(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115835
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】サイドノック式筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/08 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B43K24/08 110
B43K24/08 100
B43K24/08 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021702
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】並木 義春
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA01
2C353HC06
2C353HG04
(57)【要約】
【課題】より少ないノック量でノック操作が可能なサイドノック式筆記具を提供する。
【解決手段】サイドノック式筆記具1が、軸筒2と、軸筒内に前後動可能且つ中心軸線回りに回転可能に配置され、前方に面した回転カム部33及び押出カム部35を有する延伸カム30と、軸筒の内周面に設けられ、後方に面した回転カム受け部21と、軸筒内に前後動可能に延伸カムの前方に配置され、後方に面した押出カム受け部42を有するノックカムと、ノックカムの前進に伴い前進するリフィル6と、を具備し、回転カム部及び回転カム受け部において、一方が周方向に沿って傾斜する第1斜面を有し、他方が第1斜面に沿って摺動可能な第1作用部を有し、押出カム部及び押出カム受け部において、一方が周方向に沿って第1斜面と逆方向に傾斜する第2斜面を有し、他方が第2斜面に沿って摺動可能な第2作用部を有している。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、
前記軸筒の側面に配置された操作部と、
前記軸筒内に前後動可能且つ中心軸線回りに回転可能に配置され、前方に面した第1カム部及び第2カム部を有する延伸カムと、
前記軸筒側の内周面に設けられ、後方に面した第1カム受け部と、
前記軸筒内に前後動可能に前記延伸カムの前方に配置され、後方に面した第2カム受け部を有するノックカムと、
前記ノックカムの前進に伴い前進する筆記体と、を具備し、
前記操作部を軸芯方向に押圧するノック操作によって筆記状態と非筆記状態とが切り替え可能なサイドノック式筆記具であって、
前記第1カム部及び前記第1カム受け部において、一方が周方向に沿って傾斜する第1斜面を有し、他方が前記第1斜面に沿って摺動可能な第1作用部を有し、
前記第2カム部及び前記第2カム受け部において、一方が周方向に沿って前記第1斜面と逆方向に傾斜する第2斜面を有し、他方が前記第2斜面に沿って摺動可能な第2作用部を有し、
ノック操作によって前記延伸カムを前進させると、前記第1カム部と前記第1カム受け部とが協働して前記延伸カムを回転させ、前記延伸カムの前進及び回転に伴い前記第2カム部と前記第2カム受け部とが協働して前記ノックカムを前進させて、前記延伸カムの前進量よりも前記筆記体の前進量が大きくなるように構成されていることを特徴とするサイドノック式筆記具。
【請求項2】
前記操作部の径方向移動及び前記延伸カムの軸線方向移動を互いに変換する変換カムをさらに具備する請求項1に記載のサイドノック式筆記具。
【請求項3】
前記第1カム部及び前記第1カム受け部において、前記一方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第1斜面を有し、対応するように前記他方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第1作用部を有し、
前記第2カム部及び前記第2カム受け部において、前記一方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第2斜面を有し、対応するように前記他方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第2作用部を有する請求項1又は2に記載のサイドノック式筆記具。
【請求項4】
前記延伸カムが円筒状に形成され、前記第1カム部が前記第2カム部よりも径方向外方に配置されている請求項1又は2に記載のサイドノック式筆記具。
【請求項5】
前記第1作用部及び前記第2作用部の少なくとも一方が、対応する前記第1斜面又は前記第2斜面の少なくとも一部と相補的な斜面を有する請求項1又は2に記載のサイドノック式筆記具。
【請求項6】
前記第1作用部及び前記第2作用部の少なくとも一方が、凸曲面を有する請求項1又は2に記載のサイドノック式筆記具。
【請求項7】
前記第2斜面のピッチが、前記第1斜面のピッチと同一、又は、前記第1斜面のピッチよりも大きく設けられている請求項1又は2項に記載のサイドノック式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドノック式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
ノック式筆記具では、軸筒内に配置されたスプリングの付勢力に抗して操作部をノック操作することによって、ペン先である筆記部が軸筒の先端から突出した筆記状態と筆記部が軸筒内に没入した非筆記状態とが切り替えられる。ノック式筆記具として、軸筒の後端部に操作部が配置されたノック式筆記具(以下、「後端ノック式筆記具」という。)と、特許文献1に記載のように、軸筒の側面に操作部が配置されたノック式筆記具(以下、「サイドノック式筆記具」という。)とが公知である。
【0003】
後端ノック式筆記具では、ノック操作は、操作部を筆記具の中心軸線に沿って前方に押圧することによって行われる。他方、サイドノック式筆記具では、ノック操作は、操作部を筆記具の中心軸線に向かうように横方、又は、径方向内方に、すなわち軸芯方向に押圧することによって行われる。サイドノック式筆記具は、後端ノック式筆記具に比べて、筆記のための把持状態からのノック操作又はノック操作後の筆記のための把持状態への動作量が少なく、筆記具の持ち替え動作が容易であるという利点がある。
【0004】
ノック式筆記具では、基本的に、ノック操作によるノック量、すなわち操作部の移動量と、筆記体の移動量とは、略等しい。そこで、従来よりも少ないノック量で、非筆記状態から筆記状態への切り替えが可能な後端ノック式筆記具が公知である(特許文献2)。
【0005】
特許文献2に記載の後端ノック式筆記具は、円筒状の延伸カムを有している。延伸カムの前後方向における両端部には凸曲面状の作用端が設けられ、延伸カムの外周面にはピンが設けられている。延伸カムの前端側の作用端はノックカムの斜面と当接して配置され、延伸カムの後端側の作用端は直動カムの斜面と当接して配置されている。ノックカムの斜面と直動カムの斜面とは互いに逆方向に傾斜している。延伸カムのピンは、軸筒側に設けられ且つ周方向に沿って斜めに延びる延伸カム用斜行溝内に配置されている。ノック操作によって直動カムを前進させると、延伸カムのピンが延伸カム用斜行溝によって案内され、延伸カムが軸線回りに回転しながら前進する。このとき延伸カムの回転に伴い、延伸カムの後端部側の作用端が直動カムの斜面に沿って移動することによって、延伸カムの前進量は、直動カムの前進量よりも大きくなる。他方、延伸カムの回転しながらの前進移動に伴い、延伸カムの前端部側の作用端がノックカムの斜面に沿って移動することによって、ノックカムは押圧されながら前進する。ノックカムの前進量は、延伸カムの前進量よりも大きくなる。結果として、ノックカム及びこれに当接するリフィルは、ノック操作による操作部の移動量よりも大きく前進することから、少ない操作部の移動量で、非筆記状態から筆記状態への切り替えが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5-44584号公報
【特許文献2】特開2015-174381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
サイドノック式筆記具は、外径をより太くすることによって、より長いノック量を得ることができる。しかしながら、外径をより太くすると、意匠性及び使用者による把持時の感覚に大きな影響を与えるため好ましくない。また、基本的構造がまったく異なるため、特許文献2に記載の後端ノック式筆記具の上述した構造を、特許文献1に記載のサイドノック式筆記具に対してそのまま適用することはできない。
【0008】
仮に適用できたとしても、特許文献2に記載の後端ノック式筆記具では、延伸カムの両端部に作用端が設けられ、それぞれに対向する斜面が直動カム及びノックカムに設けられていることから、ノック機構全体の長さが長くなる。その結果、軸筒内に配置可能なリフィルの長さがより短くなるか、筆記具の全長がより長くなってしまう。特にリフィルの長さがより短くなると、収容可能なインク量が少なくなり、結果として1つのリフィルで筆記可能な線の長さが短くなってしまう。
【0009】
本発明は、より少ないノック量でノック操作が可能なサイドノック式筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、軸筒と、前記軸筒の側面に配置された操作部と、前記軸筒内に前後動可能且つ中心軸線回りに回転可能に配置され、前方に面した第1カム部及び第2カム部を有する延伸カムと、前記軸筒側の内周面に設けられ、後方に面した第1カム受け部と、前記軸筒内に前後動可能に前記延伸カムの前方に配置され、後方に面した第2カム受け部を有するノックカムと、前記ノックカムの前進に伴い前進する筆記体と、を具備し、前記操作部を軸芯方向に押圧するノック操作によって筆記状態と非筆記状態とが切り替え可能なサイドノック式筆記具であって、前記第1カム部及び前記第1カム受け部において、一方が周方向に沿って傾斜する第1斜面を有し、他方が前記第1斜面に沿って摺動可能な第1作用部を有し、前記第2カム部及び前記第2カム受け部において、一方が周方向に沿って前記第1斜面と逆方向に傾斜する第2斜面を有し、他方が前記第2斜面に沿って摺動可能な第2作用部を有し、ノック操作によって前記延伸カムを前進させると、前記第1カム部と前記第1カム受け部とが協働して前記延伸カムを回転させ、前記延伸カムの前進及び回転に伴い前記第2カム部と前記第2カム受け部とが協働して前記ノックカムを前進させて、前記延伸カムの前進量よりも前記筆記体の前進量が大きくなるように構成されていることを特徴とするサイドノック式筆記具が提供される。
【0011】
前記操作部の径方向移動及び前記延伸カムの軸線方向移動を互いに変換する変換カムをさらに具備してもよい。前記第1カム部及び前記第1カム受け部において、前記一方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第1斜面を有し、対応するように前記他方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第1作用部を有し、前記第2カム部及び前記第2カム受け部において、前記一方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第2斜面を有し、対応するように前記他方が中心軸線回りに対称的に配置された少なくとも2つの前記第2作用部を有していてもよい。前記延伸カムが円筒状に形成され、前記第1カム部が前記第2カム部よりも径方向外方に配置されていてもよい。前記第1作用部及び前記第2作用部の少なくとも一方が、対応する前記第1斜面又は前記第2斜面の少なくとも一部と相補的な斜面を有していてもよい。前記第1作用部及び前記第2作用部の少なくとも一方が、凸曲面を有していてもよい。前記第2斜面のピッチが、前記第1斜面のピッチと同一、又は、前記第1斜面のピッチよりも大きく設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様によれば、より少ないノック量でノック操作が可能なサイドノック式筆記具を提供するという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態によるサイドノック式筆記具の非筆記状態の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のサイドノック式筆記具の筆記状態の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のサイドノック式筆記具の非筆記状態の縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図1のサイドノック式筆記具の筆記状態の縦断面図である。
【
図14】
図14は、延伸機構のカムの関係を示す模式図である。
【
図15】
図15は、延伸機構の動作を段階的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に亘り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0015】
図1は、本発明の実施形態によるサイドノック式筆記具1の非筆記状態の斜視図であり、
図2は、
図1のサイドノック式筆記具1の筆記状態の斜視図であり、
図3は、
図1のサイドノック式筆記具1の非筆記状態の縦断面図であり、
図4は、
図1のサイドノック式筆記具1の筆記状態の縦断面図である。また、
図5は、延伸機構10の分解組立図である。
【0016】
サイドノック式筆記具1は、筒状に形成され且つ前軸3及び後軸4を備えた軸筒2と、軸筒2内に配置された内筒5と、軸筒2内に配置され且つ一端に筆記部6a及び他端に尾栓6bを備えた筆記体であるリフィル6と、リフィル6を後方へ付勢するスプリング7とを有している。前軸3の後端部は、後軸4の前端部の内部に挿入され、螺合によって嵌合している。内筒5を含めて軸筒2と称してもよく、内筒5は後軸4と一体的に形成してもよい。本明細書中では、サイドノック式筆記具1の軸線方向において、筆記部6a側を「前」側と規定し、筆記部6aとは反対側を「後」側と規定する。また、特に断りのない限り、「」中心軸線又は「軸線」とは、サイドノック式筆記具1の中心軸線又は軸線をいう。
【0017】
軸筒2の後方の内部、すなわち後軸4の内部には、延伸機構10が配置されている。延伸機構10の後方には、操作部であるノックボタン12を備えた操作部材11が変換カム16を介して配置されている。延伸機構10は、ノック操作によってリフィル6を軸筒2内で前後方向に移動させるノック機構である。操作部材11及び変換カム16を含めて延伸機構10と称してもよい。筆記部6aが軸筒2内に没入した状態を非筆記状態(
図1及び
図3)と称し、筆記部6aが軸筒2から突出した状態を筆記状態(
図2及び
図4)と称す。リフィル6と延伸機構10とを合わせてノック機構と称してもよい。
【0018】
延伸機構10は、主として、軸筒2側の内周面、具体的には内筒5の内周面に設けられた外カム20と、筒状に形成された延伸カム30と、筒状に形成されたノックカム40と、筒状に形成された回転子50とを有する。軸筒2内において、操作部材11、変換カム16、延伸カム30、ノックカム40及び回転子50が、後端側から順に配置されている。
【0019】
図6は、後軸4の正面図であり、後軸4を前方から見た図である。後軸4の内周面には、一対のガイドレール8が形成されている。また、ガイドレール8に対向する後軸4の後端部には、貫通孔4aが形成されている(
図1乃至
図4)。
図3及び
図4にも示されるように、ガイドレール8は、後軸4の後端部に対して一体的に接続された矩形の平板状に形成されている。一対のガイドレール8は、軸線方向に沿って延在し、互いに離間して平行に配置されている。
図3及び
図4は、ガイドレール8の平面に対して平行な縦断面図である。
【0020】
図7は、操作部材11の正面図である。操作部材11は、後軸4の内周面と相補的な湾曲面13と、湾曲面13に形成された突起状のノックボタン12と、ノックボタン12とは反対方向に延びる一対の摺動突起14とを有している。ノックボタン12の頂面12aは、後軸4の外周面と同様に湾曲している。一対の摺動突起14は、平板状に形成されている。また、一対の摺動突起14は、軸線方向に沿って延在し、互いに離間して平行に配置されている。一対の摺動突起14の間隔は、後軸4の一対のガイドレール8の外側に緩く係合するように設定される。なお、一対の摺動突起14の間隔は、後軸4の一対のガイドレール8の内側に緩く係合するように設定してもよい。また、ガイドレールを1つだけ形成し、その上に跨がるように一対の摺動突起を形成してもよく、摺動突起を1つだけ形成し、一対のガイドレールの間に挿入されるように形成してもよい。
【0021】
操作部材11の前端面には、幾何学的に、摺動突起14の平面と直交するように形成された、略U字状で且つ平坦な第1摺動面15が形成されている。第1摺動面15は、
図3乃至
図5に示されるように、摺動突起14の先端に向かって摺動突起14の軸線方向長さが短くなるように傾斜している。言い換えると、第1摺動面15は、操作部材11が軸筒2内に配置された状態で、ノックボタン12から離間するに従って軸筒2内の奥に向かって傾斜するように形成されている。第1摺動面15は、軸筒2の横断面に対して45度だけ傾斜している。第1摺動面15は、30度又は60度等、その他の角度だけ傾斜するようにしてもよい。操作部材11は、ノックボタン12が後軸4の貫通孔4aに対応する位置に配置されるように、軸筒2内に配置される。
【0022】
図8は、変換カム16の縦断面図である。変換カム16は、後端部近傍が中実の円柱状に形成され、それ以外の部分は円筒状に形成されている。変換カム16の中実の後部には、軸筒2の横断面に対して、操作部材11の第1摺動面15と同一角度だけ傾斜した平坦な第2摺動面17が形成されている。第2摺動面17は、中実の円柱を斜めに切断した楕円状の断面形状を有している。変換カム16の円筒状に形成された部分は、前方に向かって開口している。変換カム16の内部において、前方に面する底面18には、球面状の凹部19が形成されている。凹部19の中心は、変換カム16の中心軸線と一致するように設けられている。
【0023】
図9は、延伸カム30の斜視図であり、
図10は、延伸カム30の縦断面図である。延伸カム30は、円筒状のカム本体31と、カム本体31よりも大径の円筒状の大径部32とを有している。大径部32の前端面には、前方に面したカム面を有する回転カム部33が形成されている。回転カム部33は、周方向に沿って傾斜する2つの第1斜面34と、第1斜面34の頂点に設けられた平坦部37とを有している。2つの第1斜面34は、同一方向に傾斜し、延伸カム30の中心軸線に対して対称的に配置されている。回転カム部33は、第1カム部を構成する。
【0024】
カム本体31及び大径部32の内部には、前方に面したカム面を有する押出カム部35が形成されている。押出カム部35は、周方向に沿って第1斜面34と逆方向に傾斜する2つの第2斜面36を有している。2つの第2斜面36は、同一方向に傾斜し、延伸カム30の中心軸線に対して対称的に配置されている。押出カム部35は、第2カム部を構成する。回転カム部33は、押出カム部35よりも前方に配置されている。なお、回転カム部33と押出カム部35とを軸線方向において同じ位置となるように設けてもよく、回転カム部33を押出カム部35よりも後方に設けてもよく、また、回転カム部33と押出カム部35とを周方向においても同じ位置となるように同一円周上に設けてもよい。回転カム部33は押出カム部35よりも径方向外方に配置されていることから、回転カム部33及び押出カム部35は、径方向において隣接する二重のカム面を構成する。
【0025】
延伸カム30において、回転カム部33の第1斜面34と押出カム部35の第2斜面36とは、異なる傾斜角度、すなわち異なるピッチを有している。ピッチとは、周方向に沿って設けられた斜面が、中心軸線回りに360度の1周分設けられている場合における軸線方向の長さをいう。具体的には、サイドノック式筆記具1において、第2斜面36のピッチは、第1斜面34のピッチの2倍となるように設定されている。延伸カム30の後端部には、変換カム16の球面状の凹部19と略同一の曲率半径を有する球面状の回転支持部38が設けられている。
【0026】
図11は、ノックカム40の斜視図である。ノックカム40の外周面には、軸線方向に延びる2つの第1突起部41が周方向に沿って等間隔に設けられている。2つの第1突起部41の後端面には、後方に面したカム面を有する押出カム受け部42が形成されている。押出カム受け部42は、周方向に沿って傾斜する第3斜面43を有している。第3斜面43は、延伸カム30の第2斜面36と同一方向及び同一角度に傾斜し、第2斜面36と協働するように構成されている。ノックカム40の前端部の外周面には、軸線方向に延びる2つの第2突起部44が形成されている。2つの第2突起部44は、周方向に沿って等間隔に設けられている。ノックカム40の前端面には、複数の山部及び谷部の繰り返しからなる一連のカム面45が形成されている。押出カム受け部42は、第2カム受け部を構成する。第2突起部44の外面の前端縁近傍には、第1係止突起46が形成されている。
【0027】
図12は、回転子50の斜視図である。回転子50の後端部には、ノックカム40内に挿入されて芯合わせに使用される小径部51が形成されている。小径部51の前方には、大径部52によって突起状の内カム53が画成されている。内カム53は、軸線方向に延びる4つの内カム突起54を有している。4つの内カム突起54は、周方向に沿って等間隔に設けられている。内カム突起54の後端面には、周方向に傾斜した斜面としてカム受け面55が設けられている。カム受け面55は、ノックカム40のカム面45と相補的に形成され、カム面45と協働するように構成されている。
【0028】
図3及び
図4に示されるように、回転子50の内部には、前端開口から後方に向かって軸線方向に延びる4つの阻止突起56が周方向に沿って等間隔に設けられている。回転子50の前端開口の内径は、小径部51の外径と略同一か又は僅かばかり大きく形成されている。4つの阻止突起56が設けられていることによって、サイドノック式筆記具1の組立作業前に複数の回転子50が同一の容器等で保管されているとき、意図せず1つの回転子50が別の回転子50の前端開口内に挿入され、嵌合してしまうことが防止される。阻止突起56は、こうした意図しない誤嵌合が防止される限りにおいて、任意の形状又は数であってもよい。したがって、阻止突起を前端開口近傍に1つだけ設けてもよく、半球状の突起であってもよい。
【0029】
図13は、内筒5の後端部の縦断面図である。内筒5の内周面には、上述したように突起状の外カム20が設けられている。外カム20は、2つの外カム突起23を有している。2つの外カム突起23は、周方向に沿って等間隔に設けられている。外カム20の後端面には、回転カム受け部21が形成されている。外カム20の前端面には、係止カム面22が形成されている。
【0030】
回転カム受け部21は、周方向に沿って傾斜する第4斜面24を有している。第4斜面24は、延伸カム30の回転カム部33の第1斜面34と同一方向及び同一角度に傾斜し、第1斜面34と協働するように構成されている。係止カム面22は、鋸刃状の鋸斜面25と、後方に向かって延びる溝部26とを有している。要するに、外カム突起23の各々において、後端面に1つの第4斜面24が形成され、前端面に2つの鋸斜面25と2つの鋸斜面25間の溝部26とが形成されている。2つの外カム突起23間には、ガイド溝27が形成されている。回転カム受け部21は、第1カム受け部を構成する。ガイド溝27の内部には、ガイド溝27を横断する第2係止突起28が形成されている。
【0031】
図3乃至
図5を参照しながら、サイドノック式筆記具1の各部材の組み立てについて説明する。後軸4の前端開口から操作部材11が挿入される。操作部材11は、ノックボタン12が後軸4の貫通孔4aに対応する位置に配置され、且つ、摺動突起14がガイドレール8に緩く係合するように配置される。次いで、後軸4の前端開口から変換カム16が挿入される。変換カム16は、第2摺動面17が操作部材11の第1摺動面15と当接するよう、中心軸線回りの位置が決定される。それによって、操作部材11の第1摺動面15と、変換カム16の第2摺動面17とが協働するように配置される。次いで、後軸4の前端開口から延伸カム30が挿入される。延伸カム30は変換カム16の前端開口から挿入され、延伸カム30の回転支持部38が変換カム16の凹部19内に配置される。
【0032】
一方、内筒5の前端開口からノックカム40が挿入される。ノックカム40は、第2突起部44が外カム突起23間のガイド溝27内に配置されるように中心軸線回りの位置が決定される。ノックカム40の第1係止突起46が内筒5の第2係止突起28と係止することによって、内筒5の後端開口からノックカム40が抜けて外れてしまうことが防止される。次いで、内筒5の前端開口から回転子50が挿入されて、ノックカム40の前端開口に回転子50の小径部51が挿入される。それによって、ノックカム40のカム面45と回転子50のカム受け面55とが協働するように配置される。
【0033】
次いで、ノックカム40及び回転子50が挿入されている内筒5が、後軸4の前端開口から挿入される。内筒5は、内筒5の外周面が後軸4の内周面と嵌合することによって、後軸4に対して固定される。内筒5の挿入によって、ノックカム40の後端部が、延伸カム30の前端開口に挿入される。その結果、延伸カム30の回転カム部33と、内筒5の外カム20、特に回転カム受け部21とが協働するように配置され、且つ、延伸カム30の押出カム部35と、ノックカム40の押出カム受け部42とが協働するように配置される。次いで、リフィル6及びスプリング7が内部に配置された前軸3が、リフィル6が回転子50の前端面に当接するようにして、後軸4に対して螺合される。
【0034】
図14は、延伸機構10のカムの関係を示す模式図である。すなわち、
図14は、外カム20と、延伸カム30と、ノックカム40と、回転子50との位置関係、特に、回転カム部33及び回転カム受け部21の位置関係と、押出カム部35及び押出カム受け部42の位置関係とを示す模式図である。図中、上方がサイドノック式筆記具1の後側であり、下方がサイドノック式筆記具1の前側である。
図14では、各部材のカム又は突起について、相互の位置関係を明確にするため、径方向及び軸線方向の位置及び寸法、さらには形状を捨象して周方向に展開している。例えば、延伸カム30では、第1斜面34を備えた回転カム部33及び第2斜面36を備えた押出カム部35が、模式的に一体的に示されており、第1斜面34の全長も短縮して示されている。ノックカム40では、第3斜面43を備えた第1突起部41及び第2突起部44が、模式的に一体的に示されている。
【0035】
ノックカム40の第2突起部44は、外カム突起23間のガイド溝27内に配置されている。したがって、ノックカム40は、中心軸線回りの回転が規制されつつ、前後動可能である。延伸カム30の第1斜面34と外カム20の第4斜面24とが互いに当接すると共に、延伸カム30の第2斜面36とノックカム40の第3斜面43とが互いに当接するように配置されている。
図14は、非筆記状態のサイドノック式筆記具1であることから、回転子50の内カム突起54の各々は、対応する溝部26又はガイド溝27に配置されている。ノックカム40のカム面45と回転子50のカム受け面55とは、互いに当接するように配置されている。
【0036】
スプリング7によって後方に付勢されたリフィル6を介して、回転子50が後方へ付勢されている。ノックカム40は、後方へ付勢された回転子50のカム受け面55とノックカム40のカム面45との当接を介して、後方へ付勢されている。延伸カム30は、後方へ付勢されたノックカム40の第3斜面43と延伸カム30の第2斜面36との当接を介して、後方へ付勢されている。変換カム16は、後方へ付勢された延伸カム30の回転支持部38と変換カム16の凹部19との当接を介して、後方へ付勢されている。操作部材11は、変換カム16の第2摺動面17と操作部材11の第1摺動面15との当接を介して、後方へ付勢されている。操作部材11の後方への移動は、操作部材11の後端面が後軸4の後端面の内面に当接することによって規制されている。
【0037】
サイドノック式筆記具1において、ノック操作は、操作部である、操作部材11のノックボタン12を中心軸線に向かうように横方に、又は、径方向内方に、すなわち軸芯方向に押圧することによって行われる。例えば、
図3に示された非筆記状態のサイドノック式筆記具1において、ノックボタン12を軸芯方向に押圧すると、第1摺動面15が変換カム16の第2摺動面17を押圧する。第1摺動面15及び第2摺動面17は軸芯方向に対して傾斜しており、且つ、操作部材11はサイドノック式筆記具1において後方への移動は規制されていることから、変換カム16が前進する方向の分力を受けて前進する。変換カム16の前進によって延伸カム30が前進し、それによって、後述するように延伸機構10が動作する。その結果、非筆記状態から筆記状態への切り替えが行われる(
図4)。また、再度のノック操作による変換カム16の前進によって、筆記状態から非筆記状態への切り替えが行われる。
【0038】
要するに、変換カム16は、操作部材11及び延伸カム30と協働し、ノックボタン12の径方向移動、すなわち径方向内方又は径方向外方の移動、及び、延伸カム30の軸線方向移動を互いに変換するように構成されている。上述したように、変換カム16は、ノックボタン12の径方向移動及び延伸カム30の軸線方向移動を互いに変換するように構成されている限り、任意に構成してもよい。
【0039】
なお、変換カム16を省略してもよい。すなわち、操作部材11の第1摺動面15をU字状ではなく楕円状等に形成し、操作部材11の第1摺動面15と延伸カム30の回転支持部38とが直接的に協働するようにしてもよい。この場合、ノック操作に伴い、延伸カム30の回転支持部38は、操作部材11の第1摺動面15上を摺動しながら延伸カム30の回転を支持するように構成される。
【0040】
一連のノック操作の間、操作部材11の摺動突起14は、後軸4のガイドレール8と常に係合し、操作部材11の径方向外方又は内方の動作は、ガイドレール8によって確実に案内される。そのため、摺動突起14は、常にガイドレール8と係合するようにその高さ又は長さが設定されている。また、操作部材11のノックボタン12は、ノック操作によって最も移動した位置においても貫通孔4aから外れないように、その高さが設定されている。
【0041】
第1摺動面15及び第2摺動面17は、軸筒2の横断面に対して又は中心軸線に対して、45度だけ傾斜している。したがって、操作部材11が径方向内方に移動する距離と、それによる変換カム16が前進する距離とは等しい。なお、第1摺動面15及び第2摺動面17を、より傾斜させることによって、すなわち中心軸線に対して平行となるようにすることによって、操作部材11の移動量に対して、変換カム16の前進量をより大きくすることができる。他方、なお、第1摺動面15及び第2摺動面17を、より傾斜させないことによって、すなわち中心軸線に対して直交するようにすることによって、操作部材11の移動量に対して、変換カム16の前進量をより小さくすることができる。第1摺動面15及び第2摺動面17は、一方を傾斜面とし、他方を、一方の傾斜面上を摺動可能な球面状等の摺動子としてもよい。
【0042】
図15は、延伸機構10の動作を段階的に示す模式図であり、非筆記状態から筆記状態への切り替えを示す模式図である。
図15(A)は、
図14と同一であり、非筆記状態のサイドノック式筆記具1における延伸機構10を示している。
【0043】
図15(A)に示された状態から、ノックボタン12を軸芯方向に押圧するノック操作を行う。ノック操作による操作部材11を介した変換カム16の前進によって、延伸カム30を前進させる。延伸カム30を前進させると、延伸カム30の回転カム部33と外カム20の回転カム受け部21とが協働し、軸筒2に対して延伸カム30を中心軸線回りに回転させる。すなわち、第1斜面34が第4斜面24に沿って図中左下方向に摺動して、延伸カム30の前進及び回転が同時に行われる。他方、延伸カム30の前進及び回転に伴い、延伸カム30の押出カム部35とノックカム40の押出カム受け部42とが協働し、ノックカム40を前進させる。すなわち、第3斜面43が第2斜面36に沿って相対的に摺動して、ノックカム40の前進が行われる(
図15(B)乃至
図15(E))。
【0044】
なお、ノックカム40は、第2突起部44が外カム20のガイド溝27内に配置されていることによって、中心軸線回りの回転が規制されている。また、ノックカム40の前進に伴い、回転子50、ひいてはリフィル6がスプリング7の付勢力に抗して押圧されて一体的に前進する。さらに、延伸カム30の中心軸線回りの回転は球面状の回転支持部38が変換カム16の球面状の凹部19内で支持されることから、回転時の摩擦抵抗が低減される。
【0045】
要するに、延伸カム30の回転カム部33と外カム20の回転カム受け部21との協働によって、延伸カム30に回転方向の運動を生じさせる。延伸カム30の回転によって、延伸カム30の押出カム部35とノックカム40の押出カム受け部42とが協働し、延伸カム30の前進量と比較して、ノックカム40の前進量を増加させる。ノックカム40の前進量の増加量は、延伸カム30の回転量(回転角度)を決定する、回転カム部33の第1斜面34又は回転カム受け部21の第4斜面24の傾斜角又はピッチと、回転量に応じた前進を生じさせる、押出カム部35の第2斜面36又は押出カム受け部42の第3斜面43の傾斜角又はピッチとによって、幾何学的に設計可能である。
【0046】
例えば、押出カム部35の第2斜面36のピッチを回転カム部33の第1斜面34のピッチと同一にした場合、リフィル6の移動量は、ノック操作によるノック量、すなわちノックボタン12の移動量、ひいては延伸カム30の移動量の2倍となる。また、押出カム部35の第2斜面36のピッチを回転カム部33の第1斜面34のピッチの2倍にした場合、リフィル6の移動量は、ノック操作によるノック量の3倍となる。
【0047】
したがって、
図15(A)の状態から、ノック操作によってノックボタン12を押圧し、距離D11だけ延伸カム30を前進させると、距離D11よりも大きい距離D21だけ回転子50、ひいてはリフィル6が前進する(
図15(B))。さらにノックボタン12を押圧し、距離D12だけ延伸カム30を前進させると、距離D21よりも大きい距離D22だけ回転子50、ひいてはリフィル6が前進する(
図15(C))。なお、
図15(C)の状態では、回転子50の内カム突起54は、対応する溝部26又はガイド溝27に配置されており、したがって、回転子50は、中心軸線回りの回転が規制されている。また、上述したように、回転子50は、スプリング7によって常に後方に付勢されている。
【0048】
図15(C)の状態から、さらにノックボタン12を押圧して回転子50を前進させ、内カム突起54が溝部26又はガイド溝27を越えると、回転子50の回転の規制が解除される(
図15(D))。このとき、ノックカム40のカム面45と回転子50のカム受け面55とが協働し、回転子50を中心軸線回りに回転させる。すなわち、ノック操作に起因する前進による軸線方向の力とスプリング7の付勢力による軸線方向の力とを受けて、回転子50の斜面であるカム受け面55が、複数の山部及び谷部の繰り返しからなるカム面45に対して押圧されて周方向の分力を受ける。ノックカム40は回転が規制されていることから、回転子50が回転する。回転子50の回転は、内カム突起54が係止カム面22を構成する鋸斜面25に係止することによって停止し(
図15(E))、サイドノック式筆記具1は筆記状態となる。
【0049】
筆記状態のサイドノック式筆記具1について再びノック操作を行うと、回転子50が前進して内カム突起54と係止カム面22との係止が解除される。このとき、ノックカム40のカム面45と回転子50のカム受け面55とが再び協働し、回転子50を回転させる。その結果、回転子50の内カム突起54の各々が溝部26又はガイド溝27に配置され、スプリング7の付勢力によって回転子50、ひいてはリフィル6が後退し、サイドノック式筆記具1は非筆記状態となる。このとき、延伸カム30は、非筆記状態から筆記状態にする場合とは逆方向に回転し、
図15(A)に示された状態に復帰する。
【0050】
以上より、延伸機構10によれば、ノック操作によるノック量よりもリフィル6の前進量を増加させることができることから、より少ないノック量でノック操作が可能となる。そのため、サイドノック式筆記具において、外径をより太くすることなく、また、意匠性及び使用者による把持時の感覚に大きな影響を与えることなく、必要なノック量を得ることができる。
【0051】
さらに、延伸機構10では、第1カム部である回転カム部33及び第2カム部である押出カム部35が、軸線方向において同一の方向、すなわち前方に配置されている。そのため、例えば、特許文献2に記載された、延伸カムの前後方向における両端部に第1カム部及び第2カム部が配置されているような構成に比べ、延伸カム、ひいては延伸機構の全体の長さを短くすることができる。したがって、リフィルの長さをより長くすることができるか、筆記具をよりコンパクトにすることができる。さらに、サイドノック式筆記具において、軸筒の側面に配置された操作部の突出量をより低減させることができる。
【0052】
上述した実施形態では、延伸カム30の第1斜面34と外カム20の第4斜面24とが互いに協働し、互いに少なくとも一部と相補的な斜面を有する。また、延伸カム30の第2斜面36とノックカム40の第3斜面43とが互いに協働し、互いに少なくとも一部と相補的な斜面を有する。ここで、斜面とは、互いに協働する限りにおいて周方向に沿って傾斜していればよく、厳密な意味での斜面でなくてもよい。したがって、斜面は、曲面、すなわち凸曲面及び凹曲面を含む。
【0053】
回転カム受け部21は、第4斜面24に代えて、回転カム部33の第1斜面34に沿って摺動可能な第1作用部を有していてもよい。他方、回転カム部33は、第1斜面34に代えて、回転カム受け部21の第4斜面24に沿って摺動可能な第1作用部を有していてもよい。要するに、回転カム部33及び回転カム受け部21において、一方が周方向に沿って傾斜する第1斜面を有し、他方が第1斜面に沿って摺動可能な第1作用部を有していてもよい。同様に、押出カム受け部42は、第3斜面43に代えて、押出カム部35の第2斜面36に沿って摺動可能な第2作用部を有していてもよい。他方、押出カム部35は、第2斜面36に代えて、押出カム受け部42の第3斜面43に沿って摺動可能な第2作用部を有していてもよい。要するに、押出カム部35及び押出カム受け部42において、一方が周方向に沿って傾斜する第2斜面を有し、他方が第2斜面に沿って摺動可能な第2作用部を有していてもよい。
【0054】
第1作用部及び第2作用部は、凸曲面であってもよく、対応する第1斜面又は第2斜面に沿って摺動可能な限りにおいて任意に構成してもよい。第1作用部及び第2作用部の少なくとも一方が、対応する第1斜面又は第2斜面の少なくとも一部と相補的な斜面を有していてもよい。第2斜面のピッチが、第1斜面のピッチと同一、又は、第1斜面のピッチよりも大きく設けられていてもよい。第2斜面のピッチを第1斜面のピッチよりも大きく設けることによって、より少ないノック量でノック操作が可能となる。第1斜面及び対応する第1作用部、並びに、第2斜面及び対応する第2作用部は、上述した実施形態のようにそれぞれ2つ設けられていてもよく、1つ又は3つ以上であってもよい。第1斜面及び対応する第1作用部、並びに、第2斜面及び対応する第2作用部が2つ以上設けられている場合には、それぞれが周方向に沿って等間隔に設けられていること、すなわち筆記具又は軸筒の中心軸線回りに対称的に配置されていることが好ましい。第1斜面及び対応する第1作用部、並びに、第2斜面及び対応する第2作用部が2つ以上設けられていると、1つの場合に比べて延伸カムの回転が安定するため好ましい。
【0055】
要するに、上述した実施形態によれば、軸筒と、軸筒の側面に配置された操作部と、軸筒内に前後動可能且つ中心軸線回りに回転可能に配置され、前方に面した第1カム部及び第2カム部を有する延伸カムと、軸筒側の内周面に設けられ、後方に面した第1カム受け部と、軸筒内に前後動可能に延伸カムの前方に配置され、後方に面した第2カム受け部を有するノックカムと、ノックカムの前進に伴い前進する筆記体と、を具備し、操作部を軸芯方向に押圧するノック操作によって筆記状態と非筆記状態とが切り替え可能なサイドノック式筆記具であって、第1カム部及び第1カム受け部において、一方が周方向に沿って傾斜する第1斜面を有し、他方が第1斜面に沿って摺動可能な第1作用部を有し、第2カム部及び第2カム受け部において、一方が周方向に沿って第1斜面と逆方向に傾斜する第2斜面を有し、他方が第2斜面に沿って摺動可能な第2作用部を有し、ノック操作によって延伸カムを前進させると、第1カム部と第1カム受け部とが協働して延伸カムを回転させ、延伸カムの前進及び回転に伴い第2カム部と第2カム受け部とが協働してノックカムを前進させて、延伸カムの前進量よりも筆記体の前進量が大きくなるように構成されていることを特徴とするノック式筆記具が提供される。
【0056】
上述した実施形態において、後軸4の後端部又は後軸4全体を、当該筆記具による筆跡を消去する消去部材として構成してもよい。上述した筆記具における筆記体であるリフィルは、熱変色性インクを収容してもよい。この場合、当該筆記具は熱変色性筆記具であり、消去部材である摩擦体によって擦過した際に生じる摩擦熱によって、筆記具の筆跡を熱変色可能である。なお、筆記体として、熱変色インクを収容したボールペン、熱変色芯を収容したシャープペンシル、鉛筆ホルダ等を使用することもできる。また、消しゴムで消去可能な消しゴム消去式インクを収容した筆記具としてもよい。
【0057】
ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いた筆記具では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して消去部としての摩擦体によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 サイドノック式筆記具
2 軸筒
3 前軸
4 後軸
5 天冠
6 リフィル
7 スプリング
10 延伸機構
11 操作部材
12 ノックボタン
16 変換カム
20 外カム
21 回転カム受け部
22 係止カム面
23 外カム突起
24 第4斜面
30 延伸カム
31 カム本体
32 大径部
33 回転カム部
34 第1斜面
35 押出カム部
36 第2斜面
40 ノックカム
41 第1突起部
42 押出カム受け部
43 第3斜面
44 第2突起部
45 カム面
50 回転子
51 小径部
52 大径部
53 内カム
54 内カム突起
55 カム受け面