(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115838
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 21/04 20060101AFI20240820BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
F25D21/04 E
F25D11/00 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021705
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】小野 紘平
(72)【発明者】
【氏名】川浪 徹
【テーマコード(参考)】
3L045
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA01
3L045CA02
3L045EA01
3L045LA13
3L045MA05
3L045NA24
3L045PA01
3L045PA02
3L045PA03
3L045PA04
(57)【要約】
【課題】高いエネルギー効率を有する冷蔵庫を提供する。
【解決手段】冷蔵庫は、筐体と、扉と、パッキンと、ヒータと、制御部とを備える。筐体は、開口している収容室を有する。扉は、収容室の開口を開閉する。パッキンは、扉と筐体との間に設けられている。ヒータは、パッキンを加熱する。制御部は、ヒータを制御する。制御部は、外気温が第1温度以上のときに、ヒータによる加熱を停止状態にする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口している収容室を有する筐体と、
前記収容室の開口を開閉する扉と、
前記扉と前記筐体との間に設けられたパッキンと、
前記パッキンを加熱するヒータと、
前記ヒータを制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、外気温が第1温度以上のときに、前記ヒータによる加熱を停止状態にする、冷蔵庫。
【請求項2】
前記制御部は、外気温が前記第1温度よりも低い第2温度以上のときに、外気温が上昇するほど前記ヒータによる加熱強度を低下させる、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記第2温度は、前記冷蔵庫の設置地域に対応した温度である、請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記第2温度は、前記冷蔵庫の設置地域における最高露点温度に対応した温度である、請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記第1温度は、前記ヒータに加熱されていない前記パッキンの温度が、前記冷蔵庫の設置地域における最高露点温度以上となる外気温の範囲内である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1温度を記憶する記憶部を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の冷蔵庫は、防露ヒータを備える。防露ヒータは、加熱により結露の発生を防止するために設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
結露防止に要するエネルギーを低くして冷蔵庫のエネルギー効率を向上することが求められている。
【0005】
本開示は、高いエネルギー効率を有する冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面によれば、冷蔵庫は、筐体と、扉と、パッキンと、ヒータと、制御部とを備える。筐体は、開口している収容室を有する。扉は、収容室の開口を開閉する。パッキンは、扉と筐体との間に設けられている。ヒータは、パッキンを加熱する。制御部は、ヒータを制御する。制御部は、外気温が第1温度以上のときに、ヒータによる加熱を停止状態にする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ある都市の1日における最高気温と最高露点温度とを過去10年間にわたってプロットしたグラフである。
【
図2】実施形態に係る冷蔵庫の扉を閉じた状態の正面図である。
【
図3】実施形態に係る冷蔵庫の扉を開いた状態の部分切欠き正面図である。
【
図4】外気温に対応するヒータへの通電量を示すグラフである。
【
図5】外気温とパッキンの温度との関係を示すグラフである。
【
図6】制御部及び制御部の周辺の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当する部材等については同一の参照符号を附し、説明を繰り返さない。また、以下において、「上」及び「下」は、冷蔵庫を使用可能に設置した状態(以下、「使用状態」と記載する。)に基づいて定義される。「左」は、冷蔵庫の使用状態において、開口13に向かって左側を意味する。「右」は、左の反対方向を示す。「前」は、冷蔵庫の使用状態において開口13が開放された方向である。「後」は、前の反対方向を示す。
【0009】
まず、
図1を参照して、本開示の前提について説明する。
図1は、ある都市Aの1日における最高気温と最高露点温度とを、過去10年間にわたってプロットしたグラフである。この都市Aは、海岸線から十分に近い都市であり、海水温等の影響を受ける都市である。都市Aは、具体的に、海岸線から、500キロメートル以内の範囲の地域(以下、「沿岸地域」と記載する。)に位置する都市である。
【0010】
通常、1日において外気温及び露点温度が変動する。露点温度とは、結露が発生する温度である。物(例えば、冷蔵庫用のパッキン)の温度が露点温度よりも低いと結露が発生する。1日において最も高い露点温度が、1日における最高露点温度である。本件の発明者らは、1日における最高気温と最高露点温度との長期間(10年間)にわたる地域ごとのデータに着目した。そして、地域ごとにデータをプロットしたグラフから、本件の発明者らは次の特性を見出した。
【0011】
図1の符号L及び符号Hから明らかなように、1日の最高気温が特定温度Td(
図1では27℃)未満と以上とで、1日の最高露点温度に異なる傾向が見られる。具体的には、
図1の符号Lで示されるように、1日の最高気温が特定温度Td(
図1では27℃)未満では、1日の最高気温と、その最高気温に対応する1日の最高露点温度における10年間の最高値(以下、対応最高露点温度という)とが所定の係数で比例する。一方、符号Hで示されるように、1日の最高気温が特定温度Td(
図1では27℃)以上では、1日の最高気温と、対応最高露点温度とが所定の係数よりも低い係数(以下、高温時の比例係数という)で比例する。
【0012】
図1に示される例では、高温時の比例係数が0である。すなわち、1日の最高気温が特定温度Td以上において、最高露点温度が実質的に一定となる。即ち、沿岸地域であれば、1日の最高気温が特定温度Td以上において、最高露点温度が実質的に一定となる。
【0013】
高温時の比例係数が0(特定温度Td以上で最高露点温度が一定)の原因の1つとして、海洋温度が考えられる。沿岸地域に流れ込む空気は、海洋上で海と水分の交換を行う。そのため、露点は海洋の水面の温度に影響を受ける。海上から陸上に運ばれた空気の温度は上昇しても、水分の供給量は海面よりも少ないため、露点の変化は緩やかである。海洋は熱容量が非常に大きく、海流によって攪拌され広い領域で温度が一定に保たれている。このような海洋との相互作用が、特定温度Tdが年間を通して大きく変化しない原因のひとつと考えられる。
【0014】
したがって、1日の最高気温が特定温度Td以上では、1日の最高気温が高くなるほど、露点温度と気温との差が広がる。すなわち、相対湿度の最高値が下がる。結果として、本件の発明者らは、外気温がある程度以上に高い場合においては、露点温度が気温に対して十分に低い場合が多く、冷蔵庫に結露が発生しにくい。よって、結露防止のためのヒータを停止状態にしてもよい場合が多いと考えるに至った。
【0015】
なお、特定温度Tdは、地域によって異なる。
図1に示される都市Aの例では、特定温度Tdは、例えば、27℃である。また、都市Aより温暖な都市Bの例では、特定温度Tdは、例えば、29℃であり、都市Aより寒冷な都市Cの例では、特定温度Tdは、例えば、25℃である。特定温度Tdは、その地域における最高露点温度と実質的に等しい。したがって、以下、特定温度Tdを、地域における最高露点温度Tdとしてもよい場合がある。なお、都市B及び都市Cも、都市Aと同じく、海岸線から500キロメートル以内の範囲に位置する都市である。
【0016】
ところで、沿岸地域ではなく、沿岸から500キロメートルよりも大きく離れている内陸地域であれば、高温時の比例係数が0でない場合もある。具体的には、内陸地域には、例えば、高温時の比例係数が、負又は正になる地域がある。
【0017】
高温時の比例係数が負になる内陸地域では、外気温が高くなるにつれて、さらに内陸の方から乾燥した風が吹き込んでくるという特性がある場合がある。例えば熱帯においては湿度の高い雨季のシーズンは、最高気温も低くなる傾向がある。一方で、温度の上がるシーズンは乾季であり、露点温度も雨季に比べて下がる傾向がある。この傾向は、例えば空気が海水温の低い地域から海上を経ずに流れ込んだり、山岳地方を通って乾燥し、陸上で加熱されたりするために生じるものと考えられる。結果として、本件の発明者らは、このような内陸地域においても、沿岸地域と同じく、外気温がある程度以上なら、冷蔵庫に結露が発生しにくいので、結露防止のためのヒータを停止状態にしてもよいと考えるに至った。
【0018】
一方、高温時の比例係数が正になる内陸地域も存在する。例えば寒帯がそのような地域に該当する場合があるが、このような地域においては最高露点温度が極めて低いという特性がある。したがって、このような地域では、冷蔵庫に結露がそもそも極めて発生しにくい。結果として、本件の発明者らは、このような内陸地域においても、沿岸地域と同じくヒータを停止状態にしても問題ないと考えるに至った。
【0019】
以上より、本件の発明者らは、外気温がある程度以上であれば、冷蔵庫が備える結露防止のためのヒータを停止状態にしてもよいとの知見を得た。
【0020】
以下、
図2及び
図3を参照して、本件の発明者らの知見に基づく本開示の実施形態に係る冷蔵庫100の構成について説明する。
図2は、実施形態に係る冷蔵庫100の扉40を閉じた状態の正面図である。
図3は、実施形態に係る冷蔵庫100の扉40を開いた状態の部分切欠き正面図である。
【0021】
図2に示されるように、冷蔵庫100は、筐体101を備える。筐体101は、冷蔵室10を有する。冷蔵室10は、収容室の一例である。冷蔵室10は、開口している。詳細には、冷蔵室10は筐体101内で壁及び仕切りにより区画され、これにより、収容空間14が規定されている。収容空間14の前端は、前方に向かって開放された開口13(
図3参照)である。冷蔵室10では、収容空間14に収容された物体OBが0℃以上且つ常温よりも低い温度に冷却される。
図2には、2つの冷蔵室10が例示される。2つの冷蔵室10は、主冷蔵室11、及び、野菜室12である。冷蔵庫100が備える冷蔵室10は、複数に限られず、1つでもよい。
【0022】
冷蔵庫100は、冷凍室20を備えてもよい。冷凍室20は、典型的には壁又は仕切りにより内部の収容空間24が区画されて構成されている。冷凍室20では、収容空間24に収容された物体が0℃未満に冷却される。
図2には、3つの冷凍室20が例示される。3つの冷凍室20は、製氷室21、上冷凍室22、及び、下冷凍室23である。冷蔵庫100が備える冷凍室20は、複数に限られず、1つでもよい。
【0023】
冷蔵庫100は、
図2に示される冷蔵室10及び冷凍室20を備える構成に限られない。冷蔵庫100は、冷蔵室10のみを備えてもよく、冷凍室20のみを備えてもよい。
【0024】
冷蔵庫100は、
図2に示される家庭用の冷蔵庫100に限られず、業務用のショーケース(不図示)でもよい。業務用のショーケースは、例えば、収容空間に配置された冷蔵商品棚又は冷凍商品棚と、透明の扉とを備える。
【0025】
図3に示されるように、冷蔵庫100は、冷却部30と、扉40と、パッキン50と、ヒータ60と、制御部70とをさらに備える。冷却部30は、収容空間14を冷却する。扉40は、開口13を開閉する。
【0026】
パッキン50は、扉40が閉じられた時に主冷蔵室11の周縁部に密着する。周縁部は、主冷蔵室11の壁又は仕切りのうち開口13の周りに位置する部分である。パッキン50により、主冷蔵室11の周縁部と、扉40との間がシールされている。ヒータ60は、パッキン50を加熱し得るように設けられている。制御部70は、ヒータ60への入力電力を制御することにより、ヒータ60による加熱量を制御する。制御部70は、外気温が第1温度以上であれば、ヒータ60による加熱を停止状態とする。具体的に、ヒータ60が通電されて加熱中である場合は、ヒータ60への電力入力を停止し、加熱を停止する。一方、ヒータ60が実質的に通電されていない場合は、ヒータ60への電力入力を停止した状態を継続する。
【0027】
パッキン50は、例えば、ゴム若しくは樹脂等の高分子、又は、高分子組成物により構成することができる。
【0028】
したがって、結露が発生しにくい状況、すなわち、外気温が第1温度以上であれば、ヒータ60による加熱が停止状態にされる。結果として、冷蔵庫100は、ヒータ60による不必要な加熱を抑えることができる。ヒータ60による不必要な加熱が抑えられれば、消費するエネルギーを低減でき、且つ、パッキン50への熱によるダメージを低減できる。冷蔵庫100は、消費するエネルギーが低減されるので、高いエネルギー効率を有することができる。
【0029】
以下、
図3を参照して、冷蔵庫100の詳細について説明する。
【0030】
主冷蔵室11は、収容空間14に、棚15と、トレー16と、チルドケース17と、給水タンク18とを有する。
【0031】
冷却部30は、冷媒配管31と、圧縮部32と、凝縮部33と、膨張部34と、蒸発部35と、ファン36と、冷気通路37とを有する。
【0032】
冷媒配管31は、冷媒を案内する。冷媒配管31は、圧縮部32、凝縮部33、膨張部34及び蒸発部35を接続する。冷媒配管31によって、圧縮部32、凝縮部33、膨張部34及び蒸発部35に冷媒が循環する。
【0033】
圧縮部32は、蒸発部35からのガス冷媒を圧縮する。凝縮部33には、圧縮部32で圧縮されたガス冷媒を凝縮させる。その結果、冷媒が気体から液体に相変化する。膨張部34は、凝縮部33から流出した液冷媒を減圧する。蒸発部35は、膨張部34で減圧された液冷媒を蒸発させて気化することによりガス冷媒にする。
【0034】
ファン36は、蒸発部35に向かう流体の流れ(気流)を生成する。ファン36により生成された流体が蒸発部35を通過する過程で、流体と液冷媒との間で熱交換が行われる。その結果、流体が冷却され、冷気が生成される。
【0035】
冷気通路37は、蒸発部35からの冷気を、各冷蔵室10及び各冷凍室20の収容空間14及び収容空間24に案内する。
【0036】
扉40は、左右の両開き式である。したがって、扉40は、左扉41と、右扉42とを有する。左扉41は、主冷蔵室11の周縁部において開口13よりも左側の部分に回転可能に設けられる。右扉42は、同周縁部において開口13よりも右側の部分に回転可能に設けられる。左扉41及び右扉42は、収容空間14側にポケット45を有する。左扉41及び右扉42には、パッキン50が取り付けられている。パッキン50は、左扉41及び右扉42の収容空間14側に位置する。パッキン50は、例えば、冷蔵庫用のパッキンである。左扉41及び右扉42と、パッキン50との間にヒータ60が取り付けられている。ヒータ60は、例えば、電熱式のヒータ60である。電熱式のヒータ60は、通電によりパッキン50を加熱する。
【0037】
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)及びMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサーと、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の記憶部71(メモリ)とを含む。制御部70は、電熱式のヒータ60への通電量を制御する。
【0038】
以下、
図4を参照して、ヒータ60による加熱の制御について詳細に説明する。
図4は、外気温に対応するヒータ60への通電量を示すグラフである。
【0039】
図4に示される実線Wc及び破線Wtは、いずれも、外気温に対応するヒータへの通電量を示す。実線Wcは、ヒータ60への通電量を線形に制御する場合を示す。破線Wtは、ヒータ60への通電量を段階的に制御する場合を示す。破線Wtで示されるように、ヒータ60への通電量を段階的に制御する場合、冷蔵庫100は、外気温を常時検知する必要がない。したがって、冷蔵庫100は、外気温を断続的(例えば、1~2時間毎)に検知すれば足りるので、構成を簡素にすることができる。
【0040】
図4に示されるように、制御部70は、外気温が第1温度T1以上であれば、ヒータ60への通電量を0にする。すなわち、制御部70は、外気温が第1温度T1以上であれば、ヒータ60による加熱を停止状態にする。
【0041】
制御部70は、外気温が第2温度T2以上であれば、外気温が上昇するほどヒータ60への通電量を低下させる。第2温度T2は、第1温度T1よりも低い温度である。すなわち、制御部70は、外気温が第1温度T1よりも低い第2温度T2以上であれば、外気温が上昇するほどヒータ60による加熱強度を低下させる。
【0042】
したがって、外気温が第2温度T2以上、すなわち、外気温が上昇して第1温度T1に至る前に、ヒータ60による加熱が低下する。結果として、ヒータ60による不必要な加熱を一層抑えることができる。
【0043】
第2温度T2は、冷蔵庫100の設置地域に対応した温度である。このため、第2温度T2は、例えば、冷蔵庫100の設置地域に基づいて決定される。設置地域とは、例えば、住所、郵便番号、市区町村、都道府県、地方区分、群、省、州、又は、国によって定められる地域である。したがって、設置地域は、住所のように極めて狭い範囲の場合もあれば、国のように広い範囲の場合もある。設置地域は、気候区分によって定められてもよい。気候区分は、例えば、静気候学的区分、動気候学的区分、又は、経験論的区分である。経験論的区分は、例えば、ケッペン気候区分である。
【0044】
第2温度T2が冷蔵庫100の設置地域に対応した温度であることで、外気温が上昇して第1温度T1に至る前の適切な温度で、ヒータ60による加熱が低下する。結果として、冷蔵庫100は、ヒータ60による不必要な加熱を適切に抑えることができる。
【0045】
第2温度T2は、冷蔵庫100の設置地域における最高露点温度Tdに対応した温度である。第2温度T2は、特に、冷蔵庫100の設置地域における最高露点温度Td、又は、冷蔵庫100の設置地域における最高露点温度Td以上であることが好ましい。
【0046】
第2温度T2が冷蔵庫100の設置地域における最高露点温度Tdに対応した温度であることで、外気温が上昇して第1温度T1に至る前の一層適切な温度で、ヒータ60による加熱が低下する。結果として、冷蔵庫100は、ヒータ60による不必要な加熱を一層適切に抑えることができる。
【0047】
以下、
図5を参照して、外気温Taとパッキン50の温度との関係について説明する。
図5は、外気温Taとパッキン50の温度との関係を示すグラフである。
図5の実線Taは、外気温を示す。
図5の破線Tpkは、ヒータ60に加熱されない場合のパッキン50の温度を示す。
【0048】
以下、冷蔵庫100の収容空間14における温度を、庫内温度Trという。庫内温度Trは、例えば4℃である。
図5に示されるように、外気温Taが庫内温度Trの場合、パッキン50の温度Tpkも外気温Taと一致する。
【0049】
通常、外気温Taは、庫内温度Trよりも高い。外気温Taが高くなるほど、パッキン50の温度Tpkも高くなる。パッキン50の温度Tpkは、庫内温度Trの影響を受けるので、外気温Taよりも低い。特に、外気温Taと庫内温度Trとの差が大きいほど、パッキン50の温度Tpkは、庫内温度Trの影響を大きく受けるので、外気温Taとの差が大きくなる。
【0050】
図5に示されるように、第1温度T1は、ヒータ60に加熱されない場合のパッキン50の温度Tpkが、冷蔵庫100の設置地域における最高露点温度Tdとなる外気温の範囲内である。第1温度T1は、ヒータ60に加熱されない場合のパッキン50の温度Tpkが、冷蔵庫100の設置地域における最高露点温度Td以上となる外気温でもよい。
【0051】
図5に示されるように、横軸の外気温が第1温度T1以上であれば、パッキン50の温度Tpkが、冷蔵庫100の設置地域における最高露点温度Td以上となる。パッキン50の温度が最高露点温度以上の場合、パッキン50に結露が発生しない。したがって、外気温Taが第1温度T1以上の場合、ヒータ60による加熱を停止状態にしても、パッキン50に結露が発生しない。結果として、冷蔵庫100は、ヒータ60による不必要な加熱を抑えつつ、結露の発生を十分に防止することができる。
【0052】
以下、
図6を参照して、制御部70及び制御部70の周辺の構成を詳細に説明する。
図6は、制御部70及び制御部70の周辺の構成を示すブロック図である。
【0053】
冷蔵庫100は、通信部81と、入力部82と、外気温センサ83と、庫内温度センサ84とをさらに備える。制御部70は、通信部81、入力部82、外気温センサ83、庫内温度センサ84、ヒータ60、及び、冷却部30に電気的に接続される。制御部70は、記憶部71を有する。
【0054】
入力部82は、第1温度T1及び第2温度T2が入力される。入力部82は、制御部70、具体的には、記憶部71に第1温度T1及び第2温度T2を記憶させる。第1温度T1及び第2温度T2は、設置地域における最高露点温度Tdに基づいて算出する構成としてもよい。
【0055】
したがって、入力部82に適切な第1温度T1及び第2温度T2が入力されるので、冷蔵庫100は、ヒータ60による不必要な加熱を適切に抑えることができる。
【0056】
通信部81は、外部装置と、有線通信又は無線通信可能である。通信部81は、外部装置との間でデータを送受信する。外部装置は、例えば、サーバ90、パーソナルコンピュータ、又はスマートフォンである。通信部81は、例えば、ネットワークNを介して外部装置と相互に通信する。通信部81は、例えば、所定の通信プロトコルにしたがって通信を行うネットワークインターフェースコントローラー(NIC)を含み得る。ネットワークNは、例えば、インターネット、及びLAN(Local Area Network)を含む。また、通信部81は、例えば、無線通信モジュールを含み得る。
【0057】
外気温センサ83は、冷蔵庫100の周辺の外気温Taを検知する温度センサである。外気温センサ83は、冷蔵庫100の圧縮部32が作動する発熱時を避けて、外気温Taを断続的に検知してもよい。庫内温度センサ84は、庫内温度Trを検知する温度センサである。外気温センサ83及び庫内温度センサ84は、例えば、それぞれサーミスタである。
【0058】
サーバ90は、サーバ側通信部91と、サーバ側制御部97とを有する。サーバ側通信部91及びサーバ側制御部97は、冷蔵庫100の通信部81及び制御部70と同一の構成でもよい。
【0059】
サーバ90は、外部から、冷蔵庫100自身の情報と、冷蔵庫100の設置地域の情報とを受信する。サーバ90は、受信した情報に基づいて、第1温度T1及び第2温度T2を算出する。サーバ90で算出された第1温度T1及び第2温度T2は、サーバ90から冷蔵庫100に送信される。
【0060】
一般的に、ヒータ60に加熱されない場合のパッキン50の温度Tpkは、次の式(1)から算出される。ここで、αは、パッキン50に依存する係数である。
Tpk=Ta-α(Ta-Tr)・・・・・・・(1)
【0061】
式(1)に、ヒータ60に加熱されない場合のパッキン50の温度Tpkが設置地域における最高露点温度Tdとなる外気温Ta1と、第1温度T1とが等しいという条件を加える。条件が加えられた後の式は、式(2)~(4)となる。
Tpk=Ta1-α(Ta1-Tr)・・・・・(2)
Td=Tpk・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
T1=Ta1・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
【0062】
係数αは、冷蔵庫100自身の情報(例えば、型番)から、サーバ90により選定される。具体的に、係数αは、例えば0.1である。設置地域における最高露点温度Tdは、冷蔵庫100の設置地域の情報から、サーバ90により選定される。具体的に、設置地域における最高露点温度Tdは、例えば、設置地域が都市B(前述)であれば29℃、設置地域が都市Aであれば27℃、又は、設置地域が都市Cであれば25℃である。
【0063】
係数α及び設置地域における最高露点温度Tdは、サーバ90により選定される場合に限られず、ユーザの操作により直接入力されてもよい。係数αは、冷蔵庫100によって変化させず、一定の値(例えば、0.1)でもよい。
【0064】
以上より、サーバ90は、第1温度T1を算出する。また、サーバ90は、第2温度T2として、設置地域における最高露点温度Tdを採用する。第2温度T2は、設置地域における最高露点温度Td以上でもよい。但し、第2温度T2は、第1温度T1よりも低い。
【0065】
冷蔵庫100は、第1温度T1及び第2温度T2がサーバ90から送信される。そして、冷蔵庫100の制御部70は、外気温Taが第1温度T1以上であれば、ヒータ60による加熱を停止状態にする。また、冷蔵庫100の制御部70は、外気温Taが第2温度T2以上であれば、外気温Taが上昇するほどヒータ60による加熱強度を低下させる。
【0066】
ヒータ60を加熱するためのヒータ60への通電量Wcは、次の式(5)により決定される。ここで、βは、ヒータ60に依存する係数である。係数βは、例えば0.5[W/K]である。
Wc=β×最大値{最小値(Ta,Td)-Tpk,0}・・・・・(5)
【0067】
以下、冷蔵庫100の入力部82について詳細に説明する。
【0068】
入力部82は、ユーザの操作により、第1温度T1が入力される。例えば、ユーザの操作により、冷蔵庫100の設置地域の情報(例えば、郵便番号)がサーバ90に入力されると、サーバ90で第1温度T1が算出される。算出された第1温度T1は、入力部82に入力される。勿論、第1温度T1は、サーバ90を介することなく、ユーザの操作により、入力部82に直接入力されてもよい。
【0069】
ユーザの操作により第1温度T1及び第2温度T2が入力部82に入力されることで、ユーザの引越等により冷蔵庫100の設置地域が変更されても、冷蔵庫100の変更された後の設置地域に応じたヒータ60の制御が実行される。
【0070】
入力部82は、冷蔵庫100の製造時又は出荷時等に、初期設定として第1温度T1及び第2温度T2が入力されてもよい。初期設定される第1温度T1及び第2温度T2は、例えば、出荷される国における最高露点温度Tdが高い(好ましくは最も高い)地域で算出された第1温度T1及び第2温度T2とする。その後、出荷された国においてユーザの引越等により冷蔵庫100の設置地域が変更されても、ヒータ60による加熱が不足しない。結果として、冷蔵庫100は、出荷される国においてユーザの引越等により設置地域が変更されても、結露の発生を防止することができる。
【0071】
初期設定として第1温度T1及び第2温度T2が入力部82に入力されることで、ユーザが設定しなくても、初期設定に応じたヒータ60の制御が実行される。勿論、入力部82は、第1温度T1及び第2温度T2が初期設定されつつも、ユーザの操作により新たな第1温度T1及び第2温度T2が入力(上書き)されてもよい。
【0072】
入力部82は、ユーザ以外の人の操作により、第1温度T1及び第2温度T2が入力されてもよい。例えば、ユーザ以外の人として、冷蔵庫100を修理している担当者が挙げられる。冷蔵庫100を修理している担当者は、入力部82の第1温度T1及び第2温度T2が適切でなければ、適切な第1温度T1を入力部82に入力(上書き)する。
【0073】
ユーザ以外の人の操作により第1温度T1及び第2温度T2が入力部82に入力されることで、冷蔵庫100の設置地域に応じたヒータ60の制御が実行される。
【0074】
以下、
図7を参照して、冷蔵庫100の動作について説明する。
図7は、冷蔵庫100の動作を示すフローチャートである。
【0075】
図7に示されるように、ステップS1において、外気温センサ83は、外気温Taを検知する。ステップS2において、記憶部71は、第1温度T1及び第2温度T2を読み込む。
【0076】
ステップS3において、制御部70は、外気温Taが第1温度T1以上か否かを判定する。外気温Taが第1温度T1以上と判定されたら(ステップS3でYes)、ステップS4に移行して、ヒータ60による加熱を停止する。外気温Taが第1温度T1未満と判定されたら(ステップS3でNo)、ステップS5に移行して、ヒータ60の通電量Wcが計算される。その後、ステップS6において、計算された通電量Wcでヒータ60による加熱がされる。ステップS4又はステップS6の後は、再びステップS1に戻る。
【0077】
次に、図示されないが、ステップS2で読み込まれた第2温度T2に基づいて、ヒータ60による加熱強度を制御してもよい。具体的には、外気温Taが第2温度T2以上か否かを判定する。外気温Taが第2温度T2以上と判定されたら、外気温Taが上昇するほどヒータ60による加熱強度を低下させる。外気温Taが第2温度T2未満と判定されたら、外気温Taが上昇するほどヒータ60による加熱強度を上昇させる。
【0078】
以上、図面を参照しながら本開示の実施形態を説明した。但し、本開示は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本開示の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0079】
(1)実施形態では、第1温度T1及び第2温度T2が、サーバ90で算出される例について説明した。実施形態での第1温度T1及び第2温度T2は、例えば、冷蔵庫100の制御部70で算出されてもよい。
【0080】
(2)実施形態では、入力部82が、第1温度T1及び第2温度T2が入力される例について説明した。実施形態での入力部82は、例えば、第1温度T1、又は、第2温度T2が入力されてもよい。
【0081】
(3)実施形態では、式(2)~(4)から第1温度T1が算出される例について説明した。第1温度T1は、例えば、式(2)~(4)から直接算出されてもよく、式(2)~(4)を元にしたテーブルから選出されてもよい。
【0082】
(4)実施形態では、外気温Taが第1温度T1以上であれば、ヒータ60による加熱を停止状態にすると説明した。ヒータ60による加熱を停止は、例えば、直ちに実行してもよく、一定時間経過後に実行してもよい。
【0083】
(5)実施形態では湿度センサについて記載しなかった。冷蔵庫100は、湿度センサを備えてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 冷蔵室
11 主冷蔵室
13 開口
14 収容空間
20 冷凍室
30 冷却部
40 扉
50 パッキン
60 ヒータ
70 制御部
81 通信部
82 入力部
90 サーバ
100 冷蔵庫