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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115849
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】軸流ファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/54 20060101AFI20240820BHJP
   F04D 29/52 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
F04D29/54 D
F04D29/52 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021721
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】古谷 優樹
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC30
3H130BA66A
3H130BA68A
3H130CA07
3H130CA21
3H130EA07A
3H130EB01A
3H130EB04A
(57)【要約】
【課題】送風能力を向上させる軸流ファンを提供する。
【解決手段】軸流ファンは、羽根車と、ベルマウスと、を備える。前記羽根車は、回転部と、前記回転部に接続された羽根部と、を有する。前記ベルマウスは、前記羽根車を配置する開口部を有し、前記羽根車の回転軸の延伸方向に直交する平坦部と、前記平坦部から立ち上がり、前記開口部に沿って延在し、前記羽根車を囲む立ち上がり部と、を有する。前記ベルマウスは、前記羽根車の前記羽根部に向き合う前記立ち上がり部の内面につがなる表面側に設けられる複数の溝を有し、前記複数の溝は、少なくとも、前記平坦部と前記立ち上がり部とがつながる角部に設けられ、前記平坦部と交差する方向に延在する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部と、前記回転部に接続された羽根部と、を有する羽根車と、
前記羽根車を配置する開口部を有し、前記回転部の回転軸の延伸方向に直交する平坦部と、前記平坦部から立ち上がり、前記開口部に沿って延在し、前記羽根車を囲む立ち上がり部と、を有するベルマウスと、
を備え、
前記ベルマウスは、前記羽根車の前記羽根部に向き合う前記立ち上がり部の内面につながる表面側に設けられる複数の溝であって、少なくとも、前記平坦部と前記立ち上がり部とがつながる角部に設けられ、前記平坦部と交差する方向に延在する複数の溝を有する軸流ファン。
【請求項2】
前記ベルマウスの前記複数の溝は、前記平坦部と前記立ち上がり部とがつながる前記角部に沿って並ぶ請求項1記載の軸流ファン。
【請求項3】
前記ベルマウスの前記複数の溝は、前記立ち上がり部の前記内面上に延伸し、前記羽根車を囲む請求項1記載の軸流ファン。
【請求項4】
前記ベルマウスの前記複数の溝は、前記平坦部と前記立ち上がり部とがつながる前記角部に沿って周期的に並ぶ請求項1記載の軸流ファン。
【請求項5】
前記ベルマウスの複数の溝は、前記平坦部と前記立ち上がり部とがつながる前記角部に沿って並ぶ複数の凸部の間にそれぞれ設けられる請求項1記載の軸流ファン。
【請求項6】
前記ベルマウスの複数の溝は、リブレット構造である請求項1記載の軸流ファン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、軸流ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
空調機などに用いられる軸流ファンには、送風能力を向上させることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-110790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、送風能力を向上させる軸流ファンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る軸流ファンは、羽根車と、ベルマウスと、を備える。前記羽根車は、回転部と、前記回転部に接続された羽根部と、を有する。前記ベルマウスは、前記羽根車を配置する開口部を有し、前記羽根車の回転軸の延伸方向に直交する平坦部と、前記平坦部から立ち上がり、前記開口部に沿って延在し、前記羽根車を囲む立ち上がり部と、を有する。前記ベルマウスは、前記羽根車の前記羽根部に向き合う前記立ち上がり部の内面につがなる表面側に設けられる複数の溝を有し、前記複数の溝は、少なくとも、前記平坦部と前記立ち上がり部とがつながる角部に設けられ、前記平坦部と交差する方向に延在する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る軸流ファンを示す模式図である。
図2】実施形態に係る軸流ファンの特性を示す模式図である。
図3】実施形態に係る軸流ファンの別の特性を示す模式図である。
図4】実施形態に係る軸流ファンの特性を示すグラフである。
図5】実施形態に係る軸流ファンを部分的に示す模式図である。
図6】実施形態に係る軸流ファンの特性を示す別のグラフである。
図7】実施形態に係る軸流ファンの構造を示す模式図である。
図8】実施形態の変形例に係る軸流ファンを部分的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
図1は、実施形態に係る軸流ファン1を示す模式図である。軸流ファン1は、例えば、空調機に用いられる。
【0009】
軸流ファン1は、羽根車10と、ベルマウス20と、を備える。羽根車10は、回転部13と、回転部13に接続された羽根部15と、回転部13の中心を通る回転軸RAと、を有する。ベルマウス20は、平坦部23と、立ち上がり部25と、立ち上がり部25に囲まれた開口部27と、を有する。開口部27は、略円形の開口であり、羽根車10は、開口部27に配置される。羽根車10およびベルマウス20は、例えば、成形された樹脂である。なお、羽根車10およびベルマウス20は、樹脂に限らず、アルミニウムなどの金属であってもよい。
【0010】
平坦部23は、羽根車10の回転軸RAの延伸方向に直交する。立ち上がり部25は、平坦部23から立ち上がるように設けられ、開口部27に沿って延在する。平坦部23および立ち上がり部25は、例えば、一体に形成される。羽根車10の少なくとも一部は、立ち上がり部25に囲まれる。
【0011】
ベルマウス20は、羽根車10の羽根部15に向き合う立ち上がり部25の内面(図5参照)につながる表面側に設けられる複数の溝RG(図5参照)を有する。複数の溝RGは、少なくとも、平坦部23と立ち上がり部25とがつながる角部25Cに設けられ、平坦部23と交差する方向に延在する。
【0012】
図2(a)および(b)は、実施形態に係る軸流ファン1Aの特性を示す模式図である。図2(a)は、軸流ファン1Aを示す模式断面図である。図2(b)は、軸流ファン1Aの断面における風速のシミュレーション結果を示す模式図である。
【0013】
図2(a)に示すように、羽根車10の回転により生じる風は、回転軸RAに沿った方向、例えば、ベルマウス20の立ち上がり部25の端部25Eから平坦部23とつながる角部25Cに向かう方向に流れる。すなわち、ベルマウス20の端部25E側を流入側とし、角部25C側を流出側とする。
【0014】
ベルマウス20の立ち上がり部25は、例えば、回転軸RAに直交する方向において、羽根車10の羽根部15の少なくともその一部とオーバーラップする。以下、立ち上がり部25の回転軸RAに平行な方向の幅をラップ幅として説明する。この例では、ベルマウス20は、ラップ幅WL1を有する。
【0015】
立ち上がり部25は、例えば、平坦部23に直交するように設けられる。すなわち、立ち上がり部25は、例えば、回転軸RAに平行となるように設けられる。また、平坦部23と立ち上がり部25とがつながる角部25Cは、例えば、羽根車10に向き合う表面において、所定の曲率を有するように設けられる。
【0016】
図2(b)では、風速の分布を濃淡により表している。風速は、羽根部15の回転位置において最も早く、流入側および流出側で低下する。また、流出側における羽根車10の回転部13の近傍、および、ベルマウス20の立ち上がり部25の近傍において、風速は早くなる。
【0017】
図3(a)および(b)は、実施形態に係る軸流ファン1Bの特性を示す模式図である。図3(a)は、軸流ファン1Bを示す模式断面図である。図3(b)は、軸流ファン1Bの断面における風速のシミュレーション結果を示す模式図である。
【0018】
図3(a)に示すように、ベルマウス20は、ラップ幅WL2を有する。ラップ幅WL2は、ラップ幅WL1(図2(a)参照)よりも広い。この例でも、ベルマウス20の立ち上がり部25の少なくともその一部は、回転軸RAに直交する方向において、羽根車10の羽根部15の少なくともその一部とオーバーラップする。立ち上がり部25は、回転軸RAに平行となるように設けられる。なお、実施形態はこの例に限定される訳ではなく、立ち上がり部25は、回転軸RAに対して傾斜するように設けられても良い。
【0019】
図3(b)でも、風速の分布は濃淡により表わされる。風速は、羽根部15の回転位置において最も早く、流入側および流出側で低下する。また、流出側における羽根車10の回転部13の近傍、および、ベルマウス20の立ち上がり部25の近傍において、風速は早くなる。
【0020】
この例では、ラップ幅WL2が広く設けられるため、立ち上がり部25の近傍における風速が、角部25Cに近づくほど速くなることがわかる。角部25Cにおける風速は、羽根部15の回転位置における風速に近い値になることがわかる。
【0021】
図4は、実施形態に係る軸流ファン1の特性を示すグラフである。横軸は、風量Qである。縦軸は、吸い込み側の圧力を基準にした吹き出し側の静圧Pである。図4中には、軸流ファン1Aおよび軸流ファン1BのPQ特性を表している。
【0022】
図4に示すように、風量Qの増加と共に、静圧Pは低下する。軸流ファン1Bの静圧Pは、同風量値における軸流ファン1Aの静圧Pよりも低いことが分かる。これは、軸流ファン1Bにおけるベルマウス20の立ち上がり部25の幅WL2が、軸流ファン1Aにおけるベルマウス20の立ち上がり部25の幅WL1よりも広いためである。すなわち、軸流ファン1Bでは、立ち上がり部25の近傍における風速が早くなり(図3(b)参照)、立ち上がり部25に沿った壁面抵抗が大きくなることに起因する。
【0023】
故に、軸流ファン1では、静圧Pが大きくなるほど送風能力が高くなることがわかる。すなわち、立ち上がり部25の幅WL2が幅WL1よりも広いために、軸流ファン1Bの送風能力は、軸流ファン1Aの送風能力よりも低くなる。一方、安全性の観点から、立ち上がり部25の幅を広くすることが好ましい場合もある。
【0024】
図5は、実施形態に係る軸流ファン1を部分的に示す模式図である。図5は、ベルマウス20の部分断面を示す模式図である。
【0025】
図5に示すように、ベルマウス20は、平坦部23と立ち上がり部25とがつながる角部25Cに設けられる複数の溝RGを有する。複数の溝RGは、ベルマウス20の立ち上がり部25における羽根車10に向き合う内面25Dにつながる表面に設けられ、平坦部23と交差する方向に延在する。詳しくは、羽根車13の回転軸RA方向と平坦部23とをつなぐ角部25Cに沿って形成されている。複数の溝RGは、平坦部23の下面23Bと交差する方向に延在し、角部25Cに沿って並ぶ。複数の溝RGは、所謂、リブレット構造を構成する。
【0026】
図6は、実施形態に係る軸流ファン1の特性を示す別のグラフである。横軸は、風量Qである。縦軸は、吹き出し側の静圧Pである。図6中には、複数の溝RGを設けない場合の特性「BA」と、複数の溝RGを設ける場合の特性「BB」を示している。
【0027】
図6に示すように、複数の溝RGを設けることにより、軸流ファン1の静圧Pを高くすることができる。すなわち、ベルマウス20の立ち上がり部25の近傍における風速が早い角部25Cにリブレット構造を形成することにより、壁面抵抗を小さくし、静圧Pを高くすることができる。
【0028】
図2および図3に示す軸流ファン1Aおよび軸流ファン1Bには、複数の溝RGは設けられないが、例えば、軸流ファン1Bのベルマウス20の角部25Cに複数の溝RGを設けることにより、静圧Pを大きくしながら、送風能力を向上させることができる。
【0029】
図7(a)および(b)は、実施形態に係る軸流ファン1の構造を示す模式図である。図7(a)および(b)は、それぞれ、複数の溝RGを示す斜視図である。
【0030】
図7(a)に示すように、複数の溝RGは、それぞれ、ベルマウス20に設けられた複数の凸部20Pのうちの隣り合う2つの凸部の間に設けられる。複数の溝RGは、例えば、一定の周期を有するように設けられる。凸部20Pは、例えば、三角形の断面を有する。凸部20Pは、例えば、ベルマウスの金型に複数の溝を設けることで成形しても良い。また、ベルマウス20を選択的にエッチングすることにより設けられる。あるいは、ベルマウス20の表面に、凸部20Pとなる部材を付加しても良い。
【0031】
図7(b)に示すように、複数の凸部20Pは、相互に離間して設けられても良い。すなわち、隣り合う2つの凸部20Pの間隔を好適に設けることにより、壁面抵抗を低減することもできる。また、凸部20Pの断面の形状は、三角形に限らず、例えば、四角形、五角形もしくは台形であっても良い。
【0032】
図8は、実施形態の変形例に係る軸流ファン1を部分的に示す模式図である。図8は、ベルマウス20の部分断面を示す模式図である。
【0033】
図8に示すように、複数の溝RGは、平坦部23と立ち上がり部25とがつながる角部25Cから立ち上がり部25の内面25Dに延伸するように設けられても良い。複数の溝RGは、立ち上がり部25の内面25D上に並び、羽根車10を囲む。これにより、ベルマウス20の壁面抵抗をさらに低減し、静圧Pを向上させることができる見込みである。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0035】
(付記1)
回転部と、前記回転部に接続された羽根部と、を有する羽根車と、
前記羽根車を配置する開口部を有し、前記回転部の回転軸の延伸方向に直交する平坦部と、前記平坦部から立ち上がり、前記開口に沿って延在し、前記羽根車を囲む立ち上がり部と、を有するベルマウスと、
を備え、
前記ベルマウスは、前記羽根車の前記羽根部に向き合う前記立ち上がり部の内面につながる表面側に設けられる複数の溝であって、少なくとも、前記平坦部と前記立ち上がり部とがつながる角部に設けられ、前記平坦部と交差する方向に延在する複数の溝を有する軸流ファン。
(付記2)
前記ベルマウスの前記複数の溝は、前記平坦部と前記立ち上がり部とがつながる前記角部に沿って並ぶ付記1記載の軸流ファン。
(付記3)
前記ベルマウスの前記複数の溝は、前記立ち上がり部の前記内面上に延伸し、前記羽根車を囲む付記1または2に記載の軸流ファン。
(付記4)
前記ベルマウスの前記複数の溝は、前記平坦部と前記立ち上がり部とがつながる前記角部に沿って周期的に並ぶ付記1乃至3のいずれか1つに記載の軸流ファン。
(付記5)
前記ベルマウスの複数の溝は、前記平坦部と前記立ち上がり部とがつながる前記角部に沿って並ぶ複数の凸部の間にそれぞれ設けられる付記1乃至4のいずれか1つに記載の軸流ファン。
(付記6)
前記ベルマウスの複数の溝は、リブレット構造である付記1乃至5のいずれか1つに記載の軸流ファン。
【符号の説明】
【0036】
1、1A、1B…軸流ファン、 10…羽根車、 13…回転部、 15…羽根部、 20…ベルマウス、 20P…凸部、 23…平坦部、 23B…下面、 25…立ち上がり部、 25C…角部、 25D…内面、 25E…端部、 27…開口部、 RA…回転軸、 RG…溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8