IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱鉛筆株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-シャープペンシル 図1
  • 特開-シャープペンシル 図2
  • 特開-シャープペンシル 図3
  • 特開-シャープペンシル 図4
  • 特開-シャープペンシル 図5
  • 特開-シャープペンシル 図6
  • 特開-シャープペンシル 図7
  • 特開-シャープペンシル 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115826
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/16 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B43K21/16 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021689
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】並木 義春
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353FA04
2C353FC13
2C353FC20
2C353FC26
2C353FE19
(57)【要約】
【課題】ノック量に対して筆記芯の操出量が小さいシャープペンシルを提供する。
【解決手段】シャープペンシル1は、軸筒2と、操作部と、チャック8であって、該チャック8の前後動により筆記芯6の解除及び把持を行うことで筆記芯6を前方に繰り出すことができるように構成されたチャック8と、操作部に対するノック操作を受けてチャック8を前進させる短縮機構10とを具備し、短縮機構10が、操作部の移動量よりもチャック8の前進量を小さくするように構成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、操作部と、チャックであって、該チャックの前後動により筆記芯の解除及び把持を行うことで筆記芯を前方に繰り出すことができるように構成されたチャックと、前記操作部に対するノック操作を受けて前記チャックを前進させる短縮機構とを具備し、
前記短縮機構が、前記操作部の移動量よりも前記チャックの前進量を小さくするように構成されているシャープペンシル。
【請求項2】
前記短縮機構が、
前記軸筒内に前後動可能且つ中心軸線回りに回転可能に配置され、第1カム部及び第2カム部を有する短縮カムと、
前記軸筒側の内周面に設けられた第1カム受け部と、
前記軸筒内に前後動可能に配置され、第2カム受け部を有するノックカムと、を有し、
ノック操作によって前記短縮カムを前進させると、前記第1カム部と前記第1カム受け部とが協働して前記短縮カムを回転させ、前記短縮カムの前進及び回転に伴い前記第2カム部と前記第2カム受け部とが協働して前記ノックカムを前進させて、前記チャックを前進させるように構成されている請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記第1カム部及び前記第1カム受け部において、一方が周方向に沿って傾斜する第1斜面を有し、他方が前記第1斜面に沿って摺動可能な第1作用部を有し、
前記第2カム部及び前記第2カム受け部において、一方が周方向に沿って前記第1斜面と同一方向に傾斜する第2斜面を有し、他方が前記第2斜面に沿って摺動可能な第2作用部を有する請求項2に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記第1カム部及び前記第1カム受け部において、前記一方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第1斜面を有し、対応するように前記他方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第1作用部を有し、
前記第2カム部及び前記第2カム受け部において、前記一方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第2斜面を有し、対応するように前記他方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第2作用部を有する請求項3に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記短縮カムが円筒状に形成され、前記第1カム部が前記第2カム部よりも径方向外方に配置されている請求項2乃至4のいずれか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項6】
前記第1作用部及び前記第2作用部の少なくとも一方が、対応する前記第1斜面又は前記第2斜面の少なくとも一部と相補的な斜面を有する請求項3又は4に記載のシャープペンシル。
【請求項7】
前記第1作用部及び前記第2作用部の少なくとも一方が、凸曲面を有する請求項3又は4に記載のシャープペンシル。
【請求項8】
前記第2斜面のピッチが、前記第1斜面のピッチよりも小さく設けられている請求項3又は4に記載のシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
シャープペンシルは、軸筒の後端部又は外周面に設けられた操作部と、前後動により筆記芯の解除及び把持を行うことで筆記芯を前方に繰り出すことができるように構成されたチャックとを有し、軸筒内に配置されたスプリングの付勢力に抗して操作部を前方に押圧するノック操作をする毎に、筆記芯が一定量だけ繰り出される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-362087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基本的に、ノック操作によるノック量、すなわち操作部の移動量は、チャックの前進量と等しく、筆記芯の操出量とは略等しい。したがって、ノック量よりも小さい量だけ筆記芯を繰り出すことはできない。突出する筆記芯の量、すなわち突出量が長いと、筆記時の筆圧で筆記芯が折れる虞があるため、同一のノック量でより短く筆記芯を繰り出すことができれば好ましい。
【0005】
本発明は、ノック量に対して筆記芯の操出量が小さいシャープペンシルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、軸筒と、操作部と、チャックであって、該チャックの前後動により筆記芯の解除及び把持を行うことで筆記芯を前方に繰り出すことができるように構成されたチャックと、前記操作部に対するノック操作を受けて前記チャックを前進させる短縮機構とを具備し、前記短縮機構が、前記操作部の移動量よりも前記チャックの前進量を小さくするように構成されているシャープペンシルが提供される。
【0007】
前記短縮機構が、前記軸筒内に前後動可能且つ中心軸線回りに回転可能に配置され、第1カム部及び第2カム部を有する短縮カムと、前記軸筒側の内周面に設けられた第1カム受け部と、前記軸筒内に前後動可能に配置され、第2カム受け部を有するノックカムと、を有し、ノック操作によって前記短縮カムを前進させると、前記第1カム部と前記第1カム受け部とが協働して前記短縮カムを回転させ、前記短縮カムの前進及び回転に伴い前記第2カム部と前記第2カム受け部とが協働して前記ノックカムを前進させて、前記チャックを前進させるように構成されていてもよい。前記第1カム部及び前記第1カム受け部において、一方が周方向に沿って傾斜する第1斜面を有し、他方が前記第1斜面に沿って摺動可能な第1作用部を有し、前記第2カム部及び前記第2カム受け部において、一方が周方向に沿って前記第1斜面と同一方向に傾斜する第2斜面を有し、他方が前記第2斜面に沿って摺動可能な第2作用部を有していてもよい。前記第1カム部及び前記第1カム受け部において、前記一方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第1斜面を有し、対応するように前記他方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第1作用部を有し、前記第2カム部及び前記第2カム受け部において、前記一方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第2斜面を有し、対応するように前記他方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第2作用部を有していてもよい。前記短縮カムが円筒状に形成され、前記第1カム部が前記第2カム部よりも径方向外方に配置されていてもよい。前記第1作用部及び前記第2作用部の少なくとも一方が、対応する前記第1斜面又は前記第2斜面の少なくとも一部と相補的な斜面を有していてもよい。前記第1作用部及び前記第2作用部の少なくとも一方が、凸曲面を有していてもよい。前記第2斜面のピッチが、前記第1斜面のピッチよりも小さく設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、ノック量に対して筆記芯の操出量が小さいシャープペンシルを提供するという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態によるシャープペンシルの縦断面図である。
図2図2は、短縮機構の分解組立図である。
図3図3は、短縮カムの斜視図である。
図4図4は、短縮カムの縦断面図である。
図5図5は、ノックカムの斜視図である。
図6図6は、前軸の斜視図である。
図7図7は、短縮機構のカムの動作を示す縦断面図である。
図8図8は、短縮機構のカムの動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に亘り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0011】
図1は、本発明の実施形態によるシャープペンシル1の縦断面図であり、図2は、短縮機構10の分解組立図である。
【0012】
シャープペンシル1は、前軸3と後軸4と口先部材5とを備えた軸筒2を有している。前軸3の後部は、後軸4の前端部の内部に挿入されて嵌合している。口先部材5の後端部は、前軸3の前端部の内部に挿入されて螺合している。前軸3において露出している外周面には、弾性材料によって形成された把持部3aが設けられている。シャープペンシル1は、軸筒2の先端から筆記芯6が突出するように構成されている。本明細書では、シャープペンシル1の軸線方向において、筆記芯6側を「前」側と規定し、筆記芯6側とは反対側を「後」側と規定する。
【0013】
軸筒2の内部には円筒状の芯ケース7が同軸状に配置されている。芯ケース7の後方には短縮機構10が配置されている。芯ケース7の前端部にはチャック8が連結されている。チャック8は、その軸線に沿って通孔が形成されている。チャック8の前端部は、三方向に分割されて、分割された前端部は、リング状に形成された締め具9の内部に遊嵌されるようにして装着されている。締め具9は、前軸3の前端部の内面に嵌合する円筒状の支持部材11の内面に装着されている。口先部材5の前端開口近傍の内部には、中央に通孔が形成されたゴム製の保持チャック12が配置されている。保持チャック12の通孔は、筆記芯6の外周面に摺接し、筆記芯6を一時的に保持するように作用する。支持部材11の後方には、リターンスプリング13が配置されている。リターンスプリング13の前端部は、支持部材11の後端面によって支持され、芯ケース7、ひいてはチャック8は、リターンスプリング13によって後方に付勢されている。
【0014】
芯ケース7の後方の軸筒2の後端部の内部には、短縮機構10を介して円筒状のノック部材14が配置されている。ノック部材14の後端部の内側には、筆記芯6による筆跡を消去可能な消去部材15が着脱可能に取り付けられている。ノック部材14の後端部の外側には、消去部材15を覆うカバー部材16が着脱可能に取り付けられている。ノック部材14の前半分の外周面を包囲するようにコイルスプリング17が配置されている。後軸4の内周面には、環状に形成された環状突起4aが形成されている。コイルスプリング17の前端部は、環状突起4aの後端面によって支持され、コイルスプリング17によってノック部材14、ひいては消去部材15及びカバー部材16が後方へ付勢されている。ノック部材14の前端部の外周面には環状突起4aの前端面と係止可能な係止突起14aが形成され、コイルスプリング17の付勢力によって、ノック部材14が軸筒2から外れることが防止される。図2に示されるように、ノック部材14の前端開口から後方に向かって延びる2つのスリット14bが形成されている。
【0015】
短縮機構10は、軸筒2側の内周面に設けられた第1カム受け部である回転カム受け部20と、軸筒2内に前後動可能且つ中心軸線回りに回転可能に配置され、第1カム部及び第2カム部を有する短縮カム30と、軸筒2内に前後動可能に配置され、第2カム受け部を有するノックカム40と、を有している。短縮カム30及びノックカム40は、円筒状の部材である。短縮機構10は、芯ケース7を介してリターンスプリング13によって後方に付勢されている。さらには、短縮機構10の後方には、ノック部材14、消去部材15及びカバー部材16が配置されている。
【0016】
シャープペンシル1において、リターンスプリング13の付勢力に抗して、軸筒2の後端部に設けられた操作部であるカバー部材16を押圧するノック操作をすると、短縮機構10を介して芯ケース7が軸筒2の内部において前進する。芯ケース7の前進によって、チャック8及び筆記芯6が前進し、チャック8の前端部が締め具9から突出することで筆記芯6の把持状態が解除される。次いで、ノック操作の押圧を解除すると、芯ケース7及びチャック8は、リターンスプリング13の付勢力によって軸筒2の内部において後退する。このとき、筆記芯6は保持チャック12によって保持されている。この状態でチャック8は後退してその前端部が締め具9の内部に収容されることで、筆記芯6を再び把持状態にする。すなわち、操作部のノック操作の繰り返しによるチャック8の前後動によって筆記芯6の解除と把持が行われ、その結果、筆記芯6はチャック8から順次前方に繰り出される。要するに、軸筒2内に配置されたリターンスプリング13の付勢力に抗して操作部を前方に押圧するノック操作をする毎に、筆記芯6が一定量だけ繰り出される。
【0017】
図3は、短縮カム30の斜視図であり、図4は、短縮カム30の縦断面図である。短縮カム30の前端面には、前方に面したカム面を有する回転カム部31が形成されている。回転カム部31は、周方向に沿って傾斜する2つの第1斜面32を有している。2つの第1斜面32は、同一方向に傾斜し、短縮カム30の中心軸線に対して対称的に配置されている。第1斜面32の各々は略半周に亘って形成され、第1斜面32の各々は、縦壁33によって接続されている。回転カム部31は、第1カム部を構成する。
【0018】
短縮カム30の内部には、前方に面したカム面を有する押出カム部34が形成されている。押出カム部34は、周方向に沿って第1斜面32と同一方向に傾斜する2つの第2斜面35を有している。2つの第2斜面35は、同一方向に傾斜し、短縮カム30の中心軸線に対して対称的に配置されている。押出カム部34は、第2カム部を構成する。回転カム部31は、押出カム部34よりも前方に配置されている。なお、回転カム部31と押出カム部34とが軸線方向において同じ位置となるように設けられていてもよく、回転カム部31を押出カム部34よりも後方に設けられていてもよい。回転カム部31は押出カム部34よりも径方向外方に配置されていることから、回転カム部31及び押出カム部34は、径方向において隣接する二重のカム面を構成する。短縮カム30の後端面36には、円形開口37が形成されている。円形開口37を介して、筆記芯6を芯ケース7内に挿入することができる。
【0019】
短縮カム30において、回転カム部31の第1斜面32と押出カム部34の第2斜面35とは、異なる傾斜角度、すなわち異なるピッチを有している。ピッチとは、周方向に沿って設けられた斜面が、中心軸線回りに360度の1周分設けられている場合における軸線方向の長さをいう。具体的には、シャープペンシル1において、第2斜面35のピッチは、第1斜面32のピッチの2倍となるように設定されている。
【0020】
図5は、ノックカム40の斜視図である。ノックカム40の後端部の外周面には、より小径の小径部41が形成され、小径部41の外周面には、後方に面したカム面を有する押出カム受け部42が形成されている。押出カム受け部42は、周方向に沿って傾斜する2つの第3斜面43を有している。2つの第3斜面43は、短縮カム30の第2斜面35と同一方向及び同一角度に傾斜し、第2斜面35と協働するように構成されている。ノックカム40の前端部の外周面には、軸線方向に延びる2つの突起部44が形成されている。2つの突起部44は、周方向に沿って等間隔に設けられている。押出カム受け部42は、第2カム受け部を構成する。
【0021】
図6は、前軸3の斜視図である。前軸3は、軸線方向における中央部分に中心軸線回りに形成された環状のフランジ部3bを有している。フランジ部3bの前端面よりも前方に把持部3aが設けられている。図1に示されるように、フランジ部3bの後部において後軸4の前端部が嵌合し、したがって、フランジ部3bの後端面には後軸4の前端面が当接している。前軸3は、フランジ部3bからさらに後方に延在し、前軸3の後端部には、短縮機構10を構成する回転カム受け部20が形成されている。
【0022】
回転カム受け部20は、後方に面するように前軸3の後端面に形成された、周方向に沿って傾斜する2つの第4斜面21を有している。第4斜面21は、短縮カム30の回転カム部31の第1斜面32と同一方向及び同一角度に傾斜し、第1斜面32と協働するように構成されている。2つの第4斜面21は、前軸3の後端面から前方に向かって延びる2つのガイド溝22によって離間している。
【0023】
図1を参照しながら、シャープペンシル1の各部材の組み立てについて説明する。後軸4の後端開口から、コイルスプリング17が配置されたノック部材14が挿入される。このとき、スリット14bがあることによって、ノック部材14の前端部が弾性変形し、後軸4の環状突起4aを乗り越えることができる。次いで、消去部材15及びカバー部材16がノック部材14に対して取り付けられる。
【0024】
一方、口先部材5、芯ケース7及びチャック8等が配置された前軸3の後端開口から、ノックカム40が挿入される。それによって、芯ケース7の環状の後端面に対してノックカム40の前端面が当接するように配置される。ノックカム40は、突起部44が回転カム受け部20のガイド溝22内に配置されるように中心軸線回りの位置が決定される。ノックカム40の後端部は、前軸3の後端部から後方に突出している。次いで、短縮カム30の前端開口にノックカム40の後端部が挿入されるように、短縮カム30が配置される。それによって、短縮カム30の回転カム部31が、前軸3の回転カム受け部20と協働するように配置されると共に、短縮カム30の押出カム部34が、ノックカム40の押出カム受け部42と協働するように配置される。次いで、前軸3が後軸4の前端開口から挿入されて、前軸3と後軸4とが嵌合し、シャープペンシル1の組み立てが完了する。
【0025】
図7は、短縮機構10のカムの動作を示す縦断面図であり、図8は、短縮機構10のカムの動作を示す模式図である。図7(A)及び図8(A)は対応する図面であり、図7(B)及び図8(B)は対応する図面である。
【0026】
特に図8は、回転カム受け部20と、短縮カム30と、ノックカム40との位置関係、特に、回転カム部31及び回転カム受け部20の位置関係と、押出カム部34及び押出カム受け部42の位置関係とを示す模式図である。図中、上方がシャープペンシル1の後側であり、下方がシャープペンシル1の前側である。図8では、各部材のカム又は突起について、相互の位置関係を明確にするため、径方向及び軸線方向の位置及び寸法、さらには形状を捨象して周方向に展開して示されている。例えば、短縮カム30では、第1斜面32を備えた回転カム部31及び第2斜面35を備えた押出カム部34が、模式的に一体的に示されており、第1斜面32の全長も短縮して示されている。ノックカム40では、第3斜面43及び突起部44が、模式的に一体的に示されている。
【0027】
ノックカム40の突起部44は、回転カム受け部20のガイド溝22内に配置されている。したがって、ノックカム40は、中心軸線回りの回転が規制されつつ、前後動可能である。短縮カム30の第1斜面32と回転カム受け部20の第4斜面21とが互いに当接すると共に、短縮カム30の第2斜面35とノックカム40の第3斜面43とが互いに当接するように配置されている。
【0028】
リターンスプリング13によって後方に付勢された芯ケース7を介して、ノックカム40が後方へ付勢されている。短縮カム30は、後方へ付勢されたノックカム40の第3斜面43と短縮カム30の第2斜面35との当接を介して、後方へ付勢されている。ノック部材14は、短縮カム30の後方に配置されている。ノック部材14の後方への移動は、ノック部材14の係止突起14aが後軸4の環状突起4aと係止することによって規制されている。
【0029】
図7(A)及び図8(A)は、ノック操作前のシャープペンシル1の状態の短縮機構10を示し、図7(B)及び図8(B)は、ノック操作を行い、カバー部材16、ひいては、チャック8及び筆記芯6が最も前進した状態の短縮機構10を示している。
【0030】
詳細には、図7(A)及び図8(A)に示された状態から、ノック操作を行うと、ノック部材14を介して短縮カム30が前進する。短縮カム30が前進すると、短縮カム30の回転カム部31と前軸3の回転カム受け部20とが協働し、軸筒2に対して短縮カム30を中心軸線回りに回転させる。そのため、第1斜面32が第4斜面21に沿って図中左下方向に摺動して、短縮カム30の前進及び回転が同時に行われる。他方、短縮カム30の前進及び回転に伴い、短縮カム30の押出カム部34とノックカム40の押出カム受け部42とが協働し、ノックカム40を前進させる。すなわち、第3斜面43が第2斜面35に沿って相対的に摺動して、ノックカム40の前進が行われ、図7(B)及び図8(B)に示された状態となる。
【0031】
なお、ノックカム40は、突起部44が回転カム受け部20のガイド溝22内に配置されていることによって、中心軸線回りの回転が規制されている。また、ノックカム40の前進に伴い、芯ケース7、ひいてはチャック8及び筆記芯6がリターンスプリング13の付勢力に抗して押圧されて一体的に前進する。ノック操作による操作部に対する押圧を解除すると、リターンスプリング13の付勢力によって、上述した短縮カム30、ノックカム40及び回転カム受け部20の協働によって、短縮カム30及びノックカム40についてノック操作時とは逆の動作が行われ、図7(A)及び図8(A)の状態に復帰する。その結果、ノックカム40の後退に伴い、芯ケース7、ひいてはチャック8がリターンスプリング13の付勢力によって一体的に後退し、筆記芯6の繰り出しが行われる。
【0032】
要するに、短縮カム30の回転カム部31と前軸3の回転カム受け部20との協働によって、短縮カム30に回転方向の運動を生じさせる。短縮カム30の回転によって、短縮カム30の押出カム部34とノックカム40の押出カム受け部42とが協働し、短縮カム30の前進量と比較して、ノックカム40の前進量を減少させる。具体的には、図7(A)の状態から、ノック操作によって距離D1だけ短縮カム30を前進させると、距離D1よりも小さい距離D2だけノックカム40、ひいてはチャック8が前進する(図7(B))。
【0033】
ノックカム40の前進量の減少量は、短縮カム30の回転量(回転角度)を決定する、回転カム部31の第1斜面32又は回転カム受け部20の第4斜面21の傾斜角又はピッチと、回転量に応じた前進を生じさせる、押出カム部34の第2斜面35又は押出カム受け部42の第3斜面43の傾斜角又はピッチとによって、幾何学的に設計可能である。
【0034】
例えば、押出カム部34の第2斜面35のピッチを回転カム部31の第1斜面32のピッチの1/2倍にした場合、チャック8の移動量は、ノック操作によるノック量、すなわちカバー部材16の移動量、ひいては短縮カム30の移動量の1/2倍となる。また、押出カム部34の第2斜面35のピッチを回転カム部31の第1斜面32のピッチの1/3倍にした場合、チャック8の移動量は、ノック操作によるノック量の1/3倍となる。
【0035】
以上より、短縮機構10によれば、ノック操作によるノック量よりもチャック8の前進量を減少させることができることから、ノック量に対して筆記芯6の操出量を小さくすることができる。それによって、使用者は、1回のノック操作で筆記芯が突出し過ぎるのを防止し、筆記時の筆圧で筆記芯が折れことが防止される。また、使用者は、ノック操作を繰り返すことによって、筆記芯6について好みの突出量まで微小な調整をすることができる。さらに、一般的なシャープペンシルと同様の筆記芯の操出量を維持しながら、操作部、すなわちカバー部材16の軸筒2の後端部からの突出量をより大きくし、操作部の移動可能な量をより大きくすることができる。この場合、より長いノック操作の途中でノック操作を止めることで、筆記芯の操出量を容易に調整することができる。
【0036】
さらに、短縮機構10では、第1カム部である回転カム部31及び第2カム部である押出カム部34が、軸線方向において同一の方向、すなわち前方に配置され、二重のカム面を構成する。そのため、短縮カムの前後方向における両端部に第1カム部及び第2カム部が配置されているような構成に比べ、短縮カム30、ひいては短縮機構10の全体の長さを短くすることができる。
【0037】
上述した実施形態では、短縮カム30の第1斜面32と回転カム受け部20の第4斜面21とが互いに協働し、互いに少なくとも一部と相補的な斜面を有する。また、短縮カム30の第2斜面35とノックカム40の第3斜面43とが互いに協働し、互いに少なくとも一部と相補的な斜面を有する。ここで、斜面とは、互いに協働する限りにおいて周方向に沿って傾斜していればよく、厳密な意味での斜面でなくてもよい。したがって、斜面は、曲面、すなわち凸曲面及び凹曲面を含む。
【0038】
回転カム受け部20は、第4斜面21に代えて、回転カム部31の第1斜面32に沿って摺動可能な第1作用部を有していてもよい。他方、回転カム部31は、第1斜面32に代えて、回転カム受け部20の第4斜面21に沿って摺動可能な第1作用部を有していてもよい。要するに、回転カム部31及び回転カム受け部20において、一方が周方向に沿って傾斜する第1斜面を有し、他方が第1斜面に沿って摺動可能な第1作用部を有していてもよい。同様に、押出カム受け部42は、第3斜面43に代えて、押出カム部34の第2斜面35に沿って摺動可能な第2作用部を有していてもよい。他方、押出カム部34は、第2斜面35に代えて、押出カム受け部42の第3斜面43に沿って摺動可能な第2作用部を有していてもよい。要するに、押出カム部34及び押出カム受け部42において、一方が周方向に沿って傾斜する第2斜面を有し、他方が第2斜面に沿って摺動可能な第2作用部を有していてもよい。
【0039】
第1作用部及び第2作用部は、凸曲面であってもよく、対応する第1斜面又は第2斜面に沿って摺動可能な限りにおいて任意に構成してもよい。第1作用部及び第2作用部の少なくとも一方が、対応する第1斜面又は第2斜面の少なくとも一部と相補的な斜面を有していてもよい。第2斜面のピッチが、第1斜面のピッチよりも小さく設けられていてもよい。第1斜面及び対応する第1作用部、並びに、第2斜面及び対応する第2作用部は、上述した実施形態のようにそれぞれ2つ設けられていてもよく、1つ又は3つ以上であってもよい。第1斜面及び対応する第1作用部、並びに、第2斜面及び対応する第2作用部が2つ以上設けられている場合には、それぞれが周方向に沿って等間隔に設けられていること、すなわち筆記具又は軸筒の中心軸線回りに対称的に配置されていることが好ましい。第1斜面及び対応する第1作用部、並びに、第2斜面及び対応する第2作用部が2つ以上設けられていると、1つの場合に比べて短縮カムの回転が安定するため好ましい。
【0040】
シャープペンシル1において、操作部は、軸筒2の後端部に設けられているが、軸筒の外周面に設けられていてもよい。回転カム受け部20は、軸筒2側の内周面に設けられていればよく、したがって、前軸3の後端面ではなく、後軸4の内周面に設けられていてもよい。
【0041】
上述した実施形態によれば、軸筒2と、操作部と、前後動により筆記芯6の解除及び把持を行うことで筆記芯6を前方に繰り出すことができるように構成されたチャック8と、操作部に対するノック操作を受けてチャック8を前進させる短縮機構10とを具備し、短縮機構10が、操作部の移動量よりもチャックの前進量を小さくするように構成されているシャープペンシルが提供される。そして、短縮機構10が、軸筒2内に前後動可能且つ中心軸線回りに回転可能に配置され、第1カム部及び第2カム部を有する短縮カム30と、軸筒2側の内周面に設けられた第1カム受け部と、軸筒2内に前後動可能に配置され、第2カム受け部を有するノックカム40と、を有し、ノック操作によって短縮カム30を前進させると、第1カム部と第1カム受け部とが協働して短縮カム30を回転させ、短縮カム30の前進及び回転に伴い第2カム部と第2カム受け部とが協働してノックカムを前進させて、チャックを前進させるように構成されている。
【符号の説明】
【0042】
1 シャープペンシル
2 軸筒
3 前軸
4 後軸
5 口先部材
6 筆記芯
7 芯ケース
8 チャック
10 短縮機構
12 保持チャック
13 リターンスプリング
14 ノック部材
15 消去部材
16 カバー部材
17 コイルスプリング
20 回転カム受け部
21 第4斜面
22 ガイド溝
30 短縮カム
31 回転カム部
32 第1斜面
34 押出カム部
35 第2斜面
40 ノックカム
42 押出カム受け部
43 第3斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8