(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115895
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60G 17/005 20060101AFI20240820BHJP
B60G 5/00 20060101ALI20240820BHJP
B60S 9/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B60G17/005
B60G5/00
B60S9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021790
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山階 隆広
【テーマコード(参考)】
3D026
3D301
【Fターム(参考)】
3D026EA07
3D026EA28
3D026EA37
3D026EA82
3D301AA51
3D301AA59
3D301BA04
3D301BA19
3D301CA23
3D301DA14
3D301DA67
3D301EA04
3D301EA80
3D301EC01
3D301EC06
3D301EC46
(57)【要約】
【課題】エアサスペンションが排気状態にあり、エアサスペンションがロックされていない場合にアウトリガ装置の動作を規制して、エアサスペンションが損傷することを抑制可能な作業車両を提供する。
【解決手段】トラッククレーン1の制御部90は、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、全伸センサ64がロック部材61のロック位置を検出していない状態において、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の接地位置への移動を規制し、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、全伸センサ64がロック部材61のロック位置を検出している状態において、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の接地位置への移動を許容する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪が回転可能に取り付けられた車軸と、
前記車軸を支持する車軸支持部と、前記車軸支持部と車体との間に介装され、内部のエアが排気され縮小した排気状態と、内部にエアが供給され前記排気状態よりも伸長したレベリング状態とに切換可能なエアサスペンションとを有するサスペンション装置と、
前記排気状態にある前記エアサスペンションの伸長動作を規制するロック位置と、前記排気状態にある前記エアサスペンションの伸長動作を許容するロック解除位置とに移動可能なロック部材と、
前記ロック部材の前記ロック位置および前記ロック解除位置を検出する検出手段と、
接地して前記車体を支持する接地位置と、前記車体に収容される収容位置とに移動可能なアウトリガ装置と、
少なくとも前記エアサスペンション、前記ロック部材、および前記アウトリガ装置の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記エアサスペンションが前記排気状態にあるとともに、前記検出手段が前記ロック部材の前記ロック位置を検出していない状態において、前記アウトリガ装置の前記接地位置への移動を規制し、
前記エアサスペンションが前記排気状態にあるとともに、前記検出手段が前記ロック部材の前記ロック位置を検出している状態において、前記アウトリガ装置の前記接地位置への移動を許容する作業車両。
【請求項2】
複数の前記車輪と、複数の前記車輪に対応して設けられる複数の前記サスペンション装置、複数の前記ロック部材、および複数の前記検出手段とを備え、
前記制御部は、全ての前記検出手段が前記ロック部材の前記ロック位置を検出した状態において、前記アウトリガ装置の前記接地位置への移動を許容する請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御部は、
前記エアサスペンションが前記排気状態にあるとともに、前記検出手段が前記ロック部材の前記ロック位置を検出している状態において、前記エアサスペンションの前記排気状態から前記レベリング状態への切換動作を規制する請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
複数の前記車輪と、複数の前記車輪に対応して設けられる複数の前記サスペンション装置、複数の前記ロック部材、および複数の前記検出手段とを備え、
前記制御部は、複数の前記検出手段の少なくとも一つが、前記ロック部材の前記ロック位置を検出している状態において、前記エアサスペンションの前記排気状態から前記レベリング状態への切換動作を規制する請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
伸縮することにより、前記ロック部材を前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で移動させるロックシリンダを備え、
前記ロック部材は、前記ロックシリンダが伸長したときおよび縮小したときの一方でロック位置に移動し、前記ロックシリンダが伸長したときおよび縮小したときの他方でロック解除位置に移動し、
前記検出手段は、前記ロックシリンダの伸長および縮小を検出するセンサであり、
前記制御部は、
前記検出手段が前記ロックシリンダの伸長および縮小の一方を検出したときに、前記ロック部材の前記ロック位置への移動が検出されたと判定し、
前記検出手段が前記ロックシリンダの伸長および縮小の他方を検出したときに、前記ロック部材の前記ロック解除位置への移動が検出されたと判定する請求項1~請求項4の何れか一項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、作業時に車体から張り出して車体を支持するアウトリガ装置と、車軸を上下方向に揺動自在に懸架するサスペンション装置とを備えた作業車両が知られている。
【0003】
このような作業車両のサスペンション装置が、例えば内部のエアが排気され縮小した排気状態と、内部にエアが供給され排気状態よりも伸長したレベリング状態とに切換可能なエアサスペンションを備えた構成であった場合、エアサスペンションが排気状態にある状態でアウトリガ装置をジャッキアップすると、エアサスペンションが支持する車軸等の重量によって、縮小したエアサスペンションが急激に伸長してしまい、エアサスペンションが損傷または劣化するおそれがある。
【0004】
従って、エアサスペンションの損傷または劣化を防止するために、エアサスペンションを排気状態に固定するためのロック部材を設けて、エアサスペンションがロック部材によって排気状態にロックされた状態で、アウトリガ装置を作動させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のように、エアサスペンションを排気状態に固定するロック部材を設けた場合でも、エアサスペンションがロック部材によりロックされていない状態において、アウトリガ装置が作動可能に構成されていると、排気状態にあるエアサスペンションが急激に伸長して損傷または劣化することを効果的に防ぐことは困難である。
【0007】
そこで、本発明においては、エアサスペンションを固定するロック部材を設けた構成において、エアサスペンションが排気状態にあるとともに、エアサスペンションがロック部材によってロックされていない場合には、アウトリガ装置の動作を規制して、エアサスペンションが損傷または劣化することを抑制可能な作業車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する作業車両は、以下の特徴を有する。
【0009】
即ち、作業車両は、車輪が回転可能に取り付けられた車軸と、前記車軸を支持する車軸支持部と、前記車軸支持部と車体との間に介装され、内部のエアが排気され縮小した排気状態と、内部にエアが供給され前記排気状態よりも伸長したレベリング状態とに切換可能なエアサスペンションとを有するサスペンション装置と、前記排気状態にある前記エアサスペンションの伸長動作を規制するロック位置と、前記排気状態にある前記エアサスペンションの伸長動作を許容するロック解除位置とに移動可能なロック部材と、前記ロック部材の前記ロック位置および前記ロック解除位置を検出する検出手段と、接地して前記車体を支持する接地位置と、前記車体に収容される収容位置とに移動可能なアウトリガ装置と、少なくとも前記エアサスペンション、前記ロック部材、および前記アウトリガ装置の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記エアサスペンションが前記排気状態にあるとともに、前記検出手段が前記ロック部材の前記ロック位置を検出していない状態において、前記アウトリガ装置の前記接地位置への移動を規制し、前記エアサスペンションが前記排気状態にあるとともに、前記検出手段が前記ロック部材の前記ロック位置を検出している状態において、前記アウトリガ装置の前記接地位置への移動を許容する。
【0010】
また、複数の前記車輪と、複数の前記車輪に対応して設けられる複数の前記サスペンション装置、複数の前記ロック部材、および複数の前記検出手段とを備え、前記制御部は、全ての前記検出手段が前記ロック部材の前記ロック位置を検出した状態において、前記アウトリガ装置の前記接地位置への移動を許容する。
【0011】
また、前記制御部は、前記エアサスペンションが前記排気状態にあるとともに、前記検出手段が前記ロック部材の前記ロック位置を検出している状態において、前記エアサスペンションの前記排気状態から前記レベリング状態への切換動作を規制する。
【0012】
また、複数の前記車輪と、複数の前記車輪に対応して設けられる複数の前記サスペンション装置、複数の前記ロック部材、および複数の前記検出手段とを備え、前記制御部は、複数の前記検出手段の少なくとも一つが、前記ロック部材の前記ロック位置を検出している状態において、前記エアサスペンションの前記排気状態から前記レベリング状態への切換動作を規制する。
【0013】
また、伸縮することにより、前記ロック部材を前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で移動させるロックシリンダを備え、前記ロック部材は、前記ロックシリンダが伸長したときおよび縮小したときの一方でロック位置に移動し、前記ロックシリンダが伸長したときおよび縮小したときの他方でロック解除位置に移動し、前記検出手段は、前記ロックシリンダの伸長および縮小を検出するセンサであり、前記制御部は、前記検出手段が前記ロックシリンダの伸長および縮小の一方を検出したときに、前記ロック部材の前記ロック位置への移動が検出されたと判定し、前記検出手段が前記ロックシリンダの伸長および縮小の他方を検出したときに、前記ロック部材の前記ロック解除位置への移動が検出されたと判定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エアサスペンションが排気状態にあるときに、アウトリガ装置が接地位置へ移動した場合において、エアサスペンションが一気に伸長して損傷または劣化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】サスペンション装置を介してフレームに支持される後輪の車軸を示す斜視図である。
【
図3】エアサスペンションがレベリング状態にあるサスペンション装置を示す側面図である。
【
図4】(a)はエアサスペンションがレベリング状態にあるサスペンション装置を示す正面断面図であり、(b)はエアサスペンションがレベリング状態にあるサスペンション装置を示す斜視図である。
【
図5】エアサスペンションが排気状態にあるサスペンション装置を示す側面図である。
【
図6】(a)はエアサスペンションが排気状態にあり、ロック部材がロック解除位置にあるサスペンション装置を示す正面断面図であり、(b)はエアサスペンションが排気状態にあり、ロック部材がロック解除位置にあるサスペンション装置を示す斜視図である。
【
図7】(a)はエアサスペンションが排気状態にあり、ロック部材がロック位置にあるサスペンション装置を示す正面断面図であり、(b)はエアサスペンションが排気状態にあり、ロック部材がロック位置にあるサスペンション装置を示す斜視図である。
【
図9】クレーン作業前のアウトリガ装置の操作準備に関するトラッククレーンのブロック図である。
【
図10】クレーン作業前のアウトリガ装置の操作準備に関する制御部による制御のフローを示す図である。
【
図11】クレーン作業前のアウトリガ装置の操作準備を行う際のサスペンション装置の動きを示す図である。
【
図12】クレーン作業終了後にトラッククレーンを走行可能な状態に設定する際のサスペンション装置の動きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0017】
[トラッククレーン]
図1に示すトラッククレーン1は、本発明に係る作業車両の一実施形態である。本実施形態においては、トラッククレーン1を用いて説明するが、作業車両としては、積卸用のクレーン装置と貨物積載用の荷台を備えた積載形トラッククレーン、車両に高所作業装置を搭載した高所作業車、および自走可能な自走式クレーン等、他の作業車両を適用することも可能である。
【0018】
以下の説明においては、トラッククレーン1の長手方向を前後方向と規定し、運転室11が配置されている側を前側とする。また、前側を向いた姿勢における右手側をトラッククレーン1の右側、左手側を左側と規定する。
【0019】
トラッククレーン1は、汎用のトラック10にクレーン装置20を架装したものである。但し、トラッククレーン1においては、汎用のトラック10に代えて、専用に構成されたトラックを用いることも可能である。トラック10は、運転室11と、フレーム12と、前輪13と、後輪14と、エンジン15と、フロントアウトリガ16と、リアアウトリガ17とを備えている。
【0020】
運転室11は、トラック10の前端部に位置している。フレーム12は運転室11から後方へ延びており、トラック10の車体を構成している。フレーム12は、左右に一対設けられている。
【0021】
フレーム12には複数の前輪13および後輪14が設けられている。具体的には、フレーム12には、車軸131、車軸132、車軸141、および車軸142が支持されており、車軸131の左右端部および車軸132の左右端部に前輪13が回転可能に取り付けられ、車軸141の左右端部および車軸142の左右端部に後輪14が回転可能に取り付けられている。前輪13および後輪14は、車輪の一例である。
【0022】
車軸131、132はフレーム12の前部に支持されており、車軸131は車軸132よりも前方に位置している。車軸141、142はフレーム12の後部に支持されており、車軸141は車軸142よりも前方に位置している。
【0023】
エンジン15は、フレーム12の前部に支持されている。トラック10は、エンジン15からの駆動力を複数の前輪13および後輪14に伝達することで走行可能に構成されている。
【0024】
フレーム12には、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17が設けられている。前後方向において、フロントアウトリガ16は前輪13と後輪14との間に位置しており、リアアウトリガ17は後輪14の後方に位置している。フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17は、アウトリガ装置の一例である。
【0025】
フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17は、接地してトラック10の車体を支持する接地位置と、トラック10の車体に収容される収容位置とに移動可能である。フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17は、例えばトラッククレーン1の作業時において、左右外側へ張り出すとともに上下方向へ伸長することにより接地して、トラック10の車体を支持する。
【0026】
クレーン装置20は、フレーム12に旋回可能に支持されている。クレーン装置20は、キャビン21と、ブーム22とを備えている。ブーム22は、キャビン21とともに旋回可能に構成されている。ブーム22は、伸縮可能かつ起伏可能に構成されている。ブーム22にはワイヤロープ23が架け渡されており、ワイヤロープ23の先端にはフック24が取り付けられている。
【0027】
[サスペンション装置]
図2に示すように、トラック10はサスペンション装置50を備えており、後輪14が取り付けられる車軸141、142は、サスペンション装置50を介してフレーム12に支持されている。サスペンション装置50は、車軸141の左右端部、および車軸142の左右端部に設けられている。つまり、サスペンション装置50は、車軸141の左右および車軸142の左右に複数設けられる後輪14に対応して、4箇所に設けられている。
【0028】
以下の説明においては、必要に応じて、車軸141の左端部に位置するサスペンション装置50をサスペンション装置50Aと称呼し、車軸141の右端部に位置するサスペンション装置50をサスペンション装置50Bと称呼し、車軸142の左端部に位置するサスペンション装置50をサスペンション装置50Cと称呼し、車軸142の右端部に位置するサスペンション装置50をサスペンション装置50Dと称呼する。サスペンション装置50A、50B、50C、50Dは、サスペンション装置50A、50Cと、サスペンション装置50B、50Dとが略左右対称に構成される以外は、同様の構成を有している。
【0029】
図3、
図4に示すように、サスペンション装置50は、車軸支持部51と、エアサスペンション52と、ショックアブソーバ53とを備えている。
【0030】
車軸支持部51は車軸141、142を支持する部分であり、板バネ511と、支持板512と、ブラケット513とを有している。板バネ511は前後方向に延出する板状のバネ部材であり、板バネ511の後端部511aはフレーム12のステー121に回動可能に支持されている。支持板512は板バネ511の下方に位置しており、ブラケット513により板バネ511と連結されている。車軸141、142は、支持板512と板バネ511との間において車軸支持部51に支持されている。
【0031】
エアサスペンション52は、板バネ511の前端部511bと、フレーム12との間に介装されている。エアサスペンション52は、エアが供給されることにより伸長し、エアが排気されることにより縮小するバネ部材であり、トラック10における車体の高低を調整するとともに、道路上の凸凹等による走行中の衝撃を吸収することが可能である。エアサスペンション52は、内部のエアが排気され縮小した排気状態(
図5、
図6に示す状態)と、内部にエアが供給され排気状態よりも伸長したレベリング状態(
図3、
図4に示す状態)とに切換可能である。
【0032】
エアサスペンション52は、例えばトラック10の走行時にレベリング状態に切り換えられる。レベリング状態に切り換えられたエアサスペンション52は、道路上の凸凹等に合わせて給排気が行われ、トラック10の車体が適切な高さとなるようにエアの給排気量が制御される。
【0033】
エアサスペンション52は、例えばトラッククレーン1のクレーン装置20による作業時において排気状態に切り換えられる。エアサスペンション52がレベリング状態から排気状態に切り換えられると、車軸支持部51の板バネ511が後端部511aを中心としてフレーム12に近づく側へ回動し、トラック10の車高が低下する。逆に、エアサスペンション52が排気状態からレベリング状態に切り換えられると、車軸支持部51の板バネ511が後端部511aを中心としてフレーム12から離れる側へ回動し、トラック10の車高が上昇する。
【0034】
ショックアブソーバ53は、車軸支持部51の支持板512と、フレーム12との間に介装されている。ショックアブソーバ53は、エアサスペンション52の衝撃を吸収したとき等における過剰な伸縮動作を抑制することが可能である。
【0035】
[ロック装置]
図4、
図6~
図8に示すように、トラック10は、ロック装置60を備えている。ロック装置60は、車軸141、142の左右に複数設けられたサスペンション装置50に対応して、4箇所に設けられている。ロック装置60は、ロック部材61と、ロックシリンダ62と、全縮センサ63と、全伸センサ64とを備えている。
【0036】
図8に示すように、ロック部材61は、フレーム12に回動可能に支持される支持部611と、サスペンション装置50の板バネ511に係止可能な係止部612とを有している。支持部611は、フレーム12に回動可能に支持される回動支点611aから下方に延出しており、係止部612は、支持部611の下端部から屈曲して水平方向に延出している。
【0037】
ロックシリンダ62はフレーム12とロック部材61との間に介装されており、上下方向に延びている。ロックシリンダ62は、伸縮可能に構成されている。
【0038】
ロックシリンダ62が伸長動作をすることによりロック部材61が回動して、ロック部材61の係止部612が板バネ511に近づく側へ移動する。
図7に示すように、エアサスペンション52が排気位置にあるとともに、ロックシリンダ62が最も伸長した位置である全伸位置に達した状態においては、板バネ511に近づく側へ移動した係止部612と板バネ511とが係止する。
【0039】
係止部612と板バネ511とが係止した状態では、板バネ511のフレーム12から離れる側への回動動作がロック部材61によって規制され、排気状態にあるエアサスペンション52の伸長動作は規制される。ロックシリンダ62が全伸位置に移動して、係止部612と板バネ511とが係止した状態のロック部材61の位置がロック位置(
図8において2点鎖線で示した位置)である。つまり、ロック部材61は、ロック位置にあるときに、排気状態にあるエアサスペンション52の伸長動作を規制する。
【0040】
ロックシリンダ62が縮小動作をすることによりロック部材61が回動して、ロック部材61の係止部612が板バネ511から離れる方向へ移動する。
図4、
図6に示すように、ロックシリンダ62が最も縮小した位置である全縮位置に達した状態では、板バネ511から離れる方向へ移動した係止部612は板バネ511から離間する。
【0041】
係止部612が板バネ511から離間した状態では、板バネ511の後端部511aを中心とした回動動作は、ロック部材61によって規制されず、排気状態にあるエアサスペンション52の伸長動作は許容される。ロックシリンダ62が全縮位置に移動して、係止部612が板バネ511から離間した状態のロック部材61の位置がロック解除位置(
図8において実線で示した位置)である。つまり、ロック部材61は、ロック解除位置にあるときに、排気状態にあるエアサスペンション52の伸長動作を許容する。
【0042】
このように、ロックシリンダ62は、伸縮することにより、ロック部材61をロック位置とロック解除位置との間で移動させる。また、ロック部材61は、ロックシリンダ62が伸長したときにロック位置に移動し、ロックシリンダ62が縮小したときにロック解除位置に移動する。
【0043】
全縮センサ63は、ロックシリンダ62の上端部に固定されており、ロックシリンダ62が縮小して全縮位置に移動したことを検出する。全伸センサ64は、ロックシリンダ62の全縮センサ63よりも下方に固定されており、ロックシリンダ62が伸長して全伸位置に移動したことを検出する。この場合、ロックシリンダ62のピストンには磁石が固定されており、例えば
図8に示すように、ピストンが上方へ移動してロックシリンダ62が全縮位置に到達すると、ピストンの磁石が全縮センサ63に近接して、全縮センサ63が磁石を検出することにより、ロックシリンダ62の全縮位置を検出する。また、ピストンが下方へ移動してロックシリンダ62が全伸位置に到達すると、ピストンの磁石が全伸センサ64に近接して、全伸センサ64が磁石を検出することにより、ロックシリンダ62の全伸位置を検出する。
【0044】
ロックシリンダ62が全伸位置に移動すると、ロック部材61はロック位置に移動するため、全伸センサ64がロックシリンダ62の全伸位置を検出することにより、ロック部材61がロック位置へ移動したことを検出可能である。また、ロックシリンダ62が全縮位置に移動すると、ロック部材61はロック解除位置に移動するため、全縮センサ63がロックシリンダ62の全縮位置を検出することにより、ロック部材61がロック解除位置へ移動したことを検出可能である。
【0045】
このように、全伸センサ64は、ロックシリンダ62の伸長を検出するとともに、ロック部材61のロック位置を検出する検出手段であり、全縮センサ63は、ロックシリンダ62の縮小を検出するとともに、ロック部材61のロック解除位置を検出する検出手段である。
【0046】
なお、本実施形態においては、ロックシリンダ62が伸長したときにロック部材61がロック位置に移動し、ロックシリンダ62が縮小したときにロック部材61がロック解除位置に移動するように構成したが、ロックシリンダ62が縮小したときにロック部材61がロック位置に移動し、ロックシリンダ62が伸長したときにロック部材61がロック解除位置に移動するように構成することもできる。
【0047】
この場合、全伸センサ64は、ロックシリンダ62の伸長を検出するとともに、ロック部材61のロック解除位置を検出する検出手段となり、全縮センサ63は、ロックシリンダ62の縮小を検出するとともに、ロック部材61のロック位置を検出する検出手段となる。
【0048】
[制御部]
図9に示すように、トラッククレーン1は、エアサスペンション52およびロックシリンダ62を駆動するエア回路91と、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17を駆動する油圧回路92とを備えている。また、トラッククレーン1は、少なくともエアサスペンション52、ロックシリンダ62、ならびにフロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の動作を制御する制御部90を備えている。制御部90は、エア回路91を制御することにより、エアサスペンション52およびロックシリンダ62の動作を制御する。また、制御部90は、油圧回路92を制御することにより、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の動作を制御する。
【0049】
以下の説明においては、必要に応じて、サスペンション装置50Aに設けられるエアサスペンション52、ロックシリンダ62、全縮センサ63、および全伸センサ64を、それぞれ第1エアサスペンション52A、第1ロックシリンダ62A、第1全縮センサ63A、および第1全伸センサ64Aと称呼し、サスペンション装置50Bに設けられるエアサスペンション52、ロックシリンダ62、全縮センサ63、および全伸センサ64を、それぞれ第2エアサスペンション52B、第2ロックシリンダ62B、第2全縮センサ63B、および第2全伸センサ64Bと称呼する。
【0050】
また、必要に応じて、サスペンション装置50Cに設けられるエアサスペンション52、ロックシリンダ62、全縮センサ63、および全伸センサ64を、それぞれ第3エアサスペンション52C、第3ロックシリンダ62C、第3全縮センサ63C、および第3全伸センサ64Cと称呼し、サスペンション装置50Dに設けられるエアサスペンション52、ロックシリンダ62、全縮センサ63、および全伸センサ64を、それぞれ第4エアサスペンション52D、第4ロックシリンダ62D、第4全縮センサ63D、および第4全伸センサ64Dと称呼する。
【0051】
制御部90には、エア回路91を構成するエアバルブ等が接続されている。エア回路91には、第1エアサスペンション52A、第2エアサスペンション52B、第3エアサスペンション52C、第4エアサスペンション52D、第1ロックシリンダ62A、第2ロックシリンダ62B、第3ロックシリンダ62C、および第4ロックシリンダ62Dが接続されている。
【0052】
第1エアサスペンション52Aと第2エアサスペンション52B、および第3エアサスペンション52Cと第4エアサスペンション52Dとは、供給されたエアが連通可能なように接続されており、互いにエアを連通させることで、トラック10における車体の高低を適宜調整することが可能となっている。
【0053】
制御部90には、第1全縮センサ63A、第1全伸センサ64A、第2全縮センサ63B、第2全伸センサ64B、第3全縮センサ63C、第3全伸センサ64C、第4全縮センサ63D、および第4全伸センサ64Dが接続されている。制御部90には、油圧回路92を構成する油圧バルブ等が接続されている。油圧回路92には、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17が接続されている。
【0054】
トラッククレーン1は、トラック10のシフトレバー位置がニュートラル位置(N位置)にあることを検出するシフト位置センサ71と、トラック10のパーキングレバーがパーキングブレーキの作動位置にあることを検出するパーキングセンサ72と、エアサスペンション52のレベリング状態と排気状態とを切り換えるためのサスペンション切換スイッチ73と、ロック部材61のロック位置とロック解除位置とを切り換えるためのサスペンションロックスイッチ74と、全縮センサ63および全伸センサ64の故障時等に操作する非常スイッチ75とを備えている。
【0055】
シフト位置センサ71、パーキングセンサ72、サスペンション切換スイッチ73、サスペンションロックスイッチ74、および非常スイッチ75は制御部90に接続されており、シフト位置センサ71およびパーキングセンサ72の検出結果、ならびにサスペンション切換スイッチ73、サスペンションロックスイッチ74、および非常スイッチ75の操作状態が制御部90に入力可能となっている。
【0056】
また、トラッククレーン1は、パーキングブレーキの作動時に点灯するパーキングインジケータ76と、エアサスペンション52が排気状態にあるときに点灯するサスダウンインジケータ77と、ロック部材61がロック位置にあるときに点灯するサスロックインジケータ78とを備えている。
【0057】
パーキングインジケータ76、サスダウンインジケータ77、およびサスロックインジケータ78は制御部90に接続されており、制御部90は、パーキングインジケータ76、サスダウンインジケータ77、およびサスロックインジケータ78の点灯、点滅および消灯を制御することが可能である。
【0058】
サスペンション切換スイッチ73、サスペンションロックスイッチ74、非常スイッチ75、パーキングインジケータ76、サスダウンインジケータ77、およびサスロックインジケータ78は、例えば運転室11に配置されている。
【0059】
[制御部によるサスペンション装置、ロック装置、およびアウトリガ装置の制御]
次に、制御部90によるサスペンション装置50、ロック装置60、ならびにアウトリガ装置であるフロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の制御について説明する。
【0060】
(クレーン作業前のアウトリガ装置の操作準備における制御)
トラッククレーン1においては、クレーン装置20によるクレーン作業を行う前に、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17を操作して収容位置から接地位置へ移動させる。この場合、制御部90は、レベリング状態にあるエアサスペンション52が排気状態に切り換わり、排気状態に切り換わったエアサスペンション52がロック部材61によってロックされた状態となるまでフロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の接地位置への移動を規制する制御を、アウトリガ装置の操作準備として、サスペンション装置50、ロック装置60、およびフロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17に対して行う。クレーン作業前のアウトリガ装置の操作準備は、以下のように行われる。
【0061】
まず、トラッククレーン1の使用者は、走行状態にあるトラッククレーン1を停車させる。
図11(a)に示すように、走行していたトラッククレーン1が停車した状態においては、エアサスペンション52はレベリング状態にあり、ロック部材61はロック解除位置にあり、ロックシリンダ62は全縮位置にあり、全伸センサ64はロックシリンダ62の全伸位置を検出しておらず、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17は収容位置にある。また、パーキングインジケータ76、サスダウンインジケータ77、およびサスロックインジケータ78は消灯している。
図10に示すように、トラッククレーン1の使用者は、トラッククレーン1を停車させた後、パーキングレバーを操作してパーキングブレーキを作動させる(ステップS01)。
【0062】
制御部90は、アウトリガ装置の操作準備が開始されると、パーキングブレーキが作動しているか否かの判定を行う(ステップS02)。制御部90は、ステップS02において、パーキングブレーキが作動していないと判定したときには(ステップS02;N)、エアサスペンション52のレベリング状態と排気状態とを切り換えるサスペンション切換スイッチ73の操作を受け付けず、ロック部材61のロック位置とロック解除位置とを切り換えるサスペンションロックスイッチ74の操作を受け付けない(ステップS11)。制御部90は、パーキングブレーキが作動していると判定するまで、ステップS02を繰り返し実行する。
【0063】
トラッククレーン1の使用者によってパーキングレバーが操作されて、パーキングブレーキが作動すると、パーキングブレーキが作動していることをパーキングセンサ72が検出し、パーキングセンサ72の検出結果が制御部90に入力される。
【0064】
制御部90は、パーキングブレーキが作動している旨のパーキングセンサ72の検出結果が入力されると、ステップS02において、パーキングブレーキが作動していると判定する(ステップS02;Y)。制御部90は、ステップS02において、パーキングブレーキが作動していると判定した後、パーキングインジケータ76を点灯させる。
【0065】
トラッククレーン1の使用者は、パーキングレバーを操作した後に、トラック10のシフトレバーをニュートラル位置(N位置)に操作する(ステップS03)。
【0066】
制御部90は、パーキングブレーキが作動していると判定した後、トラック10のシフトレバーがニュートラル位置(N位置)にあるか否かの判定を行う(ステップS04)。制御部90は、ステップS04において、トラック10のシフトレバーがニュートラル位置にないと判定したときには(ステップS04;N)、エアサスペンション52のレベリング状態と排気状態とを切り換えるサスペンション切換スイッチ73の操作を受け付けず、ロック部材61のロック位置とロック解除位置とを切り換えるサスペンションロックスイッチ74の操作を受け付けない(ステップS12)。制御部90は、トラック10のシフトレバーがニュートラル位置にあると判定するまで、ステップS04を繰り返し実行する。
【0067】
トラッククレーン1の使用者によってシフトレバーがニュートラル位置に操作されると、シフトレバーがニュートラル位置にあることをシフト位置センサ71が検出し、シフト位置センサ71の検出結果が制御部90に入力される。
【0068】
制御部90は、シフトレバーがニュートラル位置にある旨のシフト位置センサ71の検出結果が入力されると、ステップS04において、トラック10のシフトレバーがニュートラル位置にあると判定する(ステップS04;Y)。制御部90は、トラック10のシフトレバーがニュートラル位置にあると判定した後、サスペンション切換スイッチ73の操作の受け付けを可能とする。
【0069】
トラッククレーン1の使用者は、パーキングレバーを操作してパーキングインジケータ76が点灯したことを確認するとともに、トラック10のシフトレバーをニュートラル位置に操作した後、サスペンション切換スイッチ73をエアサスペンション52が排気状態となる側へ操作する(ステップS05)。制御部90は、サスペンション切換スイッチ73が操作されると、エア回路91を制御して、エアサスペンション52に供給されていたエアの排気を開始する(ステップS06)
【0070】
制御部90は、エアサスペンション52の排気を開始した後、排気を開始してから所定時間が経過したか否かの判定を行う(ステップS07)。制御部90は、ステップS07において、所定時間が経過していないと判定したときには(ステップS07;N)、ロック部材61のロック位置とロック解除位置とを切り換えるサスペンションロックスイッチ74の操作を受け付けない(ステップS13)。制御部90は、所定時間が経過したと判定するまで、ステップS07を繰り返し実行する。なお、本実施形態においては、排気を開始してから経過した所定時間は、15秒に設定している。
【0071】
エアサスペンション52は、サスペンション切換スイッチ73が操作されてから所定時間が経過するまでの間に、全てのエアが排気されて排気状態に切り換わるように構成されている。
【0072】
図11(b)に示すように、エアサスペンション52の排気が開始されると、エアサスペンション52が縮小して、車軸支持部51の板バネ511がフレーム12に近づく側へ回動し、トラック10の車高が低下する。
【0073】
制御部90は、ステップS07において、排気を開始してから所定時間が経過したと判定すると(ステップS07;Y)、サスダウンインジケータ77を点灯させ、サスペンションロックスイッチ74の操作の受け付けを可能とする。この場合、サスペンション切換スイッチ73が操作されてから、所定時間が経過したと判定するまで点滅させていても良い。
【0074】
また、制御部90は、排気を開始してから所定時間が経過すると、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の収容位置から接地位置への移動操作の受け付けを不可とする。つまり、制御部90は、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、全伸センサ64がロックシリンダ62の全伸位置を検出しておらず、ロック部材61のロック位置を検出していない状態において、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の接地位置への移動を規制する。
【0075】
トラッククレーン1の使用者は、サスダウンインジケータ77が点灯したことを確認すると、サスペンションロックスイッチ74をロック部材61がロック位置へ移動する側へ操作する(ステップS08)。制御部90は、サスペンションロックスイッチ74が操作されると、エア回路91を制御してロックシリンダ62を伸長させ、ロック部材61をロック解除位置からロック位置へ移動させる。制御部90は、サスペンションロックスイッチ74が操作された後、伸長するロックシリンダ62が全伸位置に達したか否かの判定を行う(ステップS09)。
【0076】
トラッククレーン1の使用者によってサスペンションロックスイッチ74が操作されて、ロックシリンダ62が伸長して全伸位置に移動すると、ロックシリンダ62が全伸位置に移動したことを全伸センサ64が検出し、全伸センサ64の検出結果が制御部90に入力される。
【0077】
制御部90は、ロックシリンダ62が全伸位置に移動した旨の全伸センサ64の検出結果が入力されると、ステップS09において、ロックシリンダ62が全伸位置に移動したと判定する(ステップS09;Y)。また、ロックシリンダ62が全伸位置に移動するとロック部材61はロック位置へ移動するため、制御部90は、ロックシリンダ62が全伸位置に移動した旨の全伸センサ64の検出結果が入力されると、ロック部材61のロック位置への移動が検出されたと判定する。
【0078】
このように、制御部90が、全伸センサ64がロックシリンダ62の伸長による全伸位置への移動を検出したときに、ロック部材61のロック位置への移動が検出されたと判定することで、ロック部材61がロック位置にあることを容易かつ確実に把握することが可能となっている。
【0079】
図11(c)に示すように、ロックシリンダ62が伸長して全伸位置に移動すると、ロック部材61はロック位置へ移動して、ロック部材61の係止部612と板バネ511とが係止し、排気状態にあるエアサスペンション52の伸長動作が規制される。
【0080】
制御部90は、4箇所に配置された第1ロックシリンダ62A、第2ロックシリンダ62B、第3ロックシリンダ62C、および第4ロックシリンダ62Dの全てについて全伸位置に移動したと判定すると、サスペンション装置50A、50B、50C、50Dにおける全てのエアサスペンション52の伸長動作が規制されたとして、サスロックインジケータ78を点灯させ、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の収容位置から接地位置への移動操作の受け付けを許容する。
【0081】
つまり、制御部90は、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、全伸センサ64がロックシリンダ62の全伸位置を検出していて、ロック部材61のロック位置を検出している状態において、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の接地位置への移動を許容する。
【0082】
特に、制御部90は、第1全伸センサ64A、第2全伸センサ64B、第3全伸センサ64C、およびが第4全伸センサ64Dの全てがロック部材61のロック位置を検出した状態において、サスロックインジケータ78を点灯させ、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の接地位置への移動を許容する。この場合、サスペンションロックスイッチ74をロック部材61がロック位置へ移動する側へ操作してから、全ての全伸センサ64がロック部材61のロック位置を検出するまで、サスロックインジケータを点滅させても良い。
【0083】
また、制御部90は、サスロックインジケータ78を点灯している間は、サスペンション切換スイッチ73の操作の受け付けを不可とする。つまり、制御部90は、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、全伸センサ64がロック部材61のロック位置を検出している状態において、エアサスペンション52の排気状態からレベリング状態への切換動作を規制する。
【0084】
制御部90がフロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の移動操作の受け付けを許容することで、アウトリガ装置の操作準備が完了する。
【0085】
トラッククレーン1の使用者は、サスロックインジケータ78が点灯したことを確認すると、エンジン15のPTO軸をオンにして油圧回路92の油圧ポンプを作動させ、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17を収容位置から接地位置へ移動させる。フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の収容位置から接地位置への移動は、例えば運転室11およびキャビン21の外部での操作、またはキャビン21内での操作により行うことができる。
【0086】
図11(d)に示すように、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17が収容位置から接地位置へ移動すると、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17が接地して、トラック10の車体が上昇し、前輪13および後輪14が地面から離間する。
【0087】
一方、制御部90は、ステップS09において、第1ロックシリンダ62A、第2ロックシリンダ62B、第3ロックシリンダ62C、および第4ロックシリンダ62Dの全てについて、全伸位置に移動したと判定するまでの間、つまり、第1ロックシリンダ62A、第2ロックシリンダ62B、第3ロックシリンダ62C、および第4ロックシリンダ62Dの少なくとも一つについて全伸位置に移動していないと判定した場合は(ステップS09;N)、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の移動操作の受け付けを不可とする(ステップS14)。
【0088】
また、制御部90は、サスペンションロックスイッチ74の操作後、ロックシリンダ62が全伸位置に移動するのに十分な時間が経過しても、全伸位置に移動したことを全てのロックシリンダ62について判定していないときには、警報を発報して、サスペンションロックスイッチ74の再度の操作、および/または全伸センサ64の作動状態の確認を、トラッククレーン1の使用者に促す(ステップS15)。なお、本実施形態においては、サスペンションロックスイッチ74の操作後、警報を発報するまでの時間は、10秒に設定している。
【0089】
このように、制御部90は、アウトリガ装置の操作準備において、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、全伸センサ64がロック部材61のロック位置を検出していない状態において、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の接地位置への移動を規制し、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、全伸センサ64がロック部材61のロック位置を検出している状態において、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の接地位置への移動を許容する。
【0090】
フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17が接地位置へ移動して後輪14が地面から離間した状態においては、車軸支持部51とフレーム12との間に介装されるエアサスペンション52に、車軸支持部51、車軸141、142、および後輪14の重量からなるバネ下荷重がかかる。従って、ロック部材61によりエアサスペンション52の伸長動作が規制されていない状態で、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17が接地位置へ移動すると、排気状態にあるエアサスペンション52は、バネ下荷重により一気に伸長して、損傷または劣化するおそれがある。
【0091】
しかし、トラッククレーン1においては、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の接地位置への移動が許容されるのは、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、ロック部材61がロック位置にあるときである。従って、エアサスペンション52が排気状態にあるときに、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17が接地位置へ移動しても、エアサスペンション52の伸長動作はロック部材61によって規制され、エアサスペンション52がバネ下荷重によって一気に伸長して損傷または劣化することを抑制可能である。
【0092】
特に、制御部90は、全ての全伸センサ64がロック部材61のロック位置を検出した状態において、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の収容位置から接地位置への移動を許容するため、エアサスペンション52が排気状態にあるときに、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17を接地位置へ移動した場合に、全てのエアサスペンション52について損傷または劣化することを抑制可能である。
【0093】
なお、本実施形態においては、ロックシリンダ62が伸長したときにロック部材61がロック位置に移動するため、制御部90は、ロックシリンダ62の伸長による全伸位置への移動を検出したときに、ロック部材61のロック位置への移動が検出されたと判定しているが、ロックシリンダ62が縮小したときにロック部材61がロック位置に移動する構成の場合は、制御部90は、ロックシリンダ62の縮小による全縮位置への移動を検出したときに、ロック部材61のロック位置への移動が検出されたと判定することができる。
【0094】
(クレーン作業終了後における制御)
また、トラッククレーン1においては、クレーン装置20によるクレーン作業の終了後に、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17を操作して接地位置から収容位置へ移動させるとともに、エアサスペンション52を排気状態からレベリング状態へ切り換えて、トラッククレーン1を走行可能な状態に設定する。
【0095】
クレーン装置20によるクレーン作業の終了後にトラッククレーン1を走行可能な状態に設定する場合は、上述の制御部90によるアウトリガ装置の操作準備とは逆の制御を行う。
【0096】
具体的には、トラッククレーン1の使用者は、サスダウンインジケータ77およびサスロックインジケータ78が点灯していることを確認した後に、クレーン装置20によるクレーン作業を終了し、
図12(a)に示すように、フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17を操作して収容位置から接地位置へ移動させ、エンジン15のPTO軸をオフにする。フロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の接地位置から収容位置への移動は、例えば運転室11およびキャビン21の外部での操作、またはキャビン21内での操作により行うことができる。
【0097】
次に、トラッククレーン1の使用者は、サスダウンインジケータ77およびサスロックインジケータ78が点灯していることを確認した後に、サスペンションロックスイッチ74をロック部材61がロック解除位置へ移動する側へ操作する。
図12(b)に示すように、サスペンションロックスイッチ74を操作すると、ロック部材61がロック位置からロック解除位置へ移動して、エアサスペンション52の伸長が許容される。
【0098】
この場合、制御部90は、全縮センサ63がロックシリンダ62の縮小による全縮位置への移動を検出したときに、ロック部材61のロック位置からロック解除位置への移動が検出されたと判定する。このように、制御部90が、全縮センサ63がロックシリンダ62の縮小による全縮位置への移動を検出したときに、ロック部材61のロック解除位置への移動が検出されたと判定することで、ロック部材61がロック解除位置にあることを容易かつ確実に把握することが可能となっている。
【0099】
制御部90は、第1全縮センサ63A、第2全縮センサ63B、第3全縮センサ63C、および第4全縮センサ63Dの全てがロック部材61のロック解除位置を検出すると、サスロックインジケータ78を消灯する。制御部90は、サスロックインジケータ78が消灯したときに、サスペンション切換スイッチ73の操作の受け付けを可能とする。この場合、サスペンションロックスイッチ74をロック部材61がロック解除位置へ移動する側へ操作してから、全ての全縮センサ63がロック部材61のロック解除位置を検出するまでサスロックインジケータ78を点滅させても良い。
【0100】
つまり、制御部90は、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、全伸センサ64がロック部材61のロック位置を検出している状態において、エアサスペンション52の排気状態からレベリング状態への切換動作を規制しているが、全縮センサ63がロック部材61のロック解除位置を検出することにより、エアサスペンション52の排気状態からレベリング状態への切換動作を許容する。
【0101】
特に、制御部90は、第1全縮センサ63A、第2全縮センサ63B、第3全縮センサ63C、および第4全縮センサ63Dの少なくとも一つがロック部材61のロック位置を検出している状態において、エアサスペンション52の排気状態からレベリング状態への切換動作を規制しており、全ての全縮センサ63がロック部材61のロック解除位置を検出することにより、エアサスペンション52の排気状態からレベリング状態への切換動作を許容する。
【0102】
トラッククレーン1の使用者は、サスロックインジケータ78の消灯を確認した後、サスペンション切換スイッチ73をエアサスペンション52がレベリング状態となる側へ操作する。
図12(c)に示すように、サスペンション切換スイッチ73が操作されると、エアサスペンション52が伸長して、車軸支持部51の板バネ511がフレーム12から離れる側へ回動し、トラック10の車高が上昇する。エアサスペンション52がレベリング状態になると、サスダウンインジケータ77が消灯する。この場合、サスペンション切換スイッチ73をエアサスペンション52がレベリング状態となる側へ操作してから、制御部90が所定時間が経過したと判定したらサスダウンインジケータ77を消灯しても良い。また、サスペンション切換スイッチ73をエアサスペンション52がレベリング状態となる側へ操作してから、サスダウンインジケータ77が消灯するまで点滅させていても良い。
【0103】
トラッククレーン1の使用者は、サスダウンインジケータ77およびサスロックインジケータ78の消灯を確認した後、パーキングレバーを操作してパーキングブレーキをオフするとともに、トラック10のシフトレバーをドライブ位置に操作して、トラッククレーン1の走行を開始する。なお、パーキングブレーキをオフすることにより、パーキングインジケータ76は消灯する。
【0104】
このように、制御部90は、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、全伸センサ64がロック部材61のロック位置を検出している状態において、エアサスペンション52の排気状態からレベリング状態への切換動作を規制している。ロック部材61がロック位置にあるときにはロック部材61が板バネ511に係止しているため、ロック部材61がロック位置にある状態でエアサスペンション52が伸長してレベリング状態へ切り換わると、エアサスペンション52からの押圧力によりロック部材61が変形して損傷または劣化するおそれがある。
【0105】
しかし、制御部90は、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、全伸センサ64がロック部材61のロック位置を検出している状態では、エアサスペンション52のレベリング状態への切換動作を規制しているため、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、ロック部材61がロック位置にある状態において、エアサスペンション52が排気状態から伸長して、ロック部材61が損傷または劣化することを抑制可能である。
【0106】
特に、制御部90は、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、第1全縮センサ63A、第2全縮センサ63B、第3全縮センサ63C、および第4全縮センサ63Dの少なくとも一つがロック部材61のロック位置を検出している状態において、エアサスペンション52の排気状態からレベリング状態への切換動作を規制しているため、エアサスペンション52が排気状態にあるとともに、少なくとも一つのロック部材61がロック位置にある状態において、ロック部材61が損傷または劣化することを抑制可能である。
【0107】
なお、本実施形態においては、ロックシリンダ62が縮小したときにロック部材61がロック解除位置に移動するため、制御部90は、ロックシリンダ62の縮小による全縮位置への移動を検出したときに、ロック部材61のロック解除位置への移動が検出されたと判定しているが、ロックシリンダ62が伸長したときにロック部材61がロック解除位置に移動する構成の場合は、制御部90は、ロックシリンダ62の伸長による全伸位置への移動を検出したときに、ロック部材61のロック解除位置への移動が検出されたと判定することができる。
【0108】
なお、全伸センサ64および全縮センサ63の故障時等によって、制御部90によるサスペンション装置50、ロック装置60、ならびにフロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の制御を適正に行うことができない場合は、非常スイッチ75を操作することで、制御部90の制御にかかわらず、サスペンション装置50、ロック装置60、ならびにフロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17を操作することが可能となる。
【0109】
非常スイッチ75としては、例えばモーメンタリスイッチを用いることができる。モーメンタリスイッチを非常スイッチ75として用いることにより、非常スイッチ75を操作している間だけ、制御部90の制御にかかわらず、サスペンション装置50、ロック装置60、ならびにフロントアウトリガ16およびリアアウトリガ17の操作を行うことが可能なように構成することができる。
【0110】
また、制御部90は、トラック10のシフトレバーがニュートラル位置にあり、パーキングブレーキが作動しており、サスペンション切換スイッチ73がエアサスペンション52が排気状態となる側へ操作された状態にあるときに、パーキングレバーを操作してパーキングブレーキの作動を停止させる等の、トラッククレーン1の走行に向けた操作等が行われたときには、警報を発することができる。
【0111】
サスペンション切換スイッチ73が操作されてエアサスペンション52が排気状態にあるときにトラッククレーン1が走行すると、トラッククレーン1の重心バランスが崩れて走行時および制動時における斜行や部品の損傷の発生の原因となり得るが、このように警報を発することで、走行時および制動時における斜行や部品の損傷の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 トラッククレーン
10 トラック
12 フレーム
13 前輪
14 後輪
16 フロントアウトリガ
17 リアアウトリガ
20 クレーン装置
50 サスペンション装置
51 車軸支持部
52 エアサスペンション
60 ロック装置
61 ロック部材
62 ロックシリンダ
63 線縮センサ
64 全伸センサ
90 制御部
131、132 (前輪の)車軸
141、142 (後輪の)車軸