(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115856
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】配線回路基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 21/12 20060101AFI20240820BHJP
C25D 5/02 20060101ALI20240820BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20240820BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20240820BHJP
C25D 21/00 20060101ALI20240820BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C25D21/12 L
C25D5/02 F
C25D7/00 J
C25D17/06 F
C25D21/00 B
C25D21/12 M
C25D5/02 B
H05K3/18 F
H05K3/18 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021730
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花園 博行
(72)【発明者】
【氏名】相賀 拓郎
【テーマコード(参考)】
4K024
5E343
【Fターム(参考)】
4K024AA17
4K024AA21
4K024AA24
4K024AB01
4K024AB08
4K024BA15
4K024BB11
4K024BC01
4K024CB03
4K024CB19
4K024CB26
4K024EA02
4K024FA06
5E343AA02
5E343AA03
5E343AA05
5E343AA18
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB34
5E343BB44
5E343CC78
5E343DD43
5E343DD46
5E343DD48
5E343DD49
5E343EE02
5E343FF16
5E343FF23
5E343GG06
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】めっき層における内部および表面近傍において、第1金属および第2金属のそれぞれの割合が同一または近似する配線回路基板およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】配線回路基板1の製造方法は、工程(1)と、工程(2)と、を備える。工程(1)では、準備基板11は、ベース絶縁層2と、端子31および配線32を有する導体層3と、カバー絶縁層4と、合金めっき層5とを備える。端子31は、ベース絶縁層2および/またはカバー絶縁層4から露出する。工程(2)では、準備基板11を、めっき液70に浸漬して、導体層3へ給電する電解めっきを用いて、第1金属および第1金属のイオン化傾向より小さいイオン傾向を有する第2金属を含む合金めっき層5を、厚み方向における端子31の一方面および/または他方面に形成する。工程(2)では、導体層3への給電を維持しながら、配線回路基板1をめっき液70から離す。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース絶縁層と、厚み方向における前記ベース絶縁層の一方面に配置される導体層であって、端子および配線を有する導体層と、厚み方向における前記ベース絶縁層の一方面に、前記配線を被覆するように配置されるカバー絶縁層とを備える準備基板であって、前記端子が前記ベース絶縁層および/または前記カバー絶縁層から露出する準備基板を準備する工程(1)と、
前記準備基板を、第1金属および前記第1金属のイオン化傾向より小さいイオン傾向を有する第2金属のそれぞれのカチオンを含むめっき液に浸漬して、前記導体層へ給電する電解めっきを用いて、前記第1金属および前記第2金属を含む合金めっき層を、厚み方向における前記端子の一方面および/または他方面に形成する工程(2)と、を備える配線回路基板の製造方法であり、
前記工程(2)では、前記導体層への給電を維持しながら、前記配線回路基板を前記めっき液から離す、配線回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1金属および前記第2金属は、銀、銅、ビスマス、アンチモン、錫、および、亜鉛からなる群から選択される少なくとも2つの金属を含む、請求項1に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記第1金属または前記第2金属は、錫を含む、請求項1に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項4】
枚葉式の電解めっきで、前記工程(2)を実施する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記工程(2)では、前記導体層への給電を維持しながら、前記配線回路基板を前記めっき液から引き上げる、請求項4に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記工程(2)では、前記導体層への給電を維持しながら、前記めっき液を、前記めっき液を収容する槽から抜き取る、請求項4に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項7】
ロール-トゥ-ロール式の電解めっきで、前記工程(2)を実施する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記めっき液を収容する槽であって、長尺の前記準備基板と前記めっき液とが接触可能な槽と、
前記準備基板が搬送される搬送方向において、前記槽の上流側に配置される第1電極部と、
前記搬送方向において、前記槽の下流側に配置される第2電極部と、を備えるめっき装置を用いて、前記工程(2)を実施し、
前記めっき装置は、前記槽と前記第2電極部との間に配置される液除去部をさらに備え、
前記工程(2)では、前記導体層への給電を維持しながら、前記液除去部が、前記配線回路基板に付着する前記めっき液を除去する、請求項7に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記液除去部は、前記めっき液が付着した前記配線回路基板と接触して、前記めっき液を除去する液切りロールを含む、請求項8に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記液除去部は、前記めっき液が付着した前記配線回路基板に水をかける洗浄装置を含む、請求項8に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項11】
ベース絶縁層と、
厚み方向における前記ベース絶縁層の一方面に配置される導体層であって、端子および配線を有する導体層と、
厚み方向における前記ベース絶縁層の一方面に、前記配線を被覆するように配置されるカバー絶縁層と、
厚み方向における前記端子の一方面および/または他方面に配置される合金めっき層とを備え、
前記合金めっき層は、第1金属および前記第1金属のイオン化傾向より小さいイオン傾向を有する第2金属を含み、
前記合金めっき層の表面における前記第1金属および前記第2金属の総量に対する前記第1金属の質量比R1に対する、前記合金めっき層の内部における前記第1金属および前記第2金属の総量に対する前記第1金属の質量比R2の比(R2/R1)は、0.9以上、1.1以下である、配線回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子を備える準備基板の端子に、めっき層を形成して、配線回路基板を製造する方法が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。めっき層の形成では、準備基板をめっき液に浸漬しながら、端子に給電する。上記した給電により、めっき層が端子上に析出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
めっき層の析出後は、給電を停止し、その後、配線回路基板をめっき液から引き上げる。これによって、配線回路基板は、めっき液から離れる。
【0005】
しかるに、配線回路基板の用途および目的によって、めっき層が合金である場合がある。この場合には、めっき液は、イオン化傾向が異なる複数の金属のカチオンを含む。そして、上記した方法では、めっき層における内部および表面近傍において、合金の組成が大きく相違するという不具合がある。
【0006】
本発明は、めっき層における内部および表面近傍において、第1金属および第2金属のそれぞれの割合が同一または近似する配線回路基板およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、ベース絶縁層と、厚み方向における前記ベース絶縁層の一方面に配置される導体層であって、端子および配線を有する導体層と、厚み方向における前記ベース絶縁層の一方面に、前記配線を被覆するように配置されるカバー絶縁層とを備える準備基板であって、前記端子が前記ベース絶縁層および/または前記カバー絶縁層から露出する準備基板を準備する工程(1)と、前記準備基板を、第1金属および前記第1金属のイオン化傾向より小さいイオン傾向を有する第2金属のそれぞれのカチオンを含むめっき液に浸漬して、前記導体層へ給電する電解めっきを用いて、前記第1金属および前記第2金属を含む合金めっき層を、厚み方向における前記端子の一方面および/または他方面に形成する工程(2)と、を備える配線回路基板の製造方法であり、前記工程(2)では、前記導体層への給電を維持しながら、前記配線回路基板を前記めっき液から離す、配線回路基板の製造方法を含む。
【0008】
この製造方法における工程(2)では、電源からの導体層への給電を維持しながら、配線回路基板をめっき液から離す。また、第1金属のイオン化傾向は、第2金属のイオン化傾向より大きい。そうすると、配線回路基板をめっき液から離す際に、給電停止に起因する合金めっき層からの第1金属の脱離を起こしにくい。そのため、合金めっき層における内部および表面近傍において、第1金属および第2金属のそれぞれの質量比が同一または近似する。
【0009】
本発明[2]は、前記第1金属および前記第2金属は、銀、銅、ビスマス、アンチモン、錫、および、亜鉛からなる群から選択される少なくとも2つの金属を含む、[1]に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0010】
本発明[3]は、前記第1金属または前記第2金属は、錫を含む、[1]または[2]に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0011】
本発明[4]は、枚葉式の電解めっきで、前記工程(2)を実施する、[1]から[3]のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0012】
本発明[5]は、前記工程(2)では、前記導体層への給電を維持しながら、前記配線回路基板を前記めっき液から引き上げる、[4]に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0013】
この製造方法の工程(2)では、導体層への給電を維持しながら、配線回路基板をめっき液から引き上げるので、第1金属および第2金属のそれぞれの質量比を簡便に同一または近似にできる。
【0014】
本発明[6]は、前記工程(2)では、前記導体層への給電を維持しながら、前記めっき液を、前記めっき液を収容する槽から抜き取る、[4]に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0015】
この製造方法の工程(2)では、めっき液を、槽から抜き取るので、第1金属および第2金属のそれぞれの質量比を簡便に同一または近似させることができる。
【0016】
本発明[7]は、ロール-トゥ-ロール式の電解めっきで、前記工程(2)を実施する、[1]から[3]のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0017】
本発明[8]は、前記めっき液を収容する槽であって、長尺の前記準備基板と前記めっき液とが接触可能な槽と、前記準備基板が搬送される搬送方向において、前記槽の上流側に配置される第1電極部と、前記搬送方向において、前記槽の下流側に配置される第2電極部と、を備えるめっき装置を用いて、前記工程(2)を実施し、前記めっき装置は、前記槽と前記第2電極部との間に配置される液除去部をさらに備え、前記工程(2)では、前記導体層への給電を維持しながら、前記液除去部が、前記配線回路基板に付着する前記めっき液を除去する、[7]に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0018】
この製造方法の工程(2)では、導体層への給電を維持しながら、液除去部が、配線回路基板に付着するめっき液を除去するので、導体層への給電を維持しながら、配線回路基板をめっき液から確実に離すことができる。
【0019】
本発明[9]は、前記液除去部は、前記めっき液が付着した前記配線回路基板と接触して、前記めっき液を除去する液切りロールを含む、[8]に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0020】
本発明[10]は、前記液除去部は、前記めっき液が付着した前記配線回路基板に水をかける洗浄装置を含む、[8]または[9]に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0021】
本発明[11]は、ベース絶縁層と、厚み方向における前記ベース絶縁層の一方面に配置される導体層であって、端子および配線を有する導体層と、厚み方向における前記ベース絶縁層の一方面に、前記配線を被覆するように配置されるカバー絶縁層と、厚み方向における前記端子の一方面および/または他方面に配置される合金めっき層とを備え、前記合金めっき層は、第1金属および前記第1金属のイオン化傾向より小さいイオン傾向を有する第2金属を含み、前記合金めっき層の表面における前記第1金属および前記第2金属の総量に対する前記第1金属の質量比R1に対する、前記合金めっき層の内部における前記第1金属および前記第2金属の総量に対する前記第1金属の質量比R2の比(R2/R1)は、0.9以上、1.1以下である、配線回路基板を含む。
【0022】
この配線回路基板では、合金めっき層の表面における第1金属の質量比R1に対する、合金めっき層の内部における第1金属の質量比R2の比(R2/R1)が0.9以上、1.1以下であるので、外部部品との接続信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の配線回路基板およびその製造方法は、めっき層における内部および表面近傍において、第1金属および第2金属のそれぞれの割合が同一または近似する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の製造方法の第1実施形態により製造される配線回路基板の一部の平面図である。
【
図3】
図3Aから
図3Dは、製造方法の工程図である。
図3Aは、工程(1)である。
図3Bは、工程(2)であって、レジストを形成する工程である。
図3Cは、工程(2)であって、電解めっきを実施する工程である。
図3Dは、レジストを除去する工程である。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、工程(2)を説明する工程図である。
図5Aは、準備基板をめっき液に浸漬しながら、導体層へ給電する工程である。
図5Bは、導体層への給電を維持しながら、配線回路基板をめっき液から引き上げる工程である。
【
図6】導体層への給電を維持しながら、めっき液を槽から抜き取る工程である。
【
図7】第2実施形態における第2めっき装置の概略図である。
【
図14】従来例の第1金属および第2金属のカチオンの挙動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1-
図6を参照して、本発明の配線回路基板の製造方法の第1実施形態を説明する。
【0026】
1. 第1実施形態
1.1 配線回路基板1
本発明の製造方法の第1実施形態で製造される配線回路基板1を説明する。
図1に示すように、配線回路基板1は、シート形状を有する。配線回路基板1は、面方向に延びる。面方向は、厚み方向に直交する。配線回路基板1は、ベース絶縁層2と、導体層3と、カバー絶縁層4と、合金めっき層5とを備える。
【0027】
1.2 ベース絶縁層2
図2Aおよび
図2Bに示すように、ベース絶縁層2は、厚み方向における配線回路基板1の他端部に配置される。ベース絶縁層2は、シート形状を有する。ベース絶縁層2は、面方向に延びる。ベース絶縁層2の厚みは、例えば、1μm以上であり、また、例えば、150μm以下である。ベース絶縁層2の材料は、例えば、絶縁性の樹脂である。樹脂としては、例えば、ポリイミドが挙げられる。
【0028】
1.3 導体層3
導体層3は、厚み方向におけるベース絶縁層2の一方面に配置される。導体層3は、厚み方向におけるベース絶縁層2の一方面に接触する。導体層3は、配線32および端子31を有する。
【0029】
配線32は、互いに間隔を隔てて複数配置される。
図1に示すように、複数の配線32のそれぞれは、所定方向に沿って延びる。端子31は、配線32に対応して複数設けられる。複数の端子31のそれぞれは、複数の配線32のそれぞれに連続する。端子31は、配線32の端部からから延びる。複数の端子31は、互いに間隔が隔てられる。導体層3の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、20μm以下である。導体層3の材料としては、例えば、金属が挙げられる。金属としては、例えば、銅が挙げられる。
【0030】
なお、
図3Dに示すように、端子31は、表面層311を有してもよい。表面層311は、端子31の表面に位置する。表面層311は、金属保護層である。表面層311の材料としては、例えば、金、および、ニッケルが挙げられる。表面層311は、単層または多層である。表面層311の厚みは、例えば、0.01μm以上、5μm以下である。
【0031】
1.4 カバー絶縁層4
図2Aおよび
図2Bに示すように、カバー絶縁層4は、厚み方向におけるベース絶縁層2の一方面に、配線32を被覆するように配置される。本実施形態では、端子31は、カバー絶縁層4から露出する。カバー絶縁層4の材料は、上記したベース絶縁層2の材料と同じである。カバー絶縁層4の厚みは、限定されない。
【0032】
1.5 合金めっき層5
本実施形態では、合金めっき層5は、厚み方向における端子31の一方面に配置される。合金めっき層5は、
図2Aに示すように、仮想線で示す外部部品6と端子31とを電気的に接続するための導電部材である。具体的には、合金めっき層5は、バンプである。本実施形態では、合金めっき層5は、略箱形状を有する。
図1に示すように、合金めっき層5は、平面視略矩形状を有する。合金めっき層5は、平面視において、端子31とともに延びる。合金めっき層5は、断面視略矩形状を有する。
図2Aおよび
図2Bに示すように、合金めっき層5は、厚み方向における端子31の一方面31から一方側に向かって延びる。
【0033】
合金めっき層5は、第1金属および第2金属を含む。第1金属のイオン化傾向は、第2金属のイオン化傾向より大きい。換言すれば、第2金属は、第1金属のイオン化傾向より小さいイオン傾向を有する。第1金属および第2金属は、銀、銅、ビスマス、アンチモン、錫、および、亜鉛からなる群から選択される少なくとも2つの金属を含む。融点が比較的低く、低温で接合できる観点から、第1金属または第2金属は、好ましくは、錫を含む。
【0034】
本実施形態では、イオン化傾向が大きいことは、標準電極電位が低いことと同義である。換言すれば、第1金属の標準電極電位は、第2金属の標準電極電位より低い。上記で例示した金属の標準電極電位を下記表1に示す。
【0035】
【0036】
第1金属および第2金属の組合せとして、例えば、第1金属が亜鉛であり、第2金属が銀、銅、ビスマス、アンチモンまたは錫である組合せ、例えば、第1金属が錫であり、第2金属が銀、銅、ビスマスまたはアンチモンである組合せ、例えば、第1金属がアンチモンであり、第2金属が銀、銅またはビスマスである組合せ、例えば、第1金属がビスマスであり、第2金属が銀または銅である組合せ、例えば、第1金属が銅であり、第2金属が銀である組合せが挙げられる。好ましくは、第1金属が錫であり、第2金属が銀である組合せが挙げられる。
【0037】
合金めっき層5における第1金属および第2金属のそれぞれの含有割合は、配線回路基板1の用途および目的に応じて、適宜設定される。合金めっき層5における第1金属の含有割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは、75質量%以上、より好ましくは、90質量%以上であり、また、例えば、99.9質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、98質量%以下である。合金めっき層5における第2金属の含有割合は、上記した第1金属の残部である。
【0038】
合金めっき層5の厚みTは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、25μm以下である。合金めっき層5の厚みは、厚み方向におけるベース絶縁層2の一方面から、厚み方向における合金めっき層5の一方面までの距離である。
【0039】
1.6 配線回路基板1の製造方法
次に、配線回路基板1の製造方法を説明する。この配線回路基板1の製造方法は、工程(1)と、工程(2)と、を備える。この製造方法では、工程(1)と、工程(2)とが、順に実施される。
【0040】
1.6.1 工程(1)
図3Aに示すように、工程(1)では、準備基板11を準備する。準備基板11は、合金めっき層5をまだ備えない、製造途中の配線回路基板1である。具体的には、準備基板11は、上記したベース絶縁層2と、導体層3と、カバー絶縁層4とを備える。
【0041】
準備基板11を準備するには、まず、導体層3を、厚み方向におけるベース絶縁層2の一方面に、公知のめっき法によって形成する。続いて、感光性の樹脂組成物を、厚み方向におけるベース絶縁層2および導体層3の一方面に塗布して塗膜を形成し、その後、フォトリソグラフィーを用いて、カバー絶縁層4を形成する。その後、必要により、めっきにより、表面層311を端子31に形成する。
【0042】
続いて、工程(2)では、
図3Bに示すように、レジスト8を、厚み方向における準備基板11の一方面に形成する。レジスト8は、合金めっき層5の逆パターンを有する。
【0043】
工程(2)では、電解めっきを用いて、合金めっき層5を、厚み方向における端子31の一方面に形成する。
図5Aに示すように、電解めっきでは、準備基板11を、めっき液70に浸漬して、導体層3へ給電する。
【0044】
めっき液70は、第1金属および第1金属のイオン化傾向より小さいイオン傾向を有する第2金属のそれぞれのカチオンを含む。めっき液70の組成は、上記した第1金属および第2金属のそれぞれのカチオンを含めば、限定されない。
【0045】
本実施形態では、枚葉式の電解めっきで、工程(2)を実施する。具体的には、電解めっきでは、
図5Aに示す第1めっき装置71が用いられる。
【0046】
第1めっき装置71は、槽711と、電源712と、電極713と、図示しない移動装置と、を備える。
【0047】
槽711は、めっき液70を収容する。
【0048】
電源712は、例えば、整流器を含む。整流器は、直流電流を電極713および導体層3に供給可能である。
【0049】
本実施形態では、電極713は、アノードである。電解めっきにおいて、電極713は、めっき液70におけるアニオンから電子を受け取る。電極713は、板形状を有してもよい。電極713は、ライン710を介して電源712と電気的に接続される。電極713は、めっき液70と接触している。具体的には、電極713は、めっき液70に浸漬されている。
【0050】
図示しない移動装置は、準備基板11および配線回路基板1を上下に移動可能(引き上げおよび引き下げ可能)である。
【0051】
工程(2)では、まず、準備基板11を第1めっき装置71にセットする。具体的には、槽711におけるめっき液70に、準備基板11を浸漬させる(S1、
図4参照)。なお、複数の準備基板11が集合した集合体シート111をめっき液70に浸漬させてもよい。
【0052】
続いて、電源712からの給電を開始する(S2、
図4参照)。具体的、電源712からの電子を導体層3に流す。すると、端子31は、カソードとして作用する。端子31の表面(一方面)から電子が供給されることによって、端子31の表面に接触するめっき液70における第1金属および第2金属のそれぞれのカチオンは、電子を受け取り、第1金属および第2金属を析出する。
図3Cに示すように、すると、第1金属および第2金属を含む合金めっき層5が形成される。本実施形態では、合金めっき層5は、表面層311に接触する。
【0053】
図5Bに示すように、その後、工程(2)では、電源712からの導体層3への給電を維持しながら、配線回路基板1をめっき液70から離す。具体的には、工程(2)では、導体層3への給電を維持しながら、移動装置を用いて配線回路基板1をめっき液から引き上げる(S3、
図4参照)。
【0054】
なお、
図6に示すように、工程(2)では、配線回路基板1のめっき液70からの引き上げに代えて、めっき液70を、槽711から抜き取ってもよい。この第1めっき装置71は、第2槽714をさらに備える。第2槽714は、槽711の下方に配置される。第2槽714は、管715を介して槽711と通じる。管715は、弁を備える。第2槽714は、槽711内のめっき液70(仮想線)を、管715を介して、受け入れる。
【0055】
その後、電源712からの導体層3への給電を停止する(S4、
図4参照)。
【0056】
その後、
図3Dに示すように、レジスト8を除去する。
【0057】
これによって、配線回路基板1が製造される。この配線回路基板1では、合金めっき層5の表面における第1金属および第2金属の総量に対する第1金属の質量比R1に対する、合金めっき層5の内部における第1金属および第2金属の総量に対する第1金属の質量比R2の比(R2/R1)は、例えば、0.9以上、好ましくは、0.95以上であり、また、1.1以下、好ましくは、1.05である。
【0058】
図2Bに示すように、表面近傍は、厚み方向における合金めっき層5の一方面、および、一方面から、合金めっき層5の厚みTに0.1を乗じた長さ(0.1T)分、厚み方向の他方側に進んだ箇所P1までの深さエリアD1である。
【0059】
内部は、上記した合金めっき層5の一方面から合金めっき層5の厚みTに0.3を乗じた長さ(0.3T)分、厚み方向の他方側に進んだ箇所P2から、上記した一方面から合金めっき層5の厚みTに0.7を乗じた長さ(0.7T)分、厚み方向の他方側に進んだ箇所P3までの深さエリアD2である。上記深さエリアD1,D2のいずれもが、合金めっき層5における厚み方向の中央部C(
図1参照)を含むエリアである。
【0060】
合金めっき層5の表面における第1金属および第2金属の総量に対する第1金属の質量比R1は、合金めっき層5の表面のエネルギー分散型X線分光分析によって求められる。合金めっき層5の内部における第1金属および第2金属の総量に対する第1金属の質量比R2は、中央部Cを切断する切断のエネルギー分散型X線分光分析によって求められる。
【0061】
2. 第1実施形態の作用効果
しかるに、
図13に示すように、導体層3への給電を停止した(S4)後、配線回路基板1をめっき液70から離す(引き上げる)(S3)と、
図14に示すように、給電停止後におけるめっき液70では、第1金属および第2金属の挙動は、電源712からの給電にもはや依存せず、第1金属および第2金属のイオン化傾向のみに依存する。そして、合金めっき層5における第1金属のイオン化傾向は、第2金属よりイオン化傾向が大きい。
【0062】
そのため、合金めっき層5の表面近傍の第1金属と、めっき液70中の第2金属(第2金属のカチオン)とが置換する反応(置換反応)が生じる。つまり、合金めっき層5の表面近傍の第1金属が、めっき液70に溶解し、第2金属が析出する。
【0063】
要するに、合金めっき層5の表面近傍において、第1金属が第2金属に部分的に置き換わる置換反応を起こす。一方、上記した置換反応は、合金めっき層5の内部では生じない。
【0064】
従って、合金めっき層5における内部および表面近傍において、合金の組成、具体的には、第1金属および第2金属のそれぞれの質量比(R1,R2)が大きく相違する。第1金属のイオン化傾向が第2金属よりイオン化傾向より大きいことから、合金めっき層5の表面近傍における第1金属の質量比R1は、合金めっき層5の内部における第1金属の質量比R2が低くなる。
【0065】
しかしながら、
図4および
図5Bに示すように、本実施形態によれば、工程(2)では、電源712からの導体層3への給電を維持しながら、配線回路基板1をめっき液70から離す。そうすると、配線回路基板1をめっき液70から離す際に、めっき液70では、第1金属および第2金属のイオン化傾向に依存した上記した第1金属および第2金属の置換反応を起こしにくい。そのため、合金めっき層5における内部および表面近傍において、合金の組成、具体的には、第1金属および第2金属のそれぞれの質量比(R1,R2)が同一または近似する。
【0066】
図5Bに示すように、工程(2)では、導体層3への給電を維持しながら、配線回路基板1をめっき液から引き上げるので、第1金属および第2金属のそれぞれの質量比(R1,R2)を簡便に同一または近似にできる。
【0067】
また、
図6に示すように、工程(2)では、めっき液70を、槽711から抜き取るので、第1金属および第2金属のそれぞれの質量比(R1,R2)を簡便に同一または近似させることができる。
【0068】
この配線回路基板1では、合金めっき層5の表面における第1金属の質量比R1に対する、合金めっき層5の内部における第1金属の質量比R2の比(R2/R1)が0.9以上、1.1以下であるので、外部部品6との接続信頼性に優れる。
【0069】
3. 第2実施形態
以下の第2実施形態において、上記した第1実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第2実施形態は、特記する以外、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0070】
図7に示すように、第2実施形態では、ロール-トゥ-ロール式の電解めっきで、工程(2)を実施する。具体的には、第2めっき装置72を用いて、工程(2)を実施する。なお、工程(1)も、ロール-トゥ-ロール式で実施してもよい。
【0071】
第2めっき装置72は、槽721と、第1電極部722と、第2電極部723と、図示しない電源と、液除去部724と、水洗浄槽725と、を備える。
【0072】
槽721は、めっき液(図示せず)を収容する。槽721では、長尺の準備基板11が搬送されながら、準備基板11とめっき液とが接触可能である。
【0073】
第1電極部722は、準備基板11が搬送される搬送方向において、槽721の上流側に配置される。第1電極部722は、第1電極ロールである。本実施形態では、第1電極ロールは、鉛直方向に延びる。第1電極部722は、準備基板11と接触することによって、導体層3と電気的に接続される。
【0074】
第2電極部723は、搬送方向において槽721の下流側に配置される。第2電極部723は、第2電極ロールである。本実施形態では、第2電極ロールは、鉛直方向に延びる。
【0075】
図示しない電源は、第1電極部722および第2電極部723とに接続される。
【0076】
液除去部724は、槽721と第2電極部723との間に配置される。液除去部724は、配線回路基板1に付着するめっき液を除去する。本実施形態では、液除去部724は、液切りロール7241と、洗浄装置7242と、を含む。
【0077】
液切りロール7241は、めっき液が付着した配線回路基板1と接触して、めっき液を除去する。液切りロール7241は、1対である。本実施形態では、1対の液切りロールのそれぞれは、鉛直方向に延びる。1対の液切りロール7241は、配線回路基板1を上下両側から挟む。
【0078】
本実施形態では、洗浄装置7242は、搬送方向における液切りロール7241の下流側に配置される。洗浄装置7242は、めっき液が付着した配線回路基板1に水をかける。洗浄装置7242としては、例えば、噴射装置を含む。噴射装置は、配線回路基板1に水を噴射可能である。
【0079】
水洗浄槽725は、搬送方向における第2電極部723の下流側に配置される。水洗浄槽725は、水を収容する。水洗浄槽725では、配線回路基板1に残存する微量のめっき液を洗浄する。
【0080】
長尺の準備基板11(集合体シート111)は、第1電極部722と、槽721と、第2電極部723と、液除去部724と、水洗浄槽725とを通過するように、第2めっき装置72にセットされる。工程(2)では、準備基板11が搬送されながら、第1電極部722および第2電極部723から導体層3に給電される。これによって、
図3Dに示すように、槽721を通過する準備基板11(集合体シート111)に合金めっき層5が形成される。
【0081】
続いて、本実施形態の工程(2)では、第1電極部722および第2電極部723によって、導体層3への給電を維持しながら、液除去部724が、配線回路基板1に付着するめっき液を除去する。液除去部724では、液切りロール7241が、めっき液を除去するとともに、洗浄装置7242が水を配線回路基板1にかけて(噴射して)、配線回路基板1を洗浄する。
【0082】
その後、配線回路基板1は、第1電極部722および第2電極部723の間から脱離して、水洗浄槽725を通過した後、図示しない巻取ロールによって巻き取られる。
【0083】
3.1 第2実施形態の作用効果
この製造方法の工程(2)では、導体層3への給電を維持しながら、液切り部7241および洗浄装置7242を含む液除去部724が、配線回路基板1に付着するめっき液を除去する。そのため、導体層3への給電を維持しながら、配線回路基板1をめっき液から確実に離すことができる。
【0084】
3.1 第2実施形態の変形例
図8に示すように、変形例では、第1電極部722と、第2電極部723、および、液切りロール7241は、水平方向に延びてもよい。第1電極部722と、第2電極部723、および、液切りロール7241は、準備基板11の搬送方向に直交する方向にも延びる。
【0085】
図示ないが、液除去部724は、液切りロール7241および洗浄装置7242のうちいずれか1つのみを備えてもよい。
【0086】
4. 他の変形例
図9に示すように、合金めっき層5は、厚み方向における端子31の一方面と、端子31の一側面とに配置されてもよい。
【0087】
図10に示すように、合金めっき層5は、厚み方向における端子31の他方面に配置されてもよい。この変形例では、合金めっき層5は、ベース絶縁層2から露出する。端子31は、ベース絶縁層2によって被覆される。
【0088】
図11における合金めっき層は、端子31は、ベース絶縁層2およびカバー絶縁層4から露出してもよい。この変形例では、端子31は、フライングリード構造を有する。
【0089】
図12に示すように、合金めっき層5は、厚み方向における端子31の一方面および両側面に配置されていてもよい。
【実施例0090】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる体積割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する体積割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0091】
実施例1
第1実施形態に準拠して、配線回路基板1を製造した。工程(2)では、
図5Aおよび
図5Bに示す第1めっき装置71を用いて、準備基板11を、めっき液70に浸漬して、導体層3へ給電し、続いて、電源712からの導体層3への給電を維持しながら、配線回路基板1をめっき液70から離した。具体的には、具体的には、
図5Bに示すように、導体層3への給電を維持しながら、配線回路基板1をめっき液から引き上げた。その後、
図4に示すように、電源712からの導体層3への給電を停止した(S4)。これによって、厚み23μmの合金めっき層5を形成した。合金めっき層5は、錫(第1金属)および銀(第2金属)を含む。
【0092】
めっき液70の種類および組成は、以下の通りである。
種類:EPS-015ADM(石原ケミカル株式会社製)
アニオン成分:スルホン酸
錫:50g/L
銀:2g/L
【0093】
比較例1
実施例1と同様に処理して、配線回路基板1を製造した。但し、
図13に示すように、導体層3への給電を停止した(S4)後、配線回路基板1をめっき液70から離した。
【0094】
(評価)
実施例1および比較例1のそれぞれの合金めっき層5について下記を評価した。
【0095】
合金めっき層5の表面における第1金属および第2金属の総量に対する第1金属の質量比R1を、合金めっき層5の表面のエネルギー分散型X線分光分析によって求めた。
【0096】
合金めっき層5の内部における第1金属および第2金属の総量に対する第1金属の質量比R2を、中央部Cを切断する切断のエネルギー分散型X線分光分析によって求められた。
エネルギー分散型X線分光分析の条件は、以下の通りである。
株式会社日立ハイテク社製:FlexSEM-1000
加速電圧:15kV
その結果を表2に示す。
【0097】