(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115827
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】化粧板
(51)【国際特許分類】
B32B 5/28 20060101AFI20240820BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240820BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B32B5/28
B32B27/00 E
C08J5/24 CEZ
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021690
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 諒
(72)【発明者】
【氏名】伊井 祐貴
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA07
4F072AB03
4F072AB31
4F072AD12
4F072AE01
4F072AF06
4F072AF14
4F072AF19
4F072AF26
4F072AG03
4F072AG20
4F072AH02
4F072AH24
4F072AL09
4F072AL17
4F100AK01
4F100AK01A
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DG10
4F100DG10A
4F100DH01
4F100DH01A
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ82
4F100EJ86
4F100EJ86A
4F100HB00
4F100HB00B
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】 本発明が解決しようとする課題は、植物由来の樹脂材料を用いても、引張強度などの機械的特性が高く、耐煮沸性などの耐久性が良好で、ホルムアルデヒド放散量が抑制されている化粧板を提供することである。
【解決手段】 コア層と、化粧層と、を含み、コア層は、プリプレグを1枚以上含み、プリプレグは、繊維質基材に、フラン樹脂を含む樹脂液を含浸し乾燥させてなることを特徴とする化粧板であり、好ましくは、樹脂液が、さらにフルフリルアルコールを含むことを特徴とする化粧板。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層と、化粧層と、を含み、
コア層は、プリプレグを1枚以上含み、
プリプレグは、繊維質基材に、フラン樹脂を含む樹脂液を含浸し乾燥させてなることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
樹脂液が、さらにフルフリルアルコールを含むことを特徴とする請求項1記載の化粧板。
【請求項3】
樹脂液が、フラン樹脂100重量部に対し、フルフリルアルコールを1~300重量部含有することを特徴とする請求項2記載の化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂化粧板は豊富な色柄と、耐衝撃性、曲げ強度、耐汚染性等の物理・化学的性能、メンテナンス性など優れた特徴を有することから店舗、医療福祉施設など公共施設の家具・什器から住宅家具まで幅広い用途で使用されている。
【0003】
一般に、熱硬化性樹脂化粧板は、化粧層、コア層などを積層し、熱圧成形することにより製造することができる。この内、化粧層は、化粧板用の化粧紙に、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂を含む樹脂液を含浸し乾燥させた樹脂含浸化粧紙を用い、コア層は、繊維質基材に、バインダー樹脂(例えば、フェノール樹脂)などを含む樹脂液を含浸し乾燥させたプリプレグを1枚以上用いることにより製造することができる。その他、必要に応じて、裏打層や表面保護層が設けられている。
【0004】
近年では、石油資源に依存しない、バイオマス資源が注目を集めており、様々な技術分野において、石油由来原料から植物由来原料への置き換えが進みつつある。
【0005】
過去に、出願人は、植物由来原料であるリグニンを含む、リグニン系フェノール樹脂を用いた化粧板を発明した。具体的には、コア層として、繊維質基材に、バインダー樹脂であるリグニン系フェノール樹脂を含む樹脂液を含浸し乾燥させたプリプレグを用いて、化粧板を製造することに成功した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【0007】
ここで、植物由来原料であるリグニンを含む、リグニン系フェノール樹脂を用いた化粧板は、引張強度などの機械的特性や、耐煮沸性などの耐久性がやや低いことから、改善の余地があった。また、ホルムアルデヒドの放散量について、人体や環境への悪影響が懸念されていることから、さらなる低減が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、植物由来の樹脂材料を用いても、引張強度などの機械的特性が高く、耐煮沸性などの耐久性が良好で、ホルムアルデヒド放散量が抑制されている化粧板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、コア層と、化粧層と、を含み、コア層は、プリプレグを1枚以上含み、プリプレグは、繊維質基材に、フラン樹脂を含む樹脂液を含浸し乾燥させてなることを特徴とする化粧板である。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる化粧板は、植物由来の樹脂材料を用いても、引張強度などの機械的特性が高く、耐煮沸性などの耐久性が良好で、ホルムアルデヒド放散量が抑制されているという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<化粧板>
本発明にかかる化粧板は、コア層と、化粧層と、を含む。その製造例としては、最下層をコア層とし、化粧層を積層させた後、熱圧成形用の当板により挟み込み、温度:120~160℃、圧力:2~10MPa、時間:30分~3時間程度の条件で熱圧成形する方法が挙げられる。
【0012】
(コア層)
本発明にかかる化粧板は、コア層を含む。コア層としては、繊維質基材に、バインダー樹脂などを含む樹脂液を含浸し乾燥させたプリプレグを1枚以上用いる。
【0013】
繊維質基材としては、有機繊維基材や、無機繊維基材などが挙げられる。
【0014】
有機繊維基材としては、木材パルプ繊維を用いることによりバイオマス度が向上することから好ましく、例えば、針葉樹、広葉樹の晒し、未晒しのクラフトパルプ、サルファイトパルプ、その他の木材パルプ等を単独若しくは混合して用い、抄紙されたものが挙げられる。その他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンや、これらの変成物のほか、エチレン-酢酸ビニル共重合体などの各種の共重合体からなる繊維や、これらの混合物からなる複合繊維などが挙げられる。
【0015】
無機繊維基材としては、例えば、ガラス繊維、ロックウール、炭素繊維などを含む不織布、織布等が挙げられる。
【0016】
繊維質基材の坪量は、化粧板の強度や含浸効率を考えた際に、30~400g/m2であることが好ましく、50~350g/m2であることが特に好ましい。この範囲内であることにより、樹脂液の含浸性が向上する傾向がある。
【0017】
樹脂液は、フラン樹脂と、フルフリルアルコールや添加剤・充填材と、を含有する。
【0018】
フラン樹脂は、我が国において、鋳物用途として用いられることが多い。具体的な合成方法としては、酸性又は塩基性触媒下での、フルフラールとフェノール類の縮合反応、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合反応、フルフリルアルコール同士の縮合反応、などが挙げられ、適宜、添加剤を配合し変性物とすることもできる。
【0019】
フルフラールは、とうもろこしの芯などから抽出される成分を基に合成することができ、またフルフリルアルコールは、フルフラールの還元反応により合成することができる。特に、とうもろこしの芯は、食用には供されないため、現在の食糧問題と競合しないという利点があることから、フラン樹脂は、非可食系バイオマスプラスチックとして注目されている。
【0020】
フルフラールとフェノール類の縮合反応によりフラン樹脂を得る場合には、フェノール類として、フェノール、クレゾール、キシレノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどを用いることができる。
【0021】
また、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合反応によりフラン樹脂を得る場合には、アルデヒド類として、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、グリオキザール、ヘキサメチレンテトラミン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラールなどが挙げられる。
【0022】
フラン樹脂を合成する際には、アミノ系化合物を添加することにより、変性物とすることもできる。アミノ系化合物としては、メラミン、尿素、エチレン尿素、尿素誘導体、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどが挙げられる。
【0023】
フラン樹脂を合成する際の反応温度としては、60℃~160℃程度であることが好ましく、70℃~140℃程度であることが特に好ましい。また、その反応時間としては、45分~8時間程度であることが好ましく、1時間~6時間程度であることが特に好ましい。この範囲内であることにより、効率的にフラン樹脂を合成することができるため、生産性が向上する傾向がある。
【0024】
フラン樹脂の合成に用いる酸性触媒としては、例えば、アリールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、硝酸、アジピン酸、コハク酸、リン酸、ホウ酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸などが挙げられる。また、塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの水酸化物や、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類の他、アンモニアなどが挙げられる。
【0025】
本発明においては、上述したフラン樹脂に対して、さらにフルフリルアルコールを含むことができる。本発明の発明者らは、フルフリルアルコールを含むことにより、増粘を抑制できることから含浸性が向上し、また製造した化粧板の弾性率が上昇する傾向があることを見出した。
【0026】
このような効果を奏する理由としては、フルフリルアルコールは分子量が低いことから、希釈作用があり増粘を抑制できる作用があること、また発熱を伴い激しく反応する傾向があることから、フラン樹脂の反応性を高める作用があること、などによるものと推測される。
【0027】
フルフリルアルコールは、フラン樹脂100重量部に対し、固形分換算にて、1~300重量部含有することが好ましく、3~100重量部含有することがより好ましく、5~50重量部含有することがさらに好ましく、10~35重量部含有することが特に好ましい。
【0028】
さらに、樹脂液には、充填材を含むことができる。充填材としては、主に無機系充填剤があり、吸熱性金属水酸化物や、その他の充填剤が挙げられる。
【0029】
吸熱性金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられ、特に、水酸化アルミニウムを用いることが好ましい。これらは、結晶水を含んでおり、高温時に分解して水を放出し、吸熱反応となることから、燃焼時に温度上昇を抑制する効果があり、本発明にかかる化粧板の不燃性を向上させることが可能となる。
【0030】
吸熱性金属水酸化物の平均粒子径は、例えば、1~50μmとすることができる。この範囲内であることにより、樹脂液中での分散性が向上し、また繊維質基材への含浸性が向上する傾向がある。さらに、化粧板の表面が平滑な仕上がりとなることから、外観不良を抑制することができる。なお、本発明における平均粒子径は、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)により検出された粒度分布(体積分布)から算出された算術平均径である。
【0031】
その他の充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の炭酸塩、シリカ、タルク、フライアッシュなどが挙げられ、特に炭酸カルシウムを用いることが好ましい。炭酸カルシウムを用いることにより、製造工程における作業性や、製造後の切削性が一層向上する傾向がある。なお、炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム(沈降性炭酸カルシウム)をともに用いることができる。
【0032】
その他の充填剤を用いる場合、その平均粒子径は、例えば、0.05~30μmとすることができる。この範囲内であることにより、樹脂液中での分散性が向上し、また繊維質基材への含浸性が向上する傾向がある。さらに、化粧板の表面が平滑な仕上がりとなることから、外観不良を抑制することができる。
【0033】
吸熱性金属水酸化物と、その他の充填剤を併用する際には、吸熱性金属水酸化物100重量部に対し、その他の充填剤を5~500重量部含有することが好ましく、30~300重量部含有することが特に好ましい。この範囲内であることにより、平滑で良好な表面外観を有する化粧板が得られ、化粧板の不燃性が良好となり、吸熱性金属水酸化物が沈降しにくくなることから樹脂液の含浸性が向上する傾向がある。
【0034】
繊維質基材に樹脂液を含浸する際は、含浸率が、数1で示される算出方法にて、5~200%であることが好ましく、10~150%であることがさらに好ましく、20%~100%であることが特に好ましい。これらの範囲内であることにより、コア層の平滑性が向上するため化粧板の外観が良好となり、また樹脂液の含浸性が向上する傾向がある。さらに、コア層同士や、コア層と化粧層の密着性が向上することから、化粧板の層間剥離を抑制できる傾向がある。なお、式1における、含浸前重量とは、繊維質基材(又は後述する化粧紙、表面紙)の重量であり、含浸後重量とは、これらに樹脂液を含浸し、乾燥させた後の重量である。
含浸率(%)=(含浸後重量-含浸前重量)/含浸前重量×100 (1)
【0035】
(化粧層)
本発明にかかる化粧板は、化粧層を含む。化粧層としては、化粧板用の化粧紙に、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂を含む樹脂液を含浸し乾燥させた樹脂含浸化粧紙を用いる。
【0036】
化粧紙の坪量は、30~400g/m2であることが好ましく、50~250g/m2であることが特に好ましい。この範囲内であることにより、化粧板の表面物性や、樹脂液の含浸性が向上する傾向がある。化粧紙としては、着色されたものや、印刷により各種の模様を施したものを適宜用いることができる。
【0037】
熱硬化性樹脂としては、アミノ-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂のほか、ラジカル重合型熱硬化性樹脂などを用いることができる。
【0038】
アミノ-ホルムアルデヒド樹脂としては、アミノ系化合物と、アルデヒド系化合物を反応させた縮合物や、その変性物が挙げられる。
【0039】
アミノ系化合物としては、メラミン、尿素、エチレン尿素、尿素誘導体、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどが挙げられ、アルデヒド系化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、グリオキザール、ヘキサメチレンテトラミン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。
【0040】
また、メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコ-ルによってエーテル化したり、パラトルエンスルホンアミドなどの可塑化を促す反応性変性剤によって変性したりすることもできる。
【0041】
これらの中でも、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂が、耐熱性、耐摩耗性に優れることから好適に用いることができる。
【0042】
フェノール-ホルムアルデヒド樹脂としては、フェノール系化合物と、アルデヒド系化合物を、酸性又は塩基性触媒下にて反応させた縮合物や、その変性物が挙げられる。
【0043】
フェノール系化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが、アルデヒド系化合物としては、上述した化合物などが挙げられる。
【0044】
また、尿素、エチレン尿素、尿素誘導体、パラトルエンスルホンアミド、桐油、燐酸エステル類、グリコール類等の可塑化を促す反応性変性剤で変性したりすることもできる。
【0045】
ラジカル重合型熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂や、これらの混合物が挙げられる。
【0046】
不飽和ポリエステル樹脂は、二価アルコールと、二塩基酸と、をエステル化により反応させた不飽和ポリエステルに、重合性モノマーを加えることにより得ることができる。
【0047】
二価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。また、二塩基酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、アジピン酸などが挙げられる。
【0048】
重合性モノマーとしては、スチレン、オルトクロルスチレン、ジアリルフタレート、メチルメタクリレートなどが挙げられる。硬化させる際には、硬化剤として、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、アセト酢酸パーオキサイドなどの有機過酸化物や、必要に応じてコバルト錯塩等の硬化促進剤を加えることができる。
【0049】
ビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂と、不飽和一塩基酸と、をエステル化触媒により反応させることによって得ることができる。
【0050】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ビスフェノールAとエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとの付加物のジグリシジルエーテル、ビスフェノールF系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、クレゾールノボラック系エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0051】
不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノメチルマレート、モノプロピルマレート、ソルビン酸あるいはモノ(2-エチルヘキシル)マレートなどが挙げられ、不飽和一塩基酸と併用される多塩基酸としては、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,12-ドデカン二酸の他ダイマー酸などが挙げられる。二塩基酸無水物として無水マレイン酸、無水フタル酸などが挙げられる。三塩基酸無水物として無水トリメリット酸を使用した変性品も使用可能である。
【0052】
エステル化触媒としては、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリブチルアミン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;塩化リチウム、塩化クロム等の無機塩;2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラメチルホスフォニウムクロライド、ジエチルフェニルプロピルホスフォニウムクロライド、トリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ベンジルトリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ジベンジルエチルメチルホスフォニウムクロライド、ベンジルメチルジフェニルホスフォニウムクロライド、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスフォニウム塩;第二級アミン類;テトラブチル尿素;トリフェニルホスフィン;トリトリールホスフィン;トリフェニルスチビン等が挙げられる。
【0053】
(表面保護層)
本発明にかかる化粧板は、最表面に、表面保護層を積層しても良い。表面保護層としては、化粧板用の表面紙に、熱硬化性樹脂を含む樹脂液を含浸し乾燥させた樹脂含浸表面紙を用いる。
【0054】
化粧板用の表面紙としては、例えば、α-セルロース紙、布、不織布などが挙げられる。特に、熱硬化性樹脂の硬化後に、透明又は半透明になるα-セルロース紙を用いることが好ましい。
【0055】
また、耐摩耗性粉末が混抄された、耐摩耗性を有する表面紙を用いることもでき、その場合は、化粧板の耐摩耗性が向上する傾向がある。耐摩耗性粉末としては、酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化珪素などの無機系粉末が挙げられる。耐摩耗性を有する表面紙としては、α-セルロース紙に対して、耐摩耗性粉末が、重量部で1~40%、より好ましくは5~30%混抄されており、また坪量が5~80g/m2、より好ましくは10~60g/m2であるものが挙げられる。この範囲内であることにより、化粧紙における印刷柄の鮮明性の低下を抑制することができる傾向がある。
【0056】
樹脂液としては、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、上述したアミノ-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ラジカル重合型熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐摩耗性を向上させるため、アミノ-ホルムアルデヒド樹脂を用いることが好ましく、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を用いることが特に好ましい。また、樹脂液に、上述した充填材を適宜含むこともできる。
【0057】
本発明にかかる化粧板は、コア層と、化粧層と、場合により表面保護層を積層し、熱圧成形用の当板にて挟み込み、平板プレス、連続プレス等のプレス機で熱圧成形することにより得ることができる。
【0058】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【実施例0059】
<実施例1>
コア層の製造において、繊維質基材として、坪量200g/m2であるクラフト紙を用意した。
また、フラン樹脂100重量部と、硬化触媒(アリールスルホン酸と硫酸の混合物)4重量部と、を含有する樹脂液を調製した。
そして、当該樹脂液に水とメタノールを加え、クラフト紙に、式1で示される算出方法にて含浸率が50%となるように含浸し、110℃で2分30秒間乾燥して、プリプレグを製造した。
このプリプレグを4枚積層してコア層とした後、さらに、化粧層となる樹脂含浸化粧紙を積層し、熱圧成型用の当板を用いて、135℃、5.9MPa、60分間の条件で熱圧成形することにより、実施例1にかかる化粧板を得た。なお、樹脂含浸化粧紙は、坪量120g/m2である化粧板用の化粧紙に、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂100重量部と、硬化触媒(商品名:キャタニットA)1重量部と、を含有する樹脂液を含浸させ、120℃で2分間乾燥することにより製造した。
【0060】
<その他の実施例等>
実施例2は、フラン樹脂100重量部と、硬化触媒(アリールスルホン酸と硫酸の混合物)4重量部と、フルフリルアルコール20重量部と、からなる樹脂液を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い化粧板を得た。比較例1は、樹脂液として、リグニン系フェノール樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い化粧板を得た。特に、実施例2においては、含浸性が良好であったため、生産性が非常に高かった。
【0061】
また、各実施例等において得られた化粧板について、以下の物性評価を行った。これらの評価結果を表2に示す。
外観:熱圧成形後の化粧板の外観について、目視にて観察した。
寸法安定性:JIS K 6902に基づき、縦方向・横方向の変化率について測定した。
引張試験:JIS K 7162に基づき、縦方向・横方向について測定した。
弾性率:JIS K 7171に基づき、縦方向・横方向について、化粧面荷重・裏面荷重を測定した。
耐煮沸性:JIS K 6902に基づき、重量・厚みの増加率について測定し、煮沸後外観について目視にて観察した。
ホルムアルデヒド放散量:JIS A 1460:2021 「建築用ボード類のホルムアルデヒド放散量の試験方法-デシケーター法」に基づき、試験時間は22時間で測定した。
【0062】
【0063】
実施例1にかかる化粧板は、植物由来の樹脂材料を用いても、引張強度などの機械的特性が高く、耐煮沸性などの耐久性が良好で、ホルムアルデヒド放散量が抑制されているという効果を有していた。また、実施例2にかかる化粧板は、上記の効果を有した上で、特に弾性率が上昇するという効果を有していた。その一方で、比較例1にかかる化粧板は、上記の効果を有していなかった。