(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011588
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】決済端末
(51)【国際特許分類】
G06K 7/00 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
G06K7/00 082
G06K7/00 030
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113717
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 淳司
(57)【要約】
【課題】挿入されるICカードを介した静電気に起因する故障を抑制可能な構成を提供する。
【解決手段】挿入口11を介して挿入されたICカード30のカード表面抵抗値Rを計測する計測部27の計測結果に基づいて、挿入口11を介して挿入されたICカード30の種別に関して、低導電性カード30aの挿入及び高導電性カード30bの挿入のいずれであるかについて判定される。そして、ICカード30が挿入口に挿入されていない場合、又は、低導電性カード30aの挿入と判定されている場合には、決済情報取得部26が動作可能な通電状態に制御され、高導電性カード30bの挿入と判定されている場合には、決済情報の読み取りが完了した後にICカードが抜き取られるまで決済情報取得部26が動作不能な非通電状態に制御される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードから読み取った決済情報を利用して決済処理を行う決済端末であって、
前記ICカードが挿入される挿入口と、
前記挿入口を介して規定位置まで挿入された前記ICカードのカード端子に接触する接続端子を介して前記ICカードから前記決済情報を読み取って取得する決済情報取得部と、
前記決済情報取得部によって取得された前記決済情報を利用して前記決済処理を行う決済処理部と、
前記挿入口を介して挿入された前記ICカードの抵抗値を計測する計測部と、
前記計測部の計測結果に基づいて、前記挿入口を介して挿入された前記ICカードの種別に関して、導電性の低いICカードの挿入及び導電性の高いICカードの挿入のいずれであるかについて判定する判定部と、
前記決済情報取得部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ICカードが前記挿入口に挿入されていない場合、又は、前記判定部により前記導電性の低いICカードの挿入と判定されている場合には、前記決済情報取得部を動作可能な通電状態に制御し、前記判定部により前記導電性の高いICカードの挿入と判定されている場合には、前記決済情報の読み取りが完了した後に前記ICカードが抜き取られるまで前記決済情報取得部を動作不能な非通電状態に制御することを特徴とする決済端末。
【請求項2】
前記計測部は、前記挿入口を介して挿入された前記ICカードの一面に接触する一側端子部と前記ICカードの他面に接触する他側端子部とを利用して前記ICカードの抵抗値を計測し、
前記一側端子部は、前記ICカードの一面に対して押圧される押圧部材として形成されることを特徴とする請求項1に記載の決済端末。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記ICカードが挿入されていない前記挿入口を塞ぐように付勢され、前記挿入口に対して挿入される前記ICカードによって前記付勢に抗して押し下げられるように支持されることを特徴とする請求項2に記載の決済端末。
【請求項4】
前記制御部は、前記決済情報取得部を前記非通電状態に制御した後、前記計測部の計測結果に基づいて前記ICカードが抜き取られていると判断されることで、前記決済情報取得部を前記通電状態に制御することを特徴とする請求項1に記載の決済端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードから読み取った決済情報を利用して決済処理を行う決済端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ICカードから読み取った決済情報を利用して決済処理を行う決済端末では、静電気が帯電したICカードが挿入口から挿入されることを想定して、その挿入口に導電性部材を設置することでICカードの除電を行っている。例えば、下記特許文献1に開示されるカード処理装置では、挿入口へのICカードの挿入を案内するカード案内部に静電気除去部材が設けられており、この静電気除去部材によって挿入口に挿入されたICカードが除電されるように構成されている。これにより、ICカードから決済情報を読み取って取得する決済情報取得部等を構成する各種構成部品を、ICカードを介した静電気から保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、決済用のICカードには、樹脂製のICカードや金属コーティングされたICカードなど様々な種別のICカードが採用される。金属コーティングされたICカードなどの導電性の高いICカードは、樹脂製のICカードなどの導電性の低いICカードと異なり、帯電したユーザの手から静電気が流れやすい。
【0005】
このため、導電性の高いICカードを挿入口に挿入する場合、挿入時には挿入口の除電部材によって除電できても、決済端末からICカードを抜く際に、帯電したユーザの手がICカードに触れることによって、ICカードを介して静電気が端末内の決済情報取得部等に流れ込むという問題がある。挿入口に挿入された状態のICカードは、決済情報を読み取るためにICカードのカード端子が決済情報取得部の接続端子に接触しているため、ICカード表面に流れ込んだ静電気が除電部材よりも接触状態の両端子間を介して決済情報取得部等に流れてしまう可能性があるからである。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、挿入されるICカードを介した静電気に起因する故障を抑制可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、
ICカード(30)から読み取った決済情報を利用して決済処理を行う決済端末(10)であって、
前記ICカードが挿入される挿入口(11)と、
前記挿入口を介して規定位置まで挿入された前記ICカードのカード端子(33)に接触する接続端子(26a)を介して前記ICカードから前記決済情報を読み取って取得する決済情報取得部(26)と、
前記決済情報取得部によって取得された前記決済情報を利用して前記決済処理を行う決済処理部(21)と、
前記挿入口を介して挿入された前記ICカードの抵抗値(R)を計測する計測部(27)と、
前記計測部の計測結果に基づいて、前記挿入口を介して挿入された前記ICカードの種別に関して、導電性の低いICカード(30a)の挿入及び導電性の高いICカード(30b)の挿入のいずれであるかについて判定する判定部(21)と、
前記決済情報取得部を制御する制御部(21)と、
を備え、
前記制御部は、前記ICカードが前記挿入口に挿入されていない場合、又は、前記判定部により前記導電性の低いICカードの挿入と判定されている場合には、前記決済情報取得部を動作可能な通電状態に制御し、前記判定部により前記導電性の高いICカードの挿入と判定されている場合には、前記決済情報の読み取りが完了した後に前記ICカードが抜き取られるまで前記決済情報取得部を動作不能な非通電状態に制御することを特徴とする
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、挿入口を介して挿入されたICカードの抵抗値を計測する計測部の計測結果に基づいて、挿入口を介して挿入されたICカードの種別に関して、導電性の低いICカードの挿入及び導電性の高いICカードの挿入のいずれであるかについて判定部により判定される。そして、ICカードが挿入口に挿入されていない場合、又は、判定部により導電性の低いICカードの挿入と判定されている場合には、制御部により決済情報取得部が動作可能な通電状態に制御され、判定部により導電性の高いICカードの挿入と判定されている場合には、決済情報の読み取りが完了した後にICカードが抜き取られるまで制御部により決済情報取得部が動作不能な非通電状態に制御される。
【0009】
これにより、金属コーティングされたICカードのように導電性の高いICカードが挿入口から抜き取られる際、そのICカードに帯電したユーザの手が触れた場合でも、決済情報取得部が非通電状態に制御されているので、ICカードを介した静電気が決済情報取得部に流れ込むこともない。一方、樹脂製のICカードのように導電性の低いICカードが挿入口から抜き取られる際には、決済情報取得部が通電状態に制御される。導電性の低いICカードであれば、帯電したユーザの手が触れても、静電気がICカードを介して決済情報取得部に流れ込むこともないので、決済情報取得部が不要に非通電状態に制御されたために決済情報取得部の再始動に時間がかかることもない。したがって、挿入されるICカードを介した静電気に起因する故障を抑制することができる。
【0010】
請求項2の発明では、計測部は、挿入口を介して挿入されたICカードの一面に接触する一側端子部とICカードの他面に接触する他側端子部とを利用してICカードの抵抗値を計測し、一側端子部は、ICカードの一面に対して押圧される押圧部材として形成される。これにより、一側端子部として機能する押圧部材がICカードの一面に押圧されるために、一側端子部とICカードの一面とが確実に接触して部品間の接触抵抗が小さくなるので、計測部による計測精度を高めることができる。
【0011】
請求項3の発明では、押圧部材は、ICカードが挿入されていない挿入口を塞ぐように付勢され、挿入口に対して挿入されるICカードによって上記付勢に抗して押し下げられるように支持される。これにより、ICカードが挿入されていない挿入口が押圧部材によって塞がれるため、計測部の計測精度を高めるための押圧部材に挿入口に関する防塵機能を兼備させることができるので、計測精度向上及び防塵対策が施される決済端末の小型軽量化や部品点数削減等を図ることができる。
【0012】
請求項4の発明では、制御部により、決済情報取得部が非通電状態に制御された後、計測部の計測結果に基づいてICカードが抜き取られていると判断されることで、決済情報取得部が通電状態に制御される。ICカードの抜き差しによって計測部の計測結果が変化することから、計測部の計測結果に基づいて、導電性の低いICカードの挿入及び導電性の高いICカードの挿入のいずれかの判定だけでなく、そのICカードの抜き取りも精度良く検知することができる。これにより、ICカードが抜き取られる前に誤って決済情報取得部が通電状態に制御されてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る決済端末の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】決済端末の挿入口近傍の構成を概略的に示す斜視図であり、
図2(A)は、ICカード挿入前の状態を示し、
図2(B)は、ICカード挿入後の状態を示す。
【
図3】
図2の挿入口近傍の構成を挿入側から見た状態を概略的に示す説明図であり、
図3(A)は、ICカード挿入前の状態を示し、
図3(B)は、ICカード挿入後の状態を示す。
【
図4】
図2の挿入口近傍の構成を側面側から見た状態を概略的に示す説明図であり、
図4(A)は、ICカード挿入前の状態を示し、
図4(B)は、ICカード挿入後の状態を示す。
【
図5】カード表面抵抗値を計測する計測構成を説明する説明図である。
【
図6】
図6(A)は、低導電性カードの挿入時に計測されるカード表面抵抗値の時間変化を説明する説明図であり、
図6(B)は、高導電性カードの挿入時に計測されるカード表面抵抗値の時間変化を説明する説明図である。
【
図7】制御部にてなされる決済処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明の決済端末を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示す決済端末10は、電子決済用のICカード30から読み取った決済情報を利用して決済処理を行うための据え置き型の端末である。決済端末10の外郭を構成する筐体には、ICカード30の一部が挿入される挿入口11が設けられており、この挿入口11の周囲には、挿入されたICカード30から静電気を除電するための静電気除去部材(図示略)が設けられている。
【0015】
図2~
図4に示すように、挿入口11は、挿入されたICカード30を規定位置まで案内するための上縁部12及び下縁部13によって形成される。より具体的には、下縁部13にはICカード30の寸法に応じた幅及び深さの凹部13aが形成され、この凹部13aと上縁部12の下面とにより挿入口11が形成される。挿入口11内には、上記規定位置まで挿入されたICカード30に当接してその挿入を規制するためのストッパ(図示略)が設けられている。
【0016】
図2(A)、
図3(A)、
図4(A)に示すように、挿入口11は、ICカード30が挿入されていない状態では、バネ部材14によって下方から付勢された防塵シャッター15によって塞がれている。
【0017】
防塵シャッター15は、挿入口11の開口高さ(凹部13aの深さ)よりも僅かに長い直径の円柱状導体として構成されている。この防塵シャッター15は、ICカード30が挿入されていない状態では、その両端にてバネ部材14により回転自在に支持された状態で、挿入口11を塞ぐようにして凹部13a近傍の上縁部12の下面に押し付けられている。
【0018】
バネ部材14は、導電性の弾性部材であって、中央部にて下縁部13に形成された段部13bの底面に組み付けられて、断面略U字状に形成される両端部にて回転自在に支持した防塵シャッター15を上縁部12の下面に対して付勢するように形成されている。
【0019】
このように構成されることで、
図2(B)、
図3(B)、
図4(B)に示すように、挿入口11に挿入されるICカード30によって、防塵シャッター15が押し回されつつバネ部材14の付勢に抗して下方に押し下げられる。このため、規定位置まで挿入されたICカード30は、その上面31及び下面32が上縁部12の下面と下縁部13の上面(凹部13aの底面)及び防塵シャッター15とによって上下方向にて挟持された状態で保持される。特に、この保持状態では、バネ部材14の付勢によって防塵シャッター15がICカード30の下面32に押圧された状態になる。なお、防塵シャッター15は、「押圧部材」の一例に相当し得る。また、
図3(B)及び
図4では、便宜上、ICカード30に対してハッチングを付している。
【0020】
図1に示すように、決済端末10は、当該決済端末10全体を制御可能なCPUやメモリ等からなる制御部21、記憶部22、操作部23、報知部24、通信部25、決済情報取得部26、計測部27等を備えている。操作部23は、操作ボタン等を有し、制御部21に対して操作ボタン等の操作に応じた操作信号を与える構成をなしており、制御部21は、この操作信号を受けて操作信号の内容に応じた動作を行う。報知部24は、表示画面やスピーカ等を備えており、制御部21による制御によって表示画面による表示内容やスピーカによる音声ガイダンス等が制御されることで、ユーザに対してICカード30の読取結果等に応じた所定の報知を行うように構成されている。通信部25は、POS端末などの上位機器等との間でのデータ通信を行うためのインタフェースとして構成されており、制御部21と協働して通信処理を行う構成をなしている。
【0021】
決済情報取得部26は、挿入口11を介して規定位置まで挿入されたICカード30の上面31に設けられるカード端子33に接触する接続端子26aを備えている。決済情報取得部26は、制御部21により制御されて、接続端子26aに接触するカード端子33を介して、ICカード30に記録される決済情報を読み取るための読取処理を行い、制御部21は、決済情報取得部26の読み取りによって取得された決済情報を利用して決済処理を行う。また、決済情報取得部26は、必要に応じて制御部21により制御されて、ICカード30に記録される決済情報の少なくとも一部を更新するための更新処理を行う。なお、決済情報取得部26の読み取りによって取得された決済情報を利用して決済処理を行う制御部21は、「決済処理部」の一例に相当し得る。
【0022】
計測部27は、挿入口11を介して挿入されたICカード30の表面等の抵抗値(以下、カード表面抵抗値Rともいう)を計測して、その計測結果を制御部21に出力するように構成されている。具体的には、計測部27は、
図5に示すように、バネ部材14に接続される配線27aと上縁部12の下面に露出する上側端子28に接続する配線27bとを利用して、ICカード30の下面32に防塵シャッター15を押し付けるバネ部材14とICカード30の上面31との間の抵抗値をカード表面抵抗値Rとして計測するように構成されている。
【0023】
このため、バネ部材14によってICカード30の下面(一面)32に押圧される防塵シャッター15は、「押圧部材」の一例であって、ICカード30の抵抗値を計測するための「一側端子部」として機能する。なお、上述した上縁部12の下面に露出する上側端子28は、ICカード30の上面(他面)31に接触する「他側端子部」の一例に相当し、ICカード30が挿入されていないために上縁部12の下面に押し付けられる防塵シャッター15が接触しない位置に設けられている。
【0024】
また、挿入口11には、ICカード30が上記規定位置まで挿入された状態を検知するためのカード挿入センサ(図示略)が設けられており、制御部21は、カード挿入センサから挿入検知信号を受信することで、ICカード30が上記規定位置まで挿入されている状態を認識する。
【0025】
このように構成される決済端末10では、制御部21にてなされる決済処理にて、挿入口11を介して挿入されたICカード30の種別に応じて、決済情報取得部26の通電状態を制御することで、ICカード30を介した静電気に起因する故障を抑制する。具体的には、まず、計測部27の計測結果に基づいて、挿入されたICカード30が、樹脂製のICカード30のように導電性の低いICカード(以下、低導電性カード30aともいう)と、金属コーティングされたICカード30のように導電性の高いICカード(以下、高導電性カード30bともいう)とのいずれであるか判定する。
【0026】
例えば、
図6(A)に示すように、ICカード30の挿入検知後(
図6(A)の時刻ta1参照)でも、計測部27にて計測されるカード表面抵抗値Rがあまり変化しない場合(カード表面抵抗値Rが所定の閾値Rth以下にならない場合)には、低導電性カード30aの挿入と判定される。その一方で、
図6(B)に示すように、ICカード30の挿入検知後(
図6(B)の時刻tb1参照)に、計測部27にて計測されるカード表面抵抗値Rが所定の閾値Rth以下になる場合には、高導電性カード30bの挿入と判定される。
【0027】
そして、決済処理では、高導電性カード30bの挿入と判定される場合に、一時的に決済情報取得部26が動作不能な非通電状態に制御される。これにより、高導電性カード30bのカード端子33が決済情報取得部26の接続端子26aに接触している場合でも、高導電性カード30bの表面に流れ込んだ静電気が接触状態の両端子間を介して決済情報取得部26に流れる状態を防止することができる。
【0028】
以下、制御部21にてなされる決済処理について、
図7に示すフローチャートを参照して具体的に詳述する。
通信部25を介してPOS端末等から所定の指示を受けた制御部21にて決済処理が開始されると、
図7のステップS101に示す判定処理にて、ICカード30が挿入口11に挿入されているか否かについて判定される。ここで、上記カード挿入センサから挿入検知信号が受信されていない状態では、ICカード30が挿入口11に挿入されていないとして、ステップS101にてNoとの判定が繰り返される。なお、計測部27にて計測されるカード表面抵抗値Rの変化に応じて、ICカード30が挿入口11に挿入されているか否かについて判定されてもよい。
【0029】
そして、ICカード30が挿入口11を介して上記規定位置まで挿入されることで、上記カード挿入センサから挿入検知信号が受信されると、ICカード30が挿入口11に挿入されていると判定されて(S101でYes)、ステップS103に示す判定処理にて、高導電性カード30bの挿入であるか否かについて判定される。なお、上記ステップS103の判定処理を行う制御部21は、挿入口11を介して挿入されたICカード30の種別に関して、導電性の低いICカード(低導電性カード30a)の挿入及び導電性の高いICカード(高導電性カード30b)の挿入のいずれであるかについて判定する「判定部」一例に相当し得る。
【0030】
ここで、
図6(A)に示すように、計測部27にて計測されるカード表面抵抗値Rが所定の閾値Rth以下にならない場合には、低導電性カード30aの挿入であると判定されて(S103でNo)、ステップS105に示す決済情報読み書き処理がなされる(
図6(A)の時刻ta2参照)。この決済情報読み書き処理では、規定位置まで挿入された低導電性カード30aのカード端子33に接触する接続端子26aを介して低導電性カード30aに記録される決済情報が決済情報取得部26の読み取りによって取得され、このように取得された決済情報が、通信部25を介してPOS端末等に送信される。その後、必要に応じてPOS端末等から指示された情報に応じて、決済情報取得部26により低導電性カード30aに記録される決済情報の少なくとも一部が更新される。
【0031】
上述した決済情報読み書き処理が完了すると、ステップS107に示す報知処理がなされ、ユーザに対してICカード30の抜き取りを促すための情報が報知部24の表示画面やスピーカ等を利用して報知される(
図6(A)の時刻ta3参照)。続いて、ステップS109の判定処理にて、ICカード30が挿入口11から抜かれたか否かについて判定される。ここで、上記カード挿入センサから挿入検知信号が受信される状態が継続している場合には、ICカード30が抜かれていないと判定されて(S109でNo)、上記報知が継続される。そして、上記報知中に、上記カード挿入センサから挿入検知信号が受信されなくなると(
図6(A)の時刻ta4参照)、ICカード30が挿入口11から抜かれたと判定されて(S109でYes)、本決済処理が終了する。
【0032】
このように、低導電性カード30aが挿入口11に挿入される場合には、ICカード30が挿入口11に挿入されていない場合と同様に、決済情報取得部26が動作可能な通電状態が維持されて、後述するように決済情報取得部26が動作不能な非通電状態に制御されることはない。なお、計測部27にて計測されるカード表面抵抗値Rの変化に応じて、ICカード30が挿入口11から抜かれたか否かについて判定されてもよい。
【0033】
一方、
図6(B)に示すように、計測部27にて計測されるカード表面抵抗値Rが所定の閾値Rth以下になると、高導電性カード30bの挿入であると判定されて(S103でYes)、ステップS111に示す決済情報読み書き処理がなされる。この処理では、上記ステップS105に示す決済情報読み書き処理と同様に、高導電性カード30bのカード端子33に接触する接続端子26aを介して決済情報取得部26の読み取りによって取得された決済情報が、通信部25を介してPOS端末等に送信される(
図6(B)の時刻tb2参照)。
【0034】
上述した決済情報読み書き処理が完了すると、ステップS113に示す非通電状態制御処理がなされ、上記決済情報読み書き処理が完了したことをもって、決済情報取得部26が動作不能な非通電状態に制御される(
図6(B)の時刻tb3参照)。その後、ステップS115に示す報知処理がなされ、上記ステップS107に示す報知処理と同様に、ICカード30が抜かれるまで(S117でNo)、ユーザに対してICカード30の抜き取りを促すための情報が報知部24の表示画面やスピーカ等を利用して報知される(
図6(B)の時刻tb4参照)。
【0035】
そして、上記報知中に、上記カード挿入センサから挿入検知信号が受信されなくなると(
図6(B)の時刻tb5参照)、ICカード30が挿入口11から抜かれたと判定される(S117でYes)。この場合には、ステップS119に示す通電状態制御処理がなされ、決済情報取得部26が動作可能な通電状態に制御された後(
図6(B)の時刻tb6参照)、本決済処理が終了する。すなわち、ICカード30が抜き取られる前に一時的に動作不能な非通電状態に制御されていた決済情報取得部26が、ICカード30が抜き取られた後に動作可能な通電状態に復帰する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る決済端末10では、挿入口11を介して挿入されたICカード30のカード表面抵抗値Rを計測する計測部27の計測結果に基づいて、挿入口11を介して挿入されたICカード30の種別に関して、低導電性カード30aの挿入及び高導電性カード30bの挿入のいずれであるかについて判定される。そして、ICカード30が挿入口に挿入されていない場合、又は、低導電性カード30aの挿入と判定されている場合には、決済情報取得部26が動作可能な通電状態に制御され、高導電性カード30bの挿入と判定されている場合には、決済情報の読み取りが完了した後にICカードが抜き取られるまで決済情報取得部26が動作不能な非通電状態に制御される。
【0037】
これにより、金属コーティングされたICカードのように導電性の高いICカード30(高導電性カード30b)が挿入口11から抜き取られる際、そのICカード30に帯電したユーザの手が触れた場合でも、決済情報取得部26が非通電状態に制御されているので、ICカード30を介した静電気が決済情報取得部26に流れ込むこともない。一方、樹脂製のICカードのように導電性の低いICカード30(低導電性カード30a)が挿入口11から抜き取られる際には、決済情報取得部26が通電状態に制御される。導電性の低いICカード30であれば、帯電したユーザの手が触れても、静電気がICカード30を介して決済情報取得部26に流れ込むこともないので、決済情報取得部26が不要に非通電状態に制御されたために決済情報取得部26の再始動に時間がかかることもない。したがって、挿入されるICカード30を介した静電気に起因する故障を抑制することができる。
【0038】
そして、計測部27は、挿入口11を介して挿入されたICカード30の下面(一面)32に接触する防塵シャッター15とICカード30の上面(他面)31に接触する上側端子28とを利用してカード表面抵抗値Rを計測し、防塵シャッター15は、ICカード30の下面32に対して押圧される押圧部材として形成される。これにより、一側端子部として機能する押圧部材である防塵シャッター15がICカード30の下面32に押圧されるために、一側端子部とICカード30の下面32とが確実に接触して部品間の接触抵抗が小さくなるので、計測部27による計測精度を高めることができる。
【0039】
特に、押圧部材として機能する防塵シャッター15は、バネ部材14によって、ICカード30が挿入されていない挿入口11を塞ぐように付勢され、挿入口11に対して挿入されるICカード30によって上記付勢に抗して押し下げられるように支持される。これにより、ICカード30が挿入されていない挿入口11が防塵シャッター15によって塞がれるため、計測部27の計測精度を高めるための防塵シャッター15に挿入口11に関する防塵機能を兼備させることができるので、計測精度向上及び防塵対策が施される決済端末10の小型軽量化や部品点数削減等を図ることができる。
【0040】
なお、制御部21によりなされる決済処理では、決済情報取得部26が非通電状態に制御された後、挿入検知信号が受信されなくなることで高導電性カード30bが抜き取られていると判断して、決済情報取得部26が通電状態に制御されることに限らず、計測部27の計測結果に基づいて高導電性カード30bが抜き取られていると判断して、決済情報取得部26が通電状態に制御されてもよい。具体的には、決済情報取得部26が非通電状態に制御された後、計測部27により計測されるカード表面抵抗値Rがカード挿入検知前の状態に戻ることで、高導電性カード30bが抜き取られていると判断して、決済情報取得部26が通電状態に制御される。
【0041】
ICカード30の抜き差しによって計測部27の計測結果が変化することから、計測部27の計測結果に基づいて、導電性の低いICカード(低導電性カード30a)の挿入及び導電性の高いICカード(高導電性カード30b)の挿入のいずれかの判定だけでなく、そのICカード30の抜き取りも精度良く検知することができる。これにより、高導電性カード30bが抜き取られる前に誤って決済情報取得部26が通電状態に制御されてしまうことを抑制することができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明は、防塵シャッター15によって挿入口11が塞がれる決済端末10に適用されることに限らず、挿入口が塞がれない決済端末に適用されてもよい。
【0043】
(2)計測部27は、バネ部材14に接続される配線27aと上縁部12の下面に露出する上側端子28に接続する配線27bとを利用して、ICカード30の下面32に防塵シャッター15を押し付けるバネ部材14とICカード30の上面31との間の抵抗値をカード表面抵抗値Rとして計測することに限らず、例えば、挿入口11に挿入されたICカード30の下面32と上面31とにそれぞれ接続される端子間の抵抗値をカード表面抵抗値Rとして計測してもよい。
【0044】
(3)上記非通電状態制御処理では、決済情報取得部26を動作不能な非通電状態に制御することに限らず、ICカード表面に流れ込んだ静電気によって影響を受ける可能性がある電子部品等をも動作不能な非通電状態に制御してもよい。
【0045】
(4)防塵シャッター15は、段部13bに組み付けられたバネ部材14によってICカード30の下面32に対して下方から押圧されるように配置されることに限らず、例えば、上縁部12の段部に組み付けられたバネ部材によってICカード30の上面31に対して上方から押圧されるように配置されてもよい。この構成では、計測部27は、ICカード30の上面31に防塵シャッター15を押し付ける導電性のバネ部材とICカード30の下面32との間の抵抗値をカード表面抵抗値Rとして計測するように構成されてもよい。
【0046】
(5)防塵シャッター15は、挿入口11に挿入されるICカード30によって、押し回されつつ押し下げられるように構成されることに限らず、例えば、ICカード30の挿入側が接触するテーパ形状を利用して押し下げられるように構成されてもよい。
【0047】
10…決済端末
11…挿入口
14…バネ部材
15…防塵シャッター(押圧部材,一側端子部)
21…制御部(決済処理部,判定部)
26…決済情報取得部
26a…接続端子
27…計測部
28…上側端子(他側端子部)
30…ICカード
30a…低導電性カード
30b…高導電性カード
31…上面(他面)
32…下面(一面)
33…カード端子
R…カード表面抵抗値