(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115880
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】流量調整弁及びそれを用いる流量制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 11/10 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
F02D11/10 Q
F02D11/10 U
F02D11/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021761
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真史
(72)【発明者】
【氏名】金子 直和
【テーマコード(参考)】
3G065
【Fターム(参考)】
3G065BA03
3G065CA06
3G065CA39
3G065GA41
3G065KA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】流体の流量を調整しながら制御を行うための流量調整弁について、簡易な構成で高精度な流量制御を行えるようにする。
【解決手段】流体が通過する流体通路を形成したボディ10と、弁体21と、弁軸22と、ACサーボモータ40と、を有し、開度センサで前記弁体21の開度を検知しながら前記ACサーボモータ40を回動操作することで前記弁体21の開度を変更して前記流体の流量を調整する流量調整弁1Aにおいて、前記開度センサは、前記ACサーボモータ40に付設された角度位置センサ50が兼ねるものとされ、前記弁体21側及び前記弁軸22側に開度センサを備えていない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過する流体通路を形成したボディと、
前記流体通路を開閉する弁体と、
回動可能に前記ボディに支持されるとともに前記弁体と結合した弁軸と、
出力軸が前記弁軸に接続されたACサーボモータと、を有し、
前記弁体の開度を開度センサで検知しながら前記ACサーボモータの前記出力軸を回動操作することで、前記弁軸を介して前記弁体の開度を変更して前記流体の流量を調整する流量調整弁において、
前記開度センサは、前記ACサーボモータに付設された角度位置センサが兼ねるものとされ、前記弁体側及び前記弁軸側に開度センサを備えていない、ことを特徴とした流量調整弁。
【請求項2】
前記出力軸と前記弁軸の間には歯車が介装されており、前記角度位置センサが検出した角度位置に前記出力軸と前記弁軸の回転比率に応じた係数を掛けることにより、前記弁体の開度を推定しながら前記流体の流量の調整を行う、ことを特徴とする請求項1に記載した流量調整弁。
【請求項3】
請求項2記載の前記流量調整弁に付設又は接続されて前記角度位置センサの検出データが入力されるとともに前記ACサーボモータの駆動操作を行う流量制御装置であって、前記角度位置センサが検出した前記角度位置に前記出力軸と前記弁軸の回転比率に応じた係数を掛けて前記弁体の開度を推定しながら前記流量調整弁の制御を実行する、ことを特徴とした流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量調整弁及びそれを用いる流量制御装置に関し、殊に、ACサーボモータを使用して弁体の精密な開閉操作を行う流量調整弁、及びそれに接続されてそれを制御に用いる流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気やエンジンの排気ガスなどの流体による流量を調整する弁(バルブ)を、例えばDCモータやステッピングモータなどの電動モータ駆動で精密に開閉操作する方式を採用した流量調整弁が周知であるが、例えば
図6に示した、DCモータ40Bを用いた流量調整弁1Bのように、弁体21の開閉角度であるバルブ開度を検知するために、前記弁体21と結合した弁軸22の軸線上に開度センサ(角度位置センサ)31および検知用のマグネット32を搭載しているのが一般的である。
【0003】
前記開度センサには、接触式(抵抗式)や非接触式(磁力式)など、様々な方式のものが採用されており、いずれの方式においても、弁体の開度を検知するための種々の部品を搭載する必要があるため、流量調整弁のコンパクト化や低コスト化を困難にする一つの要因となっている。
【0004】
また、流量調整弁における弁体の駆動手段として使用される電動モータとして、モータの回動状態に応じたその出力軸の角度位置を正確に制御することができるACサーボモータを用いることも知られている。
【0005】
例えば
図7に示した、ACサーボモータ40Cを用いた流量調整弁1Cのように、前記ACサーボモータ40Cは、出力軸41と、前記出力軸41の周りに設置したロータ42およびステータ43と、前記出力軸41が回動した角度位置を検出する角度位置センサ50とを備えているのが通常であり、前記出力軸41の回動角度を検出する出力側の角度位置センサ(エンコーダ)50と、弁軸22の回動角度を弁体21の開度として検出する前記弁体21側の開度センサ31の2つのセンサを備えていることから、部品点数が増加しており、構造の複雑化や製品コストの高騰に繋がっている。
【0006】
一方、上述した流量調整弁1B,1Cや、例えば特開平6-93888号公報(特許文献1)に記載された発明のように、モータ側の出力軸と弁体側の弁軸の間には、回動速度変換用の歯車61,71,72,81等が介装されているのが一般的であることから(
図6,
図7参照)、前記弁体21側の前記開度センサ31で検出した角度と出力側の前記角度位置センサ50で検出した角度は一致しないため、前記開度センサ31による検出データをそのまま使用してモータの駆動制御を実行することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、流体の流量を調整しながら制御を行うための流量調整弁について、簡易な構成で高精度な流量制御を行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明は、流体が通過する流体通路を形成したボディと、前記流体通路を開閉する弁体と、回動可能に前記ボディに支持されるとともに前記弁体と結合した弁軸と、出力軸が前記弁軸に接続されたACサーボモータと、を有し、前記弁体の開度を開度センサで検知しながら前記ACサーボモータの前記出力軸を回動操作することで、前記弁軸を介して前記弁体の開度を変更して前記流体の流量を調整する流量調整弁において、前記開度センサは、前記ACサーボモータに付設された角度位置センサが兼ねるものとされ、前記弁体側及び前記弁軸側に開度センサを備えていない、ことを特徴とする。
【0010】
このように、流量調整弁に備えられたACサーボモータに付設されている角度位置センサによる検出データを、弁体の開度(バルブ角度)を検知するためのデータとして前記弁体の開閉制御に使用するものとして、前記弁体や前記弁軸側に開度センサを備えていない構成の流量調整弁としたことにより、簡易な構成で高精度な流量制御が可能となり、また、製品のコンパクト化も可能となる。
【0011】
本発明において、前記出力軸と前記弁軸の間には歯車が介装されており、前記角度位置センサが検出した角度位置に前記出力軸と前記弁軸の回転比率に応じた係数を掛けることにより、前記弁体の開度を推定しながら前記流体の流量の調整を行う場合、前記流量調整弁の制御を実行する制御装置に過剰な処理負担をかけることなく、前記弁体の開度を正確に検知しながら前記流量調整弁の精密な制御を実行可能なものとなる。
【0012】
更に、前記流量調整弁を用いる本発明である流量制御装置は、前記流量調整弁に付設又は接続されて前記角度位置センサによる検出データが入力されるとともに前記ACサーボモータの駆動操作を行うものであって、前記角度位置センサが検出した角度位置に前記出力軸と前記弁軸の回転比率に応じた係数を掛けて前記弁体の開度を推定しながら前記流量調整弁の開閉制御を実行することで、手動による操作等を加えることなく精密な制御を自動的に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
ACサーボモータの角度位置センサによる検出データを弁体の開閉制御に使用する構成として、弁体や弁軸側に開度センサを備えないものとした本発明によると、簡易な構成で高精度な流量制御を行え、製品のコンパクト化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明における実施の形態である流量調整弁の縦断面図。
【
図2】
図1に示した流量調整弁における蓋部材を外した状態の中間ギアの上段歯車とピニオンギアの連結状態を示す図。
【
図3】
図1に示した流量調整弁における蓋部材を外した状態の中間ギアの下段歯車と駆動ギアの連結状態を示す図。
【
図4】
図1に示した流量調整弁におけるピニオンギア,中間ギア,駆動ギアの連結状態を示す説明図。
【
図5】
図1の流量調整弁におけるACサーボモータの出力軸の角度位置と弁軸の角度位置の関係を示す一例としてのグラフ。
【
図6】DCモータを備えた従来の流量調整弁の一例を示す縦断面図。
【
図7】ACサーボモータを備えた従来の流量調整弁の一例を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態である流量調整弁1Aを縦断面図で示している。前記流量調整弁1Aは、流体が通過する流体通路11を形成したボディ10と、前記流体通路11を開閉する弁体21と、回動可能に前記ボディ10に支持されるとともに前記弁体21と結合した弁軸22と、出力軸41が前記弁軸22に接続されたACサーボモータ40と、を有し、エンジン等における空気や排気ガス等の流体の流量を調整して制御を行うために用いられる装置であり、図示しない電子制御装置(流量制御装置)が、前記ACサーボモータ40を操作しながら前記流体通路11に配置した前記弁体21を精密に開閉制御するものである。
【0017】
即ち、この流量調整弁1Aは、前記弁体21の開度(角度位置)を開度センサで検知しながら、前記ACサーボモータ40の前記出力軸41を回動操作することにより、ピニオンギア(歯車61),中間ギア(歯車71,72),駆動ギア(歯車81)を介して接続された前記弁軸22を回転させることで、前記弁体21を回動させながらその開度を調整して、流体の流量を制御する構造である。
【0018】
そして、前記弁体21の開度(角度位置)を検知する開度センサとしては、
図6,
図7に示した従来の流量調整弁1B,1Cのように、前記弁軸21側に配置した検知用のマグネット21aおよび開度センサ(角度位置センサ)を用いるものではなく、前記ACサーボモータ40に予め付設されている角度位置センサ50が兼ねるものとされ、前記弁体21側や前記弁軸22側に開度センサを備えていない構成とされており、この点が本発明における最大の特徴となっている。
【0019】
このように、前記流量調整弁1Aの前記ACサーボモータ40にエンコーダとして予め設けられ、前記出力軸31の回動による角度位置を検出する前記角度位置センサ50が送信する検出データを、前記弁体21の開度(バルブ角度)を検知するためのデータとしながら前記弁体21の開閉制御に使用するものとして、従来例のように前記弁体21や前記弁軸22側に開度センサを備えない構成を採用したことにより、従来の流量調整弁1B,1Cと比べて蓋体12の高さを削減可能となるなど、装置のサイズをコンパクトに抑えながら、低コストで簡易な構成でありつつ高精度な流量制御を実行可能としている。
【0020】
前記角度位置センサ50に用いられるエンコーダは、例えば光学式、磁気式などの方式が知られているが、本実施の形態における前記角度位置センサ50はその種類を問わず、従来知られたエンコーダのうち任意の方式のものを使用可能である。
【0021】
また、
図2乃至
図4に示すように、前記流量調整弁1Aにおいては、前記ACサーボモータ40の前記出力軸41と前記弁軸22の間には前記歯車61,71,72,81が介装されているため、前記角度位置センサ50で検出した前記ACサーボモータ40の駆動による前記出力軸41の角度位置と、前記弁軸22の角度位置及び前記弁体21の開度(バルブ角度)は、必ずしも一致しないことになる。
【0022】
そこで、本実施の形態においては、前記角度位置センサ50が検出した角度位置に、前記出力軸41と前記弁軸22の回転比率に応じた係数を掛けることにより、前記弁体21の開度を推定しながら流量調整を行う方式を採用している。
【0023】
図5のグラフは、前記流量調整弁1Aにおける前記ACサーボモータ40の前記出力軸41の角度位置と前記弁軸22の角度位置の関係を示しているが、前記弁体21の全開状態の角度に前記歯車71,61の歯数の比(B/A)と、前記歯車81,72の歯数の比(D/C)を掛けたものとなっている。
【0024】
即ち、前記ACサーボモータ40の前記出力軸41に取付けられたピニオンギアである前記歯車61の動力が、中間に配置された二段歯車状の中間ギアである歯車71,72を介して、前記弁体21を固定した前記弁軸22に取付けられた駆動ギアである前記歯車81に伝達されて駆動するようになっており、前記ピニオンギア(前記歯車61)と前記駆動ギア(前記歯車81)のギア比が、前記ACサーボモータ40と前記弁体21の回転比率になることから、前記ACサーボモータ40を作動させるための前記角度位置センサ50で検出された角度位置データから、前記弁体21の角度(バルブ角度)を推定することで、前記流量調整弁1Aの制御を可能なものとしている。
【0025】
上述した制御手順は、実際には前記流量調整弁1Aに接続された図示しない電子制御装置(流量制御装置)で実行され、前記角度位置センサ50で連続的に検知している角度位置データを基に、フィードバック制御で前記ACサーボモータ40の駆動制御を行う方式であり、斯かる電子制御装置は、例えばエンジンの駆動制御を行う制御装置(ECU)等が兼ねるものとして、前記電子制御装置の記憶手段に上述した制御手順を制御プログラムとして記憶させておくことが想定される。
【0026】
そして、上述した本実施の形態においては、前記流量調整弁1Aの制御を実行するために前記電子制御装置(流量制御装置)に対し過剰な処理負担をかけることなく、前記弁体21の開度を正確に検知(推定)しながら、前記流量調整弁1Aの精密な制御を実行することを可能としている。
【0027】
なお、電子制御装置(流量制御装置)は前記流量調整弁1A内に搭載するものとしてもよい(図示せず)。その場合、エンジンの駆動制御を行う制御装置(ECU)に追加回路や過剰な処理などの負担をかけることなく、前記流量調整弁1Aの制御を行うことができる。
【0028】
以上、述べたように、流体の流量を調整して制御を行うための流量調整弁について、本発明により、簡易な構成で高精度な流量制御を行え、製品のコンパクト化も可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1A 流量調整弁、10 ボディ、11 流体通路、21 弁体、22 弁軸、40 ACサーボモータ、41 出力軸、50 角度位置センサ、61,71,72,81 歯車