
4.ワークフィーダーの構造
ワークフィーダー20は、ワーク供給管21と、ガス噴射機構22と、ストッパー機構23と、を有する。このワークフィーダー20は、ワークWをワーク供給管21からホルダ10の入口開口部12を通じてガイド空間11に1つずつ順番に送り込むためのものである。
【0031】
ワーク供給管21は、ホルダ10の入口開口部12に接続されてホルダ10と一体化されている。このワーク供給管21の管内の供給路21aは、ホルダ10の入口開口部12を通じてガイド空間11に連通している。供給路21aは、1つのワークWのみが移動できる大きさの断面形状を有する。このため、ワークWは、ワーク供給管21の供給路21aからガイド空間11まで移動できるようになっている。また、ワーク供給管21は、ホルダ10の入口開口部12側の水平領域を最低所として、その水平領域から入口開口部12とは反対側の高所領域まで斜め上方に延びる傾斜構造を有する。この傾斜構造によれば、ワーク供給管21の供給路21aのうちの高所領域にあるワークWをその自重によって入口開口部12側の水平領域まで動かすことができる。
【0032】
ガス噴射機構22は、ワーク供給管21の管内にホルダ10の入口開口部12に向けてガスを噴射可能な機能を有する。このガス噴射機構22は、ガス供給源(図示省略)に接続された噴射管22aを有し、この噴射管22aがワーク供給管21の供給路21aに連通している。このガス噴射機構22は、ワークWを入口開口部12に向けて動かす助けになる。このガス噴射機構22がワーク供給管21の管内にガスを噴射すると、ガスから受ける押圧力を利用してホルダ10のガイド空間11にワークWを送り込むことができる。
【0033】
なお、ガス噴射機構16,22として、汎用性の高いエア噴射機構を採用するのが好ましい。勿論、必要に応じて、ガス噴射機構16,22がエア以外の各種のガスを噴射するようにしても良い。設備コストを低く抑えるためには、ガス噴射機構16とガス噴射機構22を同一のガス供給源に接続するのが好ましい。また、ワーク供給管21の傾斜構造のみで、ワークWをホルダ10のガイド空間11に送り込むことができる場合には、ガス噴射機構22を省略しても良い。
【0034】
ストッパー機構23は、ワークWをホルダ10のガイド空間11に送り込むタイミングを調節するためのものである。このストッパー機構23は、ストッパー23aと、ストッパー23aを駆動するアクチュエータ(図示省略)と、を有する。ストッパー23aは、ワーク供給管21の供給路21aに突出しない第1位置Q1と供給路21aに突出する第2位置Q2との間で駆動される。このストッパー機構23によれば、ストッパー23aが第1位置Q1に設定されるとガイド空間11へのワークWの送り込みが開始され、ストッパー23aが第2位置Q2に設定されるとガイド空間11へのワークWの送り込みが一時的に停止される。
【0035】
5.マグネット31の構造
図1及び図2に示されるように、ホルダ10の周方向Zには、ガイド空間11を取り囲むように複数のマグネット31が設けられている。複数のマグネット31は、ホルダ10に内蔵されており、筒軸方向Xに延びている。本形態のマグネット31は、単体形状が直方体であり、ホルダ10の径方向Yの一方の面をN極とし他方の面をS極とする永久磁石である。複数のマグネット31は、ワークWを磁力によってガイド空間11で浮かせて保持するためのものである。
【0036】
図2に示されるように、本形態では、4つのマグネット31が周方向Zに90度間隔で、すなわち等間隔で配置されている。また、4つのマグネット31は、N極とS極のそれぞれの対が径方向Yに対向し、且つ、周方向Zに隣り合う2つの極が互いに異なるように配置されている。すなわち、4つのマグネット31のうち、径方向Yに対向する1つの対の2つのマグネット31はN極対N極の関係にあり、径方向Yに対向するもう1つの対の2つのマグネット31はS極対S極に関係にある。4つのマグネット31は、ガイド空間11側の面が周方向Zに、N極、S極、N極、S極の順番で配列されるように配置されている。
【0037】
4つのマグネット31を上述のように配置すれば、ホルダ10を筒軸方向Xから見たとき、ホルダ10の周方向Zに隣り合う2つのマグネット31の間にループ状の磁力線31aが形成される。なお、図2では、説明の便宜上、4つの磁力線31aのみを示している。このような磁力線31aで示される磁力を利用すれば、ワークWに磁力を均等に付与することができ、ワークWの外周面とホルダ10の内周面との間の微小隙間dが周方向Zに概ね一定となるように、ワークWを保持できる。
【0038】
これにより、ホルダ10のガイド空間11においてワークWを筒軸方向Xにガイドするときに、ワークWとホルダ10の内周面との間に生じる接触抵抗を抑制する抑制効果が得られる。なお、この抑制効果を得るために、マグネット31の数を4の倍数に設定するのが好ましい。また、磁力線31aの効果を強めるためには、ホルダ10をアルミニウムなどの非磁性材料によって製作するのが好ましい。磁力線31aの効果を強めることによって、ワークWをその自重に抗してガイド空間11におけるロッド部材15の直下位置で保持できる。
【0039】
6.ワーク保持動作
次に、ワーク供給装置101によるワーク保持動作について説明する。図3に示されるように、ワーク保持動作では、先ず、ホルダ10を金属積層体40に近づけるように昇降シリンダ14によって下降方向X1に駆動する。これにより、ホルダ10は、その出口開口部13が金属積層体40によって下方から覆われる。その後、ロッド部材15を初期位置P1に維持した状態で、ストッパー機構23によってストッパー23aを第2位置Q2から第1位置Q1まで一時的に駆動する。これにより、1つのワークWがワーク供給管21の供給路21aをその自重で入口開口部12に向けて動く。また、このワークWにガス噴射機構22によってガスを噴射する。これにより、このワークWは、ガスから受けるガス噴射力を利用してホルダ10の入口開口部12を通じてガイド空間11に送り込まれる。そして、ワークWは、4つのマグネット31の磁力によって、ガイド空間11におけるロッド部材15の直下位置で一時的に保持される。
【0040】
7.ワーク供給動作
次に、ワーク供給装置101によるワーク供給動作について説明する。図4に示されるように、ワーク供給動作では、ガイド空間11で一時的に保持されたワークWに対して、ロッド部材15を下降方向X1に駆動させてワークWを押圧する。そして、ロッド部材15をその押圧面15aを介してワークWを金属積層体40に押し付けるまで下降方向X1に駆動する。これにより、ワークWをガイド空間11において下降方向X1にガイドして、金属積層体40まで供給することができる。このとき、ワークWに作用する磁力は、ワークWが下降方向X1に動いても変化しないため、入口開口部12から出口開口部13に至るまでワークWの一定の保持状態が維持される。
【0041】
上述のワーク保持動作時及びワーク供給動作時に、ガス噴射機構16によってホルダ10のガイド空間11にガスを噴射すれば、ワークWのガイドを阻害する異物がホルダ10の内面に付着するのを防ぐことができる。これにより、ガイド空間11においてワークWを円滑にガイドすることができる。
【0042】
8.溶接処理
ワーク供給動作に引き続いて、ワークWを使用して金属積層体40を溶接処理する。図4に示されるように、ワークW及び金属積層体40を、ロッド部材15である一方の電極と他方の電極17とによって筒軸方向Xの両側から挟圧する。その後、溶接トランス(図示省略)から供給された溶接電流を両電極間に流すことによって、金属積層体40を溶接することができる。この溶接処理時に、ガス噴射機構16によってホルダ10のガイド空間11にガスを噴射すれば、金属積層体40の溶融によって飛散するスパッタを吹き飛ばすことができる。溶接処理前に、ホルダ10を金属積層体40から遠ざけるように昇降シリンダ14によって上昇方向X2に駆動する。
【0043】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0044】
実施形態1のワーク供給装置101は、筒状のホルダ10の入口開口部12にワークフィーダー20のワーク供給管21が接続されるように構成されている。このワーク供給装置101において、ワークフィーダー20によってワーク供給管21からホルダ10の入口開口部12を通じてガイド空間11に送り込まれたワークWは、4つのマグネット31の磁力によってガイド空間11で浮いた状態で保持される。そして、ホルダ10のガイド空間11で保持されたワークWは、ロッド部材15の筒軸方向Xのスライド動作によってホルダ10の一端側の出口開口部13から押し出される。
【0045】
上記構成のワーク供給装置101によれば、ワークフィーダー20のワーク供給管21がホルダ10と一体化されており、ワーク供給管21からホルダ10の出口開口部13まで、ワークWのための供給経路が途中で分断されることなく連続して形成される。このような供給経路を用いることによって、ワークWをワーク供給管21からホルダ10までダイレクトで動かすことができ、ホルダ10へのワークWの供給不良が発生するのを抑制できる。
【0046】
また、上記構成のワーク供給装置101によれば、ホルダ10にワークWを受け渡す別部材として可動体を使用しないため、ホルダ10に対して可動体を動かすスペースが不要である。これにより、ワーク供給装置101が大型化するのを防ぐことができる。
【0047】
したがって、上述の実施形態1によれば、磁性を持つワークWの供給不良を抑制できる小型のワーク供給装置101を提供することが可能になる。
【0048】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明を省略する。
【0049】
(実施形態2)
図5に示されるように、実施形態2のワーク供給装置102は、ワークフィーダー20Aの構造が、実施形態1のワーク供給装置101のワークフィーダー20のものと相違している。その他の構成は、実施形態1の場合と同様である。
【0050】
ワークフィーダー20Aは、ワークフィーダー20と同様に、ワークWをワーク供給管21から入口開口部12を通じてガイド空間11に1つずつ順番に送り込むためのものである。このワークフィーダー20Aは、押し込みロッド25を退避位置R1とワーク供給管21の管内の押し込み位置R2との間で駆動するロッド駆動機構24を有する。押し込みロッド25は、非磁性材料からなり、その先端部にはマグネット32が設けられている。このマグネット32は、ワークWを吸着保持することができる永久磁石である。押し込みロッド25が押し込み位置R2にあるとき、マグネット32は、1つのマグネット31の直上に重なり合うように配置される。
【0051】
本形態において、ロッド駆動機構24はエアシリンダである。押し込みロッド25はピストン26に連結されており、エアの圧力を利用してピストン26を径方向Yに動かすことによって、押し込みロッド25を退避位置R1と押し込み位置R2との間で駆動することができる。なお、ロッド駆動機構24として、エアシリンダ以外に、油圧シリンダや進退出力式電動モータなどの種々なものを採用することができる。
【0052】
図6に示されるように、ワーク供給装置102によるワーク保持動作では、ワークWがワーク供給管21の供給路21aに位置する状態で、ロッド駆動機構24が押し込みロッド25を退避位置R1から押し込み位置R2まで駆動する。これにより、このワークWは、マグネット32によって吸着保持された状態で、マグネット32を介して押し込みロッド25から受ける押圧力を利用してホルダ10の入口開口部12を通じてガイド空間11に送り込まれる。
【0053】
図7に示されるように、ガイド空間11に送り込まれたワークWは、第1マグネットである3つのマグネット31の磁力と、第2マグネットである1つのマグネット32の磁力によって、ガイド空間11におけるロッド部材15の直下位置で一時的に保持される。この場合、マグネット31とマグネット32との協働でワークWがガイド空間11で保持される。その後、ロッド部材15がワークWを押圧しながらマグネット32よりも下方まで駆動されると、このワークWは4つのマグネット31の磁力によって保持状態が維持される。その後のワーク供給動作及び溶接処理は、実施形態1の場合と同様である。
【0054】
実施形態2のワーク供給装置102によれば、押し込みロッド25による押圧力を利用してワークWをガイド空間11に物理的に送り込む構造であるため、ワークWの供給不良を抑制する効果を高めることができる。また、押し込みロッド25の先端部にマグネット32を設けることによって、ワークWを押し込むときに、押し込みロッド25に対するワークWの位置ズレを防ぐことができる。また、マグネット31とマグネット32との協働でワークWを保持するようにすれば、ホルダ10の入口開口部12からガイド空間11へのワークWの受け渡し動作の円滑化を図ることができる。
【0055】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0056】
実施形態2のワーク供給装置102に特に関連する変更例として、ロッド駆動機構24においてマグネット32を省略して押し込みロッド25がワークWを直に押圧する構造を採用しても良い。
【0057】
(実施形態3)
図8に示されるように、実施形態3のワーク供給装置103は、ワークフィーダー20Bの構造が、実施形態2のワーク供給装置102のワークフィーダー20Aのものと相違している。その他の構成は、実施形態2の場合と同様である。
【0058】
ワークフィーダー20Bは、ワークフィーダー20Aと同様に、ワークWをワーク供給管28から入口開口部12を通じてガイド空間11に1つずつ順番に送り込むためのものである。ワーク供給管28は、複数のワークWを積み重ねて収容することができる筒状のものであり、筒軸方向Xに延びる収容空間28aを有する。収容空間28aは、1つのワークWのみが移動できる大きさの断面形状を有する。
【0059】
図9に示されるように、ワーク供給装置103によるワーク保持動作では、ワーク供給管28の収容空間28aに複数のワークWが収容された状態で、ロッド駆動機構24が押し込みロッド25を退避位置R1から押し込み位置R2まで駆動する。これにより、ワーク供給管28の収容空間28aで最下段に位置するワークWは、マグネット32によって吸着保持された状態で、マグネット32を介して押し込みロッド25から受ける押圧力によってホルダ10の入口開口部12を通じてガイド空間11に送り込まれる。その後のワーク保持動作、ワーク供給動作及び溶接処理は、実施形態2の場合と同様である。
【0060】
実施形態3のワーク供給装置103によれば、ワークフィーダー20Bの径方向Yの大きさを小さく抑えることができる。これにより、ワーク供給装置103をより小型化するのに有効である。
【0061】
その他、実施形態2と同様の作用効果を奏する。
【0062】
本発明は、上述の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0063】
上述の実施形態では、ワークWを保持するマグネット31を永久磁石によって構成する場合について例示したが、これに代えて、電流が流れているときだけ磁石として機能する電磁石を使用することもできる。
【0064】
上述の実施形態では、電気抵抗溶接で使用するワーク供給装置101,102,103について例示したが、ワーク供給装置101,102,103を電気抵抗溶接以外の技術で使用することもできる。この場合、ワークWは磁性を持つものであれば良く、ワークWとしてリベット以外の部材を使用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10…ホルダ、 11…ガイド空間、 12…入口開口部、 13…出口開口部、 15…ロッド部材、 20,20A,20B…ワークフィーダー、 21,28…ワーク供給管、 22…ガス噴射機構、 24…ロッド駆動機構、 25…押し込みロッド、 31…マグネット(第1マグネット)、 32…マグネット(第2マグネット)、 101,102,103…ワーク供給装置、 R1…退避位置、 R2…押し込み位置、 W…ワーク、 X…筒軸方向、 Y…径方向、 Z…周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9