(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115885
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】搬送機構、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 39/36 20060101AFI20240820BHJP
B29C 33/44 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B29C39/36
B29C33/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021772
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】荒木 芳文
(72)【発明者】
【氏名】日野 雄司
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AD07
4F202AH33
4F202AH36
4F202AH37
4F202CA09
4F202CA11
4F202CA12
4F202CB01
4F202CC01
4F202CL02
4F202CM11
4F202CM14
4F202CP06
4F202CP10
4F202CQ01
(57)【要約】
【課題】樹脂成形により生じたガスを効率的に吸引する。
【解決手段】型開きされた上型3又は下型4から搬送物Pを搬送する搬送機構6であって、型開きされた上型3及び下型4の間の空間に進入する本体部60を備え、本体部60における進入方向の先端面60aに気体を吸引する吸引口6xが形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型開きされた上型又は下型から搬送物を搬送する搬送機構であって、
型開きされた前記上型及び下型の間の空間に進入する本体部を備え、
前記本体部における進入方向の先端面に気体を吸引する吸引口が形成されている、搬送機構。
【請求項2】
前記本体部の前記上型を向く上面又は前記下型を向く下面に気体を吸引する吸引口が形成されている、請求項1に記載の搬送機構。
【請求項3】
前記吸引口及び前記吸引口に接続される流路は、複数の構成部品から構成されており、
前記複数の構成部品は、分割して取り外し可能に構成されている、請求項1又は2に記載の搬送機構。
【請求項4】
前記本体部は、
前記搬送物を保持する保持本体と、
前記保持本体における進入方向の端部に設けられ、前記吸引口が形成されたフロント吸引部材とを有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の搬送機構。
【請求項5】
前記保持本体は、平面視矩形状をなすものであり、その前辺部に前記フロント吸引部材が設けられており、
前記保持本体の左右側辺部の少なくとも一方に、気体を吸引する吸引口が形成されたサイド吸引部材が設けられている、請求項4に記載の搬送機構。
【請求項6】
前記フロント吸引部材及び前記サイド吸引部材は、配管部材により互いに接続されている、請求項5に記載の搬送機構。
【請求項7】
前記吸引口からの気体の吸引量が調整可能に構成されている、請求項1乃至6の何れか一項に記載の搬送機構。
【請求項8】
上型及び下型を有する成形型と、
前記上型及び下型を型締め機構と、
請求項1乃至7の何れか一項に記載の搬送機構とを備える、樹脂成形装置。
【請求項9】
前記成形型の前後及び左右が壁で覆われており、前記搬送機構が進入するための開閉シャッタが設けられている、請求項8に記載の樹脂成形装置。
【請求項10】
前記搬送機構は、型開きされた上型及び下型の間の空間に進入する前から前記吸引口による吸引動作を開始している、請求項8又は9に記載の樹脂成形装置。
【請求項11】
請求項8乃至10の何れか一項に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
成形対象物に対して樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
樹脂成形された樹脂成形品を前記搬送機構により前記成形型から搬出する搬出工程とを含む、樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送機構、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の樹脂封止装置には、特許文献1に示すように、樹脂成分や添加剤等から生じるアウトガス(揮発性ガス)を除去して、当該アウトガスによる金型面の汚れや成形不良などを防止するものが考えられている。
【0003】
具体的にこの樹脂封止装置では、装置筐体の天板部にクリーンエア供給部を設け、封止金型を挟んでクリーンエア供給部側とは反対側にエア吸引ダクトを設けている。これにより、封止金型の上型及び下型の間を横切り通過するクリーンエア流を形成して、封止金型で発生したアウトガス(揮発性ガス)や樹脂分を含む異物を吸引除去する。
【0004】
しかしながら、上記のように封止金型の外部からクリーンエアを供給し、封止金型の外部からアウトガスを吸引除去しているので、上型の下面近傍又は下型の上面近傍にアウトガスが滞留する可能性があり、アウトガスの除去が不十分となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、樹脂成形により生じたガスを効率的に吸引することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る搬送機構は、型開きされた上型又は下型から搬送物を搬送する搬送機構であって、型開きされた前記上型及び下型の間の空間に進入する本体部を備え、前記本体部における進入方向の先端面に気体を吸引する吸引口が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成した本発明によれば、樹脂成形により生じたガスを効率的に吸引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】同実施形態における樹脂成形モジュールの構成(型開き状態)を模式的に示す断面図である。
【
図3】同実施形態における樹脂成形モジュールの構成(型締め状態)を模式的に示す断面図である。
【
図4】同実施形態における基板搬送機構の本体部の構成を模式的に示す平面図である。
【
図5】同実施形態における基板搬送機構の本体部の構成を模式的に示す正面図である。
【
図6】同実施形態における基板搬送機構の本体部の構成を模式的に示すK-K線断面図である。
【
図7】同実施形態における本体部の構成部品を分離した状態を示す模式図である。
【
図8】同実施形態におけるガス吸引動作の具体例を示す模式図である。
【
図9】同実施形態におけるガス吸引動作の具体例を示す模式図である。
【
図10】同実施形態におけるガス吸引動作の変形例を示す模式図である。
【
図11】変形実施形態における樹脂材料搬送機構の構成を模式的に示す断面図である。
【
図12】変形実施形態における樹脂材料搬送機構のガス吸引動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る技術について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の技術により限定されない。
【0011】
本発明に係る技術1の搬送機構は、型開きされた上型又は下型から搬送物を搬送する搬送機構であって、型開きされた前記上型及び下型の間の空間に進入する本体部を備え、前記本体部における進入方向の先端面に気体を吸引する吸引口が形成されていることを特徴とする。
【0012】
この搬送機構であれば、型開きされた上型及び下型の間の空間に進入する本体部において、その進入方向の先端面に気体を吸引する吸引口が形成されているので、樹脂成形により生じたガスを効率的に吸引することができる。その結果、上型、下型及びその周辺部材に樹脂成形により発生したガスが付着して汚れてしまうことを防止できる。また、搬送機構は、上型及び下型を型開きした直後にそれらの間に進入することから、型開き時に発生するガスを効率的に吸引することができる。さらに、搬送機構の本体部がガスを吸引するので、その他の部材に吸引機構を設ける構成に比べて、その構成を簡単にすることができる。
【0013】
本発明に係る技術2の搬送機構は、上記の技術1の構成に加えて、前記本体部の前記上型を向く上面又は前記下型を向く下面に気体を吸引する吸引口が形成されていることが望ましい。
この構成であれば、特に上型の型面近傍又は下型の型面近傍に滞留しているガスを効率的に吸引することができる。
【0014】
本発明に係る技術3の搬送機構は、上記の技術1又は2の構成に加えて、前記吸引口及び前記吸引口に接続される流路は、複数の構成部品から構成されており、前記複数の構成部品は、分割して取り外し可能に構成されていることが望ましい。
この構成であれば、複数の構成部品を分割して取り外し可能に構成されているので、各部品の交換や清掃等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0015】
本発明に係る技術4の搬送機構は、上記の技術1乃至3の何れか1つの構成に加えて、前記本体部は、前記搬送物を保持する保持本体と、前記保持本体における進入方向の端部に設けられ、前記吸引口が形成されたフロント吸引部材とを有することが望ましい。
この構成であれば、保持本体にフロント吸引部材を設けるだけで、搬送機構の本体部に吸引口を設けることができる。例えば既存の搬送機構にフロント吸引部材を外付けすることで、既存の搬送機構に大きな設計変更を加えることなく、搬送機構にガスの吸引機能を付与することができる。
【0016】
本発明に係る技術5の搬送機構は、上記の技術4の構成に加えて、前記保持本体は、平面視矩形状をなすものであり、その前辺部に前記フロント吸引部材が設けられており、前記保持本体の左右側辺部の少なくとも一方に、気体を吸引する吸引口が形成されたサイド吸引部材が設けられていることが望ましい。
この構成であれば、フロント吸引部材だけでなくサイド吸引部材を有しているので、例えばフロント吸引部材の吸引口により吸引し損ねたガス等を吸引することができ、上型及び下型の間の空間にあるガスを一層効率的に吸引することができる。
【0017】
本発明に係る技術6の搬送機構は、上記の技術5の構成に加えて、前記フロント吸引部材及び前記サイド吸引部材は、配管部材により互いに接続されていることが望ましい。
この構成であれば、本体部における配管構成を簡単にすることができ、また、本体部に吸引機能を設ける構成をコンパクトにすることができる。
【0018】
本発明に係る技術7の搬送機構は、前記吸引口からの気体の吸引量が調整可能に構成されていることが望ましい。
この構成であれば、ガス吸引動作の途中で気体の吸引量を変更することができる。例えば、ガス吸引動作における複数の期間毎に予め定められた吸引量に変更することができる。また、一定量で吸引し続けると上型の型面及び下型の型面が冷却され、成形条件が変化する可能性がある。ここで、気体の吸引量を調整可能とすることにより、上型の型面及び下型の型面の冷却を防止することができる。さらに、成形対象物又は樹脂材料等の搬送物の種類に応じて、気体の吸引量を変更することができる。
【0019】
また、本発明に係る技術8の樹脂成形装置は、上型及び下型を有する成形型と、前記上型及び下型を型締め機構と、上記の技術1乃至7の何れか1つの構成の搬送機構とを備えることを特徴とする。
この樹脂成形装置であれば、樹脂成形により生じたガスを搬送機構により効率的に吸引することができる。その結果、上型、下型及びその周辺部材に樹脂成形により発生したガスが付着して汚れてしまうことを防止でき、樹脂成形品の品質を向上することができる。
【0020】
本発明に係る技術9の樹脂成形装置は、上記の技術8の構成に加えて、前記成形型の前後及び左右が壁で覆われており、前記搬送機構が進入するための開閉シャッタが設けられていることが望ましい。
この構成であれば、樹脂成形により発生したガスが広がる空間の容積を小さくすることができ、搬送機構の吸引口により効率的にガスを吸引することができる。
【0021】
本発明に係る技術10の樹脂成形装置は、上記の技術8又は9の構成に加えて、前記搬送機構は、型開きされた上型及び下型の間の空間に進入する前から前記吸引口による吸引動作を開始していることが望ましい。
この構成であれば、樹脂成形により発生したガスを効率的に吸引することができるとともに、ガスを吸引する時間を短縮することができる。
【0022】
さらに、本発明に係る技術11の樹脂成形品の製造方法は、上記の技術8乃至10の何れか1つの樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、成形対象物に対して樹脂成形を行う樹脂成形工程と、樹脂成形された樹脂成形品を前記搬送機構により前記成形型から搬出する搬出工程とを含むことを特徴とする。
この樹脂成形品の製造方法であれば、樹脂成形により生じたガスを搬送機構により効率的に吸引することができる。その結果、上型、下型及びその周辺部材に樹脂成形により発生したガスが付着して汚れてしまうことを防止でき、樹脂成形品の品質を向上することができる。
【0023】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0024】
<樹脂成形装置100の基本構成>
本実施形態の樹脂成形装置100は、成形対象物である基板Wに固定された電子部品(不図示)を、熱硬化性の樹脂材料Jを用いた樹脂成形により樹脂封止して樹脂成形品Pを製造するものである。
【0025】
ここで、基板Wとしては、例えば金属製基板、樹脂製基板、ガラス製基板、セラミックス製基板、回路基板、半導体製基板、リードフレーム、シリコンウエハ、ガラスウエハ等を挙げることができる。また、電子部品としては、例えば半導体チップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の電子素子、又はこれら電子素子の少なくとも1つが樹脂封止された形態の電子部品を挙げることができる。さらに、樹脂材料Jは、例えば液状樹脂、顆粒状樹脂、シート状樹脂、タブレット状樹脂、粒状樹脂等を挙げることができる。なお、樹脂材料Jは、熱可塑性を有する材料であってもよい。
【0026】
この樹脂成形装置100は、
図1に示すように、基板供給・収納モジュールAと、樹脂成形モジュールBと、フィルム切断モジュールCと、樹脂材料供給モジュールDとを、それぞれ構成要素として備える。各構成要素(各モジュールA~D)は、それぞれの構成要素に対して着脱可能かつ交換可能である。
【0027】
基板供給・収納モジュールAは、成形前基板Wを供給する成形前基板供給部1と、成形済基板W(樹脂成形品P)を収納する成形済基板収納部2とを有する。
【0028】
樹脂成形モジュールBは、基板Wを保持する成形型である上型3と、キャビティ4Cが形成された成形型である下型4と、上型3及び下型4を型締めする型締め機構5とを有し、上型3及び下型4を型締めすることにより基板Wに固定された電子部品を、樹脂材料Jを用いた樹脂成形により樹脂封止する。なお、樹脂成形モジュールBの具体的構成は、後述する。
【0029】
ここで、基板供給・収納モジュールA及び樹脂成形モジュールBには、成形前基板W及び樹脂成形品Pを搬送する基板搬送機構6が設けられている。
【0030】
この基板搬送機構6は、基板供給・収納モジュールA及び樹脂成形モジュールBに亘って延びるレール(不図示)上を移動するものであり、基板供給・収納モジュールA及び樹脂成形モジュールBにおいて少なくともX方向及びY方向に移動可能に構成されている。
【0031】
また、基板搬送機構6は、成形前基板Wを基板供給・収納モジュールAから樹脂成形モジュールBに搬送し、樹脂成形モジュールBにおいて成形前基板Wを成形型3、4に供給する。成形前基板Wの樹脂成形後に、基板搬送機構6は、樹脂成形モジュールBにおいて成形型3、4から樹脂成形品Pを受け取って、基板供給・収納モジュールAに搬送する。なお、基板搬送機構6の具体的構成は、後述する。
【0032】
フィルム切断モジュールCは、離型フィルムFを切断するフィルム切断部7と、切断した離型フィルムFをフィルム保持枠8に保持させるフィルム保持部9とを有する。
【0033】
樹脂材料供給モジュールDは、離型フィルムFを保持したフィルム保持枠8に例えば液状樹脂を供給するディスペンサ等の樹脂材料供給部10を有する。なお、樹脂材料供給部10は、先端部に液状樹脂を吐出する樹脂吐出部11を有している。なお、樹脂材料供給モジュールDは、液状樹脂を供給するものの他、顆粒状樹脂、シート状樹脂、タブレット状樹脂、粒状樹脂などの他の形態の樹脂材料Jを供給するものであっても良い。
【0034】
ここで、フィルム切断モジュールC、樹脂材料供給モジュールD及び樹脂成形モジュールBには、フィルム保持枠8及び樹脂材料Jを搬送する樹脂材料搬送機構12が設けられている。
【0035】
この樹脂材料搬送機構12は、フィルム切断モジュールC、樹脂材料供給モジュールD及び樹脂成形モジュールBに亘って延びるレール(不図示)上を移動するものである。樹脂材料搬送機構12は、フィルム切断モジュールC、樹脂材料供給モジュールD及び樹脂成形モジュールBにおいて少なくともX方向及びY方向に移動可能に構成されている。
【0036】
また、樹脂材料搬送機構12は、離型フィルムFを保持したフィルム保持枠8をフィルム切断モジュールCから樹脂材料供給モジュールDに搬送する。そして、樹脂材料搬送機構12は、樹脂材料供給モジュールDにおいて樹脂材料Jが供給されたフィルム保持枠8を樹脂材料供給モジュールDから樹脂成形モジュールBに搬送し、樹脂成形モジュールBにおいて離型フィルムF及び樹脂材料Jを成形型3、4に供給する。成形前基板Wの樹脂成形後に、樹脂材料搬送機構12は、樹脂成形モジュールBにおいて成形型3、4から使用済みの離型フィルムFを回収し、フィルム切断モジュールCにある廃棄部(不図示)に使用済みの離型フィルムFを廃棄することもできる。
【0037】
<樹脂成形モジュールBの具体的構成>
次に、本実施形態における樹脂成形モジュールBの具体的な構成について以下に説明する。
【0038】
樹脂成形モジュールBは、上述したように、
図2及び
図3に示すように、基板Wを保持する上型3と、キャビティ4Cが形成された下型4と、上型3及び下型4が取り付けられるとともに上型3及び下型4を型締めする型締め機構5とを有する。
【0039】
型締め機構5は、上型3が取り付けられる上部固定盤51と、下型4が取り付けられる可動盤52と、可動盤52を昇降移動させるための駆動機構53とを有している。
【0040】
上部固定盤51は、その下面に上型3が取り付けられるものであり、下部固定盤54に立て設けられた複数の支柱部55の上端部に固定されている。
【0041】
可動盤52は、その上面に下型4が取り付けられるものであり、複数の支柱部55において上部固定盤51と対向するように昇降移動可能に支持されている。なお、複数の支柱部55の代わりに、板面が対向する2つの板状部材を用いてもよい。2つの板状部材は上下方向に延びており、可動盤52は、2つの板状部材において、上部固定盤51と対向するように昇降移動可能に支持されている。
【0042】
駆動機構53は、可動盤52及び下部固定盤54の間に設けられており、可動盤52を昇降移動させることによって上型3及び下型4を型締めするとともに所定の成形圧を加えるものである。本実施形態の駆動機構53は、サーボモータ等の回転を直線移動に変換するボールねじ機構531を用いて可動盤52に伝達する直動方式のものであるが、サーボモータ等の動力源を例えばトグルリンクなどのリンク機構を用いて可動盤52に伝達するリンク方式のものであっても良い。
【0043】
そして、下型4と可動盤52との間には、下型保持部56が設けられている。この下型保持部56には、下型4を加熱するヒータプレート等(不図示)が設けられている。また、下型保持部56の上面には、下型4の周囲を取り囲む側壁部材561が設けられており、側壁部材561の上端にはシール部材562が設けられている。
【0044】
上型3と上部固定盤51との間には、上型保持部57が設けられている。この上型保持部57には、上型3を加熱するヒータプレート等(不図示)が設けられている。また、上型保持部57の下面には、上型3の周囲を取り囲む側壁部材571が設けられており、側壁部材571の下端にはシール部材572が設けられている。そして、駆動機構53による型締め時において側壁部材561のシール部材562及び側壁部材571のシール部材572が密着して(
図3参照)、上型3及び下型4を収容する空間が外気と遮断されるとともに、図示しない排気機構によって真空状態とされる。なお、シール部材562又はシール部材572の一方を設けない構成としても良い。
【0045】
上型3は、基板Wの裏面を吸着して保持するものである。上型3の下面には吸着孔(不図示)が形成されており、上型3の内部には吸引流路(不図示)が形成されている。この内部流路は外部の吸引装置(不図示)に接続されている。
【0046】
下型4には、
図2に示すように、基板Wに固定された電子部品及び樹脂材料Jを収容するキャビティ4Cが形成されている。具体的に下型4は、キャビティ4Cの底面を形成する底面部材401と、底面部材401を取り囲む側面部材402とを有している。この底面部材401の上面と側面部材402の内周面によってキャビティ4Cが形成される。本実施形態の底面部材401は平面視矩形状をなす平板であり、側面部材402は平面視矩枠状をなすものである。側面部材402は、底面部材401に対して相対的に上下移動可能に設けられている。具体的は、下型4のベースプレート403に対してコイルばね等の複数の弾性部材404によって支持されている。なお、本実施形態の下型4は、樹脂成形品Pの離型性を向上させるために離型フィルムFで覆われる。
【0047】
<基板搬送機構6の具体的構成>
次に、本実施形態における基板搬送機構6の具体的な構成について以下に説明する。
【0048】
本実施形態の樹脂成形装置100では、成形前基板W及び樹脂成形品Pを搬送する基板搬送機構6にガス吸引機能が設けられている。
【0049】
基板搬送機構6が吸引するガスは、樹脂成形により発生するガスであり、具体的には成形型3、4に供給された部材(例えば離型フィルムF、樹脂材料J又は成形前基板W等)に含まれる成分が型開きによって外部に放出されたガスである。成形型3、4に供給された部材は加熱される。樹脂材料Jを加熱した場合、樹脂材料Jの粘度が低下し、樹脂材料Jに含まれるガスが移動し、型開きが行われた場合にガスが外部に放出される。また、離型フィルムF及び成形前基板Wを加熱した場合、離型フィルムF及び成形前基板Wに含まれる成分が気化し、型開きが行われた場合にガスが外部に放出される。
【0050】
具体的に基板搬送機構6は、
図4~
図7に示すように、型開きされた上型3及び下型4の間の空間に進入する本体部60を備え、本体部60における進入方向の先端面60aに気体を吸引する吸引口6xが形成されている。なお、先端面60aは、型開きされた上型3及び下型4の間の空間を最初に通過する面である。また、この基板搬送機構6では、本体部60の上型3を向く上面又は下型4を向く下面に気体を吸引する吸引口6y、6zが形成されている。
【0051】
本体部60の具体的構成は、成形前基板W及び樹脂成形品Pを保持する保持本体61と、当該保持本体61に設けられたフロント吸引部材62及び2つのサイド吸引部材63、64とを有している。なお、本体部60は、レール上を移動するスライド部材601(
図4及び
図6参照)によって支持されている。
【0052】
保持本体61は、
図4~
図7に示すように、平面視において矩形状をなすものであり、その上面には、上型3に成形前基板Wを受け渡す第1保持部61aと、上型3から樹脂成形品Pを受け取る第2保持部61bとを有している。
【0053】
本実施形態では、保持本体61において、進入方向前側に第2保持部61bが設けられており、進入方向後ろ側に第1保持部61aが設けられている(
図4及び
図6参照)。この構成により、保持本体61が型開きされた上型3及び下型4の間の空間に進入すると、まず第2保持部61bが上型3から樹脂成形品Pを受け取り、その後、更に進入して、第1保持部61aに保持された成形前基板Wを上型3に受け渡すことになる。
【0054】
フロント吸引部材62は、
図4~
図7に示すように、保持本体61の進入方向の端部(前辺部)の先端面に設けられている。フロント吸引部材62は、保持本体61の前辺部に沿って延びる長尺状をなすものである。具体的にフロント吸引部材62は、保持本体61の前辺部に沿って延びる直方体形状をなすものであり、保持本体61に取り付けられる取付面とは反対側が、本体部60における進入方向の先端面60aとなる。
【0055】
フロント吸引部材62の進行方向の先端面62a(60a)には、ガスを吸引する吸引口6x(前方吸引口6x)が形成されている。本実施形態では、長手方向に沿って複数の前方吸引口6xが形成された例を示しているが、長手方向に延びるスリット状をなす前方吸引口6xであっても良い。
【0056】
また、フロント吸引部材62の上型3を向く上面には、ガスを吸引する吸引口6y(上方吸引口6y)が形成されており、下型4を向く下面には、ガスを吸引する吸引口6z(下方吸引口6z)が形成されている。本実施形態では、長手方向に沿って複数の上方吸引口6y及び下方吸引口6zが形成された例を示しているが、長手方向に延びるスリット状をなす上方吸引口6y及び下方吸引口6zであっても良い。
【0057】
さらに、フロント吸引部材62の内部には、前方吸引口6x、上方吸引口6y及び下方吸引口6zによりガスを吸引するための吸引流路62Rが形成されている。本実施形態では、前方吸引口6x、上方吸引口6y及び下方吸引口6zに共通の1つの吸引流路62Rが形成されている。この吸引流路62Rは、吸引源(不図示)に接続される。
【0058】
サイド吸引部材63、64は、
図4、
図5及び
図7に示すように、保持本体61の進入方向における左右辺部それぞれに設けられている。サイド吸引部材63、64は、保持本体61の左右辺部に沿って延びる長尺状をなすものである。具体的にサイド吸引部材63、64は、保持本体61の左右辺部に沿って延びる直方体形状をなすものである。
【0059】
そして、サイド吸引部材63、64の上型3を向く上面には、ガスを吸引する吸引口6y(上方吸引口6y)が形成されており、下型4を向く下面には、ガスを吸引する吸引口6z(下方吸引口6z)が形成されている。本実施形態では、長手方向に沿って複数の上方吸引口6y及び下方吸引口6zが形成された例を示しているが、長手方向に延びるスリット状をなす上方吸引口6y及び下方吸引口6zであっても良い。また、サイド吸引部材63、64の保持本体61とは反対側の面に吸引口を形成しても良い。
【0060】
さらに、サイド吸引部材63、64の内部には、上方吸引口6y及び下方吸引口6zによりガスを吸引するための吸引流路63R、64Rが形成されている。本実施形態では、上方吸引口6y及び下方吸引口6zに共通の1つの吸引流路63R、64Rが形成されている。この吸引流路63R、64Rは、吸引源(不図示)に接続される。
【0061】
本実施形態では、フロント吸引部材62及びサイド吸引部材63、64は、
図4、
図5及び
図7に示すように、配管部材65、66により互いに接続されている。これにより、フロント吸引部材62の吸引流路62Rとサイド吸引部材63、64の吸引流路63R、64Rとが配管部材65、66を介して接続されることになる。具体的には、フロント吸引部材62の右側端部と、右辺部に設けられたサイド吸引部材63の先端部とが配管部材65により接続される。また、フロント吸引部材62の左側端部と、左辺部に設けられたサイド吸引部材64の先端部とが配管部材66により接続される。さらに、2つのサイド吸引部材63、64の後端部には、図示しない吸引源に接続される接続配管67、68が接続されている。接続配管67、68は合流配管69に接続されて図示しない吸引源に接続される。また、合流配管69には、集塵フィルタ691が設けられている。
【0062】
そして、本実施形態では、各吸引口6x~6z及び各吸引口6x~6zに接続される流路は、複数の構成部品から構成されており、複数の構成部品は、
図7に示すように、分割して個別に取り外し可能に構成されている。ここで、複数の構成部品は、フロント吸引部材62、サイド吸引部材63、64、配管部材65、66、接続配管67、68、合流配管69及び集塵フィルタ691等である。
【0063】
さらに、本実施形態では、基板搬送機構6のガスの吸引効率を向上するために、
図2、
図3、
図8~
図10に示すように、上型3及び下型4の前後及び左右が仕切り壁13で覆われており、その仕切り壁13の一部に基板搬送機構6が進入するための開閉シャッタ14が設けられている。
【0064】
ここで、仕切り壁13は、下型保持部46及び上型保持部47の周囲において上型3及び下型4を取り囲むように設けられている。つまり、仕切り壁13は、樹脂成形時に上型3及び下型4を収容する空間を密閉する側壁部材463、473よりも外側に設けられている。この仕切り壁13は、型締め状態にある上型3及び下型4の前後及び左右だけでなく、型開き状態にある上型3及び下型4の前後及び左右を覆う構成である。なお、仕切り壁13は、上型3及び下型4の型締め動作を邪魔しないように設けられている。
【0065】
本実施形態の開閉シャッタ14は、上型3及び下型4の後側の仕切り壁13xに設けられている(
図8~
図10参照)。この開閉シャッタ14は、型開き時に開放されて、基板搬送機構6の本体部60が仕切り壁13で囲まれた空間に進入できるようにするものである。なお、開閉シャッタ14は、例えばエアシリンダ等のアクチュエータ(不図示)により開閉される。
【0066】
<基板搬送機構6によるガス吸引動作>
ここで、開閉シャッタ14の開閉動作とともに基板搬送機構6によるガス吸引動作について説明する。
【0067】
<ガス吸引動作の具体例>
樹脂成形を終了した後に、上型3及び下型4を型開きする前に、基板搬送機構6を、開閉シャッタ14の前で待機させる。この状態で、基板搬送機構6はガス吸引動作を開始する(
図8(a)参照)。
【0068】
ここで、ガス吸引動作の開始は、基板搬送機構6が開閉シャッタ14の前に移動した際に、基板搬送機構6の合流配管69が、装置側に設けられた吸引ポート(不図示)に接続されることで、吸引動作が開始される。また、基板搬送機構6が開閉シャッタ14の前に移動した際に、基板搬送機構6の合流配管69に接続された吸引源(不図示)を稼働することで、吸引動作が開始される。
【0069】
そして、型締め機構5により型開きを開始し、型開きによって上型3及び下型4の間に基板搬送機構6の本体部60が進入できる状態となった後に(
図8(b)参照)、開閉シャッタ14を開けて、基板搬送機構6の本体部60を上型3及び下型4の間の空間に進入させる(
図9(a)参照)。これにより、上型3及び下型4の間のガスが基板搬送機構6により吸引される。ここで、上型3及び下型4は、型開きが完了した状態だけでなく、型開きが完了する前であって本体部60が進入できる間隔が空いた状態であっても良い。
【0070】
なお、基板搬送機構6のガス吸引動作の途中で、保持本体61の第2保持部61bが上型3から樹脂成形品Pを受け取る動作を行っても良いし(
図9(b)参照)、基板搬送機構6のガス吸引動作が終了した後に、保持本体61の第2保持部61bが上型3から樹脂成形品Pを受け取る動作を行っても良い。
【0071】
<ガス吸引動作の変形例>
樹脂成形を終了した後に、上型3及び下型4を型開きする前に、基板搬送機構6を、開閉シャッタ14の前で待機させる。この状態で、基板搬送機構6は、ガス吸引動作を開始する(
図10(a)参照)。ガス吸引動作の開始は、上記と同じである。
【0072】
そして、型締め機構5により型開きを開始し、型開きによって上型3及び下型4が所定距離離れた状態で型開きを一時停止する。ここで、上型3及び下型4の距離は、基板搬送機構6の本体部60が進入できない距離である。また、側壁部材561のシール部材562と側壁部材571のシール部材572とが離れた状態である。この状態で、開閉シャッタ14を開けて、本体部60のフロント吸引部材62を開閉シャッタ14から進入させる(
図10(b)参照)。これにより、フロント吸引部材62は、上型3及び下型4の外側からガスを吸引する。このように上型3及び下型4の間隔が小さい状態でガスを吸引することにより、ガスが広がる空間を狭めることができ、効率的にガスを吸引することができる。
【0073】
その後、型開きを再開し、型開きによって上型3及び下型4の間に基板搬送機構6の本体部60が進入できる状態となった後に、基板搬送機構6の本体部60を上型3及び下型4の間の空間に進入させる(
図9(a)参照)。これにより、上型3及び下型4の間のガスが基板搬送機構6により吸引される。ここで、上型3及び下型4は、型開きが完了した状態だけでなく、型開きが完了する前であって本体部60が進入できる間隔が空いた状態であっても良い。
【0074】
なお、基板搬送機構6のガス吸引動作の途中で、保持本体61の第2保持部61bが上型3から樹脂成形品Pを受け取る動作を行っても良いし(
図9(b)参照)、基板搬送機構6のガス吸引動作が終了した後に、保持本体61の第2保持部61bが上型3から樹脂成形品Pを受け取る動作を行っても良い。
【0075】
その他、基板搬送機構6は、各吸引口6x~6zの単位時間当たりの気体の吸引量を調整する機能を有している。なお、各吸引口6x~6zの吸引量の調整は、例えば、各吸引口6x~6zに接続される流路に設けられた流量調整弁(不図示)等により行うことができる。
【0076】
そして、基板搬送機構6は、上記のガス吸引動作において、複数の期間毎に予め定められた吸引量に変更することができる。例えば、基板搬送機構6は、吸引を開始してから、一定期間が経過するまでの間、第1吸引量でガスを吸引する。そして、一定期間が経過した後、基板搬送機構6は、第1吸引量よりも小さい第2吸引量でガスを吸引する。ガス吸引動作において大きい吸引量で吸引し続けた場合、上型3の型面と下型4の型面とが冷却され、成形条件が変化する可能性がある。上記のように単位時間当たりの吸引量を調整することによって上型3の型面と下型4の型面との冷却を防止できる。
【0077】
また、基板搬送機構6は、成形前基板W又は樹脂材料J等の搬送物の種類に応じて、各吸引口6x~6zの吸引量を変更することができる。さらに、フロント吸引部材62又は各サイド吸引部材63、64の一方のみにおいて吸引量を調整可能にしても良い。また、前方吸引口6x、上方吸引口6y又は下方吸引口6zの何れか1つにおいて吸引量を調整可能にしても良い。なお、各吸引口6x~6zの単位時間当たりの気体の吸引量は一定であっても良い。
【0078】
<樹脂成形装置100の樹脂成形動作>
次に、樹脂成形装置100の動作の一例を
図1~
図3、
図8及び
図9を参照して説明する。以下に示す動作は、例えば基板供給・収納モジュールAに設けられた制御部CTLが樹脂成形装置100の各部を制御することにより行われる。なお、制御部CTLは、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換器等を有する専用又は汎用のコンピュータである。
【0079】
(1)成形前基板供給工程
基板供給・収納モジュールAにおいて、基板搬送機構6の第1保持部61aは、成形前基板供給部1から成形前基板Wを受け取り、樹脂成形モジュールBに搬送する。そして、型開きされた上型3に成形前基板Wを受け渡す(
図2参照)。その後、基板搬送機構6は、所定の待機位置に戻る。
【0080】
(2)樹脂供給工程
フィルム切断モジュールCにおいて、樹脂材料搬送機構12が離型フィルムFを保持したフィルム保持枠8を受け取り、樹脂材料供給モジュールDに搬送し、当該樹脂材料供給モジュールDにおいて、樹脂材料供給部10がフィルム保持枠8に保持された離型フィルムF上に樹脂材料Jを供給する。その後、樹脂材料搬送機構12は、フィルム保持枠8を樹脂成形モジュールBに搬送して、型開きされた下型4のキャビティ4Cに離型フィルムFとともに樹脂材料Jを供給する(
図2参照)。そして、樹脂材料搬送機構12は、所定の待機位置に戻る。
【0081】
(3)樹脂成形工程
上記の工程の後、樹脂成形モジュールBにおいて、型締め機構5により上型3及び下型4は所定の型締め圧により型締めされ(
図3参照)、加熱される。この型締め状態において、上型保持部47のシール部材474と下型保持部46のシール部材464とが密着することで密閉空間が形成され、図示しない排気機構によって密閉空間が真空状態とされている。所定時間が経過した後、型締め機構5により下型4を下降させて、上型3及び下型4が型開きされる。
【0082】
(4)成形済基板搬出工程
成形済基板搬出工程において、基板搬送機構6の第1保持部61aは、成形前基板供給部1から成形前基板Wを受け取った状態とされている(
図8(a)参照)。そして、基板搬送機構6を移動させて、保持本体61の第2保持部61bが、型開きされた上型3から樹脂成形品Pを受け取る(
図9(b)参照)。このとき、基板搬送機構6は、上述した<ガス吸引動作の具体例>又は<ガス吸引動作の変形例>に記載したガス吸引動作を行う。そして、保持本体61の第1保持部61aが成形前基板Wを上型3に受け渡す(
図9(b)参照)。その後、樹脂成形品Pを受け取った基板搬送機構6を、基板供給・収納モジュールAに移動させ、樹脂成形品Pを基板搬送機構6の第2保持部61bから成形済基板収納部2に受け渡して収納する。
【0083】
(5)使用済み離型フィルム回収工程
使用済み離型フィルム回収工程において、樹脂材料搬送機構12は、樹脂材料Jが供給されたフィルム保持枠8を保持した状態とされている。そして、樹脂材料搬送機構12を移動させて、型開きされた下型4から使用済みの離型フィルムFを回収し、型開きされた下型4のキャビティ4Cに離型フィルムF及び樹脂材料Jを供給する。そして、使用済みの離型フィルムFを回収した樹脂材料搬送機構12を、フィルム切断モジュールCに移動させ、使用済みの離型フィルムFを廃棄部に廃棄する。
【0084】
なお、本実施形態では、「(4)成形済基板搬出工程」において「(1)成形前基板供給工程」が行われ、「(5)使用済み離型フィルム回収工程」において「(2)樹脂供給工程」が行われているが、それぞれ別の工程としても良い。
【0085】
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、上型3及び下型4の間の空間に進入する本体部60における進入方向の先端面60aに気体を吸引する吸引口6xが形成されているので、上型3及び下型4の間の空間にあるガスを効率的に吸引することができる。つまり、上型3及び下型4の間の空間を最初に通過する面である先端面60aに吸引口6xが形成されているので、上型3及び下型4の間の空間にあるガスを効率的に吸引することができる。その結果、上型3、下型4及びその周辺部材に樹脂成形により発生したガスが付着して汚れてしまうことを防止できる。また、基板搬送機構6は、上型3及び下型4を型開きした直後にそれらの間に進入することから、型開き時に発生するガスを効率的に吸引することができる。さらに、基板搬送機構6にガスの吸引機能を設けているので、その他の部材に吸引機構を設ける構成に比べて、その構成を簡単にすることができる。
【0086】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0087】
例えば、前記実施形態の基板搬送機構6は、成形前基板W及び樹脂成形品Pの両方を搬送するものであったが、成形前基板Wを搬送する成形前基板搬入機構(ローダ)と、樹脂成形品Pを搬送する樹脂成形品搬出機構(アンローダ)とに分けて構成しても良い。この構成においては、型開きの直後に上型3及び下型4の間に進入する樹脂成形品搬出機構(アンローダ)に前記実施形態と同様のガス吸引機能を設けることが考えられる。
【0088】
また、前記実施形態では、基板搬送機構6にガス吸引機能を設けているが、
図11に示すように、樹脂材料搬送機構12に、前記実施形態と同様のガス吸引機能を設けても良い。また、基板搬送機構6及び樹脂材料搬送機構12の両方に、前記実施形態と同様のガス吸引機能を設けても良い。
【0089】
具体的に樹脂材料搬送機構12は、
図11に示すように、型開きされた上型3及び下型4の間の空間に進入する本体部120を備え、本体部120における進入方向の先端面120aに気体を吸引する吸引口12xが形成されている。また、この樹脂材料搬送機構12では、本体部120の上型3を向く上面又は下型4を向く下面に気体を吸引する吸引口12y、12zが形成されている。
【0090】
本体部60の具体的構成は、フィルム保持枠8及び使用済みの離型フィルムFを保持する保持本体121と、当該保持本体121に設けられたフロント吸引部材122とを有している。フロント吸引部材122は、前記実施形態のフロント吸引部材62と同様の構成である。なお、前記実施形態と同様にサイド吸引部材を設けても良い。
【0091】
そして、
図12(a)に示すように、型開きによって上型3及び下型4の間に樹脂材料搬送機構12の本体部120が進入できる状態となった後に、開閉シャッタ14を開けて、樹脂材料搬送機構12の本体部120を上型3及び下型4の間の空間に進入させる。これにより、上型3及び下型4の間のガスが樹脂材料搬送機構12により吸引される。ここで、上型3及び下型4は、型開きが完了した状態だけでなく、型開きが完了する前であって本体部120が進入できる間隔が空いた状態であっても良い。
【0092】
なお、樹脂材料搬送機構12のガス吸引動作の途中で、保持本体121が下型4から使用済みの離型フィルムFを受け取る動作又は下型4に離型フィルムF及び樹脂材料Jを供給する動作を行っても良いし(
図12(b)参照)、樹脂材料搬送機構12のガス吸引動作が終了した後に、保持本体121が下型4から使用済みの離型フィルムFを受け取る動作又は下型4に離型フィルムF及び樹脂材料Jを供給する動作を行っても良い。またガス吸引動作の途中で、使用済みの離型フィルムFを受け取る動作又は下型4に離型フィルムF及び樹脂材料Jを供給する動作を行う場合には、その受取動作又は供給動作の最中は吸引動作を一時的に停止しても良い。
【0093】
さらに、樹脂材料搬送機構12は、樹脂材料Jが供給されたフィルム保持枠8を搬送する樹脂材料搬入機構(ローダ)と、使用済みの離型フィルムFを搬送するフィルム搬出機構(アンローダ)とに分けて構成しても良い。この構成においては、型開きの直後に上型3及び下型4の間に進入するフィルム搬出機構(アンローダ)に前記実施形態と同様のガス吸引機能を設けることが考えられる。
【0094】
その上、前記実施形態の構成は、上型3及び下型4の前後及び左右の四方を覆う仕切り壁13を設ける構成であった。しかしながら、前記実施形態の構成は、上型3及び下型4の四方すべてを覆う構成に限定されず、それらの少なくとも一方を覆う構成であっても良いし、四方すべてを覆わない構成、つまり、仕切り壁13を設けない構成としても良い。
【0095】
その上、下型4のキャビティ4Cに樹脂材料Jを供給する構成は、前記実施形態のように、樹脂材料Jが供給されたフィルム保持枠8を用いた構成に限らない。キャビティ4Cに樹脂材料Jを供給する構成は、樹脂材料供給部10を下型4に移動させて、下型4のキャビティ4Cに樹脂材料Jを供給する構成であっても良いし、その他の形式のコンプレッションモールド(圧縮成形)を行う構成であっても良い。また、樹脂成形装置100は、下型4に設けられたポットに樹脂材料Jを収容し、当該樹脂材料Jをプランジャで押し出すトランスファー成形を行うものであっても良い。
【0096】
前記実施形態においては、基板供給・収納モジュールAと樹脂材料供給モジュールDとの間に、1つの樹脂成形モジュールBを接続した構成であるが、2つ以上の樹脂成形モジュールBを接続した構成としても良い。また、基板供給・収納モジュールAとフィルム切断モジュールCと樹脂材料供給モジュールDとを1つのモジュールにして、そのモジュールに樹脂成形モジュールBを接続した構成としても良い。また、フィルム切断モジュールCと樹脂材料供給モジュールDとを1つのモジュールにして、そのモジュールに基板供給・収納モジュールAと樹脂成形モジュールBとを接続した構成としても良い。さらに、樹脂成形装置は、前記実施形態のように各モジュールにモジュール化されていなくても良い。
【0097】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0098】
100・・・樹脂成形装置
W・・・成形対象物
P・・・樹脂成形品(搬送物)
3・・・上型
4・・・下型
5・・・型締め機構
6・・・基板搬送機構
60・・・本体部
60a・・・進入方向の先端面
6x・・・前方吸引口
6y・・・上方吸引口
6z・・・下方吸引口
61・・・保持本体
62・・・フロント吸引部材
63、64・・・サイド吸引部材
65、66・・・配管部材
13・・・仕切り壁
14・・・開閉シャッタ
【手続補正書】
【提出日】2023-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型開きされた上型又は下型から搬送物を搬送する搬送機構であって、
型開きされた前記上型及び下型の間の空間に進入する本体部を備え、
前記本体部における進入方向の先端面に気体を吸引する吸引口が形成されている、搬送機構。
【請求項2】
前記本体部の前記上型を向く上面又は前記下型を向く下面に気体を吸引する吸引口が形成されている、請求項1に記載の搬送機構。
【請求項3】
前記吸引口及び前記吸引口に接続される流路は、複数の構成部品から構成されており、
前記複数の構成部品は、分割して取り外し可能に構成されている、請求項1に記載の搬送機構。
【請求項4】
前記本体部は、
前記搬送物を保持する保持本体と、
前記保持本体における進入方向の端部に設けられ、前記吸引口が形成されたフロント吸引部材とを有する、請求項1に記載の搬送機構。
【請求項5】
前記保持本体は、平面視矩形状をなすものであり、その前辺部に前記フロント吸引部材が設けられており、
前記保持本体の左右側辺部の少なくとも一方に、気体を吸引する吸引口が形成されたサイド吸引部材が設けられている、請求項4に記載の搬送機構。
【請求項6】
前記フロント吸引部材及び前記サイド吸引部材は、配管部材により互いに接続されている、請求項5に記載の搬送機構。
【請求項7】
前記吸引口からの気体の吸引量が調整可能に構成されている、請求項1に記載の搬送機構。
【請求項8】
上型及び下型を有する成形型と、
前記上型及び下型を型締め機構と、
請求項1乃至7の何れか一項に記載の搬送機構とを備える、樹脂成形装置。
【請求項9】
前記成形型の前後及び左右が壁で覆われており、前記搬送機構が進入するための開閉シャッタが設けられている、請求項8に記載の樹脂成形装置。
【請求項10】
前記搬送機構は、型開きされた上型及び下型の間の空間に進入する前から前記吸引口による吸引動作を開始している、請求項8に記載の樹脂成形装置。
【請求項11】
請求項8に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
成形対象物に対して樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
樹脂成形された樹脂成形品を前記搬送機構により前記成形型から搬出する搬出工程とを含む、樹脂成形品の製造方法。