(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115867
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20240820BHJP
F28F 9/013 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
F28F1/32 W
F28F9/013 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021743
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】根木 英尚
(72)【発明者】
【氏名】長坂 敏充
(57)【要約】
【課題】内部に燃焼ガスが流れる筐体1内に、吸熱フィン2を貫通する吸熱管3が燃焼ガスの流れ方向に2段に分けて夫々Y軸方向(燃焼ガスの流れ方向に交差する方向)に並べて複数配置される熱交換器において、吸熱管相互の熱膨張差によって筐体1に作用する応力を軽減して、耐久性を向上できるようにする。
【解決手段】全ての吸熱管3を直列に接続する接続部を、Y軸方向一方からY軸方向他方に向けて一方の段の吸熱管3と他方の段の吸熱管3とに交互に被加熱流体が流れるように構成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガスにより加熱される熱交換器であって、
内部に燃焼ガスが流れる角筒状の筐体と、筐体内の燃焼ガスの流れ方向に交差する直交2方向をX軸方向及びY軸方向として、筐体内にX軸方向に積層して配置された複数の吸熱フィンと、これら吸熱フィン及び筐体のX軸方向両側の側板をX軸方向に貫通し、内部に被加熱流体が流れる複数の吸熱管と、これら吸熱管を筐体のX軸方向両側の側板の外側で直列に接続する接続部とを備え、吸熱管は、燃焼ガスの流れ方向に2段に分けて夫々Y軸方向に並べて複数配置されるものにおいて、
接続部は、Y軸方向一方からY軸方向他方に向けて一方の段の吸熱管と他方の段の吸熱管とに交互に被加熱流体が流れるように、これら吸熱管を接続する構造に構成されることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記Y軸方向は上下方向であることを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスにより加熱される熱交換器であって、内部に燃焼ガスが流れる角筒状の筐体と、筐体内の燃焼ガスの流れ方向に交差する直交2方向をX軸方向及びY軸方向として、筐体内にX軸方向に積層して配置された複数の吸熱フィンと、これら吸熱フィン及び筐体のX軸方向両側の側板をX軸方向に貫通し、内部に被加熱流体が流れる複数の吸熱管と、これら吸熱管を筐体のX軸方向両側の側板の外側で直列に接続する接続部とを備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱交換器において、吸熱管を、燃焼ガスの流れ方向に2段に分けて夫々Y軸方向に並べて複数配置し、各段の複数の吸熱管とこれら吸熱管を接続する各段用の接続部とで、これら各段の吸熱管をY軸方向一方の最外側に位置するものからY軸方向他方の最外側に位置するものに亘って結ぶ蛇行流路を構成して、蛇行流路を燃焼ガスの流れ方向上流側の第1段と、燃焼ガスの流れ方向下流側の第2段との2段に設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、第1段の蛇行流路の上流端の吸熱管と下流端の吸熱管とを夫々Y軸方向一方の最外側とY軸方向他方の最外側とに位置するものとして、第1段の蛇行流路の下流端の吸熱管と第2段の蛇行流路のY軸方向他方の最外側に位置する上流端の吸熱管とを接続して、第1段の蛇行流路から第2段の蛇行流路に被加熱流体が流れるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、吸熱管がその長手方向たるX軸方向に熱膨張すると、吸熱管が貫通してロウ付けされる筐体のX軸方向各側の側板がX軸方向に押される。上記従来例の熱交換器では、温度差が最も大きくなる第1段の蛇行流路の上流端の吸熱管(冷たい被加熱流体が流入する吸熱管)と第2段の蛇行流路の下流端の吸熱管(加熱された被加熱流体が流出する吸熱管)とが夫々Y軸方向一方の最外側に位置して近接する。そのため、当該両吸熱管の熱膨張量の違いによって筐体のX軸方向各側の側板に大きな応力が作用する。そして、この応力が繰り返し作用することで側板に亀裂が入ってしまう。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、筐体のX軸方向各側の側板に作用する応力を軽減して耐久性を向上できるようにした熱交換器を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、燃焼ガスにより加熱される熱交換器であって、内部に燃焼ガスが流れる角筒状の筐体と、筐体内の燃焼ガスの流れ方向に交差する直交2方向をX軸方向及びY軸方向として、筐体内にX軸方向に積層して配置された複数の吸熱フィンと、これら吸熱フィン及び筐体のX軸方向両側の側板をX軸方向に貫通し、内部に被加熱流体が流れる複数の吸熱管と、これら吸熱管を筐体のX軸方向両側の側板の外側で直列に接続する接続部とを備え、吸熱管は、燃焼ガスの流れ方向に2段に分けて夫々Y軸方向に並べて複数配置されるものにおいて、接続部は、Y軸方向一方からY軸方向他方に向けて一方の段の吸熱管と他方の段の吸熱管とに交互に被加熱流体が流れるように、これら吸熱管を接続する構造に構成されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、一方の段の各吸熱管と当該各吸熱管に最寄りの他方の段の各吸熱管との温度差が小さくなる。そのため、筐体のX軸方向各側の側板に作用する応力を軽減することができ、耐久性を向上できる。
【0008】
また、本発明においては、Y軸方向は上下方向であることが望ましい。これによれば、一方と他方の両段の吸熱管からの水抜きを支障なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態の熱交換器の
図1とは反対方向から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図4を参照して、本発明の実施形態の熱交換器Aは、一端(
図3、
図4で左端)に図外のバーナが装着される筐体1を備えている。筐体1内には、バーナから噴出する混合気の燃焼で生ずる燃焼ガスが流れ、この燃焼ガスにより熱交換器Aが加熱される。
図3、
図4に矢印aで示す筐体1内の燃焼ガスの流れ方向に交差する直交2方向をX軸方向及びY軸方向として、筐体1は、X軸方向両側の側板11,12と、Y軸方向両側の側板13,14とを有する角筒状である。熱交換器Aは、更に、筐体1内にX軸方向に積層して配置された複数の吸熱フィン2と、これら吸熱フィン2及び筐体1のX軸方向両側の側板11,12をX軸方向に貫通し、内部に被加熱流体が流れる複数の吸熱管3と、これら吸熱管3を筐体1のX軸方向両側の側板11,12の外側で直列に接続する接続部4とを備えている。各吸熱管3は、各吸熱フィン2と各側板11,12とに貫通状態でロウ付けされる。尚、筐体1のY軸方向片側の側板14には、点火電極やフレームロッド等を挿通するための複数の穴141が形成されている。
【0011】
吸熱管3は、
図3に明示されているように、燃焼ガスの流れ方向に2段に分けて夫々Y軸方向に並べて複数配置されている。具体的には、燃焼ガスの流れ方向上流側の段である第1段に、Y軸方向一方の最外側に位置するものからY軸方向他方の最外側に位置するものまでの♯11~♯16の6本の吸熱管3を配置し、燃焼ガスの流れ方向下流側の段である第2段に、第1段の隣接する各吸熱管3,3間のY軸方向中心に管のY軸方向中心が合致するような位置関係で、Y軸方向一方の最外側に位置するものからY軸方向他方の最外側に位置するものまでの♯21~♯25の5本の吸熱管3を配置している。尚、各吸熱フィン2には、第1段の各吸熱管3に合致するY軸方向位置で燃焼ガスの流れ方向上流側に膨出する各膨出部21が設けられており、各膨出部21を第1段の各吸熱管3が貫通する。
【0012】
ここで、従来は、第1と第2の各段の吸熱管3をY軸方向一方の最外側に位置するものからY軸方向他方の最外側に位置するものに亘って結ぶ蛇行流路を構成して、第1と第2の2段の蛇行流路を設けている。そして、第1段の蛇行流路の上流端の吸熱管と下流端の吸熱管とを夫々Y軸方向一方の最外側とY軸方向他方の最外側とに位置する♯11と♯16の吸熱管3として、第1段の蛇行流路の下流端の♯16の吸熱管31と第2段の蛇行流路の上流端の吸熱管たるY軸方向他方の最外側に位置する♯25の吸熱管3とを接続し、第1段の蛇行流路から第2段の蛇行流路に被加熱流体が流れるようにしている。そのため、最も温度差が大きくなる第1段の蛇行流路の上流端の吸熱管と第2段の蛇行流路の下流端の吸熱管とが共にY軸方向一方の最外側に位置する♯11の吸熱管3と♯21の吸熱管3となって近接する。その結果、上述したように筐体1のX軸方向各側の側板11,12に作用する応力が大きくなってしまう。
【0013】
そこで、本実施形態では、接続部4を、Y軸方向一方からY軸方向他方に向けて第1段の吸熱管3と第2段の吸熱管3とに交互に被加熱流体が流れるように、これら吸熱管3を接続する構造に構成している。具体的には、筐体1のX軸方向一側の側板11の外側に、第1段の♯11と第2段の♯21との両吸熱管3,3と、第1段の♯12と第2段の♯22との両吸熱管3,3と、第1段の♯13と第2段の♯23の両吸熱管31,3と、第1段の♯14と第2段の♯24の両吸熱管3,3と、第1段の♯15と第2段の♯25の両吸熱管3,3とを夫々接続する5つのU字管41を設けると共に、筐体1のX軸方向他側の側板12の外側に、第2段の♯21と第1段の♯12の両吸熱管3,3と、第2段の♯22と第1段の♯13の両吸熱管3,3と、第2段の♯23と第1段の♯14の両吸熱管3,3と、第2段の♯24と第1段の♯15の両吸熱管3,3と、第2段の♯25と第1段の♯16の両吸熱管3,3とを夫々接続する5つのU字管42を設け、これらU字管41,42で接続部4を構成している。そして、第1段の♯11の吸熱管31に、筐体1のX軸方向他側の側板12の外側で端部に流入口43aを有する流入側ジョイント43を接続し、第1段の♯16の吸熱管31に、筐体1のX軸方向一側の側板11の外側で端部に流出口44aを有する流出側ジョイント44を接続している。これにより、被加熱流体は、♯11の吸熱管3から♯21の吸熱管31と♯12の吸熱管31と♯22の吸熱管3と♯13の吸熱管3と♯23の吸熱管3と♯14の吸熱管3と♯24の吸熱管3と♯15の吸熱管3と♯25の吸熱管3とを順に経て♯16の吸熱管3に流れる。
【0014】
本実施形態によれば、第1段の各吸熱管3と当該各吸熱管3に最寄りの第2段の各吸熱管3との温度差が小さくなる。そのため、筐体1のX軸方向各側の側板11,12に作用する応力を軽減することができ、耐久性を向上できる。
【0015】
ところで、接続部4を上記の如く構成した場合、Y軸方向が水平であると、吸熱管31からの水抜きが困難になる。そこで、本実施形態では、Y軸方向が上下方向になるようにしている。これによれば、Y軸方向一方の最外側たる最下方の♯11の吸熱管3に連なる流入側配管に設けた水抜き栓を開くことで、全ての吸熱管3から支障なく水抜きすることができる。
【0016】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0017】
A…熱交換器、1…筐体、11,12…筐体のX軸方向各側の側板、2…吸熱フィン、3…吸熱管、4…接続部。