(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115865
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】トランスファ組立装置及び組立方法
(51)【国際特許分類】
F16H 57/023 20120101AFI20240820BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
F16H57/023
B23P21/00 301A
B23P21/00 303C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021741
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 和城
(72)【発明者】
【氏名】高井 弘治
(72)【発明者】
【氏名】丸崎 太一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聖翔
【テーマコード(参考)】
3C030
3J063
【Fターム(参考)】
3C030CA11
3J063AA01
3J063AB01
3J063AB21
3J063AC16
3J063BA01
3J063BB01
3J063CB33
3J063CB41
3J063CD43
3J063CD67
3J063XA08
3J063XA09
(57)【要約】
【課題】トランスファを組み立てる際に、シールリップのめくれを防止する。
【解決手段】トランスファケース2のギヤ取付穴6に下方からギヤガイド部22を挿入し、ギヤガイド部22に設けられた嵌合面22aの上端を、ギヤ取付穴6に取り付けられたシール部材12よりも上方に配する。次に、ドライブギヤ3を、ギヤガイド部22の嵌合面22aに上方から嵌合させる。そして、ドライブギヤ3とギヤガイド部22の嵌合面22aとを嵌合させた状態で、ドライブギヤ3をシール部材12の内周に挿入する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンが架け渡されたドライブギヤ及びアウトプットシャフトを、トランスファケースに設けられたギヤ取付穴及びシャフト取付穴に軸方向一方側から組み付けるための装置であって、
前記トランスファケースを支持するケース支持部と、前記ドライブギヤと嵌合する嵌合面を有するギヤガイド部とを備え、
前記ギヤガイド部を、前記トランスファケースの前記ギヤ取付穴に軸方向他方側から挿入し、前記嵌合面の少なくとも一部を、前記ギヤ取付穴に取り付けられたシール部材よりも軸方向一方側に配置可能としたトランスファ組立装置。
【請求項2】
前記ギヤガイド部の前記嵌合面が、前記ドライブギヤの軸方向他方側の端部付近と嵌合する請求項1に記載のトランスファ組立装置。
【請求項3】
前記ギヤガイド部が、前記ケース支持部に対して軸方向に相対移動可能である請求項1に記載のトランスファ組立装置。
【請求項4】
チェーンが架け渡されたドライブギヤ及びアウトプットシャフトを、トランスファケースに設けられたギヤ取付穴及びシャフト取付穴に軸方向一方側から組み付けるための装置であって、
前記トランスファケースを支持するケース支持部と、前記アウトプットシャフトと嵌合する嵌合面を有するシャフトガイド部とを備え、
前記シャフトガイド部を、前記トランスファケースの前記シャフト取付穴に軸方向他方側から挿入し、前記嵌合面の少なくとも一部を、前記シャフト取付穴に取り付けられたシール部材よりも軸方向一方側に配置可能としたトランスファ組立装置。
【請求項5】
チェーンが架け渡されたドライブギヤ及びアウトプットシャフトを、トランスファケースに設けられたギヤ取付穴及びシャフト取付穴に軸方向一方側から組み付けるための方法であって、
前記トランスファケースの前記ギヤ取付穴に軸方向他方側からギヤガイド部を挿入し、前記ギヤガイド部に設けられた嵌合面の少なくとも一部を、前記ギヤ取付穴に取り付けられたシール部材よりも軸方向一方側に配する工程と、
前記ドライブギヤを、前記ギヤガイド部の前記嵌合面に軸方向一方側から嵌合させる工程と、
前記ドライブギヤと前記ギヤガイド部の前記嵌合面とを嵌合させた状態で、前記ドライブギヤを前記シール部材の内周に挿入する工程とを有するトランスファの組立方法。
【請求項6】
チェーンが架け渡されたドライブギヤ及びアウトプットシャフトを、トランスファケースに設けられたギヤ取付穴及びシャフト取付穴に軸方向一方側から組み付けるための方法であって、
前記トランスファケースの前記シャフト取付穴に軸方向他方側からシャフトガイド部を挿入し、前記シャフトガイド部に設けられた嵌合面の少なくとも一部を、前記シャフト取付穴に取り付けられたシール部材よりも軸方向一方側に配する工程と、
前記アウトプットシャフトを、前記ギヤガイド部の前記嵌合面に軸方向一方側から嵌合させる工程と、
前記アウトプットシャフトと前記ギヤガイド部の前記嵌合面とを嵌合させた状態で、前記アウトプットシャフトを前記シール部材の内周に挿入する工程とを有するトランスファの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のトランスファを組み立てるための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のトランスファは、トランスミッションから出力されたエンジンの回転駆動力を前輪と後輪に分配するための機構であり、通常、ドライブギヤ及びアウトプットシャフトと、これらに架け渡されるチェーンとを有する。トランスミッションから延びるドライブシャフトがドライブギヤに連結され、ドライブシャフトの回転駆動力が、ドライブギヤ及びチェーンを介してアウトプットシャフトに伝達される。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、トランスファを組み立てる際に使用する移載治具が示されている。この方法では、
図8に示すように、チェーン104を架け渡した状態のドライブギヤ102とアウトプットシャフト103を移載治具111で位置決め保持し、この状態でドライブギヤ102、アウトプットシャフト103、及びチェーン104の一体品をトランスファケース101に上方から組み付けている(
図8の矢印参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トランスファには、トランスファケース101とドライブギヤ102及びアウトプットシャフト103との間からのオイルの漏れ出しを防止するシール部材105、106が設けられる。具体的に、トランスファケース101に設けられたギヤ取付穴101aの内周面及びシャフト取付穴101bの内周面にそれぞれシール部材105、106を固定し、各シール部材105、106に設けられたシールリップを、ドライブギヤ102の外周面(シール面)及びアウトプットシャフト103の外周面(シール面)に摺接させている。
【0006】
トランスファの組立時には、トランスファケース101のギヤ取付穴101a及びシャフト取付穴101bにシール部材105、106を取り付けた後、治具111で保持されたドライブギヤ102及びアウトプットシャフト103が、トランスファケース101のギヤ取付穴101a及びシャフト取付穴101bに挿入され、さらにはシール部材105、106の内周に挿入される。しかし、
図8に示す例では、ドライブギヤ102の上端のみを治具111で保持しているため、ギヤ取付穴101aの軸心に対してドライブギヤ102の軸心が傾斜し、ドライブギヤ102の下端がギヤ取付穴101aの軸心から水平方向にずれることがある。この状態で、ドライブギヤ102をシール部材105の内周に挿入すると、ドライブギヤ102の下端がシール部材105と干渉し、シールリップがめくれた状態となって、シール機能が果たせなくなる恐れがある。
【0007】
以上のような問題は、アウトプットシャフト103をシール部材106の内周に挿入する場合にも同様に生じ得る。
【0008】
そこで、本発明は、トランスファを組み立てるに際し、シールリップのめくれを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、チェーンが架け渡されたドライブギヤ及びアウトプットシャフトを、トランスファケースに設けられたギヤ取付穴及びシャフト取付穴に軸方向一方側から組み付けるための装置であって、
前記トランスファケースを支持するケース支持部と、前記ドライブギヤと嵌合する嵌合面を有するギヤガイド部とを備え、
前記ギヤガイド部を、前記トランスファケースの前記ギヤ取付穴に軸方向他方側から挿入し、前記嵌合面の少なくとも一部を、前記ギヤ取付穴に取り付けられたシール部材よりも軸方向一方側に配置可能としたトランスファ組立装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、チェーンが架け渡されたドライブギヤ及びアウトプットシャフトを、トランスファケースに設けられたギヤ取付穴及びシャフト取付穴に軸方向一方側から組み付けるための方法であって、
前記トランスファケースの前記ギヤ取付穴に軸方向他方側からギヤガイド部を挿入し、前記ギヤガイド部に設けられた嵌合面の少なくとも一部を、前記ギヤ取付穴に取り付けられたシール部材よりも軸方向一方側に配する工程と、
前記ドライブギヤを、前記ギヤガイド部の前記嵌合面に軸方向一方側から嵌合させる工程と、
前記ドライブギヤと前記ギヤガイド部の前記嵌合面とを嵌合させた状態で、前記ドライブギヤを前記シール部材の内周に挿入する工程とを有するトランスファの組立方法を提供する。
【0011】
上記のように、本発明では、ドライブギヤをトランスファケースに組み付ける際に、トランスファケースのギヤ取付穴に、軸方向他方側(例えば下方)からギヤガイド部を挿入し、ギヤガイド部の嵌合面の少なくとも一部をシール部材よりも軸方向一方側(例えば上方)に配置する。この状態で、ドライブギヤをギヤガイド部の嵌合面に軸方向一方側(例えば上方)から嵌合させることで、ドライブギヤを、ギヤガイド部に対して芯出しし、ひいてはシール部材に対して芯出しすることができる。この状態で、ドライブギヤをシール部材の内周に挿入することにより、ドライブギヤとシール部材との干渉が回避されるため、シールリップのめくれを防止できる。
【0012】
上記の装置及び方法では、ギヤガイド部の嵌合面を、ドライブギヤの軸方向他方側の端部付近と嵌合させることが好ましい。これにより、ドライブギヤのうち、シール部材の内周に挿入される軸方向他方側の端部(例えば下端)付近を、シール部材に対して芯出しすることができる。
【0013】
ギヤガイド部は、ケース支持部に対して軸方向に相対移動可能であることが好ましい。これにより、ケース支持部で支持されたトランスファケースに対して、ギヤガイド部を任意の軸方向位置に配置することができるため、ギヤガイド部の嵌合面の少なくとも一部を、トランスファケースに取り付けられたシール部材よりも軸方向一方側に配置しやすくなる。
【0014】
本発明は、アウトプットシャフトのトランスファケースへの組み付けにも適用することができる。すなわち、本発明は、チェーンが架け渡されたドライブギヤ及びアウトプットシャフトを、トランスファケースに設けられたギヤ取付穴及びシャフト取付穴に軸方向一方側から組み付けるための装置であって、
前記トランスファケースを支持するケース支持部と、前記アウトプットシャフトと嵌合する嵌合面を有するシャフトガイド部とを備え、
前記シャフトガイド部を、前記トランスファケースの前記シャフト取付穴に軸方向他方側から挿入し、前記嵌合面の少なくとも一部を、前記シャフト取付穴に取り付けられたシール部材よりも軸方向一方側に配置可能としたトランスファ組立装置を提供する。
【0015】
また、本発明は、チェーンが架け渡されたドライブギヤ及びアウトプットシャフトを、トランスファケースに設けられたギヤ取付穴及びシャフト取付穴に軸方向一方側から組み付けるための方法であって、
前記トランスファケースの前記シャフト取付穴に軸方向他方側からシャフトガイド部を挿入し、前記シャフトガイド部に設けられた嵌合面の少なくとも一部を、前記シャフト取付穴に取り付けられたシール部材よりも軸方向一方側に配する工程と、
前記アウトプットシャフトを、前記ギヤガイド部の前記嵌合面に軸方向一方側から嵌合させる工程と、
前記アウトプットシャフトと前記ギヤガイド部の前記嵌合面とを嵌合させた状態で、前記アウトプットシャフトを前記シール部材の内周に挿入する工程とを有するトランスファの組立方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、トランスファを組み立てる際に、シールリップがめくれる事態を防止して、シール機能の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】部品仮組体を部品仮組台にセットした状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るトランスファ組立装置の断面図であり、トランスファケースをセットした状態を示す。
【
図4】上記トランスファ組立装置の断面図であり、ギヤガイド部及びシャフトガイド部を上昇させた状態を示す。
【
図5】上記トランスファ組立装置の断面図であり、ギヤガイド部及びシャフトガイド部に部品仮組体をセットした状態を示す。
【
図6】上記トランスファ組立装置の断面図であり、部品仮組体をトランスファケースに組み付ける様子を示す。
【
図7】上記トランスファ組立装置の断面図であり、ギヤガイド部及びシャフトガイド部を下降させた状態を示す。
【
図8】従来のトランスファ組立装置の断面図であり、ドライブギヤ及びアウトプットシャフトをトランスファケースに固定した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、トランスファ1は、トランスファケース2と、ドライブギヤ3と、アウトプットシャフト4と、チェーン5とを有する。
図1では、トランスファケース2のケース本体2aのみを示しており、ケース本体2aの図中上方にカバーが取り付けられる。トランスファケース2のケース本体2aには、ギヤ取付穴6とシャフト取付穴7が設けられる。ギヤ取付穴6の軸心とシャフト取付穴7の軸心は平行である。以下、ギヤ取付穴6及びシャフト取付穴7の軸心方向を「軸方向」と言う。
【0020】
ドライブギヤ3は、略円筒状を成し、軸方向中間部(図示例では軸方向中央部付近)にスプロケット3aが一体に設けられる。ドライブギヤ3の外周面のうち、下端付近の領域、具体的には下側の転がり軸受9よりも下方の領域には、円筒面状のシール面3bが設けられる。ドライブギヤ3の内周面のうち、下端付近の領域、具体的には下側の転がり軸受9よりも下方の領域には、円筒面3cが設けられる。すなわち、ドライブギヤ3のうち、転がり軸受9よりも下方に設けられた円筒部の外周面にシール面3bが設けられ、同円筒部の内周面に円筒面3cが設けられる。
【0021】
ドライブギヤ3は、スプロケット3aの軸方向両側に設けられた転がり軸受8、9を介して、トランスファケース2に取り付けられる。転がり軸受8、9の内輪は、ドライブギヤ3の外周面に例えば圧入により固定される。上側の転がり軸受8の外輪は、トランスファケース2のカバー(図示省略)の内周面に、半径方向の微小隙間を介して嵌合する。下側の転がり軸受9の外輪は、トランスファケース2のケース本体2aのギヤ取付穴6の内周面に、半径方向の微小隙間を介して嵌合する。
【0022】
アウトプットシャフト4は、中実の軸状を成し、軸方向中間部(図示例では上端付近)にスプロケット4aが一体に設けられる。アウトプットシャフト4の外周面のうち、下端付近の領域、具体的には下側の転がり軸受9よりも下方の領域には、円筒面状のシール面4bが設けられる。
【0023】
アウトプットシャフト4は、スプロケット4aの軸方向両側に設けられた転がり軸受10、11を介してトランスファケース2に取り付けられる。転がり軸受10、11の内輪は、アウトプットシャフト4の外周面に例えば圧入により固定される。上側の転がり軸受10の外輪は、トランスファケース2のカバー(図示省略)の内周面に、半径方向の微小隙間を介して嵌合する。下側の転がり軸受11の外輪は、トランスファケース2のケース本体2aのシャフト取付穴7の内周面に、半径方向の微小隙間を介して嵌合する。
【0024】
ケース本体2aのギヤ取付穴6の下端付近にはシール部材12が固定されている。シール部材12のシールリップを、ドライブギヤ3のシール面3bに摺接させることにより、ドライブギヤ3の外周面とギヤ取付穴6の内周面との間の隙間がシールされ、トランスファケース2内のオイルの漏れ出しを防止する。また、ケース本体2aのシャフト取付穴7の下端にはシール部材13が固定されている。シール部材13のシールリップをアウトプットシャフト4のシール面4bに摺接させることにより、アウトプットシャフト4の外周面とシャフト取付穴7の内周面との間の隙間がシールされ、トランスファケース2内のオイルの漏れ出しを防止する。
【0025】
チェーン5は、ドライブギヤ3のスプロケット3aとアウトプットシャフト4のスプロケット4aとに架け渡される。これにより、ドライブギヤ3の回転駆動力が、チェーン5を介してアウトプットシャフト4に伝達される。
【0026】
以下、上記のトランスファ1を組み立てる手順を説明する。
【0027】
[部品仮組工程]
まず、
図2に示すように、ドライブギヤ3及び転がり軸受8、9からなるドライブギヤユニット14と、アウトプットシャフト4及び転がり軸受10、11からなるアウトプットシャフトユニット15と、チェーン5とを、部品仮組台30上で仮組みする。具体的には、まず、ドライブギヤユニット14を、部品仮組台30に設けられたギヤ挿入穴31に上方から挿入し、ギヤ挿入穴31の肩面31aの上にドライブギヤユニット14(図示例では転がり軸受9)を載置する。また、アウトプットシャフトユニット15を、部品仮組台30に設けられたシャフト挿入穴32に上方から挿入し、シャフト挿入穴32の肩面32aにアウトプットシャフトユニット15(図示例では転がり軸受11)を載置する。シャフト挿入穴32は、ギヤ挿入穴31に接近離反する方向(図中左右方向)に長大な形状を成しており、シャフト挿入穴32のうち、ギヤ挿入穴31に近い側の端部付近にシャフトユニット15がセットされる(
図2の点線参照)。
【0028】
その後、ドライブギヤ3のスプロケット3aとアウトプットシャフト4のスプロケット4aとにチェーン5を架け渡しながら、アウトプットシャフトユニット15を、ドライブギヤユニット14から離反する側(
図2の右側)に移動させる。これにより、ドライブギヤユニット14、アウトプットシャフトユニット15、及びチェーン5からなる部品仮組体16が完成する。
【0029】
次に、
図3に示すトランスファ組立装置20を用いて、部品仮組体16をトランスファケース2のケース本体2aに組み付ける。
【0030】
[トランスファ組立装置の構成]
トランスファ組立装置20は、トランスファケース2のケース本体2aを位置決め支持するケース支持部21と、ドライブギヤ3をガイドするギヤガイド部22と、アウトプットシャフト4をガイドするシャフトガイド部23とを有する。
【0031】
ケース支持部21は、同一直線状にない少なくとも3箇所に設けられる。各ケース支持部21は、ケース本体2aを下方から支持する支持面と、ケース本体2aに設けられた位置決め穴に挿入される位置決めピンとを有する。複数のケース支持部21は、固定台26に固定される。
【0032】
ギヤガイド部22の外周面には、大径円筒面22aと、大径円筒面22aの上方に設けられ、大径円筒面22aよりも小径な小径円筒面22bと、これらを連続するテーパ面22cとが設けられる。シャフトガイド部23の上端には、上方に開口した円筒部23aが設けられる。ギヤガイド部22及びシャフトガイド部23は、ケース支持部21に対して軸方向に相対移動可能とされる。図示例では、ギヤガイド部22及びシャフトガイド部23が固定された昇降台24と、昇降台24を昇降させる駆動部25が設けられる。駆動部25としては、例えばシリンダ(例えば、エアシリンダや電動シリンダ)が使用される。
【0033】
[ケースセット工程]
まず、
図3に示すように、トランスファ組立装置20のケース支持部21に、トランスファケース2のケース本体2aをセットする。詳しくは、各ケース支持部21の支持面でケース本体2aを下方から支持すると共に、各ケース支持部21のピンをケース本体2aの位置決め穴に下方から挿入することで、ケース本体2aが上下方向及び水平方向で位置決めされる。ケース本体2aのギヤ取付穴6の内周面の下端付近には、予めシール部材12が固定され、ケース本体2aのシャフト取付穴7の内周面の下端付近には、予めシール部材13が固定されている。
【0034】
[ガイド上昇工程]
次に、駆動部25を駆動して、
図4に示すように昇降台24、ギヤガイド部22、及びシャフトガイド部23を一体に上昇させる。これにより、ギヤガイド部22及びシャフトガイド部23を、ケース支持部21にセットされたケース本体2aのギヤ取付穴6及びシャフト取付穴7の内周に下方から挿入する。本実施形態では、ギヤガイド部22の大径円筒面22aの上端が、ケース本体2aのギヤ取付穴6に固定されたシール部材12よりも上方に配されると共に、シャフトガイド部23の円筒部23aの上端が、ケース本体2aのシャフト取付穴7に固定されたシール部材13よりも上方に配される。
【0035】
本実施形態では、ギヤガイド部22及びシャフトガイド部23が、ケース支持部21にセットされたケース本体2aのギヤ取付穴6及びシャフト取付穴7と芯出しされた状態を維持しながら、ケース本体2aに対して昇降可能とされる。こうして、ギヤガイド部22及びシャフトガイド部23とギヤ取付穴6及びシャフト取付穴7とが芯出しされた状態で、ギヤガイド部22及びシャフトガイド部23を上昇させることで、ギヤガイド部22及びシャフトガイド部23を、シール部材12、13と過度に干渉することなく、ギヤ取付穴6及びシャフト取付穴7に下方から挿入することができる。
【0036】
[部品セット工程]
次に、部品仮組台30にセットされた部品仮組体16を、
図5に示すように、トランスファ組立装置20にセットされたトランスファケース2のケース本体2aにセットする。本実施形態では、作業者が、ドライブギヤ3の上端とアウトプットシャフト4の上端を手で持って、部品仮組体16を部品仮組台30から持ち上げて、トランスファ組立装置20上のケース本体2aに上方から下降させる。
【0037】
このとき、ドライブギヤ3の内周面を、ギヤガイド部22の外周面に嵌合させることで、ドライブギヤ3の芯出し、すなわち、ドライブギヤ3の軸心と、ケース本体2aのギヤ取付穴6の軸心との芯出し、さらにはギヤ取付穴6に固定されたシール部材12の軸心との芯出しが行われる。詳しくは、まず、ドライブギヤ3の内周面の下端付近に設けられた円筒面3cが、ギヤガイド部22の上端付近に設けられた小径円筒面22bに嵌合することで、ドライブギヤ3の大まかな芯出しが行われる。その後、ドライブギヤ3をさらに下降させて、ドライブギヤ3の円筒面3cがギヤガイド部22の大径円筒面22aに嵌合することで、ドライブギヤ3の高精度な芯出しが行われる。そして、ドライブギヤ3の内周面に設けられたテーパ面3dが、ギヤガイド部22の外周面のテーパ面22cに当接することで、ドライブギヤ3のセットが完了する。
【0038】
このとき、上記のガイド上昇工程で、予めギヤガイド部22の大径円筒面22aの上端がシール部材12よりも上方に配置されている。そのため、シール部材12よりも上方で(すなわち、シール部材12の内周に挿入する前に)、ドライブギヤ3の円筒面3cをギヤガイド部22の大径円筒面22a(嵌合面)に嵌合させて、ドライブギヤ3を芯出しすることができる。特に、本実施形態では、シール部材12よりも上方で、ドライブギヤ3の内周面の下端付近に設けられた円筒面3cの全域を、ギヤガイド部22の大径円筒面22aに嵌合させている。これにより、ドライブギヤ3のうち、シール部材12の内周に挿入される部分(シール面3b及びそれよりも下方の領域)が、シール部材12に対して高精度に芯出しされる。
【0039】
また、部品仮組体16をケース本体2aの上方から下降させて、アウトプットシャフト4の外周面を、シャフトガイド部23の円筒部23aの内周面に嵌合させることで、アウトプットシャフト4の芯出し、すなわち、アウトプットシャフト4の軸心と、ケース本体2aのシャフト取付穴7の軸心との芯出し、さらにはシャフト取付穴7に固定されたシール部材13との芯出しが行われる。そして、アウトプットシャフト4の下端が、シャフトガイド部23の円筒部23aの底面に当接したら、アウトプットシャフト4のセットが完了する。
【0040】
このとき、上記のガイド上昇工程で、予めシャフトガイド部23の円筒部23aの上端がシール部材13よりも上方に配置されている。そのため、シール部材13よりも上方で(すなわち、シール部材13の内周に挿入する前に)、アウトプットシャフト4をシャフトガイド部23の円筒部23aの内周面(嵌合面)に嵌合させて、アウトプットシャフト4を芯出しすることができる。特に、本実施形態では、アウトプットシャフト4の外周面の下端付近にシール面4bが設けられ、このシール面4bをシャフトガイド部23の円筒部23aの内周面と嵌合させている。これにより、アウトプットシャフト4のうち、シール部材13の内周に挿入される部分(シール面4b及びそれよりも下方の領域)が、シール部材13に対して高精度に芯出しされる。
【0041】
[部品組付工程]
次に、駆動部25を駆動して、昇降台24、ギヤガイド部22、シャフトガイド部23、及び部品仮組体16を一体に下降させる(
図6参照)。これにより、ドライブギヤ3の下端がシール部材12の内周に挿入される。このとき、ドライブギヤ3の下端付近に設けられた円筒面3cが、ギヤガイド部22の大径円筒面22aと嵌合しているため、ドライブギヤ3の下端(具体的には、シール面3b及びそれよりも下方の領域)がシール部材12に対して芯出しされた状態となっている。この状態で、ドライブギヤ3とギヤガイド部22を一体に下降させて、ドライブギヤ3の下端をシール部材12の内周に挿入することで、ドライブギヤ3とシール部材12との干渉を防止できる。
【0042】
これと同時に、ドライブギヤ3に取り付けられた転がり軸受9の外周面を、ケース本体2aのギヤ取付穴6の内周面に嵌合させる。そして、転がり軸受9の下側端面がギヤ取付穴6の肩面に当接すると、ドライブギヤ3の下降が規制される。その後、さらにギヤガイド部22を下降させることで、
図7に示すように、ドライブギヤ3からギヤガイド部22が分離される。
【0043】
また、昇降台24、ギヤガイド部22、シャフトガイド部23、及び部品仮組体16を一体に下降させることにより、アウトプットシャフト4の下端がシール部材13の内周に挿入される。このとき、アウトプットシャフト4の外周面の下端付近(シール面4b)が、シャフトガイド部23の円筒部23aの内周面と嵌合しているため、アウトプットシャフト4の下端(具体的には、シール面4b及びそれよりも下方の領域)がシール部材13に対して芯出しされた状態となっている。この状態で、アウトプットシャフト4とシャフトガイド部23を一体に下降させて、アウトプットシャフト4の下端をシール部材13の内周に挿入することで、アウトプットシャフト4とシール部材13との干渉を防止できる。特に、本実施形態では、アウトプットシャフト4の下端が、シャフトガイド部23の円筒部23aで外周から覆われた状態で、シール部材13の内周に挿入されるため、アウトプットシャフト4とシール部材13とが直接摺動しない。これにより、アウトプットシャウト4の下端がシール部材13に干渉してシールリップがめくれる事態を確実に回避できる。
【0044】
これと同時に、アウトプットシャフト4に取り付けられた転がり軸受11の外周面を、ケース本体2aのシャフト取付穴7の内周面に嵌合させる。そして、転がり軸受11の下側端面がシャフト取付穴7の肩面に当接すると、アウトプットシャフト4の下降が規制される。その後、さらにシャフトガイド部23を下降させることで、
図7に示すように、アウトプットシャフト4からシャフトガイド部23が分離される。詳しくは、アウトプットシャフト4に取り付けられた転がり軸受11がシャフト取付穴7の肩面に当接して、アウトプットシャフト4の下降が停止した後、シャフトガイド部23の円筒部23aの外周面とシール部材13とが摺動しながら、シャフトガイド部23がさらに下降する。このとき、シャフトガイド部23はシール部材13に対して芯出しされているため、シールリップのめくれが防止される。
【0045】
その後、ケース本体2aの上方からカバーを取り付けることで、トランスファ1の組立が完了する。
【0046】
本発明は、上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の点については重複説明を省略する。
【0047】
例えば、ギヤガイド部22及びシャフトガイド部23を固定し、ケース支持部21を昇降させる構成としてもよい。あるいは、ギヤガイド部22及びシャフトガイド部23を、ケース支持部21に対して昇降させず、これらを固定してもよい。この場合、ケース本体2aをケース支持部21にセットして位置決めすると同時に、ギヤガイド部22及びシャフトガイド部23がギヤ取付穴6及びシャフト取付穴7の内周に挿入され、これらの嵌合面の上端がシール部材12、13よりも上方に配される。そして、ドライブギヤ3の円筒面3c及びアウトプットシャフト4のシール面4bを、ギヤガイド部22の嵌合面(大径円筒面22a)及びシャフトガイド部22の嵌合面(円筒部23aの内周面)と摺動させながら、シール部材12、13の内周に挿入する。
【0048】
また、ガイド上昇工程において、ギヤガイド部22の嵌合面(大径円筒面22a)の上端をシール部材12よりも上方に配する一方で、シャフトガイド部23の嵌合面(円筒部23aの内周面)の上端を、シール部材13と同じ高さかそれよりも下方に配してもよい。また、これとは逆に、シャフトガイド部23の嵌合面の上端をシール部材13よりも上方に配する一方で、ギヤガイド部22の嵌合面をシール部材12と同じ高さかそれよりも下方に配してもよい。
【0049】
また、部品仮組台30からケース本体2aへの部品仮組体16の移載は、作業者がドライブギヤ3及びアウトプットシャフト4の上端を手で持って行う他、部品仮組体16を保持する治具を用いて行ってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 トランスファ
2 トランスファケース
2a ケース本体
3 ドライブギヤ
3a スプロケット
3b シール面
3c 円筒面
3d テーパ面
4 アウトプットシャフト
4a スプロケット
4b シール面
5 チェーン
6 ギヤ取付穴
7 シャフト取付穴
12、13 シール部材
14 ギヤユニット
15 シャフトユニット
16 部品仮組体
20 トランスファ組立装置
21 ケース支持部
22 ギヤガイド部
22a 大径円筒面(嵌合面)
23 シャフトガイド部
23a 円筒部
24 昇降台
25 駆動部
30 部品仮組台
31 ギヤ挿入穴
32 シャフト挿入穴