(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115887
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】車体下部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B62D25/20 F
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021776
(22)【出願日】2023-02-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】石原 啓太
(72)【発明者】
【氏名】丸山 敦志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 将之
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 智彦
(72)【発明者】
【氏名】秋山 ゆうこ
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB06
3D203BB12
3D203BB20
3D203BB22
3D203BB55
3D203CA53
3D203CA55
3D203CA57
(57)【要約】
【課題】ポール衝突による側突荷重の入力時、荷重伝達効率を向上させてバッテリを保護すること。
【解決手段】バッテリの車幅方向外側で車両前後方向に沿って延出するフロアフレーム16と、フロア部12の車幅方向外側端部で車両前後方向に沿って延出するサイドシル18と、サイドシル18とフロアフレーム16とを連結するアウトリガ20とを有し、アウトリガ20は、フロア部12との閉断面内に車幅方向に沿って延出する第1延出部材26を備え、この第1延出部材26の車幅方向内側端部52は、車両上下方向において、フロアフレーム16の高さ方向の中央よりも下側に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア部の車幅方向中央側に配置される保護対象部品と、前記保護対象部品の車幅方向外側で車両前後方向に沿って延出するフロアフレームと、前記フロア部の車幅方向外側端部で車両前後方向に沿って延出するサイドシルと、前記サイドシルと前記フロアフレームとを連結するアウトリガとを有する車体下部構造において、
前記アウトリガは、前記フロア部との閉断面内に車幅方向に沿って延出する第1延出部材を備え、
前記第1延出部材の車幅方向内側端部は、車両上下方向において、前記フロアフレームの高さ方向の中央よりも下側に配置されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項2】
請求項1記載の車体下部構造において、
前記第1延出部材の車幅方向外側端部は、車両上下方向において、少なくとも一部が前記サイドシルの高さ方向の中央よりも上側で前記サイドシルと重畳することを特徴とする車体下部構造。
【請求項3】
請求項2記載の車体下部構造において、
前記第1延出部材は、前記車幅方向外側端部から前記車幅方向内側端部に向かうにつれて車両下方に立ち下がるように傾斜して配置されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項4】
請求項2記載の車体下部構造において、
前記第1延出部材は、前記アウトリガよりも剛性が高い部材で構成されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項5】
請求項2記載の車体下部構造において、
前記第1延出部材は、
底面に設けられる平板部と、
前記平板部の車両前後方向の縁部から車両上方に向かって延出すると共に、前記アウトリガの前壁及び後壁にそれぞれ結合される一対の脚部と、
前記車幅方向内側端部から車幅方向内側に突出するフランジ部と、
を備え、
前記フランジ部は、前記フロアフレームの下面に結合されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項6】
請求項1記載の車体下部構造において、
前記サイドシルから車両上方に向かって延出するセンタピラを備え、
前記アウトリガの少なくとも一部は、車幅方向において前記センタピラと重畳するように配置されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項7】
請求項1記載の車体下部構造において、
前記フロアフレームの軸直方向の断面内には、車両上方に向かって開口するU字状の第2延出部材が配置され、
前記第1延出部材の車幅方向内側端部は、前記第2延出部材と前記フロアフレームとの間に設けられる中空部と重畳する位置に配置されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項8】
請求項2記載の車体下部構造において、
前記第1延出部材の車幅方向外側端部は、前記サイドシルから車幅方向に沿って離間した位置に配置されていることを特徴とする車体下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも高齢者や障がい者や子供といった脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて車体剛性に関する開発を通じて交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロッカ(サイドシル)内に配置された第1バルクヘッドと、クロスメンバ内のロッカ上側に配置された第2バルクヘッドとを有する車体下部構造が開示されている。
【0004】
特許文献1では、側突荷重の入力時に、第1バルクヘッドによってサイドシルが車幅方向内側に変位して第2バルクヘッドに当接することで、ロッカ(サイドシル)の下端部を車幅方向内側に移動させている。これにより、特許文献1では、センタピラの変位を抑制することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された車体下部構造では、例えば、ポール衝突のように車体側面の一部のみに側突荷重が入力された際、第2バルクヘッドがクロスメンバの車幅方向内側に配置されたアンダーリンフォース(フロアフレーム)の上側を押圧することで、アンダーリンフォース(フロアフレーム)の上方部分が車幅方向内側に回動する。
【0007】
この結果、特許文献1に開示された車体下部構造では、例えば、バッテリを床下に配置した車両に適用した場合、ポール衝突のように車体側面の一部のみに側突荷重が入力されたときにアンダーリンフォース(フロアフレーム)が変形してバッテリに接触するおそれがある。
【0008】
このように、車体剛性に関して、特許文献1に開示された車体下部構造では、車体剛性が低下するおそれがある。
【0009】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、ポール衝突による側突荷重の入力時、荷重伝達効率を向上させてバッテリを保護することが可能な車体下部構造を提供することを目的とする。そして、延いては、持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、車両のフロア部の車幅方向中央側に配置されるバッテリと、前記バッテリの車幅方向外側で車両前後方向に沿って延出するフロアフレームと、前記フロア部の車幅方向外側端部で車両前後方向に沿って延出するサイドシルと、前記サイドシルと前記フロアフレームとを連結するアウトリガとを有する車体下部構造において、前記アウトリガは、前記フロア部との閉断面内に車幅方向に沿って延出する第1延出部材を備え、前記第1延出部材の車幅方向内側端部は、車両上下方向において、前記フロアフレームの高さ方向の中央よりも下側に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、ポール衝突による側突荷重の入力時、荷重伝達効率を向上させてバッテリを保護することが可能な車体下部構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る車体下部構造が適用された車両のフロア部において、フロアパネルを取り外した状態を、車両上方から見た平面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿った縦断面図である。
【
図3】アウトリガの閉断面内に配置された第1延出部材を示す部分拡大斜視図である。
【
図6】フロアフレームの閉断面内に配置された第2延出部材を示す一部仮想斜視図である。
【
図7】第2延出部材の前壁と第1クロスメンバとの位置関係を示す平面図である。
【
図8】フロアフレーム及び第2延出部材の軸方向に沿った縦断面図である。
【
図10】フロアフレーム及び第2延出部材の軸直方向の縦断面図である。
【
図11】
図10に対応し、第2延出部材の変形例を示す軸直方向の縦断面図である。
【
図12】ポール衝突による側突荷重が入力された状態を示す動作説明である。
【
図13】
図12に対応し、第1延出部材の変形例を示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、「前後」は、車両前後方向、「左右」は、車幅方向(左右方向)、「上下」は、車両上下方向(鉛直上下方向)を、それぞれ示している。
【0014】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る車体下部構造が適用された車両10は、例えば、運転席や助手席等の複数のシートが配置されるフロア部12を備えている。このフロア部12の車幅方向中央側には、左右一対のバッテリ(保護対象部品)14a、14bがそれぞれ配置されている。なお、
図1では、フロア部12において、図示しないフロアパネルを取り外した状態の車体下部構造を、車両上方から見た状態を示している。
【0015】
本実施形態に係る車体下部構造は、フロアフレーム16と、サイドシル18と、アウトリガ20と、第1クロスメンバ22と、第2クロスメンバ24と、第1延出部材26と、第2延出部材28とを備えて構成されている。
【0016】
図1に示されるように、フロアフレーム16は、バッテリ14a、14bの車幅方向外側にそれぞれ位置する左右一対のフロアフレームからなり、車両前後方向に沿って延在している。各フロアフレーム16の車両前方端部は、図示しないフロントサイドフレームの車両後方端部と連結されている。各フロアフレーム16の車両後方端部は、フロア部12よりも車両後方で車体の車両前後方向中央部よりもリヤ側まで延びている。
【0017】
各フロアフレーム16は、軸直断面が略ハット状を呈し、上部に開口を有するハット状部材で構成されている。このハット状部材の上部の開口は、図示しないフロアパネル(フロア部12)によって閉塞され、フロア部12との間で閉断面が構成されている。
【0018】
図2に示されるように、各フロアフレーム16は、車幅方向において相互に対向する外側壁部30及び内側壁部32と、外側壁部30の下端と内側壁部32の下端とを懸架する底壁部34と、外側壁部30の上端から車幅方向外側(サイドシル側)に向かって屈曲する外側フランジ36と、内側壁部32の上端から車幅方向内側に向かって屈曲する内側フランジ38とを有する。各フロアフレーム16は、外側フランジ36及び内側フランジ38を介して、図示しないフロアパネルに接合されている。
【0019】
また、
図8に示されるように、各フロアフレーム16の底壁部34には、車両前方に向かうにつれて車両下方に傾斜する屈曲部40を有する。この屈曲部40は、車幅方向においてアウトリガ20と重畳する位置に設けられている(
図8参照)。この結果、底壁部34は、屈曲部40を起点として車両前方に向かって立ち下がるように傾斜している。
【0020】
さらに、フロアフレーム16の軸直方向の断面内には、車両上方に向かって開口する断面U字状の第2延出部材28が配置されている(
図2参照)。フロアフレーム16の底壁部34と第2延出部材28の下面との間には、閉断面で構成された中空部42が設けられている。この中空部42については、後記で詳細に説明する。
【0021】
図1に示されるように、サイドシル18は、フロア部12の車幅方向外側端部にそれぞれ位置する左右一対のサイドシルからなり、車両前後方向に沿って延在している。
図2に示されるように、各サイドシル18は、軸直断面がハット状を呈し車幅方向内側に位置するサイドシルインナ19aと、軸直断面がハット状を呈し車幅方向外側に位置するサイドシルアウタ19bとを有し、サイドシルインナ19a及びサイドシルアウタ19bの上下方向にそれぞれ設けられたフランジ部同士を接合することで閉断面が構成されている。
【0022】
図3及び
図4に示されるように、各サイドシル18には、該サイドシル18から車両上方に向かって延出するセンタピラ44が設けられている。このセンタピラ44は、車幅方向において第2クロスメンバ24と重畳する位置に配置されている(
図4参照)。
【0023】
図1に示されるように、アウトリガ20は、車幅方向に沿って延在し、車幅方向内側に配置されたフロアフレーム16と車幅方向外側に配置されたサイドシル18とを連結する左右一対のアウトリガによって構成されている。各アウトリガ20は、第2延出部材28の中央よりも後方側に配置されている。各アウトリガ20は、車両上方に向かって開口を有し軸直断面がハット状を呈している(
図2参照)。
【0024】
図2乃至
図4に示されるように、このアウトリガ20は、車両前方側に位置する前壁21aと、車両後方に位置する後壁21bと、前壁21aの下端と後壁21bの下端とを懸架する底壁21cと、前壁21aの上端及び後壁21bの上端にそれぞれ設けられ、図示しないフロアパネルに接合される上フランジ21dとを有する。上フランジ21dを介して図示しないフロアパネルに接合されることでアウトリガ20の開口が閉塞され、フロア部12との間で閉断面が構成されている。また、アウトリガ20の少なくとも一部は、車両前後方向においてセンタピラ44と重畳する位置に配置されている(
図4参照)。
【0025】
各アウトリガ20には、フロア部12との閉断面内において車幅方向に沿って延出する第1延出部材26がそれぞれ配置されている。
図5に示されるように、この第1延出部材26は、平板部46と、一対の脚部48、48と、フランジ部50とを備えて構成されている。
【0026】
具体的には、平板部46は、第1延出部材26の底面に設けられ、平坦面で構成されている。一対の脚部48、48は、平板部46の車両前後方向の縁部から車両上方に向かって延出すると共に、アウトリガ20の前壁21a及び後壁21bにそれぞれ接合されている(
図4参照)。フランジ部50は、平板部46の車幅方向内側端部から車幅方向内側に向かって突出し、アウトリガ20よりも車幅方向内側に延出するように設けられている。これにより、第1延出部材26のフランジ部50は、フロアフレーム16の下面に接合されている(
図2参照)。この結果、第1延出部材26は、一対の脚部48、48、及び、フランジ部50からなる3点で、アウトリガ20、フロアフレーム16にそれぞれ接合されている。
【0027】
また、第1延出部材26は、車幅方向外側端部54から車幅方向内側端部52に向かうにつれて車両下方に立ち下がるように傾斜して配置されている(
図2参照)。
【0028】
この第1延出部材26のフランジ部50の車幅方向内側端部52は、車両上下方向において、フロアフレーム16の高さ方向(車両上下方向)の中央よりも下側に配置されている(
図2参照)。また、車幅方向内側端部52と反対側で第1延出部材26の車幅方向外側端部54は、車両上下方向において、その少なくとも一部(
図2に示す破線Cよりも上方の部分)がサイドシル18の高さ方向(車両上下方向)の中央よりも上側に配置されている。なお、
図2において、破線Bは、フロアフレーム16の高さ方向(車両上下方向)の中央、破線Cは、サイドシル18の高さ方向(車両上下方向)の中央をそれぞれ示している。
【0029】
なお、
図13の変形例に示されるように、第1延出部材26aの全体が、車両上下方向において、サイドシル18の高さ方向(車両上下方向)の中央よりも下側(
図13に示す破線よりも下方の位置)に配置されている場合も含まれる。
【0030】
さらに、第1延出部材26は、アウトリガ20よりも剛性が高い部材で構成されている。すなわち、第1延出部材26は、例えば、ハイテン材や高張力鋼板等によって、アウトリガ20よりも硬質な材料で構成されている。また、第1延出部材26とアウトリガ20とを同じ材料で構成した場合であっても、第1延出部材26の板厚をアウトリガ20の板厚よりも大きくするようにしてもよい。
【0031】
さらにまた、第1延出部材26の車幅方向内側端部52は、フロアフレーム16の底壁部34と第2延出部材28の下面との間に閉断面で構成された中空部42と車両上下方向において重畳する位置に配置されている(
図2参照)。アウトリガ20とフロア部12(図示しないフロアパネル)との間で構成される閉断面内において、第1延出部材26の車幅方向内側端部52の上端は、図示しないフロアパネルの下面から所定間隔離間して配置され、図示しないフロアパネルとの間で車両上下方向に沿って空間部56が設けられている(
図2参照)。
【0032】
さらにまた、
図2に示されるように、第1延出部材26の車幅方向外側端部54は、サイドシル18から車幅方向に沿って所定距離だけ離間した位置に配置されている。換言すると、第1延出部材26の車幅方向外側端部54は、サイドシルのサイドシルインナ19aと非接触状態となるように配置されている。
【0033】
各フロアフレーム16は、フロア部12(図示しないフロアパネル)との閉断面内において第2延出部材28を有している。この第2延出部材28は、車両前後方向に沿って第1クロスメンバ22から第2クロスメンバ24まで延出している(
図1参照)。また、第2延出部材28とフロアフレーム16(底壁部34)との間で構成される中空部(閉断面)42の縦断面積は、車両前方に向かうにつれて大きくなるように設けられている(
図8参照)。
【0034】
図2に示されるように、第2延出部材28は、フロアフレーム16の底壁部34との間で閉断面からなる中空部42を構成する平板部58と、この平板部58から上方に延出する左右一対の脚部60a、60bと、この平板部58の車両前方端部からフロアフレーム16(底壁部34)まで延びる前壁62とを有している(
図9参照)。なお、本実施形態では、左右一対の脚部60a、60bが上方に向かって延出しているが、これに限定されるものではない。例えば、
図11の変形例に示されるように、左右一対の脚部60c、60dは、天板となる平板部58から下方に向かって延出するように構成してもよい。
【0035】
図9に示されるように、第2延出部材28の前壁62は、フロアフレーム16の外側壁部(側壁)30及び内側壁部(側壁)32にそれぞれ接合される左右一対の第1フランジ64を有している。さらに、第1フランジ64は、第1クロスメンバ22の車幅方向外側端部66に設けられた第2フランジ68にも接合されている(
図6参照)。換言すると、第1フランジ64及び第2フランジ68を介して、第2延出部材28の前壁62と、第1クロスメンバ22の車幅方向外側端部66とは、フロアフレーム16の内側壁部32を間にして三者がそれぞれ一体的に接合されている。
【0036】
さらに、第2延出部材28の前壁62は、車両前後方向に突出し且つ車幅方向に沿って延出するビード部70を有している(
図8、
図9参照)。このビード部70は、左右一対の第1フランジ64の間に配置されている。
【0037】
さらにまた、第2延出部材28の前壁62は、車両前後方向において第1クロスメンバ22の後記する前側壁72と後側壁74との間に配置されている(
図7参照)。すなわち、第2延出部材28の前壁62と、第1クロスメンバ22の後側壁74とは、車両前後方向において重畳する位置に設定されておらず、車両前後方向において所定の間隔だけオフセットする位置(前壁62が車両前方側で、後側壁74が車両後方側)に配置されている。
【0038】
第1クロスメンバ22及び第2クロスメンバ24は、バッテリ(保護対象部品)14a、14bの車両前後方向にそれぞれ配置され、車幅方向に沿って延在して左右一対のフロアフレーム16、16同士をそれぞれ連結している。第1クロスメンバ22は、バッテリ14a、14bよりも車両前方に配置され、第2クロスメンバ24は、バッテリ14a、14bよりも車両後方に配置されている。
【0039】
図6及び
図7に示されるように、第1クロスメンバ22は、その軸直断面がハット状を呈し、車幅方向に沿って延在する底壁76と、この底壁76の車両前方側で該底壁76から車両上方に向かって突出する前側壁72と、底壁76の車両後方側で該底壁76から車両上方に向かって突出する後側壁74と、前側壁72及び後側壁74のそれぞれ上端に設けられる前側フランジ78a及び後側フランジ78bとから構成されている。
【0040】
第2クロスメンバ24は、その軸直断面がハット状を呈し、車幅方向に沿って延在する底壁80と、この底壁80の車両前方側で該底壁80から車両上方に向かって突出する前側壁82と、底壁80の車両後方側で該底壁80から車両上方に向かって突出する後側壁84と、前側壁82及び後側壁84のそれぞれ上端に設けられる前フランジ86a及び後フランジ86bとから構成されている。
【0041】
図4に示されるように、第2クロスメンバ24は、車両前後方向においてセンタピラ44と重畳する位置に配置されている。また、アウトリガ20は、車両前後方向においてセンタピラ44の車両前方端部45と重畳する位置に配置されている(
図4参照)。
【0042】
フロアフレーム16は、フロア部12との間で構成された閉断面内にバルクヘッド88を有している(
図3参照)。このバルクヘッド88は、車幅方向においてアウトリガ20の後壁21bと重畳する位置から第2クロスメンバ24の前側壁82と後側壁84との間まで延出している(
図4参照)。
【0043】
図3に示されるように、バルクヘッド88は、側面視逆U字形状を呈し、上壁90と、前壁92と、後壁94とを備えて構成されている。前壁92及び後壁94は、第2延出部材28の平板部58及び左右一対の脚部60a、60bにそれぞれ接合されて内部空間を車両前後に区画している。上壁90は、フロアフレーム16と図示しないフロアパネルとの間に挟持されている。
【0044】
本実施形態に係る車体下部構造が適用された車両10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0045】
本実施形態において、アウトリガ20は、フロア部12との閉断面内に車幅方向に沿って延出する第1延出部材26を備えている。この第1延出部材26の車幅方向内側端部52は、車両上下方向において、フロアフレーム16の高さ方向の中央(
図2の破線B参照)よりも下側に配置されている。具体的には、第1延出部材26の車幅方向内側端部52はフロアフレーム16の底壁部34の下面に接合(結合)されている。
【0046】
本実施形態では、アウトリガ20の閉断面内に設けられる第1延出部材26の車幅方向内側端部52を、フロアフレーム16の高さ方向の中央よりも下側に配置することで、ポール衝突による側突荷重の入力時にフロアフレーム16の下方が車幅方向内側に回動する荷重(
図12、
図13の太線円弧状矢印A参照)が伝達される。これにより、本実施形態では、フロアフレーム16の上端が車幅方向内側に回動しようとする変位と相殺され、フロアフレーム16の上端が車幅方向内側に回動する変位を抑制することができる。この結果、本実施形態では、ポール衝突による側突荷重の入力時、荷重伝達効率を向上させてバッテリ14a、14bを保護することが可能な車体下部構造を得ることができる。なお、
図12及び
図13において、「P」は、ポールをそれぞれ示している。
【0047】
また、本実施形態において、第1延出部材26の車幅方向外側端部54は、車両上下方向において、少なくとも一部がサイドシル18の高さ方向の中央(
図2の破線C参照)よりも上側で重畳するように配置されている。
【0048】
本実施形態では、第1延出部材26の車幅方向外側端部54の少なくとも一部がサイドシル18の高さ方向の中央より上側に位置することで、ポール衝突時にサイドシル18に対して入力される側突荷重を第1延出部材26へ確実に伝達することができる。これにより、本実施形態では、フロアフレーム16の上端が車幅方向内側に回動しようとする変位を確実に抑制することができる。より具体的には、サイドシル18は、ポール衝突時にその上方が車幅方向内側に回動するため、サイドシル18に入力された荷重を該サイドシル18の上方に並設された第1延出部材26に対して容易に伝達することができる。
【0049】
さらに、本実施形態において、第1延出部材26は、その車幅方向外側端部54から車幅方向内側端部52に向かうにつれて車両下方に立ち下がるように傾斜して配置されている。
【0050】
本実施形態では、第1延出部材26が車幅方向内側に向かうにつれて車両下方に立ち下がるように傾斜して配置されることで、ポール衝突時に入力される側突荷重を、第1延出部材26を介して、フロアフレーム16の下側(下部)に対して円滑に伝達することができる。
【0051】
さらにまた、本実施形態において、第1延出部材26は、アウトリガ20よりも剛性が高い部材で構成されている。
【0052】
本実施形態では、第1延出部材26の剛性がアウトリガ20の剛性よりも高いため、ポール衝突時に第1延出部材26がフロアフレーム16の下側を車幅方向内側に確実に押し込むことができる。第1延出部材26がフロアフレーム16を車幅方向内側に押し込むことで、フロアフレーム16の上端が車幅方向内側に回動する変位を抑制することができる。同様に、サイドシル18の上方が車幅方向内側に回動する変位を抑制することができる。
【0053】
さらにまた、本実施形態において、第1延出部材26は、底面に設けられる平板部46と、この平板部46の車両前後方向の縁部から車両上方に向かって延出すると共に、アウトリガ20の前壁21a及び後壁21bにそれぞれ接合(結合)される一対の脚部48、48と、車幅方向内側端部52から車幅方向内側に突出するフランジ部50とを備えて構成されている。このフランジ部50は、フロアフレーム16の下面に接合(結合)されている。
【0054】
本実施形態では、第1延出部材26のフランジ部50がアウトリガ20よりも車幅方向内側に延びてフロアフレーム16の下面に接合されることで、ポール衝突時にフロアフレーム16の上端が車幅方向内側に回動する変位を抑制することができる。さらに、本実施形態では、ポール衝突の後期にフロアフレーム16が回動した場合も接合部位に対してせん断方向の荷重が入力されるため、接合部位の剥離を抑制することができる。
【0055】
さらにまた、本実施形態において、サイドシル18から車両上方に向かって延出するセンタピラ44を備えて構成されている。アウトリガ20の少なくとも一部は、車幅方向においてセンタピラ44と重畳するように配置されている。
【0056】
本実施形態では、アウトリガ20の少なくとも一部が車両前後方向においてセンタピラ44と重畳するように配置されることで、ポール衝突時のセンタピラ44の進入量を抑制することができる。より具体的には、第1延出部材26を配置することによってサイドシル18の上方の車幅方向内側への回動が抑制されるため、ポール衝突時のセンタピラ44の進入量を抑制することができる。
【0057】
さらにまた、本実施形態において、フロアフレーム16の軸直方向の断面内には、車両上方に向かって開口するU字状の第2延出部材28が配置されている。第1延出部材26の車幅方向内側端部52は、第2延出部材28とフロアフレーム16との間に設けられる中空部42と重畳する位置に配置されている。
【0058】
本実施形態では、フロアフレーム16の断面内に第2延出部材28を備えて構成されている。これにより、本実施形態では、第1延出部材26の車幅方向内側端部52が中空部42と重畳する位置に配置されることで、フロアフレーム16の下部の圧壊を抑制し、フロアフレーム16の下部の車幅方向内側方向への回動作用を発生させ、フロアフレーム16の上部の車幅方向内側への回動を抑制することができる。
【0059】
さらにまた、第1延出部材26の車幅方向外側端部54は、サイドシル18から車幅方向に沿って離間した位置に配置されている。
【0060】
本実施形態では、第1延出部材26の車幅方向外側端部54がサイドシル18から車幅方向に沿って離間して配置されることで、ポール衝突時のフロアフレーム16の回動を抑制することができる。より具体的には、ポール衝突時の初期において、第1延出部材26がフロアフレーム16の下部を押し込まないようにすることができるため、フロアフレーム16の上方に入力される荷重とフロアフレーム16の下方に入力される荷重とのバランスを保つことができる。仮に、ポール衝突時の初期において、第1延出部材26がフロアフレーム16の下部を押し込んでしまうと、タイミングによってはフロアフレーム16の下部の車幅方向内側への回動が大きくなりすぎてしまうおそれがあるからである。
【符号の説明】
【0061】
10 車両
12 フロア部
14a、14b バッテリ(保護対象部品)
16 フロアフレーム
18 サイドシル
20 アウトリガ
21a (アウトリガの)前壁
21b (アウトリガの)後壁
26、26a 第1延出部材
28、28a 第2延出部材
42 中空部
44 センタピラ
46 平板部
48 脚部
50 フランジ部
52 (第1延出部材の)車幅方向内側端部
54 (第1延出部材の)車幅方向外側端部
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア部の車幅方向中央側に配置される保護対象部品と、前記保護対象部品の車幅方向外側で車両前後方向に沿って延出するフロアフレームと、前記フロア部の車幅方向外側端部で車両前後方向に沿って延出するサイドシルと、前記サイドシルと前記フロアフレームとを連結するアウトリガとを有する車体下部構造において、
前記アウトリガは、前記フロア部との閉断面内に車幅方向に沿って延出する第1延出部材を備え、
前記第1延出部材の車幅方向内側端部は、車両上下方向において、前記フロアフレームの高さ方向の中央よりも下側に配置され、
前記第1延出部材は、前記車幅方向内側端部から車幅方向内側に突出するフランジ部を有し、前記フランジ部は、前記フロアフレームの下面に結合されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項2】
請求項1記載の車体下部構造において、
前記第1延出部材の車幅方向外側端部は、車両上下方向において、少なくとも一部が前記サイドシルの高さ方向の中央よりも上側で前記サイドシルと重畳することを特徴とする車体下部構造。
【請求項3】
請求項2記載の車体下部構造において、
前記第1延出部材は、前記車幅方向外側端部から前記車幅方向内側端部に向かうにつれて車両下方に立ち下がるように傾斜して配置されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項4】
請求項2記載の車体下部構造において、
前記第1延出部材は、前記アウトリガよりも剛性が高い部材で構成されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項5】
請求項1記載の車体下部構造において、
前記第1延出部材は、
底面に設けられる平板部と、
前記平板部の車両前後方向の縁部から車両上方に向かって延出すると共に、前記アウトリガの前壁及び後壁にそれぞれ結合される一対の脚部と、
を有することを特徴とする車体下部構造。
【請求項6】
請求項1記載の車体下部構造において、
前記サイドシルから車両上方に向かって延出するセンタピラを備え、
前記アウトリガの少なくとも一部は、車幅方向において前記センタピラと重畳するように配置されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項7】
請求項1記載の車体下部構造において、
前記フロアフレームの軸直方向の断面内には、車両上方に向かって開口するU字状の第2延出部材が配置され、
前記第1延出部材の車幅方向内側端部は、前記第2延出部材と前記フロアフレームとの間に設けられる中空部と重畳する位置に配置されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項8】
請求項2記載の車体下部構造において、
前記第1延出部材の車幅方向外側端部は、前記サイドシルから車幅方向に沿って離間した位置に配置されていることを特徴とする車体下部構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、車両のフロア部の車幅方向中央側に配置される保護対象部品と、前記保護対象部品の車幅方向外側で車両前後方向に沿って延出するフロアフレームと、前記フロア部の車幅方向外側端部で車両前後方向に沿って延出するサイドシルと、前記サイドシルと前記フロアフレームとを連結するアウトリガとを有する車体下部構造において、前記アウトリガは、前記フロア部との閉断面内に車幅方向に沿って延出する第1延出部材を備え、前記第1延出部材の車幅方向内側端部は、車両上下方向において、前記フロアフレームの高さ方向の中央よりも下側に配置され、前記第1延出部材は、前記車幅方向内側端部から車幅方向内側に突出するフランジ部を有し、前記フランジ部は、前記フロアフレームの下面に結合されていることを特徴とする。