(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115828
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】クレーンの旋回制御装置およびこれを備えたクレーン、クレーンの旋回方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/84 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B66C23/84 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021691
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】菅野 直紀
(72)【発明者】
【氏名】新野 晃一朗
(72)【発明者】
【氏名】市川 靖生
(72)【発明者】
【氏名】黒津 仁史
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA01
3F205AA05
3F205EA07
(57)【要約】
【課題】上部旋回体の旋回動作によってアタッチメントに大きな横荷重が加わり当該アタッチメントが損傷、破損することを抑止する。
【解決手段】制御部80の旋回制御部802は、操作部81から出力された旋回指令信号を受け入れ、当該旋回指令信号に対応して上部旋回体12が下部走行体14に対して旋回するように旋回駆動部7Sを制御する。また、旋回制御部802は、上部旋回体12の旋回角速度が角速度設定部801によって設定された最大旋回角速度を超えないように旋回駆動部7Sを制御するとともに、上部旋回体12の実旋回角速度が前記最大旋回角速度に近接した又は前記最大旋回角速度を超えた場合に上部旋回体12の旋回角速度を低下させるための補助指令信号を出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部本体と、
前記下部本体に対して旋回可能なように前記下部本体に支持される上部旋回体と、
前記上部旋回体を旋回させるための操作を受け付けるとともに、前記操作の大きさに応じた旋回指令信号を出力する操作部と、
前記上部旋回体を前記下部本体に対して旋回させることが可能な旋回駆動部と、
前記上部旋回体に起伏方向に回動可能に支持される基端部と当該基端部とは反対側の先端部とを含むアタッチメントと、
前記アタッチメントの前記先端部から垂下され、吊り荷に接続される吊り荷ロープと、
を有するクレーンに用いられるクレーンの旋回制御装置であって、
負荷情報を取得する負荷情報取得部であって、前記負荷情報は、前記上部旋回体の旋回角速度に起因して前記アタッチメントに作用する、前記上部旋回体の旋回動作における接線方向に沿った荷重である横荷重に基づいて、前記旋回角速度の最大値である最大旋回角速度を設定するための情報である、負荷情報取得部と、
前記負荷情報取得部によって取得された前記負荷情報に基づいて、前記上部旋回体の旋回動作において許容される前記最大旋回角速度を設定する角速度設定部と、
前記操作部から出力された前記旋回指令信号を受け入れ、当該旋回指令信号に対応して前記上部旋回体が前記下部本体に対して旋回するように前記旋回駆動部を制御する旋回制御部であって、前記上部旋回体の旋回角速度が前記角速度設定部によって設定された前記最大旋回角速度を超えないように前記旋回駆動部を制御するとともに、前記上部旋回体の実旋回角速度が前記最大旋回角速度に近接した又は前記最大旋回角速度を超えた場合に前記上部旋回体の旋回角速度を低下させるための補助指令信号を出力する旋回制御部と、
を備える、クレーンの旋回制御装置。
【請求項2】
前記旋回制御部から出力された前記補助指令信号を受けて、前記上部旋回体の実旋回角速度が前記最大旋回角速度に近接した又は前記最大旋回角速度を超えたことを、前記操作部を操作することが可能な作業者に対して警告する警告部を更に備える、請求項1に記載のクレーンの旋回制御装置。
【請求項3】
前記旋回制御部は、前記操作部から受け入れた前記旋回指令信号に対して、前記上部旋回体の旋回角速度が低下するように補正を行い、当該補正された旋回指令信号を前記補助指令信号として前記旋回駆動部に入力する、請求項1に記載のクレーンの旋回制御装置。
【請求項4】
前記旋回制御部は、前記旋回駆動部に設けられた機械式ブレーキ装置に前記補助指令信号を入力することで、前記上部旋回体の旋回角速度を低下させるように前記上部旋回体の旋回にブレーキ力を付与する、請求項1に記載のクレーンの旋回制御装置。
【請求項5】
前記下部本体に対する前記上部旋回体の旋回角度を検出可能な旋回角度検出部を更に備え、
前記旋回制御部は、第1の時刻および第2の時刻のそれぞれにおいて前記旋回角度検出部によって検出された2つの旋回角度の差と、前記第1の時刻と前記第2の時刻との時間間隔とから、前記上部旋回体の前記実旋回角速度を演算する、請求項1に記載のクレーンの旋回制御装置。
【請求項6】
前記旋回制御部は、システム時刻に基づいて前記第1の時刻および前記第2の時刻をそれぞれ設定し、
前記システム時刻に対して独立して、前記第1の時刻と前記第2の時刻との前記時間間隔を計測することが可能な実時間計測部を更に備える、請求項5に記載のクレーンの旋回制御装置。
【請求項7】
前記負荷情報取得部によって取得された前記負荷情報と前記角速度設定部によって設定された前記最大旋回角速度とを関連付けて送信可能な送信部と、
前記クレーンから離れた位置に配置され、前記送信部によって送信された前記負荷情報および前記最大旋回角速度を受け付けて管理する遠隔装置と、
を更に備える、請求項1に記載のクレーンの旋回制御装置。
【請求項8】
前記旋回駆動部は、
出力軸を備えるエンジンと、
前記出力軸に連結され前記出力軸から入力される動力によって作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの作動油の供給を受けることで、前記上部旋回体を旋回させる駆動力を発生する油圧式の旋回モータと、
を有し、
前記操作部が受ける操作の操作量と、前記エンジンの回転数と、前記最大旋回角速度との関係を示す関係情報を予め記憶する記憶部を更に備え、
前記旋回制御部は、現在の前記エンジンの回転数と前記操作量とに基づいて前記記憶部に記憶された前記関係情報を参照して前記最大旋回角速度を導き出し、当該最大旋回角速度を前記実旋回角速度と推定する、請求項1に記載のクレーンの旋回制御装置。
【請求項9】
前記旋回駆動部は、
出力軸を備えるエンジンと、
前記出力軸に連結され前記出力軸から入力される動力によって作動油を吐出する油圧ポンプであって、傾転指令信号の入力を受け付け当該傾転指令信号の大きさに応じて作動油の最大吐出量を変化させることが可能な可変容量式の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの作動油の供給を受けることで、前記上部旋回体を旋回させる駆動力を発生する油圧式の旋回モータと、
前記油圧ポンプと前記旋回モータとの間に介在するように配置されるコントロールバルブを含み、前記旋回制御部から受ける指令に応じて前記油圧ポンプから吐出された作動油のうち前記旋回モータに供給される作動油の流量を調整する流量調整機構と、
を有し、
前記旋回制御部は、前記角速度設定部によって設定された前記最大旋回角速度に対応する傾転指令信号を前記油圧ポンプに入力することで、前記上部旋回体の旋回角速度が前記最大旋回角速度を超えないように、前記油圧ポンプから吐出される作動油の吐出量を制限する、請求項1に記載のクレーンの旋回制御装置。
【請求項10】
前記クレーンの前記旋回駆動部は、
出力軸を備えるエンジンと、
前記出力軸に連結され前記出力軸から入力される動力によって作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの作動油の供給を受けることで、前記上部旋回体を旋回させる駆動力を発生する油圧式の旋回モータと、
前記油圧ポンプと前記旋回モータとの間に介在するように配置されるコントロールバルブを含み、前記旋回制御部から受ける指令に応じて前記油圧ポンプから吐出された作動油のうち前記旋回モータに供給される作動油の流量を調整する流量調整機構と、
を有し、
前記旋回制御部は、前記角速度設定部によって設定された前記最大旋回角速度に対応する強制指令信号を前記流量調整機構に入力することで、前記旋回指令信号の大きさに関わらず前記上部旋回体の旋回角速度が前記最大旋回角速度を超えないように前記流量調整機構から前記旋回モータに供給される作動油の流量を制限する、請求項1に記載のクレーンの旋回制御装置。
【請求項11】
下部本体と、
前記下部本体に対して旋回可能なように前記下部本体に支持される上部旋回体と、
前記上部旋回体を旋回させるための操作を受け付けるとともに、前記操作の大きさに応じた旋回指令信号を出力する操作部と、
前記上部旋回体を前記下部本体に対して旋回させることが可能な旋回駆動部と、
前記上部旋回体に起伏方向に回動可能に支持される基端部と当該基端部とは反対側の先端部とを含むアタッチメントと、
前記アタッチメントの前記先端部から垂下され、吊り荷に接続される吊り荷ロープと、
前記上部旋回体の旋回角速度が最大旋回角速度を超えないように前記旋回駆動部を制御する、請求項1乃至10の何れか1項に記載のクレーンの旋回制御装置と、
を備える、クレーン。
【請求項12】
下部本体と、前記下部本体に対して旋回可能なように前記下部本体に支持される上部旋回体と、前記上部旋回体を旋回させるための操作を受け付けるとともに前記操作の大きさに応じた旋回指令信号を出力する操作部と、前記上部旋回体を前記下部本体に対して旋回させることが可能な旋回駆動部と、前記上部旋回体に起伏方向に回動可能に支持される基端部と当該基端部とは反対側の先端部とを含むアタッチメントと、前記アタッチメントの前記先端部から垂下され吊り荷に接続される吊り荷ロープと、を有するクレーンの旋回方法であって、
前記上部旋回体の旋回角速度に起因して前記アタッチメントに作用する、前記上部旋回体の旋回動作における接線方向に沿った荷重である横荷重に基づいて、前記旋回角速度の最大値である最大旋回角速度を設定するための情報である負荷情報を取得することと、
前記取得された前記負荷情報に基づいて、前記上部旋回体の旋回動作において許容される前記最大旋回角速度を設定することと、
前記操作部から出力された前記旋回指令信号に対応して前記上部旋回体が前記下部本体に対して旋回するように前記旋回駆動部を制御する一方、前記上部旋回体の旋回角速度が前記最大旋回角速度を超えないように前記旋回駆動部を制御するとともに、前記上部旋回体の実旋回角速度が前記最大旋回角速度に近接した又は前記最大旋回角速度を超えた場合に前記上部旋回体の旋回角速度を低下させるための補助指令信号を出力することと、
を備える、クレーンの旋回方法。
【請求項13】
前記補助指令信号に応じて警告部を作動させて、前記上部旋回体の実旋回角速度が前記最大旋回角速度に近接した又は前記最大旋回角速度を超えたことを、前記操作部を操作することが可能な作業者に対して警告することを更に備える、請求項12に記載のクレーンの旋回方法。
【請求項14】
前記操作部から受け入れた前記旋回指令信号に対して、前記上部旋回体の旋回角速度が低下するように補正を行い、当該補正された旋回指令信号を前記補助指令信号として前記旋回駆動部に入力することを更に備える、請求項12に記載のクレーンの旋回方法。
【請求項15】
前記旋回駆動部に設けられた機械式ブレーキ装置に前記補助指令信号を入力することで、前記上部旋回体の旋回角速度を低下させるように前記上部旋回体の旋回にブレーキ力を付与することを更に備える、請求項12に記載のクレーンの旋回方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの旋回制御装置およびこれを備えたクレーン、クレーンの旋回方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動式クレーンとして、下部走行体と、上部旋回体と、ブームやジブのようなアタッチメントと、を備えたものが知られている。アタッチメントは、上部旋回体の前部に起伏可能に取り付けられる。アタッチメントの先端部から垂下された吊り荷ロープに吊り荷が接続されると、吊り荷の吊り上げ作業が可能となる。また、このようなクレーンでは、吊り荷が吊り上げられた状態で上部旋回体の旋回動作が行われることがある。
【0003】
特許文献1には、アタッチメントの損傷を抑止するために、アタッチメント情報(アタッチメントの長さ等)やクレーンの旋回情報(吊り荷荷重、作業半径)に基づいて、上部旋回体の旋回動作において許容される最大旋回角速度を設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、クレーンに搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件によっては、上部旋回体の旋回速度を充分に制御することが難しいという問題がある。
【0006】
具体的に、上記の技術では、上部旋回体の旋回角速度を最大旋回角速度以下に抑えるために、油圧ポンプの傾転または流量制御装置(操作レバー量)が制御される。しかしながら、油圧ポンプでは、その特性上、その最大容量と最小容量との比率が予め決まっており、上部旋回体の最大角速度と最小角速度との比率もこの容量の比率で決定される。このため、クレーンの仕様から旋回角速度に要求される最大角速度を満たすためには、必然的に最小角速度も決まってしまうため、この最小角速度以下の大きさに旋回角速度を制御することができず、上部旋回体の角速度を制御上設定された最大旋回角速度以下に制御できない場合がある。
【0007】
また、流量制御装置によって旋回角速度を制御する場合、油圧ポンプからタンクに逃がす流量を調整することで旋回角速度が制御される。この場合、油圧ポンプからタンクへ逃がす流量が増加すると、旋回モータに供給される作動油の圧力が低下することで旋回トルクが低下し、作業現場の風などによって上部旋回体が動かなくなる可能性がある。このため、実際には油圧ポンプからタンクに逃がす流量を大きくとることができず、この場合においても実現できる最低角速度に限界があるため、条件によっては、上部旋回体の角速度を設定された最大旋回角速度以下に制御できない場合がある。
【0008】
更に、アタッチメントの旋回方向に対して、風が追い風方向に作用した場合、旋回角速度が増速され、設定された最大旋回角速度を超えてしまうという問題がある。同様に、作業現場の地盤傾斜により旋回方向にアタッチメントの自重が作用した場合も、旋回角速度が増速され、設定された最大旋回速度を超えてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、上部旋回体の旋回動作によってアタッチメントに大きな横荷重が加わり当該アタッチメントが損傷、破損することを安定して抑止することが可能なクレーンの旋回制御装置およびこれを備えたクレーン、クレーンの旋回方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面に係るクレーンの旋回制御装置は、下部本体と、前記下部本体に対して旋回可能なように前記下部本体に支持される上部旋回体と、前記上部旋回体を旋回させるための操作を受け付けるとともに、前記操作の大きさに応じた旋回指令信号を出力する操作部と、前記上部旋回体を前記下部本体に対して旋回させることが可能な旋回駆動部と、前記上部旋回体に起伏方向に回動可能に支持される基端部と当該基端部とは反対側の先端部とを含むアタッチメントと、前記アタッチメントの前記先端部から垂下され、吊り荷に接続される吊り荷ロープと、を有するクレーンに用いられるクレーンの旋回制御装置である。当該旋回制御装置は、負荷情報を取得する負荷情報取得部であって、前記負荷情報は、前記上部旋回体の旋回角速度に起因して前記アタッチメントに作用する前記上部旋回体の旋回動作における接線方向に沿った荷重である横荷重に基づいて前記旋回角速度の最大値である最大旋回角速度を設定するための情報である、負荷情報取得部と、前記負荷情報取得部によって取得された前記負荷情報に基づいて、前記上部旋回体の旋回動作において許容される前記最大旋回角速度を設定する角速度設定部と、前記操作部から出力された前記旋回指令信号を受け入れ、当該旋回指令信号に対応して前記上部旋回体が前記下部本体に対して旋回するように前記旋回駆動部を制御する旋回制御部であって、前記上部旋回体の旋回角速度が前記角速度設定部によって設定された前記最大旋回角速度を超えないように前記旋回駆動部を制御するとともに、前記上部旋回体の実旋回角速度が前記最大旋回角速度に近接した又は前記最大旋回角速度を超えた場合に前記上部旋回体の旋回角速度を低下させるための補助指令信号を出力する旋回制御部と、を備える。
【0011】
本構成によれば、クレーンに搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けて上部旋回体の旋回角速度が最大旋回角速度を超えそうになった場合でも、旋回制御部が補助指令信号を出力することによって、上部旋回体の旋回角速度を低下させる措置を講じることができる。
【0012】
上記の構成において、前記旋回制御部から出力された前記補助指令信号を受けて、前記上部旋回体の実旋回角速度が前記最大旋回角速度に近接した又は前記最大旋回角速度を超えたことを、前記操作部を操作することが可能な作業者に対して警告する警告部を更に備えるものでもよい。
【0013】
本構成によれば、クレーンに搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けて上部旋回体の旋回角速度が最大旋回角速度を超えそうになった場合でも、その情報を作業者に警告することによって、上部旋回体の旋回速度を最大旋回角速度以下に安定して制御することができる。
【0014】
上記の構成において、前記旋回制御部は、前記操作部から受け入れた前記旋回指令信号に対して、前記上部旋回体の旋回角速度が低下するように補正を行い、当該補正された旋回指令信号を前記補助指令信号として前記旋回駆動部に入力するものでもよい。
【0015】
本構成によれば、クレーンに搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けても、上部旋回体の旋回速度を最大旋回角速度以下に安定して制御することができる。
【0016】
上記の構成において、前記旋回制御部は、前記旋回駆動部に設けられた機械式ブレーキ装置に前記補助指令信号を入力することで、前記上部旋回体の旋回角速度を低下させるように前記上部旋回体の旋回にブレーキ力を付与するものでもよい。
【0017】
本構成によれば、クレーンに搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けても、機械式ブレーキ装置によって上部旋回体の旋回速度を最大旋回角速度以下に安定して制御することができる。
【0018】
上記の構成において、前記下部本体に対する前記上部旋回体の旋回角度を検出可能な旋回角度検出部を更に備え、前記旋回制御部は、第1の時刻と第2の時刻のそれぞれにおいて前記旋回角度検出部によって検出された2つの旋回角度の差と、前記第1の時刻と前記第2の時刻との時間間隔とから、前記上部旋回体の前記実旋回角速度を演算するものでもよい。
【0019】
本構成によれば、旋回角速度を直接検出する装置を搭載する必要がなく、旋回角度検出部を利用して旋回角速度を検出することができる。
【0020】
上記の構成において、前記旋回制御部は、システム時刻に基づいて前記第1の時刻および前記第2の時刻をそれぞれ設定し、前記システム時刻に対して独立して、前記第1の時刻と前記第2の時刻との前記時間間隔を計測することが可能な実時間計測部を更に備えるものでもよい。
【0021】
本構成によれば、時間間隔としてシステム時刻に基づく時間間隔ではなく、実時間計測値を用いることで旋回角速度の演算値の精度を向上することができる。
【0022】
上記の構成において、前記負荷情報取得部によって取得された前記負荷情報と前記角速度設定部によって設定された前記最大旋回角速度とを関連付けて送信可能な送信部と、前記クレーンから離れた位置に配置され、前記送信部によって送信された前記負荷情報および前記最大旋回角速度を受け付けて管理する遠隔装置と、を更に備えるものでもよい。
【0023】
本構成によれば、実際の作業状態での情報を遠隔でモニタし、クレーンの作業現場における使われ方を把握することで、例えば、今後の設計情報として活用することができる。
【0024】
上記の構成において、前記旋回駆動部は、出力軸を備えるエンジンと、前記出力軸に連結され前記出力軸から入力される動力によって作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの作動油の供給を受けることで、前記上部旋回体を旋回させる駆動力を発生する油圧式の旋回モータと、を有し、前記操作部が受ける操作の操作量と、前記エンジンの回転数と、前記最大旋回角速度との関係を示す関係情報を予め記憶する記憶部を更に備え、前記旋回制御部は、現在の前記エンジンの回転数と前記操作量とに基づいて前記記憶部に記憶された前記関係情報を参照して前記最大旋回角速度を導き出し、当該最大旋回角速度を前記実旋回角速度と推定するものでもよい。
【0025】
本構成によれば、上部旋回体の実旋回角速度を直接検出する必要がなく、容易に推測することができる。
【0026】
上記の構成において、前記旋回駆動部は、出力軸を備えるエンジンと、前記出力軸に連結され前記出力軸から入力される動力によって作動油を吐出する油圧ポンプであって、傾転指令信号の入力を受け付け当該傾転指令信号の大きさに応じて作動油の最大吐出量を変化させることが可能な可変容量式の油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの作動油の供給を受けることで、前記上部旋回体を旋回させる駆動力を発生する油圧式の旋回モータと、前記油圧ポンプと前記旋回モータとの間に介在するように配置されるコントロールバルブを含み、前記旋回制御部から受ける指令に応じて前記油圧ポンプから吐出された作動油のうち前記旋回モータに供給される作動油の流量を調整する流量調整機構と、を有し、前記旋回制御部は、前記角速度設定部によって設定された前記最大旋回角速度に対応する傾転指令信号を前記油圧ポンプに入力することで、前記上部旋回体の旋回角速度が前記最大旋回角速度を超えないように、前記油圧ポンプから吐出される作動油の吐出量を制限するものでもよい。
【0027】
上記の構成において、前記クレーンの前記旋回駆動部は、出力軸を備えるエンジンと、前記出力軸に連結され前記出力軸から入力される動力によって作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの作動油の供給を受けることで、前記上部旋回体を旋回させる駆動力を発生する油圧式の旋回モータと、前記油圧ポンプと前記旋回モータとの間に介在するように配置されるコントロールバルブを含み、前記旋回制御部から受ける指令に応じて前記油圧ポンプから吐出された作動油のうち前記旋回モータに供給される作動油の流量を調整する流量調整機構と、を有し、前記旋回制御部は、前記角速度設定部によって設定された前記最大旋回角速度に対応する強制指令信号を前記流量調整機構に入力することで、前記旋回指令信号の大きさに関わらず前記上部旋回体の旋回角速度が前記最大旋回角速度を超えないように前記流量調整機構から前記旋回モータに供給される作動油の流量を制限するものでもよい。
【0028】
本発明の他の局面に係るクレーンは、下部本体と、前記下部本体に対して旋回可能なように前記下部本体に支持される上部旋回体と、前記上部旋回体を旋回させるための操作を受け付けるとともに、前記操作の大きさに応じた旋回指令信号を出力する操作部と、前記上部旋回体を前記下部本体に対して旋回させることが可能な旋回駆動部と、前記上部旋回体に起伏方向に回動可能に支持される基端部と当該基端部とは反対側の先端部とを含むアタッチメントと、前記アタッチメントの前記先端部から垂下され、吊り荷に接続される吊り荷ロープと、前記上部旋回体の旋回角速度が最大旋回角速度を超えないように前記旋回駆動部を制御する、上記のクレーンの旋回制御装置と、を備える。
【0029】
本発明の他の局面に係るクレーンの旋回方法は、下部本体と、前記下部本体に対して旋回可能なように前記下部本体に支持される上部旋回体と、前記上部旋回体を旋回させるための操作を受け付けるとともに前記操作の大きさに応じた旋回指令信号を出力する操作部と、前記上部旋回体を前記下部本体に対して旋回させることが可能な旋回駆動部と、前記上部旋回体に起伏方向に回動可能に支持される基端部と当該基端部とは反対側の先端部とを含むアタッチメントと、前記アタッチメントの前記先端部から垂下され吊り荷に接続される吊り荷ロープと、を有するクレーンの旋回方法である。当該旋回方法は、前記上部旋回体の旋回角速度に起因して前記アタッチメントに作用する、前記上部旋回体の旋回動作における接線方向に沿った荷重である横荷重に基づいて、前記旋回角速度の最大値である最大旋回角速度を設定するための情報である負荷情報を取得することと、前記取得された前記負荷情報に基づいて、前記上部旋回体の旋回動作において許容される前記最大旋回角速度を設定することと、前記操作部から出力された前記旋回指令信号に対応して前記上部旋回体が前記下部本体に対して旋回するように前記旋回駆動部を制御する一方、前記上部旋回体の旋回角速度が前記最大旋回角速度を超えないように前記旋回駆動部を制御するとともに、前記上部旋回体の実旋回角速度が前記最大旋回角速度に近接した又は前記最大旋回角速度を超えた場合に前記上部旋回体の旋回角速度を低下させるための補助指令信号を出力することと、を備える。
【0030】
本方法によれば、クレーンに搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けて上部旋回体の旋回角速度が最大旋回角速度を超えそうになった場合でも、補助指令信号を出力することによって、上部旋回体の旋回角速度を低下させる措置を講じることができる。
【0031】
上記の方法において、前記補助指令信号に応じて警告部を作動させて、前記上部旋回体の実旋回角速度が前記最大旋回角速度に近接した又は前記最大旋回角速度を超えたことを、前記操作部を操作することが可能な作業者に対して警告することを更に備えるものでもよい。
【0032】
本方法によれば、クレーンに搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けて上部旋回体の旋回角速度が最大旋回角速度を超えそうになった場合でも、その情報を作業者に警告することによって、上部旋回体の旋回速度を最大旋回角速度以下に安定して制御することができる。
【0033】
上記の方法において、前記操作部から受け入れた前記旋回指令信号に対して、前記上部旋回体の旋回角速度が低下するように補正を行い、当該補正された旋回指令信号を前記補助指令信号として前記旋回駆動部に入力することを更に備えるものでもよい。
【0034】
本方法によれば、クレーンに搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けても、上部旋回体の旋回速度を最大旋回角速度以下に安定して制御することができる。
【0035】
上記の方法において、前記旋回駆動部に設けられた機械式ブレーキ装置に前記補助指令信号を入力することで、前記上部旋回体の旋回角速度を低下させるように前記上部旋回体の旋回にブレーキ力を付与することを更に備えるものでもよい。
【0036】
本方法によれば、クレーンに搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けても、機械式ブレーキ装置によって上部旋回体の旋回速度を最大旋回角速度以下に安定して制御することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、上部旋回体の旋回動作によってアタッチメントに大きな横荷重が加わり当該アタッチメントが損傷、破損することを安定して抑止することが可能なクレーンの旋回制御装置およびこれを備えたクレーン、クレーンの旋回方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る旋回制御装置を備えたクレーンの側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るクレーンの旋回駆動部の油圧回路図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る旋回制御装置のブロック図である。
【
図4】クレーンの旋回動作時に操作レバーが受ける操作量の推移を示すグラフである。
【
図5】クレーンの旋回動作時の上部旋回体の旋回角速度の推移を示すグラフである。
【
図6】クレーンの旋回動作時の吊り荷の荷振れ量の推移を示すグラフである。
【
図7】クレーンの旋回動作時のアタッチメント先端の振れ量の推移を示すグラフである。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るクレーンの作業半径を説明するための模式図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る旋回制御装置において設定される旋回角速度制限値のグラフである。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る旋回制御装置において設定される旋回角速度制限値とポンプ傾転との関係を示すグラフである。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る旋回制御装置が実行するクレーンの旋回制御のフローチャートである。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る旋回制御装置において実旋回角速度の算出方法を説明するためのグラフである。
【
図13】本発明の第1実施形態に係る旋回制御装置が実行する旋回制御における旋回角速度の抑制効果を示すグラフである。
【
図14】本発明の変形実施形態に係る旋回制御装置が実行する旋回制御におけるレバー操作量と実旋回角速度の時間推移を示すグラフである。
【
図15】本発明の変形実施形態に係る旋回制御装置が実行する旋回制御におけるレバー操作量と実旋回角速度の時間推移を示すグラフである。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る旋回制御装置が実行するクレーンの旋回制御のフローチャートである。
【
図17】本発明の第2実施形態に係る旋回制御装置が実行するクレーンの旋回制御における主制御領域と補助制御領域を示すグラフである。
【
図18】本発明の第2実施形態に係る旋回制御装置が実行する旋回制御におけるレバー操作量、パイロット圧、実旋回角速度の時間推移を示すグラフである。
【
図19】本発明の第3実施形態に係るクレーンの旋回駆動部の油圧回路図である。
【
図20】本発明の第3実施形態に係る旋回制御装置が実行する旋回制御における操作レバーの操作量と電磁比例弁の2次圧との関係を示すグラフである。
【
図21】本発明の第3実施形態に係る旋回制御装置が実行する旋回制御における電磁比例弁の2次圧と上部旋回体の旋回角速度との関係を示すグラフである。
【
図22】本発明の第3実施形態に係る旋回制御装置が実行するクレーンの旋回制御のフローチャートである。
【
図23】本発明の変形実施形態に係る旋回制御装置を備えたクレーンの側面図である。
【
図24】本発明の各実施形態に係る旋回制御装置と比較される他の旋回制御装置が実行する旋回制御におけるレバー操作量、パイロット圧、実旋回角速度の時間推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るクレーン10の側面図である。なお、以後、各図には、「上」、「下」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、各実施形態に係るクレーン10の構造および組立方法を説明するために便宜上示すものであり、本発明に係るクレーンの移動方向や使用態様などを限定するものではない。
【0040】
クレーン10は、クレーン本体に相当する上部旋回体12と、この上部旋回体12を旋回可能に支持する下部走行体14(下部本体)と、ブーム16及びジブ18を含むアタッチメント10S(起伏体ともいう)と、ブーム起伏用部材であるマスト20と、を備える。上部旋回体12は、下部走行体14に対して上下方向に延びる旋回中心軸CL回りに旋回可能なように下部走行体14に支持される。また、上部旋回体12の後部には、クレーン10のバランスを調整するためのカウンタウエイト13が積載されている。また、上部旋回体12の前端部には、キャブ15が備えられている。キャブ15は、クレーン10の運転席に相当する。
【0041】
また、アタッチメント10Sは、上部旋回体12に起伏方向に回動可能に支持される基端部と当該基端部とは反対側の先端部とを含み、上部旋回体12に対して着脱可能とされている。前述のように、本実施形態では、アタッチメント10Sは、ブーム16とジブ18とを含む。
【0042】
図1に示されるブーム16は、いわゆるラチス型であり、下部ブーム16Aと、一または複数(図例では3個)の中間ブーム16B,16C、16Dと、上部ブーム16Eとから構成される。具体的に、下部ブーム16Aは、上部旋回体12の前部に起伏方向に回動可能となるように連結される。中間ブーム16B,16C,16Dは、その順に下部ブーム16Aの先端側に着脱可能に継ぎ足される。上部ブーム16Eは中間ブーム16Dの先端側に着脱可能に継ぎ足され、この上部ブーム16Eの先端部に、ジブ18およびジブ18を回動させるためのリヤストラット21およびフロントストラット22がそれぞれ回動可能に連結される。ブーム16は、下端部に備えられたブームフットピン16Sを支点として左右方向に延びる回転軸回りに上部旋回体12に回動可能に軸支される。
【0043】
ブーム16は、中間ブームシーブ46と、各アイドラシーブ32S、34S、36Sと、を有する。中間ブームシーブ46は、中間ブーム16Dの先端側の後側面に配置されている。アイドラシーブ32S、アイドラシーブ34Sおよびアイドラシーブ36Sは、ブーム16の基端部の後側面に回転可能に支持されている。
【0044】
ただし、本発明ではブームの具体的な構造は限定されない。例えば、当該ブームは、中間部材がないものでもよく、また、上記とは中間部材の数が異なるものでもよい。更に、ブームは、単一の部材で構成されたものでもよい。
【0045】
ジブ18も、その具体的な構造は限定されない。そして、このジブ18の基端部は、ブーム16の上部ブーム16Eの先端部に回動可能に連結(軸支)されており、ジブ18の回動軸は、上部旋回体12に対するブーム16の回動軸(ブームフットピン16S)と平行な横軸になっている。
【0046】
マスト20は、基端及び回動端を有し、その基端が上部旋回体12に回動可能に連結される。マスト20の回動軸は、ブーム16の回動軸と平行でかつ当該ブーム16の回動軸のすぐ後方に位置している。すなわち、このマスト20はブーム16の起伏方向と同方向に回動可能である。一方、このマスト20の回動端は左右一対のブーム用ガイライン24を介してブーム16の先端に連結される。この連結は、マスト20の回動とブーム16の回動とを連携させる。
【0047】
更に、クレーン10は、左右一対のバックストップ23と、リヤストラット21と、フロントストラット22と、左右一対のストラットバックストップ25およびガイライン26と、左右一対のジブ用ガイライン28と、を備える。
【0048】
左右一対のバックストップ23はブーム16の下部ブーム16Aの左右両側部に設けられる。これらのバックストップ23は、ブーム16が
図1に示される起立姿勢まで到達した時点で、上部旋回体12の前後方向の中央部に当接する。この当接によって、ブーム16が強風等で後方に煽られることが規制される。
【0049】
リヤストラット21は、ブーム16の先端部に回動可能に軸支される。リヤストラット21は、上部ブーム16Eの先端からブーム起立側(
図1では左側)に張り出す姿勢で保持される。この姿勢を保持する手段として、リヤストラット21とブーム16との間に左右一対のストラットバックストップ25及び左右一対のガイライン26が介在する。ガイライン26は、リヤストラット21の先端部とブーム16の下部ブーム16Aとを接続するように張設され、その張力によってリヤストラット21の位置を規制する。
【0050】
フロントストラット22は、ジブ18の後方に配置されており、ジブ18と連動して回動するようにブーム16の先端部(上部ブーム16E)に回動可能に軸支されている。詳しくは、このフロントストラット22の先端部とジブ18の先端部とを連結するように左右一対のジブ用ガイライン28が張設される。従って、このフロントストラット22の回動駆動によって、ジブ18もフロントストラット22と一体的に回動駆動される。
【0051】
クレーン10は、各種ウインチを更に備える。具体的には、クレーン10は、ブーム16を起伏させるためのブーム起伏用ウインチ30と、ジブ18を起伏方向に回動させるためのジブ起伏用ウインチ32と、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うための主巻用ウインチ34及び補巻用ウインチ36とを備える。また、クレーン10は、ブーム起伏用ロープ38と、ジブ起伏用ロープ44と、主巻ロープ50(吊り荷ロープ)と、補巻ロープ60と、を備える。本実施形態に係るクレーン10では、ジブ起伏用ウインチ32、主巻用ウインチ34および補巻用ウインチ36がブーム16の基端近傍部位に据え付けられる。また、ブーム起伏用ウインチ30が上部旋回体12に据え付けられる。これらのウインチ30,32,34,36の位置は、上記に限定されるものではない。
【0052】
ブーム起伏用ウインチ30は、ブーム起伏用ロープ38の巻き取り及び繰り出しを行う。そして、この巻き取り及び繰り出しによりマスト20が回動するようにブーム起伏用ロープ38が配索される。具体的には、マスト20の回動端部及び上部旋回体12の後端部にはそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック40,42が設けられ、ブーム起伏用ウインチ30から引き出されたブーム起伏用ロープ38がシーブブロック40,42間に掛け渡される。従って、ブーム起伏用ウインチ30がブーム起伏用ロープ38の巻き取りや繰り出しを行うことにより、両シーブブロック40,42間の距離が変化し、これによってマスト20さらにはこれと連動するブーム16が起伏方向に回動する。
【0053】
ジブ起伏用ウインチ32は、リヤストラット21とフロントストラット22との間に掛け回されたジブ起伏用ロープ44の巻き取り及び繰り出しを行う。そして、この巻き取りや繰り出しによってフロントストラット22が回動するようにジブ起伏用ロープ44が配索される。具体的には、ジブ起伏用ウインチ32から引き出されたジブ起伏用ロープ44がアイドラシーブ32S、中間ブームシーブ46に掛けられ、更に、シーブブロック47,48間に複数回掛け渡される。従って、ジブ起伏用ウインチ32は、ジブ起伏用ロープ44の巻き取りおよび繰り出しを行うことで、両シーブブロック47,48間の距離を変え、リヤストラット21に対してフロントストラット22を相対的に回動させる。この結果、ジブ起伏用ウインチ32は、フロントストラット22と連動するジブ18を起伏させる。
【0054】
主巻用ウインチ34は、主巻ロープ50による吊り荷の巻き上げ及び巻き下げを行う。主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50が、
図1のアイドラシーブ34S、リヤストラットアイドラシーブ52、フロントストラットアイドラシーブ53、主巻用ガイドシーブ54に順に掛けられ、かつ、シーブブロックの主巻用ポイントシーブ56と、吊荷用の主フック57に設けられたシーブブロックのシーブ58との間に掛け渡される。従って、主巻用ウインチ34が主巻ロープ50の巻き取りや繰り出しを行うと、両シーブ56,58間の距離が変わって、ジブ18の先端から垂下された主巻ロープ50に連結された主フック57の巻き上げ及び巻き下げが行われる。このように本実施形態では、主巻ロープ50(吊り荷ロープ)は、アタッチメント10Sの前記先端部から垂下され、主フック57を介して吊り荷に接続される。
【0055】
同様にして、補巻用ウインチ36は、補巻ロープ60による吊り荷の巻き上げ及び巻き下げを行う。補巻用ウインチ36から引き出された補巻ロープ60は、
図1のアイドラシーブ36S、リヤストラットアイドラシーブ62、フロントストラットアイドラシーブ63、補巻用ガイドシーブ64に順に掛けられ、かつ、補巻用ポイントシーブから垂下される。従って、補巻用ウインチ36が補巻ロープ60の巻き取りや繰り出しを行うと、補巻ロープ60の末端に連結された図略の吊荷用の補フックが巻上げられ、または巻下げられる。
【0056】
図2は、本実施形態に係るクレーン10の旋回駆動部7Sの油圧回路図である。
図3は、本実施形態に係る旋回制御装置8Sのブロック図である。クレーン10は、旋回駆動部7Sと、旋回制御装置8Sとを有する。旋回駆動部7Sは、上部旋回体12を下部走行体14に対して旋回させる(旋回動作)ことが可能とされている。また、クレーン10において上部旋回体12の旋回動作が実行される際に、旋回制御装置8Sはアタッチメント10S(ブーム16、ジブ18)の損傷を防止するように、上部旋回体12の旋回角速度を制限しながら、上部旋回体12を旋回させる。
【0057】
図2を参照して、旋回駆動部7Sは、エンジン70と、傾転調整部71S(
図3)を含む油圧ポンプ71と、旋回モータ72と、コントロールバルブ73と、リリーフ弁74と、エンジン回転数検出部75と、旋回角度検出部76と、第1電磁比例弁77と、第2電磁比例弁78と、を有する。また、クレーン10は、制御部80と、操作部81と、入力部82とを更に有する。更に、
図3を参照して、クレーン10は、起伏角検出部83と、荷重検出部84と、表示部85と、通信部86とを更に有する。
【0058】
エンジン70は、出力軸を有する。本実施形態では、エンジン70は、作業者による操作(入力)に応じて、HIGHアイドルモードとLOWアイドルモードとに切り換え可能とされている。HIGHアイドルモードの前記出力軸の回転数は、LOWアイドルモードの前記出力軸の回転数よりも高く設定されており、相対的に大きな負荷の作業時などには作業者によってHIGHアイドルモードが選択される。
【0059】
油圧ポンプ71は、エンジン70の前記出力軸に連結され当該出力軸から入力される動力をうけ、旋回モータ72に供給されるべき作動油をタンクから吸い込んで吐出する。この実施形態に係る油圧ポンプ71は、可変容量式の油圧ポンプからなり、当該油圧ポンプ71に含まれる傾転調整部71S(レギュレータ)への傾転指令信号の入力により油圧ポンプ71の容量(押しのけ容積)が変化し、これにより油圧ポンプ71から吐出される作動油の流量であるポンプ吐出流量が変化する。換言すれば、油圧ポンプ71は、傾転指令信号の入力を受け付け当該傾転指令信号の大きさに応じて作動油の最大吐出量を変化させることが可能とされている。なお、上記の傾転指令信号は、後記の制御部80の旋回制御部802(
図3)から出力される。
【0060】
旋回モータ72は、上部旋回体12を旋回駆動する油圧式の旋回モータである。旋回モータ72は、内部に複数の油圧室を備え、油圧ポンプ71から供給される作動油を前記複数の油圧室のうちの一の油圧室に受け入れるとともに前記複数の油圧室のうちの他の油圧室から作動油を排出することで、上部旋回体12を旋回させる駆動力を発生する。具体的に、旋回モータ72は、
図1の上部旋回体12と下部走行体14との間に介在するように配置されている。旋回モータ72は、ピニオンを含むモータ軸を備え、上部旋回体12に固定されている。一方、下部走行体14は、円周状に形成された不図示の旋回ギアを備える。旋回モータ72のピニオンと旋回ギアとが噛み合うことで、旋回モータ72の回転に応じて上部旋回体12が旋回する。このため、旋回モータ72は、旋回ギアの円周付近に位置するように配置されている。旋回モータ72は、モータ第1ポート72Aおよびモータ第2ポート72Bを有する。旋回モータ72は、モータ第1ポート72Aを通じて作動油の供給を受けることにより上部旋回体12を第1方向(たとえば左方向)に旋回させるとともに、モータ第2ポート72Bを通じて作動油を排出する。一方、旋回モータ72は、モータ第2ポート72Bを通じて作動油の供給を受けることにより上部旋回体12を第1方向とは反対の第2方向(たとえば右方向)に旋回させるとともにモータ第1ポート72Aを通じて作動油を排出する。
【0061】
コントロールバルブ73は、油圧ポンプ71と旋回モータ72との間に介在するように、作動油の油路に配置されている。コントロールバルブ73は、油圧ポンプ71から旋回モータ72への作動油の供給の方向を切換えるとともに、作動油の流量を調整するように作動する。コントロールバルブ73は、旋回モータ72のモータ第1ポート72Aおよびモータ第2ポート20Bにそれぞれ接続されている。
【0062】
コントロールバルブ73は、当該コントロールバルブ73に入力されるパイロット圧に応じて左旋回位置73A(第1旋回用位置)、中立位置73B(中立旋回用位置)および右旋回位置73C(第2旋回用位置)の間で切換わるように作動する。コントロールバルブ73は、一対のパイロットポート、すなわち左旋回パイロットポート73Pおよび右旋回パイロットポート73Qを有する。コントロールバルブ73は、左旋回パイロットポート73Pおよび右旋回パイロットポート73Qのいずれにもパイロット圧が入力されない場合には中立位置73Bに保たれる。コントロールバルブ73は、左旋回パイロットポート73Pにパイロット圧が入力されると左旋回位置73Aに切換えられ、右旋回パイロットポート73Qにパイロット圧が入力されると右旋回位置73Cに切換えられる。そして、コントロールバルブ73は、前記パイロット圧に応じた開口面積で開弁し、作動油の流量を変化させる。
【0063】
左旋回位置73Aでは、コントロールバルブ73は、油圧ポンプ71から吐出される作動油をモータ第1ポート72Aに供給するとともに、モータ第2ポート72Bから排出される作動油をタンクに導く油路を形成する。右旋回位置73Cでは、コントロールバルブ73は、油圧ポンプ71から吐出される作動油をモータ第2ポート72Bに供給するとともに、モータ第1ポート72Aから排出される作動油をタンクに導く油路を形成する。また、中立位置73Bでは、コントロールバルブ73は、モータ第1ポート72Aとモータ第2ポート72Bとの間で作動油が循環することを許容する。
【0064】
リリーフ弁74は、コントロールバルブ73とタンクとの間の油路(ブリードオフライン)の圧力が所定の圧力を超えないように作動する。
【0065】
エンジン回転数検出部75は、エンジン70の出力軸の回転速度(または回転数)を検出する。旋回角度検出部76は、旋回モータ72(上部旋回体12)の旋回角度を検出する。なお、一例として、上部旋回体12の前方向と下部走行体14の前方向とが合致する状態での上部旋回体12の角度がゼロ度に相当する。また、旋回角度検出部76は、旋回モータ72の回転方向(第1方向、第2方向)を検出する。旋回角度検出部76は、エンコーダ、ポテンショメータなどでもよい。
【0066】
操作部81は、キャブ15(
図1)内に配置され、アタッチメント10Sの起伏動作や上部旋回体12の旋回動作のために作業者によって操作される。以下では、上部旋回体12の旋回動作に関する操作部81について説明する。操作部81は、上部旋回体12を下部走行体14に対して旋回させるための操作を受け付けるとともに、前記操作の大きさに応じた旋回指令信号を出力し、制御部80に入力する。操作部81は、操作レバー81Aおよびリモコン部81Bを有する。操作レバー81Aは、上部旋回体12を前記第1方向に旋回させる第1操作領域と、上部旋回体12を前記第2方向に旋回させる第2操作領域と、第1操作領域と第2操作領域との間の中立操作領域とに選択的に操作されることが可能である。また、第1操作領域および第2操作領域における当該操作レバー81Aの操作量はそれぞれ可変とされている。
【0067】
操作レバー81Aが作業者によって第1操作領域に操作されると(第1旋回操作)、リモコン部81Bは操作レバー81Aがうける操作量に応じた信号を制御部80に入力する。また、操作レバー81Aが作業者によって第2操作領域に操作されると(第2旋回操作)、リモコン部81Bは操作レバー81Aがうける操作量に応じた信号を制御部80に入力する。この結果、制御部80から第1電磁比例弁77および第2電磁比例弁78に指令信号が入力される。
【0068】
第1電磁比例弁77および第2電磁比例弁78は、制御部80の旋回制御部802から与えられる指令信号に応じて、コントロールバルブ73に入力されるパイロット圧を調整する。具体的に、第1電磁比例弁77および第2電磁比例弁78は、パイロット油圧源とコントロールバルブ73の左旋回パイロットポート73Pおよび右旋回パイロットポート73Qとの間に介在し、左旋回パイロットポート73Pおよび右旋回パイロットポート73Qにそれぞれパイロットラインを介して接続されている。第1電磁比例弁77は、旋回制御部802(
図3)から指令信号が与えられると左旋回パイロットポート73Pに供給されるパイロット圧を減圧するように開弁する。また、第2電磁比例弁78は、旋回制御部802から指令信号が与えられると右旋回パイロットポート73Qに供給されるパイロット圧を減圧するように開弁する。この際、左旋回パイロットポート73Pおよび右旋回パイロットポート73Qに入力されるパイロット圧の変化に応じて、コントロールバルブ73のスプールのストローク量が変化する。
【0069】
入力部82は、作業者による各種の情報の入力を受け付ける。入力部82から入力された情報は、後記の制御部80の記憶部803に格納(記憶)される。また、作業者は、入力部82に含まれる不図示の操作スイッチを通じて、本実施形態に係る旋回制御装置8Sが実行する旋回制御の実行のオン/オフを入力する(切り換える)ことができる。
【0070】
起伏角検出部83は、アタッチメント10Sの起伏角、すなわち、地面に対する相対的な角度を検出する。本実施形態では、起伏角検出部83は、ブーム16の起伏角(対地角)およびジブ18の起伏角をそれぞれ検出可能とされている。
【0071】
荷重検出部84は、主巻ロープ50(補巻ロープ60)に接続される吊り荷の荷重(吊り荷荷重)を検出する。荷重検出部84は、主巻用ウインチ34(補巻用ウインチ36)に装着された張力センサなどから構成される。
【0072】
表示部85は、クレーン10のキャブ15内に配置されており、各種の情報を表示可能なディスプレイからなる。
【0073】
通信部86(送信部)は、制御部80のアタッチメント情報取得部800Aおよび旋回動作情報取得部800Bによって取得された各負荷情報と、角速度設定部801によって設定された最大旋回角速度とを関連付けて送信可能である。通信部86は、前記クレーンから離れた位置に配置された遠隔装置に上記の情報を送信する。前記遠隔装置は、通信部86によって送信された前記負荷情報および前記最大旋回角速度を受け付けて管理する。
【0074】
制御部80は、クレーン10の動作を統括的に制御するもので、制御信号の送受先として、操作部81、入力部82、エンジン回転数検出部75、旋回角度検出部76、起伏角検出部83、荷重検出部84、傾転調整部71S、第1電磁比例弁77、第2電磁比例弁78などに電気的に接続されている。なお、制御部80は、クレーン10に備えられたその他のユニットにも電気的に接続されている。
【0075】
制御部80は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成され、CPUが前記制御プログラムを実行することにより、アタッチメント情報取得部800A(負荷情報取得部)、旋回動作情報取得部800B(負荷情報取得部)、角速度設定部801、旋回制御部802および記憶部803を機能的に有するよう動作する。なお、これらの各機能部は、制御部80が実行する機能の単位である。
【0076】
アタッチメント情報取得部800Aは、アタッチメント情報(負荷情報)を取得する。当該アタッチメント情報は、アタッチメント10Sに作用する横荷重に基づいて前記旋回角速度の最大値である最大旋回角速度を設定するための情報である。一例として、アタッチメント情報は、前記横荷重に対するアタッチメント10Sの強さおよび前記横荷重の大きさのうちの少なくとも一方に関連するアタッチメント10S固有の情報である。すなわち、当該アタッチメント情報は、アタッチメント10Sが上部旋回体12から脱離された状態においても、アタッチメント10Sが備えている情報である。なお、前記横荷重は、上部旋回体12の旋回動作に伴ってアタッチメント10Sに作用する上部旋回体12の旋回方向、より詳しくは上部旋回体12の旋回動作における平面視の接線方向に沿った荷重である。一例として、アタッチメント情報は、前記基端部から前記先端部までのアタッチメント10Sの長さを含み、入力部82を通じて作業者によって入力される。
【0077】
旋回動作情報取得部800B(負荷情報取得部)は、旋回動作情報(負荷情報)を取得する。前記旋回動作情報は、横荷重に基づいて前記最大旋回角速度を設定するための情報である。前述のように、前記横荷重は、上部旋回体12の旋回角速度に起因してアタッチメント10Sに作用する上部旋回体12の旋回方向に沿った荷重である。換言すれば、前記旋回動作情報は、前記最大旋回角速度を設定するための上部旋回体12の旋回動作の条件に関連する情報である。前記旋回動作情報は、アタッチメント10Sが上部旋回体12に装着された状態での上部旋回体12の旋回動作の条件に関する情報であり、前記横荷重の大きさに関連する情報である。一例として、旋回動作情報は、吊り荷荷重、アタッチメント10Sの作業半径などを含む。前記作業半径は、後述のとおり、平面視におけるアタッチメント10S(ジブ18)の前記基端部から前記先端部までの距離である。
【0078】
角速度設定部801は、アタッチメント情報取得部800Aによって取得された前記アタッチメント情報および旋回動作情報取得部800Bによって取得される前記旋回動作情報のうちの少なくとも一方に基づいて、上部旋回体12の旋回動作において許容される上部旋回体12の旋回角速度の最大値である最大旋回角速度を設定する。なお、角速度設定部801は、アタッチメント情報取得部800Aによって取得された前記アタッチメント情報および旋回動作情報取得部800Bによって取得された前記旋回動作情報の両方に基づいて前記最大旋回角速度を設定してもよい。
【0079】
旋回制御部802は、操作部81から出力された前記旋回指令信号を受け入れ、当該旋回指令信号に対応して上部旋回体12が下部走行体14に対して旋回するように旋回駆動部7Sを制御する。また、旋回制御部802は、上部旋回体12の旋回角速度が角速度設定部801によって設定された前記最大旋回角速度を超えないように前記旋回駆動部7Sを制御する。本実施形態では、旋回制御部802は、角速度設定部801によって設定された最大旋回角速度に対応する傾転指令信号を油圧ポンプ71に入力することで、上部旋回体12の旋回角速度が設定された最大旋回角速度を超えないように、油圧ポンプ71から吐出される作動油の吐出量を制限する。
【0080】
記憶部803は、クレーン10の動作において旋回制御装置8Sによって参照される各種のパラメータ、閾値などの情報を格納および出力する。また、記憶部803は、角速度設定部801によって参照される後記の制限値マップを記憶している。
【0081】
なお、コントロールバルブ73、第1電磁比例弁77および第2電磁比例弁78は、本実施形態に係る流量調整機構7Tを構成する。流量調整機構7Tは、制御部80の旋回制御部802から受ける指令に応じて油圧ポンプ71から吐出された作動油のうち旋回モータ72に供給される作動油の流量を調整する。また、エンジン70、油圧ポンプ71、旋回モータ72および流量調整機構7Tは、前述の旋回駆動部7Sを構成する。更に、制御部80、エンジン回転数検出部75、旋回角度検出部76、起伏角検出部83、荷重検出部84は、本実施形態における旋回制御装置8Sを構成する。旋回制御装置8Sは、クレーン10に用いられる。また、
図3のブレーキバルブ91、ブレーキシリンダ92については、後記の第3実施形態において説明する。
【0082】
なお、
図2では、クレーン10のうち上部旋回体12の旋回動作に関わる油圧回路について示しているが、クレーン10は、下部走行体14の走行動作、ブーム16およびジブ18の起伏動作、主巻ロープ50および補巻ロープ60の巻き上げ・巻き下げ動作に関わる不図示の油圧回路を有している。ブーム16およびジブ18の起伏動作では、操作部81に入力される操作に応じて、前述のブーム起伏用ウインチ30、ジブ起伏用ウインチ32がそれぞれ回転駆動される。また、主巻ロープ50および補巻ロープ60の巻き上げ・巻き下げ動作では、操作部81に入力される操作に応じて、前述の主巻用ウインチ34および補巻用ウインチ36がそれぞれ回転駆動される。
【0083】
<旋回動作におけるアタッチメントの振れについて>
図4は、クレーン10の旋回動作時に操作レバー81Aが受ける操作量の推移を示すグラフである。
図5は、クレーン10の旋回動作時の上部旋回体12の旋回角速度の推移を示すグラフである。
図6は、クレーン10の旋回動作時の吊り荷の荷振れ量の推移を示すグラフである。
図7は、クレーン10の旋回動作時のアタッチメント先端の振れ量の推移を示すグラフである。
【0084】
クレーン10の主巻ロープ50(主フック57)に吊り荷が接続された状態で、上部旋回体12が旋回する場合に、
図4に示すように作業者が操作レバー81Aを操作すると、その操作量に応じて旋回駆動部7Sが上部旋回体12を旋回させるため、
図5に示すように上部旋回体12の旋回角速度が変化する。作業者が操作レバー81Aを操作する操作量が大きいほど、上部旋回体12の旋回角速度が大きくなる(
図5)。
【0085】
このような上部旋回体12の旋回動作では、作業者の操作の仕方によって大きな荷振れが発生する場合がある。たとえば、旋回動作の起動時に上部旋回体12が旋回を開始すると、吊り荷には慣性があるため、上部旋回体12に対して吊り荷は遅行して旋回を始める。その後、吊り荷の振り子運動により吊り荷は上部旋回体12を追い越すように移動する。この結果、
図6に示すように、吊り荷が上部旋回体12に対して、先行、遅行、先行を繰り返す運動(荷振れ)が発生する。この際、吊り荷が上部旋回体12よりも先行するタイミングで、作業者が上部旋回体12を減速させると、吊り荷の慣性力により吊り荷が上部旋回体12に対して更に先行しようとするため、大きな荷振れが発生する(
図6の右端のピーク部分)。すなわち、旋回動作の加速時における荷振れの位相(上部旋回体12に対する相対的な吊り荷の移動方向)と減速時の荷振れの位相とが同じ場合には、荷振れの振幅が重なるため、荷振れの振幅が大きくなる。
【0086】
このような荷振れの増幅が発生すると、アタッチメント10Sにも横荷重が作用するためアタッチメント10Sの先端部にも同様の振れが発生するとともに(
図7)、この振れによる応力も発生する。また、吊り荷の荷重が大きい(重負荷)ほどアタッチメント10Sに作用する横荷重が増加するため、アタッチメント10Sの振れも増大する。アタッチメント10Sに作用する応力も、同様に重負荷の方が大きくなる。また、上部旋回体12が同じ旋回角速度で旋回する場合でも、アタッチメント10Sが長い場合には、その先端部の周速が大きくなるため、上記の現象は顕著となる。
【0087】
図8は、本実施形態に係るクレーンの作業半径を説明するための模式図である。
図8を参照して、アタッチメント10S(ジブ18)の先端部から垂下される吊り荷の荷重が同じ場合であっても、アタッチメント10Sが起伏する(起伏角が変化する)ことで作業半径R1が変化すると、アタッチメント10Sの先端の振れやアタッチメント10Sに作用する応力が変化する。特に、アタッチメント10Sが倒伏し作業半径R1が大きくなると、アタッチメント10Sに対する負荷は大きくなる。このため、クレーン10では、作業半径の最大値Rmaxが予め設定されている。上記のような各種条件によってもたらされる振れ、横荷重、応力などの発生は、アタッチメント10Sの一部に損傷や破損が生じる可能性がある。
【0088】
<最大旋回角速度の設定について>
図9は、本実施形態に係る旋回制御装置8Sにおいて設定される旋回角速度制限値のグラフである。
図10は、旋回制御装置8Sにおいて設定される旋回角速度制限値と油圧ポンプ71のポンプ傾転との関係を示すグラフである。
【0089】
本実施形態では、クレーン10を安全に操作するためのアタッチメント10Sの振れの許容値が予め設定されており、
図9に示すように、当該許容値を満足するための旋回角速度(旋回角速度制限値ωr、最大旋回角速度)が負荷に応じて設定されている。
図9における横軸の負荷は、吊り荷の荷重に相当する。
図9に示すように、吊り荷の負荷が大きくなるほど、旋回角速度制限値ωrは小さくなるように設定されている。また、作業半径が大きい場合の方が、作業半径が小さい場合よりも、旋回角速度制限値ωrは相対的に小さく設定されている。上記の制限値は、事前のオフラインでの解析や実験によって、荷振れ量、アタッチメント10Sの振れ量、応力などを評価することにより作成され、記憶部803に記憶されている。
【0090】
また、本実施形態では、上記のように上部旋回体12の旋回角速度を制限するにあたって、
図10に示すように、油圧ポンプ71のポンプ傾転が調整される。この結果、油圧ポンプ71の作動油の吐出量が調整され、旋回モータ72に流入する作動油の流入量(流入速度)が調整される。したがって、上部旋回体12の旋回角速度を調整することが可能になる。
【0091】
油圧ポンプ71では、その特性上、その最大容量と最小容量との比率が予め決まっており、上部旋回体12の旋回動作における最大角速度と最小角速度との比率もこの容量の比率で決定される。このため、クレーン10の仕様から旋回角速度に要求される最大角速度を満たすためには、必然的に最小角速度も決まってしまうため、この最小角速度以下の速度に旋回角速度を制御することができず、上部旋回体12の角速度を予め設定された旋回角速度制限値ωr(最大旋回角速度)以下に制御できない場合がある。なお、前述の
図10では、旋回角速度制限値ωrとポンプ傾転qrとの関係が示されており、ポンプ傾転の最小値q1に対応する旋回角速度がω1(最小旋回角速度)に相当する。すなわち、油圧ポンプ71の特性上、上部旋回体12の旋回角速度を傾転調整によってこの最小旋回角速度ω1以下に強制的に抑えることは難しい。
【0092】
また、作業現場においてアタッチメント10Sの旋回方向に対して風が追い風方向に作用した場合、上部旋回体12の旋回角速度が増速され、設定された旋回角速度制限値ωrを超えてしまう可能性がある。同様に、作業現場の地盤傾斜により旋回方向にアタッチメントの自重が作用した場合、上部旋回体12の旋回角速度が増速され、設定された旋回角速度制限値ωrを超えてしまう可能性がある。
【0093】
図24は、本発明の各実施形態に係る旋回制御装置8Sと比較される他の旋回制御装置が実行する旋回制御におけるレバー操作量、パイロット圧、実旋回角速度の時間推移を示すグラフである。
図24では、中立フリー(旋回フリー)構造を有する油圧回路において、操作レバーが中立位置から最大操作量(FULL)まで操作された場合に、上部旋回体12の実旋回角速度が傾転調整によって旋回角速度制限値ωrに制限されたものの、風荷重の影響を受けて旋回角速度制限値ωrを超える様子を示している。前述のように、負荷が大きい場合や作業半径が大きい場合は、油圧ポンプ71の傾転制御だけでは、最小旋回角速度ω1以下には制御できない可能性がある。また、後記のレバー制御(比例弁制御)において操作部81の操作レバー量を強制的に制御すると、旋回モータ72の旋回トルクが低下し風荷重に負けてしまうことがある。このため、必要な旋回トルクを確保できるレバー量に対応する最小旋回角速度ω1以下に、実旋回角速度を制御することが難しい場合がある。更に、ω1<ωrの場合であっても、風荷重や地盤傾斜の影響により旋回角速度が増速し、実旋回角速度がωrを超える場合がある。特に、公知の中立フリー構造の場合は、操作レバーを中立位置に戻すだけでは油圧ブレーキが利かないため、風荷重や地盤傾斜により実旋回角速度が増速しωrを超える場合がある。
【0094】
本実施形態では、上記のように、上部旋回体12の旋回角速度を制限するにあたって、意図せず旋回角速度が旋回角速度制限値ωrを超えそうになった場合でも、クレーン10を操作するオペレータにその情報を速やかに報知し、上部旋回体12の旋回角速度を低下させることを可能とする。以下に、その制御の流れについて詳述する。
【0095】
<上部旋回体12の旋回制御について>
図11は、本実施形態に係る旋回制御装置8Sが実行するクレーン10の旋回制御のフローチャートである。以下に、上記のような旋回角速度の制限値を用いた、上部旋回体12の旋回制御について詳述する。
【0096】
図11を参照して、作業者が旋回動作に関する操作レバー81Aを操作し、当該操作に応じた信号がリモコン部81Bから制御部80に入力されると、角速度設定部801は、最大旋回角速度制御の実行スイッチがオンされているかを判定する(ステップS1)。ここで、上記の実行スイッチがオンされている場合(ステップS1でYES)、角速度設定部801は、記憶部803からアタッチメント情報を取得する(ステップS2)。本実施形態では、前述のように、アタッチメント10Sの長さ情報が取得される。なお、アタッチメント10Sの長さは、ブーム16の長さとジブ18の長さとの和である。
【0097】
次に、起伏角検出部83がブーム16、ジブ18の各起伏角を検出するとともに、荷重検出部84が吊り荷の荷重を検出する。なお、角速度設定部801は、起伏角検出部83によって検出された起伏角に対応する余弦と、上記で予め取得されたブーム16、ジブ18の長さとに基づいて、
図8の作業半径R1を演算する。この結果、作業半径および吊り荷の荷重が検出される(
図11のステップS3)。
【0098】
次に、角速度設定部801は、上記で取得した各負荷情報に基づいて、記憶部803に記憶されている制限値マップ(
図9)を参照し、旋回角速度制限値ωr(最大旋回角速度)を設定する(ステップS4)。
【0099】
次に、旋回制御部802が、上記で設定された旋回角速度制限値ωrに基づいて、上部旋回体12の旋回角速度を制限しながら、上部旋回体12の旋回制御を実行する。具体的に、旋回制御部802は、油圧ポンプ71の傾転を制御することで、油圧ポンプ71からコントロールバルブ73を通じて旋回モータ72に供給される作動油の最大流量を制限することで、上部旋回体12の旋回角速度制限値ωrを制限する。この際、旋回制御部802は、旋回角速度制限値ωrに対応する傾転調整指令信号を傾転調整部71S(
図3)に入力する。この結果、油圧ポンプ71の最大吐出量が制限され、上部旋回体12の旋回角速度が旋回角速度制限値ωr以下となるように調整される。
【0100】
一方、前述のように、油圧ポンプ71の特性や作業現場における風、地盤傾斜などの影響で、実際の旋回角速度(実旋回角速度)が旋回角速度制限値ωrを超える可能性がある。このため、旋回制御部802は、旋回角度検出部76の検出結果から、実旋回角速度を演算し、取得する(ステップS6)。
【0101】
図12は、本実施形態に係る旋回制御装置8Sにおいて実旋回角速度の算出方法を説明するためのグラフである。本実施形態では、旋回制御部802は、第1の時刻および第2の時刻のそれぞれにおいて旋回角度検出部76によって検出された2つの旋回角度の差と、前記第1の時刻と前記第2の時刻との時間間隔とから、上部旋回体12の実旋回角速度を演算する。この結果、旋回角速度を直接検出する装置を搭載する必要がなく、旋回角度検出部76を利用して旋回角速度を検出することができる。具体的に、
図12に示すように、実旋回角速度=(旋回角度変化ΔA)/(時間間隔ΔT2)によって演算される。ここで、時間間隔ΔT1は、制御部80のコントローラの仕様上の時間間隔であり、時間間隔ΔT2は実際の時間間隔を表す。このように、本実施形態では、実旋回角速度の演算において、上記のようにΔT1(仕様値、コントローラの処理量によって、実際の時間間隔と異なる場合がある)ではなく、制御部80が備えるタイマー(実時間計測部)等で計測した時間間隔ΔT2(実際の時間間隔)を用いる。
【0102】
換言すれば、前記コントローラが、そのシステム時刻に基づいて、第1の時刻および第2の時刻をそれぞれ設定する。この第1の時刻と第2の時刻との時間間隔はシステム時刻上、ΔT1である。一方、タイマー等で計測した第1の時刻と第2の時刻との時間間隔は、ΔT2である。タイマーが計測する時間間隔は、前記コントローラのシステム時刻に対して、独立してカウントされる。
【0103】
なお、旋回角度検出部76から制御部80への旋回角度の取り込みは、前記コントローラの制御周期毎に行われるため、上記の時間変化は、コントローラの制御周期×N制御周期と表すことができるが、Nは1であってもよいし、1よりも大きな値(例えばN=5または10など)であってもよい。N=1の場合、応答性は高いが旋回角速度の演算値の変動がやや大きくなる。また、N=5、10などの場合は、制御周期N周期分の平均的な旋回角速度を計算することになるため、応答性は遅くなるが、旋回角速度の演算値の変動は小さくなる。なお、各周期において演算される旋回角速度の変動が大きい場合は、移動平均処理などのフィルター処理を行ってもよい。上記のように、時間間隔としてコントローラの仕様上の時間間隔(システム時刻に基づく時間間隔)ではなく、実時間計測値を用いることで旋回角速度の演算値の精度を向上することができる。
【0104】
次に、旋回制御部802は、上記で演算された実旋回角速度を、角速度設定部801によって設定された最大旋回角速度と比較する(ステップS7)。この際、制御のオーバーシュートを考慮した上で、実旋回角速度が最大旋回角速度を大きく超えることを抑制するために、予め設定された定数αが最大旋回角速度から引かれた値と、実旋回角速度との大小関係が比較される。そして、実旋回角速度が、(最大旋回角速度-α)未満の場合(ステップS7でYES)、
図11のフローが終了する。なお。上部旋回体12の旋回動作中は、
図11のフローが繰り返される。
【0105】
一方、ステップS7において、実旋回角速度が(最大旋回角速度-α)以上の場合(ステップS7でNO)、制御部80が旋回角速度超過の警告を行う(ステップS8)。具体的に、旋回制御部802が旋回角速度を低下させるための補助指令信号を出力し、表示部85(
図3)に入力する。この結果、表示部85(警告部)が、旋回制御部802から出力された前記補助指令信号を受けて、上部旋回体12の実旋回角速度が前記最大旋回角速度に近接した又は前記最大旋回角速度を超えたことを、キャブ15内で操作部81(
図3)を操作することが可能な作業者に対して警告する。なお、当該警告は、表示部85に表示される表示画像の他に、音声情報、ブザー音などによって、報知、警告するものでもよいし、操作部81の操作レバーが振動するものでもよい。また、キャブ15内の表示部85に限定されるものではなく、クレーン10を遠隔操作する遠隔装置や、作業現場などで作業者が手にするタブレットなどにおいて、警告するものでもよい。
【0106】
本実施形態では、上部旋回体12の旋回角速度が旋回角速度制限値ωrに近づいた場合には、負荷の大きさに関わらず、補助指令信号を出力して警告表示を行うことが可能である。このため、
図9のグラフの縦軸に示されるように、広い範囲の補助制御領域SAにおいて補助指令信号を出力することができる。
【0107】
なお、
図11のステップS1において、最大旋回角速度制御の実行スイッチがオンされていない場合(ステップS1でNO)、上記の最大旋回角速度制御が実行されることなく、通常の旋回制御(最大旋回角速度を制限しない制御)が実行される。
【0108】
以上のように、本実施形態では、角速度設定部801が、最大旋回角速度(旋回角速度制限値ωr)を設定する。当該最大旋回角速度は、負荷情報に基づいて上部旋回体12の旋回動作において許容される上部旋回体12の旋回角速度の最大値である。更に、旋回制御部802は、操作部81から出力された前記旋回指令信号を受け入れ、当該旋回指令信号に対応して上部旋回体12が下部走行体14に対して旋回するように旋回駆動部7Sを制御する。この際、旋回制御部802は、上部旋回体12の旋回角速度が前記角速度設定部801によって設定された前記最大旋回角速度を超えないように旋回駆動部7Sを制御する。
【0109】
このような構成によれば、角速度設定部801が負荷情報に応じて上部旋回体12の旋回動作における最大旋回角速度を設定するため、アタッチメント10Sに大きな横荷重が加わり当該アタッチメント10Sが損傷、破損することを効率的に抑止することが可能となる。
【0110】
一方、上記のような望ましい制御が行われた場合であっても、油圧ポンプ71を含む油圧回路の特性や作業現場における風や地盤傾斜などの作業条件の影響から、上部旋回体12の旋回角速度が旋回角速度制限値ωrに近接することや超えてしまうことがある。このような場合であっても、本実施形態では、旋回制御部802が補助指令信号を出力することで、上部旋回体12の旋回角速度を低下させる措置を講じることができる。特に、前記補助指令信号が表示部85に入力されることで、旋回角速度が超過する可能性を作業者に報知、警告することができる。この結果、作業者が操作部81の操作レバーの操作量を大きく下げることによって、旋回角速度を低下させることができる。なお、クレーン10が前述のような中立フリー構造の油圧回路を含む場合には、作業者が逆レバー操作(当初の旋回方向とは逆方向に油を流すようコントロールバルブを開く操作)を行うことで、強制的に油圧ブレーキを付与すればよい。この結果、上部旋回体12の旋回角速度が、旋回角速度制限値ωrを大きく超えることを防止することができる。従って、上部旋回体12の旋回動作における安全性をより高めることができる、
【0111】
特に、表示部85に表示される警告情報を受けて、操作部81を操作する作業者は、現在の操作量では上部旋回体12の旋回角速度が旋回角速度制限値ωrに近づくことを直感的に認知することができる。このため、以後の操作において、操作部81の操作量を加減することに繋がるため、上記のような警告表示の回数を低減することにもつながる。
【0112】
図13は、本実施形態に係る旋回制御装置8Sが実行する旋回制御における旋回角速度の抑制効果を示すグラフである。上記のような旋回角速度の制御によれば、
図13に示すように、実旋回角速度が旋回角速度制限値ωrを上回ることを安定して抑止することができる。
【0113】
また、本実施形態では、旋回制御部802が、油圧ポンプ71の傾転を調整することで、上部旋回体12の旋回角速度が最大旋回角速度を超えないように油圧ポンプ71から吐出される作動油の吐出量を制限するため、油圧回路の構造を利用して上部旋回体12の旋回角速度を制限することができる。
【0114】
また、本実施形態では、負荷情報に含まれるアタッチメント情報は、アタッチメント10Sの前記基端部から前記先端部までのアタッチメント10Sの長さを含む。そして、角速度設定部801は、アタッチメント10Sの長さが第1の長さの場合に最大旋回角速度を第1の旋回角速度に設定し、アタッチメント10Sの長さが前記第1の長さよりも大きな第2の長さの場合に前記最大旋回角速度を前記第1の旋回角速度よりも小さな第2の旋回角速度に設定する。すなわち、角速度設定部801は、アタッチメント10Sの長さが大きいほど前記最大旋回角速度が小さくなるように、前記最大旋回角速度を設定する。
【0115】
このような構成によれば、相対的に長いアタッチメント10Sが上部旋回体12に装着されている場合には、角速度設定部801が上部旋回体12の最大旋回角速度を相対的に小さく設定するため、アタッチメント10Sに大きな横荷重が加わり当該アタッチメント10Sが損傷、破損することを抑止することができる。特に、長尺のアタッチメントなど強度が低いアタッチメント10Sが上部旋回体12に装着されている場合に、仮に作業者が操作レバー81Aを通じて急に大きな旋回操作を入力しても、角速度設定部801が最大旋回角速度を制限することで、荷揺れに伴うアタッチメント10Sの変形を許容値以下に抑えることが可能となり、上記のようにアタッチメント10Sの破損などのリスクを抑え、安全な操作を行うことが可能となる。
【0116】
また、本実施形態では、負荷情報に含まれる旋回動作情報は、主巻ロープ50に接続される吊り荷の荷重である吊り荷荷重に対応する情報を含み、角速度設定部801は、旋回動作情報取得部800Bによって取得された前記吊り荷荷重に基づいて前記最大旋回角速度を設定する。
【0117】
このような構成によれば、角速度設定部801が、アタッチメント10Sに作用する横荷重に大きな影響を与えうる吊り荷荷重に基づいて最大旋回角速度を設定するため、アタッチメント10Sに大きな横荷重が加わることを確実に抑止することができる。
【0118】
特に、角速度設定部801は、前記吊り荷荷重が第1の荷重の場合(軽負荷)に前記最大旋回角速度を第3の旋回角速度に設定し、前記吊り荷荷重が前記第1の荷重よりも大きな第2の荷重(重負荷)の場合に前記最大旋回角速度を前記第3の旋回角速度よりも小さな第4の旋回角速度に設定する。すなわち、角速度設定部801は、前記吊り荷荷重が大きいほど前記最大旋回角速度が小さくなるように、前記最大旋回角速度を設定する。
【0119】
このような構成によれば、相対的に大きな荷重の吊り荷がアタッチメント10Sに接続されている場合には、角速度設定部801が上部旋回体12の最大旋回角速度を相対的に小さく設定するため、前記アタッチメント10Sに大きな横荷重が加わり当該アタッチメント10Sが損傷、破損することを確実に抑止することができる。
【0120】
更に、本実施形態では、角速度設定部801は、同じ前記アタッチメント情報において、作業半径Rが第1の作業半径の場合に前記最大旋回角速度を一の旋回角速度(第5の旋回角速度)に設定し、作業半径Rが前記第1の作業半径よりも大きな第2の作業半径の場合に前記最大旋回角速度を前記一の旋回角速度よりも小さな他の旋回角速度(第6の旋回角速度)に設定することが望ましい。すなわち、角速度設定部801は作業半径Rが大きいほど前記最大旋回角速度が小さくなるように、前記最大旋回角速度を設定してもよい。
【0121】
このような構成によれば、アタッチメント10Sが相対的に大きな作業半径に設定されている場合には、角速度設定部801が上部旋回体12の最大旋回角速度を相対的に小さく設定するため、アタッチメント10Sに大きな横荷重が加わり当該アタッチメント10Sが損傷、破損することを確実に抑止することができる。
【0122】
<変形実施形態>
次に、上記の第1実施形態に基づく変形実施形態について説明する。具体的に、
図11のステップS4において旋回角速度制限値ωr(最大旋回角速度)が設定された後に、所定の判定処理が実行され、当該旋回角速度制限値ωrが、予め記憶部803(
図3)に格納されている最小旋回角速度ω1未満の場合に限って、ステップS6以後の処理が実行されてもよい。旋回角速度制限値ωrが最小旋回角速度ω1以上の場合には、油圧ポンプ71の傾転制御によって、旋回角速度の制御が可能なためである。
【0123】
図14および
図15は、本変形実施形態に係る旋回制御装置8Sが実行する旋回制御におけるレバー操作量と実旋回角速度の時間推移を示すグラフである。
図13は、ωr>ω1の場合に相当し、
図14は、ωr≦ω1の場合に相当する。
【0124】
例えば、ωr>ω1の関係となるのは、吊り荷荷重が小さい場合や作業半径が小さい場合に相当する。この場合、
図14に示すように、レバー操作量がFULL状態(実線)まで操作されると、実旋回角速度がωrとなるように油圧ポンプ71の傾転(ポンプ容量)が制御される。なお、
図14で破線で示すように、レバー操作量がハーフの場合は、実旋回角速度はωrより小さくなる。
図14に示す条件では、レバー操作量がFULL状態でも前述の旋回制御により最大旋回角速度がωr以下に制御されるため、安全性を確保することができる。なお、先の第1実施形態を含め、本変形実施形態では、エンジン回転数がHIGH、LOWの2水準に設定可能であり、
図14はHIGHの状態を示している。仮に、エンジン回転数をLOWにすると、相対的に旋回角速度が低下するため、レバー操作量がFULLでも旋回角速度をωr以下に設定することができる。
【0125】
一方、ωr≦ω1の関係となるのは、例えば、吊り荷荷重が大きい場合や作業半径が大きい場合に相当する。この場合、
図15に示すように、レバー操作量がFULL状態まで操作されると、実旋回角速度がω1まで制御されるが、本来目標とする旋回角速度制限値ωr以下に制御することはできない。このような場合でも、先の第1実施形態と同様に、実旋回角速度を検出して、その実旋回角速度が旋回角速度制限値ωrを上回った場合に、補助指令信号を出力することで、オペレータに減速操作を促すことができる。この場合、オペレータは、レバー操作量を下げるか、エンジン回転を下げるか、逆レバー操作を行うかによって、上部旋回体12の旋回角速度を低下させ、旋回動作の安全性を高めることができる。なお、この場合であっても、そもそもオペレータがFULL状態までレバー操作を行なわなければ、旋回角速度をωr以下とすることができるため、補助指令信号を出力せずとも安全性は確保される。エンジン回転数をLOWに設定した場合は、
図14と同様である。
【0126】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る旋回制御装置8Sを有するクレーン10について説明する。なお、本実施形態では、先の第1実施形態との相違点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する(以後の各実施形態においても同様)。本実施形態では、補助指令信号に基づいて、旋回制御装置8Sが上部旋回体12の旋回角速度を自動的に制御する点に特徴を有する。
図16は、本実施形態に係る旋回制御装置8Sが実行するクレーン10の旋回制御のフローチャートである。
図17は、本実施形態に係る旋回制御装置8Sが実行するクレーン10の旋回制御における制御領域CAと補助制御領域SAを示すグラフである。
図18は、本実施形態に係る旋回制御装置8Sが実行する旋回制御におけるレバー操作量、パイロット圧、実旋回角速度の時間推移を示すグラフである。
【0127】
図16のフローチャートにおけるステップS11からS17までは、
図11のステップS1からS7までと同様である。そして、ステップS17において、実旋回角速度が最大旋回角速度以上の場合(ステップS7でNO)、制御部80が旋回角速度の低減制御を実行する。具体的に、制御部80の旋回制御部802が、第1電磁比例弁77、第2電磁比例弁78に対する比例弁指令信号の補正を実行する(ステップS18)。
【0128】
本実施形態では、クレーン10の油圧回路が前述の中立フリー構造を有するため、旋回制御部802は逆レバー制御を実行する。この際、旋回制御部802は、実旋回角速度と目標旋回角速度の偏差を演算し、その偏差が増加している場合に、当該偏差の増加量に応じて例えばPID制御則などにより、逆レバー制御量を演算する。そして、コントロールバルブ73の開度を決定するパイロット圧として、現在の旋回方向とは逆方向にコントロールバルブ73が開くよう、第1電磁比例弁77または第2電磁比例弁78に比例弁指令信号を入力する。換言すれば、旋回制御部802は、操作部81に入力されている操作に対応する比例弁指令信号を、上記のように強制的に補正する。
【0129】
以上のように、本実施形態では、旋回制御部802は、操作部81から受け入れた旋回指令信号に対して、上部旋回体12の旋回角速度が低下するように補正を行い、当該補正された旋回指令信号を補助指令信号として旋回駆動部7S(第1電磁比例弁77、第2電磁比例弁78)に入力する。
【0130】
このような制御においても、上部旋回体12の旋回角速度が大きくなりすぎた場合、例えば、風荷重などの影響があっても旋回角速度を旋回角速度制限値ωr以下となるように制御して、安全性を高めることができる。なお、前述のように、作業現場における地盤傾斜に基づく下り勾配よって、旋回速度が増速した場合にも同様の効果を得ることができる。このように、本実施形態では、クレーン10に搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けても、上部旋回体12の旋回速度を最大旋回角速度以下に安定して制御することができる。
【0131】
図17では、最小旋回角速度ω1を基準として、旋回角速度がω1よりも大きい領域では、油圧ポンプ71の傾転制御によって上部旋回体12の旋回角速度を有効に制限することができる(制御領域CA)。一方、旋回角速度がω1よりも小さい領域では、油圧ポンプ71の傾転制御だけでは上部旋回体12の旋回角速度を有効に制限することが難しいため、上記のような補助指令信号に基づく第1電磁比例弁77、第2電磁比例弁78の制御によって、同様に、上部旋回体12の旋回角速度を制限することができる(補助制御領域SA)。
【0132】
また、
図18に示すように、操作部81に入力されるレバー操作量がFULLの状態で、パイロット圧もFULL状態とされているときに、風荷重が作用することで実旋回角速度がωrに近づくことがあっても、逆レバー操作に相当するパイロット圧が生成されることによって、上部旋回体12の旋回角速度を減速させることが可能になる。
【0133】
なお、上記のような自動的な制御に加えて、表示部85に警告情報が表示される場合は、並行してオペレータが逆レバー操作を行なう可能性がある。この場合、例えばオペレータの逆レバー操作量と、上記の制御による逆レバー制御量との高位選択、または両者の合算によってコントロールバルブ73の開度を制御するように、パイロット圧の制御量が演算されてもよい。これにより、制御部80によって減速制御が作動している状態で、オペレータがそれ以上の減速を求めた場合には、高位選択によってオペレータのブレーキ操作を制御部80の制御よりも優先させることができる。また、両制御量の合算の場合には、制御部80の制御とオペレータのブレーキ操作とが合わさって減速制御が行われることで、オペレータの意思に応じた減速が可能となる。
【0134】
また、旋回駆動部7Sの油圧回路が前述のような中立フリー構造ではなく、操作レバーが中立位置に配置されると旋回モータ72における作動油の流れが強制的に停止する場合(中立ブレーキ構造)には、現在の旋回方向におけるパイロット圧を減少させるように制御されればよい。
【0135】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図19は、本実施形態に係るクレーン10の旋回駆動部7Sの油圧回路図である。
図20は、本実施形態に係る旋回制御装置8Sが実行する旋回制御における操作レバーの操作量と電磁比例弁の2次圧との関係を示すグラフである。
図21は、本実施形態に係る旋回制御装置8Sが実行する旋回制御における電磁比例弁の2次圧と上部旋回体12の旋回角速度との関係を示すグラフである。
図22は、本実施形態に係る旋回制御装置8Sが実行するクレーン10の旋回制御のフローチャートである。
【0136】
図19を参照して、本実施形態では、
図2に示される第1実施形態と比較して、クレーン10の旋回駆動部7Sがブレーキバルブ91、ブレーキシリンダ92を有する点で相違する。なお、前述のように、
図2のブレーキバルブ91、ブレーキシリンダ92は本実施形態に係る部材である。
【0137】
旋回ブレーキバルブ91(
図3)(機械式ブレーキ装置)は、旋回制御部802から受ける補助指令信号に応じて開弁し、ブレーキシリンダ92に対して給排する作動油の流量を調整する。この結果、旋回モータ72(
図2)に対する機械的ブレーキのオン、オフが切り換えられる。
【0138】
ブレーキシリンダ92(機械式ブレーキ装置)は、上記の旋回ブレーキバルブ91から作動油の供給を受けることで収縮する一方、内部の作動油を排出することで予め設定されたばね部材の付勢力を受けて伸長する。ブレーキシリンダ92のピストンロッドにはブレーキ押圧部92Aが固定されている。ブレーキシリンダ92は、コントロールバルブ73の切換位置に関わらず旋回モータ72の回転を強制的に阻止するブレーキ状態と、旋回モータ72の回転を許容する非ブレーキ状態との間で切換え可能なように作動する。ブレーキシリンダ92のピストンが伸長すると、ブレーキ押圧部92Aが旋回モータ72の出力軸と摺接し、旋回モータ72の回転を強制的に減速ないし停止させる。一方、ブレーキシリンダ92のピストンが収縮すると、ブレーキ押圧部92Aが旋回モータ72の出力軸から離間し、旋回モータ72の回転を許容する。なお、作業者は操作部81(
図3)に備えられた不図示のブレーキボタンを押圧することで、旋回モータ72に対してブレーキシリンダ92のブレーキ押圧部92Aによる機械的なブレーキ力を付与することもできる。
【0139】
先の第1実施形態では、旋回制御部802が油圧ポンプ71の傾転を調整し、油圧ポンプ71から吐出される作動油の吐出量(ポンプ容量)を制限することで、上部旋回体12の旋回角速度を制限する態様にて説明した。一方、本実施形態では、旋回制御部802が、
図19に示す第1電磁比例弁77および第2電磁比例弁78の2次圧を調整し、コントロールバルブ73において旋回モータ72に供給される作動油の流量を調整することで、上部旋回体12の旋回角速度を制限する。
【0140】
すなわち、本実施形態においても、先の第1実施形態と同様に、ステップS31からS34が順に実行される(
図22)。一方、ステップS34において角速度設定部801が最大旋回角速度(旋回角速度制限値ωr)を設定すると、旋回制御部802は、ステップS35において、第1電磁比例弁77または第2電磁比例弁78に対して、比例弁指令信号(強制指令信号)を入力する。具体的に、旋回制御部802は、操作部81に入力される操作量に対して上部旋回体12の旋回角速度が旋回角速度制限値ωrを超えないように各比例弁の2次圧をPiに制限する(
図20)。第1電磁比例弁77および第2電磁比例弁78の各2次圧と上部旋回体12の旋回角速度との間は、
図21の示すような関係があるため、電磁比例弁2次圧の最大値をPiとすることで、上部旋回体12の旋回角速度の最大値をωrに制限することが可能となる。
【0141】
一方、本実施形態においても、上記のように制御した上部旋回体12の旋回角速度が、オペレータの意に反して旋回角速度制限値ωrに近接する又はこれを超えてしまう場合がある。このため、
図22のステップS36、S37を経て、実旋回角速度が(最大旋回角速度-α)以上の場合(ステップS37でNO)、制御部80が旋回角速度の低下制御を実行する。具体的に、旋回制御部802が、ブレーキバルブ91に補助指令信号を入力することでブレーキシリンダ92を動かし、上部旋回体12の旋回角速度を低下させるように上部旋回体12の旋回にブレーキ力を付与する(機械ブレーキ制御の実行、S38)。
【0142】
この結果、先の第1,第2実施形態と同様に、上部旋回体12の旋回角速度が旋回角速度制限値ωrを大きく上回ることを抑止することができる。特に、機械ブレーキによる減速制御を利用することで、上部旋回体12の旋回角速度を確実かつ速やかに減速させることができる。したがって、クレーン10に搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けても、ブレーキシリンダ92によって上部旋回体12の旋回速度を最大旋回角速度以下に安定して制御することができる。
【0143】
本実施形態に係るクレーン10の旋回方法は、上部旋回体12の旋回角速度に起因して前記アタッチメント10Sに作用する、上部旋回体12の旋回動作における接線方向に沿った荷重である横荷重に基づいて、前記旋回角速度の最大値である最大旋回角速度を設定するための情報である負荷情報を取得することと、前記取得された前記負荷情報に基づいて、上部旋回体12の旋回動作において許容される前記最大旋回角速度を設定することと、操作部81から出力された前記旋回指令信号に対応して上部旋回体12が下部走行体14に対して旋回するように旋回駆動部7Sを制御するとともに、上部旋回体12の旋回角速度が前記最大旋回角速度を超えないように旋回駆動部7Sを制御し、上部旋回体12の実旋回角速度が前記最大旋回角速度に近接した又は前記最大旋回角速度を超えた場合に上部旋回体12の旋回角速度を低下させるための補助指令信号を出力することと、を備える。
【0144】
本方法によれば、クレーン10に搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けて上部旋回体12の旋回角速度が最大旋回角速度を超えそうになった場合でも、補助指令信号を出力することによって、上部旋回体12の旋回角速度を低下させる措置を講じることができる。
【0145】
上記の方法において、前記補助指令信号に応じて表示部85などの警告部を作動させて、上部旋回体12の実旋回角速度が前記最大旋回角速度に近接した又は前記最大旋回角速度を超えたことを、操作部81を操作することが可能な作業者に対して警告することを更に備えるものでもよい。
【0146】
本方法によれば、クレーン10に搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けて上部旋回体12の旋回角速度が最大旋回角速度を超えそうになった場合でも、その情報を作業者に警告することによって、上部旋回体12の旋回速度を最大旋回角速度以下に安定して制御することができる。
【0147】
上記の方法において、操作部81から受け入れた前記旋回指令信号に対して、上部旋回体12の旋回角速度が低下するように補正を行い、当該補正された旋回指令信号を前記補助指令信号として旋回駆動部7Sに入力することを更に備えるものでもよい。
【0148】
本方法によれば、クレーン10に搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けても、上部旋回体12の旋回速度を最大旋回角速度以下に安定して制御することができる。
【0149】
上記の方法において、旋回駆動部7Sに設けられた機械式ブレーキ装置(旋回ブレーキバルブ91、ブレーキシリンダ92)に前記補助指令信号を入力することで、上部旋回体12の旋回角速度を低下させるように上部旋回体12の旋回にブレーキ力を付与することを更に備えるものでもよい。
【0150】
本方法によれば、クレーン10に搭載される油圧回路の特性や作業現場の作業条件の影響を受けても、機械式ブレーキ装置によって上部旋回体12の旋回速度を最大旋回角速度以下に安定して制御することができる。
【0151】
なお、前述のクレーン10の説明に含まれる内容は、上記のクレーン10の旋回方法の一部を構成することができる。
【0152】
以上、本発明の各実施形態に係る旋回制御装置8Sおよびこれを備えるクレーン10、クレーン10の旋回方法について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明は、例えば以下のような変形実施形態を取ることができる。
【0153】
(1)上記の実施形態では、
図1に示されるクレーン10をもって説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図23は、本発明の変形実施形態に係る旋回制御装置8Sを備えたクレーン10の側面図である。本変形実施形態では、クレーン10が、ジブ18(
図1)を備えず、ブーム16(アタッチメント10S)の先端部から主巻ロープ50(吊り荷ロープ)が垂下されることで、吊り荷が吊り上げられる。この場合、アタッチメント情報取得部800Aは、アタッチメント情報としてブーム16の長さなどの情報を取得し、角速度設定部801は、当該アタッチメント情報に応じて上部旋回体12の旋回動作における旋回角速度制限値ωrを設定すればよい。また、先の第1実施形態において、アタッチメント10Sのうちジブ18の長さのみがアタッチメント情報として取得されてもよい。
【0154】
(2)また、
図1に示されるクレーン10は、リヤストラット21、フロントストラット22を備えないものでもよいし、1つのストラットを備えるものでもよい。また、ブーム16を支持するマストの構造も、
図1に示されるものに限定されるものではなく、他のマスト構造や不図示のガントリ構造などでもよい。
【0155】
(3)また、上記の各実施形態では、アタッチメント情報取得部800Aが取得するアタッチメント情報として、アタッチメント10Sの長さ情報を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。アタッチメント情報は、アタッチメント10S(ブーム16、ジブ18など)の剛性、強度、断面構造、材料特性などのように、横荷重に対する強さの指標となる情報を含むものでもよい。この場合、前記強さの指標が大きい場合には、角速度設定部801は旋回角速度制限値ωrを相対的に大きく設定してもよい。また、アタッチメント情報は、アタッチメント10Sの使用年数(製造日からの経過年数)、上部旋回体12に対する着脱回数などを含むものでもよい。これらの年数、回数が大きいほど、角速度設定部801は旋回角速度制限値ωrを相対的に小さく設定してもよい。
【0156】
(4)また、旋回動作情報取得部800Bが取得する旋回動作情報は、吊り荷荷重、作業半径(起伏角)に限定されるものではない。旋回動作情報は、作業現場における風速など、吊り荷の荷振れ、アタッチメント10Sの振れ、アタッチメント10Sに作用する横荷重、応力などに影響を与える、その他の情報を含むものでもよい。
【0157】
(5)また、上記の各実施形態では、入力部82からの各種の情報の入力や記憶部803に記憶される情報(制限値マップなど)に基づいて、上部旋回体12の旋回角速度制限値ωrが設定される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。アタッチメント10Sの固有情報、識別情報が既知の場合には、当該情報と予め準備された演算式とに基づいて、角速度設定部801が最大旋回角速度(旋回角速度制限値ωr)を設定してもよい。また、アタッチメント情報取得部800A、旋回動作情報取得部800Bおよび角速度設定部801などを含む制御部80のうちの少なくとも一部は、クレーン10に搭載されず、遠隔のリモート制御拠点に配置されてもよい。この場合、当該拠点から無線などの通信装置を用いてクレーン10(制御部80)に旋回角速度制限値ωrが送信されてもよい。また、クレーン10の周囲において、作業者が手にする不図示の操作装置内に、制御部80(アタッチメント情報取得部800A、旋回動作情報取得部800B、角速度設定部801)などが備えられていてもよい。更に、操作部81から入力されるのはアタッチメント20Sの型番(製造番号)であって、その型番に対応する長さ情報をアタッチメント情報取得部800Aが記憶部803から取得してもよい。
【0158】
(6)また、制御部80は、上部旋回体12の旋回制御において取得したアタッチメント10Sの仕様、作業半径、吊り荷荷重などとともに、旋回角速度制限値ωr、実旋回角速度の情報を通信部86(
図3)から遠隔装置に送信し、当該遠隔装置のもつIT機能によってこれらの情報を遠隔でモニタしてもよい。このように実際の作業状態での情報を遠隔でモニタし、クレーン10の作業現場における使われ方を把握することで、例えば、今後のクレーン10の設計情報として活用することができる。
【0159】
(7)また、制御部80の記憶部803は、操作部81が受ける操作の操作量と、エンジン70の回転数と、旋回角速度制限値ωrとの関係を示す関係情報を予め記憶するものでもよい。この場合、
図21において、横軸の2次圧がレバー操作量に置き換えられた態様のマップが記憶部803に記憶されている。そして、旋回制御部802は、現在のエンジン70の回転数と前記操作量とに基づいて記憶部803に記憶された前記関係情報を参照して、旋回角速度制限値ωrを導き出し、当該旋回角速度制限値ωrを現在の実旋回角速度と推定してもよい。この場合、上部旋回体12の実旋回角速度を直接検出する必要がなく、容易に推測することができる。
【0160】
特に、前述のように、エンジン70の回転数がHIGHのときには、レバー操作量がFULLの状態に対応して上部旋回体12の旋回角速度が旋回角速度制限値ωrとなるように制御されるため、実旋回角速度の推定時に、旋回角速度制限値ωrを実旋回角速度に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0161】
10 クレーン
10S アタッチメント
12 上部旋回体
14 下部走行体(下部本体)
15 キャブ
16 ブーム
18 ジブ
50 主巻ロープ
57 主フック
70 エンジン
71 油圧ポンプ
71S 傾転調整部
72 旋回モータ
73 コントロールバルブ
76 旋回角度検出部
77 第1電磁比例弁
78 第2電磁比例弁
7S 旋回駆動部
7T 流量調整機構
80 制御部
800A アタッチメント情報取得部
800B 旋回動作情報取得部
801 角速度設定部
802 旋回制御部
803 記憶部
81 操作部
82 入力部
83 起伏角検出部
84 荷重検出部
8S 旋回制御装置
CL 旋回中心軸