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  • 特開-発泡通気シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115853
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】発泡通気シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240820BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240820BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240820BHJP
   A41D 31/14 20190101ALI20240820BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
B29C44/00 E
A41D31/00 502G
A41D31/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021727
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】504300103
【氏名又は名称】三井化学ファイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】野間 賢士
(72)【発明者】
【氏名】又吉 智也
(72)【発明者】
【氏名】野田 泰登
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 孝行
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA26
4F074AA71B
4F074AA78B
4F074AA98
4F074AB03
4F074BA03
4F074BA28
4F074DA08
4F074DA10
4F074DA13
4F074DA14
4F074DA17
4F074DA38
4F074DA54
4F214AA12
4F214AA45
4F214AB02
4F214AG01
4F214AG20
4F214AH66
4F214UA11
4F214UB02
4F214UC11
4F214UC13
4F214UC17
4F214UF01
(57)【要約】
【課題】通気性と機械的強度を両立できる発泡通気シートを提供する。
【解決手段】本発明の発泡通気シート100は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成され、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含み、発泡通気シート100の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔20を有し、発泡通気シート100の平面視における、発泡通気シート100の面積に対する複数の貫通孔20の平均の開口面積率(%)が0.01%~30%である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成された発泡通気シートであって、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含み、
前記発泡通気シートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、
前記発泡通気シートの平面視における、前記発泡通気シートの面積に対する前記複数の貫通孔の平均の開口面積率(%)が0.01%~30%である、発泡通気シート。
【請求項2】
前記発泡通気シートの平面視において、2以上の前記貫通孔の開口部の形状が真円ではない、請求項1に記載の発泡通気シート。
【請求項3】
前記貫通孔の開口部は、貫通孔の開口部の最大長さをL(mm)とし、当該最大長さに直交する方向における最大長さをH(mm)としたとき、楕円率(比(L/H))が1.1~4.5である、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項4】
前記発泡通気シートの平面視において、2以上の前記貫通孔の開口部の最大長さとなる方向が、互いに平行である、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記複数の孔が通気シートの断面方向に連通することにより前記発泡通気シートを貫通している、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項6】
前記発泡通気シートの平面視において、2以上の前記貫通孔の開口部の最大面積と最小面積との差分が0.10~5.00mmである、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項7】
前記発泡通気シートの平面視において、前記複数の貫通孔がランダムに配置されている、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項8】
前記発泡通気シートの平面視において、2以上の前記貫通孔の開口部の最大長さとなる方向の引張破断応力が2.0~8.0MPaである、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項9】
前記発泡通気シートの平面視において、2以上の前記貫通孔の開口部の最大長さとなる方向の引張破断伸びが160~500%である、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項10】
前記熱可塑性エラストマー(B)の前記極性基が、酸素、硫黄、窒素、およびハロゲンからなる群から選ばれる原子を1つまたは2つ以上含んでいる官能基である、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項11】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量が前記樹脂組成物全量に対し40~80質量%であり、
前記熱可塑性エラストマー(B)の含有量が前記樹脂組成物全量に対し20質量%~60質量%である、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項12】
前記熱可塑性エラストマー(B)が、熱可塑性ポリアミドブロック共重合体、熱可塑性ポリウレタンブロック共重合体、および熱可塑性ポリエステルブロック共重合体の中から選ばれる1種または2種以上を含む、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項13】
前記熱可塑性エラストマー(B)の融点が130℃~230℃である、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項14】
前記熱可塑性エラストマー(B)のショア硬度がA71~A90である、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項15】
JIS K6400-7:2012(B法)に準拠し、24℃、50%RHの条件で測定される前記発泡通気シートの通気量が、0.1ml/cm/sec以上である、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項16】
目付量が200~400g/mである、請求項1または2に記載の発泡通気シート。
【請求項17】
請求項1または2に記載の発泡通気シートの少なくとも一方の面に生地が貼り合わされた生地積層体。
【請求項18】
前記生地積層体の少なくとも一部が湾曲し、曲率半径が50mm~150mmの範囲である、請求項17に記載の生地積層体。
【請求項19】
請求項17に記載の生地積層体を用いた衣料品。
【請求項20】
請求項1または2に記載の発泡通気シートの製造方法であって、
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)と、を含む前記樹脂組成物を、シート状に押出成形しながら発泡すると同時に前記貫通孔を形成する工程を含む、発泡通気シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡通気シートに関する。より詳細には、発泡通気シート、発泡通気シートを用いた生地積層体および衣料品、ならびに発泡通気シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通気性シートは水蒸気等の気体の透過性に優れるため、衛生材料、衣料用材料、医療用材料、生鮮食品包装材料、農業資材、各種フィルター、電池セパレータ、建築用材料等の多種の用途に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1(国際公開第2019/176743号)には、4-メチル-1-ペンテン系重合体または4-メチル-1-ペンテン系重合体を主成分として含む樹脂組成物を用いて発泡シートを作製し、これに有孔加工を施して、通気性シートを得たことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/176743号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される従来技術は、通気性は得られるものの、一定方向にシートを力強く引張ると、貫通孔を発端にシートが裂けやすくなる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む発泡通気シートにおいて、通気性を保持しつつもシートの強度を向上させるべく検討を行ったところ、4-メチル-1-ペンテン系重合体に極性基を有する熱可塑性エラストマーを組み合わせてシートを作製するとともに、貫通孔の開口面積割合を制御することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下に示す発泡通気シートおよびこれに関する技術が提供される。
【0008】
[1] 4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成された発泡通気シートであって、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含み、
前記発泡通気シートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、
前記発泡通気シートの平面視における、前記発泡通気シートの面積に対する前記複数の貫通孔の平均の開口面積率(%)が0.01%~30%である、発泡通気シート。
[2] 前記発泡通気シートの平面視において、2以上の前記貫通孔の開口部の形状が真円ではない、[1]に記載の発泡通気シート。
[3] 前記貫通孔の開口部は、貫通孔の開口部の最大長さをL(mm)とし、当該最大長さに直交する方向における最大長さをH(mm)としたとき、楕円率(比(L/H))が1.1~4.5である、[1]または[2]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[4] 前記発泡通気シートの平面視において、2以上の前記貫通孔の開口部の最大長さとなる方向が、互いに平行である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[5] 前記貫通孔は、前記複数の孔が通気シートの断面方向に連通することにより前記発泡通気シートを貫通している、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[6] 前記発泡通気シートの平面視において、2以上の前記貫通孔の開口部の最大面積と最小面積との差分が0.10~5.00mmである、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[7] 前記発泡通気シートの平面視において、前記複数の貫通孔がランダムに配置されている、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[8] 前記発泡通気シートの平面視において、2以上の前記貫通孔の開口部の最大長さとなる方向の引張破断応力が2.0~8.0MPaである、[1]乃至[7]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[9] 前記発泡通気シートの平面視において、2以上の前記貫通孔の開口部の最大長さとなる方向の引張破断伸びが160~500%である、[1]乃至[8]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[10] 前記熱可塑性エラストマー(B)の前記極性基が、酸素、硫黄、窒素、およびハロゲンからなる群から選ばれる原子を1つまたは2つ以上含んでいる官能基である、[1]乃至[9]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[11] 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量が前記樹脂組成物全量に対し40~80質量%であり、
前記熱可塑性エラストマー(B)の含有量が前記樹脂組成物全量に対し20質量%~60質量%である、[1]乃至[10]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[12] 前記熱可塑性エラストマー(B)が、熱可塑性ポリアミドブロック共重合体、熱可塑性ポリウレタンブロック共重合体、および熱可塑性ポリエステルブロック共重合体の中から選ばれる1種または2種以上を含む、[1]乃至[11]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[13] 前記熱可塑性エラストマー(B)の融点が130℃~230℃である、[1]乃至[12]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[14] 前記熱可塑性エラストマー(B)のショア硬度がA71~A90である、[1]乃至[13]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[15] JIS K6400-7:2012(B法)に準拠し、24℃、50%RHの条件で測定される前記発泡通気シートの通気量が、0.1ml/cm/sec以上である、[1]乃至[14]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[16] 目付量が200~400g/mである、[1]乃至[15]いずれか一つに記載の発泡通気シート。
[17] [1]乃至[16]いずれか一つに記載の発泡通気シートの少なくとも一方の面に生地が貼り合わされた生地積層体。
[18] 前記生地積層体の少なくとも一部が湾曲し、曲率半径が50mm~150mmの範囲である、[17]に記載の生地積層体。
[19] [17]または[18]に記載の生地積層体を用いた衣料品。
[20] [1]乃至[16]いずれか一つに記載の発泡通気シートの製造方法であって、
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)と、を含む前記樹脂組成物を、シート状に押出成形しながら発泡すると同時に前記貫通孔を形成する工程を含む、発泡通気シートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通気性と機械的強度を両立できる発泡通気シート、およびこれに関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の発泡通気シート100の模式平面図である。
図2】本実施形態の発泡通気シート100の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0012】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0013】
本明細書中、MD方向とはMachine Directionを表し、樹脂またはシートの流れ方向を意図し、TD方向とは、Transverse Directionを表し、流れ方向に対して直交する方向を意図する。
【0014】
<発泡通気シート>
図1は、本実施形態の発泡通気シート100の一部を示す模式平面図である。図2は、本実施形態の発泡通気シート100の一部を示す模式断面図である。
図1中、X方向は発泡通気シート100のTD方向を示し、Y方向は発泡通気シート100のMD方向を示す。また、図2中、Z方向は発泡通気シート100の厚み方向を示す。
【0015】
図1、2に示すように、発泡通気シート100は、発泡通気シート100の厚み方向に貫通する複数の貫通孔20を有している。すなわち、貫通孔20は、発泡通気シート100の一方の面111から他方の面112に到達する空隙となっている。
【0016】
本実施形態の発泡通気シート100は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成され、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含むものであり、発泡通気シート100の平面視における、発泡通気シート100の面積に対する複数の貫通孔20の平均の開口面積率(%)が0.01~30%となっている。
これにより、発泡通気シート100は、通気性と強度とのバランスを高水準で実現できる。さらに、発泡通気シート100は、図1中のY方向をMD方向とした場合、MD方向の荷重に対し発泡通気シート100を裂けにくくすることができる。
【0017】
本実施形態の貫通孔20の開口面積は、貫通孔20の発泡通気シート100の面111における開口領域の面積と、発泡通気シート100の面112における開口領域の面積との平均値とする。すなわち、発泡通気シート100の両面における貫通孔20の開口部の面積の平均値となる。
例えば、図1には、貫通孔201が示されており、貫通孔201の発泡通気シート100の面111における開口領域の面積S1が示され、図2には、貫通孔201の発泡通気シート100の面112における開口領域の面積S1’が示されている。貫通孔201の開口面積は、S1とS1’の平均値とする。
また、S1とS1’は互いに同一であってもよく、異なるものであってもよい。
【0018】
(開口面積率)
発泡通気シート100の面積に対する複数の貫通孔20の平均の開口面積率の下限は、好ましくは0.01%以上であり、より好ましく0.1%以上であり、さらに好ましくは1%以上である。これにより、良好な強度を保持しつつ、通気性および柔軟性を高めることができる。
一方、発泡通気シート100の面積に対する複数の貫通孔20の平均の開口面積率の上値は、好ましくは30%以下であり、より好ましく25%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、ことさらに好ましくは15%以下である。これにより、良好な通気性および柔軟性を保持しつつ、強度を高めることができる。
【0019】
貫通孔20の開口面積の算出方法は、例えば、発泡通気シート100の平面視の二値化処理した画像に対して、面積計測ソフトを用いて、貫通孔20の開口面積を測定する。例えば、発泡通気シート100の面積1cm~100cmの範囲のいずれかについて観察することができる。
【0020】
以下、貫通孔20について、詳細を説明する。
【0021】
[貫通孔]
貫通孔20は、発泡通気シート100の製造過程において発泡により生じた気泡からなる。そのため、貫通孔20の側壁は、略球状の気泡の形状が反映されることにより、貫通孔20を平面方向に広げる湾曲面を有するとともに、貫通孔20の内側に向かう突出部30を有することとなる。その結果、パンチングなどの打抜きで有孔加工した場合に比して、貫通孔20内に発泡通気シート100の一部が突出部30として存在することができるため、突出部30により、発泡通気シート100の樹脂相が連続している部分が多くなり、発泡通気シート100が貫通孔20を有していたとしても良好な機械的強度を得ることができる。
貫通孔20は、(i)単一の気泡が発泡通気シート100を厚み方向に貫通したものであってもよく、(ii)複数の気泡が発泡通気シート100の厚み方向(図2中のZ方向)に連通することにより発泡通気シート100を貫通したものであってもよい。発泡通気シート100は、上記(i)および(ii)の貫通孔20が混在したものであってもよい(図2参照)。
また、貫通孔20は、発泡通気シート100の平面視において、複数の気泡が発泡通気シート100の面上で重なり合っていてもよい。貫通孔202は、発泡通気シート100の面111上で二つの気泡の一部同士が重なり合ったものである(図1参照)。
【0022】
発泡通気シート100の平面視において観察される貫通孔20の開口部の形状としては、特に限定さないが、例えば、略円形、楕円形、長円、および扁平状などが好ましい形状として挙げられる。
なかでも、発泡通気シート100の平面視において、2以上の貫通孔20の開口部の形状が真円ではないことが好ましい。より具体的には、複数の貫通孔20のうち、50~99%が真円ではないことが好ましく、80~99%が真円ではないことがより好ましい。
【0023】
貫通孔20の開口部は、貫通孔20の開口部の最大長さをL(mm)とし、当該最大長さに直交する方向における最大長さをH(mm)としたとき、楕円率(比(L/H))が1.1~4.5であることが好ましく、1.5~4.0であることが好ましい。
比(L/H)を上記下限値以上とすることにより、貫通孔20の開口部の最大長さとなる方向における発泡通気シート100の機械的強度を効果的に向上できる。
一方、比(L/H)を上記上限値以下とすることにより、機械的強度を保持しつつ、良好な通気性が得られやすくなる。
なお、比(L/H)は複数の貫通孔20の平均値とする。
【0024】
例えば、図1には、貫通孔201が示されており、貫通孔201の発泡通気シート100の面111における開口部の最大長さL1および最大長さに直交する方向における最大長さH1が示されている。
【0025】
また、図1には、貫通孔202が示されており、貫通孔202の発泡通気シート100の面111における開口部の最大長さL2および最大長さに直交する方向における最大長さH2が示されている。
【0026】
発泡通気シート100の平面視において、2以上の貫通孔20の開口部の最大長さとなる方向が、互いに平行であることが好ましい。より具体的には、複数の貫通孔20のうち、50~99%の開口部の最大長さとなる方向が互いに平行であることが好ましく、80~99%の開口部の最大長さとなる方向が互いに平行であることがより好ましい。
【0027】
また、発泡通気シート100の平面視において、1以上の貫通孔20の開口部の最大長さとなる方向が、発泡通気シート100のMD方向であることが好ましく、2以上の貫通孔20の開口部の最大長さとなる方向が、発泡通気シート100のMD方向であることがより好ましい。より具体的には、複数の貫通孔20のうち、50~99%の開口部の最大長さとなる方向が、発泡通気シート100のMD方向であることが好ましく、80~99%の開口部の最大長さとなる方向が、発泡通気シート100のMD方向であることがより好ましい。
【0028】
発泡通気シート100の平面視において、2以上の貫通孔20の開口部の形状が互いに異なることが好ましい。貫通孔20の開口部の形状が互いに異なるとは、例えば、貫通孔20の開口部の比(L/H)が互いに異なる場合や開口部を形成する気泡の数および位置が互いに異なる場合等が挙げられる。
【0029】
貫通孔20の開口部の平均面積は、0.03~1.00mmであることが好ましく、0.20~0.90mmであることがより好ましい。
【0030】
また、貫通孔20の開口部の最大面積は0.10~5.00mmであることが好ましく、1.00~4.80mmであることがより好ましい。
【0031】
また、貫通孔20の開口部の最大面積と最小面積との差分は0.10~5.00mmであることが好ましく、0.60~4.80mmであることがより好ましい。当該差分を上記数値の範囲とすることで、発泡通気シート100における複数の貫通孔20のサイズを適度にばらつかせることができる結果、発泡通気シート100を一定方向に引張った時にかかる負荷をばらつかせることができるため、機械強度を向上できるようになる。
【0032】
発泡通気シート100の平面視において、貫通孔20の開口部は、形状、面積および配置によって構成される模様が繰り返されたものではない。例えば、四角形状が整列した格子模様、円状の開口部が等間隔で配置された水玉模様などを形成するものではない。
【0033】
発泡通気シート100の平面視において、貫通孔20はランダムに配置されていることが好ましい。
貫通孔20の配置位置がランダムとは、貫通孔20の配置位置に規則性がないことであり、すなわち、不規則性を有することである。不規則性の分布は、正規分布でも、一様分布でもよい。規則性がないとは、全ての貫通孔20の配置位置が、同じ大きさの多角形状の頂点の繰り返しで表されないことである。また、全ての貫通孔20の配置位置を、数列もしくは関数で表すことができないことをいう。
【0034】
貫通孔20の開口部の最大長さL(mm)に沿って発泡通気シート100の断面において、貫通孔20の内部における長さをLin(mm)としたとき、LとLinとが異なる値であることが好ましい。貫通孔20の断面において種々の長さの孔が開いていることで機械強度が向上する。
例えば、図2には、貫通孔201の開口部の最大長さL1およびL1’に沿って発泡通気シート100の断面をみた図が示されており、開口部の最大長さL1と、最大長さL1よりも長さが長いLin1が示されている。また、図2には、貫通孔204の開口部の最大長さL4に沿って発泡通気シート100の断面をみた図が示されており、開口部の最大長さL4と、最大長さL4よりも長さが長いLin4が示されている。
【0035】
発泡通気シート100の断面は、例えば、断面観察用の試料台に挟んだ発泡通気シート100を剃刀を用いて切り出し、デジタルマイクロスコープVHX-1000(株式会社キーエンス製)等を用いて観察することができる。
【0036】
本実施形態の上記のような貫通孔20は、公知の方法を組み合わせることで得ることができるが、例えば、発泡通気シート100を構成する樹脂組成物の材料の選択、発泡の程度の調整、成膜条件などを制御することが挙げられる。
【0037】
なお、発泡通気シート100は、貫通孔20以外に、発泡通気シート100を貫通しない溝(凹部)80、および発泡通気シート100に内包される気泡81を有していてもよい(図2参照)。
また、気泡とは略球状の空間を意図し、発泡通気シート100の製造過程において発泡の際に生じるものを意図する。
【0038】
次に、発泡通気シート100の物性について説明する。
【0039】
[厚み]
発泡通気シート100の平均厚みは特に限定されないが、好ましくは0.01mm以上30mm以下の範囲であり、より好ましくは0.01mm以上10mm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.1mm以上5mm以下の範囲であり、ことさらに好ましくは0.5mm以上2mm以下の範囲である。
発泡通気シート100の平均厚みを、上記下限値以上とすることにより、粘着性を向上しつつ、形状追従性、機械的特性、成形性、および耐湿性等の良好なバランスが得られる。一方、発泡通気シート100の平均厚みを、上記上限値以下とすることにより、良好な粘着性を保持しつつ、軽量性、外観、および取扱い性を良好にできる。
【0040】
[密度]
発泡通気シート100のASTM D 1505(水中置換法)に従って測定された密度は、好ましくは0.3~1.5g/cm、より好ましくは0.5~1.2g/cm、さらに好ましくは0.8~0.9g/cm、ことさらに好ましくは0.83~0.85g/cmである。
【0041】
[機械的強度]
発泡通気シート100の平面視において、2以上の貫通孔20の開口部の最大長さとなる方向の引張破断応力は、好ましくは2.0~8.0MPaであり、より好ましくは2.3~7.5MPaであり、さらに好ましくは2.4~7.0MPaである。これにより、良好な機械的強度が得られる。
【0042】
発泡通気シート100の平面視において、2以上の貫通孔20の開口部の最大長さとなる方向の引張破断伸びは、好ましくは160~500%であり、より好ましくは180~400%であり、さらに好ましくは200~350%である。これにより、良好な機械的強度が得られる。
【0043】
[通気量]
本実施形態の発泡通気シート100の、JIS K6400-7:2012(B法)に準拠し、24℃、50%RHの条件で測定される通気量が0.1ml/cm/sec以上であることが好ましく、10ml/cm/sec以上であることがより好ましく、20ml/cm/sec以上であることがさらに好ましく、30ml/cm/sec以上であることがよりさらに好ましい。
当該通気量が上記下限値以上であると、より一層通気性に優れることができる。
一方、当該通気量の上限は特に限定されないが、例えば、1000ml/cm/sec以下である。
本実施形態の発泡通気シート100の通気量は、例えば、本実施形態の発泡通気シート100の厚み、貫通孔20の形状及びサイズ等、発泡通気シート100の製造条件(発泡倍率、成膜条件)等をそれぞれ適切に制御することにより、上記範囲内に制御することができる。
【0044】
[目付量]
本実施形態の発泡通気シート100の目付量は200~400g/mであることが好ましい。これにより、発泡通気シート100の通気性と機械的強度のバランスをより高水準で実現できる。
【0045】
次に、発泡通気シート100を構成する樹脂組成物について説明する。
【0046】
発泡通気シート100を構成する樹脂組成物は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)と、を含む。
【0047】
[4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)]
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、例えば、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と、4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~3のα-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含む。
【0048】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、発泡通気シート100の柔軟性をより向上させる観点から、構成単位(a1)と構成単位(a2)との合計を100モル%としたとき、構成単位(a1)の含有量が10モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上90モル%以下であることが好ましい。
また、本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、発泡通気シート100の柔軟性や機械的特性等をより良好にする観点から、構成単位(a1)と構成単位(a2)との合計を100モル%としたとき、構成単位(a1)の含有量が30モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上70モル%以下であることがより好ましく、構成単位(a1)の含有量が50モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上50モル%以下であることがさらに好ましく、構成単位(a1)の含有量が60モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上40モル%以下であることがさらにより好ましく、構成単位(a1)の含有量が65モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上35モル%以下であることが特に好ましい。
【0049】
炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)としては、エチレン、およびプロピレンを挙げることができ、なかでも機械的強度を保持しつつ、柔軟性等が得られる点から、プロピレンが好ましい。
【0050】
なお、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、本発明の目的を損なわない範囲で、構成単位(a1)と構成単位(a2)以外の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成としては、非共役ポリエン由来の構成単位が挙げられる。
非共役ポリエンとしては、炭素原子数が好ましくは5~20、より好ましくは5~10の直鎖状、分岐状又は環状のジエン、各種のノルボルネン、ノルボルナジエン等が挙げられる。これらの中でも、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンが好ましい。
【0051】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の135℃のデカリン中での極限粘度[η]は、発泡通気シート100の柔軟性や機械的強度をより良好にする観点から、0.01~5.0dL/gであることが好ましく、0.1~4.0dL/gであることがより好ましく、0.5~3.0dL/gであることがさらに好ましく、1.0~2.8dL/gであることが特に好ましい。
【0052】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)のASTM D 1505(水中置換法)に従って測定された密度は、好ましくは0.810~0.850g/cm、より好ましくは0.820~0.850g/cm、さらに好ましくは0.830~0.850g/cmである。
【0053】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は種々の方法により製造することができる。例えば、マグネシウム担持型チタン触媒;国際公開第01/53369号、国際公開第01/027124号、特開平3-193796号公報、および特開平02-41303号公報等に記載のメタロセン触媒;国際公開第2011/055803号に記載されるメタロセン化合物を含有するオレフィン重合触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0054】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは40~80質量%である。これにより、通気性と機械的特性のバランスにより優れた発泡通気シート100を得ることができる。
【0055】
[極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)]
極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)は、発泡通気シート100に所望の貫通孔20を形成するために用いられる。極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)は4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)に対する相溶性が比較的低いため、発泡通気シート100の発泡工程において貫通孔20を形成することができると推測される。
【0056】
熱可塑性エラストマー(B)の極性基としては、例えば、酸素、硫黄、窒素、およびハロゲンからなる群から選ばれる原子を1つまたは2つ以上含んでいる官能基が挙げられる。具体的には、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、ニトリル基、シアノ基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基、チオール基、アルコキシ基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン基、メトキシカルボニル基、アセトキシ基、およびハロゲン原子が挙げられる。なかでも、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、アミド基、ニトリル基、アミノ基、スルホン基、ウレタン基、およびハロゲン原子が好ましく、カルボン酸エステル基、アミド基、およびウレタン基がより好ましい。
【0057】
極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)としては、例えば、熱可塑性ポリウレタンブロック共重合体、熱可塑性ポリアミドブロック共重合体、熱可塑性ポリエステルブロック共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、および塩化ビニル系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましい。
【0058】
また、極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)としては市販品を用いてもよく、具体的には、熱可塑性ポリウレタンブロック共重合体としては、BASF社製のエラストラン、ディーアイシー コベストロ ポリマー社製のバンテックス、三井化学社製のフォルティモ等;熱可塑性ポリアミドブロック共重合体としては、アルケマ社製のペバックス、宇部興産社製のUBESTA XPA、ポリプラ・エボニック社製のダイアミド等;熱可塑性ポリエステルブロック共重合体としては、東洋紡社製のペルプレン、デュポン社製のハイトレル、DSM社製のアーニテル等;クロロスルホン化ポリエチレンとしては、東ソー社製のTOSO-CSM等;塩素化ポリエチレンとしては、レゾナック社製のエラスレン等;塩化ビニル系エラストマーとしては、三菱ケミカル社製のサンプレーンなどが挙げられる。
【0059】
熱可塑性エラストマー(B)の融点は130~230℃であることが好ましい。熱可塑性エラストマー(B)の融点を上記数値範囲とすることで、所望の貫通孔20を形成しやすくなる。
融点の測定方法は、JIS K7121に準拠してDSCを用いて測定することができる。
【0060】
熱可塑性エラストマー(B)のショア硬度はA71~A90であることが好ましい。熱可塑性エラストマー(B)のショア硬度を上記数値範囲とすることで、所望の貫通孔20を形成しやすくなる。
ショア硬度は、JIS K6253に準拠して測定することができる。
【0061】
熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは20~60質量%である。これにより、通気性と機械的特性のバランスにより優れた発泡通気シート100を得ることができる。
【0062】
また、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)との合計の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、ことさらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%としてもよい。これにより、通気性と機械的特性のバランスにより優れた発泡通気シート100を得ることができる。
【0063】
本実施形態に係る発泡通気シート100は、上記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)以外の成分を含んでもよい。
【0064】
[その他の成分]
本実施形態に係る発泡通気シート100は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および熱可塑性エラストマー(B)以外の成分を含んでもよい。
例えば、発泡性改質剤、発泡剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、可塑剤、造核剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、着色剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス等の添加剤を配合してもよい。
【0065】
上記発泡改質剤としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0066】
上記発泡剤としては、化学発泡剤、物理発泡剤が挙げられる。
化学発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、各種カルボン酸塩、水素化ホウ素ナトリウム、アゾジカルボアミド、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジッド)、アゾビスイソブチロニトリル、パラトルエンスルホニルヒドラジッド、重曹クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
物理発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、または二酸化炭素と窒素の混合物等が挙げられ、いずれもガス状、液状または超臨界状態のいずれでも供給することが可能である。
【0067】
<発泡通気シートの製造方法>
次に、本実施形態の発泡通気シート100の製造方法について説明する。
上記の発泡通気シート100を製造するための製造方法は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)と、を含む前記樹脂組成物を、シート状に押出成形しながら発泡すると同時に前記貫通孔を形成する工程を含む。
これにより、所望の貫通孔20を有する発泡通気シート100が得られる。
「同時」とは、押出成形機の出口から押し出されるとともにシート状に成形する樹脂組成物が押出された直後に発泡することを示す。押出成形機の出口近傍で、樹脂組成物が順次シート状に押し出されるとともに発泡も順次発生することとなる。
押出成形機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、およびタンデム型押出機を用いることができる。
【0068】
例えば、化学発泡剤を用いる場合は、化学発泡剤以外の樹脂組成物を、化学発泡剤とともに押出成形機に投入して、均一に混合したのち、シート状に押出成形しながら発泡する方法が挙げられる。
また、物理発泡剤として二酸化炭素を使用する場合は、樹脂組成物を押出成形機に投入し、押出成形機内で混練され、可塑化された状態になった後、押出成形機内へ二酸化炭素を直接注入し、シート状に押出成形しながら発泡する方法が挙げられる。
【0069】
押し出されたシートは、冷却ロールで冷却して、引取機を用いて引き取る。冷却は引取機の冷却ロールの温度を5~25℃とすることができる。また、シートの引取速度は0.4~0.6m/分とすることができる。これにより、所望の貫通孔20が安定的に得られる。
【0070】
発泡倍率は特に限定されず、発泡通気シート100の用途等を考慮して適宜決定することができる。
【0071】
<生地積層体>
本実施形態の生地積層体は、発泡通気シート100の少なくとも一方の面に生地が貼り合わされたものである。これにより、生地が有する柔軟性および風合いを活かしつつ、本実施形態の発泡通気シート100が有する通気性、柔軟性、機械的強度といった新たな機能が得られる生地積層体を実現できる。
【0072】
生地としては、天然繊維、合成繊維、化学繊維といった繊維類を薄く加工したものであり、生地帛等の織物、および不織布などが挙げられる。具体的には、天竺、フライス、スムース、ダブルニット等の緯編組織を有する編物、トリコット、ラッセル等の経編組織を有する編物、平織、綾織、サテン等の組織を有する織物が挙げられる。
【0073】
生地の厚みは、発泡通気シート100との接着性や発泡通気シート100の特性を保持する等の点から、0.2~1.0mmであることが好ましく、0.2~0.8mmであることがより好ましく、0.2~0.6mmであることがさらに好ましい。
【0074】
生地の目付は、発泡通気シート100との接着性や発泡通気シート100の特性を保持する等の点から、50~250g/mであることが好ましく、70~180g/mであることがより好ましく、100~150g/mであることがさらに好ましい。
【0075】
生地の素材としては、綿、麻、ウール、シルク等の天然繊維;レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート・トリアセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル等の合成繊維、ならびにこれら合成繊維の混合繊維からなる化学繊維製品が挙げられる。
【0076】
また、本実施形態の生地積層体は、少なくとも一部が湾曲し、曲率半径が50mm~150mmの範囲とすることもできる。これにより、湾曲した面に対して、本実施形態の生地積層体を追従させやすくなる。湾曲した面としてはヒトの身体の丸みを帯びた部分が挙げられ、例えば、頭部、胸部、肘、膝等が挙げられる。また、湾曲した面に装着される衣料品としては、例えば、帽子、フード、ブラジャー、肌着、サポーター等が挙げられる。
【0077】
また、本実施形態の生地積層体の厚みは、柔軟性、加工性、縫いやすさ等を考慮して、適宜調整される。
【0078】
生地積層体の製造方法は、特に限定されないが、生地と貼り合わせる際、140~190℃、1.0~1.8MPaで貼り合せることが好適である。貼り合せ時間は30秒~10分であると生産効率が良い。これにより、本実施形態のシート組成物の特性を保持したまま、生地積層体を得ることができる。
【0079】
<用途>
本実施形態に係る発泡通気シート100および生地積層体は、分野を問わず、広く利用される例えば、自動車部品、鉄道部品、航空機部品、船舶部品、自転車部品等のモビリティー用品;電子機器;家庭用電気機器;オーディオ機器;カメラ用品;精密機器;ゲーム機器;VR機器;土木部品、建築部品、建築材等の土木・建築用品;家具、寝具等の家財道具;台所用品、トイレタリー、文具等の日用品;アウトドア用品、リュック等のレジャー用品;園芸等の農業用品;アパレル用品(服、肌着、下着類(例えば、ブラジャー、肩パッド、補正用下着等)の芯材、帽子、ベルト、ランドセルのライニング、名刺入れ、メガネ等)、シューズ用品(各種インソール、靴の内張り材、各種機材、靴、靴ひも等)、アクセサリー・携帯用小物雑貨等の装飾製品;医療用品、ヘルスケア用品等の医療関係用品;スポーツ品等のスポーツ分野の用品;書籍、玩具等の教育・玩具用品;包装用品等の包装関係用品;洗顔・メイク用品等の化粧品関係の用品;LED照明等の電灯用品;水産用品等の養殖用品;チャイルドシート等の安全用品;音楽用品;ペット用品;釣用品等に用いることができる。
【0080】
なかでも、発泡通気シート100および生地積層体は、衣料品、および衣料品部材として用いられることが好ましい。
衣料品としては、衣服全般、肌着、下着類、帽子、シューズ用品などの生地を用いたものに対してより好適に用いられる。また衣料品部材としては、かかる衣料品の一部を構成しうるものを意図する。たとえば、下着の芯材、シューズの中敷きなどが挙げられる。
なかでもヒトの身体の丸みを帯びた部分に装着される部材としての使用にも適している。例えば、帽子、フード、ブラジャー、肌着、サポーター等を構成する部材が挙げられる。
発泡通気シート100および生地積層体を衣料品に適用した場合、発泡通気シート100および生地積層体はヒトの動きや体の形状に適切に追従でき、引張等に対しても良好な強度が得られるとともに、通気性にも優れることができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0082】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0083】
(1)測定方法
・4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の組成
4-メチル-1-ペンテン系重合体中の4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィンの含有量は13C-NMRにより定量した。
【0084】
(2)原料
[4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)]
・4-メチル-1-ペンテンとプロピレンとの共重合体(4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)の含有量:72モル%、プロピレン由来の構成単位(a2)の含有量:28モル%)ガラス転移温度30℃、135℃のデカリン中での極限粘度[η]1.5dL/g、MFR10g/10min
【0085】
[極性基を有する熱可塑性エラストマー(B)]
・熱可塑性エラストマー(B1):熱可塑性ポリアミドブロック共重合体 アルケマ社製 製品名PEBAX2533 極性基=アミド基、融点134℃、ショア硬度A75
・熱可塑性エラストマー(B2):熱可塑性ポリアミドブロック共重合体 アルケマ社製 製品名PEBAX3533 極性基=アミド基、融点144℃、ショア硬度A82
・熱可塑性エラストマー(B3):熱可塑性ポリウレタンブロック共重合体 三井化学社製 製品名フォルティモT3085 極性基=ウレタン基、融点222℃、ショア硬度A85
・熱可塑性エラストマー(B4):熱可塑性ポリエステルブロック共重合体 東洋紡社製 製品名ペルプレンP-30B」 極性基=エステル基、融点160℃、ショア硬度A71
【0086】
[その他]
発泡剤1:永和化成株式会社製 製品名:ポリスレンEE275F
発泡剤2:大塚化学株式会社製 製品名:ユニフォーム重曹クエン酸ナトリウムP-4
【0087】
(3)発泡通気シートの作製
<実施例1>
成形機としては、単軸押出成形機(シリンダー内径D:20mm、フルフライトスクリュー、スクリュー有効長をLとしたときL/D:28mm)、Tダイ(ダイ幅:300mm、リップ開度:0.4~1.0mm)、冷却ロール(外径200mm、鏡面仕上げ硬質クロムメッキ表面処理付のスチール製、水冷式)、及び引取機、を備える装置を用いた。
まず、各原料を表1に示す配合(表中の単位は質量部)でドライブレンドし、得られた混合物をホッパーに投入した。シリンダー各部の温度140~220℃、スクリュー回転数60~70rpmの条件で各成分原料を溶融・混練し、押出量1.5~2.5kg/時間となるようにTダイから押出した。押し出されたシート状の混合物は、冷却ロール(ロール内部通水温度20℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度0.4~0.6m/分)、シート幅約270mmの発泡通気シートを得た。
【0088】
<実施例2~5>
表1に記載の原料、原料の配合に変更した以外は実施例1と同じ加工条件で発泡通気シートを得た。
【0089】
<実施例6~7>
表1に記載の原料、原料の配合に変更し、シリンダー各部の温度140~235℃、スクリュー回転数60~70rpmの条件で各成分原料を溶融・混練し、押出量2.0~3.0kg/時間となるようにTダイから押出した。押し出された発泡シートは、冷却ロール(ロール内部通水温度20℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度0.3~0.5m/分)、シート幅約270mmの発泡通気シートを得た。
【0090】
<実施例8~9>
表1に記載の原料、原料の配合に変更した以外は実施例1と同じ加工条件で発泡通気シートを得た。
【0091】
<比較例1>
4-メチル-1ペンテン系共重合体(A)と発泡剤を表1に示す配合量でドライブレンドし、得られた混合物をシリンダー各部の温度125~240℃、スクリュー回転数30~40rpmの条件で各成分原料を溶融・混練し、押出量1.0~2.0kg/時間となるようにTダイから押出した。押し出されたシート状の混合物を、冷却ロール(ロール内部通水温度20℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度0.3~0.5m/分)、シート幅約270mmの発泡シートを得た。
【0092】
<比較例2>
成形機としては、単軸押出成形機(シリンダー内径D:50mm、フルフライトスクリュー、スクリュー有効長をLとしたときL/D:32mm、二酸化炭素供給位置:スクリュー供給部側から17.5D)、Tダイ(ダイ幅:320mm、リップ開度:0.5~1.8mm)、冷却ロール(外径50mm、鏡面仕上げ硬質クロムメッキ表面処理付のスチール製、水冷式)、二酸化炭素供給装置、冷却ロール、および引取機、とからなる装置を用いた。
まず、各原料を表1に示す配合(表中の単位は質量部)でそれぞれドライブレンドし、得られた混合物をホッパーに投入し、さらに二酸化炭素供給装置から押出成形機のシリンダーの途中(位置17.5D)に二酸化炭素を10~23MPaの圧力で注入した。このとき二酸化炭素の注入量としては押出量に対して、0.1~0.8質量%となるよう調整にした。シリンダー各部の温度100~230℃、スクリュー回転数20~36rpmの条件で各成分原料を溶融・混練し、シリンダーヘッド部の樹脂温度130~195℃で、押出量5~8.5kg/時間となるようにTダイから押出した。押し出された発泡シートは、冷却ロール(ロール内部通水温度30℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度0.4~2.3m/分)、シート幅約300mmの発泡シートを得た。
【0093】
<比較例3>
比較例1で得られた発泡シートを、直径1mmの円形の孔が縦2mm、横2mmの間隔で等間隔に配列されたパンチング型でパンチングして1平方cmあたり25個の孔を設け、発泡通気シートを得た。
【0094】
(4)評価・測定
上記(3)で得られた各発泡通気シートを用いて、以下の評価・測定を行った。結果を、表1に示した。
【0095】
[貫通孔の観察]
(貫通孔の面積)
各発泡通気シートについて、以下の条件で貫通孔を観察し、装置付帯のアプリケーション(VHXアプリケーション)を用いて、貫通孔の輝度エリアを任意で抽出し、二値化処理した画像を得た。
得られた二値化処理した画像から、識別可能な貫通孔の開口面積を積算し、N=15として開口面積の平均値、最大値、最小値、差分(=最大値-最小値)及び標準偏差をそれぞれ算出した。
・条件
装置:キーエンス社デジタルマイクロスコープVHX-1000
観察倍率:20倍
試験片サイズ:200mm
測定温度:23℃(共通)
【0096】
(楕円率)
得られた二値化処理した画像における各貫通孔の最大径Lと最小径Hの比率L/Hを楕円率とし、楕円率をN=15で得て、それらの平均値と最大値と最小値をそれぞれ算出した。
【0097】
(開口面積率)
得られた二値化処理した画像の観察エリアの総面積(mm)と、観察された貫通孔の開口面積の総和(mm)から、以下の式により、開口面積率(%)を算出した。
開口面積率(%)=〔貫通孔の開口面積の総和(mm)〕/〔観察エリアの総面積(mm)〕×100
【0098】
[目付量]
発泡通気シートから10cm×10cmのサンプルを切り出し、精密天秤で重量(g)を測定し、g/mに換算して発泡通気シートの目付量(g/m)とした。
【0099】
[機械的強度]
以下の条件で、発泡通気シートの引張試験を行い、引張破断応力、引張破断伸びをそれぞれ測定した。
・条件
試験片形状:短冊状、幅25mm(共通)
試験片方向:MD方向(共通)
チャック間距離:30mm(共通)
引張速度:300mm/分(共通)
測定温度:23℃
測定点数:n=3
【0100】
[通気量]
JIS K6400-7:2012(B法)に準拠し、24℃、50%RHの条件で、発泡通気シートの通気量[ml/(cm・s)]を測定した。測定点数は3点とした。
【0101】
(5)結果
実施例1にて得られた発泡通気シートは、通気量が21ml/(cm・s)であり通気性が良好で、MD方向の破断応力が3.0MPaで破断伸びが220%であり機械的強度も良好であった。また、得られた発泡通気シートの貫通孔をN=15でサイズを確認したところ最大サイズと最小サイズの差分が1.88であり、貫通孔のサイズがランダムであった。また目視で確認すると、貫通孔の配置もランダムであることが確認された。
同様に、実施例2~9の発泡通気シートも、貫通孔の配置がランダムであることが確認された。
一方、比較例1または比較例2で得られたシートの貫通孔の観察をしたところ、貫通孔は確認できず、通気量が低く、通気性が良好であるとは言い難かった。また、比較例3で得られたシートは、破断応力は3.4MPaであったが破断伸びが低く、機械強度が良好であるとは言い難かった。
【0102】
【表1】
【符号の説明】
【0103】
100 発泡通気シート
111 発泡通気シートの一方の面
112 発泡通気シートの他方の面
20 貫通孔
201 貫通孔
202 貫通孔
204 貫通孔
30 突出部
80 溝
81 気泡
図1
図2