(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115893
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】電動作業車
(51)【国際特許分類】
B60L 58/27 20190101AFI20240820BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240820BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240820BHJP
A01D 34/78 20060101ALI20240820BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B60L58/27
B60L50/60
B60L53/14
A01D34/78 Z
H02J7/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021786
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊東 寛和
(72)【発明者】
【氏名】小田切 誠
【テーマコード(参考)】
2B083
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA12
2B083CA07
2B083CA28
2B083DA03
2B083HA19
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA07
5G503DA17
5G503FA06
5G503GB06
5G503GC04
5H125AA01
5H125AA20
5H125AB01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC19
5H125CC07
5H125CD09
5H125DD02
5H125EE49
(57)【要約】
【課題】充電完了後に、バッテリの温度の低下を回避し、バッテリ電力の使用における稼働時間が短くなってしまうことを防ぐことができる電動作業車を提供する。
【解決手段】動力源(41,42,43)から出力される駆動力により走行及び作業する電動作業車であって、動力源(41,42,43)に電力を供給するバッテリ6と、バッテリ6を外部電源からの給電によって充電する充電器50と、充電器50のバッテリ6への給電処理を制御する制御部52が備えられ、制御部52は、バッテリ6を充電するとともにバッテリ6を暖機運転させる暖機運転モードと、暖機運転せずにバッテリ6への充電を行う充電モードと、に切り換え可能に構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源から出力される駆動力により走行及び作業する電動作業車であって、
前記動力源に電力を供給するバッテリと、
前記バッテリを外部電源からの給電によって充電する充電器と、
前記充電器の前記バッテリへの給電処理を制御する制御部が備えられ、
前記制御部は、前記バッテリを充電するとともに前記バッテリを暖機運転させる暖機運転モードと、前記暖機運転せずに前記バッテリへの充電を行う充電モードと、に切り換え可能に構成されている電動作業車。
【請求項2】
前記制御部に対して手動でモード切替操作を行う手動操作具が備えられている請求項1に記載の電動作業車。
【請求項3】
前記制御部に、通信端末と無線通信可能な無線通信部が備えられ、
前記通信端末からの操作情報に応じて、前記制御部に対して制御操作を行う請求項1に記載の電動作業車。
【請求項4】
前記通信端末に、前記制御部による制御状態を表示する表示部が備えられている請求項3に記載の電動作業車。
【請求項5】
前記制御部に、所定の時間が経過したときに暖機運転の入切制御を行うタイマー部が備えられている請求項1から4のいずれか一項に記載の電動作業車。
【請求項6】
前記動力源は、電動モータである請求項1に記載の電動作業車。
【請求項7】
前記動力源は、油圧装置である請求項1に記載の電動作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電源から充電されるバッテリを備える電動作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリが搭載された電動作業車が記載されている。このような電動作業車では、搭載されたバッテリから供給される電力で、車輪駆動用のモータなどが動作する。
【0003】
また、電動作業車に搭載されているバッテリへの充電は、例えば、特許文献2に示されているような充電器を用いて、充電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-022296号公報
【特許文献2】特開2022-108048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば寒冷地では、充電完了後に、バッテリの温度が低下してしまい、出力電圧の低下が生じ、バッテリの電力供給効率が低下してしまう。その結果、従来の電動作業車では、稼働時間が短くなってしまうという不都合が生じていた。
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、充電完了後に、バッテリの温度の低下を回避し、バッテリ電力の使用における稼働時間が短くなってしまうことを防ぐことができる電動作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動作業車は、動力源から出力される駆動力により走行及び作業する電動作業車であって、前記動力源に電力を供給するバッテリと、前記バッテリを外部電源からの給電によって充電する充電器と、前記充電器の前記バッテリへの給電処理を制御する制御部が備えられ、前記制御部は、前記バッテリを充電するとともに前記バッテリを暖機運転させる暖機運転モードと、前記暖機運転せずに前記バッテリへの充電を行う充電モードと、に切り換え可能に構成されている。
【0008】
この発明によれば、例えば寒冷地においても、暖機運転モードにすることにより、充電完了後にバッテリの温度の低下を防ぐことが可能となる。また、充電中に暖機運転を行うため、充電に用いられる外部電源からの給電を使用して暖機運転を行うことが可能となり、バッテリの電力を使用せずに暖機運転を行うことが可能となる。その結果、バッテリ電力の使用における稼働時間が短くなってしまうことを防ぐことが可能となる。
【0009】
本発明においては、前記制御部に対して手動でモード切替操作を行う手動操作具が備えられていると好適である。
【0010】
この構成によれば、外気温や充電完了後の電動自動車の使用予定等を考慮して、充電モード又は暖機運転モードのいずれかを選択することが可能となる。
【0011】
本発明においては、前記制御部に、通信端末と無線通信可能な無線通信部が備えられ、
前記通信端末からの操作情報に応じて、前記制御部に対して制御操作を行うと好適である。
【0012】
この構成によれば、電動自動車や充電器と離れた場所からも暖機運転モードへの切り替えが可能となる。特に外気温が低い場所や悪天候である場所において、このような場所でのモード切替作業を回避することが可能となる。
【0013】
本発明においては、前記通信端末に、前記制御部による制御状態を表示する表示部が備えられていると好適である。
【0014】
この構成によれば、電動自動車や充電器と離れた場所からも、制御部による制御状態、つまり、暖気運転モードであるのか充電モードであるのか等の情報を確認することが可能となる。
【0015】
本発明においては、前記制御部に、所定の時間が経過したときに暖機運転の入切制御を行うタイマー部が備えられていると好適である。
【0016】
この構成によれば、所定の時間が経過したときに暖気運転の入切制御を自動的に行うよう設定できることから、長時間、暖機運転し続けてしまうなどの不都合を回避することが可能となる。
【0017】
本発明においては、前記動力源は、電動モータであると好適である。
【0018】
この構成によれば、暖機運転を行うとき、電動モータに暖気電流を流すことによって、電動モータから発せられた熱を用いて電気モータ付近を温めることが可能となる。
【0019】
本発明においては、前記動力源は、油圧装置であると好適である。
【0020】
この構成によれば、暖機運転を行うとき、油圧装置に暖気電流を流すことによって、油圧装置から発せられた熱を用いて油圧装置付近を温めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】走行装置及び草刈機の電気系統及び動力系統を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0023】
〔トラクタの全体構成〕
以下では、本実施形態の電動作業車である電動草刈機について説明する。
図1及び
図2に示すように、この電動草刈機は、車体1の前部に支持された左右一対の前輪11、車体1の後部に支持された、駆動輪ユニットとしての左右一対の後輪12、車体1の下部で前輪11及び後輪12の間に支持された、作業装置としてのモーアユニット3を備えている。
【0024】
車体1には、運転座席13及びロプスフレーム14等が設けられている。車体1は前後方向に延びている右及び左の長手ビームと、この長手ビームを連結するクロスビームとからなるフレーム10を含む。ロプスフレーム14の下端はフレーム10に連結されている。
【0025】
前輪11は、キャスタータイプ車輪であり、後輪12は駆動輪である。それぞれの後輪12の内側に、動力源として後輪12の左走行モータ41と右走行モータ42が配置されている。左走行モータ41と右走行モータ42は電動モータであり、左走行モータ41と右走行モータ42の動力は減速機構16を介して後輪12に伝達される。各後輪12は独立的に駆動される。
【0026】
左右の後輪12の間には、走行用電動モータと後述するモーアモータ43とに電力を供給するバッテリ6が設けられ、バッテリ6は、バッテリ収納部60に収納されている。
【0027】
運転座席13の右及び左の両側に、人為車速操作具としての変速レバー17が配置されている。右及び左の変速レバー17を操作することにより、右及び左の後輪12が互いに独立に前進側または後進側に駆動し、車体1は前進または後進、右旋回または左旋回する。
【0028】
図1に示すように、モーアユニット3は、モーアデッキ30と、モーアデッキ30の内部に縦軸芯周りに回転可能に支持された刈刃31とを備えている。刈刃31は、動力源であるモーアモータ43によって回転駆動される。モーアデッキ30は、リンク機構34により昇降可能にフレーム10から吊り下げられている。
【0029】
図2には、電動草刈機の動力系統及び制御系統が示されている。作業用電動モータとしてのモーアモータ43は、モーアデッキ30の後側壁に設けられている。モーアモータ43は、電動モータであり、ベルト伝動機構33を介して刈刃31を取り付けている回転軸32を、回転させる。左側の後輪12を回転させるために、走行用電動モータとしての左走行モータ41が設けられ、右側の後輪12を回転させるために、走行用電動モータとしての右走行モータ42が設けられている。
【0030】
左走行モータ41と右走行モータ42とモーアモータ43とには、インバータ4から電力が供給される。インバータ4は、左走行モータ41と右走行モータ42とに電力を供給する走行モータ用インバータ4Aと、モーアモータ43に電力を供給するモーアモータ用インバータ4Bとを含む。
【0031】
駆動制御部5は、車体1に設けられている電子制御ユニット(ECU)により構成されており、バッテリ6からインバータ4への電力の供給を制御する。
【0032】
インバータ4は、駆動制御部5からの制御信号に基づいて駆動制御される。インバータ4は、電力源としてのバッテリ6と接続されている。つまり、バッテリ6からの電力により、左走行モータ41と右走行モータ42とが駆動され、その駆動力により電動草刈機は走行する。また、バッテリ6からの電力により、モーアモータ43が駆動され、その駆動力によりモーアユニット3は刈取作業を行う。
【0033】
〔充電器の構成〕
図1及び
図2に、充電器50が示されている。充電器50は、立方体形状の本体部50aが備えられている。本体部50aには、バッテリ6に接続されるハーネス51が設けられている。充電器50は、ハーネス51を介して、外部電源からの給電によってバッテリ6を充電する。
【0034】
充電器50に、バッテリ6へ充電するとともにバッテリ6を暖機運転させる暖機運転モードと、暖機運転せずにバッテリ6への充電を行う充電モードとにモード切替操作を行うスイッチSW(本発明の「手動操作具」に相当)が備えられている。
【0035】
本実施形態では、車体1に設けられているECUにより構成され、充電器50のバッテリ6への給電処理を制御する給電制御部52(本発明の「制御部」に相当)が備えられている。
【0036】
給電制御部52は、スイッチSWの操作により、暖機運転モードへ切り替えられたとき、バッテリ6へ充電するとともにバッテリ6を暖機運転させる制御を行う。バッテリ6の暖機運転の方法としては、様々な方法があるが、例えば、バッテリ6を強制的に充放電させることにより内部発熱させる方法でもよく、また、給電制御部52が駆動制御部5を制御し、バッテリ6からの電力で左走行モータ41、右走行モータ42、モーアモータ43を駆動し、バッテリ6を内部発熱させる方法でもよい。
【0037】
暖機運転に伴う給電は、充電中のバッテリ6から給電してもよく、また、ハーネス51を介して、外部電源から直接給電してもよい。
【0038】
また、給電制御部52は、スイッチSWの操作により、充電モードに切り替えられたとき、バッテリ6を暖機運転させることなく、バッテリ6へ給電させる制御を行うことにより、バッテリ6を充電する。
【0039】
〔別実施形態〕
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態を例示する。
【0040】
(1)上記実施形態では、充電器50に、スイッチSWが備えられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、充電器50に、通信端末と無線通信可能な無線通信部が備えられ、通信端末からの操作情報に応じて、給電制御部52に対して制御操作を行う構成としてもよい。また、このとき、通信端末に、給電制御部52による制御状態を表示する表示部が備えられている構成としてもよい。
【0041】
(2)上記実施形態では、スイッチSWの操作で、暖機運転モードと充電モードとにモード切替操作を行う構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、給電制御部52に、設定された時間が経過したときに、暖機運転の切制御を行うとともに、暖機運転モードから充電モードへの切替制御を行う、又は、設定された時間が経過したときに、暖機運転の入制御を行うとともに、充電モードから暖機運転モードへの切替制御を行うタイマー部が備えられている構成としてもよい。このとき、本体部50aに、切替制御を行う時間及び暖機運転の入切制御が設定できるタイマー設定操作部を備える構成としてもよい。
【0042】
(3)上記実施形態では、動力源として後輪12の左走行モータ41と右走行モータ42とモーアモータ43とを備える構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、動力源として油圧装置を備える構成としてもよい。このとき、駆動制御部5は、人為車速操作具及び充電器50の給電制御部52からの入力信号を基に、インバータ4を制御して、油圧装置を駆動する構成とする。つまり、給電制御部52は、駆動制御部5を介して、油圧装置を制御し、暖気運転させる。このような構成とすることにより、バッテリ6だけでなく、油圧装置を暖機運転させることが可能となる。
【0043】
(4)上記実施形態では、給電制御部52は、車体1に設けられているECUにより構成されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、充電器50に備えられていてもよい。
【0044】
尚、上記の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、外部電源から充電されるバッテリを備える電動作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
6 :バッテリ
41 :左走行モータ(電動モータ)
42 :右走行モータ(電動モータ)
43 :モーアモータ(電動モータ)
50 :充電器
52 :給電制御部(制御部)