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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011589
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
F24C3/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113718
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 浩二
(57)【要約】
【課題】熱電対を意図する位置に配設することが可能で、安定した炎検出性能を有するガスコンロを提供する。
【解決手段】(a)熱電対30が、略円筒状の本体部33と、本体部の一方端部である上端側に設けられた略円錐状の感熱部34と、感熱部と導通する、絶縁体で覆われた被覆線36と、本体部の下端側外周面に上端側が溶接された、裸線であるアース線37と、本体部の下端側に設けられ、被覆線が本体部の内側から下方に取り出され、アース線が本体部の外側から下方に取り出されるように構成された配線取出部35とを備え、(b)熱電対30を所定の位置に取り付けるための取付治具Dが、熱電対の本体部を当該取付治具に固定する熱電対固定部101と、本体部を当該取付治具に固定する際に、アース線が当該取付治具と干渉することによる熱電対の位置ずれが生じないように、アース線の取付治具に対する位置を規制するアース線位置規制部102とを備えた構成とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に複数の炎孔を配置したバーナキャップと、前記バーナキャップが載置される載置部を兼ねた、燃焼用ガスを吐出するガス吐出部を備えたバーナ本体とを備えるコンロバーナと、
前記コンロバーナの近傍に配設され、前記バーナキャップの炎孔から噴出する燃焼用ガスへの点火を放電点火によって行う点火プラグと、
前記コンロバーナの近傍に配置され、前記バーナキャップの炎孔に形成される炎を、2種類の金属の接点間の温度差によって発生する起電力を利用して検出する熱電対と、
前記点火プラグと前記熱電対を、前記バーナ本体の近傍の所定の位置に取り付けるための取付治具と
を具備するガスコンロにおいて、
(a)前記熱電対は、
略円筒状の本体部と、
前記本体部の一方端部である上端側に設けられた略円錐状の感熱部と、
前記感熱部と導通する、絶縁体で覆われた被覆線と、
前記本体部の下端側外周面に上端側が溶接された、裸線であるアース線と、
前記本体部の他方端部である下端側に設けられ、前記被覆線が前記本体部の内側から下方に取り出され、前記アース線が前記本体部の外側から下方に取り出されるように構成された配線取出部とを備え、
(b)前記取付治具は、
前記熱電対の前記本体部を当該取付治具に固定するための熱電対固定部と、
前記本体部を当該取付治具に固定する際に、前記アース線が当該取付治具と干渉することによる前記熱電対の位置ずれが生じないように、前記アース線の前記取付治具に対する位置を規制するアース線位置規制部とを備えていること
を特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
前記取付治具の前記アース線位置規制部は、
平坦部と、
前記平坦部の所定の領域に設けられ、前記熱電対を前記取付治具に取り付けた状態において、前記本体部の軸方向から見た場合に、略円弧状に湾曲した湾曲部とを備えており、
前記熱電対を前記取付治具に取り付ける際に、前記本体部の内側から下方に取り出された前記被覆線の少なくとも一部が、前記本体部の軸方向から見た場合において前記湾曲部の内側領域を通って前記湾曲部よりも下方に取り出されるとともに、前記本体部がその軸方向回りに回転した場合に、前記アース線が、前記平坦部と前記湾曲部の境界部の近傍で前記平坦部と干渉することで、前記アース線の前記湾曲部の内側領域への侵入を阻止し、前記アース線が前記湾曲部の内周部と干渉することによる前記熱電対の位置ずれが生じないように構成されていること
を特徴とする請求項1記載のガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロに関し、詳しくは、炎検出装置として用いられる熱電対の取り付け態様に特徴を有するガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の調理に広く用いられているガスコンロの多くは、ガスバーナに点火するための点火プラグ(点火装置)と、点火後のガスバーナに形成される炎を検出するための熱電対(炎検出装置)を備えている。
【0003】
そのようなガスコンロの一つとして、特許文献1には、バーナ本体に付設された取付板に、点火プラグと熱電対を取り付けるようにしたガスコンロが開示されている。
【0004】
この特許文献1では、熱電対の取付構造として、取付板に形成された貫通孔に熱電対を挿入し、バネで熱電対を所定の位置に保持するようにした取付構造が開示されている(特許文献1の図1図5参照)。
【0005】
なお、特許文献1では、点火プラグの取付構造として、バーナ本体に付設された取付板に、点火プラグに形成された溝などに係止する切り欠きを設けるとともに、両端が取付板に弾接する板ばねに、点火プラグに形成された溝などに係止する切り欠きと、取付板に設けられた係止部に係止する位置決め部とを設け、点火プラグの溝などを取付板の切り欠きに係合させるとともに、点火プラグの溝などを板ばねの切り欠きに係合させ、かつ、板ばねを取付板の所定の位置に位置決めするようにした取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭60-176354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1では、熱電対として、略円筒状で、筒状の熱電対本体部の外周面にアース線が溶接されておらず、軸回りに回転させた場合にも形状が変わらない対称(回転対称)の構造を有する熱電対が用いられている。
【0008】
そのため、特許文献1のように、取付板に形成され貫通孔に熱電対を挿入し、バネで熱電対を保持することで、熱電対を所定の姿勢で、所定の位置に取り付けることができる。
【0009】
しかしながら、例えば、熱電対の本体部の外周面にアース線が溶接されている熱電対のように、軸回りに回転させた場合に異なる形状となる回転非対称の熱電対が用いられている場合、熱電対を軸回りに回転させると、アース線が、熱電対と、他の部材(例えば取付板やコンロバーナのガス混合部など)の間に位置する場合や、位置しない場合が生じることになり、熱電対の取付姿勢にばらつきが発生する。
【0010】
その結果、熱電対の感熱部を意図する位置に配置することができなくなり、熱電対による炎検出の精度が低下するという問題点がある。
【0011】
また、アース線が、熱電対と、他の部材との間に挟まれた(噛み込まれた)場合には、アース線の断線を引き起こすおそれがある。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、炎検出装置として用いられる熱電対を確実に所定の位置に配設することが可能で、安定した炎検出性能を発揮させることが可能なガスコンロを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明のガスコンロは、
外周部に複数の炎孔を配置したバーナキャップと、前記バーナキャップが載置される載置部を兼ねた、燃焼用ガスを吐出するガス吐出部を備えたバーナ本体とを備えるコンロバーナと、
前記コンロバーナの近傍に配設され、前記バーナキャップの炎孔から噴出する燃焼用ガスへの点火を放電点火によって行う点火プラグと、
前記コンロバーナの近傍に配置され、前記バーナキャップの炎孔に形成される炎を、2種類の金属の接点間の温度差によって発生する起電力を利用して検出する熱電対と、
前記点火プラグと前記熱電対を、前記バーナ本体の近傍の所定の位置に取り付けるための取付治具と
を具備するガスコンロにおいて、
(a)前記熱電対は、
略円筒状の本体部と、
前記本体部の一方端部である上端側に設けられた略円錐状の感熱部と、
前記感熱部と導通する、絶縁体で覆われた被覆線と、
前記本体部の下端側外周面に上端側が溶接された、裸線であるアース線と、
前記本体部の他方端部である下端側に設けられ、前記被覆線が前記本体部の内側から下方に取り出され、前記アース線が前記本体部の外側から下方に取り出されるように構成された配線取出部とを備え、
(b)前記取付治具は、
前記熱電対の前記本体部を当該取付治具に固定するための熱電対固定部と、
前記本体部を当該取付治具に固定する際に、前記アース線が当該取付治具と干渉することによる前記熱電対の位置ずれが生じないように、前記アース線の前記取付治具に対する位置を規制するアース線位置規制部とを備えていること
を特徴としている。
【0014】
本発明のガスコンロにおいて、
前記取付治具の前記アース線位置規制部は、
平坦部と、
前記平坦部の所定の領域に設けられ、前記熱電対を前記取付治具に取り付けた状態において、前記本体部の軸方向から見た場合に、略円弧状に湾曲した湾曲部とを備えており、
前記熱電対を前記取付治具に取り付ける際に、前記本体部の内側から下方に取り出された前記被覆線の少なくとも一部が、前記本体部の軸方向から見た場合において前記湾曲部の内側領域を通って前記湾曲部よりも下方に取り出されるとともに、前記本体部がその軸方向回りに回転した場合に、前記アース線が、前記平坦部と前記湾曲部の境界部の近傍で前記平坦部と干渉することで、前記アース線の前記湾曲部の内側領域への侵入を阻止し、前記アース線が前記湾曲部の内周部と干渉することによる前記熱電対の位置ずれが生じないように構成されていること
が好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガスコンロにおいては、ガスバーナの炎孔に形成される炎を検出するための熱電対として、略円筒状の本体部と、その上端側に設けられた略円錐状の感熱部と、感熱部と導通する被覆線と、本体部の下端側外周面に上端側が溶接されたアース線と、被覆線が上記本体部の内部から下方に取り出され、アース配線が本体部の外側から下方に取り出される配線取出部とを備えた熱電対が用いられている。
【0016】
この熱電対は、上述のように、本体部の外周面にアース線が溶接されており、軸回りに回転させた場合に異なる形状となる(回転非対称)構造を有しているため、熱電対を軸回りに回転させた場合において、アース線が、取付治具の特定の部位に当接する場合と、当接しない場合とが生じ、それが原因で、熱電対の取付治具への取付位置にずれが生じ、炎検出の精度の低下を引き起こす場合がある。
【0017】
これに対し、本発明で用いられる取付治具は、熱電対の本体部を当該取付治具に固定するための熱電対固定部と、アース線の前記取付治具に対する位置を規制するためのアース線位置規制部とを備えているので、熱電対の本体部がその軸方向回りに回転した場合にも、アース線位置規制部により、アース線の位置を規制することができる。
【0018】
その結果、アース線が取付治具と干渉(当接)することによる熱電対の位置ずれを抑制、防止して、熱電対を意図する位置に確実に配設することが可能で、安定した炎検出性能を有するガスコンロを提供することが可能になる。
【0019】
また、アース線位置規制部が、平坦部と、平坦部の所定の領域に設けられた湾曲部とを備えた構造を有する取付治具を用いることにより、熱電対を取付治具に取り付ける際に、本体部の内側から下方に取り出された被覆線の少なくとも一部を、湾曲部の内側領域を経て湾曲部よりも下方に取り出すとともに、本体部がその軸方向回りに回転した場合に、アース線が、平坦部と湾曲部の境界部の近傍で平坦部と干渉することで、アース線の湾曲部の内側領域への侵入を阻止し、アース線が湾曲部の内周部と干渉することによる熱電対の位置ずれを抑制、防止して、熱電対を意図する位置により確実に配設することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態にかかるガスコンロの斜視図である。
図2】本発明の実施形態にかかるガスコンロの、天板を外した状態を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態にかかるガスコンロが備える中央後側のコンロバーナ(小火力バーナ)を示す斜視図であって、取付治具を介して点火プラグ(点火装置)と熱電対(炎検出装置)が取り付けられた状態を示す図である。
図4】本発明の実施形態にかかるガスコンロが備える中央後側のコンロバーナ(小火力バーナ)を示す正面図であって、取付治具を介して点火プラグ(点火装置)と熱電対(炎検出装置)が取り付けられた状態を示す図である。
図5】本発明の実施形態にかかるガスコンロにおいて用いられている取付治具を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
図6】熱電対が取付治具に位置ずれなく取り付けられている状態を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
図7】熱電対が、位置ずれを生じた状態で取付治具に取り付けられている状態を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を示して、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0022】
本実施形態にかかるガスコンロAは、ガスを熱源とするグリルとコンロを備えたグリル付きのガスコンロである。なお、本実施形態にかかるガスコンロAは、キッチンカウンタに形成したコンロ装着口に上方から挿入して組み付けることにより設置される、いわゆるビルトインタイプのガスコンロである。
【0023】
このガスコンロAは、図1に示すように、コンロ本体Hの内部にグリルGを備えており、グリルGは前面にグリル扉G1を備えている。
【0024】
また、ガスコンロAは、図1図2に示すように、3つのコンロバーナ10(10a、10b、10c)を備えている。
【0025】
3つのコンロバーナ10(10a、10b、10c)のうち、コンロ本体Hの前方左側のコンロバーナ10(10a)は標準火力バーナ、前方右側のコンロバーナ10(10b)は高火力バーナ、中央後側のコンロバーナ10(10c)は小火力バーナである。
【0026】
なお、各コンロバーナ10(10a、10b、10c)は、それぞれ、図1図2などに示すように、外周部に複数の炎孔を配置したバーナキャップ1と、バーナ本体2とを備えている。
【0027】
また、バーナ本体2は、例えば図3図4に示すように、燃料ガスの噴射に伴って燃焼用空気を吸引するガス吸引部2a、燃料ガスと吸引した燃焼用空気とを混合するガス混合部2b、バーナキャップ1の外周部に配置された複数の炎孔1a(図1参照)に向ってガスを吐出する、バーナキャップ1を載置する載置部を兼ねるガス吐出部2cを備えている。
【0028】
そして、バーナキャップ1および炎孔1aを含む各コンロバーナ10(10a、10b、10c)の上部が、コンロ本体Hの上面を覆うように配設された天板(トッププレート)TP(図1)の貫通孔から上方に露出している。
【0029】
また、コンロ本体Hを覆う天板(トッププレート)TPには、グリルGの調理排気を排出するためのグリル排気口12(図1)が形成されている。
【0030】
また、天板(トッププレート)TP上には、コンロバーナ10(10a、10b、10c)により加熱される鍋などの被加熱物を載置するための五徳13が、各コンロバーナ10(10a、10b、10c)のそれぞれに対応して設けられている(図1)。
【0031】
さらに、図1図4に示すように、各コンロバーナ10(10a、10b、10c)の中央部には、鍋などの被加熱物の存在および被加熱物の底壁温度を検出するコンロバーナセンサ14が設けられている。
【0032】
各コンロバーナ10(10a、10b、10c)のそれぞれの近傍には、図3図4図6に示すように、炎孔1aから噴出する、燃焼用空気が混合された燃焼用ガスへの放電点火を行う点火プラグ(点火装置)20が配設されている。
【0033】
また、各コンロバーナ10(10a、10b、10c)のそれぞれの近傍で、かつ、点火プラグ20に近い位置には、図3図4図6に示すように、炎孔1aに形成される炎を、2種類の金属の接点間の温度差による起電力を利用して検出する熱電対(炎検出装置)30が配設されている。
【0034】
本実施形態にかかるガスコンロAにおいては、熱電対30として、略円筒状の本体部33と、本体部33の一方端部である上端側に設けられた略円錐状の感熱部34と、本体部33の他方端部である下端側に設けられた配線取出部35を備えた構造の熱電対が用いられている。
【0035】
そして、上述の配線取出部35においては、図3図4図6に示すように、感熱部34と導通する、絶縁体で覆われた被覆線36が本体部33の内側から下方に取り出され、本体部33の下端側外周面33aに上端側が溶接された、裸線であるアース線37が下方に取り出されるように構成されている。
【0036】
また、本実施形態にかかるガスコンロAにおいて、各コンロバーナ10(10a、10b、10c)は、点火プラグ20および熱電対30を、それぞれのバーナ本体2の近傍の所定の位置に確実に取り付けるための取付治具D(図3図6参照)を備えている。なお、取付治具Dは、板金を折り曲げ加工することにより一体に形成されている。
【0037】
なお、各コンロバーナ10(10a、10b、10c)が備える点火プラグ20および熱電対30は、いずれも同様の態様で各コンロバーナ10(10a、10b、10c)の近傍に配設されていることから、ここでは、小火力バーナ10(10c)における、熱電対30および点火プラグ20の取付構造について説明を行う。
【0038】
本実施形態において、各コンロバーナ10(10a、10b、10c)に点火プラグ20および熱電対30を取り付けるため用いられる取付治具Dは、図3図6(特に図5(a)~(c))に示すように、点火プラグ20が取り付けられる点火プラグ取付部D1と、熱電対30が取り付けられる熱電対取付部D2を備えている。
【0039】
点火プラグ取付部D1は、点火プラグ20を両側から挟み込む一対の点火プラグ用爪部21、22を備えている。
【0040】
また、熱電対取付部D2は、熱電対30を両側から挟み込む一対の熱電対用爪部31、32を備えている。
【0041】
さらに、熱電対取付部D2は、上述の一対の熱電対用爪部31、32の下側に、熱電対30の本体部33を両側から挟み込む一対の下側爪部31a、32aを備えている。
【0042】
また、取付治具Dの熱電対取付部D2は、熱電対30の本体部33を取付治具Dに固定するための熱電対固定部101を備えている(図3図6(特に図5)参照)。
【0043】
本実施形態にかかるガスコンロAにおいては、上述の熱電対用爪部31、32と、下側爪部31a、32aとが、熱電対30(の本体部33)を取付治具Dに固定するための熱電対固定部101を構成している。
【0044】
取付治具Dの、点火プラグ取付部D1と熱電対取付部D2の間には、バーナ本体2に当接して、取付治具Dのバーナ本体2に対する位置を規定する当接部41が設けられている。
【0045】
なお、取付治具Dの、点火プラグ用爪部21、22、熱電対用爪部31、32、下側爪部31a、32aは、いずれもバーナ本体2側とは反対側に折り曲げて形成されている。
【0046】
また、取付治具Dの、当接部41は、バーナ本体2側に向って折り曲げて形成されている。
【0047】
なお、本実施形態では、点火プラグ用爪部21、22と、熱電対用爪部31、32と、当接部41とが、略同一平面に位置するように構成されている。
【0048】
そして、本実施形態においては、取付治具Dの、一対の点火プラグ用爪部21、22のうちの熱電対取付部D2に近い方の点火プラグ用爪部22と、一対の熱電対用爪部31、32のうちの点火プラグ取付部D1に近い方の熱電対用爪部31とが兼用されるように構成されている。
【0049】
すなわち、一対の熱電対用爪部31、32のうちの、点火プラグ取付部D1に近い方の熱電対用爪部31には、点火プラグ20の動きを規制する規制部131が設けられており、この規制部131が、一対の点火プラグ用爪部21、22のうちの熱電対取付部D2に近い方の点火プラグ用爪部22として機能するように構成されている。
【0050】
さらに、本実施形態においては、上述のように、点火プラグ用爪部22としても機能する規制部131は、一対の熱電対用爪部31、32のうちの、点火プラグ取付部D1に近い方の熱電対用爪部31から、点火プラグ20側に向って延びる延伸部131aと、延伸部131aの先端側を略垂直方向上側に曲げ加工して形成した、点火プラグ20に当接して点火プラグ20の動きを規制する当接規制部131bとを備えている。
【0051】
また、取付治具Dは、上述のようにバーナ本体2側に向って曲げ加工された当接部41を備えており、この当接部41がバーナ本体2に当接することで、取付治具Dがより確実に、バーナ本体2に対して所定の位置に保持されるように構成されている。
【0052】
また、本実施形態において、点火プラグ20は、高さ方向略中央部に平面形状が略方形のフランジ状段部20aを備えている。そして、点火プラグ20を挟み込むための点火プラグ用爪部21、22のうち、図3における左側の点火プラグ用爪部21が、点火プラグ20のフランジ状段部20aの左側面に当接し、右側の点火プラグ用爪部22としても機能する規制部131(詳しくは当接規制部131b)が、点火プラグ20のフランジ状段部20aの右側面に当接することで、点火プラグ20が、取付治具Dの所定の位置に確実に保持される。
【0053】
当接規制部131bは、略垂直方向上側に曲げ加工されており、点火プラグ20(詳しくはフランジ状段部20aの右側面)との接触面が広いため、点火プラグ20の傾きや回転などの位置ずれを引き起こすことなく、点火プラグ20を所定の位置に確実に保持することが可能になる。
【0054】
また、本実施形態では、熱電対30は、図3図5に示すように、その上下方向略中央部に、外周面を周回するように形成された溝部30aを備えているとともに、溝部30aの下方に下側溝部30bを備えている。そして、取付治具Dの熱電対用爪部31、32が、熱電対30の溝部30aにはまり込むような態様で、両側から熱電対30に係合するとともに、下側爪部31a、32aが、熱電対30の下側溝部30bにはまり込むような態様で、両側から熱電対30に係合することで、熱電対30が取付治具Dに確実に保持される。
【0055】
さらに、ガスコンロAは、点火プラグ20と熱電対30を取付治具Dに固定するための固定板42を備えている(図3図4参照)。固定板42は、点火プラグ20が嵌合する略U字状の第1湾曲部42aと、熱電対30が嵌合する略U字状の第2湾曲部42bを有しており、左側端部を取付治具Dと係合させた状態で、右側端部を固定板固定ネジ43で取付治具Dに固定することにより、取付治具Dと固定板42が確実に係合、固定されるように構成されている。
【0056】
また、バーナ本体2は、コンロ本体Hを構成する板状部材46に、バーナ本体固定ネジ44によりネジ止めされることで、コンロ本体Hへの位置決めが行われるように構成されている。
【0057】
さらに、取付治具Dは、固定板42が係合、固定された状態で、コンロ本体Hを構成する板状部材46に、取付治具固定ネジ45によりネジ止めされ、固定されるように構成されている。
【0058】
次に、本発明の実施形態にかかるガスコンロAにおける、熱電対の取付構造の特徴的な構成について説明する。
【0059】
本実施形態にかかるガスコンロAにおいて用いられている取付治具Dは、図3図6に示すように、熱電対固定部101の下側に、熱電対30の本体部33を取付治具Dに固定する際に、アース線37が取付治具Dと干渉することによる熱電対30の位置ずれを防止するためのアース線位置規制部102を備えている。
【0060】
このアース線位置規制部102は、アース線37の取付治具Dに対する位置を規制することで熱電対30の位置ずれを防止する機能を果たすものであり、以下に説明するような構成を備えている。
【0061】
本実施形態において、取付治具Dのアース線位置規制部102は、平坦部102aと、平坦部102aの所定の領域に設けられた湾曲部102bとによって構成されている。なお、湾曲部102bは、熱電対30を取付治具Dに取り付けた状態において、本体部33の軸方向から見た場合に、略円弧状に湾曲した構造とされている。
【0062】
また、取付治具Dの、アース線位置規制部102の上側部分であって、下側爪部31a、32aより下側の領域には、図5(b)に示すように、熱電対30の本体部33と、取付治具Dのアース線位置規制部102近傍との無用な干渉を避けるために、切り欠き51が形成されている。この切り欠き51の幅(図5(b)における横方向の寸法)は、熱電対30の本体部33の外径寸法より小さくなるように構成されている。切り欠き51の幅を熱電対30の外径寸法より小さくすることで、アース線位置規制部102を、板金の折り曲げ加工により効率よく形成することが可能になる。
【0063】
ところで、本発明のガスコンロAにおいて用いられている熱電対30は、図3図4図6に示すように、本体部33の下端側外周面33aに、アース線37の上端側が溶接された、回転非対称の形状を有している。そのため、熱電対30の軸回り方向の回転位置により、図7(a)、(b)に示すように、アース線37が、アース線位置規制部102の湾曲部102bに入り込んだ場合には、アース線37が、湾曲部102bの内周部と干渉(当接)し、熱電対30の下部が取付治具Dから浮き上がって、熱電対30の位置ずれを引き起こすおそれがある。
【0064】
これに対し、本実施形態にかかるガスコンロAにおいては、取付治具Dが、上述のように、平坦部102aと、湾曲部102bとを有するアース線位置規制部102を備えているので、(a)熱電対30を取付治具Dに取り付ける際に、本体部33の内側から下方に取り出された被覆線36の少なくとも一部が、本体部33の軸方向から見た場合において湾曲部102bの内側領域を通って、アース線位置規制部102と干渉することなく、湾曲部102bよりも下方に取り出されるとともに、(b)本体部33がその軸方向回りに回転した場合に、本体部33の下端側外周面33aに上端側が溶接されたアース線37が、平坦部102aと湾曲部102bとの境界部の近傍で平坦部102aと干渉して、湾曲部102bの内側領域に入り込むことが阻止されることから、アース線37が湾曲部102bの内周部と当接して熱電対30の位置ずれを招くような応力が生じることを回避することが可能になる。
【0065】
その結果、図5(a)、(b)に示すように、熱電対30を、その軸方向が点火プラグ20の軸方向と平行になるような姿勢(意図する姿勢)で、取付治具Dに確実に取り付けることができる。
【0066】
また、本実施形態にかかるガスコンロAにおいては、上述のように、アース線37が、熱電対30の位置ずれを引き起こすような態様で取付治具Dと干渉することを阻止することができるように構成されているので、取付治具Dと干渉することによるアース線37の断線などの不具合の発生を抑制、防止することができる。
【0067】
したがって、本発明によれば、炎検出装置として用いられる熱電対30を、容易かつ確実に意図する位置に配設することが可能で、安定した炎検出性能を有する信頼性の高いガスコンロを提供することが可能になる。
【0068】
なお、本発明の作用効果を理解しやすくするために、上では、図7(a)、(b)を用いて、アース線37が、アース線位置規制部102の湾曲部102bに入り込み、アース線37が湾曲部102bの内周部と干渉(当接)することで熱電対30の位置ずれを引き起こすおそれがあることを説明したが、本発明にかかるガスコンロAにおいては、上で、図6(a)、(b)に基づいて説明を行ったように、熱電対30が回転した場合にも、平坦部102aと湾曲部102bとの境界部の近傍で平坦部102aと干渉して、アース線37が、アース線位置規制部102の湾曲部102bに入り込むことを確実に抑制、防止することができる。
【0069】
本実施形態では、上述のように、取付治具Dとして、平坦部102aと、平坦部102aの所定の領域に設けられた湾曲部102bとを備えたアース線位置規制部102を有する構成のものを用いているが、アース線位置規制部102の具体的な構成は、必ずしも上述のような構成のものに限られるものではなく、熱電対30の位置ずれを引き起こすような態様でアース線37が取付治具Dと干渉することを阻止することが可能な種々の構成のものを用いることが可能である。
【0070】
なお、上記実施形態では、小火力バーナ10(10c)への、熱電対30の取付構造について説明したが、標準火力バーナ10(10a)、高火力バーナ10(10b)についても、小火力バーナ10(10c)に熱電対30を取り付けるのに用いた取付治具Dと同じ構成の取付治具を用いて、同様の方法で熱電対30を取り付けることができる。
【0071】
また、上記実施形態では、ガスコンロAが、標準火力バーナ10(10a)、高火力バーナ10(10b)、小火力バーナ10(10c)の3つのコンロバーナを備えている場合について説明したが、本発明においては、ガスコンロが備えるコンロバーナの数や火力の大きさに特別の制約はない。
【0072】
本発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 バーナキャップ
1a 炎孔
2 バーナ本体
2a ガス吸引部
2b ガス混合部
2c ガス吐出部(載置部を兼ねる)
10 コンロバーナ
10a 標準火力バーナ
10b 高火力バーナ
10c 小火力バーナ
12 グリル排気口
13 五徳
14 コンロバーナセンサ
20 点火プラグ(点火装置)
20a 平面形状が方形のフランジ状段部
21、22 点火プラグ用爪部
30 熱電対(炎検出装置)
30a 溝部
30b 下側溝部
31、32 熱電対用爪部
31a、32a 下側爪部
33 熱電対の本体部
33a 本体部の下端側外周面
34 熱電対の感熱部
35 熱電対の配線取出部
36 被覆線
37 アース線
41 当接部
42 固定板
42a 固定板の第1湾曲部
42b 固定板の第2湾曲部
43 固定板固定ネジ
44 バーナ本体固定ネジ
45 取付治具固定ネジ
46 コンロ本体を構成する板状部材
51 切り欠き
101 熱電対固定部
102 アース線位置規制部
102a アース線位置規制部を構成する平坦部
102b アース線位置規制部を構成する湾曲部
131 点火装置の動きを規制する規制部
131a 規制部を構成する延伸部
131b 規制部を構成する当接規制部
A ガスコンロ
D 取付治具
D1 点火プラグ取付部
D2 熱電対取付部
G グリル
G1 グリル扉
H コンロ本体
TP 天板(トッププレート)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7