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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115831
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
C23C14/24 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021696
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000146009
【氏名又は名称】株式会社昭和真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】簗瀬 健介
(72)【発明者】
【氏名】中里 隼
(72)【発明者】
【氏名】村木 啓太
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA09
4K029AA11
4K029CA01
4K029DB21
4K029HA01
4K029HA02
4K029HA04
4K029JA03
4K029JA05
4K029JA06
4K029JA08
(57)【要約】
【課題】成膜対象物の成膜対象面全面に亘って均一な光学特性を得ることができる成膜装置を提供することにある。
【解決手段】この発明は、真空容器2内に公転パレット4を公転軸A1周りに回転可能に配置し、公転パレット4に自転ホルダ5を自転軸A2周りに回転可能に配置し、公転パレット4に、自転ホルダ5に保持される成膜対象物10の成膜対象面11の一部分を覆うマスク6を、配置する。この結果、この発明は、真空容器2内で自公転する成膜対象物10の成膜対象面11のうち、膜厚が厚く形成される部分をマスク6で覆って、膜厚部分に蒸着する蒸発物質31を遮蔽することができる。これにより、この発明は、成膜対象物10の成膜対象面11に膜を全面に亘って均一に形成することができるので、成膜対象面11全面に亘って均一な光学特性を得ることができる。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜対象物の成膜対象面に膜を形成する成膜装置であって、
真空容器と、
前記真空容器内に配置されている蒸発源と、
前記真空容器内に公転軸周りに回転可能に配置されている少なくとも1枚の公転パレットと、
前記公転パレットを前記公転軸周りに回転させる公転駆動部と、
前記公転パレットに自転軸周りに回転可能に配置されていて、前記成膜対象物を保持する少なくとも1個の自転ホルダと、
前記自転ホルダを前記自転軸周りに回転させる自転駆動部と、
前記自転ホルダに保持される前記成膜対象物の前記成膜対象面の一部分を覆って、前記蒸発源から蒸発して前記成膜対象面に蒸着する蒸発物質の一部を遮蔽する少なくとも1個のマスクと、
を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記マスクは、前記自転軸に対して前記蒸発源と反対側に配置されていて、前記成膜対象物の前記成膜対象面のうち、前記自転軸に対して前記蒸発源と反対側の部分を覆って、前記蒸発源から蒸発して前記成膜対象面に蒸着する前記蒸発物質の一部を遮蔽する、
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記マスクは、前記自転ホルダに保持される前記成膜対象物を挟んで前記自転ホルダと反対側に配置されていて、前記自転軸方向から見て、前記成膜対象物の前記成膜対象面のうち、前記自転軸に対応する部分から周辺の一部分にかけての範囲を覆って、前記蒸発源から蒸発して前記成膜対象面に蒸着する前記蒸発物質の一部を遮蔽する、
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記公転パレットには、複数個の前記自転ホルダと複数個の前記マスクとが一対一の状態で配置されていて、
複数個の前記マスクは、
固定部と、
前記固定部にそれぞれ取り付けられていて、前記蒸発源との相対位置関係に基づいて前記蒸発物質の遮蔽面積を調整する取付部と、
を有する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記固定部は、板部材であり、
前記取付部は、複数個の移動部材であり、前記固定部に移動可能に取り付けられていて、移動量を調整することにより前記遮蔽面積を調整する、
ことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記固定部は、板部材であり、
前記取付部は、少なくとも1枚の回転部材であり、前記固定部に回転可能に取り付けられていて、回転量を調整することにより前記遮蔽面積を調整する、
ことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記固定部は、辺部に複数個の凹部が設けられている板部材であり、
前記取付部は、複数個の球部材であり、複数個の前記凹部に着脱可能に取り付けられていて、直径を調整することにより前記遮蔽面積を調整する、
ことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記固定部は、磁性体、または、前記磁性体に磁力により着脱可能に着く磁石のいずれか一方であり、
複数個の前記取付部は、前記磁性体または前記磁石のいずれか他方である、
ことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記公転パレットには、複数個の前記自転ホルダと複数個の前記マスクとが一対一の状態で配置されていて、
複数個の前記マスクの形状は、同一であり、
複数個の前記マスクは、前記蒸発源との相対位置関係に基づいて前記マスクと前記成膜対象面との間の距離を調整して前記蒸発物質の遮蔽面積を調整する距離調整機構を、有する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記距離調整機構は、固定部と、前記固定部に前記自転軸方向と平行な方向に移動可能に取り付けられていて、移動調整することにより前記マスクと前記成膜対象面との間の距離を調整する可動部と、を有する、
ことを特徴とする請求項9に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記距離調整機構は、固定部と、前記固定部に前記自転軸方向に対して交差する方向に移動可能に取り付けられていて、移動調整することにより前記マスクと前記成膜対象面との間の距離を調整する可動部と、を有する、
ことを特徴とする請求項9に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記自転ホルダは、第1ホルダ部と、前記第1ホルダ部に着脱可能に取り付けられることにより前記成膜対象物を位置出しして保持する第2ホルダ部とを、有し、
前記第1ホルダ部は、磁性体、または、前記磁性体に磁力により着脱可能に着く磁石のいずれか一方であり、
前記第2ホルダ部は、前記磁性体または前記磁石のいずれか他方である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記公転パレットには、複数個の前記自転ホルダが配置されていて、
複数個の前記自転ホルダと前記自転駆動部との間には、前記自転駆動部の回転力を複数個の前記自転ホルダに伝達する回転力伝達機構が、設けられている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項14】
前記回転力伝達機構は、Oリングである、
ことを特徴とする請求項13に記載の成膜装置。
【請求項15】
前記回転力伝達機構は、非接触磁力回転体である、
ことを特徴とする請求項13に記載の成膜装置。
【請求項16】
前記公転パレットは、板形状をなし、
前記公転パレットの一板面には、前記自転ホルダおよび前記マスクが配置されていて、
前記公転パレットの前記一板面は、前記公転軸に対して傾斜して、前記蒸発源に向いていて、
前記蒸発源は、前記公転軸に対してずれた位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項17】
複数枚の前記公転パレットは、板形状をなし、前記真空容器内に、前記公転軸上に頂点を有する角錐の側面に沿って配置されていて、
複数枚の前記公転パレットの一板面には、前記自転ホルダおよび前記マスクが配置されていて、
複数枚の前記公転パレットの前記一板面は、前記公転軸に対して傾斜して、前記蒸発源に向いていて、
前記蒸発源は、前記公転軸に対してずれた位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜対象物の成膜対象面に膜を形成する成膜装置としては、たとえば、特許文献1に示すものがある。以下、特許文献1の膜形成装置について説明する。
【0003】
特許文献1の膜形成装置は、成膜室と、成膜室内に配置されているレンズ支持装置および蒸着源と、を含んでいる。レンズ支持装置は、自公転機構(プラネタリ機構)を備え、膜形成対象のレンズをレンズ光軸が蒸着源からの蒸着物質垂直上昇方向に対し傾斜する姿勢で支持し、レンズを公転駆動および自転駆動させる。蒸着源は、蒸着物質をレンズに蒸着させて、レンズ面に膜を形成する。
【0004】
かかる膜形成装置においては、レンズの品質を向上させるために、レンズ面に膜を、膜厚が全面に亘って均一になるように、形成することが重要である。
【0005】
近年、仮想現実(VR(Virtual Reality))機器のヘッドマウントディスプレイに広く使用されるレンズは、曲率の大きいレンズである。このため、曲率の大きいレンズの品質の向上が求められている。曲率の大きいレンズとは、レンズ周縁部でのレンズ面の傾斜角度(レンズ光軸に垂直な面に対する傾斜角度)が大きいレンズのことを言う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-91600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の膜形成装置は、レンズをレンズ光軸が蒸着源からの蒸着物質垂直上昇方向に対し傾斜する姿勢で支持して公転駆動および自転駆動させ、蒸着源からの蒸着物質をレンズに蒸着させるものである。このため、特許文献1の膜形成装置は、レンズ面の中央部分、周辺部分、その中間部分の各位置において、レンズ面と蒸着源との向き合う角度、および、レンズ面と蒸着源との向き合う時間が、レンズの自公転に伴って変化し、蒸着物質をレンズ面に、蒸着物質の膜厚が全面に亘って均一になるように、蒸着させることが難しい。これにより、特許文献1の膜形成装置は、レンズ面において、反射率や透過率などの光学特性のバラツキが発生して、全面に亘って均一な光学特性を得ることが難しい。特に、曲率の大きいレンズの場合は、レンズ面の中央部分の蒸着物質の膜厚が厚く、レンズ面の周辺部分の蒸着物質の膜厚が薄くなる傾向にあり、レンズ面全面に亘って均一な光学特性を得ることがさらに難しい。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、成膜対象物(レンズ)の成膜対象面(レンズ面)全面に亘って均一な光学特性を得ることができる成膜装置を提供することにある。この発明が解決しようとする課題は、特に、曲率の大きいレンズの場合であっても、成膜対象物(レンズ)の成膜対象面(レンズ面)全面に亘って均一な光学特性を得ることができる成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第1の観点の成膜装置は、課題を解決するために、成膜対象物の成膜対象面に膜を形成する成膜装置であって、真空容器と、前記真空容器内に配置されている蒸発源と、前記真空容器内に公転軸周りに回転可能に配置されている少なくとも1枚の公転パレットと、前記公転パレットを前記公転軸周りに回転させる公転駆動部と、前記公転パレットに自転軸周りに回転可能に配置されていて、前記成膜対象物を保持する少なくとも1個の自転ホルダと、前記自転ホルダを前記自転軸周りに回転させる自転駆動部と、前記自転ホルダに保持される前記成膜対象物の前記成膜対象面の一部分を覆って、前記蒸発源から蒸発して前記成膜対象面に蒸着する蒸発物質の一部を遮蔽する少なくとも1個のマスクと、を備える、ことを特徴とする。
【0010】
また、上述の発明においては、前記マスクは、前記自転軸に対して前記蒸発源と反対側に配置されていて、前記成膜対象物の前記成膜対象面のうち、前記自転軸に対して前記蒸発源と反対側の部分を覆って、前記蒸発源から蒸発して前記成膜対象面に蒸着する前記蒸発物質の一部を遮蔽する、ことが望ましい。
【0011】
また、上述の発明においては、前記マスクは、前記自転ホルダに保持される前記成膜対象物を挟んで前記自転ホルダと反対側に配置されていて、前記自転軸方向から見て、前記成膜対象物の前記成膜対象面のうち、前記自転軸に対応する部分から周辺の一部分にかけての範囲を覆って、前記蒸発源から蒸発して前記成膜対象面に蒸着する蒸発物質の一部を遮蔽する、ことが望ましい。
【0012】
また、上述の発明においては、前記公転パレットには、複数個の前記自転ホルダと複数個の前記マスクとが一対一の状態で配置されていて、複数個の前記マスクは、固定部と、前記固定部にそれぞれ取り付けられていて、前記蒸発源との相対位置関係に基づいて前記蒸発物質の遮蔽面積を調整する取付部と、を有する、ことが望ましい。
【0013】
また、上述の発明においては、前記固定部は、板部材であり、前記取付部は、複数個の移動部材であり、前記固定部に移動可能に取り付けられていて、移動量を調整することにより前記遮蔽面積を調整する、ことが望ましい。
【0014】
また、上述の発明においては、前記固定部は、板部材であり、前記取付部は、少なくとも1枚の回転部材であり、前記固定部に回転可能に取り付けられていて、回転量を調整することにより前記遮蔽面積を調整する、ことが望ましい。
【0015】
また、上述の発明においては、前記固定部は、辺部に複数個の凹部が設けられている板部材であり、
前記取付部は、複数個の球部材であり、複数個の前記凹部に着脱可能に取り付けられていて、直径を調整することにより前記遮蔽面積を調整する、ことが望ましい。
【0016】
また、上述の発明においては、前記固定部は、磁性体、または、前記磁性体に磁力により着脱可能に着く磁石のいずれか一方であり、複数個の前記取付部は、前記磁性体または前記磁石のいずれか他方である、ことが望ましい。
【0017】
また、上述の発明においては、前記公転パレットには、複数個の前記自転ホルダと複数個の前記マスクとが一対一の状態で配置されていて、複数個の前記マスクの形状は、同一であり、複数個の前記マスクは、前記蒸発源との相対位置関係に基づいて前記マスクと前記成膜対象面との間の距離を調整して前記蒸発物質の遮蔽面積を調整する距離調整機構を、有する、ことが望ましい。
【0018】
また、上述の発明においては、前記距離調整機構は、固定部と、前記固定部に前記自転軸方向と平行な方向に移動可能に取り付けられていて、移動調整することにより前記マスクと前記成膜対象面との間の距離を調整する可動部と、を有する、ことが望ましい。
【0019】
また、上述の発明においては、前記距離調整機構は、固定部と、前記固定部に前記自転軸方向に対して交差する方向に移動可能に取り付けられていて、移動調整することにより前記マスクと前記成膜対象面との間の距離を調整する可動部と、を有する、ことが望ましい。
【0020】
また、上述の発明においては、前記自転ホルダは、第1ホルダ部と、前記第1ホルダ部に着脱可能に取り付けられることにより前記成膜対象物を位置出しして保持する第2ホルダ部とを、有し、前記第1ホルダ部は、磁性体、または、前記磁性体に磁力により着脱可能に着く磁石のいずれか一方であり、
前記第2ホルダ部は、前記磁性体または前記磁石のいずれか他方である、ことが望ましい。
【0021】
また、上述の発明においては、前記公転パレットには、複数個の前記自転ホルダが配置されていて、複数個の前記自転ホルダと前記自転駆動部との間には、前記自転駆動部の回転力を複数個の前記自転ホルダに伝達する回転力伝達機構が、設けられている、ことが望ましい。
【0022】
また、上述の発明においては、前記回転力伝達機構は、Oリングである、ことが望ましい。
【0023】
また、上述の発明においては、前記回転力伝達機構は、非接触磁力回転体である、ことが望ましい。
【0024】
また、上述の発明においては、前記公転パレットは、板形状をなし、前記公転パレットの一板面には、前記自転ホルダおよび前記マスクが配置されていて、前記公転パレットの前記一板面は、前記公転軸に対して傾斜して、前記蒸発源に向いていて、前記蒸発源は、前記公転軸に対してずれた位置に配置されている、ことが望ましい。
【0025】
また、上述の発明においては、複数枚の前記公転パレットは、板形状をなし、前記真空容器内に、前記公転軸上に頂点を有する角錐の側面に沿って配置されていて、複数枚の前記公転パレットの一板面には、前記自転ホルダおよび前記マスクが配置されていて、複数枚の前記公転パレットの前記一板面は、前記公転軸に対して傾斜して、前記蒸発源に向いていて、前記蒸発源は、前記公転軸に対してずれた位置に配置されている、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
この発明の成膜装置は、成膜対象物の成膜対象面全面に亘って均一な光学特性を得ることができる。また、この発明の成膜装置は、特に、曲率の大きいレンズの場合であっても、成膜対象物の成膜対象面全面に亘って均一な光学特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、この発明にかかる成膜装置の実施形態1を示す縦断面図である。
図2図2は、成膜装置の要部を示す一部拡大縦断面図(図1におけるII部の一部拡大縦断面図)である。
図3図3は、成膜装置の一部(8枚の公転パレット)を示す底面図(図1におけるIII-III線矢視図)である。
図4図4は、1枚の公転パレットに配置されている6個の成膜対象物(レンズ)および6個のマスクを示す正面図(図1におけるIV-IV線矢視図)である。
図5図5は、1枚の公転パレットに配置されている6個のマスクの取付部の調整状態を示す説明図である。
図6図6は、6個のマスクの固定部と取付部を示す説明図(図5(A)におけるVI矢視図)である。
図7図7は、自転ホルダと成膜対象物(レンズ)の分解状態を示す縦断面図である。
図8図8は、自転ホルダと成膜対象物(レンズ)を組み付けた状態を示す縦断面図である。
図9図9は、成膜対象物(レンズ)の成膜対象面(レンズ面)の反射率を実際に測定した13個所(P1~P13)を示す説明図である。
図10図10は、図9の13個所(P1~P13)において実際に測定した反射率を示す説明図である。縦軸は、反射率を示す。横軸は、光の波長を示す。
図11図11は、この発明にかかる成膜装置の実施形態2を示す成膜対象物(レンズ)およびマスクの説明図である。
図12図12は、成膜対象物(レンズ)およびマスクを示す側面図(図11におけるXII矢視図)である。
図13図13は、この発明にかかる成膜装置の実施形態3を示すマスクの取付部の調整状態を示す説明図である。
図14図14は、マスクの固定部と取付部を示す説明図(図13(B)におけるXIV矢視図)である。
図15図15は、マスクの固定部と取付部の分解状態を示す説明図である。
図16図16は、マスクの固定部を示す斜視図である。
図17図17は、この発明にかかる成膜装置の実施形態4を示す一部縦断面図である。
図18図18は、成膜装置の要部を示す一部拡大縦断面図(図17におけるXVIII部の一部拡大縦断面図)である。
図19図19は、成膜対象物(レンズ)およびマスクを示す説明図(図18におけるXIX矢視図)である。
図20図20は、成膜対象物(レンズ)およびマスクを示す側面図(図19におけるXX矢視図)である。
図21図21は、この発明にかかる成膜装置の実施形態5を示す一部縦断面図である。
図22図22は、成膜対象物(レンズ)およびマスクを示す説明図(図21におけるXXII矢視図)である。
図23図23は、Oリングの回転力伝達機構を示す一部縦断面図である。
図24図24は、磁力による非接触タイプの回転力伝達機構を示す一部縦断面図である。
図25図25は、磁力による非接触タイプの回転力伝達機構を示す説明図(図24におけるXXV矢視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明にかかる成膜装置の実施形態(実施例)の5例を図面に基づいて説明する。なお、図面は、この発明にかかる成膜装置を示す概略図であるから、この発明にかかる成膜装置の主要部品を図示し、主要部品以外の部品の図示を省略する。また、ハッチングの一部が省略されている。図3においては、成膜対象物(レンズ)、自転ホルダおよびマスクを省略している。
【0029】
(実施形態1の構成の説明)
図1から図10は、この発明にかかる成膜装置の実施形態1を示す。以下、この実施形態1にかかる成膜装置の構成について説明する。
【0030】
(成膜装置1の説明)
この実施形態1にかかる成膜装置1は、図1に示すように、真空容器(チャンバー)2と、蒸発源3および電子銃30と、8枚の公転パレット4と、公転駆動部40と、1枚の公転パレット4にそれぞれ6個ずつ配置されている自転ホルダ5と、自転駆動部50と、1枚の公転パレット4にそれぞれ6個ずつ自転ホルダ5と一対一の状態で配置されているマスク6と、を備える。成膜装置1は、成膜対象物10の成膜対象面11に膜(後記の蒸発物質31)を形成する。
【0031】
成膜対象物10は、図1図2図4から図9に示すように、円形の凸レンズであって、鍔形状の周縁部(レンズ周縁部)12を有する。成膜対象物10は、この例では、樹脂部材から構成されている。なお、成膜対象物10は、樹脂部材以外の部材、たとえば、ガラスから構成されていても良い。また、成膜対象物10は、この例では、仮想現実(VR(Virtual Reality))機器のヘッドマウントディスプレイに広く使用されるレンズであって、曲率の大きい凸レンズである。また、成膜対象面11は、この例では、曲率の大きい凸曲面のレンズ面である。成膜対象面11の直径は、この例では、50mmである。成膜対象面11の曲率は、この例では、R25である。成膜対象面11の直径によらずこの発明の効果が得られるが、直径が30mm以上で特に有効である。
【0032】
なお、成膜対象面11は、前記の曲率の大きい凸曲面以外の面、凹曲面、球面、非球面、平面、もしくは、これらの面を組み合わせた面などであっても良い。また、成膜対象物10の成膜対象面11に対して反対側の面は、接眼側の面13であって、周縁部12側の面であり、この例では、凹曲面をなしている。
【0033】
(真空容器2の説明)
真空容器2は、図1に示すように、天井と、床と、壁(この例では、4枚の壁)とにより、部屋20を形成する。真空容器2の部屋20は、真空状態にある。
【0034】
(蒸発源3および電子銃30の説明)
蒸発源3および電子銃30は、図1および図3に示すように、真空容器2内の床に配置されている。蒸発源3は、後記の公転軸A1に対してずれた位置に配置されている。蒸発源3には、蒸着物質が収容されている。電子銃30は、電子ビーム32を蒸発源3の蒸着物質に照射する。蒸発物質は、電子銃30からの電子ビーム32により、蒸発源3から蒸発物質31として蒸発する。
【0035】
(公転パレット4の説明)
8枚の公転パレット4は、図1から図4に示すように、真空容器2内に公転軸A1周りに回転可能に配置されている。8枚の公転パレット4は、それぞれ、板形状をなし、真空容器2内に、公転軸A1上に頂点を有する角錐の側面に沿って配置されている。8枚の公転パレット4の一板面には、自転ホルダ5およびマスク6が配置されている。8枚の公転パレット4の一板面は、公転軸A1に対して傾斜して、蒸発源3に向いている。
【0036】
公転パレット4の板面の形状は、台形形状(図3を参照)、丸型形状、または扇形の中心角部分が切除された形状(図4を参照)をなす。なお、公転パレット4の板面の形状は、前記の形状以外の形状であっても良い。
【0037】
(公転駆動部40の説明)
公転駆動部40は、図1に示すように、真空容器2の天井に配置されている。公転駆動部40は、公転軸A1周りに回転する公転軸部41と、公転軸部41に固定されている公転回転板42と、を有する。公転回転板42には、8枚の公転パレット4の一端部(上端部)が、それぞれ、固定されている。公転回転板42の板面と8枚の公転パレット4の板面とは、それぞれ、任意の角度で傾斜している。このため、8枚の公転パレット4は、それぞれ、公転軸A1に対して任意の角度で傾斜している。公転駆動部40は、8枚の公転パレット4を公転軸A1周りに回転させる。
【0038】
(自転ホルダ5の説明)
自転ホルダ5は、図1図2図6から図8に示すように、公転パレット4に公転軸A1に対して交差する自転軸A2周りに回転可能に配置されている。自転軸A2は、公転パレット4の板面に対して直角(垂直)である。ここで、自転軸A2を蒸発源3からの蒸発物質31の飛散方向に対して傾斜させることで、成膜対象物10の成膜対象面11に堆積する膜(蒸発物質31)の厚さや品質が変化するため、自転軸A2の蒸発物質31の飛散方向に対する傾斜角度を最適化する必要がある。成膜対象物10の形状や搭載数、要求仕様に合わせて自転軸A2の蒸発物質31の飛散方向に対する傾斜角度を調整すれば良く、自転軸A2を公転軸A1に交差させなくても良い。自転ホルダ5は、この例では、1枚の公転パレット4に対して、上下三段に6個配置されている。すなわち、上段には1個、中段には左側1個右側1個、下段には左外側1個中央(中間)1個右外側1個である。自転ホルダ5は、第1ホルダ部51と、第2ホルダ部52と、を有する。
【0039】
第1ホルダ部51は、直径が成膜対象物10の直径とほぼ同一の円板形状をなす。第1ホルダ部51の一面(下面)の中心には、自転軸部53の一端(上端)が一体に固定されている。第2ホルダ部52は、外径が成膜対象物10の直径とほぼ同一であり、かつ、内径が成膜対象面11の直径とほぼ同一の円環形状をなす。第1ホルダ部51の直径と第2ホルダ部52の外径と成膜対象物10の周縁部12の直径とは、一致もしくはほぼ一致する。また、第2ホルダ部52の内径と成膜対象物10の成膜対象面11の直径とは、一致もしくはほぼ一致する。
【0040】
自転ホルダ5は、第1ホルダ部51と第2ホルダ部52とにより、成膜対象物10を着脱可能に保持する。すなわち、第1ホルダ部51の他面(上面)に成膜対象物10の接眼側の面13を載置させる。成膜対象物10の成膜対象面11に第2ホルダ部52を嵌め込み、成膜対象物10の周縁部12を第1ホルダ部51と第2ホルダ部52との間に挟み込む。第1ホルダ部51に第2ホルダ部52を着脱可能に取り付けることにより、成膜対象物10を自転ホルダ5に着脱可能に保持することができる。成膜対象物10を自転ホルダ5に着脱可能に保持したとき、自転ホルダ5の自転軸A2は、成膜対象物10の成膜対象面11の中心P1(図9を参照)を通る。なお、第2ホルダ部52を、円環形状と円板形状の2つの部材で構成し、2つの部材の間に成膜対象物10の周縁部12を挟み込んで固定しても良い。円環形状は、外径が成膜対象物10の直径とほぼ同一であり、かつ、内径が成膜対象面11の直径とほぼ同一であり、円板形状は直径が成膜対象物10の直径とほぼ同一である。第1ホルダ部51に第2ホルダ部52の円板形状を取付固定する際、第1ホルダ部51に対する第2ホルダ部52の位置出しをすることで、自転ホルダ5に対する成膜対象面11の位置出しすることができる。
【0041】
この例において、第1ホルダ部51は、磁性体、または、磁性体に磁力により着脱可能に着く磁石のいずれか一方から構成されている。また、第2ホルダ部52は、磁性体または磁石のいずれか他方から構成されている。この結果、自転ホルダ5は、磁力により、成膜対象物10を着脱可能に保持することができる。なお、自転ホルダ5は、磁力によらずに、機械的に、成膜対象物10を着脱可能に保持するものであっても良い。
【0042】
(自転駆動部50の説明)
自転駆動部50は、図1に示すように、8枚の公転パレット4の一端部(上端部)に、それぞれ、固定されている。自転駆動部50と6個の自転ホルダ5の自転軸部53との間には、後記の回転力伝達機構8、80、81が設けられている。回転力伝達機構8、80、81は、自転駆動部50の回転力を6個の自転ホルダ5の自転軸部53にそれぞれ伝達する。これにより、1枚の公転パレット4に搭載される全ての自転ホルダ5が同時に自転軸A2周りに同方向に回転する。
【0043】
(マスク6の説明)
マスク6は、図1図2図4から図6に示すように、8枚の公転パレット4に、それぞれ、6個の自転ホルダ5と一対一の状態で配置されている。すなわち、マスク6は、この例では、1枚の公転パレット4に対して、上段には1個、中段には左側1個右側1個、下段には左外側1個中央(中間)1個右外側1個、合計で6個配置されている。マスク6は、蒸発源3から蒸発して成膜対象面11に蒸着する蒸発物質31の一部を遮蔽する。
【0044】
マスク6は、自転軸A2に対して蒸発源3と反対側(蒸発源3に対して上側)に配置されていて、成膜対象物10の成膜対象面11のうち、自転軸A2に対して蒸発源3と反対側の部分を覆って、蒸発源3から蒸発して成膜対象面11に蒸着する蒸発物質31の一部を遮蔽する。
【0045】
マスク6は、成膜対象物10を挟んで自転ホルダ5と反対側に配置されている。マスク6は、自転軸A2方向から見て、自転ホルダ5に保持されている成膜対象物10の成膜対象面11のうち、自転軸A2に対応する部分(中心部分、中央部分)から周辺(周縁部12)の一部分にかけての範囲を覆い隠す。これにより、マスク6は、蒸発源3から蒸発して成膜対象面11に蒸着する蒸発物質31の一部を遮蔽する。
【0046】
マスク6は、固定部60と、取付部としての9個の移動部材61と、を有する。固定部60は、この例では、幅が成膜対象面11の直径とほぼ同一である板部材から構成されている。固定部60は、一面(下面)から一体に突出した固定柱62により、公転パレット4に固定されている。取付部は、9個の移動部材61から構成されていて、9個の移動部材61は、幅が成膜対象面11の直径の9分の1であり、かつ、長さが成膜対象面11の直径よりも短い直方体形状をなす。
【0047】
固定部60の他面(上面)には、9本のガイド凹部63が、自転軸A2に対して直交する方向に設けられている。一方、9個の移動部材61の一面(下面)には、ガイド凸部64が、それぞれ、自転軸A2に対して直交する方向に設けられている。9個の移動部材61のガイド凸部64は、固定部60の9本のガイド凹部63に、それぞれ、自転軸A2に対して直交する方向(図2および図5中の実線矢印を参照)に、移動可能に取り付けられている。マスク6は、9個の移動部材61の固定部60に対する移動量を調整することにより蒸発物質31の遮蔽面積を調整することができる。
【0048】
1枚の公転パレット4において、6個のマスク6は、それぞれ、蒸発源3との相対位置関係に基づいて、9個の移動部材61の固定部60に対する移動量を調整することにより蒸発物質31の遮蔽面積を調整することができる。すなわち、上段の1個のマスク6は、図5(A)に示すように、9個の移動部材61を固定部60に対して移動させる。中段の左右両側2個のマスク6は、図5(B)に示すように、9個の移動部材61を固定部60に対して移動させる。下段の左右両外側2個のマスク6は、図5(C)に示すように、9個の移動部材61を固定部60に対して移動させる。下段の中央の1個のマスク6は、図5(D)に示すように、9個の移動部材61を固定部60に対して移動させる。
【0049】
マスク6の移動量、すなわち、9個の移動部材61の固定部60に対する移動量は、成膜対象面11において実際に測定して得られた膜厚および屈折率を含む光学特性に基づいて、設定されていて、データ化されている。また、成膜対象面11の膜厚および屈折率を含む光学特性は、8枚の公転パレット4の1回転を基準(トータル)として、実測されている。これは、公転パレット4の回転位置の違いにより、マスク6の蒸発物質31の遮蔽面積が異なるのを矯正するためである。すなわち、図1に示すように、蒸発源3が8枚の公転パレット4の公転軸A1に対してずれた位置に配置されているため、蒸発源3の真上に位置する公転パレット4(例えば、図1中の右側の公転パレット4)におけるマスク6の蒸発物質31の遮蔽面積と、蒸発源3の対角に位置する公転パレット4(例えば、図1中の左側の公転パレット4)におけるマスク6の蒸発物質31の遮蔽面積とは、異なっていて、この異なる遮蔽面積を矯正するものである。通常、蒸発源を備える成膜装置の場合、公転パレット内全面での分布を調整する目的で、蒸発源と成膜対象物との間に膜厚補正板と呼ばれる膜厚調整用の遮蔽部材を配置することが一般的である。複数の成膜対象物に同時に成膜する場合、堆積膜が均一化するように膜厚補正板を設計するが、成膜対象物の数が増えるほど設計は難しくなる。この実施形態において、マスク6の移動部材61の形状を成膜対象物10毎に最適化することで、膜厚補正板の機能を兼ね備え、膜厚補正板を省略することができる。
【0050】
この例において、固定部60は、磁性体、または、磁性体に磁力により着脱可能に着く磁石のいずれか一方から構成されている。また、9個の移動部材61は、磁性体または磁石のいずれか他方から構成されている。この結果、マスク6は、磁力により、9個の移動部材61を固定部60に対して移動させて任意の位置に停止させること、すなわち、9個の移動部材61の固定部60に対する移動量を調整することができる。なお、マスク6は、磁力によらずに、機械的に、9個の移動部材61を固定部60に対して移動させて任意の位置に停止させて、9個の移動部材61の固定部60に対する移動量を調整するものであっても良い。
【0051】
(実施形態1の作用の説明)
この実施形態1にかかる成膜装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0052】
8枚の公転パレット4のそれぞれの6個の自転ホルダ5に成膜対象物10を着脱可能に保持させる。1枚の公転パレット4における6個のマスク6のそれぞれの9個の移動部材61の固定部60に対する移動量を調整する。この移動量の調整は、成膜対象面11への蒸発物質31の厚さ分布(膜厚分布)が均一となる前記のデータに基づいて調整される。
【0053】
公転駆動部40を駆動させて、8枚の公転パレット4を公転軸A1周りに回転させる。これと同時に、自転駆動部50を駆動させて、8枚の公転パレット4のそれぞれの6個の自転ホルダ5を自転軸A2周りに回転させる。この状態において、電子銃30から電子ビーム32を蒸発源3の蒸着物質に照射させる。すると、蒸発源3の蒸着物質は、電子銃30からの電子ビーム32により、蒸発源3から蒸発物質31として蒸発する。
【0054】
蒸発物質31は、8枚の公転パレット4および6個の自転ホルダ5を介して、公転軸A1周りに回転すると共に、自転軸A2周りに回転する成膜対象物10の成膜対象面11に蒸着する。これにより、成膜対象面11には、膜が形成される。マスク6は、蒸発物質31のみでなく、熱を遮蔽する効果を有する。この発明の機構(マスク6)を用いることで、所望の堆積膜を得るのみでなく、樹脂基板など低温成膜が要求される基板の処理も可能となる。
【0055】
(実施形態1の効果の説明)
この実施形態1にかかる成膜装置1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0056】
この実施形態1にかかる成膜装置1は、真空容器2内に公転パレット4を公転軸A1周りに回転可能に配置し、公転パレット4に自転ホルダ5を自転軸A2周りに回転可能に配置し、公転パレット4に、自転ホルダ5に保持される成膜対象物10の成膜対象面11の一部分を覆うマスク6を、配置したものである。この結果、この実施形態1にかかる成膜装置1は、真空容器2内で自公転する成膜対象物10の成膜対象面11のうち、膜厚が厚く形成される部分(以下、「膜厚部分」と称する)をマスク6で覆って、膜厚部分に蒸着する蒸発物質31を遮蔽することができる。これにより、この実施形態1にかかる成膜装置1は、成膜対象物10の成膜対象面11に膜を全面に亘って均一に形成することができるので、成膜対象物10の成膜対象面11全面に亘って均一な光学特性、この例では、図10に示す反射率を得ることができる。また、この実施形態1にかかる成膜装置1は、特に、曲率が大きい成膜対象物10であっても、成膜対象面11全面に亘って均一な光学特性を得ることができる。ここで、成膜対象面11全面に亘って均一に得ることができる光学特性とは、前記の反射率や透過率、屈折率、膜厚等を言う。
【0057】
図10は、この実施形態1にかかる成膜装置1により、膜を形成した成膜対象物10の成膜対象面11における光学特性としての反射率を示す説明図であって、縦軸は、反射率を示す。横軸は、光の波長を示す。図10中の符号「D」は、設計反射率を示す曲線である。図10中の符号「R1~R13」は、図9に示す13個所P1~P13において実際に測定した反射率を示す曲線である。
【0058】
図10に示すように、13本の曲線R1~R13の隙間が密であるから、成膜対象面11の13個所P1~P13における反射率は、バラツキが無く均一である。また、13本の曲線R1~R13は、設計反射率の曲線Dに近接しているので、設計通りの反射率が得られる。なお、図10に示す13本の曲線R1~R13は、13本の曲線を判別できるように曲線間の隙間を開けて図示されていて、実際に測定した13本の曲線は、曲線間の隙間が密となっている。
【0059】
図9は、この実施形態1にかかる成膜装置1により、膜を形成した成膜対象物10の成膜対象面11における反射率を実際に測定した13箇所P1~P13を示す説明図である。図9(A)は、成膜対象物10の成膜対象面11を示す正面図である。図9(B)は、成膜対象物10の成膜対象面11を示す側面図(図9(A)におけるB矢視図)である。図9(C)は、成膜対象物10の成膜対象面11を示す断面図(図9(A)におけるC-C線断面図)である。
【0060】
図9において、P1は、成膜対象面11の中心(自転軸A2)である。P2、P3、P4、P5は、成膜対象面11の直径30mm(φ30)の円周上の左、下、右、上である。P6、P7、P8、P9、P10、P11、P12、P13は、成膜対象面11の直径40mm(φ40)の円周上の左、左下、下、右下、右、右上、上、左上である。
【0061】
この実施形態1にかかる成膜装置1は、マスク6を自転軸A2に対して蒸発源3と反対側に配置し、このマスク6により、成膜対象物10の成膜対象面11のうち、自転軸A2に対して蒸発源3と反対側の部分を覆うものである。この結果、この実施形態1にかかる成膜装置1は、成膜対象面11の中央部分と外周部分とに堆積する膜(蒸発物質31)の品質(膜厚、膜密度、屈折率等)の均一化を図ることができる。すなわち、成膜対象面11の中央部分に対して外周部分において、自転軸A2に対して蒸発源3と反対側の部分における蒸発源3からの蒸発物質31の入射角は、自転軸A2に対して蒸発源3側の部分における蒸発源3からの蒸発物質31の入射角と比較して、大きい。このため、成膜対象面11の自転軸A2に対して蒸発源3と反対側の部分に堆積する膜(蒸発物質31)の品質が、成膜対象面11の自転軸A2に対して蒸発源3側の部分に堆積する膜(蒸発物質31)の品質に対して劣る。成膜対象面11の自転軸A2に対して蒸発源3と反対側の部分には、膜密度が小さく、屈折率の低い膜が形成される。ここで、成膜対象物10が自転軸A2周りに回転するため、成膜対象面11の外周部分全体の品質が劣る。そこで、この実施形態1にかかる成膜装置1は、マスク6を自転軸A2に対して蒸発源3と反対側に配置することにより、このマスク6で成膜対象面11の自転軸A2に対して蒸発源3と反対側の部分を覆って、蒸発源3から蒸発して成膜対象面11に蒸着する蒸発物質31の一部を遮蔽する。これにより、マスク6は、成膜対象面11の外周部分に堆積する膜(蒸発物質31)の品質の劣化を防止して、成膜対象面11の中央部分と外周部分とに堆積する膜(蒸発物質31)の品質の均一化を図ることができる。
【0062】
この実施形態1にかかる成膜装置1は、マスク6を成膜対象物10を挟んで自転ホルダ5と反対側に配置し、このマスク6により、自転軸A2方向から見て、成膜対象物10の成膜対象面11のうち、自転軸A2に対応する部分(中心部分)から周辺の一部分にかけての範囲を覆うものである。この結果、この実施形態1にかかる成膜装置1は、成膜対象面11の中心部分のマスク6による遮蔽時間を、成膜対象面11の周辺部分のマスク6による遮蔽時間よりも長く調整することができる。これにより、この実施形態1にかかる成膜装置1は、成膜対象面11の中心部分の膜厚が成膜対象面11の周辺部分の膜厚よりも厚くなる傾向にある凸曲面の成膜対象面11に膜を全面に亘って均一に形成することができるので、前記の通り、成膜対象物10の成膜対象面11全面に亘って均一な膜厚または屈折率を得ることができる。また、この実施形態1にかかる成膜装置1は、特に、曲率が大きい成膜対象物10であっても、成膜対象面11全面に亘って均一な膜厚または屈折率を得ることができる。
【0063】
この実施形態1にかかる成膜装置1は、1枚の公転パレット4に、自転ホルダ5とマスク6とを一対一の状態で複数個配置し、複数個のマスク6が、それぞれ、固定部60と取付部としての移動部材61とを有し、蒸発源3との相対位置関係に基づいて蒸発物質31の遮蔽面積を調整する、ものである。この結果、この実施形態1にかかる成膜装置1は、1枚の公転パレット4において、複数個の成膜対象物10の成膜対象面11に膜を同時に全面に亘って均一に形成することができる。なお、実施形態1では説明のため6個を図示するが、量産装置では1枚の公転パレット4に数十から数百個の自転ホルダ5が搭載される。
【0064】
その上、この実施形態1にかかる成膜装置1は、固定部60を、磁性体、または、磁性体に磁力により着脱可能に着く磁石のいずれか一方で構成し、複数個の移動部材61を、磁性体または磁石のいずれか他方で構成したものであるから、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0065】
さらに、この実施形態1にかかる成膜装置1は、自転ホルダ5の第1ホルダ部51と第2ホルダ部52により、成膜対象物10を位置出しして保持することができるので、成膜対象面11に膜を高精度に均一に形成することができる。また、この実施形態1にかかる成膜装置1は、第1ホルダ部51を、磁性体、または、磁性体に磁力により着脱可能に着く磁石のいずれか一方で構成し、第2ホルダ部52を、磁性体または磁石のいずれか他方で構成したものであるから、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0066】
しかも、この実施形態1にかかる成膜装置1は、真空容器2内に複数枚の公転パレット4を配置したものであるから、合計で、大量の成膜対象物10の成膜対象面11に膜を同時に全面に亘って均一に形成することができるので、量産性が向上される。
【0067】
さらに、この実施形態1にかかる成膜装置1は、固定部60と複数個の移動部材61とを、ガイド凸部64と複数本のガイド凹部63とにより、移動可能に取り付けたものであるから、固定部60に対して複数個の移動部材61を円滑に移動させることができる。
【0068】
(実施形態2の構成、作用、効果の説明)
図11および図12は、この発明にかかる成膜装置の実施形態2を示す。以下、この実施形態2にかかる成膜装置の構成、作用、効果について説明する。図中、図1から図10中の符号と同一の符号は、同一の物を示す。
【0069】
前記の実施形態1にかかる成膜装置1のマスク6は、固定部60と取付部としての9個の移動部材61とを有するものである。これに対して、この実施形態2にかかる成膜装置のマスク600は、固定部601と取付部としての2枚の回転部材602とを有するものである。
【0070】
固定部601は、この例では、適宜の大きさの板部材から構成されている。固定部601は、固定柱により、公転パレットに固定されている。2枚の回転部材602は、1辺の長さが成膜対象面11の半径よりも長い正方形の板形状の部材から構成されている。2枚の回転部材602の一つの角部には、円形の回転部603が、それぞれ、設けられている。
【0071】
固定部601の一面(上面)には、軸部604の一端(下端)が固定されている。軸部604は、自転軸A2と一致する。軸部604には、2枚の回転部材602の回転部603が、それぞれ、回転可能に取り付けられている。軸部604の他端(上端)には、止め部605が固定されている。これにより、2枚の回転部材602は、固定部601に自転軸A2周りに回転可能に取り付けられる。2枚の回転部材602の回転量を調整することにより、蒸発物質31の遮蔽面積を調整することができる。
【0072】
この例において、固定部601、2枚の回転部材602のうち、少なくとも一つは、磁性体、または、磁性体に磁力により着脱可能に着く磁石のいずれか一方から構成されている。また、固定部601、2枚の回転部材602のうち、残りは、磁性体または磁石のいずれか他方から構成されている。
【0073】
なお、この実施形態2のマスク600は、前記の実施形態1のマスク6と同様に、磁力によらずに、機械的に、2枚の回転部材602を固定部601に対して移動させて任意の位置に停止させて、2枚の回転部材602の固定部601に対する移動量を調整するものであっても良い。
【0074】
この実施形態2にかかる成膜装置のマスク600は、以上の如き構成からなるので、前記の実施形態1にかかる成膜装置1のマスク6と同様の作用、効果を達成することができる。なお、この実施形態2にかかる成膜装置のマスク600は、2枚の回転部材602を使用するものであるが、回転部材は、1枚、3枚以上であっても良い。
【0075】
(実施形態3の構成、作用、効果の説明)
図13から図16は、この発明にかかる成膜装置の実施形態3を示す。以下、この実施形態3にかかる成膜装置の構成、作用、効果について説明する。図中、図1から図12中の符号と同一の符号は、同一の物を示す。
【0076】
前記の実施形態1にかかる成膜装置1のマスク6は、固定部60と取付部としての9個の移動部材61とを有するものである。また、前記の実施形態2にかかる成膜装置のマスク600は、固定部601と取付部としての2枚の回転部材602とを有するものである。これに対して、この実施形態3にかかる成膜装置のマスク610は、固定部611と取付部としての複数個、この例では、9個の球部材612、613とを有するものである。
【0077】
固定部611は、この例では、隣り合う2辺614の長さが成膜対象面11の半径よりも長い五角形の板部材から構成されている。固定部611は、固定柱により、公転パレットに固定されている。固定部611の隣り合う2辺614の縁(辺部)には、9個の円形の凹部615が設けられている。
【0078】
球部材612、613は、直径が大きい球部材612と直径が小さい球部材613とを有する。9個の球部材612、613は、固定部611の9個の凹部615に着脱可能に取り付けられていて、図13に示すように、直径を調整することにより、9個の球部材612、613が固定部611の隣り合う2辺614から突出する量を調整することができ、蒸発物質31の遮蔽面積を調整することができる。また、球部材612、613の直径の違いにより、マスク610の厚み方向の高さが異なり、成膜対象面11に対して蒸発物質31が影となる面積が異なる。例えば、蒸発源3の真上に位置する公転パレット4(例えば、図1中の右側の公転パレット4)において、球部材612、613は蒸発物質31を遮蔽しないが、蒸発源3の対角に位置する公転パレット4(例えば、図1中の左側の公転パレット4)において、球部材612、613が影となり、蒸発物質31が遮蔽される。球部材の直径が大きいほど遮蔽面積が大きくなる。なお、球部材612、613の直径は、前記の大小の2種類以外に、3種類以上であっても良い。
【0079】
この例において、固定部611は、磁性体、または、磁性体に磁力により着脱可能に着く磁石のいずれか一方から構成されている。また、9個の球部材612、613は、磁性体または磁石のいずれか他方から構成されている。
【0080】
なお、この実施形態3のマスク610は、前記の実施形態1、2のマスク6、600と同様に、磁力によらずに、機械的に、9個の凹部615に9個の球部材612、613を着脱可能に取り付けて、9個の球部材612、613の直径を調整して、9個の球部材612、613の固定部611の隣り合う2辺614からの突出量または高さを調整するものであっても良い。
【0081】
この実施形態3にかかる成膜装置のマスク610は、以上の如き構成からなるので、前記の実施形態1、2にかかる成膜装置1のマスク6、600と同様の作用、効果を達成することができる。
【0082】
(実施形態4の構成、作用、効果の説明)
図17から図20は、この発明にかかる成膜装置の実施形態4を示す。以下、この実施形態4にかかる成膜装置の構成、作用、効果について説明する。図中、図1から図16中の符号と同一の符号は、同一の物を示す。
【0083】
前記の実施形態1、2、3にかかる成膜装置1のマスク6、600、610は、固定部60、601、611と、固定部60、601、611にそれぞれ取り付けられていて、蒸発源3との相対位置関係に基づいて蒸発物質31の遮蔽面積を調整する取付部としての移動部材61、回転部材602、球部材612、613と、を有する、ものである。これに対して、この実施形態4にかかる成膜装置の複数個のマスク6Aの形状は、同一であり、複数個のマスク6Aは、蒸発源3との相対位置関係に基づいてマスク6Aと成膜対象面11との間の距離を調整して蒸発物質31の遮蔽面積を調整する距離調整機構7を、有するものである。
【0084】
マスク6Aは、前記の実施形態3のマスク610の固定部611とほぼ同様に、隣り合う2辺60Aの長さが成膜対象面11の半径よりも長い五角形の板部材から構成されている。2辺60Aには、9個の凸部61Aが設けられている。9個の凸部61Aは、大小2種類の半円形形状をなしていて、大小交互に設けられている。なお、凸部61Aは、半円形形状に限定されず、また、設けなくても良い。
【0085】
距離調整機構7は、固定部70と、可動部71と、を有する。固定部70は、この例では、公転パレット4である。固定部70には、長孔72が自転軸A2に対して交差する方向(直交する方向、垂直方向)に設けられている。なお、固定部70は、この例では、公転パレット4であるから、複数個のマスク6Aに対して1個である。一方、長孔72および可動部71は、複数個のマスク6Aと一対一の状態で、複数個設けられている。
【0086】
可動部71は、可動部材73と、止め部材74と、を有する。可動部材73は、棒形状をなしている。可動部材73の一端部(下端部)は、長孔72中に、自転軸A2に対して交差する方向、および、自転軸A2と平行な方向に、それぞれ、移動可能に挿入されている。可動部材73の他端部(上端部)は、マスク6Aの一面(下面)に固定されている。
【0087】
止め部材74は、この例では、ナットから構成されている。可動部材73の一端部には、ネジが設けられている。止め部材74は、可動部材73の一端部のネジに上下2個ネジ止めされている。2個の止め部材74を固定部70(公転パレット4)の両側から挟み込むことにより、可動部71を固定部70に固定することができる。また、止め部材74を固定部70から緩めることにより、可動部71を固定部70に対して、自転軸A2の交差方向、および、自転軸A2の平行方向に、それぞれ、無段階に移動させることができる。
【0088】
この実施形態4にかかる成膜装置は、可動部71を固定部70に対して、自転軸A2の交差方向、および、自転軸A2の平行方向に、それぞれ、移動させることにより、マスク6Aと成膜対象面11との間の距離を調整することができ、蒸発物質31の遮蔽面積を調整することができる。すなわち、マスク6Aと成膜対象面11との間の距離を短く調整することにより、蒸発物質31の遮蔽面積を広く調整することができ、マスク6Aと成膜対象面11との間の距離を長く調整することにより、蒸発物質31の遮蔽面積を狭く調整することができる。この結果、この実施形態4にかかる成膜装置は、前記の実施形態1、2、3にかかる成膜装置1の効果と同様の効果を達成することができる。
【0089】
この実施形態4にかかる成膜装置のマスク6Aと成膜対象面11との間の距離は、前記の実施形態1、2、3にかかる成膜装置1のマスク6、600、610の移動量と同様に、成膜対象面11において実際に測定して得られた膜厚および屈折率を含む光学特性に基づいて、設定されている。
【0090】
なお、この実施形態4にかかる成膜装置のマスク6Aにおいては、1個のマスク6Aに対して、2本の長孔72と2個の可動部71が設けられている。しかしながら、この発明においては、1個のマスク6Aに対して、1本の長孔72と1個の可動部71が、または、3本以上の長孔72と3個以上の可動部71が、設けられているものであっても良い。
【0091】
(実施形態5の構成、作用、効果の説明)
図21および図22は、この発明にかかる成膜装置の実施形態5を示す。以下、この実施形態5にかかる成膜装置の構成、作用、効果について説明する。図中、図1から図20中の符号と同一の符号は、同一の物を示す。
【0092】
前記の実施形態4にかかる成膜装置の距離調整機構7は、可動部71を固定部70に対して、自転軸A2の交差方向、および、自転軸A2の平行方向に、それぞれ、無段階に移動させるものである。これに対して、この実施形態5にかかる成膜装置の距離調整機構7Aは、マスク6Aを自転軸A2の交差方向に有段階に移動させるものである。なお、この実施形態5にかかる成膜装置の距離調整機構7Aは、前記の実施形態4にかかる成膜装置の距離調整機構7と同様に、可動部71Aを固定部70Aに対して、自転軸A2の平行方向に無段階に移動させる。
【0093】
マスク6Aの左右両側には、それぞれ、3個の孔62Aが、自転軸A2の交差方向に並ばれて設けられている。
【0094】
距離調整機構7Aは、固定部70A(公転パレット4)と、可動部71Aと、を有する。固定部70Aには、孔72Aが設けられている。
【0095】
可動部71Aは、可動部材73Aと、第1止め部材74Aと、載置部75Aと、第2止め部材76Aと、を有する。可動部材73Aの一端部(下端部)は、孔72A中に、自転軸A2と平行な方向に移動可能に挿入されている。可動部材73Aの他端部(上端部)には、載置部75Aが固定されている。可動部材73Aの他端部には、マスク6Aの左右の孔62Aが嵌め込まれている。
【0096】
第1止め部材74Aおよび第2止め部材76Aは、この例では、ナットから構成されている。可動部材73Aの一端部および他端部には、ネジが設けられている。第1止め部材74Aは、可動部材73Aの一端部のネジに上下2個ネジ止めされている。2個の第1止め部材74Aを固定部70Aの両側から挟み込むことにより、可動部71Aを固定部70Aに固定することができる。また、第1止め部材74Aを固定部70Aから緩めることにより、可動部71Aを固定部70Aに対して、自転軸A2の平行方向に無段階に移動させることができる。
【0097】
第2止め部材76Aは、可動部材73Aの他端部のネジにネジ止めされている。第2止め部材76Aをネジ込むことにより、マスク6Aを、載置部75Aと第2止め部材76Aの間で挟み込んで固定することができる。また、第2止め部材76Aを可動部材73Aの他端部から外して、可動部材73Aの他端部に嵌め込むマスク6Aの孔62Aの位置を変えて、第2止め部材76Aを可動部材73Aの他端部にネジ込むことにより、マスク6Aを自転軸A2の交差方向に有段階に移動させることができる。
【0098】
この実施形態5にかかる成膜装置は、以上の如き構成からなるものであるから、前記の実施形態4にかかる成膜装置の作用、効果と同様の作用、効果を達成することができる。
【0099】
(回転力伝達機構8の説明)
図23から図25は、この発明にかかる成膜装置の回転力伝達機構8を示す。以下、回転力伝達機構8について説明する。図中、図1から図22中の符号と同一の符号は、同一の物を示す。
【0100】
回転力伝達機構8は、複数個の自転ホルダ5と自転駆動部50との間に設けられていて、自転駆動部50の回転力を複数個の自転ホルダ5に伝達するものである。
【0101】
図23に示す回転力伝達機構8は、複数個の自転ホルダ5の自転軸部53の間に掛け回されているOリング80である。なお、図23において、公転パレット4には、追加公転パレット43が追加配置されている。また、図23において、1個の自転ホルダ5の自転軸部53には、自転駆動部50が連結されている。なお、1個の自転ホルダ5の自転軸部53と自転駆動部50との間にOリング80を掛け回しても良い。
【0102】
図24および図25に示す回転力伝達機構8は、複数個の自転ホルダ5の自転軸部53に設けられている非接触磁力回転体81である。なお、図24および図25において、公転パレット4には、追加自転軸部54が追加自転軸A3周りに回転可能に追加配置されている。この追加自転軸部54にも、非接触磁力回転体81が設けられている。この追加自転軸部54は、自転駆動部50に連結されている。なお、この追加自転軸部54を設けずに、1個の自転ホルダ5の自転軸部53を自転駆動部50に連結しても良い。
【0103】
回転力伝達機構8は、Oリング80、非接触磁力回転体81から構成されているものであるから、ギヤ、タイミングベルト、プーリーなどと比較して、パーティクルの発生を抑制することができる。なお、回転力伝達機構8は、ギヤ、タイミングベルト、プーリーなどであっても良い。
【0104】
(実施形態以外の例の説明)
なお前記の実施形態1においては、真空容器2内に8枚の公転パレット4を配置した例を説明するものである。しかしながら、この発明においては、公転パレット4の枚数は、限定しない。また、前記の実施形態1においては、1枚の公転パレット4に6個の自転ホルダ5とマスク6と9個の移動部材61を配置した例を説明するものである。しかしながら、この発明においては、自転ホルダ5とマスク6と移動部材61の個数は、限定しない。1枚の公転パレット4に複数個の自転ホルダ5とマスク6を配置することで、量産性に優れると言う効果がある。
【符号の説明】
【0105】
1 成膜装置
10 成膜対象物
11 成膜対象面
12 周縁部
13 接眼側の面
2 真空容器
20 部屋
3 蒸発源
30 電子銃
31 蒸発物質
32 電子ビーム
4 公転パレット
40 公転駆動部
41 公転軸部
42 公転回転板
43 追加公転パレット
5 自転ホルダ
50 自転駆動部
51 第1ホルダ部
52 第2ホルダ部
53 自転軸部
54 追加自転軸部
6、600、610 マスク
60、601、611 固定部
61 移動部材(取付部)
62 固定柱
63 ガイド凹部
64 ガイド凸部
602 回転部材(取付部)
603 回転部
604 軸部
605 止め部
612、613 球部材(取付部)
614 2辺
615 凹部
6A マスク
60A 2辺
61A 凸部
62A 孔
7 距離調整機構
70 固定部
71 可動部
72 長孔
73 可動部材
74 止め部材
7A 距離調整機構
70A 固定部
71A 可動部
72A 孔
73A 可動部材
74A 第1止め部材
75A 載置部
76A 第2止め部材
8 回転力伝達機構
80 Oリング
81 非接触磁力回転体
A1 公転軸
A2 自転軸
A3 追加自転軸
D 設計反射率を示す曲線
P1~P13 反射率を実際に測定した箇所
R1~R13 実際に測定した反射率を示す曲線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25