(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115872
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】スプリング組付け用治具
(51)【国際特許分類】
B25B 27/30 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B25B27/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021749
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松本 和城
(72)【発明者】
【氏名】山田 飛翔
【テーマコード(参考)】
3C031
【Fターム(参考)】
3C031EE27
(57)【要約】
【課題】取付け箇所の如何に関わらず、良好な作業性を確保して効率よくトーションスプリングを組付け可能とする。
【解決手段】このスプリング組付け用治具1は、トーションスプリング2に弾性復元力が発生している状態で、トーションスプリング2のコイル部3から延びる一対のアーム部4a,4bを収容可能な二つの溝部12a,12bが設けられた第一の部材10と、第一の部材10に対して所定の向きに移動可能に構成され、移動により溝部12a,12bから一対のアーム部4a,4bを押出し可能な押出し部21a,21bが設けられた第二の部材20とを備える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーションスプリングを他の部材に組付けるための治具であって、
前記トーションスプリングに弾性復元力が発生している状態で、前記トーションスプリングのコイル部から延びる一対のアーム部を収容可能な二つの溝部が設けられた第一の部材と、
前記第一の部材に対して所定の向きに移動可能に構成され、前記移動により前記溝部から前記一対のアーム部を押出し可能な押出し部が設けられた第二の部材とを備えることを特徴とするスプリング組付け用治具。
【請求項2】
前記第一の部材は、前記溝部よりも内側に前記コイル部を収容可能な収容部を有する請求項1に記載のスプリング組付け用治具。
【請求項3】
前記収容部の中央には、前記アーム部の押出し方向に突出する突出部が設けられ、
前記突出部は、前記第一の部材の先端よりも低く、かつ前記一対のアーム部の先端の一部が前記他の部材に設けられた二つの穴にそれぞれ嵌り合う高さに設定されている請求項2に記載のスプリング組付け用治具。
【請求項4】
前記第一の部材は柱状をなすと共に前記第二の部材は筒状をなし、前記第二の部材は前記第一の部材の外周に配置され前記第一の部材に対してその軸方向にスライド可能に構成されている請求項1~3の何れか一項に記載のスプリング組付け用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリング組付け用治具に関し、特にトーションスプリングを組付けるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用トランスミッションの組立てラインにおいては、トランスミッションケースの所定位置にトーションスプリングを組付ける工程が設けられており、当該工程では、従来、作業者が手でトーションスプリングのコイル部から延びる一対のアーム部を広げた状態で上記ケースの所定位置にトーションスプリングを組付けていた。
【0003】
このように、従来の方法では、作業者が直接手でアーム部を把持して広げた状態でトーションスプリングを組付けていたため、直接手を入れてアーム部を広げられるだけの十分なスペースがない箇所にトーションスプリングを組付けることは非常に困難であった。
【0004】
ここで、特許文献1には、鋼線の長手方向中央側をコの字状に形成し、長手方向両側をハの字状に形成して先端側を拡開した形状のスプリングを保持しつつ変形させる機構と、上記スプリングの変形を規制する機構とを備えたスプリング装着治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の治具だと、スプリング装着治具としてペンチ形状を採用しているため、スプリングを変形させた状態を保持するためにはスプリングを変形保持した状態で握っておく必要がある。また、スプリングを装着する際には、スプリング先端部を挿入部に向けて手探りで挿入していく必要があるため、作業性が悪く、工数が増える問題があった。
【0007】
以上の事情に鑑み、本明細書では、取付け箇所の如何に関わらず、良好な作業性を確保して効率よくトーションスプリングを組付け可能とすることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題の解決は、本発明に係るスプリング組付け用治具によって達成される。すなわち、この組付け用治具は、トーションスプリングを他の部材に組付けるための治具であって、トーションスプリングに弾性復元力が発生している状態で、トーションスプリングのコイル部から延びる一対のアーム部を収容可能な二つの溝部が設けられた第一の部材と、第一の部材に対して所定の向きに移動可能に構成され、移動により溝部から一対のアーム部を押出し可能な押出し部が設けられた第二の部材とを備える点をもって特徴付けられる。
【0009】
このように、本発明に係るスプリング組付け用治具によれば、第一の部材に設けられた二つの溝部にトーションスプリングのコイル部から延びる一対のアーム部が収容される。この際、二つの溝部は、トーションスプリングの弾性復元力が発生している状態のアーム部を収容することができるので、弾性復元力により収容された一対のアーム部は互いにトーションスプリングの円周方向に近づく向きの力で溝部の側面にそれぞれ押し付けられる。この押し付け力に起因する摩擦力でアーム部が溝部に保持されるので、トーションスプリングを第一の部材に取付けた後は、トーションスプリングを落下させることなく保持ししたままで他の部材への組付け作業を行うことができる。また、本発明に係る組付け用治具によれば、溝部に保持された一対のアーム部を第二の部材の第一の部材に対する移動により押し出すことができる。よって、例えば第一の部材を把持してトーションスプリングを他の部材の所定箇所に導入した後、第二の部材を相対移動させることで、容易にかつ確実にトーションスプリングを第一の部材から離脱させると共にトーションスプリングを押込んで他の部材への組付けを完了させることが可能となる。また、この治具によれば、作業者は治具を把持してトーションスプリングを他の部材の所定箇所に導入するだけでよいので、従来のように手でトーションスプリングに張力を付与するためのスペースがない場合であっても、容易にかつ確実にトーションスプリングを組付けることが可能となる。
【0010】
また、本発明に係るスプリング組付け用治具において、第一の部材は、溝部よりも内側にコイル部を収容可能な収容部を有してもよい。
【0011】
このように、溝部よりも内側に収容部を設ければ、溝部にアーム部を収容することで、コイル部も収容部に収容することができる。よって、安定してトーションスプリング全体を第一の部材で保持することができる。
【0012】
また、本発明に係るスプリング組付け用治具において、収容部の中央には、アーム部の押出し方向に突出する突出部が設けられ、突出部は、第一の部材の先端よりも低く、かつ一対のアーム部の先端の一部が他の部材に設けられた二つの穴にそれぞれ嵌り合う高さに設定されてもよい。
【0013】
この種のスプリングは、通常、そのコイル部を柱状の取付け部材に嵌め合わせることで取付けられる。また、柱状の取付け部材の座面にコイル部が当接する位置まで押込むことで、押込み方向に屈曲している各アーム部の先端部(屈曲部)が対応する穴に嵌り合う。この点に鑑み、コイル部が収容される第一の部材の収容部の中央に、アーム部の押出し方向に突出する突出部を設けるようにした。このように構成することで、トーションスプリングの組付け用治具への取付け時、コイル部の内側に突出部が配設された状態となる。そして、組付け用治具に取付けられたトーションスプリングのコイル部を柱状の取付け部材に嵌め込むことで、柱状の取付け部材と突出部とが当接する。ここで、突出部を、第一の部材の先端よりも低く、かつ一対のアーム部の先端の一部が他の部材に設けられた二つの穴にそれぞれ嵌り合う高さに設定することで、コイル部を柱状の取付け部材に容易に嵌め込むことができる。また、柱状の取付け部材と突出部とが当接する位置まで取付け用治具を押込むことで、トーションスプリングが上述した位置(アーム部の先端の一部が対応する穴に嵌り合う位置)まで嵌め込まれる。よって、然る後、第二の部材を第一の部材に対して押出し方向に移動させることで、溝部からアーム部が押し出されると共に、押し出されたアーム部の先端部及びコイル部がさらに対応する穴及び柱状の取付け部材と嵌り合う。よって、より確実にトーションスプリングを他の部材に組付けることが可能となる。
【0014】
また、本発明に係るスプリング組付け用治具において、第一の部材は柱状をなすと共に第二の部材は筒状をなし、第二の部材は第一の部材の外周に配置され第一の部材に対してその軸方向にスライド可能に構成されてもよい。
【0015】
このように、第二の部材を筒状とし第一の部材の外周に配置することで、スプリング組付け用治具をさらにコンパクトにできる。よって、さらなる操作性の向上を図ることが可能となる。また、第一の部材の外周に配置した第二の部材を第一の部材に対してその軸方向にスライド可能に構成することで、第二の部材によるアーム部の押出し動作の操作性を高めることができる。従って、より一層容易にかつ効率よくトーションスプリングの組付け作業を実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、取付け箇所の如何に関わらず、良好な作業性を確保して効率よくトーションスプリングを組付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスプリング組付け用治具の正面図である。
【
図2】
図1に示すスプリング組付け用治具の断面図である。
【
図3】
図1に示すスプリング組付け用治具を矢印Aの方向から見た図である。
【
図4】
図1に示す第一の部材の全体構成を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示す第一の部材を矢印Bの方向から見た図である。
【
図6】
図1に示す第二の部材の全体構成を示す斜視図である。
【
図7】
図1に示すスプリング組付け用治具を用いたトーションスプリングの組付け方法の一例を説明するための図で、組付け対象となるトランスミッションケースの要部平面図である。
【
図8】スプリング組付け用治具に対するトーションスプリングの取付け態様を説明するための図で、(a)一対のアーム部を対応する溝部に収容する前の状態、(b)一対のアーム部を対応する溝部に収容した状態をそれぞれ示す図である。
【
図9】
図7に示すトランスミッションケースの所定箇所にスプリング組付け用治具ごとトーションスプリングを導入した状態を示す要部拡大断面図である。
【
図10】
図9に示す状態から第二の部材を第一の部材に対して軸方向に移動させた状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るスプリング組付け用治具、及びこの治具を用いたトーションスプリングの組付け方法の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るスプリング組付け用治具1の正面図、
図2は、スプリング組付け用治具1の断面図、
図3は、スプリング組付け用治具1を長手方向一端側(矢印Aの向き)から見た側面図をそれぞれ示している。
図1に示すように、このスプリング組付け用治具1は、主に第一の部材10と、第二の部材20とを備える。本実施形態では、スプリング組付け用治具1は、付勢部材30と、第一規制部材40と、第二規制部材50とをさらに備える(
図2を参照)。以下、第一の部材10と第二の部材20を中心に詳細を説明する。
【0020】
図4は、本実施形態に係る第一の部材10の斜視図を示している。また、
図5は、
図4に示す第一の部材10を長手方向一端側(
図4でいえば矢印Bの向き)から見た側面図を示している。
図4及び
図5に示すように、本実施形態では、第一の部材10は柱状をなし、長手方向一端側に、トーションスプリング2のコイル部3(
図8~
図10を参照)を収容可能な収容部11と、コイル部3から延びる一対のアーム部4a,4bを収容可能な二つの溝部12a,12bとを有する。
【0021】
収容部11は、第一の部材10の長手方向一端面10aに開口し、コイル部3の外形に準じた形状である円筒形状をなしている(
図5を参照)。収容部11の深さ寸法は原則として任意に設定可能であり、例えばコイル部3の全長を収容できる程度の大きさに設定される。
【0022】
溝部12a,12bは、第一の部材10の長手方向一端側でかつ長手方向の異なる位置に形成される。具体的には、トーションスプリング2のコイル部3を収容部11に収容した状態で、一対のアーム部4a,4bがそれぞれ収容可能な長手方向位置に溝部12a,12bが形成される。また、一対のアーム部4a,4bをコイル部3の円周方向に相対移動させて、コイル部3に弾性復元力を発生させた状態で収容可能なように(後述する
図8を参照)、第一の部材10における各溝部12a,12bの円周方向位置及び長手方向がそれぞれ設定される(
図5を参照)。また、各溝部12a,12bの深さ寸法は、アーム4a,4b全体を収容可能な大きさに設定されることが望ましい。
【0023】
本実施形態では、収容部11の底部に、アーム部4aの押出し方向に突出する突出部13が設けられている。突出部13の外径寸法は、コイル部3の内径寸法以下に設定される(
図9を参照)。突出部13は、収容部11が開口する第一の部材10の長手方向一端面10aよりも低くなるように設定されるのがよい。また、突出部13は、トーションスプリング2を第一の部材10で保持した状態で他の部材(本実施形態ではトランスミッションケース5)の組付け予定箇所に導入した際、トランスミッションケース5に設けられた二つの穴5a,5b(
図7を参照)に各アーム部4a,4bの屈曲部の一部(先端部分)がそれぞれ嵌り合う高さに設定されるのがよい。
【0024】
第一の部材10の長手方向他端側には、外径寸法が長手方向一端側に比べて小さい小径部14が一体に設けられている。この小径部14と第二の部材20との間には、ばね等の付勢部材30が収容され、第二の部材20に長手方向他端側への付勢力を付与可能としている。
【0025】
図6は、本実施形態に係る第二の部材20の斜視図を示している。
図6に示すように、本実施形態では、第二の部材20は長手方向一端側を開口し、他端側を閉口してなる有底円筒状をなし、長手方向一端側に、溝部12a,12bに収容された状態のアーム部4a,4bを押出すための押出し部21a,21bを有する。押出し部21a,21bの先端位置は互いに異なっており、先端位置の差は、一対のアーム部4a,4bの高低差(軸方向位置の差)に等しくなるように設定されるのがよい。これにより、第二の部材20を第一の部材10に対して軸方向に移動させることにより、溝部12a,12bに収容された状態の一対のアーム部4a,4bを同時に押出し可能としている。
【0026】
また、第二の部材20の底部となる長手方向他端面20aには、第一の部材10が貫通可能な貫通穴22が設けられると共に、第二の部材20の円周方向所定位置に、長手方向に延びる長穴23が設けられている。
【0027】
第一規制部材40は、例えばボルト41とワッシャー42とで構成される。この場合、ボルト41は、ワッシャー42を介して第一の部材10の長手方向他端側に設けられた長手方向のボルト穴10bに取付けられる。この場合、ワッシャー42が第一の部材10の長手方向他端面10dと第二の部材20の長手方向他端面20aとに当接し、第二の部材20の長手方向他端側への移動を規制可能としている。
【0028】
第二規制部材50は例えばボルトであって、第二の部材20に設けた長穴23を貫通した状態で第一の部材10に設けられた半径方向のボルト穴10cに取付けられる。これにより、第二規制部材50は、長穴23の長手方向に移動しかつ所定位置で長穴23の側面に当接することにより、それ以上の移動を規制可能としている。本実施形態では、主に、第二の部材20の押出し方向への移動を規制することを目的として長穴23の位置及び長手方向寸法が設定される。なお、上述のように第二規制部材50と長穴23との協動により第二の部材20の移動を規制する構成をとる場合、各押出し部21a,21bの長手方向軸線と、対応する溝部12a,12bの長手方向軸線とが交差するように、ボルト穴10cの円周方向位置を設定するのがよい。
【0029】
次に、上記構成のスプリング組付け用治具1を用いたトーションスプリング2の組付け方法の一例を手順に沿って説明する。
【0030】
図7は、トーションスプリング2の組付け対象となるトランスミッションケース5の要部平面図を示している。このトランスミッションケース5が本発明に係る他の部材に相当する。本実施形態では、このトランスミッションケース5に設けられたパーキングロックポールシャフト6(本発明に係る柱状の取付け部材に相当)にトーションスプリング2のコイル部3を嵌め合わせると共に、一対のアーム部4a,4bの先端に設けられた屈曲部(
図8を参照)を、対応するトランスミッションケース5の穴5a,5bに嵌め合わせることで、トランスミッションケース5に対するトーションスプリング2の組付けが行われる。以下、組付け作業の手順を説明する。
【0031】
まず、
図8に示すように、トーションスプリング2をスプリング組付け用治具1に取り付ける。具体的には、
図8(a)に示すように、トーションスプリング2のコイル部3を第一の部材10の収容部11に収容する。この際、一方のアーム部4bを対応する一方の溝部12bに嵌め合わせておくのがよい。然る後、一方の手でスプリング組付け用治具1を把持しながら、他方の手で他方のアーム部4aを把持し、他方のアーム部4aと円周方向に遠ざかる向きに他方のアーム部4aを捩じる。これにより、コイル部3には弾性復元力が発生する。そして、この弾性復元力が発生した状態の他方のアーム部4aを対応する他方の溝部12aに嵌め合わせる。これにより、
図8(b)に示すように、コイル部3と一対のアーム部4a,4bがそれぞれ収容部11と二つの溝部12a,12bに嵌り合った状態となる。
【0032】
次に、トーションスプリング2を保持した状態のスプリング組付け用治具1を作業者が把持してトランスミッションケース5の組付け箇所まで移動させる。そして、トーションスプリング2を組付け箇所(パーキングロックポールシャフト6)に向けた状態で下降させて、トーションスプリング2のコイル部3をパーキングロックポールシャフト6に導入する(
図9を参照)。この時点では、
図9に示すように、トーションスプリング2のコイル部3の大部分がパーキングロックポールシャフト6に嵌り合っており、かつ収容部11の底部中央に設けた突出部13とパーキングロックポールシャフト6とが当接することで、コイル部3とパーキングロックポールシャフト6の座面6aとの間には所定の隙間が存在した状態にある。また、図示は省略するが、各アーム部4a,4bの屈曲部の一部が、対応する穴5a,5bに嵌り合った状態にある。
【0033】
この状態から、第二の部材20を付勢部材30の付勢力に抗して第一の部材10に対して軸線方向に移動(スライド)させる。これにより、第二の部材20に設けた押出し部21a,21bに対応するアーム部4a,4bが押出されて、トーションスプリング2がスプリング組付け用治具1から外れる。また、この押出し動作により一対のアーム部4a,4bがさらに下方に押込まれるので、各アーム部4a,4bの屈曲部が深くまで穴5a,5bに嵌まり込むと共に、コイル部3がパーキングロックポールシャフト6の座面6aに当接する位置まで押込まれる(
図10を参照)。これにより、トーションスプリング2のトランスミッションケース5に対する組付けが完了する。
【0034】
以上述べたように、本実施形態に係るスプリング組付け用治具1によれば、第一の部材10に設けられた二つの溝部12a,12bにトーションスプリング2の一対のアーム部4a,4bが収容される。この際、二つの溝部12a,12bは、トーションスプリング2の弾性復元力が発生している状態のアーム部4a,4bを収容することができるので、弾性復元力により収容された一対のアーム部4a,4bは互いにトーションスプリング2の円周方向に近づく向きの力で溝部12a,12bの側面にそれぞれ押し付けられる。この押し付け力に起因する摩擦力でアーム部4a,4bが溝部12a,12bに保持されるので、トーションスプリング2を第一の部材10に取付けた後は、トーションスプリング2を落下させることなく保持ししたままでトランスミッションケース5への組付け作業を行うことができる。また、本実施形態に係るスプリング組付け用治具1によれば、溝部12a,12bに保持された一対のアーム部4a,4bを第二の部材20の第一の部材10に対する移動により押し出すことができる。よって、例えば第一の部材10を把持してトーションスプリング2をトランスミッションケース5の所定箇所に導入した後、第二の部材20を相対移動させることで、容易にかつ確実にトーションスプリング2を第一の部材10から離脱させると共にトーションスプリング2を押込んでトランスミッションケース5への組付けを完了させることが可能となる。また、この組付け用治具1によれば、作業者は当該組付け用治具1を把持してトーションスプリング2をトランスミッションケース5の所定箇所に導入するだけでよいので、従来のように手でトーションスプリング2に張力を付与するためのスペースがない場合であっても、容易にかつ確実にトーションスプリング2を組付けることが可能となる。
【0035】
また、本実施形態では、コイル部3と一対のアーム部4a,4bとが押出し方向の中途位置までパーキングロックポールシャフト6と穴5a,5bに嵌め込まれた状態から、第二の部材20を付勢部材30の付勢力に抗して押出し方向にスライドさせるようにしたので、トーションスプリング2がスプリング組付け用治具1から完全に外れるのと同時に、トーションスプリング2のトランスミッションケース5に対する組付けを完了させることができる。よって、押出し動作の終了後、そのままスプリング組付け用治具1を組付け箇所から退避させることができ、効率よく次の組付け作業に移ることが可能となる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係るスプリング組付け用治具は、上記例示の構成に限られることなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能なことはもちろんである。
【符号の説明】
【0037】
1 スプリング組付け用治具
2 トーションスプリング
3 コイル部
4a,4b アーム部
5 トランスミッションケース
5a,5b 穴
6 パーキングロックシャフト
6a 座面
10 第一の部材
10a 長手方向一端面
10b,10c ボルト穴
10d 長手方向他端面
11 収容部
12a,12b 溝部
13 突出部
14 小径部
20 第二の部材
20a 長手方向他端面
21a,21b 溝部
22 貫通穴
23 長穴
30 付勢部材
40 第一規制部材
41 ボルト
42 ワッシャー
50 第二規制部材