(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115896
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】光学モジュール、画像投影用光学エンジン及びグラスディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240820BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240820BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240820BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G02B26/10 Z
G02B26/08 E
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021791
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】福澤 英明
(72)【発明者】
【氏名】水野 友人
(72)【発明者】
【氏名】小巻 壮
(72)【発明者】
【氏名】アルダラン・ヘシュマティ
(72)【発明者】
【氏名】林 杰曙
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
2H199
【Fターム(参考)】
2H045AB01
2H045AB02
2H045AB13
2H045AB16
2H045AB54
2H045AB73
2H045BA12
2H045BA24
2H045CA82
2H045CA97
2H045DA02
2H045DA04
2H141MA12
2H141MB24
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD20
2H141MD23
2H141MD24
2H141ME09
2H141ME11
2H141MF05
2H141MG04
2H141MZ06
2H141MZ11
2H141MZ13
2H141MZ16
2H141MZ25
2H141MZ27
2H199CA04
2H199CA29
2H199CA32
2H199CA46
2H199CA47
(57)【要約】
【課題】ミラーで反射された各色のレーザー光が画像投影面上の投射位置のずれに起因した画像品質の低下を補償可能な光学モジュールを提供することである。
【解決手段】本発明の光学モジュール30は、第1基板に複数のレーザー発光素子が設けられたレーザー光源部と、第1基板と一体にされている第2基板に光走査ミラー素子が設けられたミラー部と、レーザー光の強度を個別に独立に制御可能なレーザー駆動制御部と、光走査ミラー素子の揺動を制御するミラー駆動制御部と、前記光走査ミラー素子の各揺動位置と、前記複数のレーザー発光素子のそれぞれから発射されたレーザー光ごとの画像表示面上の投射位置との対応関係の配列であるルックアップテーブルを格納するメモリと、レーザー駆動制御部と前記ミラー駆動制御部とを制御するシステム制御部と、を備え、システム制御部は、前記ルックアップテーブルに基づいて前記ミラー駆動制御部を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示面にレーザー光を投射して画像を表示するために用いることができる光学モジュールであって、
第1基板の主面に、ピーク波長が異なる複数のレーザー光のそれぞれを発光する複数のレーザー発光素子が設けられたレーザー光源部と、
前記第1基板と一体にされている第2基板の主面に光走査ミラー素子が設けられたミラー部と、
前記複数のレーザー発光素子から出射されるレーザー光の強度を個別に独立に制御可能なレーザー駆動制御部と、
前記光走査ミラー素子の揺動を制御するミラー駆動制御部と、
前記光走査ミラー素子の各揺動位置と、前記複数のレーザー発光素子のそれぞれから発射されたレーザー光ごとの画像表示面上の投射位置との対応関係の配列であるルックアップテーブルを格納するメモリと、
前記レーザー駆動制御部と前記ミラー駆動制御部とを制御するシステム制御部と、を備え、
前記システム制御部は、前記ルックアップテーブルに基づいて前記ミラー駆動制御部を制御する、光学モジュール。
【請求項2】
前記システム制御部は、画像表示面に表示したい画像の各画素の画素値である画像データと、前記ルックアップテーブルとから、前記光走査ミラー素子の各揺動位置ごとに前記複数のレーザー発光素子のそれぞれのレーザー発光素子から出射されるレーザー光の強度比である光強度マップテーブルを作成し、前記光強度マップテーブルに基づいて前記画像を構築するように、前記レーザー駆動制御部と前記ミラー駆動制御部とを制御する、請求項1に記載の光学モジュール。
【請求項3】
前記第1基板と前記第2基板とは金属接合層を介して接合されている、請求項1又は2に記載の光学モジュール。
【請求項4】
前記複数のレーザー発光素子は、380nm以上、800nm未満の波長範囲の可視光域レーザー光を出射する、請求項1又は2に記載の光学モジュール。
【請求項5】
前記光走査ミラー素子はMEMSミラーである、請求項1又は2に記載の光学モジュール。
【請求項6】
前記光走査ミラー素子の鏡面部の表面は、中心点を通る断面が放物線状を成す凹面鏡である、請求項1又は2に記載の光学モジュール。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の光学モジュールと、
前記第1基板と前記第2基板とを載置する1つの共通基板と、
前記共通基板に形成され、前記レーザー発光素子および前記光走査ミラー素子を制御する集積回路と、を有する、画像投影用光学エンジン。
【請求項8】
請求項7に記載の画像投影用光学エンジンと、
眼鏡状のフレームと、を有し、
前記画像投影用光学エンジンは、前記フレームのテンプル部に配される、グラスディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学モジュール、画像投影用光学エンジン及びグラスディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
AR(Augmented Reality:拡張現実)グラス、VR(Virtual Reality:仮想現実)グラスは小型のウェアラブルデバイスとして期待されている。このようなデバイスにおいて、フルカラーの可視光を発光する発光素子は、高品質な画像を描画するための中心的な素子の1つである。かかるデバイスにおいては、発光素子が例えば可視光を表現するRGBの3色の各々の強度を独立に高速に変調し、所望の色で動画を表現している。
【0003】
このような発光素子として、特許文献1には可視光のレーザーを導波路に入射して、各色のレーザーチップの出射強度を電流により制御することによりカラーの動画を出射する発光素子が開示されている。また、特許文献2には、光ファイバを介して電気光学効果を有する基板に形成された導波路を有する外部変調器にレーザー光を入射して、外部変調器によりRGBの3色の各々の強度を独立に変調する変調器が開示されている。
【0004】
ARグラス、VRグラスのようなウェアラブルデバイスにおいては、発光モジュールは通常の眼鏡型のサイズに各機能が収まるように小型化されることが普及に対するカギとなっている。こうしたウェアラブルデバイスに適用可能な小型化された発光モジュールは、発光素子から出射されたレーザー光を、導波路などを介することなくミラーによって画像表示面(画像投影面)に向けて直接反射させる構成が考えられている。例えば、特許文献3では、1つの共通の基板上に、レーザー発光素子とミラーとを搭載した光学モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-86976号公報
【特許文献2】特許第6728596号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/0110331号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示された光学モジュールは、1つの共通基板上にレーザー発光素子とミラーと設け、このミラーを基板に形成した傾斜面に固着させた構成であるため、光学モジュールの製造後にミラーに入射するレーザー光の光軸位置を調整することはできなかった。このため、光学モジュールをデバイスに搭載する際に、レーザー光を画像表示面(画像投影面)の所定位置に出射させるために、光学モジュールの搭載位置の調整が煩雑になるという課題があった。
【0007】
また、光学モジュールにRGBなどの複数のレーザー発光素子が用いられる場合、各レーザー発光素子とミラーとの相対位置が互いに異なるために、ミラーで反射された各色のレーザー光が画像投影面上に投射される位置がずれてしまう。この投射位置のずれは小型になるほど画像の鮮明さを低下させてしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、レーザー発光素子および光走査ミラーをそれぞれ基板に搭載した後に光軸調整を行うことが可能であり、かつ、ミラーで反射された各色のレーザー光が画像投影面上の投射位置のずれに起因した画像品質の低下を補償可能な光学モジュール、画像投影用光学エンジン及びグラスディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
【0010】
本発明の態様1は、画像表示面にレーザー光を投射して画像を表示するために用いることができる光学モジュールであって、第1基板の主面に、ピーク波長が異なる複数のレーザー光のそれぞれを発光する複数のレーザー発光素子が設けられたレーザー光源部と、前記第1基板と一体にされている第2基板の主面に光走査ミラー素子が設けられたミラー部と、前記複数のレーザー発光素子から出射されるレーザー光の強度を個別に独立に制御可能なレーザー駆動制御部と、前記光走査ミラー素子の揺動を制御するミラー駆動制御部と、前記光走査ミラー素子の各揺動位置と、前記複数のレーザー発光素子のそれぞれから発射されたレーザー光ごとの画像表示面上の投射位置との対応関係の配列であるルックアップテーブルを格納するメモリと、前記レーザー駆動制御部と前記ミラー駆動制御部とを制御するシステム制御部と、を備え、前記システム制御部は、前記ルックアップテーブルに基づいて前記ミラー駆動制御部を制御する、光学モジュールである。
【0011】
本発明の態様2は、態様1の光学モジュールにおいて、前記システム制御部は、画像表示面に表示したい画像の各画素の画素値である画像データと、前記ルックアップテーブルとから、前記光走査ミラー素子の各揺動位置ごとに前記複数のレーザー発光素子のそれぞれのレーザー発光素子から出射されるレーザー光の強度比である光強度マップテーブルを作成し、前記光強度マップテーブルに基づいて前記画像を構築するように、前記レーザー駆動制御部と前記ミラー駆動制御部とを制御する。
【0012】
本発明の態様3は、態様1又は2の光学モジュールにおいて、前記第1基板と前記第2基板とは金属接合層を介して接合されている。
【0013】
本発明の態様4は、態様1~3のいずれか一つの光学モジュールにおいて、前記複数のレーザー発光素子は、380nm以上、800nm未満の波長範囲の可視光域レーザー光を出射する。
【0014】
本発明の態様5は、態様1~4のいずれか一つの光学モジュールにおいて、前記光走査ミラー素子はMEMSミラーである。
【0015】
本発明の態様6は、態様1~5のいずれか一つの光学モジュールにおいて、前記光走査ミラー素子の鏡面部の表面は、中心点を通る断面が放物線状を成す凹面鏡である。
【0016】
本発明の態様7は、態様1~6のいずれか一つの光学モジュールと、前記第1基板と前記第2基板とを載置する1つの共通基板と、前記共通基板に形成され、前記レーザー発光素子および前記光走査ミラー素子を制御する集積回路と、を有する、画像投影用光学エンジンである。
【0017】
本発明の態様8は、態様7の画像投影用光学エンジンと、眼鏡状のフレームと、を有し、前記画像投影用光学エンジンは、前記フレームのテンプル部に配される、グラスディスプレイである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レーザー発光素子および光走査ミラーをそれぞれ基板に搭載した後に光軸調整を行うことが可能であり、かつ、ミラーで反射された各色のレーザー光が画像投影面上の投射位置のずれに起因した画像品質の低下を補償可能な光学モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る光学モジュールを示す外観斜視図である。
【
図2】
図1に示す光学モジュールの断面模式図である。
【
図3】画像品質のソフトウェア制御による補償方法を概念的に説明する図である。
【
図4】画像品質のソフトウェア制御による補償方法を説明するための図である。
【
図5】画像品質のソフトウェア制御による補償方法を説明するための図である。
【
図6】画像品質のソフトウェア制御による補償方法を説明するための図である。
【
図7】画像品質のソフトウェア制御による補償方法を説明するための図である。
【
図8】本発明の光学モジュールを概念的に説明する図である。
【
図9】凹面鏡を有する光走査ミラー素子の作用を示す模式図である。
【
図10】凹面鏡を有する他の構成の光走査ミラー素子の作用を示す模式図である。
【
図11】本実施形態の光学モジュールの製造方法を段階的に示したフローチャートである。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る光学モジュールを示す外観斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態の画像投影用光学エンジンを示す外観斜視図である。
【
図14】本発明の一実施形態のグラスディスプレイを示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0021】
[光学モジュール(第1実施形態)]
図1は、本発明の第1実施形態に係る光学モジュールを示す外観斜視図である。また、
図2は、
図1に示す光学モジュールの断面図である。
図1では、レーザー発光素子が3個の場合で説明したが、3個の限らず、2個又は4個以上であってもよい。
【0022】
第1実施形態に係る光学モジュール30は、画像表示面にレーザー光を投射して画像を表示するために用いることができる光学モジュールであって、第1基板41A,41B,41Cの主面に、ピーク波長が異なる複数のレーザー光のそれぞれを発光する複数のレーザー発光素子43A,43B,43Cが設けられたレーザー光源部31A,31B,31Cと、第1基板41A,41B,41Cと一体にされている第2基板42の主面に光走査ミラー素子24が設けられたミラー部32と、複数のレーザー発光素子43A,43B,43Cから出射されるレーザー光の強度を個別に独立に制御可能なレーザー駆動制御部200(
図8参照)と、光走査ミラー素子24の揺動を制御するミラー駆動制御部100(
図8参照)と、光走査ミラー素子24の各揺動位置ごとの、複数のレーザー発光素子43A,43B,43Cのそれぞれから発射されたレーザー光ごとの画像表示面S(
図3参照)上の投射位置との対応関係の配列であるルックアップテーブルを格納するメモリ300(
図8参照)と、画像表示面Sに表示したい画像の各画素ごとの画素値である画像データとルックアップテーブルとから、光走査ミラー素子24の各揺動位置ごとに複数のレーザー発光素子のそれぞれのレーザー発光素子43A,43B,43Cから出射されるレーザー光の強度比である光強度マップテーブルを作成し、光強度マップテーブルに基づいて画像を構築するように、レーザー駆動制御部200とミラー駆動制御部100とを制御するシステム制御部400(
図8参照)とを備える。
【0023】
図1に示す光学モジュール30は、3つのレーザー光源部31A,31B,31Cがそれぞれ設けられた第1基板(第1サブキャリア)41A,41B,41Cが、1つのミラー部32が設けられた第2基板(第2サブキャリア)42に対して、それぞれ金属接合層13を介して接合された構成となっている。
【0024】
第1基板41A,41B,41Cは、シリコン(Si)基板、酸化アルミニウム(Al2O3)基板、窒化アルミニウム(AlN)基板、石英(SiO2)基板などから構成されている。こうした第1基板41A,41B,41Cは、ミラー部32を構成する第2基板42と同一の材料を用いても良く、第2基板42とは異なる材料を用いてもよい。
【0025】
レーザー光源部としては、各種レーザー素子が使用可能である。例えば、市販の赤色光、緑色光、青色光等のレーザーダイオード(LD)が使用可能である。赤色光は、ピーク波長が610nm以上750nm以下である光が使用可能であり、緑色光は、ピーク波長が500nm以上560nm以下である光が使用可能であり、青色光は、ピーク波長が435nm以上480nm以下である光が使用可能である。
レーザー光源部31Aを構成するレーザー発光素子43Aは、例えば、赤色レーザー光RLを出射する赤色LDから構成されている。また、レーザー光源部31Bを構成するレーザー発光素子43Bは、例えば、緑色レーザー光GLを出射する緑色LDから構成されている。更に、レーザー光源部31Cを構成するレーザー発光素子43Cは、例えば、青色レーザー光BLを出射する青色LDから構成されている。
【0026】
レーザー発光素子43A,43B,43Cはそれぞれ、第1基板41A,41B,41Cに対して、例えば金属層27を介して接合されている。金属層27は、例えば、第1金属層27aと、第2金属層27bの2層の金属層から構成されていればよい。こうした金属層27は、例えばスパッタ、蒸着、ペースト化した金属の塗布等の公知の手法によって形成可能である。
【0027】
第1金属層27aは、例えば、金(Au)とスズ(Sn)との合金、スズ(Sn)と銅(Cu)との合金、インジウム(In)とビスマス(Bi)との合金及びスズ(Sn)-銀(Ag)-銅(Cu)系はんだ合金(SAC)等から構成されていればよい。第2金属層27bは、例えば金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)及びニッケル(Ni)等から構成されていればよい。
【0028】
第1基板41A,41B,41Cの主面41Aa,41Ba,41Caには、一端側がレーザー発光素子43A,43B,43Cに接続される第1配線層25が形成されている。第1配線層25は、レーザー発光素子43A,43B,43Cに駆動電流を供給するための電気配線であり、例えば、金、銀、アルミニウムなどからなる金属薄膜を所定のパターンで形成したパターン配線であればよい。こうした第1配線層25の他端側には、第1電極(電極パッド)28が形成されていればよい。第1電極(電極パッド)28は、例えば、外部の駆動電源や制御用の集積回路に接続される。
【0029】
ミラー部32は、第2基板(サブキャリア)42と、この第2基板42の主面42aに形成される光走査ミラー素子24と、を有している。
【0030】
第2基板42は、シリコン(Si)基板、酸化アルミニウム(Al2O3)基板、窒化アルミニウム(AlN)基板、石英(SiO2)基板などから構成されている。第2基板42は、主面42aに対して所定の角度、例えば45°で傾斜した傾斜面22bを有する傾斜部22sを有している。
【0031】
傾斜部22sは、傾斜面22bの一部が主面42aよりも厚み方向に深い位置まで広がるように形成されている。こうした傾斜部22sの傾斜面22bに、光走査ミラー素子24が載置される。なお、傾斜面22bの主面42aに対する傾斜角度は、例えば、10°~70°の範囲内であればよい。
【0032】
光走査ミラー素子(MEMSミラー)24は、例えば、シリコンウェーハを微細加工することによって得られるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスである。本実施形態の光走査ミラー素子24は、基体24aの中央に配された円形の鏡面部24bと、この鏡面部24bを支持する梁部24cと、梁部24cを屈曲させる印加電極(図示略)とを有している。鏡面部24bの表面(反射面)は、例えば、平面状に形成されている。なお、鏡面部24bは、本実施形態では円形に形成されているが、円形に限定されるものではなく、任意の形状、例えば矩形や多角形形状に形成されていてもよい。
【0033】
こうした光走査ミラー素子24は、印加電極に所定の電圧を印加することによって静電力を発生させる。そして、この静電力を発生させる位置に応じて梁部24cを局所的に屈曲させ、これにより、梁部24cに支持された鏡面部24bの角度を2次元的(水平方向(X方向)および垂直方向(Y方向))に変化させる。こうした鏡面部24bの角度の変化によって、鏡面部24bで反射されるレーザー光Lの反射角度を変化させる。即ち、鏡面部24bでレーザー光Lを走査させて、レーザー光Lによる表示面に任意の文字や図形を表示させることができる。
【0034】
第2基板42の主面42aには、一端側が光走査ミラー素子24に接続される第2配線層26が形成されている。第2配線層26は、光走査ミラー素子24の鏡面部24bの角度を変化させる駆動電流を供給するための電気配線であり、例えば、金、銀、アルミニウムなどからなる金属薄膜を所定のパターンで形成したパターン配線であればよい。こうした第2配線層26の他端側には、第2電極(電極パッド)29が形成されていればよい。第2電極(電極パッド)29は、例えば、外部の駆動電源や制御用の集積回路に接続される。
【0035】
レーザー光源部31A,31B,31Cとミラー部32とは隣接して配されている。そして、レーザー光源部31A,31B,31Cを構成する第1基板41A,41B,41Cと、ミラー部32を構成する第2基板42とは、互いに金属接合層13を介して直接接合されている。即ち、レーザー光源部31A,31B,31Cとミラー部32とは、金属接合層13によって一体化され、光学モジュール30を構成している。
【0036】
金属接合層13は、第1基板41A,41B,41Cの構成材料と第2基板42の構成材料に対して共に接合可能な金属材料、例えば、少なくとも金、またはスズを含む金属材料から構成される。より具体的には、金系はんだ材として、金スズはんだ(Au-Sn)、金ゲルマニウムはんだ(Au-Ge)、金シリコンはんだ(Au-Si)などが挙げられる。また、スズ系はんだ材として、共晶はんだ(Sn-Pb)、鉛フリーはんだ(Sn-Ag)、銅スズはんだ(Sn-Cu)などが挙げられる。これら金属接合層13の構成材料は、第1基板41A,41B,41Cや第2基板42の構成材料に応じて適宜選択されればよい。
【0037】
なお、金属接合層13は、1層に限定されるものではない。例えば、第1基板41A,41B,41Cと第2基板42とが互いに異なる材料からなる場合、それぞれの基板材料の接合に最適な金属材料を用いた2層からなる金属接合層によって、第1基板41A,41B,41Cと第2基板42とを接合することもできる。あるいは、互いに異なる材料によって3層以上の金属接合層を形成することもできる。
【0038】
(各レーザー発光素子と光走査ミラー素子との相対位置が異なることに起因した画像品質のソフトウェア制御による補償方法)
図3は、R,G,Bのレーザーの各レーザーとMEMSミラーとの相対位置が異なることに起因した、画像表示面(画像投影面)上の各色ごとの投影位置のずれを概念的に示す模式図である。
図3~
図8を使って、このずれに起因した画像品質のソフトウェア制御による補償方法を説明する。以下では、光走査ミラー素子としてMEMSミラーを例に挙げて説明するが、MEMSミラーに限らず、レーザー光を反射し、走査することが可能な公知の光走査ミラー素子を用いることができる。
【0039】
図3に示すように、R,G,BのレーザーとMEMSミラーとの相対位置が各色のレーザーごとに異なるため、MEMSミラーの揺動位置が同じ場合でも、各色ごとにレーザー光の画像投影面Sにおける投射位置(投影位置)が異なる。このことは、全てのMEMSミラーの揺動位置において同様である。
図3において、RL,GL,BLはそれぞれ、赤色レーザー光、緑色レーザー光、青色レーザー光である。
【0040】
(ステップ1)
そこで、ステップ1では、MEMSミラーが可動する範囲全ての揺動位置1~Nにおいて、MEMSミラーの各揺動位置と、R,G,Bのレーザーの各色ごとの投影位置との対応関係を示すルックアップテーブルを構成する。
画像投影面Sにおいて、表示したい画像の各画素の位置を座標(x、y)で表している。この座標は各レーザー光の投影位置を表すものである。
例えば、MEMSミラーの揺動位置1において、赤色レーザー光は投影位置座標(2,6)を投射し、緑色レーザー光は投影位置座標(4,6)を投射し、青色レーザー光は投影位置座標(4,8)を投射する。また、揺動位置2において、赤色レーザー光は投影位置座標(a,b)を投射し、緑色レーザー光は投影位置座標(c,d)を投射し、青色レーザー光は投影位置座標(e,f)を投射する。
【0041】
(ステップ2)
ステップ2では、ステップ1で得られたMEMSミラーの各揺動位置とR,G,Bのレーザーの各色ごとの投影位置との対応関係のルックアップテーブルをもとに、この関係を逆変換することにより、
図4に示すように、投影面の各投影位置(投影位置座標)と、R,G,Bのレーザーの各色ごとのMEMSミラーの揺動位置との対応関係を導き出す。
図4から、投影位置(2,6)に赤色レーザー光を投射したいときはMEMSミラーの揺動位置を揺動位置1にすればよいことがわかる。同様に、投影位置(4,6)に緑色レーザー光を投射したいときはMEMSミラーの揺動位置を揺動位置1にすればよいことがわかる。投影位置(4,8)に青色レーザー光を投射したいときはMEMSミラーの揺動位置を揺動位置1にすればよいことがわかる。
【0042】
(ステップ3)
ステップ3では、画像データがメモリ(
図8の符号30)に読み込まれる。
動画データの場合、
図5に示すようにそれぞれの時間T(t1、t2、3)のときに、各画素位置における、R,G,Bの各色の強度の割合の情報を有するデータ群である。これが画像データとしてメモリに読み込まれる。
例えば、T=t1のときの動画の画像データは、画素位置座標(0,0)の画素は赤色が強度(画素値)1、緑色が強度(画素値)2、青色が強度(画素値)3からなり、画素位置座標(1,0)の画素は赤色が強度(画素値)4、緑色が強度(画素値)5、青色が強度(画素値)6からなる。
同様に、T=t2のときの動画の画像データは、画素位置座標(0,0)の画素は赤色が強度(画素値)a、緑色が強度(画素値)b、青色が強度(画素値)cからなり、画素位置座標(1,0)の画素は赤色が強度(画素値)d、緑色が強度(画素値)e、青色が強度(画素値)fからなる。
同様に、T=t3のときの動画の画像データは、画素位置座標(0,0)の画素は赤色が強度(画素値)i、緑色が強度(画素値)ii、青色が強度(画素値)iiiからなり、画素位置座標(1,0)の画素は赤色が強度(画素値)iv、緑色が強度(画素値)v、青色が強度(画素値)viからなる。
【0043】
(ステップ4)
ステップ4では、ステップ3で供給されたそれぞれのTのときの画像データと、ステップ2で得られた各投影位置(座標)に対応するR,G,Bのレーザーの各色ごとのMEMSミラーの揺動位置との対応関係を合わせて、それぞれの時間Tにおいて、各投影位置(座標)での、MEMSミラーの各揺動位置でのR,G,Bのレーザーの各色ごとの強度マップを得る。
図6では、T=t1のときの強度マップを示している。
図6の強度マップから、画像投影面の投影位置(0,0)に、T=t1のときの画像(データ)の画素位置(0,0)における画素(赤色が強度(画素値)1、緑色が強度(画素値)2、青色が強度(画素値)3からなる画素)を作るためには、MEMSミラーの揺動位置を揺動位置Aにした状態で赤色レーザー光の強度を強度1にし、MEMSミラーの揺動位置を揺動位置Bにした状態で緑色レーザー光の強度を強度2にし、MEMSミラーの揺動位置を揺動位置Cにした状態で青色レーザー光の強度を強度3にすればよい。
同様に、画像投影面の投影位置(1,0)に、T=t1のときの画像(データ)の画素位置(1,0)における画素(赤色が強度(画素値)4、緑色が強度(画素値)5、青色が強度(画素値)6からなる画素)を作るためには、MEMSミラーの揺動位置を揺動位置Dにした状態で赤色レーザー光の強度を強度4にし、MEMSミラーの揺動位置を揺動位置Eにした状態で緑色レーザー光の強度を強度5にし、MEMSミラーの揺動位置を揺動位置Fにした状態で青色レーザー光の強度を強度6にすればよい。
同様に、画像投影面の投影位置(2,6)に、T=t1のときの画像(データ)の画素位置(2,6)における画素(RGBの強度(画素値)は不図示)を作るためには、MEMSミラーの揺動位置を揺動位置1にした状態で赤色レーザー光の強度を強度1にし、緑色レーザー光の強度及びそのときのMEMSミラーの揺動位置、並びに、青色レーザー光の強度及びそのときのMEMSミラーの揺動位置は不図示だが、同様にして、T=t1のときの画像(データ)の画素位置(2,6)における画素を作ることができる。
【0044】
(ステップ5)
ステップ5では、ステップ4で得られた各画素位置と、MEMSミラーの各揺動位置での各色のレーザーの強度の対応関係を逆変換し、MEMSミラーの各揺動位置における各色のレーザーの強度マップテーブルを得る。ここで、MEMSミラーの揺動位置を1~Nまで走査(スキャン)するには相応の時間がかかるが、人間の目には追従できないぐらい充分な速さ(例えば、100~500MHz程度(1秒あたり60回全画像が切り替わる程度の速さ)で走査するため、同じT=t1の時点でのデータとして認識される(すなわち、一つの画像として認識される)。
図7に、T=t1のときのレーザーの強度マップテーブルを示す。
【0045】
(ステップ6)
ステップ6では、ステップ5で得られたMEMSミラーの各揺動位置における各色のレーザーの強度マップテーブルをもとに、各時点(T=t1、t2、t3、・・・)での画像を画像投影面に投影する。
図7に示したレーザーの強度マップテーブルに基づき、画像(データ)を表示しようとしたときには、T=t1のとき、MEMSミラーの揺動位置を揺動位置1にした状態で、赤色レーザー光の強度を強度n1にし、緑色レーザー光の強度を強度n2にし、青色レーザー光の強度を強度n3にし、次いで、MEMSミラーの揺動位置を揺動位置2にした状態で、赤色レーザー光の強度を強度n4にし、緑色レーザー光の強度を強度n5にし、青色レーザー光の強度を強度n6にし、・・・MEMSミラーの揺動位置を揺動位置Nにした状態で、赤色レーザー光の強度を強度マップテーブルに従って強度にし、緑色レーザー光の強度を強度マップテーブルに従って強度にし、青色レーザー光の強度を強度マップテーブルに従って強度にすればよい。すなわち、MEMSミラーの揺動位置を順次可動しながら、各揺動位置で、強度マップテーブルに基づき、RGBの各色のレーザー光の強度に制御することで、人間の目には同じT=t1の時点での1フレームの画像と認識される。
同様にT=t2のときに、MEMSミラーの揺動位置を順次可動しながら、各揺動位置で、強度マップテーブルに基づき、RGBの各色のレーザー光の強度に制御することで、人間の目には同じT=t2の時点での1フレームの画像と認識される。
具体的には
図8に示すように、MEMSミラーのミラー駆動制御部(IC)100で、MEMSミラーの揺動位置を制御し、各揺動位置におけるR,G,Bのレーザーの各色ごとの強度をレーザー駆動制御部(IC)200で制御して、レーザーの強度を調整する。ミラー駆動制御部100及びレーザー駆動制御部200を制御するビデオコントローラ(システム制御部)400を有する。
【0046】
ステップ1及びステップ2は、MEMSミラーと投影位置との関係が決まっていれば、固定されるため、あらかじめ対応関係を取得し、ルックアップテーブルをあらかじめ作成しておいて、投影システムのメモリに格納してもおいても構わない。
ステップ3~5は、画像データをもとにソフトウェア処理を行う必要がある。これは、画像データが事前にわかっている場合には事前処理をしておいても構わない。
またライブデータのように、リアルタイムで画像が提供される場合には、その場のコンピューター処理で充分高速にリアルタイムで処理される。
ステップ6は、実際の駆動として、駆動集積回路(ドライバーIC)を介して制御することができる。
ステップ6ではT=t1のスナップショットでの状況を説明したが、動画の場合は、T=t2、t3、・・・の各時間で同様の処理を行うことで、動画を表示することが可能となる。
【0047】
以上説明してきた画像品質のソフトウェア制御による補償方法では、MEMSミラーの各揺動位置でRGBのレーザー光が画像投影面の異なる投影位置(画素位置)を投射する。従って、MEMSミラーの揺動が単調に可動する場合でも、画像投影面のレーザー光のスキャンはRGBの各レーザー素子とMEMSミラーとの相対位置関係に依存したものとなる。
【0048】
また、説明してきた画像品質のソフトウェア制御による補償方法では、R,G,Bのレーザーの各レーザーとMEMSミラーとの相対位置が異なることに起因した、画像投影面上の各色ごとの投影位置のずれをソフトウェア制御のみによって補償する方法を説明してきたが、光学コンポーネントによる補償と組み合わせて用いてもよい。
例えば、
図9に示すようなMEMSミラー24の鏡面部24bの表面が、凹面状の反射面(凹面鏡)であるものを用いることで、レーザー光の出射位置が互いに異なるレーザー光源部31A,31B,31Cからそれぞれ出射されるレーザー光RL,GL,BLの進行方向を揃えることができる。
特に、
図9に示すように、MEMSミラー24の鏡面部24bの中心を通る断面が放物線状を成す凹面鏡である場合には、互いに異なる角度で入射するレーザー光RL,GL,BLを、互いに平行な平行光として反射させることができる。
【0049】
これにより、レーザー光RL,GL,BLのそれぞれの出射位置が異なっていても、鏡面部24bの投影位置の物理的距離、位置関係が固定している限り、任意の1領域に向けて、互いに平行なレーザー光RL,GL,BLを照射されるようにすることが可能となる。
ただ、このような場合でも、コスト面で理想的な放物線状を成す凹面鏡ではない場合などには、上述したソフトウェア制御による補償方法を組み合わせることによって、さらなる画像品質の向上を図ることできる。
【0050】
図10は、
図9で示したMEMSミラーの変形例である。
図10に示すように、MEMSミラー24の鏡面部24bの中心を通る断面が放物線状を成す凹面鏡にすれば、R,G,B3つのレーザー光源部を2組有する構成にして、一方の組のレーザー光源部31aから3つのレーザー光RL1,GL1,BL1を出射させて鏡面部24bの中心付近の一領域で反射させ、他方の組のレーザー光源部31bから3つのレーザー光RL2,GL2,BL2を出射させて鏡面部24bの中心付近の他の一領域で反射させる構成にすることもできる。
これにより、互いに平行なレーザー光RL1,GL1,BL1、およびRL2,GL2,BL2からなる、互いに平行な2組のRGBのレーザー光を、外部の表示面などに照射することができる。
この構成の場合でも同様に、上述したソフトウェア制御による補償方法を組み合わせることによって、さらなる画像品質の向上を図ることできる。
【0051】
[光学モジュールの製造方法]
本実施形態の光学モジュールの製造方法を説明する。
図11は、本実施形態の光学モジュールの製造方法を段階的に示したフローチャートである。
【0052】
本実施形態の光学モジュール30を製造する際には、まず、第1基板41A,41B,41Cの主面41Aa,41Ba,41Caに金属層27を介してレーザー発光素子43A,43B,43Cを接合する。また、第1基板41A,41B,41Cの主面41Aa,41Ba,41Caに、第1配線層25、および第1電極28を形成する。これにより、レーザー光源部31A,31B,31Cを得る(レーザー光源部形成工程S1)。
【0053】
また、第2基板42を構成する傾斜部22sの傾斜面22bに、例えば接着層を介して光走査ミラー素子24を接合する。また、第2基板42の主面42aに、第2配線層26、および第2電極29を形成する。これにより、ミラー部32を得る(ミラー部形成工程S2)。
【0054】
次に、レーザー光源部31A,31B,31Cを構成する第1基板41A,41B,41C、またはミラー部32を構成する第2基板42の端面のうち、少なくとも一方、または両方に、金属接合層13の構成材料からなる接合材料をディップする。本実施形態ではミラー部32を構成する第2基板42の端面に接合材料をディップしている(接合材料形成工程S3)。
【0055】
次に、接合材料を挟んでレーザー光源部31A,31B,31Cとミラー部32とを隣接させて配置(仮置き)する(配置工程S4)。
【0056】
次に、レーザー発光素子43A,43B,43Cに第1配線層25を介して電源を接続してレーザー発光素子43A,43B,43Cを駆動させ、ミラー部32を構成する光走査ミラー素子24の鏡面部24bに向けてレーザー光Lを照射させる。また、鏡面部24bで反射されたレーザー光Lを光学検出装置、例えばフォトディテクターに入射させる。そして、この状態で第1基板41A,41B,41Cと第2基板42の互いの端面を接近させていき、レーザー光Lの光軸が光走査ミラー素子24の鏡面部24bの中心位置に合致するように、フォトディテクターの測定値を参照しつつ、レーザー光源部31A,31B,31Cとミラー部32との相対位置を調整する(調整工程S5)。
【0057】
そして、調整工程S5で調整された位置において、第2基板42の端面に向けて熱線を照射して接合材料を溶解する。そして第1基板41A,41B,41Cと第2基板42の端面同士を、溶解した接合材料が冷却固化されものからなる金属接合層13を介して接合する(接合工程S6)。こうした接合工程S6で用いる熱線は、例えば、YAGレーザー装置から照射される波長1064μmを主体とした固体レーザー光であればよい。
【0058】
以上のような工程を経て、本実施形態の光学モジュール30を製造することができる。
本実施形態の光学モジュール30によれば、レーザー発光素子43A,43B,43Cを載置する基板(第1基板41A,41B,41C)と光走査ミラー素子24を載置する基板(第2基板42)とを互いに別個の基板とし、こうした基板どうしを金属接合層13を介して接合する構成であるため、製造時に第1基板41A,41B,41Cと第2基板42との相対位置を調整して、レーザー光Lの光軸が光走査ミラー素子24の鏡面部24bの中心位置に合致するように、レーザー光Lの光軸位置のアライメントを行うことができる(アクティブアライメント)。これにより、例えば、レーザー発光素子とミラー素子とを1つの共通基板に載置した従来の光学モジュールと比較して、強い光量を保ったレーザー光Lを、高い位置精度で照射することが可能な光学モジュール30を得ることができる。
【0059】
また、レーザー発光素子43A,43B,43Cを載置する基板(第1基板41A,41B,41C)と光走査ミラー素子24を載置する基板(第2基板42)とを互いに別個の基板として構成するため、光学モジュールの製造も容易である。
【0060】
こうして得られた光学モジュール30によれば、レーザー光源部31A,31B,31Cをそれぞれ任意のタイミングで走査させることで、光走査ミラー素子24の鏡面部24bで反射されるレーザー光WLによって、任意の色調の画像、例えば、フルカラー画像を外部の表示面に表示させることができる。
【0061】
また、光学モジュール30において、第1基板41A,41B,41Cが、1つの第2基板42に対して、それぞれ金属接合層13を介して接合された構成にすることで、光学モジュール30の製造時に、レーザー光源部31A,31B,31Cと、光走査ミラー素子24との光軸位置のアライメントを行うことができる(アクティブアライメント)。これにより、3つのレーザー光RL,GL,BLを、光走査ミラー素子24の鏡面部24bの中心部に向けて、正確に集光させることが可能になり、鮮明でブレの無いフルカラー画像を外部の表示面に表示させることが可能になる。
【0062】
また、光学モジュール30によれば、レーザー光源部31A,31B,31Cからそれぞれ出射されるレーザー光を、直接、光走査ミラー素子24の鏡面部24bの中心部に集光させる構成であるため、従来のように、複数のレーザー光を合波させるための光導波路ユニットなどが不要になり、コンパクトで軽量なフルカラー画像対応の光学モジュール30を実現することができる。
【0063】
[光学モジュール(第2実施形態)]
図12は、本発明の第2実施形態に係る光学モジュールを示す外観斜視図である。
第2実施形態に係る光学モジュールは、レーザー光源部と、ミラー部との間に、レンズ部を備える点が、第1実施形態に係る光学モジュールと異なる。第1実施形態と同様の構成要素には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
【0064】
図12に示す光学モジュール130は、第1基板41A,41B,41Cの主面にレーザー発光素子43A,43B,43Cが形成されたレーザー光源部31A,31B,31Cと、第2基板42の主面に光走査ミラー素子24が形成されたミラー部32と、第3基板45の主面に光学レンズ46が形成されたレンズ部33と、を有し、第1基板41A,41B,41Cと第3基板45とは、金属接合層14を介して接合されており、レーザー発光素子43A,43B,43Cから出射されたレーザー光を光学レンズ46を介して光走査ミラー素子24で反射させる。
【0065】
レンズ部33は、第3基板(サブキャリア)45と、この第3基板45の一主面45aに形成される光学レンズ46と、この光学レンズ46を支持するレンズホルダ47と、を有している。
【0066】
第3基板45は、シリコン(Si)基板、酸化アルミニウム(Al2O3)基板、窒化アルミニウム(AlN)基板、石英(SiO2)基板などから構成されている。こうした第3基板45は、レーザー光源部31A,31B,31Cが設けられた第1基板41A,41B,41Cや、ミラー部32を構成する第2基板42と同一の材料を用いても良く、第1基板41A,41B,41Cや第2基板42とは異なる材料を用いてもよい。
【0067】
レンズ部33を構成する光学レンズ46は、外形が楕円形の非球面レンズであり、互いに異なる方向から入射する複数のレーザー光RL,GL,BLを、光走査ミラー素子24の鏡面部24bの中心に向けて集光させる。
また、レンズホルダ47は、例えば、全体がシリコンから形成され、光学レンズ46の周縁部に接して光学レンズ46を支持する。
【0068】
こうした光学モジュール130を構成するレーザー光源部11、レンズ部13、およびミラー部12は、直線上に並べて配されている。そして、レーザー光源部31A,31B,31Cを構成する第1基板41A,41B,41Cと、レンズ部33が設けられた第3基板45との間、およびこの第3基板45とミラー部32が設けられた第2基板42との間は、互いに金属接合層14を介して直接接合されている。即ち、レーザー光源部11とミラー部12とはレンズ部13を挟んで金属接合層14によって一体化され、光学モジュール130を構成している。
【0069】
[画像投影用光学エンジン]
次に、本発明の一実施形態の画像投影用光学エンジンの構成を説明する。以下では、第1実施形態の光学モジュールを備える画像投影用光学エンジンの構成を説明するが、第1実施形態の光学モジュールに替えて、第2実施形態の光学モジュールを備えることもできる。なお、第1実施形態の光学モジュールと同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
図13は、本発明の一実施形態の画像投影用光学エンジンを示す外観斜視図である。
【0070】
本実施形態の画像投影用光学エンジン50は、第1実施形態の光学モジュール10と、集積回路(IC)51と、共通基板52とを有している。
集積回路51は、レーザー光源部11を構成するレーザー発光素子43A,43B,43C(
図1、2を参照)の発光制御や、ミラー部32を構成する光走査ミラー素子24(
図1、2を参照)の角度制御を行う。
【0071】
こうした画像投影用光学エンジン50によれば、小型化されたコンパクトな形状のレーザー画像投影手段として機能する。例えば、ウェアラブルデバイスにこうした画像投影用光学エンジン50を組み込むことで、違和感のない程度の着用感を確保しつつ、鮮明な画像投影が可能なウェアラブルデバイスを実現することができる。
【0072】
[グラスディスプレイ]
次に、本発明の一実施形態の画像投影用光学エンジンの構成を説明する。なお、前述した実施形態の画像投影用光学エンジンと同様の構成部分には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
図14は、本発明の一実施形態のグラスディスプレイを示す要部拡大斜視図である。
【0073】
本実施形態のグラスディスプレイ60は、前述した実施形態の画像投影用光学エンジン50と、眼鏡状のフレーム61と、を有している。
フレーム61を構成するテンプル部62には、小型化された画像投影用光学エンジン50が内蔵されている。
【0074】
こうした画像投影用光学エンジン50は、フレーム61を構成するフロント枠63に支持されたグラス64に向けて、画像光を構成するレーザー光を出射させる。グラス64は、例えばハーフミラーであり、画像投影用光学エンジン50から出射されたレーザー光Lによる画像が投影される。グラスディスプレイ60の着用者は、グラス64の内側面に投影された画像を直接観察することができる。
【0075】
このように、本実施形態のグラスディスプレイ60によれば、コンパクトで軽量な画像投影用光学エンジン50を用いることによって、スペースに制約のある眼鏡状のフレーム61のテンプル部62を大きく膨らませることなく、良好な装着感を維持したグラスディスプレイ60を実現することができる。
【符号の説明】
【0076】
24 光走査ミラー素子
30、130 光学モジュール
31A,31B,31C レーザー光源部
32 ミラー部
41A,41B,41C 第1基板
42 第2基板
43A,43B,43C レーザー発光素子
100 ミラー駆動制御部
200 レーザー駆動制御部
300 メモリ
400 システム制御部