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  • 特開-転がり軸受の検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115874
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】転がり軸受の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/04 20190101AFI20240820BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01M13/04
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021752
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 凌雅
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024BA11
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064CC42
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】転がり軸受が良品であるか否かを容易にかつ正確に判定可能とする。
【解決手段】外輪22を径方向に加圧した状態で内輪21をその軸心回りに回転させるのに伴って外輪22に生じる振動を検出部4で検出し、検出した振動から得られた振動波形を利用して転がり軸受20が良品であるか否かを判定する検査方法であり、振動波形を1次元畳み込みニューラルネットワークのディープラーニングモデル9に入力し、このモデル9の出力値から求められる確率値を用いて転がり軸受20が良品であるか否かを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の転動体と、複数の転動体を介して相対回転する内輪及び外輪とを備えた転がり軸受のうち、前記内輪又は前記外輪の何れか一方を径方向または軸方向に加圧した状態で前記内輪及び前記外輪の他方をその軸心回りに回転させるのに伴って前記一方に生じる振動を検出部で検出し、検出した振動から得られた振動波形を利用して前記転がり軸受が良品であるか否かを判定する検査方法であって、
前記振動波形を1次元畳み込みニューラルネットワークのディープラーニングモデルに入力し、該ディープラーニングモデルの出力値から求められる確率値を用いて前記転がり軸受が良品であるか否かを判定することを特徴とする転がり軸受の検査方法。
【請求項2】
前記検出部に、加速度センサ又は速度センサの何れかを使用する請求項1に記載の転がり軸受の検査方法。
【請求項3】
前記振動波形を、FFT波形、エンベロープ波形、あるいは時間軸の振動波形の何れかとした請求項1又は2に記載の転がり軸受の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受の検査方法に関し、詳細には、転がり軸受の作動時(転がり軸受を構成する内輪と外輪の相対回転時)に生じる振動を検出し、これに基づいて転がり軸受が良品であるか否かを判定する検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の軸受性能を具備した高品質の転がり軸受を提供すべく、転がり軸受の製造過程においては、転がり軸受の品質検査が実施される。下記の特許文献1には、複数の転動体と、複数の転動体を介して相対回転する内輪及び外輪と、複数の転動体を周方向に間隔を空けて保持する保持器とを備えた転がり軸受の検査方法(振動検査方法)が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の検査方法では、概ね以下のような手順が踏まれる。
・例えば、押圧体により内輪に予圧を加えた状態で外輪を所定の回転数で回転させたときに内輪に生じる振動加速度を、上記押圧体に取り付けた加速度センサにより測定し、
・加速度センサの出力を周波数スペクトル分析することにより、軸受構成部材のそれぞれについて所定の固有振動周波数における振動加速度のピーク値を導出し、
・導出したピーク値が予め設定した基準値を超えているか否かをパソコンに設けた判定部にて判定する。
そして、導出したピーク値が予め設定した基準値を超えている場合、そのピーク値を持つ部材には何かしらの不良が発生していると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-221161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術手段は、例えば図3(a)に示す良品の波形データ(周波数スペクトルの波形データ)と図3(b)に示す不良品の波形データとを対比させた場合のように、ピーク値に明確な差が見られる場合には、検査対象の転がり軸受が良品であるか否かを正確に判定可能であるが、例えば図4に示すような波形データを持つ不良品、すなわち図3(a)に示す良品の波形データとのピーク値の差が小さい不良品の場合には、良品であるか否かを正確に判定することができない可能性がある。要するに、図3(a)に示す良品の波形データと図4に示す不良品の波形データとの間には、人間であれば見分けることができるような形状の違いが存在するが、良否判定をコンピュータに設けた判定部に委ねる特許文献1の検査方法では、両波形データの相違点を正確に評価・把握し、転がり軸受が良品であるか否かを正確に判定することができない可能性がある。
【0006】
さらに、特許文献1に記載の検査方法を実行するためには、転がり軸受の型番(型式)毎に、転動体のサイズや個数、内輪、外輪及び保持器のサイズや材質等、数多くのパラメータを用いて良否判定のための基準値(閾値)を予め設定しておく必要があることから、多大な手間とコストが必要になるという問題もある。
【0007】
かかる実情に鑑み、本発明は、転がり軸受が良品であるか否かを容易にかつ正確に(精度良く)判定することを可能にする検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、機械学習の手法である畳み込みニューラルネットワーク(以下、「CNN」とも言う。)を転がり軸受の良否判定に用いることを検討した。CNNは、一般的に画像分析に用いられるモデルであり、入力データとしての画像データの「畳み込み」及びその後の「プーリング」により、検出(抽出)した特徴を発生場所に関係なく強調することができて特徴の認識性を高めることができる。そのため、CNNを用いて転がり軸受の良否判定に貢献する特徴を抽出及び強調すれば、転がり軸受が良品であるか否かを容易にかつ精度良く判定できると考え、本発明を創案するに至った。
【0009】
すなわち、上記の検討に基づいて創案された本発明は、複数の転動体と、複数の転動体を介して相対回転する内輪及び外輪とを備えた転がり軸受のうち、内輪及び外輪の何れか一方を径方向または軸方向に加圧した状態で内輪及び外輪の他方をその軸心回りに回転させるのに伴って上記一方に生じる振動を検出部で検出し、検出した振動から得られる振動波形を利用して転がり軸受が良品であるか否かを判定する検査方法であって、上記振動波形を1次元畳み込みニューラルネットワークのディープラーニングモデルに入力し、このディープラーニングモデルの出力値から求められる確率値を用いて上記転がり軸受が良品であるか否かを判定することを特徴とする。
なお、本発明でいう「転がり軸受」とは、内輪及び外輪が転動体を介して相対回転可能な状態に組み付けられているものであれば良い。すなわち、ここでいう「転がり軸受」とは、完成品としての転がり軸受のみならず、内輪及び外輪が転動体を介して相対回転可能な状態に組み付けられたアセンブリも含む概念とする。
【0010】
本発明で用いる1次元ニューラルネットワーク(以下、「1次元CNN」とも言う)のディープラーニングモデルとは、1次元の振動波形(波形データ)を入力データとするモデルであり、上記波形データをそのまま入力として特徴(例えば、振動速度のピーク値)の抽出及び強調を行うことができる。このため、転がり軸受の良否判定の基準となるデータを得るために従来方法では必要とされた、特徴量の定義や、特徴量を作成するための複雑な数値処理を行う必要がなくなり、転がり軸受の良否判定を簡便に行うことができる。また、上記のとおり、入力データとしての波形データの特徴を強調することができる分、従来方法では検出が困難であった微小な欠陥も検出することが可能となるので、検査精度を高め、転がり軸受が良品であるか否かを精度良く判定することができる。
【0011】
振動を定量的に捉えるためには、一般的には加速度[m/s]又は速度[m/s]の何れかの物理量が使用される。従って、振動を検出する検出部には、加速度センサ又は速度センサを使用することができる。
【0012】
1次元CNNのディープラーニングモデルに入力する振動波形(波形データ)は、高速フーリエ変換(FFT)による平均化処理(FFT平均化処理)により各周波数成分のスペクトル強度が明らかにされたFFT波形、エンベロープ処理により軸受の損傷により発せられる振動を取り出したエンベロープ波形、あるいはFFT平均化処理やエンベロープ処理等の前処理を何ら加えない時間軸の振動波形の何れかとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上に示すように、本発明に係る検査方法によれば、検査対象の転がり軸受が良品であるか否かを容易にかつ正確に(精度良く)判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る検査方法を実施する検査装置の概要図である。
図2】1次元CNNによるディープラーニングモデルの一構造例である。
図3】(a)図は、「良品」である転がり軸受の周波数スペクトル波形の一例を示す図、(b)図は、「不良品」である転がり軸受の周波数スペクトル波形の一例を示す図である。
図4】「不良品」である転がり軸受の周波数スペクトル波形の他例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る検査方法を実施する際に使用する検査装置の概要図である。同図に示す検査装置1は、複数の転動体23と、複数の転動体23を介して相対回転する内輪21及び外輪22と、複数の転動体23を周方向に間隔を空けて保持した円環状の保持器24とを備えた転がり軸受20のうち、内輪21が数百~数千rpmの範囲内で一定速度で回転するのに伴って外輪22に生じる振動を検出し、この検出した振動に基づいて作成された振動波形(波形データ)を利用して転がり軸受20が品質基準を満たす「良品」であるか、あるいは品質基準を満たさない「不良品」であるかを判定するために使用されるものであり、加工ラインや組立ラインなどといった転がり軸受20の製造ラインに設置された状態で使用される。
【0017】
検査対象の転がり軸受20の種類に制限はなく、転動体23をボールとした玉軸受、転動体23を針状ころとした針状ころ軸受、転動体23を円筒ころとした円筒ころ軸受、転動体23を円すいころとした円すいころ軸受等、公知の転がり軸受20全てを検査対象とすることができる。また、検査装置1は、完成品としての転がり軸受20のみならず、複数の転動体23を介して内輪21と外輪23が相対回転可能な状態に組み立てられたアセンブリ(未完成の転がり軸受20)の良否検査に用いることもできる。
【0018】
図1に示す検査装置1は、回転駆動部2と、加圧部3と、検出部4及びこれに接続された信号処理部5と、を主な構成として備える。
【0019】
回転駆動部2は、転がり軸受20の内輪21をその軸心回りに回転させるためのものであり、内輪21の軸孔にすきまばめ状態で嵌合される回転軸2aと、回転軸2aを回転駆動させる図示外の回転駆動源とを備える。回転駆動源としては、サーボモータあるいはスピードコントロールモータなどといった回転速度を細かく制御可能な電動モータが好ましく使用される。
【0020】
加圧部3は、転がり軸受20の径方向に沿って進退移動可能に外輪22の径方向外側に配置された加圧部材3aを備える。従って、加圧部材3aが前進移動すると、外輪22の一部が内輪21に接近するように外輪22が径方向に加圧される。
【0021】
検出部4は、内輪21及び外輪22のうち、回転駆動部2の出力を受ける回転側の部材(内輪21)が回転駆動されるのに伴って非回転側の部材(外輪22)に生じる振動を検出するために使用されるものであり、例えば、加速度(振動加速度)を検出する加速度センサが使用される。検出部4としての加速度センサは、その一端部に設けられた検出子(加速度ピックアップ)4aを外輪22の外周面に接触若しくは近接させるようにして外輪22の径方向外側に配置される。
【0022】
なお、振動を定量的に捉えるためには、一般的には加速度[m/s]又は速度[m/s]の何れかの物理量が使用される。そのため、検出部4には、加速度センサに替えて、速度センサを使用しても良い。
【0023】
信号処理部5は、検出部4で検出された振動に基づいて振動波形(波形データ)を作成し、この波形データを利用して転がり軸受20が良品であるか否かを判定する部位であり、AD変換部6と、帯域フィルタ部7と、前処理部8と、1次元CNNのディープラーニングモデル9と、良否判定部10とを有する。
【0024】
AD変換部6は、検出部4で検出された外輪22の振動に基づく信号(電圧信号)をデジタル波形(16ビットのデジタル波形)に変換し、帯域フィルタ部7は、AD変換部6で得られたデジタル波形の中から特定範囲の周波数成分(例えば、500Hz~5150Hz)を取り出す。前処理部8は、ここでは高速フーリエ変換(FFT)による平均化処理、つまりFFT平均化処理を行う。これにより、帯域フィルタ部7で取り出された特定範囲の周波数成分の中から各周波数成分の時間的ばらつきを抑えた、高品質の波形データ(FFT波形)が得られる。
【0025】
図2に、1次元CNNのディープラーニングモデル9の具体的な構造例を示す。このモデル9は、入力層9a、畳み込み層9b、プーリング層9c、全結合層9d及び出力層9eを有し、畳み込み層9b及びプーリング層9cは入力層9aと全結合層9dとの間に交互に5つずつ設けられている。つまり、このモデル9は、畳み込み層として第1畳み込み層9b1~第5畳み込み層9b5を有すると共に、プーリング層として第1プーリング層9c1~第5プーリング層9c5を有する。
【0026】
前処理部8で得られた波形データ(FFT波形)が入力層9aに入力されると、第1畳み込み層9b1は、「大きさ」:5、「数」:4のフィルタを用いて、データの特徴(ここでは、例えば振動波形のピーク値)を強調・抽出した特徴マップという新たな一次元データを作成する。第1プーリング層9c1は、所定の演算処理、ここではマックスプーリング(Max Pooling)という特徴マップの所定領域内から最大値を抽出する処理により、上記特徴マップ中の重要な情報を残しながらデータサイズを小さくしたデータ(ダウンサンプリングデータ)を作成する。なお、図示例のプーリング層9c(第1プーリング層9c1)は、「ストライド幅」を2としている。以下簡単に説明する第2プーリング層9c2~第5プーリング層9c5においても「ストライド幅」は同じく2である。
【0027】
第2畳み込み層9b2は、「大きさ」:5、「数」:8のフィルタを用いて第1プーリング層9c1で作成された一次元データの特徴を強調・抽出した特徴マップを作成し、第2プーリング層9c2は、マックスプーリングによって第2畳み込み層9b2で作成された特徴マップ中の重要な情報を残しながらデータサイズを小さくしたダウンサンプリングデータを作成する。以降、第3畳み込み層9b3及び第3プーリング層9c3、第4畳み込み層9b4及び第4プーリング層9c4、並びに第5畳み込み層9b5及び第5プーリング層9c5において上記同様の処理が行われる。なお、第3畳み込み層9b3~第5畳み込み層9b5で用いるフィルタは、何れも「大きさ」を5とする一方、「数」はそれぞれ16,32及び64としている。
【0028】
全結合層9dは、以上のようにして特徴部分が取り出されたデータを結合し、活性化関数としてのソフトマックス関数(SoftMax function)によって変換・正規化された値(特徴変数)を出力する。ここでは、特徴変数として、検査対象の転がり軸受20が良品である確率値、又は不良品である確率値が算出され、これら確率値が出力層9eを介して出力される。
【0029】
そして、出力層9e(1次元CNNのディープラーニングモデル9)から出力された上記の確率値(出力値)は、合否判定部10において、予め定められた確率値の閾値との大小が比較される。例えば、上記出力値を良品確率値とした場合、この良品確率値が予め定められた閾値(例えば60%)を上回っていれば、合否判定部10は検査対象の転がり軸受20を「良品」と判定し、良品確率値が上記閾値以下であれば、合否判定部10は検査対象の転がり軸受20を「不良品」と判定する。「良品」と判定された転がり軸受20は次工程に搬送される一方、「不良品」と判定された転がり軸受20は、手直し加工等が施されるか、あるいは廃棄処分とされる。
【0030】
以上で説明した本発明に係る転がり軸受20の検査方法で用いる1次元CNNのディープラーニングモデル9とは、1次元の振動波形(波形データ)を入力データとするモデルであり、上記波形データをそのまま入力として特徴の抽出及び強調を行うことができる。このため、転がり軸受20の良否判定の基準となるデータを得るために従来方法では必要とされた、特徴量の定義や、特徴量を作成するための複雑な数値処理を行う必要がなくなり、転がり軸受20の良否判定を簡便に行うことができる。また、上記のとおり、ディープラーニングモデル9では、入力データとしての波形データの特徴を強調することができる分、従来方法では検出が困難であった微小な欠陥も検出することが可能となる。これらの作用効果が相俟って、本発明に係る検査方法によれば、転がり軸受20が良品であるか否かを容易にかつ精度良く判定することができる。
【0031】
図2を参照して説明したディープラーニングモデル9はあくまでも一例であり、適宜の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、畳み込み層9b及びプーリング層9cの設置数(畳み込み処理及びプーリング処理の実施回数)、各畳み込み層9bで用いるフィルタの「大きさ」や「数」、各プーリング層9cにおける「ストライド幅」は、入力データのデータサイズなどに応じて任意に変更可能である。また、各プーリング層9cで実行する演算処理は、上記のマックスプーリングに替えて、特徴マップの所定領域内の平均値をとる平均プーリング(Average Pooling)とすることも可能である。
【0032】
また、以上で説明した実施形態では、1次元CNNのディープラーニングモデル9の入力層9aに入力する振動波形(波形データ)をFFT波形としたが、入力する振動波形は、FFT波形に替えて、エンベロープ波形又は前処理が施されていない時間軸の振動波形とすることもできる。モデル9の入力層9aに入力する振動波形をエンベロープ波形とする場合、前処理部8においては、前処理としてのエンベロープ処理が行われる。ここでは、帯域フィルタ部7で取り出された特定範囲の周波数成分のデジタル波形のうち、軸受の損傷により発せられる振動が有効なデータとして取り出される。
【0033】
以上で説明した実施形態では、外輪22を径方向に加圧した状態で内輪21を回転駆動させるのに伴って外輪22に生じる振動を検出部4で検出し、この検出した振動から得られる振動波形を利用して転がり軸受20が良品であるか否かを判定(検査)するようにしたが、本発明に係る検査方法は、内輪21を径方向に加圧した状態で外輪23を回転駆動させるのに伴って内輪21に生じる振動を検出部4で検出し、この検出した振動から得られる振動波形を利用して転がり軸受20が良品であるか否かを判定(検査)する際に用いることも可能である。
【0034】
また、検査対象の転がり軸受20が玉軸受または円錐ころ軸受の場合、外輪22を軸方向に加圧した状態で内輪21を回転駆動させるのに伴って外輪22に生じる振動を検出部4で検出し、この検出した振動から得られる振動波形を利用して転がり軸受20が良品であるか否かを判定(検査)することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 検査装置
2 回転駆動部
3 加圧部
4 検出部
5 信号処理部
6 AD変換部
7 帯域フィルタ部
8 前処理部
9 ディープラーニングモデル
9b 畳み込み層
9c プーリング層
10 良否判定部
20 転がり軸受
21 内輪
22 外輪
23 転動体
図1
図2
図3
図4