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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115902
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】温調システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20240820BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240820BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240820BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240820BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240820BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20240820BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240820BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240820BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20240820BHJP
   B60L 58/27 20190101ALI20240820BHJP
【FI】
B60K11/04 G
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6568
B60L1/00 L
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/26
B60L58/27
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021802
(22)【出願日】2023-02-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 重
【テーマコード(参考)】
3D038
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC20
3D038AC22
3D038AC23
5H031KK08
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC19
5H125CD04
5H125CD06
5H125CD08
5H125CD09
5H125FF22
5H125FF23
5H125FF24
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】温度レンジの高い固体電池からなるバッテリの加温に際し、エネルギー効率のよい温調システムを提供する。
【解決手段】固体電池であるバッテリBATの温調システム1は、バッテリ水回路10と、暖房に利用される高温水回路20と、発熱部品を冷却する低温水回路30と、冷凍サイクル回路40と、三方弁51A、51B、52A、52Bと、低温水回路30から冷凍サイクル回路40に熱を移動させるチラー61と、冷凍サイクル回路40から高温水回路20に熱を移動させる水コンデンサ62と、を備える。三方弁51A~52Bは、バッテリ水回路10及び高温水回路20が連通され、連通したバッテリ水回路10及び高温水回路20から低温水回路30が遮断された高温連通状態に切替可能である。高温連通状態では、バッテリBATを流れる冷媒が水コンデンサ62を通り、発熱部品を流れる冷媒がチラー61を通る。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリの温調システムであって、
冷媒が流通し前記バッテリの温度を調整するバッテリ温調回路と、
前記車両の暖房として前記冷媒から放熱する高温冷媒回路と、
前記バッテリとは異なる発熱部品から前記冷媒へ吸熱する低温冷媒回路と、
前記車両の空調装置に用いられる冷凍サイクル回路と、
前記バッテリ温調回路と前記高温冷媒回路とが連通した高温側接続状態と遮断された高温側遮断状態とを切り替える第1バルブ機構と、
前記バッテリ温調回路と前記低温冷媒回路とが連通した低温側接続状態と遮断された低温側遮断状態とを切り替える第2バルブ機構と、
前記低温冷媒回路から前記冷凍サイクル回路に熱を移動させる第1熱交換器と、
前記冷凍サイクル回路から前記高温冷媒回路に熱を移動させる第2熱交換器と、を備え、
前記バッテリは、固体電池であり、
前記第1バルブ機構及び前記第2バルブ機構は、
前記低温側遮断状態且つ前記高温側接続状態とすることで、前記バッテリ温調回路及び前記高温冷媒回路が連通され、連通した前記バッテリ温調回路及び前記高温冷媒回路から前記低温冷媒回路が遮断された高温連通状態に切替可能であり、
前記高温連通状態では、
前記バッテリを流れる前記冷媒が、前記第2熱交換器を通り、
前記発熱部品を流れる前記冷媒が、前記第1熱交換器を通る、温調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の温調システムであって、
前記第1バルブ機構及び前記第2バルブ機構は、
前記低温側接続状態且つ前記高温側接続状態とすることで、前記バッテリ温調回路、前記高温冷媒回路、及び前記低温冷媒回路の全てが連通された全連通状態と、
前記低温側遮断状態且つ前記高温側接続状態とすることで、前記バッテリ温調回路及び前記高温冷媒回路が連通され、連通した前記バッテリ温調回路及び前記高温冷媒回路から前記低温冷媒回路が遮断された前記高温連通状態と、
前記低温側接続状態且つ前記高温側遮断状態とすることで、前記バッテリ温調回路及び前記低温冷媒回路が連通され、連通した前記バッテリ温調回路及び前記低温冷媒回路から前記高温冷媒回路が遮断された低温連通状態と、
前記低温側遮断状態且つ前記高温側遮断状態とすることで、前記バッテリ温調回路、前記高温冷媒回路、及び前記低温冷媒回路の全ての連通が遮断された無連通状態と、を切り替え可能である、温調システム。
【請求項3】
請求項2に記載の温調システムであって、
前記空調装置の停止時において、前記第1バルブ機構及び前記第2バルブ機構により前記全連通状態とする、温調システム。
【請求項4】
請求項1に記載の温調システムであって、
前記低温冷媒回路のみに、水加熱ヒーターが設けられている、温調システム。
【請求項5】
請求項1に記載の温調システムであって、
前記高温冷媒回路のみに水ラジエータが設けられ、
前記冷凍サイクル回路の外気への放熱は、前記第2熱交換器を介して前記水ラジエータで行う、温調システム。
【請求項6】
請求項1に記載の温調システムであって、
前記低温冷媒回路は、駆動装置を冷却し、
前記空調装置の暖房時における熱源は、前記駆動装置を含み、
前記駆動装置の排熱は、前記第1熱交換器、前記冷凍サイクル回路、前記第2熱交換器を介して前記高温冷媒回路のヒーターコアで利用される、温調システム。
【請求項7】
請求項1に記載の温調システムであって、
前記第1バルブ機構及び前記第2バルブ機構は、6個のポートと6本の内部通路を持つ単一のバルブ装置である、温調システム。
【請求項8】
請求項7に記載の温調システムであって、
前記バルブ装置は、
バルブ本体と、前記バルブ本体の外周部に配置されたハウジングとを有し、
前記バルブ本体には、30°ごとにバルブ開口が設けられ、
前記6本の内部通路は、それぞれ2つの前記バルブ開口に連通し、
前記ハウジングには、前記6個のポートが60°ごとに配置され、
前記ハウジングに対し、前記バルブ本体を30°ずつ回転させ、
前記バッテリ温調回路、前記高温冷媒回路、及び前記低温冷媒回路の全てが連通された全連通状態と、
前記バッテリ温調回路及び前記高温冷媒回路が連通され、前記低温冷媒回路が遮断された前記高温連通状態と、
前記バッテリ温調回路及び前記低温冷媒回路が連通され、前記高温冷媒回路が遮断された低温連通状態と、
前記バッテリ温調回路、前記高温冷媒回路、及び前記低温冷媒回路の全てが遮断された無連通状態と、を切り替え可能である、温調システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリの温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する研究開発が行われている。
【0003】
車両に搭載されるバッテリの温調システムに関しては、車両の空調装置の冷凍サイクル回路を利用して、バッテリを調温する技術知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-218211号公報
【特許文献2】特開2014-201224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本技術においては、バッテリを加温する際に発熱部品を冷却した冷却水の吸熱を利用することができず、エネルギーの効率化の点で改善の余地があった。特に、高温側の温度レンジの高い固体電池では、液電池とは異なる態様でバッテリを加温できる可能性があった。
【0006】
本発明は、温度レンジの高い固体電池からなるバッテリの加温に際し、エネルギー効率のよい温調システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
車両に搭載されるバッテリの温調システムであって、
冷媒が流通し前記バッテリの温度を調整するバッテリ温調回路と、
前記車両の暖房として前記冷媒から放熱する高温冷媒回路と、
前記バッテリとは異なる発熱部品から前記冷媒へ吸熱する低温冷媒回路と、
前記車両の空調装置に用いられる冷凍サイクル回路と、
前記バッテリ温調回路と前記高温冷媒回路とが連通した高温側接続状態と遮断された高温側遮断状態とを切り替える第1バルブ機構と、
前記バッテリ温調回路と前記低温冷媒回路とが連通した低温側接続状態と遮断された低温側遮断状態とを切り替える第2バルブ機構と、
前記低温冷媒回路から前記冷凍サイクル回路に熱を移動させる第1熱交換器と、
前記冷凍サイクル回路から前記高温冷媒回路に熱を移動させる第2熱交換器と、を備え、
前記バッテリは、固体電池であり、
前記第1バルブ機構及び前記第2バルブ機構は、
前記低温側遮断状態且つ前記高温側接続状態とすることで、前記バッテリ温調回路及び前記高温冷媒回路が連通され、連通した前記バッテリ温調回路及び前記高温冷媒回路から前記低温冷媒回路が遮断された高温連通状態に切替可能であり、
前記高温連通状態では、
前記バッテリを流れる前記冷媒が、前記第2熱交換器を通り、
前記発熱部品を流れる前記冷媒が、前記第1熱交換器を通る。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温度レンジの高い固体電池からなるバッテリの加温に際し、エネルギー効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の温調システム1の回路図である。
図2】全連通状態における、空調停止時のバッテリパッシブ加温モードを示す温調システム1の回路図である。
図3】全連通状態における、空調停止時のバッテリパッシブ冷却モードを示す温調システム1の回路図である。
図4】低温連通状態における、冷房時のバッテリ冷却モードを示す温調システム1の回路図である。
図5】低温連通状態における、除湿時のバッテリ冷却モードを示す温調システム1の回路図である。
図6】低温連通状態における、暖房時のバッテリ冷却モードを示す温調システム1の回路図である。
図7】低温連通状態における、空調停止時のバッテリアクティブ冷却モードを示す温調システム1の回路図である。
図8】無連通状態における、冷房時のバッテリ無調整モードを示す温調システム1の回路図である。
図9】無連通状態における、除湿時のバッテリ無調整モードを示す温調システム1の回路図である。
図10】無連通状態における、暖房時のバッテリ無調整モードを示す温調システム1の回路図である。
図11】高温連通状態における、冷房時のバッテリ加温モードを示す温調システム1の回路図である。
図12】高温連通状態における、除湿時のバッテリ加温モードを示す温調システム1の回路図である。
図13】高温連通状態における、暖房時のバッテリ加温モードを示す温調システム1の回路図である。
図14】高温連通状態における、空調停止時のバッテリアクティブ加温モードを示す温調システム1の回路図である。
図15】オートエアコンシステム80の概略図である。
図16】統合バルブ60の縦断面図である。
図17図16のA-A断面、B-B断面、C-C断面を示す図である。
図18】温調システム1が全連通状態となる、統合バルブ60の第1状態を示す図である。
図19】温調システム1が高温連通状態となる、統合バルブ60の第2状態を示す図である。
図20】温調システム1が無連通状態となる、統合バルブ60の第3状態を示す図である。
図21】温調システム1が高温低温連通状態となる、統合バルブ60の第4状態を示す図である。
図22】温調システム1が全連通状態となる、統合バルブ60の第5状態を示す図である。
図23】温調システム1が低温連通状態となる、統合バルブ60の第6状態を示す図である。
図24】統合バルブ60の状態とモードとをまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の車両用の温調システムの一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
【0011】
先ず、本実施形態の温調システム1の構成について説明する。図1は、温調システム1の回路図である。
図1に示すように、温調システム1は、バッテリ水回路10と、高温水回路20と、低温水回路30と、車両の空調装置に用いられる冷凍サイクル回路40と、第1三方弁51A、51Bと、第2三方弁52A、52Bと、チラー61と、水コンデンサ62と、を備える。
【0012】
バッテリ水回路10には、バッテリBATが配置される。バッテリ水回路10は、バッテリBATの温度が所定範囲内に収まるようにBATを調温する。即ち、バッテリ水回路10は、バッテリBATの温度が所定範囲より高い場合、バッテリBATを冷却し、バッテリBATの温度が所定範囲より低い場合、バッテリBATを加温する。
【0013】
バッテリBATは、固体電池である。また、バッテリBATは全他固体電池であってもよい。固体電池は、動作温度が液電池より広く、特に、上限温度が液電池に比べて広い。そのため、液体電池では独立せざるを得なかった、バッテリ水回路10、高温水回路20、及び低温水回路30を連通させることが可能である。
【0014】
高温水回路20には、ヒーターコア21、電動ポンプ22、水ラジエータ25、及び水コンデンサ62が配置される。ヒーターコア21は、図15に示す空調装置のオートエアコンシステム80に組み込まれる。
【0015】
オートエアコンシステム80は、ファン86により、車室内の空気(内気)と車室外の空気(外気)を内外気切替バルブ85で選択的に取り込み、エバポレータ41を介して温調バルブ87に供給する。温調バルブ87の下流には、そのまま車室の吹出口に繋がる吹出流路83に繋がる流路と、ヒーターコア21に繋がる流路とが設けられる。オートエアコンシステム80では、空調装置のオフ時(空調停止時、図2、3、7、14参照)及び冷房時(冷房稼働時、図4、8、11参照)に温調バルブ87が閉じるように制御され、ヒーターコア21に繋がる流路が遮断される。
【0016】
一方、空調装置の暖房時(暖房稼働時、図6、10、13参照)及び除湿時(除湿稼働時、図5、9、12参照)には、設定温度に応じて温調バルブ87の開度が制御され、それぞれの流路に供給される空気の量が調整される。ヒーターコア21には高温水回路20の冷媒が流通し、ヒーターコア21を通る空気は冷媒により放熱されて空気が温まる。即ち、高温水回路20は、車両の暖房として冷媒から放熱する。
【0017】
水ラジエータ25は、高温水回路20のみに設けられ、温調システム1において冷媒の外気への放熱はこの水ラジエータ25を介して行う。これにより、外気放熱を高温水回路20の水ラジエータ25に集約することができ、冷凍サイクル回路の空冷コンデンサを廃止できる。
【0018】
水コンデンサ62は、冷凍サイクル回路40から高温水回路20に熱を移動させる熱交換器である。水コンデンサ62は、後述する冷凍サイクル回路40において圧縮機43の下流且つ膨張弁45、47の上流に設けられ、圧縮機43で高温になった冷媒の熱を、高温水回路20の冷媒へ移動させる。
【0019】
低温水回路30には、電動ポンプ32、車載充電器31、駆動装置33、水加熱ヒーター35、及びチラー61が配置される。車載充電器31は、発熱部品の例示であり、低温水回路30には、車載充電器31に代えて、若しくは車載充電器31とともにDCDCコンバータ等の冷却が必要な他の発熱部品が配置され得る。駆動装置33は、車両の駆動モータ、発電モータ、インバータ、変速機等の駆動系の装置である。
【0020】
なお、ヒーターコア21に繋がる高温水回路20の冷媒温度は、駆動装置33に繋がる低温水回路30の冷媒温度より高く、温調システム1において、高温水回路20は冷媒から放熱する回路であり、低温水回路30は冷媒へ吸熱する回路である。
【0021】
水加熱ヒーター35は、低温水回路30のみに設けられる。水加熱ヒーター35を、あえて低温水回路30に配置することで、極低温環境における暖房やバッテリを昇温する際に、最低限の出力で冷媒をわずかに昇温させるだけで、冷凍サイクル回路40を介して暖房の水温を確保できる。
【0022】
チラー61は、低温水回路30から冷凍サイクル回路40に熱を移動させる熱交換器である。チラー61は、後述する冷凍サイクル回路40において膨張弁47の下流且つ圧縮機43の上流に設けられ、膨張弁47で低温になった冷媒で、低温水回路30の冷媒を冷却し、低温水回路30から受けた熱を水コンデンサ62を介して高温水回路20の冷媒へ移動させる。
【0023】
冷凍サイクル回路40は、エバポレータ41、圧縮機43、水コンデンサ62、及び膨張弁45がこの順に配置された主流路42と、水コンデンサ62と膨張弁45との間の分岐部44で主流路42から分岐して、エバポレータ41と圧縮機43との間の合流部46で主流路42に合流する分岐流路48と、を備える。分岐流路48には、分岐部44から順に膨張弁47とチラー61とが配置される。
【0024】
圧縮機43は、空調装置のオフ時(空調停止時、図2、3参照)にオフ状態(非稼働状態)となり、空調装置の暖房時(暖房稼働時、図6、10、13参照)、冷房時(冷房稼働時、図4、8、11参照)及び除湿時(除湿稼働時、図5、9、12参照)にオン状態(稼働状態)となる。ただし、空調装置のオフ時であっても、チラー61による熱交換を行う際には、圧縮機43がオン状態(稼働状態)となる(図7、14参照)。
【0025】
膨張弁45は、空調装置のオフ時(空調停止時、図2、3、7、14参照)及び暖房時(暖房稼働時、図6、10、13参照)にオフ状態となり、空調装置の冷房時(冷房稼働時、図4、8、11参照)及び除湿時(除湿稼働時、図5、9、12参照)にオン状態となる。膨張弁47は、チラー61による熱交換を行う際(図4~14参照)にオン状態となり、チラー61による熱交換を行わない時(図2、3参照)にオフ状態となる。
【0026】
このように構成されたバッテリ水回路10、高温水回路20、及び低温水回路30は、共通の冷媒が流通し、バッテリ水回路10及び高温水回路20が第1三方弁51A、51Bにより連通/遮断可能に構成され、バッテリ水回路10及び低温水回路30が第2三方弁52A、52Bにより連通/遮断可能に構成される。なお、冷媒は、水、オイル等の液体を主成分とする液状媒体である。
【0027】
第1三方弁51A、51Bは、バッテリ水回路10と高温水回路20とが連通した高温側接続状態と、バッテリ水回路10と高温水回路20とが遮断された高温側遮断状態とを切り替える。第2三方弁52A、52Bは、バッテリ水回路10と低温水回路30とが連通した低温側接続状態と、バッテリ水回路10と低温水回路30とが遮断された低温側遮断状態とを切り替える。
【0028】
したがって、第1三方弁51A、51B及び第2三方弁52A、52Bは、温調システム1を、以下の全連通状態、高温連通状態、低温連通状態、及び無連通状態に切り替え可能に構成される。
【0029】
全連通状態は、第2三方弁52A、52Bを低温側接続状態且つ第1三方弁51A、51Bを高温側接続状態とすることで実現され、図2及び図3に示すように、バッテリ水回路10、高温水回路20、及び低温水回路30の全てが連通された状態である。全連通状態では、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が、第2三方弁52A、第1三方弁51B、電動ポンプ22、水ラジエータ25、水コンデンサ62、ヒーターコア21、第1三方弁51A、バッテリBAT、第2三方弁52B、車載充電器31、駆動装置33、水加熱ヒーター35、チラー61を介して電動ポンプ32に戻るように循環する。なお、電動ポンプ32の代わりに、電動ポンプ22を駆動してもよく、両方を駆動してもよい。
【0030】
図2に示す全連通状態(空調停止)では、バッテリ温度が所定範囲より低い場合に、水加熱ヒーター35をオンにして、電動ポンプ22(及び/又は電動ポンプ32)を駆動することで、冷媒がバッテリ水回路10、高温水回路20、及び低温水回路30を循環する。そして、車載充電器31、駆動装置33、水加熱ヒーター35の熱で冷媒が温められ、バッテリBATが加温される(バッテリパッシブ加温)。水ラジエータ25は、シャッターグリル等で放熱されないように制御される。
【0031】
図3に示す全連通状態(空調停止)では、バッテリ温度が所定範囲より高い場合に、水加熱ヒーター35をオフにして、電動ポンプ22(及び/又は電動ポンプ32)を駆動することで、冷媒がバッテリ水回路10、高温水回路20、及び低温水回路30を循環する。そして、水ラジエータ25からの放熱で冷媒が冷却され、バッテリBATが冷却される。
【0032】
温調システム1によれば、バッテリ水回路10、高温水回路20、及び低温水回路30を連通させることができるので、図2及び図3に示すように、空調装置の停止時であっても、全連通状態とすることで、バッテリBATを調温することができる。
【0033】
低温連通状態は、第2三方弁52A、52Bを低温側接続状態且つ第1三方弁51A、51Bを高温側遮断状態とすることで、図4図7に示すように、バッテリ水回路10及び低温水回路30が連通され、連通したバッテリ水回路10及び低温水回路30から高温水回路20が遮断された状態である。低温連通状態では、バッテリ水回路10及び低温水回路30において、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が、第2三方弁52A、第1三方弁51B、バッテリBAT、第2三方弁52B、車載充電器31、駆動装置33、水加熱ヒーター35、チラー61を介して電動ポンプ32に戻るように循環する。また、高温水回路20において、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が、水ラジエータ25、水コンデンサ62、ヒーターコア21、第1三方弁51Aを介して電動ポンプ22に戻るように循環する。
【0034】
低温連通状態は、バッテリBATを冷却する必要があるときに選択される。
図4に示す低温連通状態(冷房時)では、バッテリ温度が所定範囲より高い場合に、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が連通したバッテリ水回路10及び低温水回路30を循環する。このとき、冷媒の熱がチラー61で冷凍サイクル回路40に移動して冷媒が冷却され、この冷媒によりバッテリBATが冷却される。また、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が高温水回路20を循環する。冷凍サイクル回路40に移動した熱は、水コンデンサ62を介して高温水回路20に移動して冷媒を温め、高温水回路20の水ラジエータ25で放熱される。
【0035】
図5に示す低温連通状態(除湿時)では、バッテリ温度が所定範囲より高い場合に、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が連通したバッテリ水回路10及び低温水回路30を循環する。このとき、冷媒の熱がチラー61で冷凍サイクル回路40に移動して冷媒が冷却され、この冷媒によりバッテリBATが冷却される。また、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が高温水回路20を循環する。冷凍サイクル回路40に移動した熱は、水コンデンサ62を介して高温水回路20に移動して冷媒を温め、ヒーターコア21で暖房として利用され、高温水回路20の水ラジエータ25で放熱される。なお、図5では、水ラジエータ25からの放熱と、水加熱ヒーター35による創熱が点線で描かれている。これは、温調システム1全体のエネルギー収支(熱量の収支)によって創熱か放熱の一方となることを意味する。即ち、系全体で熱量が足りなければ水加熱ヒーター35で創熱し、余っていれば水ラジエータ25で放熱する。なお、系全体で熱量が偶然釣り合う場合、創熱も放熱もしない。水ラジエータ25によって放熱させないためには、シャッターグリル等で熱交換を規制する。以下、図6、9~13において同様であり、以後説明は省略する。
【0036】
図6に示す低温連通状態(暖房時)では、バッテリ温度が所定範囲より高い場合に、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が連通したバッテリ水回路10及び低温水回路30を循環する。このとき、冷媒の熱がチラー61で冷凍サイクル回路40に移動して冷媒が冷却され、この冷媒によりバッテリBATが冷却される。また、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が高温水回路20を循環する。冷凍サイクル回路40に移動した熱は、水コンデンサ62を介して高温水回路20に移動して冷媒を温め、ヒーターコア21で暖房として利用される。
【0037】
図7に示す低温連通状態(空調停止時)では、バッテリ温度が所定範囲より高い場合に、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が連通したバッテリ水回路10及び低温水回路30を循環する。このとき、冷媒の熱がチラー61で冷凍サイクル回路40に移動して冷媒が冷却され、この冷媒によりバッテリBATが冷却される。ここで、バッテリ温度が所定範囲より高い場合、空調停止時であっても圧縮機43を稼働するとともに膨張弁47を開弁する。これにより、低温水回路30の冷媒の熱がチラー61で冷凍サイクル回路40に移動する。また、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が高温水回路20を循環する。冷凍サイクル回路40に移動した熱は、水コンデンサ62を介して高温水回路20に移動して冷媒を温め、高温水回路20の水ラジエータ25で放熱される。このように空調停止時であっても、冷凍サイクル回路40を利用してバッテリBATを積極的に冷却することができる。
【0038】
無連通状態は、第2三方弁52A、52Bを低温側遮断状態且つ第1三方弁51A、51Bを高温側遮断状態とすることで、図8図10に示すように、バッテリ水回路10、高温水回路20、及び低温水回路30の全ての連通が遮断された状態である。無連通状態では、バッテリ水回路10では、冷媒が循環しない。高温水回路20において、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が、水ラジエータ25、水コンデンサ62、ヒーターコア21、第1三方弁51Aを介して電動ポンプ22に戻るように循環する。低温水回路30において、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が、第2三方弁52A、車載充電器31、駆動装置33、水加熱ヒーター35、チラー61を介して電動ポンプ32に戻るように循環する。
【0039】
無連通状態は、バッテリBATを加温も冷却もする必要がないときに選択される。
図8に示す無連通状態(冷房時)では、バッテリ温度が所定範囲にある場合に、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が低温水回路30を循環する。このとき、冷媒の熱がチラー61で冷凍サイクル回路40に移動して冷媒が冷却される。また、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が高温水回路20を循環する。冷凍サイクル回路40に移動した熱は、水コンデンサ62を介して高温水回路20に移動して冷媒を温め、高温水回路20の水ラジエータ25で放熱される。
【0040】
図9に示す無連通状態(除湿時)では、バッテリ温度が所定範囲にある場合に、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が低温水回路30を循環する。このとき、冷媒の熱がチラー61で冷凍サイクル回路40に移動して冷媒が冷却される。また、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が高温水回路20を循環する。冷凍サイクル回路40に移動した熱は、水コンデンサ62を介して高温水回路20に移動して冷媒を温め、ヒーターコア21で暖房として利用される。
【0041】
図10に示す無連通状態(暖房時)では、バッテリ温度が所定範囲にある場合に、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が低温水回路30を循環する。このとき、冷媒の熱がチラー61で冷凍サイクル回路40に移動して冷媒が冷却される。また、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が高温水回路20を循環する冷凍サイクル回路40に移動した熱は、水コンデンサ62を介して高温水回路20に移動して冷媒を温め、ヒーターコア21で暖房として利用される。
【0042】
高温連通状態は、第2三方弁52A、52Bを低温側遮断状態且つ第1三方弁51A、51Bを高温側接続状態とすることで、図11図14に示すように、バッテリ水回路10及び高温水回路20が連通され、連通したバッテリ水回路10及び高温水回路20から低温水回路30が遮断された状態である。高温連通状態では、バッテリ水回路10及び高温水回路20において、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が、水ラジエータ25、水コンデンサ62、ヒーターコア21、第1三方弁51A、バッテリBAT、第2三方弁52B、第1三方弁51Bを介して電動ポンプ22に戻るように循環する。また、低温水回路30において、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が、第2三方弁52A、車載充電器31、駆動装置33、水加熱ヒーター35、チラー61を介して電動ポンプ32に戻るように循環する。
【0043】
高温連通状態は、バッテリBATを加温する必要があるときに選択される。
図11に示す高温連通状態(冷房時)では、バッテリ温度が所定範囲より低い場合に、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が低温水回路30を循環する。このとき、冷媒の熱がチラー61で冷凍サイクル回路40に移動する。また、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が連通したバッテリ水回路10及び高温水回路20を循環する。冷凍サイクル回路40に移動した熱は、水コンデンサ62を介して連通したバッテリ水回路10及び高温水回路20に移動し、高温水回路20の冷媒を温め、バッテリBATが加温される。
【0044】
図12に示す高温連通状態(除湿時)では、バッテリ温度が所定範囲より低い場合に、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が低温水回路30を循環する。このとき、冷媒の熱がチラー61で冷凍サイクル回路40に移動する。また、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が連通したバッテリ水回路10及び高温水回路20を循環する。冷凍サイクル回路40に移動した熱は、水コンデンサ62を介して連通したバッテリ水回路10及び高温水回路20に移動し、高温水回路20の冷媒を温めるとともにヒーターコア21で暖房として利用され、バッテリBATが加温される。
【0045】
図13に示す高温連通状態(暖房時)では、バッテリ温度が所定範囲より低い場合に、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が低温水回路30を循環する。このとき、冷媒の熱がチラー61で冷凍サイクル回路40に移動する。また、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が連通したバッテリ水回路10及び高温水回路20を循環する。冷凍サイクル回路40に移動した熱は、水コンデンサ62を介して連通したバッテリ水回路10及び高温水回路20に移動し、高温水回路20の冷媒を温めるとともにヒーターコア21で暖房として利用され、バッテリBATが加温される。
【0046】
図14に示す高温連通状態(空調停止時)では、バッテリ温度が所定範囲より低い場合に、電動ポンプ32を駆動することで、冷媒が低温水回路30を循環する。ここで、バッテリ温度が所定範囲より低い場合、空調停止時であっても圧縮機43を稼働するとともに膨張弁47を開弁する。これにより、低温水回路30の冷媒の熱がチラー61で冷凍サイクル回路40に移動する。また、電動ポンプ22を駆動することで、冷媒が連通したバッテリ水回路10及び高温水回路20を循環する。冷凍サイクル回路40に移動した熱は、水コンデンサ62を介して高温水回路20に移動し、高温水回路20の冷媒を温め、バッテリBATが加温される。このように空調停止時であっても、冷凍サイクル回路40を利用してバッテリBATを積極的に加温することができる。
【0047】
このように、図11図14に示す高温連通状態では、暖房用の高温水回路20を利用してバッテリBATを加温することができる。したがって、バッテリBATを早期に昇温することができ、エネルギー効率が向上する。また、図14に示す空調停止時であっても、冷凍サイクル回路40を利用してバッテリBATを加温することができる。
【0048】
低温水回路30は、駆動装置33等を冷却する回路であるため、チラー61の稼働時には駆動装置33の排熱が、低温水回路30、チラー61、冷凍サイクル回路40、水コンデンサ62を介して、連通した高温水回路20及びバッテリ水回路10に移動する。したがって、駆動装置33の排熱を、空調装置の暖房時の熱源としても、バッテリBATを加温する際の熱源としても利用することができるので、エネルギー効率を向上させることができる。
【0049】
また、低温水回路30のみに水加熱ヒーター35が設けられており、水加熱ヒーター35で創熱された熱は、低温水回路30、チラー61、冷凍サイクル回路40、水コンデンサ62を介して、連通した高温水回路20及びバッテリ水回路10に移動させることができ、極低温環境における暖房やバッテリを昇温する際の時間を短縮できる。
【0050】
また、水加熱ヒーター35を、あえて低温水回路30に配置することで、駆動装置33の排熱を利用しながら、最低限の出力で冷媒をわずかに昇温させるだけで、バッテリ水回路10を介して暖房及び/又はバッテリBATを加温する際の水温を確保できる。
【0051】
さらに、高温水回路20のみに水ラジエータ25が設けられ、冷凍サイクル回路40の外気への放熱は、水コンデンサ62を介して水ラジエータ25で行うので、外気放熱を高温水回路20の水ラジエータ25に集約することができ、冷凍サイクル回路40の空冷コンデンサを廃止できる。
【0052】
(変形例)
上記実施形態では、第1三方弁51A、51B及び第2三方弁52A、52Bの4つの三方弁を用いて温調システム1の全連通状態、高温連通状態、低温連通状態、及び無連通状態を切り替えていたが、以下の変形例では1つの統合バルブ60によって温調システム1の全連通状態、高温連通状態、低温連通状態、及び無連通状態が切り替えられる。
【0053】
図16は、統合バルブ60の縦断面図であり、図17は、図16のA-A断面、B-B断面、C-C断面を示す図である。
【0054】
統合バルブ60は、バルブ本体70と、バルブ本体70の外周部に配置されたハウジング81と、を有する。バルブ本体70は、略円柱形状を有し、30°ごとに外周面にバルブ開口720~731が設けられる。より具体的に説明すると、バルブ本体70は、一体回転するバルブ上段70A及びバルブ下段70Bを有し、バルブ上段70Aの外周面に60°ごとにバルブ開口721、723、725、727、729、731が設けられ、バルブ下段70Bの外周面に60°ごとにバルブ開口720、722、724、726、728、730が設けられる。バルブ上段70Aに設けられるバルブ開口と、バルブ上段70Aに設けられるバルブ開口とは30°ずれて配置されることで、30°ごとにバルブ開口720~731が設けられる。
【0055】
バルブ上段70Aに形成された隣り合うバルブ開口721、723は、内部通路713で連通し、隣り合うバルブ開口725、727は、内部通路712で連通し、隣り合うバルブ開口729、731は、内部通路711で連通する。内部通路711~713はそれぞれ独立している。
【0056】
バルブ下段70Bに形成された180°の位置にある2つのバルブ開口720、726は内部通路714で連通し、内部通路714を挟んで一方側にある隣り合うバルブ開口728、730は、内部通路715で連通し、内部通路714を挟んで他方側にある隣り合うバルブ開口722、724は、内部通路716で連通する。内部通路714~716はそれぞれ独立している。
【0057】
ハウジング81は、円筒形状を有し、バルブ本体70の周囲に液密に配置される。ハウジング81の外周面には、6個のポート811、812、813、814、815、816が60°ごとに配置される。6個のポート811~816のうち、隣り合うポート811、816には、バッテリ水回路10が接続され、隣り合うポート812、813には、低温水回路30が接続され、隣り合うポート814、815には、高温水回路20が接続される。
【0058】
このように構成された統合バルブ60は、ハウジング81に対し、バルブ本体70を30°ずつ回転させることで、ハウジング81の6個のポート811~816と、バルブ本体70の内部通路711~716が選択的に連通することで、バッテリ水回路10、高温水回路20、及び低温水回路30が選択的に連通する。バルブ本体70を30°ずつ回転させるので、ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ上段70Aの内部通路711~713とが連通する状況と、ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ下段70Bの内部通路714~716とが連通する状況とが、交互に発生する。
【0059】
以下、統合バルブ60の動作について図18図23を参照しながらより具体的に説明する。図18図23では、上部にバルブ上段70Aとハウジング81の6個のポート811~816の位置関係を示しており、下部にバルブ下段70Bとハウジング81の6個のポート811~816の位置関係を示している。
【0060】
図18に示す統合バルブ60の第1状態では、ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ上段70Aの内部通路711~713が連通し、ポート811、816に接続されるバッテリ水回路10と、ポート814、815に接続される高温水回路20と、ポート812、813に接続される低温水回路30とが、内部通路711~713で連通する。ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ下段70Bの内部通路714~716は連通せず、全ての内部通路714~716が封鎖される。したがって、図18に示す統合バルブ60の第1状態では、図2及び図3で説明した全連通状態が実現される。
【0061】
図19に示す統合バルブ60の第2状態では、ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ下段70Bの内部通路714~716が連通し、ポート811、816に接続されるバッテリ水回路10と、ポート814、815に接続される高温水回路20とが内部通路714、715で連通し、ポート812、813に接続される低温水回路30が内部通路716により、連通したバッテリ水回路10及び高温水回路20から遮断される。ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ上段70Aの内部通路711~713は連通せず、全ての内部通路711~713が封鎖される。したがって、図19に示す統合バルブ60の第2状態では、図11図14で説明した高温連通状態が実現される。
【0062】
図20に示す統合バルブ60の第3状態では、ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ上段70Aの内部通路711~713が連通し、ポート811、816に接続されるバッテリ水回路10が内部通路711によって高温水回路20及び低温水回路30から遮断され、ポート814、815に接続される高温水回路20が内部通路712によってバッテリ水回路10及び低温水回路30から遮断され、ポート812、813に接続される低温水回路30が内部通路713によってバッテリ水回路10及び高温水回路20から遮断される。ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ下段70Bの内部通路714~716は連通せず、全ての内部通路714~716が封鎖される。したがって、図20に示す統合バルブ60の第3状態では、図9図10で説明した無連通状態が実現される。
【0063】
図21に示す統合バルブ60の第4状態では、ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ下段70Bの内部通路714~716が連通し、ポート814、815に接続される高温水回路20と、ポート812、813に接続される低温水回路30とが内部通路714、716で連通し、ポート811、816に接続されるバッテリ水回路10が内部通路715により、連通した高温水回路20及び低温水回路30から遮断される。ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ上段70Aの内部通路711~713は連通せず、全ての内部通路711~713が封鎖される。したがって、図21に示す統合バルブ60の第4状態では、前述の実施形態では存在しなかった高温低温連通状態が実現される。
【0064】
図22に示す統合バルブ60の第5状態では、ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ上段70Aの内部通路711~713が連通し、ポート811、816に接続されるバッテリ水回路10と、ポート814、815に接続される高温水回路20と、ポート812、813に接続される低温水回路30とが、内部通路711~713で連通する。ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ下段70Bの内部通路714~716は連通せず、全ての内部通路714~716が封鎖される。したがって、図22に示す統合バルブ60の第5状態では、図2及び図3で説明した全連通状態が実現される。
【0065】
図23に示す統合バルブ60の第6状態では、ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ下段70Bの内部通路714~716が連通し、ポート811、816に接続されるバッテリ水回路10と、ポート812、813に接続される低温水回路30とが内部通路714、715で連通し、ポート814、815に接続される高温水回路20が内部通路716により、連通したバッテリ水回路10及び低温水回路30から遮断される。ハウジング81の6個のポート811~816とバルブ上段70Aの内部通路711~713は連通せず、全ての内部通路711~713が封鎖される。したがって、図23に示す統合バルブ60の第6状態では、図4図7で説明した低温連通状態が実現される。
【0066】
なお、ハウジング81に対し、さらにバルブ本体70を30°ずつ回転させると、第1状態、第2状態、第3状態、・・・と遷移する。図24は、統合バルブ60の状態とモードとをまとめた表である。
【0067】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0068】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0069】
(1) 車両に搭載されるバッテリ(バッテリBAT)の温調システム(温調システム1)であって、
冷媒が流通し前記バッテリの温度を調整するバッテリ温調回路(バッテリ水回路10)と、
前記車両の暖房として前記冷媒から放熱する高温冷媒回路(高温水回路20)と、
前記バッテリとは異なる発熱部品(車載充電器31)から前記冷媒へ吸熱する低温冷媒回路(低温水回路30)と、
前記車両の空調装置に用いられる冷凍サイクル回路(冷凍サイクル回路40)と、
前記バッテリ温調回路と前記高温冷媒回路とが連通した高温側接続状態と遮断された高温側遮断状態とを切り替える第1バルブ機構(第1三方弁51A、51B、統合バルブ60)と、
前記バッテリ温調回路と前記低温冷媒回路とが連通した低温側接続状態と遮断された低温側遮断状態とを切り替える第2バルブ機構(第2三方弁52A、52B、統合バルブ60)と、
前記低温冷媒回路から前記冷凍サイクル回路に熱を移動させる第1熱交換器(チラー61)と、
前記冷凍サイクル回路から前記高温冷媒回路に熱を移動させる第2熱交換器(水コンデンサ62)と、を備え、
前記バッテリは、固体電池であり、
前記第1バルブ機構及び前記第2バルブ機構は、
前記低温側遮断状態且つ前記高温側接続状態とすることで、前記バッテリ温調回路及び前記高温冷媒回路が連通され、連通した前記バッテリ温調回路及び前記高温冷媒回路から前記低温冷媒回路が遮断された高温連通状態に切替可能であり、
前記高温連通状態では、
前記バッテリを流れる前記冷媒が、前記第2熱交換器を通り、
前記発熱部品を流れる前記冷媒が、前記第1熱交換器を通る、温調システム。
【0070】
(1)によれば、温度レンジの高い固体電池からなるバッテリの加温に暖房用の高温冷媒回路を利用することができるので、バッテリを早期に昇温することができ、エネルギー効率が向上する。
【0071】
(2) (1)に記載の温調システムであって、
前記第1バルブ機構及び前記第2バルブ機構は、
前記低温側接続状態且つ前記高温側接続状態とすることで、前記バッテリ温調回路、前記高温冷媒回路、及び前記低温冷媒回路の全てが連通された全連通状態と、
前記低温側遮断状態且つ前記高温側接続状態とすることで、前記バッテリ温調回路及び前記高温冷媒回路が連通され、連通した前記バッテリ温調回路及び前記高温冷媒回路から前記低温冷媒回路が遮断された前記高温連通状態と、
前記低温側接続状態且つ前記高温側遮断状態とすることで、前記バッテリ温調回路及び前記低温冷媒回路が連通され、連通した前記バッテリ温調回路及び前記低温冷媒回路から前記高温冷媒回路が遮断された低温連通状態と、
前記低温側遮断状態且つ前記高温側遮断状態とすることで、前記バッテリ温調回路、前記高温冷媒回路、及び前記低温冷媒回路の全ての連通が遮断された無連通状態と、を切り替え可能である、温調システム。
【0072】
(2)によれば、バッテリの加温が必要な場合以外でも、第1バルブ機構及び第2バルブ機構の連通・遮断を切り替えることで、バッテリに適切な温度と空調の要求する温度とを両立することができる。また、冷媒回路(バッテリ温調回路、高温冷媒回路、低温冷媒回路)を全て接続できるモードを持つことで、リザーバータンクを統合できる。
【0073】
(3) (2)に記載の温調システムであって、
前記空調装置の停止時において、前記第1バルブ機構及び前記第2バルブ機構により前記全連通状態とする、温調システム。
【0074】
(3)によれば、空調装置の停止時でも、バッテリを調温することができる。
【0075】
(4) (1)に記載の温調システムであって、
前記低温冷媒回路のみに、水加熱ヒーター(水加熱ヒーター35)が設けられている、温調システム。
【0076】
(4)によれば、低温冷媒回路、第1熱交換器、冷凍サイクル回路、第2熱交換器を介して、連通した高温冷媒回路及びバッテリ温調回路に水加熱ヒーターの熱を移動させることができ、極低温環境における暖房やバッテリを昇温する際の時間を短縮できる。また、水加熱ヒーターを、あえて低温冷媒回路に配置することで、最低限の出力で冷媒をわずかに昇温させるだけで、冷凍サイクル回路を介して暖房の水温及び/又はバッテリを加温する際の水温を確保できる。
【0077】
(5) (1)に記載の温調システムであって、
前記高温冷媒回路のみに水ラジエータ(水ラジエータ25)が設けられ、
前記冷凍サイクル回路の外気への放熱は、前記第2熱交換器を介して前記水ラジエータで行う、温調システム。
【0078】
(5)によれば、外気放熱を高温冷媒回路の水ラジエータに集約することができ、冷凍サイクル回路の空冷コンデンサを廃止できる。
【0079】
(6) (1)に記載の温調システムであって、
前記低温冷媒回路は、駆動装置(駆動装置33)を冷却し、
前記空調装置の暖房時における熱源は、前記駆動装置を含み、
前記駆動装置の排熱は、前記第1熱交換器、前記冷凍サイクル回路、前記第2熱交換器を介して前記高温冷媒回路のヒーターコア(ヒーターコア21)で利用される、温調システム。
【0080】
(6)によれば、暖房時に駆動装置の排熱を利用することで、エネルギー効率が向上する。
【0081】
(7) (1)に記載の温調システムであって、
前記第1バルブ機構及び前記第2バルブ機構は、6個のポート(ポート811~816)と6本の内部通路(内部通路711~716)を持つ単一のバルブ装置(統合バルブ60)である、温調システム。
【0082】
(7)によれば、第1バルブ機構及び第2バルブ機構を単一のバルブ装置に集約することができる。
【0083】
(8) (7)に記載の温調システムであって、
前記バルブ装置は、
バルブ本体(バルブ本体70)と、前記バルブ本体の外周部に配置されたハウジング(ハウジング81)とを有し、
前記バルブ本体には、30°ごとにバルブ開口(バルブ開口720~731)が設けられ、
前記6本の内部通路は、それぞれ2つの前記バルブ開口に連通し、
前記ハウジングには、前記6個のポートが60°ごとに配置され、
前記ハウジングに対し、前記バルブ本体を30°ずつ回転させ、
前記バッテリ温調回路、前記高温冷媒回路、及び前記低温冷媒回路の全てが連通された全連通状態と、
前記バッテリ温調回路及び前記高温冷媒回路が連通され、前記低温冷媒回路が遮断された前記高温連通状態と、
前記バッテリ温調回路及び前記低温冷媒回路が連通され、前記高温冷媒回路が遮断された低温連通状態と、
前記バッテリ温調回路、前記高温冷媒回路、及び前記低温冷媒回路の全てが遮断された無連通状態と、を切り替え可能である、温調システム。
【0084】
(8)によれば、バルブ本体の回転で、温調システムの4つの状態を切り替えることができ、バルブ制御が簡潔になる。
【符号の説明】
【0085】
1 温調システム
10 バッテリ水回路(バッテリ温調回路)
20 高温水回路(高温冷媒回路)
21 ヒーターコア
25 水ラジエータ
30 低温水回路(低温冷媒回路)
31 車載充電器(発熱部品)
33 駆動装置
35 水加熱ヒーター
40 冷凍サイクル回路
60 統合バルブ(バルブ装置)
61 チラー(第1熱交換器)
62 水コンデンサ(第2熱交換器)
70 バルブ本体
81 ハウジング
87 温調バルブ(温度調整バルブ)
BAT バッテリ

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