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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115924
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】旋回式クランプ
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B23Q3/06 302G
B23Q3/06 304B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021835
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】大谷 健太
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016CA07
3C016CB02
3C016CC04
(57)【要約】
【課題】圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない旋回式クランプを提供すること。
【解決手段】クランプロッド(5)は、ハウジング(1)内に軸方向へ移動可能で、且つ、軸心回りに旋回可能で挿入される。旋回式クランプは、クランプロッド(5)の基端側端部に配置される操作部材(例えば、ボール14)であって、クランプロッド(5)を軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材(14)を備える。また、旋回式クランプは、ハウジング(1)の先端側の内部に配置され、クランプロッド(5)を軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段(例えば、バネ19)を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)内に軸方向へ移動可能で、且つ、軸心回りに旋回可能で挿入されるクランプロッド(5)であって、前記ハウジング(1)の一部である支持筒部(4)の筒孔(4a)に挿入されるクランプロッド(5)と、
前記筒孔(4a)の内周壁に周方向へ所定の間隔をあけて形成される支持孔(10)に回転可能に支持される係合部材(9)であって、前記クランプロッド(5)の外周面に形成されるガイド溝(8)に挿入される係合部材(9)と、
前記クランプロッド(5)の基端側端部に配置される操作部材(14、23)であって、前記クランプロッド(5)を前記軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材(14、23)と、
前記ハウジング(1)の先端側の内部に配置され、前記クランプロッド(5)を前記軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段(19)と、
を備える、
旋回式クランプ。
【請求項2】
請求項1の旋回式クランプにおいて、
前記操作部材(14、23)は、少なくとも前記軸心回りに前記クランプロッド(5)に対して回転可能な状態で前記基端側端部に配置されている、
旋回式クランプ。
【請求項3】
請求項1または2の旋回式クランプにおいて、
前記付勢手段(19)はバネ(19)であり、当該バネ(19)は、リング状のバネ受け(20)を介して前記クランプロッド(5)を前記軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させ、
前記クランプロッド(5)の途中高さ部にフランジ部(5b)が設けられており、
前記バネ受け(20)と前記フランジ部(5b)との間に付勢手段用軸受け部材(21)が配置されている、
旋回式クランプ。
【請求項4】
請求項1または2の旋回式クランプにおいて、
前記操作部材(14)は、回転可能な球体(14)であり、
前記クランプロッド(5)の基端側端面と前記球体(14)との間に操作部材用軸受け部材(15)が配置されている、
旋回式クランプ。
【請求項5】
請求項4の旋回式クランプにおいて、
前記クランプロッド(5)の基端部に取り付けられる筒状のガイド部材(17)であって、前記球体(14)の落下を防止するとともに前記球体(14)と摺動するガイド部材(17)をさらに備える、
旋回式クランプ。
【請求項6】
請求項1または2の旋回式クランプにおいて、
前記操作部材(23)は、前記軸方向に延びる棒状部材(23)であり、
前記クランプロッド(5)の基端側端面と前記棒状部材(23)との間に操作部材用軸受け部材(25)が配置されている、
旋回式クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプロッドが旋回する形式のクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプとして、下記の特許文献1に記載されたものがある。従来技術に係るそのクランプ(旋回式クランプ)は、次のように構成されている。
【0003】
旋回式クランプは、軸方向へ移動可能で、且つ、軸心回りに旋回可能なクランプロッド、クランプロッドの外周部に形成されたガイド溝に挿入されるロッド旋回用のボール、および進退用のピストンなどから構成される。旋回式クランプを構成するハウジングには、圧力流体が給排されるクランプ室およびアンクランプ室が設けられる。旋回式クランプの駆動、すなわちピストンおよびクランプロッドの駆動には、例えば圧縮エアが用いられ、駆動のたびに、クランプ室およびアンクランプ室に圧縮エアが給排される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-43324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような旋回式クランプが多数設置されると、圧縮エアの供給設備として、規模が大きな設備が必要となる。また、圧縮エアを給排する配管設備は、数量が多く且つ複雑なものとなる。これらは、省エネルギーおよび環境対策の点から好ましいとは言えない。そのため、駆動源として圧縮エアは不要であることが望ましい。
【0006】
本発明の目的は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない旋回式クランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る旋回式クランプは、例えば、図1から図6に示すように、次のように構成される。
【0008】
(1)本願で開示する旋回式クランプは、ハウジング1と、前記ハウジング1内に軸方向へ移動可能で、且つ、軸心回りに旋回可能で挿入されるクランプロッド5であって、前記ハウジング1の一部である支持筒部4の筒孔4aに挿入されるクランプロッド5と、前記筒孔4aの内周壁に周方向へ所定の間隔をあけて形成される支持孔10に回転可能に支持される係合部材9であって、前記クランプロッド5の外周面に形成されるガイド溝8に挿入される係合部材9と、前記クランプロッド5の基端側端部に配置される操作部材14、23であって、前記クランプロッド5を前記軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材14、23と、前記ハウジング1の先端側の内部に配置され、前記クランプロッド5を前記軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段19と、を備える。
【0009】
本願で開示する旋回式クランプは次の作用効果を奏する。当該旋回式クランプは、従来の旋回式クランプが備えるクランプ室およびアンクランプ室というような駆動のたびに圧力流体が給排される室を備えない。当該旋回式クランプでは、上記の操作部材が手動、または外力によって動かされることで、軸方向のうちの先端側方向へクランプロッドは旋回駆動される。軸方向のうちのもう一方の方向である基端側方向へは、上記の付勢手段によってクランプロッドは旋回駆動される。したがって、当該旋回式クランプは、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない。
【0010】
(2)上記(1)の旋回式クランプにおいて、前記操作部材14、23は、少なくとも前記軸心回りに前記クランプロッド5に対して回転可能な状態で前記基端側端部に配置されてもよい。
【0011】
この構成によると、クランプロッドを円滑に旋回させることができる。
【0012】
(3)上記(1)または(2)の旋回式クランプにおいて、前記付勢手段19はバネ19であり、当該バネ19は、リング状のバネ受け20を介して前記クランプロッド5を前記軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させ、前記クランプロッド5の途中高さ部にフランジ部5bが設けられており、前記バネ受け20と前記フランジ部5bとの間に付勢手段用軸受け部材21が配置されてもよい。
【0013】
この構成によると、上記バネ受けとフランジ部との間に付勢手段用軸受け部材が配置されることで、クランプロッドを円滑に旋回させることができる。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のいずれかの旋回式クランプにおいて、例えば、図2から図4に示すように、前記操作部材14は、回転可能な球体14であり、前記クランプロッド5の基端側端面と前記球体14との間に操作部材用軸受け部材15が配置されてもよい。
【0015】
この構成によると、操作部材が回転可能な球体とされることで、軸方向のうちの先端側方向へクランプロッドをスムーズに移動させることができる。また、クランプロッドの基端側端面と上記球体との間に操作部材用軸受け部材が配置されることで、クランプロッドをより円滑に旋回させることができる。
【0016】
(5)上記(4)の旋回式クランプにおいて、前記クランプロッド5の基端部に取り付けられる筒状のガイド部材17であって、前記球体14の落下を防止するとともに前記球体14を摺動させるガイド部材17をさらに備えてもよい。
【0017】
この構成によると、軸方向に対して斜めなどの方向の力が操作部材(球体)に作用した際に、当該力のうちの軸方向に対して直交する方向の分力を、上記ガイド部材で受け止めることができる。また、重力により操作部材(球体)が落下することを防止できる。
【0018】
(6)上記(1)から(3)のいずれかの旋回式クランプにおいて、例えば、図5および図6に示すように、前記操作部材23は、前記軸方向に延びる棒状部材23であり、前記クランプロッド5の基端側端面と前記棒状部材23との間に操作部材用軸受け部材25が配置されてもよい。
【0019】
この構成によると、クランプロッドの基端側端面と操作部材(棒状部材)との間に操作部材用軸受け部材が配置されることで、クランプロッドをより円滑に旋回させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない旋回式クランプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本願で開示する旋回式クランプの使用例を示す平面図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態を示し、旋回式クランプのクランプ状態における側面視の断面図であり、図1のX-X断面図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態を示し、旋回式クランプのクランプ状態における側面視の断面図であり、図1のY-Y断面図である。
図4図4は、図2、3に示す旋回式クランプのアンクランプ状態における側面視の断面図であり、図2に対応する図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態を示し、旋回式クランプのクランプ状態における側面視の断面図である。
図6図6は、図5に示す旋回式クランプのアンクランプ状態における側面視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態の説明では、基台としてのクランプパレットCPに、クランプ対象物であるワークパレットWPを固定するという、旋回式クランプの使用例を例示している。
【0023】
図1に示すように、2つの旋回式クランプ101、102が固定されたクランプパレットCPは、所定の間隔をあけて配置された2本のレール50の上を走行するように構成されている。レール50同士の間に、当該レール50と同じ方向に延びる長い板状のカム部材51が配置されている。本実施形態においてカム部材51は動かない。カム部材51はカム部52を有する。図2などに示すように、カム部52は、側面視において上方へ凸の台形形状とされている。なお、旋回式クランプ101と旋回式クランプ102とは同一の旋回式クランプである。そのため、代表して旋回式クランプ101について、以下説明する。
【0024】
図2から図4は、本発明の第1実施形態を示す。図2から図4に基づいて、第1実施形態の旋回式クランプ101の構成を説明する。
【0025】
クランプパレットCPに旋回式クランプ101のハウジング1が複数のボルト2(図1参照)によって固定される。ハウジング1は、ハウジング本体部3と、ハウジング本体部3の基端部に取り付けられる支持筒部4とを備える。
【0026】
ハウジング本体部3の上壁3a(先端壁)に形成された筒孔3bに、クランプロッド5が当該クランプロッド5の軸方向(上下方向)へ移動可能で、且つ、当該クランプロッド5の軸心回りに旋回可能で挿入される。クランプロッド5の先端部にアーム6がボルト7によって固定される。
【0027】
クランプロッド5は、先端側から順に、ロッド本体部5aと、ロッド本体部5aよりも大径のフランジ部5bと、下ロッド部5cとを有する。下ロッド部5cは、上記支持筒部4の筒孔4aに摺動可能に挿入される。
【0028】
上記下ロッド部5cの外周面に3つのガイド溝8が周方向へ所定の間隔をあけて形成される。図2から図4の各図には3つのガイド溝8のうちの1つだけを示す。各ガイド溝8は、断面視で弓形の溝であり、螺旋状の旋回溝8aと直線状の直進溝8bとが連ねて構成された溝である。上記3つの旋回溝8aが相互に平行に配置されるとともに、上記3つの直進溝8bも相互に平行に配置される。旋回溝8aの傾斜角度は、半径方向(水平方向)に対して例えば20度から40度となるように設定される。旋回溝8aの傾斜角度をこのように設定することで、旋回溝8aのリードが短くなり、その結果、クランプロッド5の旋回用ストロークが小さくなる。なお、ガイド溝8は3つに限定されない。
【0029】
上記の各ガイド溝8に、係合部材としてのボール9が挿入される。ボール9は、前記支持筒部4の筒孔4aの内周壁に周方向へ所定の間隔をあけて形成された支持孔10に回転可能に支持される。これら3つのボール9にわたって環状のスリーブ11が軸心回りに回転自在に外嵌される。スリーブ11の内周面にV字状の溝11aが形成され、このV字状の溝11aの上下の二点でボール9が転動可能になっている。
【0030】
なお、支持筒部4は、位置決めピン12によってハウジング本体部3に対して回り止めされている。これにより、ハウジング本体部3に対するクランプロッド5の周方向の位置(位相)を合わせることができる。また、支持筒部4は、止め輪13によってハウジング本体部3に対して抜け止めされている。
【0031】
下ロッド部5cの基端側端部に、操作部材としてのボール14(球体)が回転可能な状態で配置される。ボール14は、例えば金属製ボールである。本実施形態では、下ロッド部5cの基端側端面とボール14との間に、操作部材用軸受け部材としての複数のボール15が配置されている。複数のボール15は、下ロッド部5cの基端側端面に形成された凹部16に収容されている。ボール15は、例えば金属製ボールである。ボール15は、クランプロッド5の軸方向の荷重を受け止め可能である。ボール15は、凹部16に収容されているため、軸方向に対して直交する方向の荷重も一部受け止め可能である。
【0032】
下ロッド部5cの基端外周部に、筒形状のガイド部材17が螺合により固定される。下ロッド部5cの外径とガイド部材17の外径とは等しい。ガイド部材17の端部は、ボール14を間に挟むように形成されており、ガイド部材17は、ボール14の落下を防止するとともに、その端部内周面においてボール14と摺動する。ボール14の一部はガイド部材17の端部から突出している。
【0033】
ハウジング本体部3の先端側の筒孔空間に、クランプロッド5のフランジ部5bを下方(基端側方向)へ押す付勢手段としてのバネ19が配置される。バネ19は圧縮コイルバネである。バネ19の下端は、リング状のバネ受け20で受け止められる。バネ受け20とフランジ部5bとの間に、付勢手段用軸受け部材としての複数のボール21が配置されている。ボール21は、例えば金属製ボールである。ボール21は、クランプロッド5の軸方向の荷重を受け止め可能である。バネ受け20は、止め輪22によって上下方向(軸方向)への移動が規制されている。バネ受け20は、軸方向回りにおいてクランプロッド5に拘束されていない。すなわち、クランプロッド5は、バネ受け20に対して軸心回りに回転可能である。ボール21が介在することでバネ受け20の下面とフランジ部5bの上面との間には僅かな隙間がある。
【0034】
なお、バネ9として、圧縮コイルバネに代えて、皿バネなどの他の種類のバネを用いることも可能である(他の実施形態についても同様)。
【0035】
上記構成の旋回式クランプ101は次のように動作する。
【0036】
図4に示すアンクランプ状態では、カム部材51のカム部52によって、すなわち外力によってボール14が上方へ押され、ボール14は図1から3に示すクランプ状態のときよりも上昇している。これにより、バネ19の付勢力に抗してボール14がクランプロッド5を上方(先端側方向)へ押して上昇させた状態となっている。
【0037】
ワークパレットWPをクランプパレットCPにクランプするときは、クランプパレットCPをレール50の上を走行させる。すると、カム部52による外力が解かれていき、バネ19がバネ受け20を介してクランプロッド5のフランジ部5bを下方(基端側方向)へ押し、クランプロッド5は下降する。クランプロッド5は、旋回溝8aに沿って平面視で時計回りの方向へ旋回しながら下降し、引き続いて、直進溝8bに沿って真っすぐに下降する。アーム6の先端部がワークパレットWPを上方から押圧する。これにより、旋回式クランプ101は、図4に示すアンクランプ状態から、図2、3に示すクランプ状態へ切換わる。
【0038】
このとき、すなわち、クランプロッド5が旋回しながら下降するとき、バネ受け20とフランジ部5bとの間に配置された、付勢手段用軸受け部材としての複数のボール21がクランプロッド5の旋回にともなってロッド本体部5a回りを転動する。そのため、ボール21とフランジ部5bとの間の摩擦力は小さく、クランプロッド5は円滑に旋回しながら下降する。
【0039】
また、ボール14は球体であるので、あらゆる方向に回転可能である。そのため、カム部52の傾斜面に沿ってボール14が転動しながら下降していくとき、クランプロッド5が旋回することに関しクランプロッド5はボール14からの影響をほとんど受けない。すなわち、クランプロッド5は円滑に旋回しながら下降する。また、本実施形態では、下ロッド部5cの基端側端面とボール14との間に、操作部材用軸受け部材としての複数のボール15が配置されていることで、クランプロッド5をより円滑に旋回させることができる。
【0040】
旋回式クランプ101を、図2、3に示すクランプ状態から図4に示すアンクランプ状態へ切換えるときは、クランプパレットCPをレール50の上を走行させることで、カム部材51のカム部52の上部にボール14を乗り上げさせる(図4参照)。これにより、バネ19の付勢力に抗してボール14がクランプロッド5を上方(先端側方向)へ押して、クランプロッド5は上昇する。クランプロッド5は、直進溝8bに沿って真っすぐに上昇し、引き続いて、旋回溝8aに沿って平面視で反時計回りの方向へ旋回しながら上昇する。これにより、旋回式クランプ101は、図4に示すアンクランプ状態へ切換わる。
【0041】
前記のとおり、ボール14は球体であるので、あらゆる方向に回転可能である。そのため、カム部52の傾斜面に沿ってボール14が転動しながら上昇していくとき、クランプロッド5が旋回することに関しクランプロッド5はボール14からの影響をほとんど受けない。すなわち、クランプロッド5は円滑に旋回しながら上昇する。また、本実施形態では、下ロッド部5cの基端側端面とボール14との間に、操作部材用軸受け部材としての複数のボール15が配置されていることで、クランプロッド5をより円滑に旋回させることができる。
【0042】
さらに、バネ受け20とフランジ部5bとの間に配置された、付勢手段用軸受け部材としての複数のボール21がクランプロッド5の旋回にともなってロッド本体部5a回りを転動する。そのため、ボール21とフランジ部5bとの間の摩擦力は小さく、クランプロッド5は円滑に旋回しながら上昇する。
【0043】
なお、ボール14は回転するので、カム部52からの横方向の反力を回転するボール14部分で一部逃がすことができ、支持筒部4の筒孔4aの内周面とクランプロッド5の下ロッド部5cとがこじれることを抑制できる。その結果、クランプロッド5を先端側方向へよりスムーズに上昇させることができる。
【0044】
旋回式クランプ101は、従来の旋回式クランプが備えるクランプ室およびアンクランプ室というような駆動のたびに圧力流体が給排される室を備えない。旋回式クランプ101では、ボール14が外力によって動かされる(上方へ押される)ことで、クランプロッド5は先端側方向へ旋回駆動される。先端側方向とは逆の方向である基端側方向へは、バネ19によってクランプロッド5は旋回駆動される。したがって、旋回式クランプ101は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない。なお、ボール14を人の手で押して動かしてもよい。
【0045】
図5および図6は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態の旋回式クランプは、クランプロッド5の基端側端部に配置される操作部材の構成が第1実施形態の旋回式クランプと相違する。なお、第2実施形態の旋回式クランプを構成する各部材について、第1実施形態の旋回式クランプを構成する各部材と同様の部材については、同じ符号を付している。
【0046】
本実施形態における上記操作部材は、クランプロッド5の基端側端部からクランプロッド5の軸方向に延びる棒状部材としてのロッド23とされている。ロッド23は、基端側から順に、端面が断面視で円弧とされたロッド本体部23aと、ロッド本体部23aよりも大径のロッド端部に設けられた鍔部23bとを有する。鍔部23bが設けられた側のロッド23の端面に有底の穴23cが形成されている。
【0047】
ハウジング1を構成する支持筒部4の下端部(基端部)は、筒孔4aよりも内周面の径が小さい小径部24とされている。ロッド23の鍔部23bは、この小径部24よりも径が大きくされており、これら鍔部23bおよび小径部24によって、ロッド23の抜け止めがなされている。鍔部23bは、筒孔4aと摺動可能であり、小径部24は、ロッド本体部23aと摺動可能である。
【0048】
クランプロッド5の基端側端面とロッド23との間に、操作部材用軸受け部材としての軸受け25が配置される。本実施形態では、ロッド23の端面に形成された上記穴23cに軸受け25が収容されている。軸受け25は、クランプロッド5の軸方向の荷重を受け止め可能である。
【0049】
上記構成の旋回式クランプは次のように動作する。
【0050】
図6に示すアンクランプ状態では、部材53によって、すなわち外力によって下方からロッド23が上方へ押され、ロッド23は図5に示すクランプ状態のときよりも上昇している。これにより、バネ19の付勢力に抗してロッド23がクランプロッド5を上方(先端側方向)へ押して上昇させた状態となっている。
【0051】
ワークパレットWPをクランプパレットCPにクランプするときは、部材53を下方へ移動させる。すると、部材53による外力が解かれ、バネ19がバネ受け20を介してクランプロッド5のフランジ部5bを下方(基端側方向)へ押し、クランプロッド5は下降する。クランプロッド5は、旋回溝8aに沿って平面視で時計回りの方向へ旋回しながら下降し、引き続いて、直進溝8bに沿って真っすぐに下降する。アーム6の先端部がワークパレットWPを上方から押圧する。これにより、旋回式クランプは、図6に示すアンクランプ状態から、図5に示すクランプ状態へ切換わる。
【0052】
このとき、第1実施形態の場合と同様、付勢手段用軸受け部材としての複数のボール21がクランプロッド5の旋回にともなってロッド本体部5a回りを転動するので、ボール21とフランジ部5bとの間の摩擦力は小さく、クランプロッド5は円滑に旋回しながら下降する。
【0053】
また、ロッド23は、クランプロッド5の軸心回りにクランプロッド5に対して回転可能である。そのため、クランプロッド5が旋回することに関しクランプロッド5はロッド23からの影響をほとんど受けない。すなわち、クランプロッド5は円滑に旋回しながら下降する。また、本実施形態では、クランプロッド5の基端側端面とロッド23との間に、操作部材用軸受け部材としての軸受け25が配置されていることで、クランプロッド5をより円滑に旋回させることができる。
【0054】
旋回式クランプを、図5に示すクランプ状態から図6に示すアンクランプ状態へ切換えるときは、部材53で下方からロッド23が上方へ押す。これにより、バネ19の付勢力に抗してロッド23がクランプロッド5を上方(先端側方向)へ押して、クランプロッド5は上昇する。クランプロッド5は、直進溝8bに沿って真っすぐに上昇し、引き続いて、旋回溝8aに沿って平面視で反時計回りの方向へ旋回しながら上昇する。これにより、旋回式クランプ101は、図6に示すアンクランプ状態へ切換わる。
【0055】
前記のとおり、ロッド23は、クランプロッド5の軸心回りにクランプロッド5に対して回転可能である。そのため、クランプロッド5が旋回することに関しクランプロッド5はロッド23からの影響をほとんど受けない。すなわち、クランプロッド5は円滑に旋回しながら上昇する。また、本実施形態では、クランプロッド5の基端側端面とロッド23との間に、操作部材用軸受け部材としての軸受け25が配置されていることで、クランプロッド5をより円滑に旋回させることができる。
【0056】
さらに、バネ受け20とフランジ部5bとの間に配置された、付勢手段用軸受け部材としての複数のボール21がクランプロッド5の旋回にともなってロッド本体部5a回りを転動する。そのため、ボール21とフランジ部5bとの間の摩擦力は小さく、クランプロッド5は円滑に旋回しながら上昇する。
【0057】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記実施形態の要素を適宜組み合わせたり、上記実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。
【0058】
例えば、上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0059】
ボール14やロッド23(操作部材)を人の手(手動)で押して、クランプロッド5を先端側方向へ移動させてもよい。
【0060】
上記実施形態においてカム部材51は静止している(固定されている)が、カム部材51を動かすことで、そのカム部52でボール14(操作部材)を押して動かしてもよい。また、ボール14(操作部材)を動かすための外力を発生させる手段は、カム部材51のような部材に限定されない。
【0061】
バネ受け20とクランプロッド5のフランジ部5bとの間に配置される付勢手段用軸受け部材として、複数のボール21に代えて、市販の軸受け(ベアリング)を用いることも可能である。また、ボール21に代えて、円柱状部材を用いることも可能である(操作部材用軸受け部材としての複数のボール15についても同様)。
【0062】
クランプロッド5の基端側端面と棒状部材としてのロッド23との間に配置される操作部材用軸受け部材として、軸受け25に代えて、複数のボール、または複数の円柱状部材を用いることも可能である。
【0063】
クランプロッド5は、クランプ駆動時に平面視で時計回りの方向へ旋回されることに代えて、クランプ駆動時に平面視で反時計回りの方向へ旋回されてもよい。また、クランプロッド5の旋回角度は、例えば90度などの所望の角度に設定できることは勿論である。
【0064】
スリーブ11を省略することができる。この場合、支持筒部4の厚みのある部分の筒孔4aの内周壁に周方向へ所定の間隔をあけて有底の支持孔を形成し、この支持孔でボール9は支持される。
【0065】
ガイド溝8において直線状の直進溝8bが省略されてもよい。
【0066】
旋回式クランプは、テーブルやロボット先端部分に取り付けられてもよい。クランプ対象物は、ワーク、または金型などであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1:ハウジング、4:支持筒部、4a:筒孔、5:クランプロッド、5b:フランジ部、8:ガイド溝、9:ボール(係合部材)、10:支持孔、14:ボール(球体、操作部材)、15:ボール(操作部材用軸受け部材)、17:ガイド部材、19:バネ(付勢手段)、20:バネ受け、21:ボール(付勢手段用軸受け部材)、23:ロッド(棒状部材、操作部材)、25:軸受け(操作部材用軸受け部材)、101:旋回式クランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6