(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115840
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/70 20230101AFI20240820BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240820BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20240820BHJP
H10K 50/84 20230101ALI20240820BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240820BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H10K71/70
H10K59/10
H10K50/844
H10K50/84
G09F9/00 338
G09F9/30 365
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021708
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 加一
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD89
3K107EE46
3K107GG28
3K107GG56
5C094AA43
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA07
5C094HA05
5C094HA08
5G435AA17
5G435BB05
5G435CC09
5G435KK05
5G435LL04
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】 歩留まりを改善することが可能な表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 一実施形態に係る製造方法は、それぞれ異なる色の光を放つ第1表示素子、第2表示素子および第3表示素子を含む表示装置を製造するための方法であって、基板を用意し、前記基板に前記第1表示素子を形成し、前記第2表示素子および前記第3表示素子を形成する前に、前記第1表示素子を点灯させる第1点灯検査を実施する、ことを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる色の光を放つ第1表示素子、第2表示素子および第3表示素子を含む表示装置の製造方法であって、
基板を用意し、
前記基板に前記第1表示素子を形成し、
前記第2表示素子および前記第3表示素子を形成する前に、前記第1表示素子を点灯させる第1点灯検査を実施する、
ことを含む表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1表示素子の形成は、
前記基板に配置された第1下電極を覆い電圧の印加に応じて発光する第1有機層と、前記第1有機層を覆う第1上電極とを含む第1積層膜を形成し、
前記第1積層膜を覆う第1封止層を形成する、
ことを含む請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1積層膜および前記第1封止層を形成する前に、下部と、前記下部の側面から突出した端部を有する上部とを備える隔壁を形成することをさらに含み、
前記第1積層膜は、前記隔壁によって囲われた領域に形成され、
前記第1封止層は、前記第1積層膜および前記隔壁を連続的に覆う、
請求項2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1点灯検査は、大気中で実施される、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1点灯検査で異常が検出された場合に、前記第2表示素子および前記第3表示素子を形成することなく前記表示装置の製造を停止する、
ことをさらに含む請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1点灯検査で異常が検出された場合に、前記第1表示素子を除去し、
前記第1表示素子が除去された前記基板に対し、前記第1表示素子を再度形成する、
ことをさらに含む請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1点灯検査の後に、前記基板に前記第2表示素子を形成し、
前記第3表示素子を形成する前に、前記第2表示素子を点灯させる第2点灯検査を実施する、
ことをさらに含む請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2点灯検査は、大気中で実施される、
請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2点灯検査で異常が検出された場合に、前記第3表示素子を形成することなく前記表示装置の製造を停止する、
ことをさらに含む請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2点灯検査で異常が検出された場合に、前記第2表示素子を除去し、
前記第2表示素子が除去された前記基板に対し、前記第2表示素子を再度形成する、
ことをさらに含む請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記第2点灯検査の後に、前記基板に前記第3表示素子を形成し、
前記第3表示素子を点灯させる第3点灯検査を実施する、
ことをさらに含む請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記第3点灯検査で異常が検出された場合に、前記表示装置の製造を停止する、
ことをさらに含む請求項11に記載の表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記第3点灯検査で異常が検出された場合に、前記第3表示素子を除去し、
前記第3表示素子が除去された前記基板に対し、前記第3表示素子を再度形成する、
ことをさらに含む請求項11に記載の表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記第3点灯検査は、大気中で実施される、
請求項11に記載の表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1表示素子、前記第2表示素子および前記第3表示素子を覆う樹脂層を形成し、
前記樹脂層を形成した後に、前記第1表示素子、前記第2表示素子および前記第3表示素子を点灯させる第4点灯検査を実施する、
ことをさらに含む請求項11に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極とを備えている。
【0003】
通常、表示装置の製造にあたっては、異なる色の複数種類の表示素子が全て形成された後に各表示素子の点灯検査が実施される。この場合において、点灯検査でいずれかの色の表示素子に異常が検出されると、そこまでの製造工程を終えた基板が無駄になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、歩留まりを改善することが可能な表示装置の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る製造方法は、それぞれ異なる色の光を放つ第1表示素子、第2表示素子および第3表示素子を含む表示装置を製造するための方法であって、基板を用意し、前記基板に前記第1表示素子を形成し、前記第2表示素子および前記第3表示素子を形成する前に、前記第1表示素子を点灯させる第1点灯検査を実施する、ことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る表示装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、副画素のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う表示パネルの概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るマザー基板の概略的な平面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る製造設備の一部の構成を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る表示装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る表示装置の製造方法の一工程を示す図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態に係る表示装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。第3方向Zは、第1方向Xと第2方向Yを含む平面に対して法線方向である。また、第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0010】
各実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末、ウェアラブル端末等の各種の電子機器に搭載され得る。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る表示装置DSPの構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基板10を含む表示パネルPNLを備えている。表示パネルPNLは、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAとを有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0012】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限られず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0013】
表示領域DAは、第1方向Xおよび第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、青色の副画素SP1、緑色の副画素SP2および赤色の副画素SP3を含む。なお、画素PXは、副画素SP1,SP2,SP3とともに、あるいは副画素SP1,SP2,SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0014】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子DEとを備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4とを備えている。画素スイッチ2および駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0015】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極およびドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極およびキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極およびドレイン電極の一方は電源線PLおよびキャパシタ4に接続され、他方は表示素子DEに接続されている。
【0016】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限られない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタおよびキャパシタを備えてもよい。
【0017】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。
図2の例においては、副画素SP2,SP3がそれぞれ副画素SP1と第1方向Xに並んでいる。さらに、副画素SP2と副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。
【0018】
副画素SP1,SP2,SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2,SP3が第2方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP1が第2方向Yに繰り返し配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。なお、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトは
図2の例に限られない。
【0019】
表示領域DAには、リブ5が配置されている。リブ5は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ画素開口AP1,AP2,AP3(第1乃至第3画素開口)を有している。
図2の例においては、画素開口AP1が画素開口AP2よりも大きく、画素開口AP2が画素開口AP3よりも大きい。
【0020】
副画素SP1は、画素開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1(第1下電極)、上電極UE1(第1上電極)および有機層OR1(第1有機層)を備えている。副画素SP2は、画素開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2(第2下電極)、上電極UE2(第2上電極)および有機層OR2(第2有機層)を備えている。副画素SP3は、画素開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3(第3下電極)、上電極UE3(第3上電極)および有機層OR3(第3有機層)を備えている。
【0021】
下電極LE1、上電極UE1および有機層OR1のうち画素開口AP1と重なる部分は、副画素SP1の表示素子DE1(第1表示素子)を構成する。下電極LE2、上電極UE2および有機層OR2のうち画素開口AP2と重なる部分は、副画素SP2の表示素子DE2(第2表示素子)を構成する。下電極LE3、上電極UE3および有機層OR3のうち画素開口AP3と重なる部分は、副画素SP3の表示素子DE3(第3表示素子)を構成する。表示素子DE1,DE2,DE3は、後述するキャップ層や封止層をさらに含んでもよい。リブ5は、これら表示素子DE1,DE2,DE3の各々を囲っている。
【0022】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1の画素回路1(
図1参照)に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2の画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3の画素回路1に接続されている。
【0023】
リブ5の上には、隔壁6が配置されている。隔壁6は、全体的にリブ5と重なっており、リブ5と同様の平面形状を有している。すなわち、隔壁6は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ開口を有している。他の観点からいうと、リブ5および隔壁6は、表示素子DE1,DE2,DE3の間に配置されており、平面視において格子状である。
【0024】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う表示パネルPNLの概略的な断面図である。上述の基板10の上に回路層11が配置されている。回路層11は、
図1に示した画素回路1、走査線GL、信号線SLおよび電源線PLなどの各種回路や配線を含む。
【0025】
回路層11は、有機絶縁層12により覆われている。有機絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。
図3の断面には表れていないが、上述のコンタクトホールCH1,CH2,CH3は有機絶縁層12に設けられている。
【0026】
下電極LE1,LE2,LE3は、有機絶縁層12の上に配置されている。リブ5は、有機絶縁層12および下電極LE1,LE2,LE3の上に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3の端部は、リブ5により覆われている。
【0027】
隔壁6は、リブ5の上に配置された導電性を有する下部61と、下部61の上に配置された上部62とを含む。上部62は、下部61よりも大きい幅を有している。これにより、上部62の両端部が下部61の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0028】
有機層OR1は、画素開口AP1を通じて下電極LE1を覆っている。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下電極LE1と対向している。有機層OR2は、画素開口AP2を通じて下電極LE2を覆っている。上電極UE2は、有機層OR2を覆い、下電極LE2と対向している。有機層OR3は、画素開口AP3を通じて下電極LE3を覆っている。上電極UE3は、有機層OR3を覆い、下電極LE3と対向している。上電極UE1,UE2,UE3は、隔壁6の下部61の側面に接触している。
【0029】
表示素子DE1は、上電極UE1の上に配置されたキャップ層CP1(第1キャップ層)を含む。表示素子DE2は、上電極UE2の上に配置されたキャップ層CP2(第2キャップ層)を含む。表示素子DE3は、上電極UE3の上に配置されたキャップ層CP3(第3キャップ層)を含む。キャップ層CP1,CP2,CP3は、それぞれ有機層OR1,OR2,OR3が発する光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。
【0030】
以下の説明においては、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1を含む多層体を積層膜FL1(第1積層膜)と呼び、有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2を含む多層体を積層膜FL2(第2積層膜)と呼び、有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3を含む多層体を積層膜FL3(第3積層膜)と呼ぶ。
【0031】
積層膜FL1の一部は、上部62の上に位置している。当該一部は、積層膜FL1のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE1を構成する部分)と離間している。同様に、積層膜FL2の一部は上部62の上に位置し、当該一部は積層膜FL2のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE2を構成する部分)と離間している。さらに、積層膜FL3の一部は上部62の上に位置し、当該一部は積層膜FL3のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE3を構成する部分)と離間している。
【0032】
表示素子DE1は、封止層SE1(第1封止層)を含む。表示素子DE2は、封止層SE2(第2封止層)を含む。表示素子DE3は、封止層SE3(第3封止層)を含む。封止層SE1は、積層膜FL1や副画素SP1の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE2は、積層膜FL2や副画素SP2の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE3は、積層膜FL3や副画素SP3の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。
【0033】
図3の例においては、副画素SP1,SP2の間の隔壁6上の積層膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の積層膜FL2および封止層SE2と離間している。また、副画素SP1,SP3の間の隔壁6上の積層膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の積層膜FL3および封止層SE3と離間している。
【0034】
封止層SE1,SE2,SE3は、樹脂層13により覆われている。樹脂層13は、封止層14により覆われている。封止層14は、樹脂層15により覆われている。樹脂層13,15および封止層14は、少なくとも表示領域DAの全体に連続的に設けられ、その一部が周辺領域SAにも及んでいる。
【0035】
偏光板、タッチパネル、保護フィルムまたはカバーガラスなどのカバー部材が樹脂層15の上方にさらに配置されてもよい。このようなカバー部材は、例えばOCA(Optical Clear Adhesive)などの接着層を介して樹脂層15に接着されてもよい。
【0036】
有機絶縁層12は、ポリイミドなどの有機絶縁材料で形成されている。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3は、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)または酸化アルミニウム(Al2O3)などの無機絶縁材料で形成されている。一例では、リブ5がシリコン酸窒化物で形成され、封止層14,SE1,SE2,SE3がシリコン窒化物で形成されている。樹脂層13,15は、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料(有機絶縁材料)で形成されている。
【0037】
下電極LE1,LE2,LE3は、例えば銀(Ag)で形成された反射層と、この反射層の上面および下面をそれぞれ覆う一対の導電性酸化物層とを有している。各導電性酸化物層は、例えばITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)またはIGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)などの透明な導電性酸化物で形成することができる。
【0038】
上電極UE1,UE2,UE3は、例えばマグネシウムと銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。例えば、下電極LE1,LE2,LE3はアノードに相当し、上電極UE1,UE2,UE3はカソードに相当する。
【0039】
有機層OR1,OR2,OR3は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層および電子注入層の積層構造を有している。有機層OR1,OR2,OR3は、複数の発光層を含むいわゆるタンデム構造を有してもよい。
【0040】
キャップ層CP1,CP2,CP3は、例えば透明な複数の薄膜が重ねられた積層構造を有している。当該複数の薄膜は、無機材料によって形成された薄膜および有機材料によって形成された薄膜を含んでもよい。また、当該複数の薄膜は、互いに異なる屈折率を有している。例えば、これら薄膜の屈折率は、上電極UE1,UE2,UE3の屈折率および封止層SE1,SE2,SE3の屈折率と異なる。なお、キャップ層CP1,CP2,CP3の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0041】
隔壁6の下部61は、例えばアルミニウムによって形成されている。下部61は、アルミニウム-ネオジム合金(AlNd)、アルミニウム-イットリウム合金(AlY)およびアルミニウム-シリコン合金(AlSi)などのアルミニウム合金によって形成されてもよいし、アルミニウム層とアルミニウム合金層の積層構造を有してもよい。さらに、下部61は、アルミニウム層またはアルミニウム合金層の下に、アルミニウムやアルミニウム合金とは異なる金属材料で形成されたボトム層を有してもよい。このようなボトム層を形成する金属材料としては、例えばモリブデン(Mo)、窒化チタン(TiN)、モリブデン-タングステン合金(MoW)またはモリブデン-ニオブ合金(MoNb)を用いることができる。
【0042】
例えば、隔壁6の上部62は、金属材料で形成された下層と、導電性酸化物で形成された上層との積層構造を有している。下層を形成する金属材料としては、例えばチタン、窒化チタン、モリブデン、タングステン、モリブデン-タングステン合金またはモリブデン-ニオブ合金を用いることができる。上層を形成する導電性酸化物としては、例えばITOまたはIZOを用いることができる。なお、上部62は、金属材料の単層構造を有してもよい。
【0043】
隔壁6には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、下部61の側面に接触した上電極UE1,UE2,UE3にそれぞれ供給される。下電極LE1,LE2,LE3には、副画素SP1,SP2,SP3がそれぞれ有する画素回路1を通じて画素電圧が供給される。
【0044】
有機層OR1,OR2,OR3は、電圧の印加に応じて発光する。具体的には、下電極LE1と上電極UE1の間に電位差が形成されると、有機層OR1の発光層が青色の波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2の間に電位差が形成されると、有機層OR2の発光層が緑色の波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3の間に電位差が形成されると、有機層OR3の発光層が赤色の波長域の光を放つ。
【0045】
他の例として、有機層OR1,OR2,OR3の発光層が同一色(例えば白色)の光を放ってもよい。この場合において、表示装置DSPは、発光層が放つ光を副画素SP1,SP2,SP3に対応する色の光に変換するカラーフィルタを備えてもよい。また、表示装置DSPは、発光層が放つ光により励起して副画素SP1,SP2,SP3に応じた色の光を生成する量子ドットを含んだ層を備えてもよい。
【0046】
表示装置DSPの製造時には、それぞれ表示パネルPNLに相当する複数の領域(パネル部)が形成された大型のマザー基板が作製される。このマザー基板に適用し得る構成について以下に説明する。
【0047】
図4は、本実施形態に係るマザー基板MB(表示装置用マザー基板)の概略的な平面図である。マザー基板MBは、ベースとなる絶縁性の基板10aを備えている。
図4の例においては、基板10aが矩形状であるが、この例に限られない。
【0048】
基板10aは、マトリクス状に配置された複数のパネル部PPを有している。各パネル部PPの外形は、マザー基板MBからパネル部PPを切り出すためのカットラインに相当する。各パネル部PPは、上述の表示領域DAおよび周辺領域SAを有している。
【0049】
続いて、マザー基板MBおよび表示装置DSPの製造設備および製造方法について説明する。本実施形態においては、表示素子DE1が最初に形成され、表示素子DE2が次に形成され、表示素子DE3が最後に形成される場合を想定する。ただし、表示素子DE1,DE2,DE3の形成順はこの例に限られない。
【0050】
図5は、製造設備の一部の構成を概略的に示す図である。この製造設備は、製造ラインML1,ML2,ML3,ML4と、検査装置7とを備えている。製造ラインML1は、積層膜FL1および封止層SE1を形成する。製造ラインML2は、積層膜FL2および封止層SE2を形成する。製造ラインML3は、積層膜FL3および封止層SE3を形成する。製造ラインML4は、樹脂層13、封止層14および樹脂層15を形成する。製造ラインML1,ML2,ML3,ML4は、各種要素を形成するための複数の蒸着装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置などをそれぞれ含む。また、これら蒸着装置やCVD装置などは、真空に維持されたチャンバを含む。
【0051】
図中の破線矢印は、マザー基板MBの搬送経路を示している。すなわち、マザー基板MBは、製造ラインML1,ML2,ML3,ML4を順に搬送される。なお、
図5においては、製造ラインML1の前の工程を行う製造ラインや、製造ラインML4の後の工程を行う製造ラインを省略している。
【0052】
検査装置7は、マザー基板MBに形成された表示素子DE1,DE2,DE3の点灯検査を行う。
図5の例において、検査装置7は、コントローラ70と、カメラ71,72,73,74とを備えている。カメラ71は、製造ラインML1を経たマザー基板MBを撮影する。カメラ72は、製造ラインML2を経たマザー基板MBを撮影する。カメラ73は、製造ラインML3を経たマザー基板MBを撮影する。カメラ74は、製造ラインML4を経たマザー基板MBを撮影する。カメラ71,72,73,74が撮影する画像は、カラー画像であってもよいし、モノクロ画像であってもよい。
【0053】
コントローラ70は、表示素子DE1,DE2,DE3の少なくとも1つが点灯した状態のマザー基板MBをカメラ71,72,73,74に撮影させる。さらに、コントローラ70は、カメラ71,72,73,74が撮影した画像に基づき点灯異常を検出する。
【0054】
なお、検査装置7が備えるカメラの数は4つに限られない。例えば、検査装置7は、1つのカメラを備えてもよい。この場合において、製造ラインML1,ML2,ML3,ML4を経たマザー基板MBがそれぞれ当該カメラの撮影位置に搬送されるようにマザー基板MBの搬送経路が設定されてもよい。
【0055】
図6は、表示装置DSPの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図7乃至
図17は、当該製造方法の一工程を示す図である。表示装置DSPの製造においては、先ず複数のパネル部PPに相当する領域を含む大型の基板10aが用意される(工程PR1)。次に、基板10aの上に回路層11および有機絶縁層12が形成される(工程PR2)。
【0056】
工程PR2の後、下電極LE1,LE2,LE3が形成される(工程PR3)。さらに、リブ5および隔壁6が形成される(工程PR4)。工程PR4の流れは、
図7および
図8に示すとおりである。
【0057】
すなわち、先ず
図7に示すように、リブ5に加工するための無機絶縁層100がマザー基板MBの全体に形成される。さらに、下部61に加工するための第1層101が無機絶縁層100の上に形成され、上部62に加工するための第2層102が第1層101の上に形成される。
【0058】
続いて、
図8に示すように、第1層101および第2層102がパターニングされる。このパターニングは、第2層102を上部62の形状に加工するエッチングと、第1層101を下部61の形状に加工するエッチングとを含む。これらのエッチングにより、下部61および上部62を含む隔壁6が表示領域DAに形成される。
【0059】
隔壁6の形成の後、
図8に示すように、無機絶縁層100に画素開口AP1,AP2,AP3が形成される。これにより、表示領域DAにおいてリブ5が形成される。なお、
図7および
図8においては、隔壁6が形成された後に画素開口AP1,AP2,AP3が形成される場合を示した。他の例として、画素開口AP1,AP2,AP3が形成された後に隔壁6が形成されてもよい。
【0060】
リブ5および隔壁6の形成の後、マザー基板MBが製造ラインML1に搬送され、表示素子DE1を形成するための工程が実施される。表示素子DE1の形成にあたっては、先ず
図9に示すように、積層膜FL1および封止層SE1が形成される(工程PR5)。積層膜FL1は、
図3に示したように、画素開口AP1を通じて下電極LE1に接触する有機層OR1、有機層OR1を覆う上電極UE1、および、上電極UE1を覆うキャップ層CP1を含む。有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1は、蒸着によって形成される。また、封止層SE1は、CVDによって形成される。
【0061】
積層膜FL1は、オーバーハング状の隔壁6によって複数の部分に分断される。積層膜FL1は、画素開口AP1,AP2,AP3を通じて露出した下電極LE1,LE2,LE3、リブ5および隔壁6を覆う。封止層SE1は、積層膜FL1の分割された各部分および隔壁6を連続的に覆う。
【0062】
工程PR5の後、積層膜FL1および封止層SE1がパターニングされる(工程PR6)。このパターニングにおいては、
図9に示すように、封止層SE1の上にレジストR1が配置される。レジストR1は、副画素SP1とその周囲の隔壁6の一部を覆っている。
【0063】
その後、レジストR1をマスクとしたエッチングにより、
図10に示すように積層膜FL1および封止層SE1のうちレジストR1から露出した部分が除去される。言い換えると、積層膜FL1および封止層SE1のうち、下電極LE1と重なる部分が残され、他の部分が除去される。これにより、副画素SP1に表示素子DE1が形成される。例えば、当該エッチングは、封止層SE1、キャップ層CP1、上電極UE1および有機層OR1に対して順に実施されるドライエッチングやウェットエッチングを含む。当該エッチングの後、レジストR1が除去される。
【0064】
このような工程PR6を経たマザー基板MBの各パネル部PPにおいては、副画素SP1に表示素子DE1が形成され、副画素SP2,SP3には表示素子DE2,DE3が形成されていない。各表示素子DE1においては、下電極LE1の端部と重なる隔壁6で囲われた領域に積層膜FL1が形成されている。さらに、封止層SE1が積層膜FL1とその周囲の隔壁6を連続的に覆っている。
【0065】
工程PR6の後、検査装置7による第1点灯検査が実施される(工程PR7)。第1点灯検査を実施するにあたっては、製造ラインML1を経たマザー基板MBが大気中に配置される。さらに、マザー基板MBに設けられた検査用の端子と検査装置7とが電気的に接続される。
【0066】
図11は、第1点灯検査の一例を示す平面図であり、表示領域DAの一部を示している。
図11に示す斜線部は、第1点灯検査において点灯する領域を示している。すなわち、検査装置7のコントローラ70は、表示領域DAに含まれる全ての表示素子DE1を同時に点灯させる。さらに、コントローラ70は、表示素子DE1が点灯した状態の表示領域DAをカメラ71に撮影させる。
【0067】
その後、コントローラ70は、カメラ71が撮影した画像に基づき、予め定められた複数の検査項目について異常の有無を判定する。例えば、検査項目としては、表示領域DA全体における輝度ムラの有無、各表示素子DE1の輝度や色度の異常、表示領域DAにおける画素欠陥および線欠陥の有無などが挙げられる。画素欠陥とは、常に点灯しないか周囲よりも常に高輝度で点灯する表示素子(第1点灯検査においては表示素子DE1)が存在することを意味する。線欠陥とは、直線状に並ぶ複数の表示素子(第1点灯検査においては表示素子DE1)に表示不良が生じることを意味する。
【0068】
各検査項目について異常と判定すべき条件は、予め設定されてコントローラ70のメモリに保存されている。例えば画素欠陥に関する条件としては、画像中の表示領域DAに含まれる欠陥を生じた画素の数とそれぞれ比較すべき閾値を用いることができる。他の検査項目についても同様に、画像から得られる数値と比較すべき閾値を異常判定の条件として定めればよい。
【0069】
第1点灯検査は、マザー基板MBが有する全てのパネル部PPを対象として同時に実施されてもよい。他の例として、第1点灯検査は、マザー基板MBが有する複数のパネル部PPをいくつかのグループに分け、これらグループ毎に実施されてもよい。
【0070】
第1点灯検査においていずれかの検査項目につき異常が検出された場合(工程PR7のNG)、製造設備が停止される(工程PR21)。例えば、異常が検出されたマザー基板MBは、その後の工程を経ることなく廃棄される。また、製造ラインML1に含まれる各チャンバの一部または全ての清掃が実施される。
【0071】
第1点灯検査において各検査項目につき異常が検出されなかった場合(工程PR7のOK)、マザー基板MBが製造ラインML2に搬送され、表示素子DE2を形成するための工程が実施される。
【0072】
表示素子DE2は、表示素子DE1と同様の手順で形成される。すなわち、表示素子DE2の形成にあたっては、先ず
図12に示すように、積層膜FL2および封止層SE2が形成される(工程PR8)。積層膜FL2は、
図3に示したように、画素開口AP2を通じて下電極LE2に接触する有機層OR2、有機層OR2を覆う上電極UE2、および、上電極UE2を覆うキャップ層CP2を含む。有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2は、蒸着によって形成される。また、封止層SE2は、CVDによって形成される。積層膜FL2は、オーバーハング状の隔壁6によって複数の部分に分断される。封止層SE2は、積層膜FL2の分割された各部分および隔壁6を連続的に覆う。
【0073】
工程PR8の後、積層膜FL2および封止層SE2がパターニングされる(工程PR9)。このパターニングにおいては、
図12に示すように、封止層SE2の上にレジストR2が配置される。レジストR2は、副画素SP2とその周囲の隔壁6の一部を覆っている。
【0074】
その後、レジストR2をマスクとしたエッチングにより、
図13に示すように積層膜FL2および封止層SE2のうちレジストR2から露出した部分が除去される。これにより、副画素SP2に表示素子DE2が形成される。
【0075】
工程PR9の後、検査装置7による第2点灯検査が実施される(工程PR10)。第2点灯検査を実施するにあたっては、製造ラインML2を経たマザー基板MBが大気中に配置される。さらに、マザー基板MBに設けられた検査用の端子と検査装置7とが電気的に接続される。
【0076】
図14は、第2点灯検査の一例を示す平面図であり、表示領域DAの一部を示している。
図14に示す斜線部は、第2点灯検査において点灯する領域を示している。すなわち、検査装置7のコントローラ70は、
図14(a)に示すように表示領域DAに含まれる全ての表示素子DE1を同時に点灯させるとともに、表示素子DE1が点灯した状態の表示領域DAをカメラ72に撮影させる。
【0077】
次に、コントローラ70は、
図14(b)に示すように表示領域DAに含まれる全ての表示素子DE2を同時に点灯させるとともに、表示素子DE2が点灯した状態の表示領域DAをカメラ72に撮影させる。
【0078】
さらに、コントローラ70は、
図14(c)に示すように表示領域DAに含まれる全ての表示素子DE1と全ての表示素子DE2を同時に点灯させるとともに、表示素子DE1,DE2が点灯した状態の表示領域DAをカメラ72に撮影させる。
【0079】
その後、コントローラ70は、カメラ72が撮影した各画像に基づき、予め定められた複数の検査項目について異常の有無を判定する。第2点灯検査の検査項目は、例えば第1点灯検査と同様である。
図14(a)(b)(c)にてそれぞれ得られる画像に対し、異なる検査項目や異常と判定すべき条件が定められてもよい。
【0080】
第2点灯検査は、マザー基板MBが有する全てのパネル部PPを対象として同時に実施されてもよい。他の例として、第2点灯検査は、マザー基板MBが有する複数のパネル部PPをいくつかのグループに分け、これらグループ毎に実施されてもよい。
【0081】
第2点灯検査においていずれかの検査項目につき異常が検出された場合(工程PR10のNG)、製造設備が停止される(工程PR22)。例えば、異常が検出されたマザー基板MBは、その後の工程を経ることなく廃棄される。また、製造ラインML2に含まれる各チャンバの一部または全ての清掃が実施される。
【0082】
第2点灯検査において各検査項目につき異常が検出されなかった場合(工程PR10のOK)、マザー基板MBが製造ラインML3に搬送され、表示素子DE3を形成するための工程が実施される。
【0083】
表示素子DE3は、表示素子DE1,DE2と同様の手順で形成される。すなわち、表示素子DE3の形成にあたっては、先ず
図15に示すように、積層膜FL3および封止層SE3が形成される(工程PR11)。積層膜FL3は、
図3に示したように、画素開口AP3を通じて下電極LE3に接触する有機層OR3、有機層OR3を覆う上電極UE3、および、上電極UE3を覆うキャップ層CP3を含む。有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3は、蒸着によって形成される。また、封止層SE3は、CVDによって形成される。積層膜FL3は、オーバーハング状の隔壁6によって複数の部分に分断される。封止層SE3は、積層膜FL3の分割された各部分および隔壁6を連続的に覆う。
【0084】
工程PR11の後、積層膜FL3および封止層SE3がパターニングされる(工程PR12)。このパターニングにおいては、
図15に示すように、封止層SE3の上にレジストR3が配置される。レジストR3は、副画素SP3とその周囲の隔壁6の一部を覆っている。
【0085】
その後、レジストR3をマスクとしたエッチングにより、
図16に示すように積層膜FL3および封止層SE3のうちレジストR3から露出した部分が除去される。これにより、副画素SP3に表示素子DE3が形成される。
【0086】
工程PR12の後、検査装置7による第3点灯検査が実施される(工程PR13)。第3点灯検査を実施するにあたっては、製造ラインML3を経たマザー基板MBが大気中に配置される。さらに、マザー基板MBに設けられた検査用の端子と検査装置7とが電気的に接続される。
【0087】
図17は、第3点灯検査の一例を示す平面図であり、表示領域DAの一部を示している。
図17に示す斜線部は、第3点灯検査において点灯する領域を示している。すなわち、検査装置7のコントローラ70は、
図17(a)に示すように表示領域DAに含まれる全ての表示素子DE1を同時に点灯させるとともに、表示素子DE1が点灯した状態の表示領域DAをカメラ73に撮影させる。
【0088】
次に、コントローラ70は、
図17(b)に示すように表示領域DAに含まれる全ての表示素子DE2を同時に点灯させるとともに、表示素子DE2が点灯した状態の表示領域DAをカメラ73に撮影させる。
【0089】
次に、コントローラ70は、
図17(c)に示すように表示領域DAに含まれる全ての表示素子DE3を同時に点灯させるとともに、表示素子DE3が点灯した状態の表示領域DAをカメラ73に撮影させる。
【0090】
さらに、コントローラ70は、
図17(d)に示すように表示領域DAに含まれる全ての表示素子DE1,DE2,DE3を同時に点灯させるとともに、表示素子DE1,DE2,DE3が点灯した状態の表示領域DAをカメラ73に撮影させる。
【0091】
その後、コントローラ70は、カメラ73が撮影した各画像に基づき、予め定められた複数の検査項目について異常の有無を判定する。第3点灯検査の検査項目は、例えば第1および第2点灯検査と同様である。
図17(a)(b)(c)(d)にてそれぞれ得られる画像に対し、異なる検査項目や異常と判定すべき条件が定められてもよい。
【0092】
第3点灯検査は、マザー基板MBが有する全てのパネル部PPを対象として同時に実施されてもよい。他の例として、第3点灯検査は、マザー基板MBが有する複数のパネル部PPをいくつかのグループに分け、これらグループ毎に実施されてもよい。
【0093】
第3点灯検査においていずれかの検査項目につき異常が検出された場合(工程PR13のNG)、製造設備が停止される(工程PR23)。例えば、異常が検出されたマザー基板MBは、その後の工程を経ることなく廃棄される。また、製造ラインML3に含まれる各チャンバの一部または全ての清掃が実施される。
【0094】
第3点灯検査において各検査項目につき異常が検出されなかった場合(工程PR13のOK)、マザー基板MBが製造ラインML4に搬送され、
図3に示した樹脂層13、封止層14および樹脂層15が順に形成される(工程PR14)。さらに、製造ラインML4を経たマザー基板MBが大気中に配置され、第4点灯検査が実施される(工程PR15)。
【0095】
第4点灯検査の流れは、例えば
図17に示した第3点灯検査と同様である。第4点灯検査においていずれかの検査項目につき異常が検出された場合(工程PR15のNG)、製造設備が停止される(工程PR24)。例えば、異常が検出されたマザー基板MBは、その後の工程を経ることなく廃棄される。また、製造ラインML4に含まれる各チャンバの一部または全ての清掃が実施される。
【0096】
第4点灯検査において各検査項目につき異常が検出されなかった場合(工程PR15のOK)、マザー基板MBから各パネル部PPが切り出される(工程PR16)。切り出されたパネル部PPは、表示パネルPNLに相当する。
【0097】
以上のように、本実施形態においては、製造途中の表示装置DSP(マザー基板MB)に対して第1乃至第4点灯検査が実施される。本実施形態との比較例として、パネル部PPをカットする直前のマザー基板MBに対してのみ点灯検査(第4点灯検査)を実施することも考えられる。しかしながら、この場合には、例えば表示素子DE1を形成する工程にて異常が発生していたとしても、表示素子DE2,DE3などの他の要素の形成を経た後でなければ異常を検出することができない。
【0098】
これに対し、本実施形態のように表示素子DE1を形成した直後に第1点灯検査が実施されれば、表示素子DE2,DE3を形成する工程などを無駄に実施しないように製造を停止することが可能となる。
【0099】
本実施形態においては、表示素子DE2,DE3の形成前に、表示素子DE1の積層膜FL1が封止層SE1によって封止される。仮に、表示素子DE2,DE3の形成後まで積層膜FL1が封止されない場合には、積層膜FL1への水分の浸入などを抑制するために、マザー基板MBを真空環境下において点灯検査を行う必要がある。これに対し、本実施形態の表示素子DE1の構成であれば、大気中で点灯検査を実施することが可能である。これにより、点灯検査のための製造設備の構成を簡便化することができる。
【0100】
本実施形態においては、表示素子DE2の形成直後に第2点灯検査が実施され、表示素子DE3の形成直後に第3点灯検査が実施される。これにより、表示素子DE2,DE3についても、表示素子DE1について上述したものと同様の効果を奏する。
【0101】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。特に言及しない構成および効果については第1実施形態と同様である。
【0102】
図18は、第2実施形態に係る表示装置DSPの製造方法の一例を示すフローチャートである。工程PR1乃至工程PR16は、第1実施形態と同様である(
図6参照)。本実施形態においては、
図6に示した工程PR21,22,23に代えて、工程PR31,PR32,PR33が実施される。
【0103】
すなわち、第1点灯検査においていずれかの検査項目につき異常が検出された場合(工程PR7のNG)、封止層SE1および積層膜FL1がマザー基板MBから除去される(工程PR31)。この工程は、封止層SE1および積層膜FL1を順次除去するドライエッチングやウェットエッチングを含む。
【0104】
工程PR31の後、再び工程PR5乃至PR7が実施される。すなわち、封止層SE1および積層膜FL1がマザー基板MBに形成され、これらがパターニングされることにより表示素子DE1が再度形成される。さらに、第1点灯検査が再度実施される。工程PR31の後、再び工程PR5を実施する前に、製造ラインML1に含まれる各チャンバの一部または全ての清掃が実施されてもよい。
【0105】
第2点灯検査においても同様に、いずれかの検査項目につき異常が検出された場合(工程PR10のNG)、封止層SE2および積層膜FL2がマザー基板MBから除去される(工程PR32)。例えば、工程PR32は、表示素子DE1をレジストで覆うとともに、封止層SE2および積層膜FL2をドライエッチングやウェットエッチングで順次除去する工程を含む。
【0106】
工程PR32の後、再び工程PR8乃至PR10が実施される。すなわち、封止層SE2および積層膜FL2がマザー基板MBに形成され、これらがパターニングされることにより表示素子DE2が再度形成される。さらに、第2点灯検査が再度実施される。工程PR32の後、再び工程PR8を実施する前に、製造ラインML2に含まれる各チャンバの一部または全ての清掃が実施されてもよい。
【0107】
第3点灯検査においても同様に、いずれかの検査項目につき異常が検出された場合(工程PR13のNG)、封止層SE3および積層膜FL3がマザー基板MBから除去される(工程PR33)。例えば、工程PR13は、表示素子DE1,DE2をレジストで覆うとともに、封止層SE3および積層膜FL3をドライエッチングやウェットエッチングで順次除去する工程を含む。
【0108】
工程PR33の後、再び工程PR11乃至PR13が実施される。すなわち、封止層SE3および積層膜FL3がマザー基板MBに形成され、これらがパターニングされることにより表示素子DE3が再度形成される。さらに、第3点灯検査が再度実施される。工程PR33の後、再び工程PR11を実施する前に、製造ラインML3に含まれる各チャンバの一部または全ての清掃が実施されてもよい。
【0109】
図18の例においては、第4点灯検査でいずれかの検査項目につき異常が検出された場合(工程PR15のNG)、
図6の工程PR24と同じく製造設備が停止される(工程PR34)。他の例として、工程PR34において表示素子DE1,DE2,DE3、樹脂層13、封止層14および樹脂層15が剥離されてもよい。さらに、この剥離後のマザー基板MBに対し、工程PR5からの工程が再度実施されてもよい。
【0110】
本実施形態の製造方法であれば、第1乃至第3点灯検査で異常が発見された場合でも、マザー基板MBを再利用することができる。これにより、歩留まりの一層の改善が見込める。
【0111】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0112】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0113】
また、上述の各実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0114】
DSP…表示装置、PNL…表示パネル、DA…表示領域、SA…周辺領域、PX…画素、SP1,SP2,SP3…副画素、DE1,DE2,DE3…表示素子、LE1,LE2,LE3…下電極、OR1,OR2,OR3…有機層、UE1,UE2,UE3…上電極、SE1,SE2,SE3…封止層、5…リブ、6…隔壁、61…下部、62…上部。