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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115897
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】音による速度計及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021792
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】518070238
【氏名又は名称】大庭 有二
(72)【発明者】
【氏名】大庭 有二
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC27
5H181DD03
5H181DD07
5H181FF04
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】一定の間隔で区切った速度範囲を異なる音源や楽曲に分担させて、それ等を車速に合わせて車内に出力する音による速度計に、交通違反歴により速度範囲が異なる免許停止と免許取消を示す楽曲等を重畳させて、速度違反による罰則等を運転者に楽曲等として認識させる速度計である。
【解決手段】車両が走行する速度範囲を異なる楽曲等に分担させて、車両の速度情報を聴覚で伝達できる速度計に、免許停止や免許取消に相当する速度範囲を示す楽曲等を重畳して、速度違反による罰則等を運転者が認識できるようにするとともに、個人情報の流出が起こりにくくなるようにした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度を複数の段階的な速度範囲で区切り、前記各速度範囲に対応して出力する楽曲等(A)と、道路交通法における交通違反により累積した基準点数と、前記交通違反による行政処分の回数により決まる罰則が適用される速度範囲に対応して出力する楽曲等(B)を前記車両の速度に応じて出力して、前記楽曲等(B)からは前記車両の運転者に適用される罰則の種類の把握と、前記楽曲等(A)からは前記罰則が適用される速度範囲の把握を、前記楽曲等(A)の出力と前記楽曲等(B)の出力の組み合わせにより可能とすることを特徴とする音による速度計
【請求項2】
車両の速度を複数の段階的な速度範囲で区切り、前記各速度範囲に対応して出力する楽曲等(A)と、道路交通法における交通違反により累積した基準点数と、前記交通違反による行政処分の回数により決まる罰則が適用される速度範囲に対応して出力する楽曲等(B)を前記車両の速度に応じて出力する第1項記載の音による速度計において、前記楽曲等(B)の出力と同じ又は同期した信号による振動をハンドル、又は座席、又はペダルに同時に発生させる事を特徴とする速度計
【請求項3】
車両の速度を複数の段階的な速度範囲で区切り、前記各速度範囲に対応して出力する楽曲等(A)と、道路交通法における交通違反により累積した基準点数と、前記交通違反による行政処分の回数により決まる罰則が適用される速度範囲に対応して出力する楽曲等(B)を前記車両の速度に応じて出力して、前記楽曲等(B)からは前記車両の運転者に適用される罰則の種類の把握と、前記楽曲等(A)からは前記罰則が適用される速度範囲の把握を、前記楽曲等(A)の出力と前記楽曲等(B)の出力の組み合わせにより可能とする手段として機能させるためのプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の走行速度を複数の段階的な速度範囲で区切り、各速度範囲に対応させた音の出力及びそれに合わせた振動により、運転者に速度情報や行政処分情報を提示する速度計と、それを機能させるためのプログラムである。
【背景技術】
【0002】
車両の速度は速度計で視覚的に提示することが一般的である。そのため、運転者は車両が発生するエンジン音や通り過ぎる風景の様子から車両の速度を推定し、たまに速度計を見てその速度を確認している。しかし、速度計を見る動作は前方確認を中断するため、前方不注意が生じる。このため、速度計を確認する頻度を少なくする傾向があり、不注意による速度違反(正式には速度超過違反と言う)を起こしやすい。このため、本発明では聴覚を利用して速度情報を提示することで問題の軽減を図り、更に速度違反に伴い運転免許の停止や取消が起こることを提示する機能を備えた速度計に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-137378号公報
【特許文献2】特開2020-66253号公報
【特許文献3】特開2022-66116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路交通法では、自動車等の運転者の交通違反や交通事故に一定の基準点数(正式には、行政処分基準点数)を付けて、最後の交通違反や交通事故の日を起算日として、過去3年間の累積点数が一定の基準に達した場合、運転免許の効力の停止(以下、免許停止と略す)や取消処分(以下、免許取消と略す)等の行政処分が行われることが示されている。
この免許停止や免許取消に至るまでの余裕として残る点数は、過去の交通違反や交通事故に伴い累積した基準点数や行政処分の前歴により異なる。このため、行政処分歴がなく、累積点数がゼロであれば、制限速度を30Km/h以上超過しない限り、免許停止になることはない。しかし、逆に行政処分も累積点数もある場合では、制限速度を1Km/h越えて、それが交通違反と認定されれば、論理上は免許停止になってしまうことがあり、運転者の違反歴が複雑に関係している。しかし、自動車等の運転業務が常に必要であったり、日々の生活に無くてはならない者にとっては、免許停止や免許取消は死活問題である。
こうした、複雑な免許停止や免許取消の条件は、速度違反がしばしば起こりがちな運転の最中には、必ずしも十分に把握できているとは限らない。そこで、免許停止や免許取消の対象となる速度範囲内で走行していることや、現在の違反速度の段階などを運転者が明確に理解できることが好ましい。
しかし、運転中は前方を注視している必要があり、速度計を頻繁に見ることは控えなくてはいけない。それを叶えるには、速度を視覚的に確認するのではなく、 他の感覚による理解でなければならない。その答えの一つは聴覚であり、他の1つは触覚である。
しかし、速度違反が起こるたびに、音声で「何 km オーバーです」などと絶えず言語で注意が知らされるのでは、車内の雰囲気を台なしにしてしまうことになる。更に、運転者の行政処分歴や累積点数は個人情報であり、同じ車内といえども運転者以外の同乗者が、容易に運転者の行政処分歴や累積点数を推測できてしまうのは好ましくない。
そのため、聴覚や触覚を介して伝わる速度情報のルールを詳細に知る運転者のみが理解できて、他の乗客にはその出力の意味は分からない秘密保持性があり、運転者以外の者には自然な楽曲等の出力として聞こえて、その場の雰囲気に馴染む情報提供になることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の(特許文献)には、車両の速度を複数の段階的な速度範囲で区切り、各速度範囲に対応する各音源または各楽曲による演奏を車内に出力して、音源または楽曲の演奏の種類やその種類数から、走行する車両の速度範囲の判断を可能とする車両の速度計等が示してある。この速度計は速度範囲が基本的には初期設定で固定され、個々の運転者の前歴や道路の制限速度などで変動する速度範囲には適正がない。
そこで、本願はこれに対応可能とするとともに、聴覚だけでは聴き逃すことのある免許停止や免許取消の行政処分の速度範囲を示す特定な楽曲等の車内への出力に加えて、ハンドルや運転席の座席に行政処分に対応する楽曲等と同じ信号、又は同期した信号で、振動を発生させるようにした。これにより、免許停止や免許取消に伴う楽曲等の出力とそれと同じ、又はそれと同調した振動を運転者が知覚できるようにした。こうした振動は運転者以外の同乗者には知覚されないようにすることができるため、行政処分歴に対応する楽曲等が目立たない曲であっても、運転者だけは振動と楽曲等の同期性から明確にその出力を他の楽曲や振動の出力と区別できるようにした。
【発明の効果】
【0006】
車両の速度を複数の段階的な速度範囲で区切り、前記各速度範囲に対応して出力する楽曲等(A)と、道路交通法における交通違反により累積した基準点数と、前記交通違反による行政処分の回数により決まる罰則が適用される速度範囲に対応して出力する楽曲等(B)を前記車両の速度に応じて出力して、前記楽曲等(B)からは前記車両の運転者に適用される罰則の種類の把握と、前記楽曲等(A)からは前記罰則が適用される速度範囲の把握を、前記楽曲等(A)の出力と前記楽曲等(B)の出力の組み合わせにより可能とする音による速度計では、次の効果を奏することができる。
交通違反に伴う免許停止や免許取消などの行政処分が開始される超過速度は、過去の行政処分の回数や交通違反で生じる基準点数の累積値で変動する。このため、各運転者の交通違反歴により、行政処分が開始する速度が異なっている。
そこで、車両の速度が、複数の段階的に区切った速度範囲に達することで、それぞれの速度範囲に対応する出力を開始するようにした。この一連の楽曲等(A)の出力に加えて、交通違反による行政処分の回数や累積する基準点数により、免許停止や免許取消などが対象となる速度の条件が人様々に変わるのに合わせて、免許停止を意味する楽曲等(B)や免許取消を意味する楽曲等(C)の速度範囲を必要に応じ重畳して出力するようにした。 これにより、運転者は速度範囲に対応した楽曲等(A)の出力からは、走行する車両の速度に対応する速度範囲を理解することが可能になるとともに、楽曲等(B)または楽曲等(C)の出力からは、それぞれ免許停止や免許取消になる速度範囲で車両が走行していることが、運転中に瞬時、かついつでも聴覚を介して理解できるようになる。
更に、これ等の楽曲等(A)、楽曲等(B)、楽曲等(C)は、出力される楽曲等の一部の音源または一部の楽曲(以下、パートとする)として、総合的な合奏の中に内在させることができる。このため、音楽的には総合的な合奏として理解されるが、本願の仕組みや設定条件を理解している運転者は、この中から楽曲等(A)、楽曲等(B)、楽曲等(C)の各パートを聞き分けてことで、車両の走行速度の情報や免許停止や免許取消が対象となる走行であることを同時に理解できるようになる。他方、運転者以外の同乗者は、単に総合的な合奏の楽曲が車内に出力されているとの理解に留まらせることができる。
このため、言語で「免許停止の速度です」などと警告を繰返して車内に出力したり、ビープ音等で警報を繰返し出力するのに比べ、車両内の雰囲気を壊さないで済む特徴がある。
更に、免許停止や免許取消の警告をどの段階の速度範囲で受けているのか、運転者のみがいつでも同乗者には秘密裏に理解ができるため、運転者の個人情報である免許停止や免許取消の速度範囲の暗号化が図られるのと、前方不注意な運転をする時間を減らせる特徴がある。
【0007】
車両の速度を複数の段階的な速度範囲で区切り、前記各速度範囲に対応して出力する楽曲等(A)と、道路交通法における交通違反により累積した基準点数と、前記交通違反による行政処分の回数により決まる罰則が適用される速度範囲に対応して出力する楽曲等(B)を前記車両の速度に応じて出力する前項に記載の音による速度計において、前記楽曲等(B)の出力と同じ又は同期した信号による振動をハンドル、又は座席、又はペダルに発生させる事を特徴とする速度計では、次の効果を奏することができる。
この速度計は、免許停止または免許取消に対応する速度範囲を示す楽曲等を各パートとして必要に応じて常に出力することが可能であるが、聴覚だけではそれ等のパートの出力を見逃したり、誤認したりする可能性がある。
そこで、前記パートと同じ、又は同期した信号による振動をハンドルや運転席に発生させることで、運転者の聴覚によるパートの知覚と触覚を介しての振動の同期性から、免許停止または免許取消に相当する速度範囲であることを的確に知覚することが可能になる。
これにより、他の機器から発生する振動や路面から伝わる振動は、本願により発生した振動と明確に異なるノイズ(雑音)振動として理解することが可能になる。
また、ハンドルや運転席やペダルに発生させ振動は、運転者以外に同乗者には伝わらないようにする事ができる。このため、この同期する振動を感じることのない同乗者は、総合合奏として出力される楽曲等の内のどのパートが免許停止または免許取消を意味するか判断ができない状態、または判断できにくい状態に置くことができる。
先に述べたように、免許停止または免許取消の速度範囲は個人情報であるが、免許停止または免許取消の開始速度や速度範囲が分ると、おおよそかもしれないが累積する点数を類推可能になる。これは、同乗者に対しする情報漏洩であるので避けなくてはならない。
そこで、免許停止または免許取消の速度範囲を区別するパートの出力をできるだけ目立たない楽曲等として、同乗者には知覚されにくくするとともに、同乗者に知覚できない振動と目立たない楽曲等の同期性を利用して、運転者は目立たない楽曲を明確な出力として理解できるようにすることができる。
この楽曲等と振動の同期性の利用で、情報漏洩の問題を大幅に回避できるようになる。
ちなみに、ここで説明した同乗者には知覚されない振動は、暗号化技術における秘密鍵に相当する。このため、これは音による速度計の部分的な暗号化とも言える。
これとは別に、免許停止または免許取消に相当する速度範囲で走行していることの区別として、ハンドルでの振動は免許停止を意味し、座席での振動は免許停止を意味するなどとして、両者の区別が振動する場所による違いを利用して区別が可能になる特徴も備える。さらに、ハンドルと座席の両方に同時に振動を発生させることで、その両方の振動には他の情報を意味させることが可能になる。この区別は同乗者に理解できないようできるため、これも暗号化技術における秘密鍵に相当し、音による速度計の部分的な暗号化である。
【0008】
車両の速度を複数の段階的な速度範囲で区切り、前記各速度範囲に対応して出力する楽曲等(A)と、道路交通法における交通違反により累積した基準点数と、前記交通違反による行政処分の回数により決まる罰則が適用される速度範囲に対応して出力する楽曲等(B)を前記車両の速度に応じて出力して、前記楽曲等(B)からは前記車両の運転者に適用される罰則の種類の把握と、前記楽曲等(A)からは前記罰則が適用される速度範囲の把握を、前記楽曲等(A)の出力と前記楽曲等(B)の出力の組み合わせにより可能とする手段として機能させるためのプログラムでは、これまでに上記の(発明の効果)で説明してきた機能や効果を生じさせるプログラムを構成させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両の装置の配置図である。
図2】速度範囲と出力の関係を示す図である。
図3】速度範囲と出力の関係を示す別の図である。
図4】3種類の出力例を示す図である。
図5】クロスフェードによる出力を示す図である。
図6】本願の発明を動作させるフローチャートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
車両の走行速度が確認できる速度計とは別に、図2に示すように、一定のルールで区切った各速度範囲に対応して、
車内に出力する楽曲やその音源やそれ等の重なり等(以下、これ等を「楽曲等」と略す)を異にすることで、現在の車両の走行速度を聴覚で判断可能とする車両の速度計がある。単純な例としては、車内で出力する楽曲等を、時速0(ゼロ)Km~10Km(以下、速度の単位をKm/hとする)までの速度範囲はバイオリンの音による楽曲等の出力、次の10Km/h~20Km/hまでの速度範囲はフルートの音による楽曲等の出力、次の20Km/h~30Km/hまでの速度範囲はピアノの音による楽曲等の出力、などとして、運転者はそれぞれの楽器の音で、現在の車両の速度に対応する速度範囲を認識する音による速度計である。
本願は、こうした音による速度計の原理の利用または、それ等に組合せて免許停止または免許取消に相当する速度範囲で車両が走行中であることを示す楽曲等を出力する速度計である。
なお、この機能は車両に設置してある通常の速度計とともに併用するものであり、従来からある速度計を車両から排除するものではない。
【実施例0011】
図1は本発明を実施する車両の装置の概要を示す配置図であって、モータやエンジンなどからなる駆動部1が変速機2を介して一対の車輪3を駆動する。駆動部1は電気やガソリンなどを蓄積したエネルギー源9からのエネルギーをエネルギー制御部8の制御の下で供給し回転する。
この車両は車両内のアクセルペダルやブレーキペダルに相当する速度設定値入力部7で制御して走行させ、走行速度は速度検出部4により検出し、方向制御はハンドル17で行う。
ここまでの説明は多少の省略があるが車両の一般的な走行制御の形態である。
【0012】
車両には他に道路上の制限速度の標識を認識する標識認識部5やGPS情報(グローバル・ポジショニング・システム)の検出・処理部6が各々適切な箇所に設置してある。これらの各部が発生するデータ等は次に説明する制御部10に送られる。
制御部10では音源・楽譜等の記憶部12からのデータ読取を行うとともに、必要なデータの演算を行い、表示部11がそのマン・マシンインタフェースを司る。更に記憶部12のデータを具体的な信号とする信号発生部13を制御して楽器や声等信号を発生させるとともに音量を指示する。ここで、記憶部12での音楽情報は音声圧縮情報MP3のデータや歌詞や楽譜・楽曲やMIDIのような音楽情報であることもある。楽器等信号発生部13で生成した楽曲データ等はD/Aコンバータ14を介してデジタル信号をアナログ信号に変換し、更にアンプ部15で増幅してスピーカ16から車内に出力される。また、必要に応じてバンドル振動部18や座席振動部20を介して、スピーカ16の出力と同期した振動を発生し、ハンドル17や運転者の座席19を振動させる。
なお、図1ではハンドルの支柱を振動させてハンドル全体に振動を伝える配置関係にしてあるが、運転者が握るハンドル17の表面だけを振動させる構成でも十分に役割を果たせる。更に、ハンドル17の振動と運転者の座席19の振動を区別して使い分け、後述する免許停止に相当する速度範囲ではハンドル17だけを振動させ、免許取消に相当する速度範囲ではハンドル17と運転者の座席19の両者を振動させるなど、異なる速度範囲の区別を明らかにする手段として利用することができる。
【実施例0013】
次に、車両の速度違反についての罰則等を簡単に説明する。道路交通法では各都道府県の公安委員会が定める速度違反の段階的な速度範囲が決められており、それぞれには罰金や違反により累積する基準点数が定められている。その点数の制度についての警視庁のホームページに示してある説明を、以下に示す。
「点数制度とは、自動車等の運転者の交通違反や交通事故に一定の点数を付けて、その過去3年間の累積点数等に応じて免許の停止や取消等の処分を行う制度です。
そして、その最後の交通違反や交通事故の日を起算日として、過去3年間の累積点数が一定の基準に達した場合、運転免許の効力の停止や取消処分等の行政処分が行われます。」
と説明があります。
(行政処分にあたる「運転免許の効力の停止」「運転免許の効力の取消」をそれぞれ「免許停止」と「免許取消」と以下では略す)
また、具体的な速度超過の速度範囲と点数の関係を以下に示す。
【0014】
【表1】
表1は、警視庁のホームページの「交通違反の点数一覧表」の抜粋であるとともに、速度超過の段階数を最右列に書き加えてある。さらに、表中の(高速40)は高速道路においては40Km/hであることを示し、一般道と異なることを示している。
更に、行政処分の前歴数と点数により、「免許停止」と「免許取消」生じる条件が異なるが、その関係を表2に示す。
【0015】
【表2】
【0016】
ここに示した点数は、上述の「交通違反の点数一覧表」(詳細は未説明)に掲げてある全ての交通違反が対象となって累積する点数であるため、過去に何等かの交通違反があれば、少しの速度超過だけで、免許停止や免許取消の行政処分が生じることがある。この為、各運転者は自らの免許停止や免許取消などの行政処分が生じない超過速度を正確に把握してなければならない。しかし、制限速度は道路により異なっており、更に同じ道路でも制限速度が突然変更になることがある。もちろん、制限速度の変更は道路標識により示してあるが、一瞬で通り過ぎてしまうため、それを見逃すことがある。
こうした複雑な条件下で、免許停止や免許取消の行政処分の対象となる速度が決められるため、行政処分の対象となる速度に達していることが分る情報を、何等かの手段で運転者に常時提供することができ、かつ運転者以外の同乗者には、その情報の存在が分らない、又は分かっていても車両内の雰囲気を壊さない形での情報提供がおこなわれることが求められる。
【実施例0017】
次に、(発明を実施するための形態)で概要を説明した本発明の基本形態にあたる速度範囲の提示方法を図2及び図3を使って、順次説明する。
図2は車両の走行速度に対する楽曲等の出力のレベルを示す図であり、横軸は車両の走行速度であり、これとは別に、速度範囲を示す両矢印が示してある。そこには、それ等を区切る速度をS1、S2、S3、S4、S5で示してある。縦軸には楽曲等の出力レベルを模式的に四角で示してある。ここで本発明は速度違反の警告を目的とした速度計であるため、制限速度(S1)以下の速度については、出力を無くしてある。このため、S1までは出力が無い状態が続くが、この機能は例えS1以下の走行速度であっても、本願と無関係なラジオ放送とか音楽など出力音が車内に出されることを妨げるものではない。
【0018】
ところで、車両が走行する道路はそれぞれに制限速度が定められている。その為、図2におけるS1は固定的な速度ではなく、道路ごとに指定された制限速度に合わせることになる。これにより、S2以降のS3、S4、S5などの速度についても、表1に示す超過速度の下限速度を加算した速度に実際にはなり、道路ごとに変動する速度である。
横軸の速度は速度ゼロから始まり、速度0~S1は出力が無く、速度S1~S2は速度範囲21、速度S2~S3は速度範囲22、速度S3~S4は速度範囲23、速度S4~S5は速度範囲24、速度S5以上は速度範囲25として、各速度範囲を速度の下側に矢印で示した。
【0019】
それ等の速度範囲に対応した楽曲等の出力は模式的に四角の形状の出力として示し、速度S1~S2の出力は31、速度S2~S3の出力は32、速度S3~S4の出力は33、速度S4~S5の出力は34、速度S5以上の出力は35として示した。
また、各四角は速度範囲を明確に区別するため、出力31は実線で示し、出力32は短い破線、出力33は一点鎖線、出力34は長い破線、出力35は二点鎖線で示してある。なお、これ等の四角内の具体的楽曲のイメージは多彩であるため特に示していない。
更に、四角形状の各出力は隣り合う四角の出力との境界で隙間があるように示してあるが、この隙間はそれぞれの出力を明確にする手段として設けたものである。このため、実際には互いに接触して音の出力に不連続性が生じることが無いようにしている。更に、場合によると、低速側の出力は境界の速度付近で速度の上昇に伴いフェードアウトし、高速側の出力は上昇に伴いフェードインする出力で、いわゆるクロスフェードを境界の速度付近ではさせることも可能であり、むしろクロスフェードが好ましい出力であることが多い。
そこで、クロスフェードの利用については、図5を用いて更に後述する。
【0020】
ここで例えば、各速度を10Km/hごとに区切って(0~10Km/h)、(10~20Km/h)、(20~30Km/h)、(30~40Km/h)の速度範囲とすることができる。
しかし、表1に示した速度超過の範囲は等間隔ではない。このため、この速度超過の速度範囲に合わせば、基準点数が段階的に増加するのと一致させることが可能になり、基準点数と速度範囲の関係を明確にできる利点がある。そのため、具体的にはS1は制限速度、S2は20Km/h超過した速度、S3は25Km/h超過した速度、S4は30Km/h超過した速度、S5は50Km/h超過した速度として、それぞれを表1に合わせた速度範囲とした。
【0021】
各速度範囲は異なる音源や楽曲等を出力するとし、例えば、楽曲はモダンジャズとして、速度範囲21の音源はシンバル、速度範囲22の音源はサックス、速度範囲23の音源はヴィブラフォン、速度範囲24の音源はベース、速度範囲25の音源はピアノとして、同じ楽曲の中のそれぞれの音源のパートを出力するようにする。これにより、制限速度S1以上の速度ではシンバルの音によるシンバルのパートに従った出力があり、速度S2以上の速度ではサックスの音によるサックスのパートに従った出力があり、これと同じように速度S3以上の速度ではヴィブラフォンの音による出力があり、速度S3以上の速度ではベースの音による出力があり、速度S3以上の速度ではピアノの音による出力がある。
こうした出力の違いにより、どの速度範囲で車両は走行しているか運転者は聴覚を介して理解できるようになる。更に加速すると音源の音色が変わり、次の速度範囲に車両の速度が移ったことが判断できる。このようにして、速度計を目視しなくても、聴覚によりおおよその走行速度を知ることが可能になる。これを音による速度計と称することにする。
ただし、この場合の速度計は正確に速度範囲を理解するには音源と速度範囲の関係を事前に理解しておく必要があり、ある程度の慣れが必要である。
【実施例0022】
次に、別の音による速度計を図3により説明する。この図も速度と楽曲等の出力の関係を示しており、横軸が車両の速度で、縦軸が出力である。基本的には図2と同じであるが、出力の形状が異なっている。ここでは、速度0~S1は出力が無く、速度S1からは速度増加に伴い出力が増大し、適宜に飽和してそれ以上の速度では出力41が継続する。これを実線で示した。
同様な出力の形状で、速度S2からは短い破線で示す出力42、速度43からは一点鎖線で示す出力43、速度S4からは長い破線で示す出力44、速度S5からは二点鎖線で示す出力45が出力41と同様に継続している。
このため、速度S1からS2間では出力41のみが車内に出力されるが、速度S2からS3間では出力41と出力42が車内に出力され、速度S3からS4間では出力41と出力42と出力43が車内に出力され、速度S4からS5間では出力41と出力42と出力43と出力44が車内に出力され、速度S5以上では出力41と出力42と出力43と出力44と出力45が車内に出力されることになる。
ここで、仮に出力41の音源はシンバル、出力42の音源はサックス、出力43の音源はヴィブラフォン、出力44の音源はベース、出力45の音源はピアノと仮にする。それ等の音源が同じ楽曲の各音源(この場合は楽器)のパートを出力することにすると、図3で示した速度範囲21ではシンバルのみの楽曲が出力され、速度範囲22ではシンバルとサックスのパートの楽曲が出力され、速度範囲23ではシンバルとサックスとヴィブラフォンのそれぞれのパートによる楽曲が出力されるようになる。このようにすることで、運転者は何種類の音源が重なった出力であるか判断すれば、その種類数が何段階目の速度範囲であるか分かる。これにより、車両の走行している速度範囲を容易に特定できるようになる。
ここで、出力41と42と43と44と45の出力レベルが異なるが、これは各線が重なり合うと図が繁雑になり、分りにくくなるため離したのであり、この出力レベルの差は特段の意味は無い。
【実施例0023】
上述の音による速度計を改良して、車両が免許停止及び免許取消となる速度で走行していることが判断できる音による速度計を次に説明する。なお、この説明は主に図2の速度計や図3の速度計に適用して説明するが、本願の請求は図2図3だけに限定するものではない。
【0024】
先に説明したように、免許停止や免許取消などの行政処分の前歴や交通違反に伴って累積する点数が運転者により異なる為、免許停止及び免許取消となる超過速度が運転者により変化することになる。このため、これまでに説明した図2図3の速度範囲の一部を定形的に免許停止や免許取消の速度範囲に入れ替えことはできない。
具体的には、表2に示す行政処分の前歴とこれまでに犯した交通違反に伴う基準点数の累積値で決まる事を考慮した免許停止や免許取消となる速度範囲を提示しなければ、個人対応に役立たせることができない。これが本願の第1の課題である。
更に、免許停止及び免許取消に相当する速度範囲であることを運転者に伝えることは、単に速度の超過を伝えることに比べて重大な内容であるため、運転者が見逃してしまわないように確実性を持たす必要がある。これが本願の第2の課題である。
そして、免許停止及び免許取消や累積する基準点数は個人情報であるため、例え同じ車両の同乗者に限定してであっても、簡単に運転者の個人情報が類推できたり、分ったりすることは防がなければならない。これが本願の第3の課題である。
【0025】
まず、第1の課題の対処から説明する。図4のA図とB図はそれぞれ図2と基本的には同じ超過速度と出力の関係を示す図である。また、図4のC図は図3と同じ超過速度と出力の関係を基本とした図である。なお、この3つの図は幾つもある出力パターンの中の例題として示したものであり、本発明はこれ等に拘束されるものではない。
図4の中のA図は、表2の中の行政処分0回で累積点数が0点の場合の超過速度と出力の関係を示している。また、図4の中のB図とC図は、表2の中の行政処分2回で累積点数が0点の場合の超過速度と出力の関係を示している。
【0026】
まず、図4の中のA図を説明する。
この図の出力は行政処分が0回で、累積点数も0点の運転手者用の出力であるので、表2の行政処分の前歴が0回の列を見ると免許停止は累積点数が6点からである。この基準点数(6点)に達する超過速度は表1によると、30Km/h以上である。
更に、免許取消は、表2によると累積点数が15点であるが、表1における最高基準点数は12点までであるため、速度超過だけでは15点に達せず、免許取消の行政処分が対象となる超過速度は存在しないことになる。
このことから、超過速度が20Km/h以上では、免許停止を示す音源または楽曲を出力し続けるようにする。
【0027】
その出力の例を示したのが、図4の(A図)である。
A図では超過速度が0から30Km/hまでは速度範囲21と22と23にまたがり、それぞれの速度範囲に対応する出力31と32と33が図2で示したと同に出力する。
次に、超過速度が30Km/h以上では、免許停止に相当する速度範囲に達していることを示す楽曲等の出力36を出力する。これにより、運転者は免許取消を意識することが可能になる。なお、速度範囲24及び速度範囲25の出力34と35は、図2に示した出力34と35に比べて、低いレベルの出力としている。この出力レベルの低下は、出力36が際立つようにする為であるが、必ずしも必要な低下ではない。また、出力34と35のレベル低下をさせながらも出力をして、出力を止めないのは、更なる速度の増加による速度範囲の変化を楽曲34や35から理解できるようにすることで、加点される基準点数に違いがあることを運転者に意識させるためである。
参考であるが、表1によると、速度範囲24では6点の加点となり、速度範囲25では12点の加点となる。このため、同じ免許停止の速度範囲であっても、基準点数に大きな差がある。これ等から明らかになると通り、本発明では単純に免許停止に相当する速度範囲で走行していることだけではなく、更なる速度増加に伴い加点される基準点数が異なることも運転者に意識させることができる特徴がある。
上記を具体化するプログラムのフローチャートは図6であるが、これ等の説明については後述する。
【実施例0028】
次に、図4の(B図)を説明する。この図の出力は行政処分が2回あるが、累積点数は0点の運転手用である。
ここで、表2の行政処分の前歴が2回の列を見ると、免許停止は累積点数が2点からであり、この基準点数(2点)に達する超過速度は表1によると20Km/h以上である。
更に、免許取消は累積点数が5点からであり、表1によるとこの点数(5点)に達する超過速度は30Km/h以上である。ちなみに、30Km/h以上の点数は6点である。
このことから、超過速度が20Km/h以上では免許停止を示す音源または楽曲を出力し、超過速度が30Km/h以上では免許取消を示す音源または楽曲を出力する。
その出力の例を示したのが、図4の(B図)である。
この図の速度範囲21はゼロから20Km/hまでで、図2と同じ出力レベルで楽曲31を出力している。
免許停止は超過速度が20Km/h以上であり、免許取消は超過速度30Km/h以上である。このため、速度範囲22と23の速度では免許停止の楽曲を出力する事になる。その出力を横線を施した四角36で示した。
また、速度範囲24やそれ以上の速度範囲は免許取消の楽曲を出力する事になる。その出力を格子模様を施した四角37で示した。
ここでは、(A図)と同様に出力レベルを低下させた楽曲32と33がそれぞれ速度範囲22と23で出力する。
超過速度が30Km/hを超えると免許取消の対象となる。このため、速度範囲24と25では免許取消の楽曲37を出力する事になる。また、ここでも速度範囲24と25で出力レベルを低下させた楽曲34と35をそれぞれ出力する。これにより、免許取消の速度の中でも速度範囲24と速度範囲25のどちらの速度範囲で走行しているか、いつでも運転者は区別して理解できるようになる。
【実施例0029】
ここまでは音源や楽曲として抽象的に説明をしてきたが、リアル感が少ないため、音源等を具体的にし、図4の(図B)の行政処分2回、累積点数0点の場合を例として説明をする。
まず、リアル感を出すために、音源となる楽器の種類を明確する。これについては図2で説明に使用した楽曲や音源とすることとし、
具体的には、楽曲はモダンジャズで、音源の楽器は
速度範囲21に対応する出力31はシンバル、
速度範囲22に対応する出力32はサックス、
速度範囲23に対応する出力33はヴィブラフォン、
速度範囲24に対応する出力34はベース、
速度範囲25に対応する出力35はピアノ、とする。
さらに、
免許停止を示す出力36は女性ボーカルの歌とし、
免許取消を示す出力37は男性ボーカルの歌の出力とする。
【0030】
図2の(図B)では、車速が制限速度以下の状態では、出力が無いが、制限速度を越えると、
速度範囲21に入り、モダンジャズの楽譜の中のシンバルのパートをシンバルの音で出力する。この出力は初期設定の出力レベルであり、この出力により運転者は制限速度を越えたことが分る。
更に、増速して制限速度を20Km/h越えると、速度範囲22に入り、モダンジャズの楽譜のサックスのパートをサックスの音で出力する。
更に、この速度範囲22は免許停止に相当する速度範囲でもある為、女性ボーカルの歌の出力が同時に開始する。
この例では、サックス32の出力レベルを下げてあり、女性ボーカルの出力を際立つようにしてある。このため、運転者は女性ボーカルの歌の出力が、免許停止に相当する走行速度を示している事さえ理解していれば、免許停止になる可能性を容易に自覚することができる。
更に、増速して制限速度を25Km/h越えると、速度範囲23に入り、モダンジャズの楽譜のヴィブラフォンのパートをヴィブラフォンの音で出力する。
同時に速度範囲23は免許停止に相当する速度範囲でもある為、女性ボーカルの歌が継続して出力される。ただし、違反に伴う基準点数が2点から3点に増加することも、運転者は自覚することができる。
この2点から3点に増加する基準点数の変更は、女性ボーカルの歌の出力だけでは運転者は分からないため、両者が重畳して出力することで初めて可能になる情報である。
更に、増速して制限速度を30Km/h越えると、速度範囲24に入り、モダンジャズの楽譜のベースのパートの出力が開始する。
同時に速度範囲24は免許取消に相当する速度範囲でもある為、男性ボーカルの歌の出力に変わる。
更に、増速して制限速度を50Km/h越えると、速度範囲25に入り、モダンジャズの楽譜のピアノのパートをピアノの音で出力する。
同時に速度範囲25は免許取消に相当する速度範囲でもある為、男性ボーカルの歌の継続で、免許取消に相当する速度範囲であることが理解できる。その上、違反に伴う基準点数は5段階目であるため、12点に増加していることも理解可能になる。
こうして、運転者は走行する車両が属する速度範囲の基準点数の変更と行政処分の対象が変化する様を、速度計を全く見ることなく理解しつつ、運転を継続することになる。
【0031】
更に、免許停止の対象速度に達すると肉声の歌を強調するように出力することで、運転者は速度違反による行政処分と基準点数の変化を強く意識できるようになる。また、運転者は車両が制限速度を越えて、どの段階の速度範囲で走行しているか常に把握できることになる。
これ等の各速度範囲を示す楽曲等や免許停止や免許取消などを示す楽曲等は、運転者が指定することになる。そのため、運転者以外の同乗者はその指定やルールを知らなければ、単にモダンジャズが車内に出力していると思うだけで、違和感のない車内を維持できる特徴が本願の速度計にはある。
これに対して、免許停止に相当する速度範囲に達すると、違反の速度範囲を下回らない限り「免許停止の速度です」などの警告音声が繰返えされたり、ビープ音などのアラーム音が鳴り続けるのでは、車内に良好な雰囲気があっても、それが台無しになってしまうのは明らかである。
こうした走行する速度範囲や速度違反の情報を楽曲等から常時得ることができ方法は、目視を必要とする既存の速度計や違反を知らせる従前の警報手段、例えば速度違反取締対策用のレーダー探知機などにはない機能である。
【実施例0032】
ここまでは、主に図2の速度と出力に関連させて説明をしたが、図2は速度範囲と出力する楽曲等との関係をある程度事前に理解していないと、車両はどの罰則の段階の速度範囲で走行しているか不明確になる問題が起こる。こうした場合は車両に元々ある速度計を目視すれば容易に問題は解消できるが、これは不便である。
これに比べて、図3の速度と出力の関係に基づいた速度範囲の提示(速度計と称している)に従えば、出力する音源の種類や楽曲の重畳数を聴覚で判断することで、その重畳数と表1で示した速度超過の罰則の段階数を等しくできるため、上記のどの段階の速度範囲で走行しているか不明確になる問題は容易に解決できる。
その特徴を生かした音による速度計を図4のC図を用いて、以下で具体的に説明する。
【0033】
図4のC図は、B図と同じ行政処分歴と累積点数の運転者の場合の超過速度と出力の関係を示す図である。これには図3と同じ速度範囲と出力形状が示してあり、行政処分回数と累積点数はB図の運転者と同じである。具体的には行政処分が2回であり、累積点数は0点としている。
そこで、免許停止に相当する出力は表2から基準点数が2点からであり、それは表1によると、超過速度が20Km/h以上からになる。更に、免許取消は表2から基準点数が4点からであり、それは表1によると、超過速度が30Km/h以上からになる。
そこで、速度範囲22と23の速度では免許停止を示す楽曲を出力することになる。その出力をB図と同様に横線を施した四角36で示してある。
また、免許取消に相当する出力は超過速度30Km/h以上であるため、速度範囲24やそれ以上の速度範囲は免許取消を示す楽曲を出力する。それを格子模様を施した四角37で示してある。
図4のC図は、図3で説明したと同じく、各超過速度から始まる出力41、42、43,44,45がそれ以上の速度では、出力が継続する出力特性として示してある。このため、各速度範囲において出力する楽曲等の種類数を聴覚で把握すれば、その種類数が表1における段階数に相当するので、各段階で追加される基準点数を運転中にも容易に把握が可能である。ただし、5種類ある段階数の各点数を覚えている必要はある。
【0034】
このためC図において、例えば出力36の楽曲等が出力され、かつ出力41と出力42の2種類の楽曲等の出力があることが分れば、免許停止に相当する速度で走行していることと、その速度範囲は2段階目の速度範囲22で走行していることが分る。ちなみに、この際の免許停止に相当する速度は速度範囲22と23の両者のどちらかで走行することになるが、例えば、速度範囲23で走行している場合は、出力41と出力42と出力43の3種類の出力があることで判断ができる。これにより、運転者は速度違反と認定されると、前者であれば累積点数に加える基準点数は2点であり、後者であれば3点であることが容易に判断できる。
更に、出力37に対応した楽曲等が出力され、例えば、出力41と出力42と出力43と出力44の4種類の楽曲等の出力があることが分れば、免許取消に相当する速度で走行していることと、その速度範囲は4段階目であるため、速度範囲24の中で走行していることが分る。
この速度違反による基準点数は4段階目の6点であり、それがもし5種類の楽曲等の出力であれば、5段階目であると判断出来て、12点が累積する点数に追加されることが運転中でも直ちに判断可能である。もちろん、その際に運転者は表1に示した速度超過の速度範囲と点数の関係を把握していることが必要条件である。
【0035】
この楽曲等の種類数の判断は比較的容易であり、例えば、この楽曲ではシンバルとサックスとヴィブラフォンの音がするので、「3種類の音源だ」などと容易に判断できる。かつ迅速に判断できるため、運転者は制限速度を何段階越えての走行速度に自らの車両がなっているか聴覚を用いて容易に理解できるようになる。特に道路の制限速度の突然の変更を示す標識は見落としがちであるが、こうした突然の条件の変化が起こっても、GPSによる走行する道路における位置情報やその道路の制限速度の情報を常に把握することができるため、直ちに制限速度の修正が成され、例えば、これまでのシンバルとサックスとヴィブラフォンの音にベースの音が加わったので、「4種類の音源に変わった」などと容易に判断できるようになる。
【0036】
ところで、上記では音源がシンバルとサックスとヴィブラフォンとベースの4種類の出力があり、更に出力37に対応した楽曲等が出力されることになる。 このような多数の音源が同時に出力する状態で、免許停止及び免許取消に相当する速度範囲であることを運転者が認識することは、単に速度の超過を伝えることに比べて重大な内容であるため、確実にその存在が分かるようにする必要がある。
それにも関わらず、肝心な免許停止や免許取消を意味する出力がどの音源であったか不明確になったり、出力を見逃したり、誤認したりする可能性がある。更に、免許停止や免許取消は個人情報であるため、それ等の出力が特に目立たないようにする必要も生じる。そのため、免許停止や免許取消の行政処分を意味する楽曲等の出力は運転者には分かりやすいが、同乗者にはそれ等の楽曲等の出力と、他の速度範囲を示す楽曲等の出力と区別がつかないようにする必要がある。
【0037】
こうした要求に答えるために、行政処分である免許停止や免許取消の速度範囲を意味する楽曲等の出力に際して、その出力と同じ信号、又はその出力と同期した信号を基にした振動をハンドルや運転席や足ものとペダルに楽曲等の出力と同時に発生させるようにした。これにより、運転者は楽曲等の出力と同期した振動がある場合は免許停止または免許取消などの行政処分を意味する楽曲等であることが、聴覚と触覚に共通する楽曲等の同期性から判断できるようになる。
これに対して、他の機器が発生する振動や路面からハンドルや運転席やペダルに伝わる振動は、聴覚から得られる楽曲等との同期性がないため、行政処分を意味する振動ではないことが分り、単なるノイズ(雑音)振動と判断することが可能になる。
また、ハンドルや運転席に発生させ振動は、運転者以外に同乗者には伝わらないようにする事ができるため、この楽曲等と同期した振動を同乗者が感じることがないようにできる。
これにより、免許停止や免許取消の行政処分を意味する楽曲等の出力は運転者には分かりやすいが、同乗者には他の速度範囲を示す楽曲等と区別がつかない状態になる。この楽曲等と振動の同期性の利用により、個人情報の漏洩の問題は大幅に回避できるようになる。
なお、ここで説明した同乗者には知覚されない振動は、目的の楽曲等を見つけ出す鍵であり、これは暗号化技術における秘密鍵に相当する。このため、これは音による速度計の部分的な暗号化と言える。
これとは別に、免許停止または免許取消に相当する速度範囲で走行していることの区別として、ハンドルでの振動は免許停止を意味し、座席での振動は免許停止を意味するなどとして、両者を振動する場所による違いの利用で区別が可能になる特徴も備える。さらに、ハンドルと座席とペダルの全てに振動を発生させるなどの組み合わせがあり、それ等の振動には他の情報を意味させることも可能になる。この振動や組み合わせは同乗者に理解できないようできるため、これ等の振動も暗号化技術における秘密鍵の役割を果たし、音による速度計の機能として暗号鍵を設けることが可能になる。
【0038】
ここまでは、楽曲等の音源として主に楽器や歌声などで説明してきたが、楽曲等の構成は音源の種類数だけではなく、楽曲等を構成するパートの数や異なる作品の組合せ数が変わることでも理解可能である。例えば、音源は同じ人の声で、伴奏の楽曲の口ずさみ、それに歌の口ずさみ加え、更に詩の朗読を加えて、伴奏と歌と朗読文の3種類からなる楽曲によって構成されているなどと判断できれば良いことになる。
これにより、運転者は聴覚を介して音源や楽曲等の種類数を意識的に把握すれば、その数から現在の速度が制限速度を何段階違反しているか直ちに理解できるようになる。
【実施例0039】
本願では図4のA図に示したように速度範囲ごとに出力する音源や楽曲を異にしているが、各速度範囲の境界付近の速度でほぼ定速走行をすると、走行速度に細かな変動があるため、境界の速度より低速側の楽曲等と高速側の楽曲等が小刻みに変化することになる。これに伴い出力する2種類の楽曲等が不自然な接続になり、聞き苦しくなる問題が生じる。この対策を図5で説明する。
【0040】
図5図4のA図の出力形状を変化させたものであり、図4との相違は、超過速度の境界、例えば20Km/hの速度の前後で、低速側の出力31は速度上昇に伴い徐々に出力を低下させ、高速側の出力32は速度上昇に伴い徐々に出力を増加させる出力手法(いわゆるクロスフェード)にすることで、解決が可能である。これにより、境界付近の速度を小刻みに変動する走行では、低速側と高速側の楽曲等が両者ともに出力した状態になるが、それぞれの出力が増減することになり、突然楽曲等が変わる不自然感を解消することができる。特に図5の超過速度が30Km/hは、速度範囲23を示す出力33と、免許停止に相当する超過速度に伴う出力36の境であり、この境界付近で各々の出力をクロスフェードさせることで、免許停止に相当する超過速度に徐々に入る判断や、明らかに免許停止に相当する超過速度に入ったことの判断を可能にする機能として利用できる。つまりクロスフェードが行われる速度領域は違反レベルが低いため、一種の予告的な警告の役割を果たす機能と見なすこともできる。
なお、クロスフェードが起こる速度は2つの速度範囲の境界付近の速度であるかの様にこれまで説明したが、必ずしも境界付近だけではなく、複数の速度範囲にまたがってフェードアウトやフェードインがなされても構わないことを付け加えておく。
【0041】
ここで、クロスフェードについて補足をする。ネット上の用語辞典(IT用語辞典)によると、「クロスフェード(crossfading)とは、複数の音声を繋ぎ合わせる技法の一つで、前の音声をフェードアウトしながら、同時に次の音声をフェードインすること。繋ぎ目をはっきり区切らずに滑らかに移行することができる。」とある。
【実施例0042】
次に、本発明の実施形態を示すフローチャートを図6で説明する。なお、このフローチャートは仮に警視庁の交通違反の取締りの規則を前提に説明するが、適用範囲はこの限りではない。
本フローは101のスタートで始まる。
102で車両の運転者などの使用者による必要な楽曲等の選択と、それに伴う記憶部12からの音源等の読込みを行う。
ここで、読込みを行う音源や楽曲等は、例えば各速度範囲(21~25等)に対応するそれぞれの楽曲等(M)及び、免許停止に相当する速度に対応する楽曲等(SM)や免許停止に相当する速度に対応する楽曲等(EM)などである。
103では、運転者の交通違反に伴う累積点数や行政処分の回数などと、その違反日などを取得する。
104では標識識認識部5やGPS検出処理部6から得れる地図情報などを基に、走行する道路の情報を得るとともに、制限速度(L)などの制約情報を取得する。
105では運転者の違反情報と道路の制約情報から免許停止及び免許取消に相当する速度範囲等を表1などに従って算出又は確認する。
106では、現在の車速(S)を取得する。
107では、車速(S)が属する速度範囲の楽曲等(M)を選択する。
108では、車速(S)は制限速度(L)以上であるか判断する。
否定であれば、109に移り、念のため楽曲等の全出力を停止し、118に移る。
108が肯定であれば、110に移り、車速(S)は免許停止の速度以上か判断する。
否定であれば、111に移り、もし楽曲等(M)が継続して出力いるのであればその出力は継続し、無ければ楽曲等(M)を出力する。さらに、もし楽曲等(SM)又は楽曲等(EM)が継続して出力いるのであれば、これ等は出力を停止し、118に移る。
110が肯定であれば、112に移り、楽曲等(SM)又は楽曲等(EM)の出力が決まっているので、それを際立たせるために、楽曲等(M)の出力レベルを調整して出力する
113では、車速(S)は免許取消の速度以上か判断する。
否定であれば、114に移り、免許停止に対応する楽曲等(SM)を出力する。または楽曲等(SM)の出力を継続する
115では楽曲等(SM)の信号または、それに同期する信号を出力して、図1のハンドル用振動部18や座席用振動部20を信号に従って振動させ、118に移る。
113が肯定であれば、116に移り、免許取消に相当する速度に対応する楽曲等(EM)を出力する。さらに、もし楽曲等(SM)の出力があれば、それは停止する。
117では、楽曲等(EM)の信号または、それに同期する信号を出力して、図1のハンドル用振動部18や座席用振動部20を信号に従って振動させ、118に移る。
118では、車両の運転が継続中であるか判断し、肯定であれば、104に移る。
118が否定であれば、本フローを119で停止する。
【0043】
なお、フローが何回も回るのに伴い、楽曲等(M)や楽曲等(SM)や楽曲等(EM)の出力が継ぎはぎだらけになり、楽曲等が不自然な出力になるのであれば、これを滑らかにする対処が必要となる。これについては本願の主目的ではないので特に述べないが、当然実施することになる。
また、上記のフローの説明中では、図1に示す車両に付属する機器等を使用することを前提にして説明をしたが、これ等が車両と切離して独立に動作する仕組みを持つのであれば、そこでの動作とみなして構わないことを追記しておく。
【0044】
最後に補足をしておくことにする。
これまでの説明では、音源等の説明は理解がしやすいように主に楽器として説明したが、スマホなどで使用されている電子音や小鳥のさえずりや自然界の音やサイレンの音などの録音なども自由に利用できる。
更に、記憶部12に記憶する楽曲は歌・楽譜・MIDIなどの情報を利用して各音源がそれに従い出力をすることを前提にして説明してきたが、最近は楽曲情報の主旋律からドラムセットなどによる副旋律を自動生成するソフトが存在するとともに、主旋律自体も自動生成するソフトが存在するので、それ等を本願の音源や楽曲として利用することが可能であることを記しておく。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本願は、車両の運転者が道路交通法の下の罰則規定を聴覚を介して理解できるようにするための速度計としての利用が主体である。
【符号の説明】
【0046】
1は駆動部、2は変速機、3は車輪、4は速度検出部、5は標識認識部、6はGPS検出・処理部、7は速度設定値入力部、8はエネルギー制御部、9はエネルギー源、10は制御部、11は表示部、12は記憶部、13は信号発生部、14はD/Aコンバータ、15はアンプ部、16はスピーカ、17はハンドル、18はハンドル振動部、19は運転者の座席、20は座席用振動部、21から25は各々速度範囲、31から35、及び41から45は各速度範囲の各々の音の出力、36は免許停止に相当する速度範囲を示す音の出力、37は免許取消に相当する速度範囲を示す音の出力、101から119まではフローチャートの各処理等に付けた番号である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6